(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088300
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】投影表示装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240625BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240625BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240625BHJP
G02F 1/1333 20060101ALN20240625BHJP
G02F 1/133 20060101ALN20240625BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G02F1/13357
G03B21/00 D
G02F1/1333
G02F1/133 580
G02F1/1335
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203400
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前野 敬一
(72)【発明者】
【氏名】古川 直史
【テーマコード(参考)】
2H189
2H193
2H291
2H391
2K203
【Fターム(参考)】
2H189AA70
2H189AA86
2H189HA06
2H189LA20
2H189MA07
2H189NA05
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2H193ZH65
2H291FA11X
2H291FA29X
2H291FA30X
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2H291FA52X
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2H291LA05
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2H391BA03
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2H391BA28
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2H391CB41
2K203FA03
2K203FA24
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2K203LA03
2K203LA18
2K203LA37
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2K203LA56
2K203MA05
(57)【要約】
【課題】フリンジの発生を適切に抑制できる投影表示装置を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る投影表示装置100は、青色の波長帯の光を照射する光源101と、赤色、緑色、および青色にそれぞれ対応して配置され、各色に対応する画像光を生成する第1表示素子106R、第2表示素子106G、第3表示素子106Bと、少なくとも青色に対応した第3表示素子106Bの背面にヒートシンク160を介して配置されたヒータ161と、ヒートシンク160に設けられた温度センサ162と、を含み、光源101は、発振波長の異なる複数のグループの青色レーザ光源を有し、温度センサ162の検出温度が所定の第1温度よりも低い場合には、ヒータ161を動作させる加熱制御部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色の波長帯の光を照射する光源と、
赤色、緑色、および青色にそれぞれ対応して配置され、各色に対応する画像光を生成する液晶表示素子と、
少なくとも青色に対応した前記液晶表示素子の背面にヒートシンクを介して配置された加熱部と、
前記ヒートシンクに設けられた第1温度センサと、を含み、
前記光源は、発振波長の異なる複数のグループの青色レーザを有し、
前記第1温度センサの検出温度が所定の第1温度よりも低い場合には、前記加熱部を動作させる加熱制御部を備える投影表示装置。
【請求項2】
前記光源は、発振波長の異なる3つのグループの青色レーザを備える請求項1に記載の投影表示装置。
【請求項3】
複数の前記グループの発振波長は、それぞれ少なくとも10(nm)異なっている請求項1または2に記載の投影表示装置。
【請求項4】
前記加熱部が配置された前記液晶表示素子は、バンドギャップ型の第2温度センサを含み、
前記加熱制御部は、該液晶表示素子に電源が供給されていないときには、前記第1温度センサの検出データを使用し、該液晶表示素子に電源が供給された後は、前記第1温度センサに代えて前記第2温度センサの検出データを使用する請求項1または2に記載の投影表示装置。
【請求項5】
前記加熱制御部は、前記第1温度センサまたは前記第2温度センサの検出温度が前記第1温度よりも高く設定された第2温度に達すると前記加熱部の動作を停止する請求項4に記載の投影表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子を使用した投影表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、反射型の液晶表示素子を使用した投影表示装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の投影表示装置では、例えば、単一波長の青色レーザからなる光源から青色レーザ光を蛍光体に照射することにより白色光を生成し、この白色光を赤色、青色および緑色の各色光に分解した後、これら各色の光がそれぞれ反射型の液晶表示素子により変調された画像をスクリーンに拡大投影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の投影表示装置においては、使用開始時の液晶表示素子が動作に適切な温度よりも低い温度であることが一般的である。このため、液晶表示素子の温度が適切な温度に温まるまでの間、該液晶表示素子内の温度分布は不均一となっている。この結果、レーザのように単一波長の光源の場合、例えば使用開始時に明るい領域と暗い領域に分かれるフリンジ(干渉縞)を生じることがあり、このフリンジの発生を適切に抑制できる投影表示装置が求められている。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑み、フリンジの発生を適切に抑制できる投影表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる投影表示装置は、青色の波長帯の光を照射する光源と、赤色、緑色、および青色にそれぞれ対応して配置され、各色に対応する画像光を生成する液晶表示素子と、少なくとも青色に対応した液晶表示素子の背面にヒートシンクを介して配置された加熱部と、ヒートシンクに設けられた第1温度センサと、を含み、光源は、発振波長の異なる複数のグループの青色レーザを有し、第1温度センサの検出温度が所定の第1温度よりも低い場合には、加熱部を動作させる加熱制御部を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱部の動作により液晶表示素子が温められるため、フリンジの発生を適切に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る表示装置の模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る制御部の模式的なブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図3の温度データを取得するステップの動作の手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、環境温度に対する素子温度の変化状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0010】
(投影表示装置の構成)
図1は、本実施形態に係る投影表示装置の模式図である。投影表示装置は、可視光(例えば青色レーザ光)を蛍光体に照射することにより白色光を生成し、この白色光を赤色、青色および緑色の各色光に分解した後、これら各色の光をそれぞれ変調して合成した画像を表示する表示装置である。
図1に示すように、本実施形態に係る投影表示装置100は、表示機構10と制御部12とを備える。表示機構10は、光源101、蛍光体103、偏光板105R、105G、105B、第1表示素子106R、第2表示素子106G、第3表示素子(青色に対応する液晶表示素子)106B、色合成プリズム108、投射レンズ109、λ/4板110、ダイクロイックミラー120~122、反射ミラー130~132、レンズ140~146、及び偏光変換素子150を備える。第1表示素子106R、第2表示素子106G、及び第3表示素子106Bは、例えば液晶層をシリコン基板とガラス基板とで挟んだ構成を有し、後述する各色に対応して設けられる反射型の液晶表示素子である。
【0011】
ダイクロイックミラー120~122は、分離波長を分離境界として、入射した光を反射と透過によって分離する特性を有する。ダイクロイックミラー120~122は、ガラス板またはプリズム等の透明材料の所定の領域に例えば誘電体多層膜を形成することにより作製することができる。誘電体多層膜を構成する誘電体の材質及び膜厚に応じて光学特性を設定することができる。
【0012】
光源101は、可視光の波長帯の光である照明光を照射する。本実施形態では、光源101は、青色レーザ素子で構成された青色レーザ光源であり、例えば、450(nm)以上495(nm)以下の波長帯の青色照明光を照射する。
【0013】
本実施形態では、光源101は、発振波長の異なる3つ(複数)のグループの第1青色レーザ光源101α、第2青色レーザ光源101β、および第3青色レーザ光源101γを有する。これら第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γのグループは、それぞれ発振波長が少なくとも10(nm)以上異なって設定されている。具体的には、第1青色レーザ光源101αの発振波長は445(nm)に設定され、第2青色レーザ光源101βの発振波長は455(nm)に設定され、第3青色レーザ光源101γの発振波長は465(nm)に設定されている。
【0014】
一般に、短波長である青色レーザ光源を単一波長光源として使用する場合、液晶表示素子の厚み(セル厚)のむらによって、明るい領域と暗い領域とに分かれるフリンジ(干渉縞)が発生し、このフリンジが表示される画像に重畳されることがあった。このため、液晶表示素子の厚みの厳しい管理が必要であった。これに対して、本実施形態では、上記したように、発振波長が少なくとも10(nm)以上異なる3つのグループの第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γを有する構成としたため、発振波長の違いにより、フリンジの間隔や山谷の位置が変わることにより、特に青色画像のフリンジが低減される。これにより、液晶表示素子に対する厚みの管理の基準を緩和することができる。
【0015】
上記した第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γの発振波長は、例示であり、青色の波長帯に含まれる限りは適宜変更することができる。また、各青色レーザ光源の発振波長の差分値は、例えば10(nm)以上20(nm)以下の範囲で適宜変更することができる。さらに、青色レーザ光源のグループの数は、複数であれば3つに限るものではない。
【0016】
光源101からの青色照明光はダイクロイックミラー120に照射される。ダイクロイックミラー120は、青色照明光を反射し、黄色照明光を透過させる特性を有する。本実施形態では、ダイクロイックミラー120は、上記した第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γに対応して配置されたダイクロイックミラー120α、120β、120γを備える。
【0017】
第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γからそれぞれ射出された青色照明光は、各ダイクロイックミラー120α~120γにより反射され、更にレンズ140により集光されて蛍光体103に照射される。蛍光体103は蛍光層と反射面とを有する。蛍光層は、第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γから照射された青色照明光のエネルギ強度に応じた強度の赤色帯域の成分と緑色帯域の成分とを含む黄色照明光を生成する。反射面は、蛍光層を透過した青色照明光と蛍光層により生成された黄色照明光とを反射する。
【0018】
ダイクロイックミラー120α、120β、120γは、蛍光体103からの反射光(拡散光)の光束幅よりも小さい面積となるように形成されている。また、これらダイクロイックミラー120α~120γは、それぞれダイクロイックミラー120α、120β、120γに対するレーザ光の偏光方向がs偏光となるような向きに配置されている。このため、ダイクロイックミラー120α~120γは、該ダイクロイックミラー120α~120γに入射する青色照明光のうち、s偏光を反射してp偏光を透過し、かつ黄色照明光は偏光方向によらず透過する特性となっている。
【0019】
従って、蛍光体103により波長励起されて赤色成分および緑色成分を含んだ黄色照明光(蛍光光)と、蛍光されない青色照明光とが混ざって、ダイクロイックミラー120α~120γに再び入射する。蛍光光である赤色成分および緑色成分を含んだ黄色照明光は、ダイクロイックミラー120α~120γを透過して全て出射される。一方、青色照明光は、蛍光体103で反射(拡散)される際に、複数の偏光が混ざり合ったランダム偏光となる。このため、ダイクロイックミラー120α~120γに当たる青色照明光の成分のうち、p偏光成分は、ダイクロイックミラー120α~120γを透過して出射されるが、s偏光成分は、ダイクロイックミラー120α~120γに反射して、第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γに戻る。
【0020】
ダイクロイックミラー120α~120γを透過した青色照明光と黄色照明光は、反射ミラー130にて反射され、レンズ141に入射する。レンズ141及びレンズ142は例えばフライアイレンズであり、これらレンズ141,142の間にλ/4板110が配置されている。反射ミラー130を反射した青色照明光、黄色照明光は、レンズ141、λ/4板110及びレンズ142によって照明分布が均一化され、偏光変換素子150に入射される。偏光変換素子150は、例えば偏光ビームスプリッタと位相差板とを有する。偏光ビームスプリッタは、s偏光及びp偏光のいずれか一方を反射し、他方を透過させる。
図1の例では、偏光ビームスプリッタはs偏光を反射してp偏光を透過させる。また、位相差板は、s偏光及びp偏光のいずれか一方を他方に変換する。
図1の例では、位相差板はs偏光をp偏光に変換する。偏光変換素子150によって、各照明光はp偏光に揃えられる。
【0021】
偏光変換素子150によって、p偏光に揃えられた各照明光は、レンズ143を介してダイクロイックミラー121に照射される。レンズ143は例えば集光レンズである。
【0022】
ダイクロイックミラー121は、入射した青色照明光BLと、黄色照明光YLとを分離する。ダイクロイックミラー121によって分離された黄色照明光YLは、反射ミラー131を反射し、ダイクロイックミラー122に入射する。
【0023】
ダイクロイックミラー122は、赤色光帯域と緑色光帯域の中間の波長を分離境界とし、入射した黄色照明光YLを、赤色帯域の成分を含む赤色照明光RLと、緑色帯域の成分を含む緑色照明光GLとに分離する。具体的には、ダイクロイックミラー122は、入射した黄色照明光YLの、緑色帯域成分を反射して緑色照明光GLを射出し、入射した黄色照明光YLの、赤色帯域成分を透過して赤色照明光RLを射出する。なお、赤色照明光RLは、例えば、620(nm)以上750(nm)以下の波長帯の光であり、緑色照明光GLは、例えば、495(nm)以上570(nm)以下の波長帯の光である。
【0024】
ダイクロイックミラー122によって分離された赤色照明光RLは、レンズ144を介して偏光板105Rに照射される。ダイクロイックミラー122によって分離された緑色照明光GLは、レンズ145を介して偏光板105Gに照射される。ダイクロイックミラー121によって分離された青色照明光BLは、反射ミラー132により反射し、レンズ146を介して偏光板105Bに照射される。
【0025】
偏光板105R、105G、105Bは、s偏光及びp偏光のいずれか一方を反射し、他方を透過させる特性を有する。
図1の例では、偏光板105R、105G、105Bがs偏光を反射し、p偏光を透過させる状態を示している。偏光板105R、105G、105Bを反射型偏光板とも称する。偏光板105R、105G、105Bは、例えばワイヤーグリッド偏光板である。
【0026】
p偏光である赤色照明光RLは、偏光板105Rを透過して第1表示素子106Rに照射される。p偏光である緑色照明光GLは、偏光板105Gを透過して、第2表示素子106Gに照射される。p偏光である青色照明光BLは、偏光板105Bを透過して、第3表示素子106Bに照射される。
【0027】
第1表示素子106Rは、赤色の成分の画像データに基づいてp偏光の赤色照明光RLを光変調し、s偏光の赤色画像光RMを生成する。第2表示素子106Gは、緑色の成分の画像データに基づいてp偏光の緑色照明光GLを光変調し、s偏光の緑色画像光GMを生成する。第3表示素子106Bは、青色の成分の画像データに基づいてp偏光の青色照明光BLを光変調し、s偏光の青色画像光BMを生成する。即ち、第1表示素子106Rは赤色画像用光変調素子として機能し、第2表示素子106Gは緑色画像用光変調素子として機能し、第3表示素子106Bは青色画像用光変調素子として機能する。
【0028】
第1表示素子106Rによって生成された、s偏光である赤色画像光RMは、偏光板105Rを反射して色合成プリズム108に照射される。第2表示素子106Gによって生成された、s偏光である緑色画像光GMは、偏光板105Gを反射して色合成プリズム108に照射される。第3表示素子106Bによって生成された、s偏光である青色画像光BMは、偏光板105Bを反射して色合成プリズム108に照射される。
【0029】
色合成プリズム108は、赤色画像光RM、及び青色画像光BMを反射し、緑色画像光GMを透過させ、それぞれの画像光を投射レンズ109に照射する。
【0030】
赤色画像光RM、緑色画像光GM、及び、青色画像光BMは、投射レンズ109を介して図示しないスクリーン等へ投射される。赤色画像光RMと、緑色画像光GMと、青色画像光BMにより可視光画像が表示される。
【0031】
本実施形態では、表示機構10は、光源101として、発振波長が少なくとも10(nm)以上異なる3つのグループの第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γを備えている。このため、第1青色レーザ光源101α~第3青色レーザ光源101γの発振波長の違いにより、フリンジの発生が抑制されている。
【0032】
一方、この種の反射型の液晶表示素子を使用している投影表示装置では、使用開始時に明るい領域と暗い領域に分かれるフリンジ(干渉縞)を生じることがある。使用開始時の液晶表示素子は、動作に適切な温度よりも低い温度であることが一般的であるため、液晶表示素子の温度が適切な温度に温まるまでの間、該液晶表示素子内の温度分布は不均一となっている。この結果、発振波長の異なる複数のレーザ光源を用いた場合であっても、例えば使用開始時のフリンジの発生の抑制が求められている。特に、光源として青色レーザ光源を用いた構成では、青色画像光BMにフリンジが発生しやすい傾向にある。
【0033】
本実施形態では、
図1に示すように、表示機構10は、青色に対応した第3表示素子106Bの背面(青色照明光BLが照射される側と反対の面)にヒートシンク160を介して配置されたヒータ(加熱部)161と、ヒートシンク160に設けられた温度センサ(第1温度センサ)162とを備える。ヒートシンク160は、アルミニウムなどの熱伝導性の高い金属で形成され、一定の厚みを有する板状部材である。ヒートシンク160は、第3表示素子106Bの背面よりも大きく形成され、この背面全体がヒートシンク160と接触する。
【0034】
ヒータ161は、ヒートシンク160を介して、第3表示素子106Bを温めるものであり、例えば、板状のセラミックスヒータを用いることができる。ヒータ161は、ヒートシンク160に配置されることにより、このヒートシンク160全体を温めることができ、ひいては第3表示素子106Bを均一に温めることができる。温度センサ162は、ヒートシンク160に取り付けられており、このヒートシンク160の温度を測定することで第3表示素子106Bの温度を間接的に検出することができる。
【0035】
また、第3表示素子106Bは、この素子回路内にバンドギャップ型の温度センサ(第2温度センサ)163を含む。バンドギャップ型の温度センサ163は、例えば、ダイオードを含む電気回路におけるダイオードの両端の電圧値に基づき温度を測定する半導体温度センサである。このバンドギャップ型の温度センサ163は、第3表示素子106Bの素子回路内に設けられているため、第3表示素子106Bの温度を直接、かつ正確に測定することができる。一方、バンドギャップ型の温度センサ163は、第3表示素子106Bに電源が供給されないと温度を測定できない。このため、本実施形態では、例えば投影表示装置100の使用開始時など、第3表示素子106Bに電源が供給されていない場合には、上記した温度センサ162の検出データを使用する。なお、青色に対応した第3表示素子106Bだけでなく、赤色および緑色に対応した第1表示素子106R、第2表示素子106Gの背面にもそれぞれ、ヒートシンク160、ヒータ161、温度センサ(第1温度センサ)162およびバンドギャップ型の温度センサ(第2温度センサ)163を備えた構成としてもよい。
【0036】
次に、制御部12について説明する。
図2は、本実施形態に係る制御部の模式的なブロック図である。制御部12は、
図2に示すように、第1温度取得部21と、第2温度取得部22と、加熱制御部23と、ファン制御部24とを備える。加熱制御部23およびファン制御部24は、ハードウェアである集積回路で構成されていてもよいし、コンピュータの演算装置であるCPU(Central Processing Unit)及びメモリで構成され、メモリに記憶されたコンピュータプログラム(ソフトウェア)をCPUによって実行させる構成としてもよい。なお、本実施形態では、ヒータ161の動作制御に関する部分を説明し、その他については説明を省略する。
【0037】
第1温度取得部21は、温度センサ162が検出した温度データを取得する。本実施形態では、温度センサ162は、バンドギャップ型の温度センサ163と異なり、第3表示素子106Bへの電源供給の有無に拘わらず第3表示素子106Bの温度を検出することができる。第1温度取得部21は、取得した温度データを加熱制御部23およびファン制御部24に出力する。
【0038】
第2温度取得部22は、バンドギャップ型の温度センサ163が検出した温度データを取得する。第2温度取得部22は、取得した温度データを加熱制御部23およびファン制御部24に出力する。第2温度取得部22は、バンドギャップ型の温度センサ163から温度データの入力が無い場合には、第3表示素子106Bに電源が供給されていないと判定し、この判定結果を加熱制御部23およびファン制御部24に出力してもよい。
【0039】
加熱制御部23は、第1温度取得部21または第2温度取得部22から入力された温度データに基づき、ヒータ161の動作を制御する。本実施形態では、加熱制御部23は、第1温度取得部21のみから温度データが入力された場合には、入力された温度データに基づき、ヒータ161の動作を制御する。また、加熱制御部23は、第1温度取得部21および第2温度取得部22からそれぞれ温度データが入力された場合には、第2温度取得部22から入力された温度データを優先し、この温度データに基づき、ヒータ161の動作を制御する。すなわち、加熱制御部23は、第3表示素子106Bに電源が供給されていないときには、温度センサ162の検出データを使用し、第3表示素子106Bに電源が供給された後は、温度センサ162に代えてバンドギャップ型の温度センサ163の検出データを使用する。この構成によれば、第3表示素子106Bの温度を直接、かつ正確に測った温度データを使用することができる。
【0040】
加熱制御部23は、第1温度取得部21または第2温度取得部22から入力された温度データが所定の第1温度よりも低い場合には、ヒータ161をオン(動作)させる制御を行う。この第1温度は、第3表示素子106Bの動作に適切な温度帯よりも低い温度に設定されている。この制御により、ヒータ161が作動するため、ヒートシンク160を介して、第3表示素子106Bが動作に適切な温度まで均一に温められる。また、加熱制御部23は、第1温度取得部21または第2温度取得部22から入力された温度データが、第1温度よりも高い第2温度に達すると、ヒータ161をオフ(停止)させる制御を行う。この第2温度は、第3表示素子106Bの動作に適切な温度帯に含まれる温度に設定されている。この構成では、第3表示素子106Bは、動作に適切な温度帯まで十分に温められているため、過剰な加温を避けるためにヒータ161をオフにする。
【0041】
ファン制御部24は、第1温度取得部21または第2温度取得部22から入力された温度データに基づき、ファン164の動作を制御する。このファン164は、例えば、表示機構10を収容した筐体(不図示)内に設けられ、この筐体内の空気を排出することにより、外気を筐体内に取り入れて表示機構10(特には第3表示素子106B)を冷却するための排気ファンである。ファン制御部24は、上記した加熱制御部23と同様に、第3表示素子106Bに電源が供給されていないときには、温度センサ162の検出データを使用し、第3表示素子106Bに電源が供給された後は、温度センサ162に代えてバンドギャップ型の温度センサ163の検出データを使用する。
【0042】
ファン制御部24は、第1温度取得部21または第2温度取得部22から入力された温度データが、第1温度よりも高い第2温度に達すると、ファン164を動作させる制御を行う。これにより、第3表示素子106Bの温度が過剰に上がることを防止できる。本実施形態では、ヒータ161をオフさせる第2温度に達すると、ファン164を動作させる構成としたが、ファン164を動作させる温度は適宜変更してもよい。
【0043】
次に、制御部におけるヒータの制御動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る制御部の動作の手順を示すフローチャートである。
図4は、
図3の温度データを取得するステップの動作の手順を示すフローチャートである。
図5は、環境温度に対する素子温度の変化状態の一例を示す図である。
【0044】
図3に示すように、制御部12は、第3表示素子106Bの温度データを取得する(ステップS10)。具体的には、制御部12は、第1温度取得部21または第2温度取得部22により、第3表示素子106Bの温度データを取得する。温度データを取得するにあたり、制御部12は、
図4に示すように、第2温度取得部22により、第3表示素子106Bに電源が供給されているか否かを判定する(ステップS20)。本実施形態では、制御部12の第2温度取得部22は、バンドギャップ型の温度センサ163から温度データの入力があるか否かを判定し、この温度センサ163から温度データの入力が無い場合には、第3表示素子106Bに電源が供給されていないと判定する。第2温度取得部22は、第3表示素子106Bに電源が供給されていない旨の判定結果を加熱制御部23およびファン制御部24に出力することが好ましい。なお、電源供給の有無を判定する手段を別途設けてもよいことは勿論である。
【0045】
この判定において、第3表示素子106Bに電源が供給されていない場合(ステップS20;No)には、制御部12は、第1温度取得部21により、温度センサ162が検出した第3表示素子106Bの温度データを取得する(ステップS21)。また、この判定において、第3表示素子106Bに電源が供給されている場合(ステップS20;Yes)には、制御部12は、第2温度取得部22により、バンドギャップ型の温度センサ163が検出した第3表示素子106Bの温度データを取得する(ステップS22)。取得された温度データは、加熱制御部23およびファン制御部24にそれぞれ出力される。
【0046】
再び
図3に戻り、制御部12は、取得した温度データが所定の第1温度t1以下であるか否かを判定する(ステップS11)。より詳しくは、制御部12は、加熱制御部23により、取得した温度データが所定の第1温度t1以下であるか否かを判定する。この判定において、取得した温度データが所定の第1温度t1以下でない場合(ステップS11;No)、制御部12は、処理をステップS13に移行する。
【0047】
一方、取得した温度データが所定の第1温度t1以下である場合(ステップS11;Yes)、制御部12は、加熱制御部23により、ヒータ161をオン(動作)させる制御を行う(ステップS12)。ここで、ヒータ161がすでにオンされている場合には、その状態を維持したまま処理をステップS13に移行する。この制御により、ヒータ161が作動するため、ヒートシンク160を介して、第3表示素子106Bが動作に適切な温度まで均一に温められる。このため、例えば投影表示装置100使用開始時においても、第3表示素子106Bの温度を早急に動作に適切な温度まで温めることができ、使用開始時のフリンジの発生の迅速に抑制することができる。
【0048】
次に、制御部12は、取得した温度データが第1温度t1よりも高く設定された第2温度t2に達したか否かを判定する(ステップS13)。より詳しくは、制御部12は、加熱制御部23により、取得した温度データが第1温度t1よりも高く設定された第2温度t2に達したか否かを判定する。この判定において、取得した温度データが第2温度t2に達していない場合(ステップS13;No)、制御部12は、処理をステップS10に戻す。
【0049】
一方、取得した温度データが第2温度t2に達している場合(ステップS13;Yes)、制御部12は、加熱制御部23により、ヒータ161をオフ(停止)させる制御を行う(ステップS14)。さらに、制御部12は、ファン制御部24により、ファン164を動作させる制御を行い(ステップS15)、処理を終了する。これらの制御により、第3表示素子106Bの温度が過剰に上がることを防止できるとともに、
図5に示すように、第3表示素子106Bの素子温度を、ほぼ第2温度t2に保持することができる。このため、投影表示装置100は、フリンジが抑制された安定画像を表示することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る投影表示装置100は、青色の波長帯の光を照射する光源101と、赤色、緑色、および青色にそれぞれ対応して配置され、各色に対応する画像光を生成する第1表示素子106R、第2表示素子106G、第3表示素子106Bと、少なくとも青色に対応した第3表示素子106Bの背面にヒートシンク160を介して配置されたヒータ161と、ヒートシンク160に設けられた温度センサ162と、を含み、光源101は、発振波長の異なる複数のグループの青色レーザ光源を有し、温度センサ162の検出温度が所定の第1温度t1よりも低い場合には、ヒータ161を動作させる加熱制御部23を備える。この構成よれば、第3表示素子106Bの温度分布を減らした状態で、この第3表示素子106Bを適切な温度まで温めるとともに、レーザの発振波長を複数にすることで異なったフリンジの状態を重ね合わせることができ、フリンジを抑制することができる。これにより、投影表示装置100は、使用可能となるまでの時間を短縮させることができるとともに、フリンジが抑制された安定画像を表示することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る投影表示装置100において、光源101は、発振波長の異なる3つのグループの第1青色レーザ光源101α、第2青色レーザ光源101βおよび第3青色レーザ光源101γを備える。この構成によれば、発振波長の違いにより、フリンジの間隔や山谷の位置が変わるため、特に青色画像のフリンジが低減される。
【0052】
また、本実施形態に係る投影表示装置100において、複数のグループの発振波長は、それぞれ少なくとも10(nm)異なっている。この構成によれば、フリンジの発生を効果的に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態に係る投影表示装置100において、ヒータ161が配置された第3表示素子106Bは、バンドギャップ型の温度センサ163を含み、加熱制御部23は、第3表示素子106Bに電源が供給されていないときには、温度センサ162の検出データを使用し、第3表示素子106Bに電源が供給された後は、温度センサ162に代えてバンドギャップ型の温度センサ163の検出データを使用する。この構成によれば、第3表示素子106Bの温度を直接、かつ正確に測った検出データを使用することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る投影表示装置100において、加熱制御部23は、温度センサ162またはバンドギャップ型の温度センサ163の検出温度が第1温度t1よりも高く設定された第2温度t2に達するとヒータ161の動作を停止する。このため、第3表示素子106Bの温度が過剰に上がることを防止できるとともに、第3表示素子106Bの素子温度を、ほぼ一定温度に保持することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
10 表示機構
12 制御部
21 第1温度取得部
22 第2温度取得部
23 加熱制御部
24 ファン制御部
100 投影表示装置
101 光源
101α 第1青色レーザ光源
101β 第2青色レーザ光源
101γ 第3青色レーザ光源
106R 第1表示素子(赤色に対応する液晶表示素子)
106G 第2表示素子(緑色に対応する液晶表示素子)
106B 第3表示素子(青色に対応する液晶表示素子)
160 ヒートシンク
161 ヒータ(加熱部)
162 温度センサ(第1温度センサ)
163 温度センサ(第2温度センサ)
164 ファン
t1 第1温度
t2 第2温度