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特開2024-88307繊維強化樹脂製筒体及び繊維強化樹脂製筒体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088307
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂製筒体及び繊維強化樹脂製筒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 12/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F16J12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203415
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】申 大珍
【テーマコード(参考)】
3J046
【Fターム(参考)】
3J046AA07
3J046AA14
3J046BA03
3J046CA04
3J046EA02
3J046EA10
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造でシール性を向上することが可能な繊維強化樹脂製筒体及び繊維強化樹脂製筒体の製造方法を提供する。
【解決手段】動力伝達軸2Aとしての繊維強化樹脂製筒体は、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50と、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の外周面上に、当該外周面の一部を覆うように配置される繊維強化樹脂製筒体本体部30と、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50と繊維強化樹脂製筒体本体部30との間に配置され、繊維強化樹脂製筒体本体部30の端部と第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の外周面との間を塞ぐ第一のシール剤61及び第二のシール剤62と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材と、
前記金属部材の外周面上に、当該外周面の一部を覆うように配置される繊維強化樹脂層と、
前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に配置され、前記繊維強化樹脂層の端部と前記金属部材の前記外周面との間を塞ぐシール剤と、
を備える繊維強化樹脂製筒体。
【請求項2】
前記繊維強化樹脂層は、前記金属部材の前記外周面上に繊維を配置し、当該繊維に樹脂を含浸させて硬化させることによって形成されている、
請求項1に記載の繊維強化樹脂製筒体。
【請求項3】
前記金属部材は、軸方向一部に形成されるセレーション部と、軸方向他部の非セレーション部と、を前記外周面に有しており、
前記繊維強化樹脂層は、前記セレーション部と前記非セレーション部の一部とを覆うように配置されており、
前記繊維強化樹脂層の前記端部は、前記非セレーション部上に位置する、
請求項1又は請求項2に記載の繊維強化樹脂製筒体。
【請求項4】
前記シール剤は、前記非セレーション部及び前記セレーション部に跨って配置されている、
請求項3に記載の繊維強化樹脂製筒体。
【請求項5】
前記金属部材は、軸方向一部に形成されるセレーション部と、軸方向他部の非セレーション部と、を前記外周面に有しており、
前記繊維強化樹脂層は、前記セレーション部を覆うように配置されており、
前記繊維強化樹脂層の前記端部は、前記セレーション部と前記非セレーション部との境界上に位置する、
請求項1又は請求項2に記載の繊維強化樹脂製筒体。
【請求項6】
筒状の金属部材の前記外周面上に、当該金属部材の一部を覆うように繊維を配置する繊維配置工程と、
前記繊維に樹脂を含浸させて硬化させることによって、繊維強化樹脂層を形成する繊維強化樹脂層形成工程と、
前記金属部材の前記外周面上において前記繊維強化樹脂層の端部に該当する部位にシール剤を配置するシール剤配置工程と、
前記金属部材及び前記繊維強化樹脂層の内部空間を負圧にすることによって、前記シール剤を前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に移動させるシール剤移動工程と、
を含む繊維強化樹脂製筒体の製造方法。
【請求項7】
前記繊維配置工程において、前記金属部材の前記外周面上の一部に筒状の隙間形成部材が外嵌されており、
前記繊維強化樹脂層形成工程と前記シール剤配置工程との間に実行される、前記隙間形成部材を取り外す隙間形成部材取外工程を含み、
前記シール剤移動工程において、前記シール剤は、前記隙間形成部材が取り外されることによって前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に形成される隙間に移動する、
請求項6に記載の繊維強化樹脂製筒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両における動力伝達軸等として用いられる繊維強化樹脂製筒体及び繊維強化樹脂製筒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒管とヨークとの嵌合部の端部を覆うようにキャップを設ける構造が記載されている。また、特許文献2には、繊維強化合成樹脂製筒体と金属ヨークとの嵌合部の端部の外周面を覆うようにシール材を設け、当該シール材をキャップ材及びバンドで固定する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3-84411号公報
【特許文献2】特開昭62-258213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載の構造では、筒体とヨークとの嵌合部のシール性を確保するために筒状の部材を外嵌させるので、組付作業が困難であるとともに、シール性を向上するためには、特許文献2に記載の構造のように部品点数が増えてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて創作されたものであり、簡易な構造でシール性を向上することが可能な繊維強化樹脂製筒体及び繊維強化樹脂製筒体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、金属部材と、前記金属部材の外周面上に、当該外周面の一部を覆うように配置される繊維強化樹脂層と、前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に配置され、前記繊維強化樹脂層の端部と前記金属部材の前記外周面との間を塞ぐシール剤と、を備える繊維強化樹脂製筒体が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、簡易な構造でシール性が向上された繊維強化樹脂製筒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第一の実施形態に係るマンドレルを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係るマンドレルを用いて製造された動力伝達軸を模式的に示す図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸を模式的に示す断面図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、第一の炭素繊維層を模式的に示す図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、第二の炭素繊維層を模式的に示す図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、第三の炭素繊維層を模式的に示す図である。
図7】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図8】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、第一の固定部材及び第二の固定部材を模式的に示す図である。
図9】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、成形装置を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、成形装置から取り出された中間体を模式的に示す断面図である。
図11】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、マンドレルが除去された中間体を模式的に示す断面図である。
図12】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、中間体の第一の金属部材側端部を模式的に示す断面図である。
図13】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、中間体の第一の金属部材側端部にシール剤が配置された状態を模式的に示す断面図である。
図14】本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図であり、(a)はシール剤が第一の金属部材と繊維強化樹脂製筒体本体部との間に移動した状態を模式的に示す図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図15】本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図16】本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図である。
図17】本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸の製造方法を説明するための模式図である。
図18】本発明の第三の実施形態に係る動力伝達軸の端部を模式的に示す断面図である。
図19】本発明の第四の実施形態に係る動力伝達軸の端部を模式的に示す断面図である。
図20】本発明の第五の実施形態に係る動力伝達軸の端部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、炭素繊維強化プラスチックによって、繊維強化樹脂製筒体の一例である車両の動力伝達軸(プロペラシャフト)を製造する場合を例にとり、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。また、参照する図面は、分かりやすさのためにデフォルメされている。
【0010】
<第一の実施形態>
図1に示すように、第一の実施形態に係るマンドレル1は、繊維強化樹脂製筒体本体部30(図2参照)を製造するために用いられるものであって、マンドレル本体10と、内嵌部材20と、を備える。
【0011】
≪マンドレル本体≫
マンドレル本体10は、筒形状を呈する樹脂製部材である。本実施形態において、マンドレル本体10は、繊維強化樹脂製筒体本体部30の内部から除去される。マンドレル本体10には、繊維強化樹脂製筒体本体部30における樹脂硬化の際の加熱に耐えられる材料を用いることができる。そのような材料の例としては、PP(ポリプロピレン樹脂)、PET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)、SMP(形状記憶ポリマー)等が挙げられる。マンドレル本体10は、軸方向中間部の大径部11と、軸方向における第一の端部に形成される段部12及び小径部13と、軸方向における第二の端部に形成されるテーパ部14及び小径部15と、を一体に備える。本実施形態において、小径部15の先端部(大径部11とは反対側の端部)には、小径部15よりも小径な突出部16が形成されている。突出部16は、第二の金属部材50が外嵌される部位である。なお、マンドレル本体10は、金属製部材であってもよい。
【0012】
≪内嵌部材≫
内嵌部材20は、マンドレル本体10の第一の端部である小径部13に内嵌される筒状の金属製部材である。内嵌部材20は、小径部13の径方向内側への変形を防止するものであって、マンドレル本体10内に加圧用流体(例えば、加圧された空気)を充填させるための流路20aが形成されている。本実施形態において、加圧用流体は、成形装置100内においてマンドレル本体10内を加圧して膨張させるためのものである。また、加圧用流体は、後記する成形装置100内においてマンドレル本体10の外周面に配置された熱硬化性樹脂(後記する樹脂34)を硬化させるために加熱するための加熱用流体でもある。なお、マンドレル本体10が金属製部材である場合には、内嵌部材20は、マンドレル本体10と一体化されることによって省略可能である。
【0013】
<動力伝達軸(繊維強化樹脂製筒体)>
図2及び図3に示すように、マンドレル1(図1参照)を用いて製造される動力伝達軸2は、車両において前後方向に延設され、動力源で発生した動力を軸線周りの回転として伝達する軸である。動力伝達軸2は、繊維強化樹脂製筒体本体部30と、第一の金属部材40Aと、第二の金属部材50と、第一のシール剤61と、第二のシール剤62と、自在継手3,4と、を備える。繊維強化樹脂製筒体本体部30は、当該繊維強化樹脂製筒体本体部30の軸周りに回転することによって推進力を伝達する推進軸用炭素繊維強化樹脂製筒体である。なお、以下の説明において、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の軸方向の端部に関して、繊維強化樹脂製筒体本体部30に嵌合される側を第一の端部とし、その反対側を第二の端部とする。
【0014】
<繊維強化樹脂製筒体本体部>
繊維強化樹脂製筒体本体部30は、マンドレル本体10の外周面に沿うように筒状に形成された繊維強化樹脂層(樹脂含有繊維層)である。繊維強化樹脂製筒体本体部30は、マンドレル本体10の大径部11、テーパ部14及び小径部15、第一の金属部材40Aの第一の端部、並びに、第二の金属部材50の第一の端部の外周面上に沿うように形成される。図4図6に示すように、繊維強化樹脂製筒体本体部30は、炭素繊維層として、径方向内側(マンドレル本体10側)から順に、第一の炭素繊維層31と、第二の炭素繊維層32と、第三の炭素繊維層33と、を備える。第二の炭素繊維層32及び第三の炭素繊維層33を構成する炭素繊維(第二炭素繊維)は、第一の炭素繊維層31を構成する炭素繊維(第一炭素繊維)よりも強度が大きく、弾性率が小さい。なお、図4図6において、炭素繊維層31,32,33は、一部のみが図示されている。また、第一の金属部材40Aの第二の端部(各図において左側となる端部、すなわち、マンドレル本体10とは反対側に位置する端部)の外周面、及び、第二の金属部材50の第二の端部(各図において右側となる端部、マンドレル本体10とは反対側に位置する端部)の外周面は、繊維強化樹脂製筒体本体部30によって被覆されておらず、当該繊維強化樹脂製筒体本体部30から突出している。
【0015】
≪第一の炭素繊維層≫
図4に示すように、第一の炭素繊維層31は、マンドレル本体10等の外周面に対して、当該マンドレル本体10を被覆するように設けられる複数の炭素繊維によって構成されている。より詳細には、複数の炭素繊維を帯状又は束状に纏めることによって、炭素繊維集合体が形成されているとともに、複数の炭素繊維集合体が位相を変えて設けられることによって、第一の炭素繊維層31が形成されている。第一の炭素繊維層31における炭素繊維は、マンドレル本体10の軸線方向に対して平行に延設されている。すなわち、第一の炭素繊維層31に関して、マンドレル本体10の軸線Xに対する炭素繊維の配向角度は、0°である。
【0016】
≪第二の炭素繊維層≫
図5に示すように、第二の炭素繊維層32は、第一の炭素繊維層31の径方向外側に設けられており、第一の炭素繊維層31を被覆するように設けられる複数の炭素繊維によって構成されている。より詳細には、複数の炭素繊維を帯状又は束状に纏めることによって、炭素繊維集合体が形成されているとともに、複数の炭素繊維集合体が位相を変えて設けられることによって、第二の炭素繊維層32が形成されている。第二の炭素繊維層32における炭素繊維は、マンドレル本体10の軸線方向に対して45°傾斜するように1周以上巻回され、マンドレル本体10の軸線方向に対して螺旋状に延設されている。すなわち、第二の炭素繊維層32に関して、マンドレル本体10の軸線Xに対する炭素繊維の配向角度は、45°である。
【0017】
≪第三の炭素繊維層≫
図6に示すように、第三の炭素繊維層33は、第二の炭素繊維層32の径方向外側に設けられており、第二の炭素繊維層32を被覆するように設けられる複数の炭素繊維によって構成されている。より詳細には、複数の炭素繊維を帯状又は束状に纏めることによって、炭素繊維集合体が形成されているとともに、複数の炭素繊維集合体が位相を変えて設けられることによって、第三の炭素繊維層33が形成されている。第三の炭素繊維層33における炭素繊維は、マンドレル本体10の軸線方向に対して-45°傾斜するように1周以上巻回され、マンドレル本体10の軸線方向に対して螺旋状に延設されている。すなわち、第三の炭素繊維層33に関して、マンドレル本体10の軸線Xに対する炭素繊維の配向角度は、-45°である。
【0018】
図2及び図3に示すように、繊維強化樹脂製筒体本体部30は、軸方向における第二の端部(各図において右側となる端部)側に、軸方向中央側の大径部30aから軸方向における第二の端部の小径部30cに向かうにつれて縮径するテーパ部30bが形成されている。大径部30aは、マンドレル本体10の大径部11の外周面に倣う形状を呈する本体部である。テーパ部30bは、マンドレル本体10のテーパ部14の外周面に倣う形状を呈する。小径部30cは、マンドレル本体10の小径部15及び第二の金属部材50の一部の外周面に倣う形状を呈する端部である。
【0019】
<第一の金属部材>
第一の金属部材40Aは、略円筒形状を呈する部材である。図5等に示すように、製造途中段階において、第一の金属部材40Aは、マンドレル本体10に嵌合(外嵌)されている。
【0020】
第一の金属部材40Aは、動力伝達軸2Aにおける自在継手(ヨーク組立体)3の一部材である。自在継手3は、かかる第一の金属部材40に対して、スパイダー、ニードルベアリング及びヨーク本体を組み付けることによって形成される。
【0021】
<第二の金属部材>
第二の金属部材50は、略円柱形状を呈する部材(シャフト)である。図5等に示すように、製造途中段階において、第二の金属部材50は、マンドレル本体10に嵌合(外嵌)されている。
【0022】
図1に示すように、第二の金属部材50の第一の端部には、マンドレル本体10の突出部16が挿入可能な有底の孔部50aが形成されている。
【0023】
第二の金属部材50は、動力伝達軸2Aにおける自在継手4(プランジジョイント組立体)の一部材である。自在継手4は、かかる第二の金属部材50に対して、ブーツ及びプランジジョイント本体を組み付けることによって形成される。
【0024】
<第一のシール剤>
図3に示すように、第一のシール剤61は、繊維強化樹脂製筒体本体部30Aの内周面と第一の金属部材40Aの外周面との間に周方向全体にわたって筒状(環状)に設けられている。第一のシール剤61の軸方向端部は、繊維強化樹脂製筒体本体部30Aの第一の端部(図において左側となる端部)(端面)から露出して、当該第一の端部と第一の金属部材40Aの外周面との間を塞いでいる。第一のシール剤61は、水分等が外部から繊維強化樹脂製筒体本体部30Aと第一の金属部材40Aとの間に浸入することを防止することによって、第一の金属部材40Aの腐食(発錆)を防止することができる。
【0025】
<第二のシール剤>
第二のシール剤62は、繊維強化樹脂製筒体本体部30Aの内周面と第二の金属部材50の外周面との間に周方向全体にわたって筒状(環状)に設けられている。第二のシール剤62の軸方向端部は、繊維強化樹脂製筒体本体部30Aの第二の端部(図において右側となる端部)(端面)から露出して、当該第二の端部と第二の金属部材50の外周面との間を塞いでいる。第二のシール剤62は、水分等が外部から繊維強化樹脂製筒体本体部30Aと第二の金属部材50との間に浸入することを防止することによって、第二の金属部材50の腐食(発錆)を防止することができる。
【0026】
第一のシール剤61及び第二のシール剤62は、初期状態で液状、ゲル状、クリーム状等であり、繊維強化樹脂製筒体本体部30Aの形成後に、第一の金属部材40A又は第二の金属部材50の外表面に未硬化の状態で配置され、繊維強化樹脂製筒体保体部30Aと第一の金属部材40A又は第二の金属部材50の間に引き込まれてから、繊維強化樹脂製筒体本体部30の形成時の熱等によって硬化し、シール性を発揮するものであればよい。
【0027】
<製造方法>
続いて、本発明の第一の実施形態に係るマンドレル1を用いた動力伝達軸2Aの製造方法について、図7のフローチャートを用いて説明する。動力伝達軸2Aの製造方法は、マンドレル本体形成工程(ステップS1)と、マンドレル本体形成工程の後に実行される内嵌部材設置工程(ステップS2)と、内嵌部材設置工程の後に実行される第一連結工程(ステップS3)と、第一連結工程の後に実行される第二連結工程(ステップS4)と、を含む。また、動力伝達軸2Aの製造方法は、第二連結工程の後に実行される繊維設置工程(ステップS5A~S5C)と、繊維設置工程の後に実行される端部固定工程(ステップS6)と、を含む。また、動力伝達軸2Aの製造方法は、端部固定工程の後に実行される金型内設置工程(ステップS7)と、金型内設置工程の後に実行される膨張工程(ステップS8)と、を含む。また、動力伝達軸2Aの製造方法は、膨張工程の後に実行される成型工程(ステップS9)と、成型工程の後に実行される取出工程(ステップS10)と、取出工程の後に実行されるマンドレル除去工程(ステップS11)と、を含む。また、動力伝達軸2Aの製造方法は、マンドレル除去工程の後に実行される固定部材除去工程(ステップS12)と、固定部材除去工程の後に実行されるシール剤配置工程(ステップS13)と、を含む。また、動力伝達軸2Aの製造方法は、シール剤配置工程の後に実行されるシール剤移動工程(ステップS14)と、シール剤移動工程の後に実行されるジョイント組付工程(ステップS15)と、を含む。
【0028】
ステップS1は、図1に示される樹脂製のマンドレル本体10を図示しない成形装置を用いて形成する工程である。
【0029】
ステップS1に続いて、ステップS2で、内嵌部材20をマンドレル本体10の小径部13に圧入して内嵌させる。圧入の際には、内嵌部材20の外周面と小径部13の外周面との間に潤滑剤を塗布してもよい。なお、ステップS2は、ステップS8の前までに実行されればよい。
【0030】
ステップS2に続いて、ステップS3で、マンドレル本体10の第一の端部に第一の金属部材40Aを設ける。ステップS3では、第一の金属部材40Aは、マンドレル本体10の段部12に嵌合(外嵌)される。
【0031】
ステップS3に続いて、ステップS4で、マンドレル本体10の第二の端部に第二の金属部材50を設ける。ステップS4において、第二の金属部材50は、マンドレル本体10の突出部16に嵌合(外嵌)される。ここで、ステップS3,S4の順番は、適宜変更可能であり、ステップS4が先でもよく、同時であってもよい。
【0032】
ステップS4に続いて、ステップS5Aで、図4に示すように、第一の炭素繊維層31がマンドレル本体10、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の外周面上に形成される。ステップS5Aに続いて、ステップS5Bで、図5に示すように、第二の炭素繊維層32がマンドレル本体10、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50における第一の炭素繊維層31の外周面上に形成される。ステップS5Bに続いて、ステップS5Cで、図6に示すように、第三の炭素繊維層33がマンドレル本体10、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50における第二の炭素繊維層32の外周面上に形成される。ステップS5A~S5Cにおいて、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50のそれぞれの軸方向におけるマンドレル本体10とは反対側に位置する端部には、それぞれの繊維が配置されないように炭素繊維層31~33が形成される。
【0033】
ステップS5A~S5Cにおいて、炭素繊維層31~33は、樹脂が含浸された繊維ではなく、いわゆる生糸である。また、炭素繊維層31~33は、多給糸フィラメントワインディング法によってマンドレル本体10、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の第一の端部の外周面上に同時進行的に配置される。多給糸フィラメントワインディング(MFW)法によって給糸された炭素繊維層31~33は、互いに織り込まれることなく層として独立した、いわゆるノンクリンプ構造を呈する。
【0034】
ステップS5A~S5Cにおいて、炭素繊維層31~33は、図示しない装置によってマンドレル本体10等の外周面上に配置される。かかる装置は、炭素繊維層31~33の配向角度を適宜設定変更可能である。なお、炭素繊維層31~33は、前記装置によって一体的な筒状を構成するように配置されてから、マンドレル本体10等の外周面上に配置される構成であってもよい。
【0035】
(単給糸)フィラメントワインディング法では、放射状に延びる複数のピンを有する治具をマンドレルの両端部に配置し、1本の炭素繊維をピンに係止した状態でマンドレルの外周面上に巻回することを繰り返すことによって、繊維層を形成する。そのため、(単給糸)フィラメントワインディング法では、マンドレル本体10等に巻回されずに1周未満で配置する必要がある炭素繊維層31を、マンドレル本体10等の外周面上に好適に保持することができないおそれがある。
【0036】
これに対し、多給糸フィラメントワインディング法では、炭素繊維層31~33のそれぞれに関して、複数の炭素繊維によって筒状の層を構成するように配置した状態で、当該筒状の層にマンドレル本体10等を挿通させる(又は、マンドレル本体10等に当該筒状の層を外嵌させる)。また、多給糸フィラメントワインディング法では、炭素繊維層31~33を同時進行的に形成することができる。したがって、多給糸フィラメントワインディング法では、マンドレル本体10等に巻回されずに1周未満で配置する必要がある炭素繊維層31を径方向外側の炭素繊維層32,33によってマンドレル本体10等の外周面上に好適に保持することができる。
【0037】
ステップS5Cに続いて、ステップS6で、図8に示すように、炭素繊維層31~33の第一の端部を第一の固定部材71によって第一の金属部材40Aの外周面に固定するとともに、炭素繊維層31~33の第二の端部を第二の固定部材72によって第二の金属部材50の外周面に固定する。ここで、第一の固定部材71及び第二の固定部材72は、炭素繊維層31~33の外周面に巻回される樹脂製のテープ等によって構成される。
【0038】
ステップS6に続いて、ステップS7で、図9に示すように、マンドレル1、第一の金属部材40A、第二の金属部材50、各炭素繊維層31~33、第一の固定部材71及び第二固定部材72の組立体を、成形装置(金型)100内に設置する。
【0039】
ステップS7に続いて、ステップS8で、マンドレル本体10を膨張させる。図9に示すように、第一実施形態での成形装置100においては、流路20aを介してマンドレル本体10の内側に連通するように、連通路104が設けられている。ステップS7では、不図示の供給装置に連結された連通路104を介して、マンドレル本体10の中空部に加圧用流体(例えば、加圧された140℃以上の空気)を充填させる。高温の加圧用流体によって加熱されたマンドレル本体10は、樹脂34が硬化する温度よりも低い温度(変態温度である80℃)になると軟化し、加圧用流体によって内部から加圧され、成形装置100の内周面に倣うように膨張変形する。かかる加圧により、充填された樹脂34によってマンドレル本体10が縮径方向に変形することを防止することができる。また、かかる加圧により、樹脂34の充填量を抑制し、完成品である繊維強化樹脂製筒体本体部30の重量増加を防止することができる。
【0040】
ステップS8に続いて、ステップS9で、当該成形装置100内に樹脂34が供給される。これにより、マンドレル本体10の外周面に配置された炭素繊維層31~33に樹脂34が含浸される。さらに、成形装置100に熱を加えることによって樹脂34を硬化させ、RTM(Resin Transfer Molding、樹脂注入成形)工法によって繊維強化樹脂製筒体本体部30が形成されるとともに、繊維強化樹脂製筒体本体部体30、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50が一体成型される(ステップS8、成型工程)。樹脂34は、例えば熱硬化性樹脂である。本実施形態において、成形装置100の金型は、複数に分割されている。ステップS9では、前記組立体に熱が加えられるとともに、成形装置100の金型を閉じる型閉じ操作を行い、続いて、閉じた金型に圧力を印加する型締め操作を行うことにより、金型内の圧力を上昇させることで、樹脂34の硬化が促進される。なお、本実施形態では金型が複数に分割されている構成で説明しているため、型閉じ操作及び型締め操作が行われているが、型締め操作は、必須ではない。また、金型が複数に分割されていない場合には、かかる型閉じ操作及び型締め操作は、必須ではない。成形装置100内において、溶融状態の樹脂34が導入されるゲート101の出口側には空間(樹脂だまり102)が形成されている。成形装置100内に導入された樹脂34は、炭素繊維層31~33の第二の端部の側方に位置する当該樹脂だまり102に貯留される。樹脂だまり102に貯留された樹脂34は、炭素繊維層31~33の配列方向においてゲート101とは反対側(炭素繊維層31~33の第一の端部の外周面側)に形成された吸引口103からの真空吸引によって、マンドレル本体10の軸線方向に移動し、炭素繊維層31~33に含浸する。樹脂34が炭素繊維層31~33に含浸した状態で、成形装置100に熱が加えられ、さらに、成形装置100内に圧力が加えられることによって、繊維強化樹脂製筒体本体部30が形成される。
【0041】
ステップS9に続いて、ステップS10で、成形された組立体すなわち中間体が成形装置100から取り出される。
【0042】
なお、ステップS10に続いて、ステップS11で、マンドレル抜き取り工程を実行する。このマンドレル抜き取り工程は、第一の金属部材40の端部開口側から繊維強化樹脂管体30Aの外側にマンドレル1を取り出す工程である。この際、マンドレル1は、使用される材料に応じた方法にしたがって、例えば変形され、溶融され、分解され、破壊され、又は溶出されることによって繊維強化樹脂製筒体本体部30の内側から取り出される。これにより、動力伝達軸2Aの軽量化が達成されることとなる。
【0043】
また、マンドレル1を変形させて第一の金属部材40Aの端部開口側から取り出す場合には、例えばマンドレル本体10の中空部を減圧することで前記の端部開口よりもマンドレル1を小さくなるように収縮させて繊維強化樹脂管体30から抜き取る方法を採用することができる。
【0044】
マンドレル抜き取り工程を行う際には、不図示の真空ポンプに連結された連通路104を介して、マンドレル本体10の中空部を減圧することができる。
【0045】
このようなマンドレル抜き取り工程は、例えば熱可塑性樹脂からなるマンドレル本体10を加熱等により可塑化することでより好適に実施することができる。また、例えばダイヤカットを施したアルミニウム薄板からなるマンドレル本体10についても好適に実施することができる。
【0046】
ステップS11に続いて、ステップS12で、繊維強化樹脂層の両端部、すなわち、第一の固定部材71及び第二の固定部材72が含まれる部位を除去する。ステップS11では、例えば不図示のカッターを用いた切削によって、繊維強化樹脂層の両端部が除去される。
【0047】
ステップS12に続いて、ステップS13で、未硬化の第一のシール剤61を第一の金属部材40Aの外周面上における繊維強化樹脂層の端部に該当する部位に配置するとともに、未硬化の第二のシール剤62を第二の金属部材50の外周面上における繊維強化樹脂層の端部に該当する部位に配置する。
【0048】
ステップS13に続いて、ステップS14で、第一の金属部材40A、第二の金属部材50及び繊維強化樹脂層の内部空間を負圧にすることによって、第一のシール剤61を第一の金属部材40Aと繊維強化樹脂層との間に移動させる(図14参照)とともに、第二のシール剤62を第二の金属部材50と繊維強化樹脂層との間に移動させる。ここで、ステップS12及びステップS14の間において、図13に示すように、密封部材80が第一の金属部材40Aに内嵌されることによって、繊維強化樹脂製筒体本体部30、第一の金属部材40A及び第二の金属部材50の組立体の内部空間が密封される。なお、第二の金属部材50が筒形状を呈する場合には、当該第二の金属部材50の開口部を密封するための密封部材80が第二の金属部材50に内嵌される。
【0049】
続いて、ステップS13において、不図示の吸引装置が密封部材80の孔部81を介して組立体の内部空間の空気を吸引することによって、第一のシール剤61を第一の金属部材40Aと繊維強化樹脂層との間に移動させるとともに、第二のシール剤62を第二の金属部材50と繊維強化樹脂層との間に移動させる。第一のシール剤61は、当該移動後に硬化することによって、第一の金属部材40Aと繊維強化樹脂層との間を密封する。第二のシール剤62は、当該移動後に硬化することによって、第二の金属部材50と繊維強化樹脂層との間を密封する。
【0050】
ステップS14に続いて、ステップS15で、中間体の第一の金属部材40に自在継手3を取り付けるとともに、第二の金属部材50に自在継手4を取り付ける。
【0051】
本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸(繊維強化樹脂製筒体)2Aは、金属部材(第一の金属部材40A、第二の金属部材50)と、前記金属部材の外周面上に、当該外周面の一部を覆うように配置される繊維強化樹脂層(繊維強化樹脂製筒体本体部30)と、前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に配置され、前記繊維強化樹脂層の端部と前記金属部材の前記外周面との間を塞ぐシール剤(第一のシール剤61、第二のシール剤62)と、を備える。
したがって、動力伝達軸2Aは、シール剤61,62が金属部材(第一の金属部材40A、第二の金属部材50)の外周面と繊維強化樹脂製筒体本体部30の内周面との間に配置されるとともに、これらの間の境界部を塞ぐので、簡易な構造でシール性を向上することができる。
【0052】
また、動力伝達軸2Aにおいて、前記繊維強化樹脂層は、前記金属部材の前記外周面上に繊維(炭素繊維層31~33)を配置し、当該繊維に樹脂34を含浸させて硬化させることによって形成されている、
したがって、動力伝達軸2Aは、MFW工法及びRTM工法を用いて形成された場合において、シール性を向上することができる。
【0053】
また、本発明の第一の実施形態に係る動力伝達軸(繊維強化樹脂製筒体)2Aの製造方法は、筒状の金属部材の前記外周面上に、当該金属部材の一部を覆うように繊維を配置する繊維配置工程(ステップS5A~S5C)と、前記繊維に樹脂を含浸させて硬化させることによって、繊維強化樹脂層を形成する繊維強化樹脂層形成工程(ステップS9)と、前記金属部材の前記外周面上において前記繊維強化樹脂層の端部に該当する部位にシール剤を配置するシール剤配置工程(ステップS13)と、前記金属部材及び前記繊維強化樹脂層の内部空間を負圧にすることによって、前記シール剤を前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に移動させるシール剤移動ステップ(ステップS14)と、を含む。
したがって、動力伝達軸2Aの製造方法によると、簡易な構造でシール性を向上した動力伝達軸2Aを製造することができる。
【0054】
<第二の実施形態>
続いて、本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸について、第一の実施形態に係る動力伝達軸2との相違点を中心に説明する。以下の説明では、第二の実施形態に係る動力伝達軸2Aの製造方法に関して、第一の金属部材40A側に隙間形成部材91を用いて第一のシール剤61を設けるための隙間を形成する場合について取り上げるが、第二の金属部材50側に隙間形成部材を用いて第二のシール剤62を設けるための隙間を形成することも可能である。
【0055】
<製造方法>
図15に示すように、本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸2Aの製造方法は、ステップS4とステップS5Aとの間に、隙間形成部材設置工程(ステップS21)を含むとともに、ステップS11とステップS12との間に、隙間形成部材取外工程(ステップS22)を含む。
【0056】
図16に示すように、ステップS21で、薄い筒形状を呈する金属製部材である隙間形成部材91を第一の金属部材40に外嵌させる。ステップS5A~S5Cで、炭素繊維層31~33は、隙間形成部材91上にも配置される。ステップS22で、隙間形成部材91を第一の金属部材40A及び繊維強化樹脂製筒体本体部30の間から取り外す。これにより、第一のシール剤61が設けられる隙間Yが好適に形成される(図17参照)。
【0057】
なお、隙間形成部材91は、当該隙間形成部材91の周方向の少なくとも一部がセレーション部42における非セレーション部41側の端部(図において左側となる端部)に近接又は重複する(セレーション部42の径方向外側に位置する)ように配置されてもよい。これにより、第一の金属部材40Aのセレーション部42と繊維強化樹脂層との間に生じる僅かな隙間を通じて、吸引作用がより効果的に働き、第一のシール剤61を隙間Yに確実に充填させることができる(例えば、後記する第四及び第五の実施形態参照)。
【0058】
本発明の第二の実施形態に係る動力伝達軸2Aの製造方法は、前記繊維配置工程において、前記金属部材の前記外周面上の一部に筒状の隙間形成部材91が外嵌されており(ステップS21)、前記繊維強化樹脂層形成工程と前記シール剤配置工程との間に実行される、前記隙間形成部材を取り外す隙間形成部材取外工程(ステップS22)を含み、前記シール剤移動工程において、前記シール剤は、前記隙間形成部材が取り外されることによって前記金属部材と前記繊維強化樹脂層との間に形成される隙間Yに移動する。
したがって、動力伝達軸2Aの製造方法によると、シール剤を金属部材と繊維強化樹脂層との間に形成される隙間Yに好適に移動させ、シール性をさらに向上することができる。
【0059】
<第三の実施形態>
続いて、本発明の第三の実施形態に係る動力伝達軸について、第二の実施形態に係る動力伝達軸2Aとの相違点を中心に説明する。
【0060】
図18に示すように、本発明の第三の実施形態に係る動力伝達軸2Cは、第一の金属部材40Aに代えて、第一の金属部材40Cを備える。
【0061】
<第一の金属部材>
第一の金属部材40Cは、外周面に、非セレーション部41と、セレーション部42と、を備える。非セレーション部(非スプライン部)41は、第一の金属部材40Cの第二の端部側を構成しており、円筒形状を呈する。セレーション部(スプライン部)42は、第一の金属部材40Cの第一の端部側を構成しており、周方向に山部及び谷部が交互に現れる外歯車形状を呈する。セレーション部42において、山部の外径は非セレーション部41の外径と等しく、谷部の外径は非セレーション部41の外径よりも小さい。かかるセレーション部42は、谷部に樹脂34が浸入して硬化することによって、繊維強化樹脂製筒体本体部30との間で動力を好適に伝達する。
【0062】
本実施形態において、繊維強化樹脂製筒体本体部30は、セレーション部42の全体と非セレーション部41の一部とを覆うように形成されており、繊維強化樹脂製筒体本体部30の第一の端部(図において左側となる端部)は、非セレーション部41上に位置する。また、隙間形成部材91による隙間は、セレーション部42の外周面上には形成されておらず、第一のシール剤61は、セレーション部42の軸方向端部(図において右側となる端部)上まで延在することなく硬化している。
【0063】
本発明の第三の実施形態に係る動力伝達軸2Cにおいて、前記金属部材(第一の金属部材40C)は、軸方向一部に形成されるセレーション部42と、軸方向他部の非セレーション部41と、を前記外周面に有しており、前記繊維強化樹脂層は、前記セレーション部42と前記非セレーション部41の一部とを覆うように配置されており、前記繊維強化樹脂層の前記端部は、前記非セレーション部41上に位置する
したがって、動力伝達軸2Cは、第一の金属部材40Cと繊維強化樹脂製筒体本体部30との間のシール性及び嵌合性をともに向上することができる。
【0064】
<第四の実施形態>
続いて、本発明の第四の実施形態に係る動力伝達軸について、第三の実施形態に係る動力伝達軸2Cとの相違点を中心に説明する。
【0065】
図19に示すように、本発明の第四の実施形態に係る動力伝達軸2Dは、第一の金属部材40Cに代えて、第一の金属部材40Dを備える。本実施形態において、繊維強化樹脂筒体本体部30は、セレーション部42の全体を覆うように形成されており、繊維強化樹脂製筒体本体部30の端部は、非セレーション部41とセレーション部42との境界上に位置する。
【0066】
本発明の第四の実施形態に係る動力伝達軸2Dにおいて、前記金属部材(第一の金属部材40D)は、軸方向一部に形成されるセレーション部42と、軸方向他部の非セレーション部41と、を前記外周面に有しており、前記繊維強化樹脂層は、前記セレーション部42を覆うように配置されており、前記繊維強化樹脂層の前記端部は、前記セレーション部42と前記非セレーション部41との境界上に位置する。
したがって、動力伝達軸2Dは、セレーション部42と繊維強化樹脂製筒体本体部30との間に隙間が発生している場合に、かかる隙間を第一のシール剤61によって好適にシールすることができる。
また、動力伝達軸2Dは、非セレーション部41が繊維強化樹脂製筒体本体部30によって覆われている部位をなくすことによって、セレーション部42を長くして嵌合性を向上したり、非セレーション部41を短くして動力伝達軸2Dの軸方向の小型化及び軽量化を実現したりすることができる。
【0067】
<第五の実施形態>
続いて、本発明の第五の実施形態に係る動力伝達軸について、第三の実施形態に係る動力伝達軸2Cとの相違点を中心に説明する。
【0068】
図20に示すように、本発明の第五の実施形態に係る動力伝達軸2Dは、第一の金属部材40Cに代えて、第一の金属部材40Eを備える。本実施形態において、繊維強化樹脂製筒体本体部30は、セレーション部42の全体と非セレーション部41の一部とを覆うように形成されており、繊維強化樹脂製筒体本体部30の端部は、非セレーション部41上に位置する。また、隙間形成部材91による隙間は、セレーション部42の軸方向一端部上まで延設されており、第一のシール剤61は、セレーション部42の軸方向一端部上まで延在して硬化している。すなわち、第一のシール剤61は、非セレーション部41及びセレーション部42に跨って配置されている。
【0069】
本発明の第五の実施形態に係る動力伝達軸2Eにおいて、前記シール剤(第一のシール剤61)は、前記非セレーション41部及び前記セレーション部42に跨って配置されている。
したがって、動力伝達軸2Eは、セレーション部42と繊維強化樹脂製筒体本体部30との間に隙間が発生している場合に、かかる隙間を第一のシール剤61によって好適にシールすることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変形可能である。例えば、マンドレル本体10の大径部(本体部)11は、当該大径部11の中央部から両端部に向かうにつれて径が小さくなる樽形状に膨張してもよく、軸方向にわたって同一径の円筒形状に膨張してもよい。かかる膨張形状は、成型装置(金型)100において大径部11が設置される部位の内周面の形状によって適宜設定可能である。また、マンドレル本体10内に流入されて充填される流体は、マンドレル本体10内を加圧するのに加えて、マンドレル本体10の外周面に配置された熱硬化性樹脂を硬化させるために加熱するためのものであってもよい。なお、かかる流体が加熱を行わない加圧用流体である場合には、熱硬化性樹脂は、別の熱源によって加熱される。
【0071】
また、マンドレル本体10は、ステップS9における樹脂44や成形装置(金型)100の熱によって溶融して除去される構成であってもよい。その他の熱、電気、振動等のエネルギーによってマンドレル本体10を溶融して除去することも可能である。また、各炭素繊維層31~33は、互いに織り込まれた、いわゆるクリンプ構造を呈してもよい。また、変形例として、繊維体は、炭素繊維に限定されず、樹脂層を強化可能な繊維部材(例えば、ガラス繊維、セルロース繊維等)であればよい。
【符号の説明】
【0072】
1 マンドレル
2A,2C,2D,2E 動力伝達軸(繊維強化樹脂製筒体)
10 マンドレル本体
30 繊維強化樹脂製筒体本体部
40A 第一の金属部材(金属部材)
41 非セレーション部
42 セレーション部
50 第二の金属部材(金属部材)
61 第一のシール剤(シール剤)
62 第二のシール剤(シール剤)
91 隙間形成部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20