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特開2024-88303中古携帯端末のグレーディングのための工程
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088303
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】中古携帯端末のグレーディングのための工程
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20230101AFI20240625BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240625BHJP
   G06F 11/36 20060101ALI20240625BHJP
   G06Q 30/0283 20230101ALI20240625BHJP
【FI】
G06Q30/02 450
G01N21/88 Z
G06F11/36 188
G06Q30/0283
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203406
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】519280025
【氏名又は名称】株式会社CDRエコムーブメント
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】関口 利宏
(72)【発明者】
【氏名】石坂 正宏
(72)【発明者】
【氏名】今井 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】原田 望
【テーマコード(参考)】
2G051
5B042
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051AC21
2G051CA04
2G051DA03
2G051EC01
5B042HH49
5L030BB01
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】
商品化する中古端末の性能検査と外観検査をして得られる検査データに基づいて、検査工程が完了した端末を自動的にグレーディング(等級付け、又はランク付け)するための工程。
【解決手段】
性能検査機構10pmから得られ性能検査データ、及び外観検査機構10exから得られる外観検査データを、検査記録サーバを含むデータ処理部に取り込む。前記データ処理部は、取り込んだ性能検査データ及び外観検査データを、当該データ処理部が備える前記各検査に関する基準データと夫々に比較処理して評価値のデータを求め、その評価値のデータをランク付用の評価データに形成して出力する。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の識別子が付与された中古携帯端末(以下、「端末」という。)の複数台を1台毎に商品化するために、前記端末が備える部品の動作と機能についての性能の良否に関する性能検査、及び当該端末の外観の良否に関する外観検査を行い、夫々の検査によって得られる検査結果に基づいてランク付けを行うグレーディングのための工程であって、
前記性能検査と外観検査は、
前記端末を1台毎に収容する検査空間と、この検査空間が備える検査装置であって検査制御部に格納された検査プログラムにより作動が制御される検査装置とにおいて実行され、
前記検査装置は、
前記検査空間に収容した前記端末を空中で回転可能に保持する支持ロボットを含む支持機構と、
保持した前記端末が備えるスピーカ、マイク、画面、カメラ、フラッシュ、操作ボタンを含む各部品の夫々の動作と、当該端末のバイブレーション、モーション、ブルートゥース(登録商標)通信、Wi-Fi、コネクタの夫々の機能とを検査するために、測定用マイク、測定用スピーカ、測定用検出器、及び測定用カメラを含む検査手段を備える性能検査機構と、
保持した前記端末の6面、及び四角形外周の4つの角部外面を夫々の面毎に撮影する前記測定用カメラを含む外観検査機構と、
前記性能検査機構と前記外観検査機構から出力される各検査データを取り込んで必要な処理を行う前記検査制御部が検査記録サーバとデータ処理部を備えており、
当該検査装置の前記性能検査機構と外観検査機構とが、前記支持ロボットに支持された端末の各部品の動作と各機能についての性能検査と外観検査とを実行するとき、
前記性能検査機構から出力される各部品の動作と各機能に関する性能検査データ、及び前記外観検査機構から出力される外観検査データを、前記検査記録サーバを通してデータ処理部に取り込み、
前記データ処理部は、取り込む性能検査データ及び外観検査データを、当該データ処理部が備える前記性能検査及び外観検査に関する基準データと夫々に比較処理し評価値を求め、その評価値をランク付用の評価データに変換し、前記評価データの大きさによって前記端末のランク付を行うために出力する、中古携帯端末のグレーディングのための工程。
【請求項2】
前記端末の外観検査は、その端末を前記検査空間内で前記支持ロボットにより空中に保持させ、
前記端末の表面と裏面(以下、表面をa、裏面をbという)、左側面と右側面(以下、左側面をc、右側面をdという)、上端面と下端面(以下、上端面をe、下端面をfという)、上端面の左右の角部外面(以下、上左角部外面をg、上右角部外面をhという)と下端面の左右の角部外面(以下、下左角部外面をi、下右角部外面をjという)による各組の面(以下、aとb、cとd、eとf、gとh、iとjという)の各面を、夫々に前記測定用カメラに対面させて当該測定用カメラで撮影し、
前記データ処理部が、前記測定用カメラによる当該端末の各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに、夫々の撮像データをこの端末の識別子と紐付けて取り込み、取り込んだ撮像データを当該データ処理部の判別用データで処理して前記端末の各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに外見上の傷の位置と程度のデータ(以下、傷のデータという。)を作成して検出値とし、
更に前記データ処理部は、前記傷のデータの検出値を、前記端末の各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)の夫々の傷について予め設定されている設定評価値に参照して実際評価値を求め、当該各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに得られた前記実際評価値を合算して得られる全体評価値を当該端末のランク付用の評価データに変換し、前記評価データが示す全体評価値の大きさに拠って当該端末に外観グレードのランク付けを行うための出力をする、
請求項1のグレーディングのための工程。
【請求項3】
前記測定用カメラは、その対物レンズを、前記検査空間内で空中に支持ロボットにより保持されている端末に向け、当該検査空間における垂直面内において、当該対物レンズの光軸を垂直向きから左右に45度の角度に位置決めできるように配置する、
前記端末は、その長手方向に平行な軸を第1回転軸として、水平姿勢又は垂直姿勢を第1姿勢とし、第1姿勢から90度回転を同じ方向に3回させて4回の位置決めを行い、各位置決め点で前記端末のaとb、及びcとdを、前記光軸を垂直にした測定用カメラで撮影し、
次いで前記第1回転軸に直交する軸を第2回転軸として一方向に90度、他方向90度回転して夫々に位置決めを行い、2つの位置決め点でこの端末の前記eとfを、前記光軸を垂直にした測定用カメラで撮影し、
さらに、前記端末を、前記第1回転軸により垂直姿勢にする1回目の位置決め時と、その垂直姿勢から180度回転した逆垂直姿勢にする2回目の回転位置決め時の夫々において、前記カメラを垂直面内で左45度と右45度に傾斜位置決めして、当該端末の前記gとh及びiとjを撮影する、
請求項2のグレーディングのための工程。
【請求項4】
前記測定用カメラの撮像データから前記データ処理部が形成する前記端末の傷データの検出値は、当該端末の各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)の夫々の面について、傷の位置、傷の大きさ(長さ、面積)、傷の数に対応するデータで形成されている請求項2又は3のグレーディングのための工程。
【請求項5】
前記測定用カメラの撮像データから前記データ処理部が形成する前記端末の傷データの検出値は、前記aとb、cとd、eとfの夫々の面については、傷の位置が中央部であるか又は周辺部或は端部を示すデータで形成され、前記gとh、iとjの各面については傷の有無を示すデータで形成される請求項4のグレーディングのための工程。
【請求項6】
前記データ処理部から出力されるランク付け用の評価データは、当該端末に紐付けられた前記性能検査の結果データと前記外観検査の結果データとを処理して形成される評価値データである請求項1又は2のグレーディングのための工程。
【請求項7】
前記データ処理部には、前記データ消去部で得られる夫々の消去端末について、ロック機能の設定が有効か無効かの確認、及び充電機能の劣化の有無等に関する評価データが前記消去端末の夫々に紐づけられて格納されており、前記性能検査、外観検査の評価データと一緒に前記消去端末の夫々の評価データに形成する請求項1又は2のグレーディングのための工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中古携帯端末(以下、中古端末、又は端末ともいう。)を再生して商品化する工程において、商品化のための検査が完了した中古端末に商品としての等級付け(以下、グレーディング、又はランク付ともいう。)を行うグレーディングのための工程、具体的には主として検査工程に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、中古品として買取ったスマートフォンなどの携帯電話等の中古端末を再生して商品化する(以下、商品化という。)ことが行われており、商品化に関する業務について有用と思われるアイデアが特許文献1~3等により提案されている。しかし、特許文献1~3は、商品化工程におけるグレーディング手法についての言及はない。
【0003】
中古端末の商品化の一般的な工程の概要を図19の工程模式図により説明する。図19の各工程において中古端末は、基本的に人手により各工程の作業が実行される。
始めに中古端末は商品化工程へ「入庫」される。入庫した端末から商品化できない端末を排除する等の粗選別をして再生対象とする端末を「受入」れる。受入れた再生対象の端末は、各端末に残る残留データを「消去」する。
次に、残留データが完全に消去された端末は、その端末が備えている端末としての機能が十全であるかどうかの「機能検査」と、機能検査が済んだ端末の外観について傷の付き具合や程度を検査する「外観検査」とを人的作業で行い、前記機能検査と外観検査の結果に基づき、各端末に再生商品としてのグレード(等級)を担当作業員が付与する(「グレーディング」)。グレーディングによりグレード(等級)別等の分類基準によって分類された端末(以下、再生端末という。)を「在庫棚」に保管し、買取り業者からの注文を受けている。
【0004】
再生端末について、複数の買取り側(発注者)からの注文(受注)があると、各発注者毎に、夫々の注文内容に沿った個々の再生端末を個装し、個装した各端末を各発注者向けに「梱包」し、各梱包毎に「封緘」を施して「出荷」している。
上記の「入庫」、「受入」、「消去」、「機能検査」、「外観検査」、「グレーディング」、「在庫棚」、「梱包」、「封緘」、「出荷」による各工程の拠点は、基本的にベルトコンベアBCで接続されており、各ポイントには、図示しないが、一例として作業台、仮置き棚、必要な工具や道具等が備えられ、各拠点担当の作業員が少なくとも1名ついている。
【0005】
従来の中古端末の商品化の各工程においては、殆どの作業が担当作業員の人手による人的作業であるため、作業員が異なることによって作業精度に差が生じるという問題がある。
【0006】
特に、作業員がデータ消去装置を利用して行うデータ消去が済み、作業員が検査機器や検査装置を用いて行う機能検査や外観検査が完了した端末は、その後にグレーディング工程があるが、この工程は、端末についての検査結果のデータや当該端末自体を作業員が肉眼で見てグレードの評価を判断するという、作業員の主観的判断による作業であるため、作業員の経験差や熟練度の差などによってグレーディング評価が一定しない、或いは不安定という難点がある。
【0007】
上記のような従来の中古端末の商品化工程の問題点に関して、機能検査や外観検査を、自動検査装置を用いて人手によらず自動的に検査を行う手法も提案されている。
【0008】
しかし乍ら商品化される中古端末の機能検査や外観検査が自動化されるだけでは、検査が完了した端末のグレーディングや等級付け(ランク付け)を自動化しなければ、中古端末の商品化工程の全自動化には至らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2016-35758号公報
【特許文献2】特許第5820461号公報
【特許文献3】特許第4171453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、商品化する中古端末の残留データが完全に消去できているかの検査(以下、消去検査ともいう。)、及び当該端末の機能や性能についての検査(以下、性能検査という。)と外観検査を、自動的に実行して得られる検査データに基づいて、検査工程が完了した端末を自動的にグレーディング(等級付け、又はランク付け)するための工程を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決を目的としてなされた本発明は、以下の構成を備える。
【0012】
個別の識別子が付与された複数台の中古携帯端末(以下、「端末」という。)を商品化するために、前記端末が備える部品の動作と機能についての性能の良否に関する性能検査(以下、機能検査ともいう。)及び当該端末の外観の良否に関する外観検査を行い、夫々の検査によって得られる検査結果に基づいて自動的にランク付け(グレーディング)を行うための工程であって、
前記性能検査と外観検査は、前記端末を1台毎に収容する検査空間と、この検査空間が備える検査装置であってコンピュータに格納されている検査プログラムにより作動が制御される検査装置とにおいて実行され、
前記検査装置は、前記検査空間に収容した前記端末を空中で回転可能に保持するロボットハンド(端末ホルダともいう。)を含む端末支持機構と、保持した前記端末が備えるスピーカ、マイク、画面、カメラ、フラッシュ、操作ボタンを含む各部品の夫々の機能や性能と、当該端末のバイブレーション、モーション、ブルートゥース(登録商標)通信、Wi-Fi、コネクタの夫々の機能や性能を検査するために、測定用マイク、測定用スピーカ、測定用検出器、及び測定用カメラを含む検査手段を備える性能検査機構と
保持した前記端末の6面、及び四角形外周の4つの角部外面を夫々の面毎に撮影する前記測定用カメラを含む外観検査機構と、前記性能検査機構と前記外観検査機構から得られる各検査データを取り込んで必要な処理を行う前記コンピュータの検査記録サーバを含むデータ処理部とを備えており、
当該検査装置の前記性能検査機構と外観検査機構とが、前記ロボットハンドに保持された端末の各部品の機能や性能についての性能検査と外観検査とを実行するとき、前記性能検査機構から得られる各部品の性能や各機能に関する性能検査データ、及び前記外観検査機構から得られる外観検査データを、前記データ処理部に取り込み、前記データ処理部は、取り込む性能検査データ及び外観検査データを、当該データ処理部が備える前記各検査に関する基準データと夫々に比較処理して評価値データを求め、その評価値データをランク付用の評価データとして出力するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、中古端末に対する性能検査と外観検査とを自動検査装置に実行させ、この自動検査装置に得られる当該端末の検査データを処理して形成する端末のグレーディングのための評価値を、ランク付け用の評価データに形成するから、得られる各端末の評価データによって当該各端末のランク付け(グレーディング)を自動的、又は機械的に行うことが可能になる。よって、ランク付けの評価にブレがなく安定したグレーディングを行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用する中古端末の商品化工程のレイアウトを模式的に示した平面図。
図2】端末のボトムスピーカ(メインスピーカ)の検査を説明するための説明図。
図3】端末のトップスピーカ(レシーバスピーカ)の検査を説明するための説明図。
図4】ヘッドセットスピーカを通して端末コネクタのスピーカ機能を検査するための説明図。
図5】ヘッドセットマイクを通して端末コネクタのマイク機能を検査するための説明図。
図6】端末のマイクロホンの検査を説明するための説明図。
図7】端末画面のタッチ機能の検査を説明するための説明図。
図8】端末画面の表示機能の検査を説明するための説明図。
図9】端末カメラの機能検査を説明するための説明図。
図10】端末の両サイドのボタンとホームボタンの押下機能の検査を説明するための説明図。
図11】端末フラッシュの機能検査を説明するための説明図。
図12】端末のバイブレーション機能の検査を説明するための説明図。
図13】端末のモーションセンサの機能の検査を説明するための説明図。
図14】端末のブルートゥース(登録商標)機能の検査を説明するための説明図。
図15】端末のコネクタの機能検査を説明するための説明図。
図16】端末が備える近接センサが正常に作動できるかの性能検査の概要の説明図。
図17】端末が備える環境光センサが正常に作動するか否かを検査する概要の説明図。
図18】端末の外観検査の概要を説明するための説明図。
図19】公知の中古端末の商品化工程を模式的に示した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図を参照して本発明の実施の形態例について説明する。
図1は、本発明グレーディング工程を適用する中古端末の商品化工程を模式的に示した工程レイアウトである。
【0016】
図1に示す本発明の商品化工程では、図の左側の下方において、識別コードの一例としてQRコード(登録商標)を貼付してトレイ1に積載された中古端末Tが、図1の左方から右方へ向けて走行する搬入コンベア2により搬送されて受取3に到着する。各端末の識別コードは、後述するコンピュータが備える制御部の管理コードに紐付けされてデータベースに格納されている。
【0017】
受取3では、到着したトレイ1の中の各端末Tを別設のカメラ(図示しないが、受取3の上部に配置した2つのカメラと後述する6軸ロボット7の端末保持部8が備えるカメラ)で撮像し端末Tの長さ方向両端の位置やロボットハンドまでの距離等を撮像データに基づいて確認し、確認ブース4では端末保持部8が備えるカメラによる端末Tの撮像データと、データベースの格納データとを照合し、データ不一致など何らかの理由によりエラーと判断された端末Tを、前記搬入コンベア2と平行に隣接した搬出コンベア5に載せて受入れ部(図示せず)へ戻す。一方で、商品化可能と判定された端末Tはハンドリングロボット(6軸ロボット7)により次工程のデータ消去部6に搬送される。
【0018】
図1において、前記搬入コンベア2と搬出コンベア5の上方には、データ消去部6(消去ステーション6ともいう。)が、図1では、一例として端末Tの12台をセットできる12基の端末セット台6aを備える形態で配置されている。端末セット台6aを何基設けるかは任意である。なお、消去ステーション6は、図1では平面的に示されているが、スペース効率等を考慮すると、垂直姿勢で配置される。また、消去ステーション6は、前記搬入コンベア2と搬出コンベア5の配置の向きに対し、当該ステーション6の正面を直交させた向きで配置することもできる。
【0019】
消去ステーション6の端末セット台6aは、後述する6軸ロボット7の第1アーム7aが備える負圧空気で端末Tを吸着保持する端末保持部8(エア保持部8ともいう。)に保持された端末Tを、当該エア保持部8から受け取り、その端末Tを保持する端末支持部9を備える。端末支持部9は、磁力などを利用して開閉する機械式保持機能で端末Tを保持し、その保持を解除できるようになっている。
【0020】
12基の端末セット台6aの各端末支持部9にセットされた12台の端末Tでは、各端末Tに残留しているデータが、図示していない消去ヘッドに各端末Tが接続されることにより消去される。なお、消去ステーション6の各端末セット台6aでは各端末Tに残留データが残っているか否かを、消去ヘッドを通して制御部で確認し、残留データが完全消去された端末Tと、消去されない端末とを判別している。この判別結果は、各端末Tに紐付けられて後述する6軸ロボット7の制御部(第1制御部)に供給される。
【0021】
図1において、搬入コンベア2、搬出コンベア5、及び確認ブース4が形成する配置列と、消去ステーション6の側面(又は正面)がなす狭角の間には、図2に例示する6軸ロボット7が第1ハンドリングロボットとして配置されている。
【0022】
6軸ロボット7の先端アーム7a(以下、第1アーム7a)には、端末Tを空気の吸引力で吸着して保持する第1端末保持部8(以下、エア保持部8ともいう。)が設けられている。
【0023】
6軸ロボット7の第1アーム7aのエア保持部8では、搬入コンベア2のエンド部(受取3)に集積されて商品化可能と判別された端末Tを、1台毎エア保持部8で保持して、消去ステーション6の端末セット台6aに搬送し(第1搬送工程)、各端末セット台6aにセットする(データ消去部セット工程)。
【0024】
データ消去部セット工程において、各端末セット台6aは、6軸ロボット7の第1アーム7aに保持された端末Tが運ばれてきて当該セット台6aに当接すると、それを電気式、電子式、磁気式、或いは機械式のいずれかの方式によるセンサ(図示せず)で検知し、当該セット台6aが備える端末支持部9を開状態(受入状態)から閉状態(保持状態)に切替える。このセンサの動作、端末支持部9の動作は、6軸ロボット7の制御部(第1制御部)に連繋された中央制御部により制御される。
【0025】
端末Tを保持した端末セット台6aでは、消去ヘッドがその端末Tに接続される端末セット台6aへの端末Tのセットにおいて、端末Tの認識が出来ない、接続コネクタが見つからない、端末Tが予定外の機種、6軸ロボット7に異常がある等の理由によって、端末Tのセットが出来ない場合、当該端末Tは装置エラーの端末Tとして搬出コンベア5に6軸ロボット7で運ばれて載置される。
消去ヘッドは、装置エラーのないセットされた端末Tの残留データを消去する(データ消去工程)。各端末セット台6aで残留データの消去処理が終了すると、消去ヘッドの消去機能が解かれ、続いて当該消去ヘッドが残留データ存否の確認ヘッドとして機能する。
これにより各端末Tは、残留データが消去されているか否かがチェックされる。(残留データの消去検査工程)。なお、各消去端末Tについては、データ消去ソフトによってロック機能の設定が有効か無効かの確認、充電能力の劣化の有無等が判定され、これらの判定結果のデータが各消去端末Tに紐付けされてデータ処理部を含む検査記録サーバに送られる。
【0026】
一方で、データ消去工程が終わった各端末Tについての残留データの存否をチェックする消去検査の結果は、判別データとして各端末Tに紐付けられて6軸ロボット7の第1制御部に供給される。第1制御部では、セットされている消去ステーション6の未消去端末Tと消去端末Tを分別して取出すために、第1アーム7aと、エア保持部8と、端末セット台6aの端末支持部9とに対する夫々の指令信号が形成される。
【0027】
前記指令信号によって、まず未消去端末Tの端末支持部9が開くので、第1アーム7aのエア保持部8によって未消去端末Tがその端末セット台6aから取出され、エラー判定された端末Tと同じように搬出コンベア5に載せられる。(データ消去部取り出し工程)。
【0028】
次に、前記指令信号により、残留データが消去された消去端末Tが端末セット台6aから第1アーム7aとエア保持部8によって取出され、次の検査部10へ搬入するための搬入コンベア11に置かれる。(データ消去部取り出し工程、検査部搬入工程)
なお、搬入コンベア11は消去ステーション6が備えるが、検査部10が備えていてもよい。
【0029】
本実施形態では、消去端末の取り出し工程と検査部への搬入工程の間に、端末Tのカメラ部を保護していた保護フィルム(図示せず)を剥離除去するフィルム除去機構による除去工程FXと、保護フィルムを剥がした後に当該端末Tを反転させる反転機構による反転工程TRとが配置されている。
【0030】
反転工程TRがある理由は、端末Tは保護フィルムの除去工程Fxでは、背面を上向きにしているが、検査部10では端末Tの画面を上向きにして搬入するため,反転させる必要があるからである。
【0031】
保護フィルムの剥離除去は図示していないフィルム剥離機構が実行し、端末Tの反転は、第1アーム7のエア保持部7aが保持している端末Tを反転台(反転機構)に移すと、その反転台の上で反転させられる。
【0032】
検査部10は、内部の残留データが消去された端末T(消去端末T)が備える諸機能を、当該端末Tに配置されたカメラ、スピーカ、スイッチ、センサ等によるの装備品の機能などを自動的に検査するように構成された性能検査部10pmと、当該端末Tの外観の状態(傷の有無や傷の程度など)を検査カメラの撮像データに基づき自動的に調べる外観検査部10exと、これらの自動検査部が配置されたハウジング状の検査空間と、前記両検査部の動作を制御し、検査データを管理コードに紐づけられた端末Tごとに検査記録サーバに収集しデータ処理部で処理して出力する検査制御部とを備えている。
【0033】
検査部10の搬出コンベア12の近傍には、第2ハンドリングロボットとしてスカラロボット13が配置されている。このスカラロボット13は、その先端アームを第2アーム13aとして第2端末保持部14を備えている。なお、本発明では第2ハンドリングロボットに、スカラロボット13に代え6軸ロボットを使用することもある。
【0034】
以上に説明した中古端末の商品化工程において、検査部10で実行される検査工程は、機能・性能を検査すると性能検査と外観検査である。以下に性能検査と外観検査の概要について説明する。
【0035】
上述したように検査部10の検査空間は、検査装置として性能検査機構10pmと外観検査機構10exとを備える。
【0036】
性能検査機構10pmは、検査対象の端末Tにインストールされる検査アプリケーションソフト(以下、「検査アプリ」又は「アプリ」という。)と、前記「検査アプリ」を制御する検査記録サーバを含む「制御装置」(後に説明する図2図15では単に「装置」又は「CC」と表示する。当該「装置」又は「CC」は、先に説明した6軸ロボット7、データ消去部6,スカラロボット13等の制御部とは別の検査制御部である。)と、この制御装置に制御される、端末Tを空中で保持して前後左右に回転自在に支持するロボットハンドSH及びFHと、以下で述べる測定用の機器や測定用機材を備える。なお、ロボットハンドSHとFHは、説明の便宜のため図16では2基を示しているが、1基の6軸以上の多軸ロボットによる一つのロボットハンドを用いてもよい。
【0037】
前記測定用の機器や機材は、端末Tが備える複数のスピーカから夫々に発される音声周波信号を夫々に収録する「測定用マイクTM」、端末のスピーカによるマイクロホン(マイク)に音声周波信号を放射する「測定用スピーカTS」、端末画面(ディスプレイともいう)のタッチ機能を、当該画面の全域に対して実行するための導電式又は静電容量式の「タッチ機構Tr」(タッチバーTr又はタッチペンTrともいう。)、画面Dsの表示機能(色を含むディスプレイ機能)を観測するため、及び端末Tの備えるフラッシュの機能を検査するための「測定用カメラTC」、端末Tが備えるカメラのカメラ機能を検査するための「テストチャート被写体Tch」、端末Tが備える物理ボタン(例えばスリープボタン)bt1、サイドボタン(例えば音量ボタン)bt2の機能を当該ボタンbt1,bt2を押して検査するための「ボタン押しロッドTp」、端末Tが備えるバイブレーション機能を検査するための「振動検出センサVs」を備える。
【0038】
さらに、ロボットハンドFH又はSHで端末Tの向きを変更させ画面Dsの表示の向きが変わるかの検査、ブルートゥース(登録商標)機能の有効性の検査、端末Tが備える充電用等のコネクタが機能するか否かの検査等の複数の検査行うが、この性能検査と、前記測定用機材を用いた性能検査は、前記「制御装置」によって制御される。
【0039】
次に、性能検査機構10pmにおける検査の概要を図2図15により説明する。
【0040】
検査部10の検査空間に搬入された検査アプリを搭載する端末Tは、性能検査機構10pmの概要の一部を示す図18に例示するロボットハンドFH又はSHにより空中に回転自在に保持され(図18参照)、当該端末Tの所用の面(部位)が、制御装置に接続された測定用機材の所定のものと対峙又は対面される。先にも述べたが検査する端末Tを保持するロボットハンドは、例えば6軸以上の多軸ロボット1基によるロボットハンドでもよい。
【0041】
検査に先立ち端末Tにインストールされている検査アプリと検査機構の制御装置は、Wifi接続の確認動作を検査前に実行し、検査アプリと制御装置の連繋を確認して連繋されていることを確認できたら検査をスタートする。
【0042】
すべての検査が完了すると、制御装置は夫々の検査結果を、当該端末Tに紐付けて各検査項目ごとの検査データとして検査記録を検査記録サーバへ転送し記録する。以下に、夫々の性能検査について説明する。
【0043】
まず、端末Tが備えるスピーカやマイク等のオーディオ関係について検査する。
図2によりロボットハンドSHで正立させた端末Tの底部側のスピーカms(ボトムスピーカ、メインスピーカともいう)の性能検査の概要を説明する。
制御装置に接続された測定用マイクTMが端末のボトムスピーカmsに接近させられる。制御装置からの指令信号で端末Tの検査アプリにより、ボトムスピーカmsからオーディオサンプル(音声周波信号)を再生させる。
ボトムスピーカmsの再生音は測定用マイクTMで収録し、制御装置の検査記録サーバでこの収録音を分析する。分析では、収録音の周波数スペクトルを検出する。周波数スペクトルはS/N比算出用にも用いる。
【0044】
図3は、端末Tのトップスピーカrs(レシーバスピーカともいう。)の性能検査の概要を示しており、図2の例とはスピーカの位置が異なるのみで検査形態、検査データの扱いは、図2のボトムスピーカmsの場合と同様である。
【0045】
図4及び図5は、ヘッドセットHSを通して端末Tのスピーカが機能するか、或は端末Tのマイクが機能するかの検査の概要を示したものである。
図4において、端末Tのボトムのコネクタcnに、ヘッドセットHSのジャックjaを差し込む。ヘッドセットHSとそのジャックjaは、制御装置が測定用機材の一つとして備えており、ジャックjaはロボットハンドFHで端末Tのコネクタcnに接続される。
【0046】
図4でジャックjaのコネクタcnへの差し込みが検査アプリで確認されると、制御装置は端末TからヘッドセットHSにオーディオサンプルを送りヘッドセットスピーカspに再生させる。
ヘッドセットスピーカspの再生音は、先に述べた端末Tのスピーカ検査で用いた測定用マイクTMによって収録される。収録音の分析は、先の端末スピーカの場合と同じであるから省略する。
【0047】
図5は、ヘッドセットHSを通して端末Tのマイクが機能するかのコネクタ部分の検査の概要を示しており、ヘッドセットHSのジャックjaが端末Tのコネクタcnに差込まれると、制御装置は保有している測定用の音声周波データ(サウンドカード)を駆使して測定用スピーカTSから再生音を放射させる。
測定用スピーカTSから出る再生音は、ヘッドセットマイクmcに拾われ端末に録音される。検査アプリにより端末Tは録音した音を制御装置の検査記録サーバに転送する。制御装置の検査記録サーバのデータ処理部では、記録した音声周波数のファイルを分析する。分析は、ファイルされた音声の周波数スペクトルの検出であり、検出データは、S/N比の計算にも用いることができる。
【0048】
図6は、端末Tのトップスピーカrsをマイクロホンとして機能させるときの性能検査の概要を示している。
制御装置は、ヘッドセットHSの機能検査で用いたサウンドカードを用いて測定用スピーカTSから検査用の再生音を出す。この再生音は、端末Tのマイクロホン(先のトップスピーカrS)で録音する。端末Tに録音された音は端末Tのメインスピーカmsから再生し測定用マイクTMで収録し、その録音データを制御装置の検査記録サーバに転送する。制御装置の検査記録サーバのデータ処理部では、記録された録音データの周波数スペクトルを分析して端末TのマイクrS性能を検査する。検査データはS/N比の計算にも用いる。
【0049】
以上のスピーカとマイクロホンの性能検査の評価は、測定用マイクTMで収録した端末スピーカからの音声周波データ、或いは端末Tが録音した測定用スピーカTSの音の音声周波データについて、検出した音圧レベル/振幅を基準レベルと比較し、基準レベルに対する割合の多寡によって性能の良否を決める。なお、収集して累積した測定データは基準レベルの調整の要否判断の基礎にする。
【0050】
次に、端末Tの画面Ds(ディスプレイDsともいう。)の性能検査について説明する。端末Tの画面Dsは、その全域がタッチパネルとして機能すると共に、様々な動画や静止画のフルカラー表示画面、文字や記号等の表示画面として機能する。
【0051】
図7は、端末Tの画面Ds全域がタッチパネルとしても機能するかどうかの検査の概要を示す。制御装置は方眼状に区画した端末画面Dsに対し方眼状区画(グリッドgr)に沿って規則的に移動させるようにした測定用機材としての導電式又は静電容量式のタッチ機構によるタッチロッドTr(以下、ロッドTrという)を備えている。
【0052】
制御装置は、前記ロッドTrを画面Dsのスタート点(作業開始位置)に位置決めする。端末Tの検査アプリが端末画面Dsの上に方眼状の区画(各グリッドgr)を表示する。制御装置によって前記ロッドTrが1つのグリッドgrの上でX方向とY方向に接近駆動されることにより、そのグリッドgrをペイントする。このペイント作業を全てのグリッドgrに対し実行する。画面Ds全域のペイントが完成すると、検査アプリが検査は合格と判別してそのデータを検査記録サーバに送る。
【0053】
ペイントされないグリッドgrがあった場合には、検査アプリがロッドTrに個別に再ペイント動作をさせ、ペイントできるかどうかを判別し、再ペイントできたか否かを、その位置データと共に当該端末TのタッチロッドTrによる検査データとして制御装置の検査記録サーバに送付する。
【0054】
図8は、画面Dsのディスプレイ機能検査の概要を示している。
制御装置は、端末Tの画面Dsに黒、白、赤、緑、青の色を順に切替えて表示させる。この表示の時、測定用カメラTCは、各色の画面表示を撮影し、各色ごとの画像データを制御装置の検査記録サーバに送る。
【0055】
制御装置では、画像データをグレースケールで処理し、AIによりディスプレイDsの表示に異常がないかを分析、判定する。なおディスプレイDsの表示異常の有無の分析、判定は、AIに拠らないコンピュータ利用の機械的分析及び機械的判定であってもよい。
【0056】
なお、ディスプレイDsの表示に関する検査では、ブレミッシュ分析で画面に表示シミがないか、或いは、バーンイン分析で画面Dsにアイコンやエッジの焼付きがないかを検出し、色合い解析で色変化の不具合を検出することもできる。
【0057】
図9は、端末Tが備える前後のカメラTc1,Tc2の検査の概要を示し、図11は端末Tが備えるLEDフラッシュライトTf(フラッシュTfともいう。)の検査の概要を示す図である。図10については図11の説明の後に述べる。
【0058】
図9では、制御装置が備える検査用の被写体Tch(セクタースターテストチャートTch、図9(c))に対し、図9(a)前面カメラTcf、図9(b)の背面カメラTcbが正対するように制御装置がロボットハンドSH又はFHが端末Tを移動させる。
制御装置は、端末Tを、その前面カメラTc1と背面カメラTc2でテストチャートTchの撮像できるようにロボットハンドSHに支持させ、端末Tに被写体Tchの撮像を実行させる。撮像した画像データは、検査アプリが制御装置の検査記録サーバに送り、制御装置のサーバで画像解析を行う。解析は画像の鮮明さを測定し、エラーを検出する。エラーか否かは、閾値により判別する。
【0059】
図11では、制御装置のロボットハンドSHが、端末TをそのフラッシュTfが測定用輝度センサBCに正対するように、輝度センサBCの前面へ移動させる。なお、図11(a)はフラッシュTfの正面図、同(b)は端末Tの側面図である。
検査アプリにより端末TのフラッシュTfのLEDを点灯させる。この点灯は輝度センサBCで検出される。輝度センサBCが取り込んだ光量が充分であるかどうかを制御装置の検査記録サーバのデータ処理部で解析する。なお、この検査では、フラッシュ光の色や精度の測定ではなく、フラッシュTfが機能するか否かの確認し、機能すれば合格、機能しなければ不合格と判定する。
【0060】
図10(a)(b)(c)は、端末Tが備える物理ボタンbt1とサイドボタンbt2とホームボタンの機能検査の概要を示す図である。なおホームボタンは画面Dsの下に配置されているため図10には表れない。
制御装置は、端末の物理ボタンbt1、サイドボタンbt2を押し下げるためのボタン押し機構による押しロッドTpを備えている。
制御装置のロボットハンドFHが保持している端末Tの側面に配置されているボタンbt1,bt2に対し、当該制御装置が備える押しロッドTpを、押下作業位置に移動させる。次に制御装置は、各ボタンbt1,bt2に対して押しロッドTpを1回押し下げ動作をさせる。
端末Tの検査アプリは、各ボタンbt1,bt2についてボタン押下げあったことを検出すると、その旨の信号を制御装置の検査記録サーバに送る。制御装置のサーバでは、各ボタンbt1,bt2の押下げ指令と検査アプリからの押下げ検知を処理し、ボタンbt1,bt2が正常動作したか否かを判別する。
なお、ボタンbt1又はbt2を押しても検査アプリがそれを検出できないままこの検査が終了する場合、再度検査アプリを起動してテストモードに戻してから再度ボタン押し下げをする。
図10(c)は、上記のボタンbt、btの検査において、ボタン押し操作で検査アプリが終了した場合、その検査アプリを再起動して端末Tを検査モードに戻すことを説明する図である。検査アプリの再起動は、画面Dsのタッチで実行できるから、図7の画面Dsの感知検査で使用したタッチペンTrを画面Dsにタッチさせて検査アプリを再起動させる。
このことから図10(c)のタッチペンTrは、画面Dsの下に配置されているホームボタンの機能検査にも用いられる。
【0061】
図12は、端末Tが備えるバイブレーション機能の検査の概要を示す図である。
制御装置は、端末の振動(バイブレーション)を検出する振動計測器Vs(振動センサVsともいう。)を備えている。制御装置のロボットハンドSHが保持している端末Tを振動計測器Vsに接触対面できる位置に移動させる。
制御装置が端末Tに振動エンジン(電磁バイブレータ)を起動させる指令を検査アプリ経由で送る。振動する端末Tの当該振動を振動計測器Vsが周波数で検出し、検出周波数を制御装置の検査記録サーバに送信する。検査記録サーバが受信した周波数信号をデータ処理部で解析し、一例として検出周波数が設定周波数を超えていれば合格、超えなければ不合格と判別する。
【0062】
図13は端末が備えるモーションセンサの機能を検査する概要を説明する図である。
制御装置のロボットハンドFHとSHに保持される端末Tを、正立姿勢の画面Dsを基準にして、(1)画面が水平上向き、(2)画面が水平下向き、(3)本体正立縦向き、(4)本体倒立縦向き、(5)本体横倒右向き、(6)本体横倒左向きの6方向の向きに動かし、夫々の向きで位置決めする。
端末Tは位置決めしたすべての向きにおいてモーションセンサから収集したデータを検査アプリを経由して制御装置の検査記録サーバに送る。検査記録サーバでは、送られてきたデータをデータ処理部で解析してモーションセンサの機能の良否を判別する。
【0063】
図14は、端末Tでブルートゥース(登録商標)が有効であるかの検査の概要を示す図である。制御装置がアプリで端末Tが備えるブルートゥース(登録商標)機能を有効にし、その機能が任意のブルートゥース(登録商標)デバイスを見つけたか否かを示す信号を検査アプリから検査記録サーバに送ってこの端末Tのブルートゥース(登録商標)の有効性を判別する。
【0064】
図15は、端末TのUSBと充電器の接続機能の検査概要を示す図である。なお、図15(a)は端末Tの側面、同(b)は端末Tの下面である。
制御装置は、端末Tのコネクタcnに装置のライトニングケーブルのプラグLpを挿入する。端末Tの検査アプリが前記プラグLpの挿入を検出したか否かを示す信号を検査記録サーバに送る。検査記録サーバがUSBデバイス又はチップが挿入されたことの検出があったか否かを確認する。USBデバイス又はチップの挿入が検出されれば、このコネクタcnはUSBデータと充電器の接続の両方が検査パスしたことを示す。
【0065】
図16は、端末Tが備える近接センサNsが正常に作動できるかの性能検査の概要を示す説明図である。
端末Tの近接センサNsは、電話に出るときなどに端末Tが誤作動しないように、画面Dsにモノが近付いたことを感知して画面Dsを暗くするために備わるセンサである。
この近接センサNsは、端末Tの上部Tuに配置されたスピーカ、マイクロホン、カメラ等と並んで配置されている。そこで当該センサNsが機能するか否かを検査するため、検査アプリで有効にされた近接センサNsに対し、当該センサNsを前面から覆うマスク部材TMを制御装置によって位置付ける。
マスク部材MTに覆われた近接センサNsが正常に機能すれば画面Dsが暗くなり、一方でこのセンサNsが機能しないと画面Dsは暗くならなない。
検査アプリはこの反応結果を検知してそのデータを検査記録サーバに送る。なお、図16(a)は端末Tの上半部の正面図、同(b)は側面図、同(c)は端末上部Tuの拡大図である。
【0066】
図17は、端末Tが備える環境光センサLsが正常に作動するか否かを検査する概要の説明図である。
環境光センサLsは、画面Dsの明るさを、室内の明るさを計測して画面Dsの明るさを自動調整するためのセンサで、端末Tの上部Tuに配置されている。
環境光センサLsに対する検査は、まず制御装置により端末Tのスリープボタン(図10のスリープボタンbt1参照)を押して画面Dsを消灯する。この状態で端末Tの環境光センサLsに検査光源TBを近付ける。端末Tの検査アプリは近づいた検査光源TBによる明るさに対し画面Dsの明るさを決めるための設定値を取得し、これを検査記録サーバに送信する。なお、図17(a)は端末Tの上半部の側面図、同(b)は正面図、同(c)は端末上部Tuの拡大図である。
【0067】
以上に説明した性能検査機構10pmによる性能検査では、各検査項目における合否等の評価を、検査記録サーバとデータ処理部の作用によって、例えば合格評価は0.0、不合格評価は2.0、中間評価は1.0とする数値に置き換える。置換した数値は、個別の端末Tに紐づけた評価データとして検査記録サーバに格納しておき、この後に説明する外観検査の評価データと総合して商品化する各端末Tのグレードを自動的に決定するための評価データとすることができる。
【0068】
以上のようにして端末Tについて性能と機能に関する性能検査が実行された後、当該端末Tについて外観検査機構10exによる外観検査が実行される。端末Tの外観検査の実施の形態例について、以下に説明する。
【0069】
端末Tの外観検査は、図18に検査の概要を模式的に示すように、制御装置が端末Tを前記検査空間内でロボットハンドFH又はSHにより空中に保持させて行う。なお図18の2つのロボットハンドFH,SHは、説明の便宜のためのものであって、実際には6軸以上の多軸ロボットのアーム先端に設けた1つのハンドで端末Tを保持することもできる。
外観検査では、端末Tの表面と裏面を、表面をa,裏面をbとし、左側面と右側面を、左側面をc,右側面をdとし、上端面と下端面を、上端面をe,下端面をfとし、上端面の左右の角部外面を、上左角部外面をg,上右角部外面をhとし、さらに下端面の左右の角部外面を、下左角部外面をi,下右角部外面をjとして、前記各組の面aとb、cとd、eとf、gとh、iとjの夫々の面を、夫々に測定用カメラに対面させ、好ましくは正対させて測定用カメラTCで撮影する。外観検査における撮影部位の順序は任意であり、以下の撮影順序は説明の便宜上の一例である。
【0070】
前記撮影による撮像データは、当該端末Tの各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに、この端末Tの識別子と紐付け制御装置の検査記録サーバに取り込まれる。取り込まれた撮像データはデータ処理部の判別用データで処理され、前記端末Tの各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに外見上の傷の位置、傷の大きさ、傷の数のデータ(以下、傷のデータという。)に生成し、これを検出値としてデータ処理部に一旦保持させる。
【0071】
前記データ処理部は、前記検出値を、前記端末Tの各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)の夫々について予め設定されている傷に関する設定評価値に参照し、実際評価値を決定する。
【0072】
さらに、前記データ処理部では、当該端末Tについて、各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)ごとに、得られた前記実際評価値を合算し全体評価値を取得する。取得された全体評価値は、この端末のランク付用の評価データとして取扱う。即ち、全体評価値を示す評価データの大きさの大小に依拠して当該端末に外観グレードのランク付けを行う。
【0073】
外観検査に使用する測定用カメラTCは、その対物レンズOLを、前記検査空間内で空中にロボットハンドSH又はFHにより保持されている端末tに向け、この検査空間における垂直面内において、当該対物レンズの光軸LAを垂直向き、左右に45度の角度の向き、水平向きに位置決めできるように配置されている。
【0074】
一方で、端末Tは、前記測定用カメラTCに各面を対向させるため、ロボットハンドFHの機能により、端末の長手方向に平行な軸を第1回転軸X1とするとき、水平姿勢又は垂直姿勢を第1姿勢とし、第1姿勢から90度回転を同じ方向に3回させて第一姿勢を含む4回の位置決めを行い、各位置決め点で前記端末Tのaとb、及びcとdを、前記光軸LAを垂直にした測定用カメラTCで撮影する。
【0075】
次いで、端末Tの保持を前記ロボットハンドFHからこのハンドの向きに直交する向きの第2ハンドSHに変更し、前記第1回転軸X1に直交する軸を第2回転軸Y1として一方向に90度、他方向に90度回転して夫々に位置決めを行い、2つの位置決め点でこの端末の前記eとfを、前記光軸LAを垂直にした測定用カメラTCで撮影する。
【0076】
さらに、前記端末Tを、前記第1回転軸X1により垂直姿勢にする1回目の位置決め時と、その垂直姿勢から180度回転した逆垂直姿勢にする2回目の回転位置決め時の夫々において、前記カメラTCを垂直面内で左45度と右45度に傾斜させて位置決めし、当該端末Tの前記gとh及びiとjを撮影する。
【0077】
上記のようにして端末Tの10個の面をそれぞれに撮影した測定用カメラTCの撮像データから前記データ処理部が前記端末Tの傷データの検出値を形成する。形成される検出値は、当該端末の各組の面(aとb、cとd、eとf、gとh、iとj)の夫々について、傷の位置、傷の大きさ(長さ、面積)、傷の数に対応するデータである。
【0078】
本発明において、前記測定用カメラTCの撮像データから前記データ処理部が形成する前記端末Tの傷に関するデータは、前記aとb、cとd、eとfの夫々の面については、傷の位置が中央部であるか、又は周辺部或は端部であるかを示すデータで形成され、前記gとh、iとjの各面については傷の有無を示すデータで形成される。
【0079】
前記データ処理部から出力されるランク付け用の評価データは、当該端末Tに紐付けられた前記性能検査・機能検査の結果に基づく評価値のデータと、前記外観検査の結果に基づく評価値のデータとを処理して形成される評価データである。
【0080】
端末Tの外観検査では、一例として端末Tの6つの面a~fと4つの角g~jの傷の有無に基づく評価データによって自動的にグレーディングのための評価を行う。
以下に最もシンプルな外観検査の例について説明する。
【0081】
測定用カメラTCで6つの平面a~fと4つの角面g~jを撮像する。
各面の撮像データは、各面についての傷の各面の標準データ(基準データ)と各面ごとに比較され、一例として、傷がない場合は評価値0.0、傷が有る場合は評価値1.0とする基礎となる数値に変換して評価データに形成する。そして端末各面のアルファベットa~fを伴う評価データを加算した数値(データ)を当該端末T全体の傷に関する基本評価値とする。基本評価値がゼロ又はゼロに近い端末Tが、外観検査の評価が高いものになる。基本評価値のデータは、各端末Tに紐付けして検査記録サーバへ格納する。なお、「傷が有る」場合においては、傷の大きさと傷の数によって夫々に重み付けを変えた評価値の数値を、例えば傷が小さいは1.2、傷が大きいは1.4,傷が少ないは1.1、傷が多いは1.3とすることもできる。
【0082】
ところで端末Tの外観において傷が目立つのは、まず正面、背面であり、次いで左右の側面、それから上、下面であり、角面はこれに続くものと考えられる。
そこで、本発明では傷がある場合には、傷がついている面によって前記評価値に重み付けをして評価する。
そこで、表面と裏面については「傷あり」の評価値を1.9とし、左右側面については1.7とし、上下面については1.5とする。傷なしはどの面も評価値0.0である。
そうすると、例えば表面又は裏面にのみ傷がある端末Aと、側面にのみ傷がある端末Bでは、端末Aの基本評価値1.9が端末Bの1.7より大きいので、端末Bの評価ランクが上と判断する。同じ要領で、どの面に傷があるかによって、基本評価値が変わることになる。どの面に傷が有るかは、アルファベットa~fを伴う基本評価値によって判別できる。
【0083】
本実施例では、端末Tの四隅の角面(g~j)についての傷の有無については、各角面g~jの撮像データによって、傷がない場合はゼロ、傷がある場合には、撮像した角面を示すアルファベットg~jのいずれかを評価データとして出力するようにしている。
【0084】
上記のような評価態様を採ると、検査記録サーバに各端末Tごとに外観検査の評価値が、各面a~f及び各角面g~jのアルファベット文字を伴う数値による評価データで得られるから、検査記録サーバでは、得られる評価データの数値が小さい順に各端末Tを並べ、夫々の評価データとそれに紐付けられた端末データとをグレーディングのための情報として出力することができる。
【0085】
本発明においてグレーディングのための情報には、上述の性能検査、外観検査の結果情報(評価データ)以外に、先に説明したデータ消去の結果を含ませることができる。先にも述べたように残留データが消去されない「不消去端末」は本工程では商品化されないが、データが完全に消去された「消去端末」は、更にデータ消去ソフトによってロック機能の設定が有効か無効かの確認、充電能力の劣化の有無等が判定され、その判定結果を数値化した評価データをグレーディング(ランク付)に関与するようにできる。
【0086】
以上に説明した本発明においては、グレーディングは先に述べた検査装置内では行っていないが、検査装置の中で行うようにすることも可能である。
前記検査装置のデータ処理部では、検査結果(性能検査の機能不具合の有無、外観検査のキズの有無等)に関する評価値のデータに基づいて形成される評価データを集計する。各端末Tごとに集計した評価データとデータ消去時の判定結果に基づく評価データを中継アプリに集計し、その集計データを別に設けたグレード判定装置(不図示のグレーディング装置)に送り、そこでグレーディングを行う。
【0087】
本発明によれば、少なくとも性能検査による各端末の評価データと外観検査の評価データを検査制御部で合計して総合評価データを形成することができるから、商品化する各端末の商品等級の自動グレーディングに大幅に寄与できる。また前記性能検査と外観検査の評価データに、データ消去時の充電能力劣化の有無等に関する評価データを加えて総合評価データを形成すればさらに高精度の自動グレーディングが可能になる。
【符号の説明】
【0088】
T 端末
10 検査部
10pm 性能検査機構
10ex 外観検査機構
TC 測定用カメラ
OL 対物レンズ
LA レンズの光軸
FH,SH ロボットハンド
X1 第1回転軸
Y1 第2回転軸
a~f 端末の6面
g~h 端末の四隅の角面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19