(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088310
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】両面研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/08 20120101AFI20240625BHJP
B24B 37/28 20120101ALI20240625BHJP
B24B 37/12 20120101ALI20240625BHJP
【FI】
B24B37/08
B24B37/28
B24B37/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203418
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古岡 良彦
(72)【発明者】
【氏名】宗廣 剛志
(72)【発明者】
【氏名】藤永 征輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 篤志
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AA18
3C158AB04
3C158AB08
3C158AC04
3C158BA04
3C158BA06
3C158CA01
3C158CB01
3C158CB10
3C158DA06
3C158DA09
3C158DA12
3C158DA18
3C158EA01
3C158EA06
3C158EA07
3C158EB01
3C158EB05
3C158ED10
3C158ED12
(57)【要約】
【課題】研磨布の開口穴の周辺にキズが発生することがなく基板の表面に線状の痕跡を発生させることがない両面研磨装置を提供する。
【解決手段】両面研磨装置10は、キャリア33が上定盤21の公転軌道上に配置された状態で、キャリアの中心から互いに隣接する保持穴33h同士が最も近づく部分までを半径とした円形の曲線と、上定盤の中心およびキャリアの中心を通過する直線とが交わる点を交点とし、上定盤の中心から交点までの長さを半径として描いた円形の曲線C21、C22を基準とする円環帯状の領域を上定盤の下面の円環領域A21、A22とした場合に、上定盤の下面の領域のうち、円環領域A21、A22以外の外領域A31にのみ複数の貫通穴21a、21bを設けたことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被研磨体をそれぞれ保持する複数の保持穴が設けられた円板状のキャリアと、該キャリアを上下から挟み込んで相対回転する上定盤および下定盤とを有する定盤と、前記上定盤の下面に装着された上研磨布および前記下定盤の上面に装着された下研磨布とを備え、前記上定盤に装着された上研磨布と前記下定盤に装着された下研磨布との間で前記キャリアを自転させながら公転させて前記被研磨体の表面および裏面を研磨する両面研磨装置であって、
前記キャリアが前記上定盤の公転軌道上に配置された状態で、前記キャリアの中心から互いに隣接する保持穴同士が最も近づく部分までを半径とした円形の曲線と、前記上定盤の中心および前記キャリアの中心を通過する直線とが交わる点を交点とし、前記上定盤の中心から前記交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする円環帯状の領域を前記上定盤の下面の円環領域とし、該円環領域以外の前記上定盤の下面の領域を前記上定盤の下面の外領域とし、前記上定盤の下面のうち前記外領域のみに複数の貫通穴が開口していることを特徴とする両面研磨装置。
【請求項2】
前記交点は、前記キャリアの中心よりも前記上定盤の径方向内側で前記直線と交わる第1交点を有し、
前記円環領域は、前記上定盤の中心から前記第1交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする第1円環領域を有することを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項3】
前記交点は、前記キャリアの中心よりも前記上定盤の径方向外側で前記直線と交わる第2交点を有し、
前記円環領域は、前記上定盤の中心から前記第2交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする第2円環領域を有することを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項4】
前記円環領域の幅は、前記キャリアの互いに隣接する保持穴同士が接近する脆弱部における前記キャリアの径方向幅と同じ大きさを有することを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項5】
前記上研磨布は、前記複数の貫通穴に対向する位置に開口する開口穴が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項6】
前記円環領域の幅は、前記交点から前記上定盤の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mmから25mmに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の両面研磨装置。
【請求項7】
請求項1に記載の両面研磨装置が備える前記上研磨布であって、前記上定盤に開口する複数の貫通穴に対向する位置に開口穴が設けられていることを特徴とする上研磨布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被研磨体の表面および裏面を同時に研磨する両面研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の研磨装置として、ウエハが装着され一定方向に自転するキャリアと、ウエハを研磨する研磨布が装着された研磨定盤と、研磨定盤を回転させるモータとを備え、ウエハを1枚毎に研磨する枚葉型の研磨装置が開示されている(特許文献1参照)。この研磨装置は、研磨布が、半径5インチのものは、その中心から外周に向かって研磨剤供給穴の無い領域を有している。
【0003】
また、上定盤および下定盤と、上側研磨布および下側研磨布と、上定盤と下定盤との間に配置されたキャリアとを備え、キャリアには被研磨体が複数枚保持される両面研磨装置が開示されている(特許文献2参照)。特許文献2に記載の両面研磨装置は、キャリアが被研磨体を保持する第1貫通保持穴と、第1貫通保持穴の周りに環状に配置される第2貫通保持穴とを有しており、第1貫通保持穴の中心位置とキャリアの中心位置をずらすことで、定盤の研磨布の硬度の不均一な領域が生ずることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-239961号公報
【特許文献2】WO2013/146135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の両面研磨装置のキャリアには、複数の被研磨体を各々保持する複数の貫通保持穴が設けられている。キャリアは、ウエハと同程度の厚さの薄板部材によって構成されており、これら複数の貫通保持穴のうち、互いに隣り合う貫通保持穴の間の部分は、他の部分と比較して面積が狭く、剛性が低くなりやすい。
【0006】
特許文献1に記載の研磨装置は、複数枚のウエハを同時に研磨するものではなく、キャリアの脆弱部が形成され難いが、特許文献2に記載の両面研磨装置のキャリアには、複数の被研磨体を各々保持する複数の貫通保持穴が設けられているので、互いに隣り合う貫通保持穴の間の部分が脆弱部となり、被研磨体の研磨中に弾性変形するおそれがある。
【0007】
例えば定盤に研磨材を供給するため等の貫通穴が設けられており、定盤の盤面に装着された研磨布の対応する位置に開口穴が開口して設けられている場合に、弾性変形した脆弱部が定盤の貫通穴に干渉して、研磨布の開口穴の周辺にキズを発生させるおそれがある。この開口穴の周辺に発生した研磨布のキズは、被研磨体の研磨作業中に被研磨体の表面に転写され、被研磨体に線状の痕跡が発生するという問題がある。このような線状の痕跡は、被研磨体の品質に影響を与える可能性があり、痕跡の発生を未然に防ぐ必要がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、研磨布の開口穴の周辺にキズを発生させることがなく、被研磨体の表面に線状の痕跡を発生させることがない両面研磨装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る両面研磨装置は、複数の被研磨体をそれぞれ保持する複数の保持穴が設けられた円板状のキャリアと、該キャリアを上下から挟み込んで相対回転する上定盤および下定盤とを有する定盤と、前記上定盤の下面に装着された上研磨布および前記下定盤の上面に装着された下研磨布とを備え、前記上定盤に装着された上研磨布と前記下定盤に装着された下研磨布との間で前記キャリアを自転させながら公転させて前記被研磨体の表面および裏面を研磨する両面研磨装置であって、前記キャリアが前記上定盤の公転軌道上に配置された状態で、前記キャリアの中心から互いに隣接する保持穴同士が最も近づく部分までを半径とした円形の曲線と、前記上定盤の中心および前記キャリアの中心を通過する直線とが交わる点を交点とし、前記上定盤の中心から前記交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする円環帯状の領域を前記上定盤の下面の円環領域とし、該円環領域以外の前記上定盤の下面の領域を前記上定盤の下面の外領域とし、前記上定盤の下面のうち前記外領域のみに複数の貫通穴が開口していることを特徴とする。
【0010】
(2)本発明に係る両面研磨装置は、(1)に記載の両面研磨装置であって、前記交点は、前記キャリアの中心よりも前記上定盤の径方向内側で前記直線と交わる第1交点を有し、前記円環領域は、前記上定盤の中心から前記第1交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする第1円環領域を有することを特徴とする。
【0011】
(3)本発明に係る両面研磨装置は、(1)に記載の両面研磨装置であって、前記交点は、前記キャリアの中心よりも前記上定盤の径方向外側で前記直線と交わる第2交点を有し、前記円環領域は、前記上定盤の中心から前記第2交点までの長さを半径として描いた円形の曲線を基準とする第2円環領域を有することを特徴とする。
【0012】
(4)本発明に係る両面研磨装置は、(1)に記載の両面研磨装置であって、前記円環領域の幅は、前記キャリアの互いに隣接する保持穴同士が接近する脆弱部における前記キャリアの径方向幅と同じ大きさを有することを特徴とする。
【0013】
(5)本発明に係る両面研磨装置は、(1)に記載の両面研磨装置であって、前記上研磨布は、前記複数の貫通穴に対向する位置に開口する開口穴が設けられていることを特徴とする。
【0014】
(6)本発明に係る両面研磨装置は、(1)に記載の両面研磨装置であって、前記円環領域の幅は、前記交点から前記上定盤の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mmから25mmに設定されていることを特徴とする。
【0015】
上記(1)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、上定盤の下面のうち外領域のみに複数の貫通穴が開口しており、上定盤の下面の円環領域内には貫通穴が開口していない。この上定盤の下面の円環領域は、キャリアが自転しながら公転する際に、キャリア脆弱部の移動方向が上定盤の回転方向に沿う方向もしくは対向する方向となる領域であり、この円環領域においてキャリアのキャリア脆弱部が上研磨布を介して上定盤の貫通穴に対向する位置に配置されることはない。したがって、被研磨体を研磨する際に、かかる円環領域においてキャリア脆弱部が上定盤の貫通穴に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺の上研磨布にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0016】
上記(2)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、キャリア脆弱部のキャリア中心線が上定盤の回転方向に対して直交する領域は、上定盤の径方向内側と外側の2つが存在し、そのうち、径方向内側の第1円環領域には貫通穴が開口していない。例えばキャリアの自転方向と上定盤の回転方向がいずれも時計回りのように互いに同じ回転方向の場合に、径方向内側の第1円環領域では、キャリア脆弱部は、上定盤の回転方向に対向する方向に移動するが、第1円環領域には貫通穴が開口していないので、第1円環領域においてキャリアのキャリア脆弱部が上研磨布を介して上定盤の貫通穴に対向する位置に配置されることはない。したがって、被研磨体を研磨する際に、第1円環領域においてキャリア脆弱部が上定盤の貫通穴の部分に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺の上研磨布にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0017】
上記(3)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、キャリア脆弱部のキャリア中心線が上定盤の回転方向に対して直交する領域は、上定盤の径方向内側と外側の2つが存在し、そのうち、径方向外側の第2円環領域には貫通穴が開口していない。例えばキャリアの自転方向と上定盤の回転方向がいずれも時計回りのように互いに同じ回転方向の場合に、径方向内側の第2円環領域では、キャリア脆弱部は、上定盤の回転方向に沿う方向に移動するが、第2円環領域には貫通穴が開口していないので、第2円環領域においてキャリアのキャリア脆弱部が上研磨布を介して上定盤の貫通穴に対向する位置に配置されることはない。したがって、被研磨体を研磨する際に、第2円環領域においてキャリア脆弱部が上定盤の貫通穴の部分に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺の上研磨布にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0018】
上記(4)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、円環領域の幅が、キャリア脆弱部のキャリア径方向幅と同じ大きさを有しているので、この円環領域においてキャリアのキャリア脆弱部が上研磨布を介して上定盤の貫通穴に対向する位置に配置されることはない。したがって、被研磨体を研磨する際に、かかる円環領域においてキャリア脆弱部が上定盤の貫通穴の部分に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺の上研磨布にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0019】
上記(5)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、上研磨布は、複数の貫通穴に対向する位置に開口穴が設けられている。この開口穴を介して例えば研磨剤および流体を上定盤の貫通穴から被研磨体に直接供給することができる。貫通穴と同様に、キャリアのキャリア脆弱部が開口穴に対向する位置に配置されることはないので、キャリア脆弱部が上研磨布の開口穴に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺の上研磨布にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0020】
上記(6)に記載した本発明に係る両面研磨装置によれば、上定盤は、円環領域の幅が、交点から上定盤の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mmから25mmに設定されている。円環領域の幅が、交点から上定盤の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mm~25mmであると、被研磨体を研磨する際に、円環領域においてキャリア脆弱部が上定盤の貫通穴の部分に干渉するのを防ぎ、上定盤の下面の貫通穴周辺にキズが発生するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、定盤の盤面に開口する貫通穴の開口部の周辺にキズを発生させることがなく、被研磨体の表面に線状の痕跡を発生させることがない両面研磨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る両面研磨装置により製造されるハードディスク用基板の図であり、
図1(a)は、ハードディスク用基板の斜視図を示し、
図1(b)は、ハードディスク用基板の断面図を示す。
【
図2】本発明の実施形態に係る両面研磨装置の構成図。
【
図3】本発明の実施形態に係るキャリアおよび下定盤の平面図。
【
図4】本発明の実施形態に係る両面研磨装置の回転方向を説明する図であり、
図4(a)は、上定盤の回転方向を示し、
図4(b)は、下定盤、サンギアおよびキャリアの回転方向を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係るキャリアおよび下定盤の部分拡大平面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る第1交点の部分を拡大して示す部分拡大平面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る第2交点の部分を拡大して示す部分拡大平面図。
【
図10】両面研磨装置の比較例を示す図であり、
図10(a)は、キャリアおよび上定盤の部分を拡大した説明図を示し、
図10(b)は、上定盤の回転方向とキャリア脆弱部が通過する位置を示し、
図10(c)は、上研磨布の平面図を示し、
図10(d)は、被研磨体の平面図を示す。
【
図11】キャリア脆弱部の径方向幅を規定する方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る両面研磨装置を適用した実施形態に係る両面研磨装置10、および本発明に係る両面研磨装置の定盤を適用した実施形態に係る両面研磨装置10の定盤11について図面を参照して説明する。
【0024】
まず、実施形態に係る両面研磨装置10により製造されるハードディスク用基板30について説明する。ハードディスク用基板30は、
図1(a)、
図1(b)に示すように、外径がD、中心の貫通穴hの内径がd、厚みがthの円盤で構成されている。
【0025】
ハードディスク用基板30の外径Dは30mm~270mm程度、内径dは10mm~70mm程度、厚みthは0.3mm~2mm程度の寸法を有している。具体的には外径Dのサイズは3.5inch、2.8inch、2.5inch、内径dは20mm、25mm、厚みthは1.75mm、1.6mm、1.27mm、1.0mm、0.8mm、0.635mm、0.6mm~0.3mmなどが使用される。
【0026】
ハードディスク用基板30は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の板材からなる。ハードディスク用基板30は、高い精度の平滑性と所定の表面硬度を有しており、高速回転による振動の発生を抑制することができる高い剛性および耐衝撃性を有している。なお、ハードディスク用基板30は、ガラスの板材からなるガラス基板であってもよい。
【0027】
次いで、本実施形態に係る両面研磨装置10について図面を参照して説明する。
両面研磨装置10は、
図2に示すように、定盤11と、空圧ユニット12と、流体供給ユニット13と、研磨剤供給ユニット14と、図示しないトルクセンサと、回転速度センサと、研磨剤供給ユニット14から供給された使用済みの研磨剤を回収する研磨剤回収容器と、これらの構成要素の動作を制御する制御装置100を備えている。
【0028】
定盤11は、
図2に示すように、上定盤ユニット11Aと、下定盤ユニット11Bにより構成されている。両面研磨装置10は、キャリア33を上定盤ユニット11Aおよび下定盤ユニット11Bにより挟み込んで、上定盤ユニット11Aと下定盤ユニット11Bとの間で自転させながら公転させることで、キャリア33の保持穴33h(
図3を参照)に保持されている被研磨体Wの表面および裏面(以下、両面という)を同時に研磨する機構を有する。
【0029】
上定盤ユニット11Aは、上定盤21と、上研磨布22と、上定盤駆動モータ23と、回転軸24と、空圧ロッド25と、ユニバーサルジョイント26とを有しており、回転軸24およびユニバーサルジョイント26を介して上定盤駆動モータ23の駆動力が上定盤21に伝達され、上定盤21が回転するように構成されている。なお、実施形態に係る上定盤ユニット11Aは、本発明に係る両面研磨装置の定盤に対応する。本実施形態では、ユニバーサルジョイント26を用いる場合を例に説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、例えば球面軸受などの他の連結部材によって構成することもできる。
【0030】
上定盤21は、所定の厚みを有する円盤形状を有している。上定盤21には、複数の貫通穴21a、21bが設けられている。複数の貫通穴21a、21bは、上定盤21を貫通して、上定盤21の下面に開口している。複数の貫通穴21a、21bは、上定盤21の下面の予め設定された領域である外領域A31(
図5を参照)にそれぞれ開口している。この上定盤21の下面の外領域A31については後述する。
【0031】
複数の貫通穴21a、21bは、研磨剤供給ユニット14の研磨剤が供給される貫通穴21aと、研磨後に上研磨布22の下面に貼り付いているキャリア33や被研磨体Wを剥離するための流体が供給される貫通穴21bの2種類が形成されている。貫通穴21a、21bには、後述する流体供給ユニット13の配管13aと、研磨剤供給ユニット14の配管14aが連通して接続されている。
【0032】
上定盤21には、図示しない回転速度センサが接続されており、上定盤21の回転速度が電気信号に変換され、制御装置100に送信される。
【0033】
上研磨布22は、上定盤21の盤面である下面に装着されている。上研磨布22は、ハードディスク用基板30の表面を研磨する円環状の部材で構成されている。上研磨布22には、上定盤21の各貫通穴21a、21bに対向する位置にそれぞれ開口する開口穴22a、22bが設けられている。上研磨布22を上定盤21の下面に装着することによって、開口穴22aは貫通穴21aに対向して連通し、開口穴22bは貫通穴21bに対向して連通する。
【0034】
開口穴22aからは、貫通穴21aから供給される研磨剤が被研磨体Wに供給され、研磨剤によって上研磨布22による被研磨体Wの研磨が促進される。そして、開口穴22bからは、研磨後に上定盤21と下定盤32との間を開くタイミングで貫通穴21bより噴出される流体がキャリア33や被研磨体Wに向かって直接吹き付けられ、上研磨布22の下面に貼り付いているキャリア33や被研磨体Wが上研磨布22から下方に剥離される。
【0035】
なお、本実施形態に係る貫通穴21a、21bは、本発明に係る両面研磨装置の貫通穴に対応する。また、本実施形態では、上研磨布22に開口穴22aが設けられている構成を例に説明したが、上研磨布22が開口穴22aを有しておらず、上研磨布22を通り抜けさせて研磨剤の供給や流体を吹き付ける構成としてもよい。
【0036】
上定盤駆動モータ23は、図示しない静止部材に取り付けられており、タイミングプーリなどのプーリ23aおよびタイミングベルトなどのベルト23bを介して回転軸24に連結されている。上定盤駆動モータ23の駆動力は、プーリ23aおよびベルト23bを介して回転軸24に伝達され、回転軸24を上方から見て回転軸24を時計回りに回転させ、上定盤21も時計回りに回転させることができる。
【0037】
回転軸24には、軸線方向に沿って中心を貫通する貫通穴が形成されており、貫通穴には、空圧ロッド25が挿入されている。回転軸24の下部にはフランジ24aが形成されており、フランジ24aには複数のロッド24bが、下面から下方に突出して設けられている。
【0038】
空圧ロッド25は、回転軸24の貫通穴に挿入される軸部と軸部の下方に形成されたフランジ部と、ユニバーサルジョイント26に連結される連結部とを有している。空圧ロッド25の連結部は、ユニバーサルジョイント26を介して上定盤21に連結され、空圧ユニット12の圧力が上定盤21に伝達されるようになっている。そして、空圧ロッド25には、回転軸24の回転が伝達され、回転軸24の回転が上定盤21に伝達されるように構成されている。
【0039】
ユニバーサルジョイント26は、連結される2つの部材が互いに交わる角度が自由に変化する自在継手からなる。ユニバーサルジョイント26には、上定盤21と空圧ロッド25の連結部が連結されており、更に空圧ロッド25のフランジ部が回転軸24に連結されているので、上定盤21の水平面と回転軸24の軸線とが交わる交角が変化してもユニバーサルジョイント26により上定盤21の盤面が下定盤32の上面に沿うように構成されている。
【0040】
下定盤ユニット11Bは、基台となるテーブル31と、テーブル31に回転自在に取り付けられた下定盤32と、下研磨布37と、サンギア34と、下定盤32を回転させる下定盤駆動モータ35と、サンギア34を回転させるサンギア駆動モータ36とにより構成されている。
【0041】
テーブル31は、所定の場所に設置された静止部材であり、下定盤32を回転自在に支持している。また、テーブル31は、下定盤32に装着された下研磨布37の外周面に対向する内周面に内歯31tが形成されており、後述するキャリア33の外歯33tとテーブル31の内歯31tとが噛み合うように構成されている。また、テーブル31は、後述する下定盤32の軸部32dを回転自在に支持している。
【0042】
下定盤32は、上面が上定盤21の下面と対向する下定盤フランジ32aと、下定盤フランジ32aの中心から下方に向かって突出する軸部32dとを有しており、テーブル31に回転自在に支持されている。軸部32dには、軸線方向に沿って中心を貫通する貫通穴が形成されている。この貫通穴には、後述するサンギア34の軸部34bが回転自在に挿入されている。
【0043】
下研磨布37は、下定盤フランジ32aの上面に装着されている。下研磨布37は、上研磨布22と同様に、ハードディスク用基板30の表面を研磨する円環状の部材で構成されている。
【0044】
キャリア33は、
図2および
図3に示すように、外歯33tが形成された薄板の円板部材からなり、外歯33tが後述するサンギア34の外歯34tとテーブル31の内歯31tの両方に外歯33tが噛み合う直径を有している。キャリア33は、サンギア34の外歯34tとテーブル31の内歯31tに噛み合いながら、自転するとともに、サンギア34の周りを公転する。
【0045】
キャリア33は、薄板円板状の本体部33aを有しており、被研磨体Wを自転可能に保持する複数の保持穴33hが形成されている。本実施形態では、一例として、5個の保持穴33hが本体部33aの中心点を中心に周方向に等間隔に形成されている。また、サンギア34の周りを公転するキャリア33は、10個とした。したがって、1度の研磨工程で研磨される被研磨体Wは50個となり、この被研磨体Wの個数が1バッチとして扱われることがある。また、キャリア33には、図示しない回転速度センサが接続されており、キャリア33の回転速度が電気信号に変換され、制御装置100に送信される。なお、1バッチの搭載枚数は、本実施形態に限られない。
【0046】
キャリア33の本体部33aの厚みは1.0mm以下となっており、厚みを薄くすることで、比較的に薄い被研磨体Wを研磨できる。保持穴33h間の距離が6.5mmを超えると、キャリア33に形成される保持穴33hの数が減少し、一度に研磨することができる被研磨体Wの数が減少するおそれがある。
【0047】
サンギア34は、その周囲を囲むように複数のキャリア33を並べた場合に各キャリア33の外歯33tと噛み合う外歯34tが形成された歯車部34aと、サンギア34をテーブル31に対して回転可能に支持する軸部34bとを有している。サンギア34は、サンギア駆動モータ36により軸部34bが回転され、上方から見て反時計回りに回転される。
【0048】
下定盤駆動モータ35は、タイミングプーリなどのプーリ35aおよびタイミングベルトなどのベルト35bを介して下定盤32の軸部32dに連結されている。下定盤駆動モータ35の駆動力は、軸部32dに伝達され、軸部32dを上方から見て反時計回りに回転させ、下定盤32を反時計回りに回転させる。
【0049】
サンギア駆動モータ36は、タイミングプーリなどのプーリ36aおよびタイミングベルトなどのベルト36bを介してサンギア34の軸部34bに連結されている。サンギア駆動モータ36の駆動力は、軸部34bに伝達され、軸部34bを上方から見て反時計回りに回転させ、サンギア34を反時計回りに回転させる。
【0050】
両面研磨装置10においては、
図4(a)に示すように、両面研磨装置10を上方から見て、上定盤21は時計回りに回転する。また、
図4(b)に示すように、下定盤32が反時計回りに回転し、キャリア33が時計回りに自転しつつ反時計回りに公転し、サンギア34が反時計回りに回転する。なお、サンギア34の回転方向は、逆の時計回りに回転させてもよい。この場合は、キャリア33の回転方向が逆、すなわち反時計回りに自転、時計回りに公転になる。
【0051】
空圧ユニット12は、
図2に示すように、上下に往復動する複動形のロッドシリンダからなり、図示しないピストン、シリンダボディ、ピストンロッドにより構成されている。ピストンロッドは、上定盤ユニット11Aの空圧ロッド25に接続され、空圧ロッド25およびユニバーサルジョイント26を介して上定盤21を昇降させる。空圧ユニット12は、空圧ロッド25によって所定の押圧力で上定盤21を下定盤32に向かって押圧することができる。
【0052】
流体供給ユニット13は、配管13aと、図示しないポンプと、圧力計と、開閉バルブとを有しており、上定盤21の貫通穴21bから上研磨布22の開口穴22bを介してキャリア33および被研磨体Wに流体を供給して、キャリア33および被研磨体Wを上定盤ユニット11Aから剥離させる構成を有する。流体としては、例えばエアや水が挙げられる。ポンプは、制御装置100に接続されており、動作が制御される。圧力計は、制御装置100に接続されており、ポンプの圧力(MPa)の信号は、制御装置100に送信される。
【0053】
研磨剤供給ユニット14は、配管14aと、図示しないポンプと、圧力計と、開閉バルブとを有しており、被研磨体Wを研磨する研磨剤を、上定盤21の貫通穴21aから上研磨布22の開口穴22aを介して上定盤21と下定盤32との間に供給する。ポンプは、制御装置100に接続されており、動作が制御される。圧力計は、制御装置100に接続されており、ポンプの圧力(MPa)の信号は、制御装置100に送信される。
【0054】
研磨剤はこれに限られるものではなく種々変更できるが、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)およびケイ素(SiO2)からなる砥粒と、エッチング成分からなる化学成分とを含む液状の研磨剤からなる。研磨剤は、砥粒自体が有する表面化学作用、または、化学成分の作用によって、研磨剤と被研磨体Wとの相対運動による機械的研磨効果を増大させ、平滑な研磨面が得られるように構成されている。
【0055】
研磨剤回収容器は、研磨剤供給ユニット14から供給されて使用済みとなった研磨剤を回収する容器である。
【0056】
制御装置100は、演算処理を行う中央処理装置101および制御プログラムを格納したメモリ102を有している。制御装置100は、空圧ユニット12、流体供給ユニット13、研磨剤供給ユニット14、上定盤駆動モータ23、下定盤駆動モータ35およびサンギア駆動モータ36にそれぞれ接続され、各構成要素の動作を制御する。
【0057】
次いで、実施形態に係る上定盤21に形成されている複数の貫通穴21a、21bの位置と、キャリア33に形成されている複数の保持穴33hの位置との関係について、
図5および
図6を参照して説明する。
【0058】
図5は、本発明の実施形態に係る上定盤の平面図であり、上定盤を透過させて上定盤の下面とその下方に配置されるキャリアを示した部分平面図である。そして、
図6および
図7は、キャリア脆弱部の移動方向が上定盤の回転方向に沿う方向もしくは対向する方向となる状態を示す図であり、本発明の実施形態に係る第1交点および第2交点の部分を拡大して示す部分拡大平面図である。
【0059】
キャリア33は、
図5から
図7に示すように、互いに隣り合う保持穴33h同士の間の幅が狭くなるに応じて、保持穴33h間の面積が小さくなり、かかる部分の剛性が局所的に低くなる。このキャリア33の剛性が所定値よりも低い部分がキャリア脆弱部33bとなる(
図6および
図7にハッチングで示す領域)。キャリア脆弱部33bは、キャリア33の中心P11から互いに隣り合う2つの保持穴33hが最も近づく部分の中心点33cまでの半径r11の曲線を基準として、キャリア33の径方向内側および径方向外側に広がるキャリア径方向長さw11の領域となる。キャリア脆弱部33bは、円環帯状の領域A11内に位置し、キャリア33の回転によって移動する。
【0060】
キャリア33は、下定盤32と上定盤21との間に配置され、
図3および
図4(b)に示すように、キャリア33の外歯33tをテーブル31の内歯31tおよびサンギア34の外歯34tに噛み合わせることにより、下定盤32および上定盤21の間でサンギア34の回りを周回する公転軌道上に配置される。
【0061】
ここで、
図6に示すように、キャリア33の中心P11から互いに隣接する保持穴33h同士が最も近づく部分の中心点33cまでを半径r11とした一点鎖線で示す円形の曲線C11と、上定盤21の中心P21およびキャリア33の中心P11を通過する直線L1とがキャリア33の中心P11よりも上定盤21の径方向内側で交わる点を第1交点I11とする。そして、上定盤21の中心P21から第1交点I11までを第1半径r21とし、第1半径r21として描いた円形の曲線C21を基準とする円環帯状の領域を上定盤21の下面の第1円環領域A21とする。
【0062】
また、
図7に示すように、曲線C11と、上定盤21の中心P21およびキャリア33の中心P11を通過する直線L1とがキャリア33の中心P11よりも上定盤21の径方向外側で交わる点を第2交点I12とする。そして、上定盤21の中心P21から第2交点I12までの長さを第2半径r22とし、第2半径r22として描いた円形の曲線C22を基準とする円環帯状の領域を上定盤21の下面の第2円環領域A22とする。
【0063】
図5に示すように、上定盤21の下面のうち、第1円環領域A21および第2円環領域A22以外の領域を上定盤21の下面の外領域A31とすると、複数の貫通穴21a、21bは、上定盤21の下面のうち外領域A31の領域内にのみに開口するように設けられている。つまり、
図5に示すように、複数の貫通穴21a、21bは、第1円環領域A21および第2円環領域A22には設けられていない。
【0064】
第1円環領域A21および第2円環領域A22の幅w21、w22は、キャリア脆弱部33bにおけるキャリア33の径方向幅w11と同じ大きさを有している。具体的には、第1交点I11、第2交点I12から上定盤21の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mm~25mmで形成される。
【0065】
図11は、キャリア脆弱部の径方向幅を規定する方法の一例を示す図である。
キャリア脆弱部33bの径方向幅w11は、キャリア脆弱部33bの中心点33cから各保持穴33hの配置位置までの距離との比によって規定できる。例えば、キャリア33の中心P11から保持穴33hにおけるキャリア33の径方向内側に最も接近した点までを半径d1とする第1仮想円D11と、キャリア33の中心P11から保持穴33hにおけるキャリア33の径方向外側に最も離れた点までを半径d2とする第2仮想円D21を規定する。キャリア脆弱部33bの径方向幅w11のうち、キャリア脆弱部33bの中心点33cからキャリア33の径方向に沿った第1仮想円D11までの距離W51に対するキャリア脆弱部33bの中心点33cから径方向内側の端部までの幅W31の割合が30%から80%の範囲となるように設定されている。そして、キャリア脆弱部33bの径方向幅w11のうち、キャリア脆弱部33bの中心点33cからキャリア33の径方向に沿った第2仮想円D21までの距離W41に対するキャリア脆弱部33bの中心点33cから径方向外側の端部までの幅W31の割合が15%から40%の範囲となるように設定されている。
【0066】
次いで、実施形態に係るハードディスク用基板30の製造方法について簡単に説明する。実施形態に係るハードディスク用基板30は、実施形態に係る両面研磨装置10により製造される。実施形態に係るハードディスク用基板30の製造方法は、上工程と下工程とを含んで構成されている。上工程は、旋盤工程、第1の焼鈍工程(PLB)、グラインダ工程、第2の焼鈍工程(PGB)、めっき工程、第3の焼鈍工程(PPB)を含み、下工程は、上工程の後に行われ、ポリッシュ工程、表面検査工程、清浄度検査工程を含む。上工程および下工程の各工程は順に行われ、各工程を経てハードディスク用基板30が製造される。ポリッシュ工程以外の各工程は、これに限られるものではないが、公知の工程で構成されているので簡単に説明する。
【0067】
なお、下工程の後に、下工程を経たハードディスク用基板30の出荷工程が行われる。出荷工程は、出荷準備工程、ラベル貼り付け工程、真空工程、梱包工程を含み、出荷工程の各工程は順に行われる。
【0068】
以下、各工程について順に説明する。旋盤工程においては、所定の外径D(mm)および内径d(mm)のハードディスク用基板30が得られる寸法の円盤状の基板が旋盤による切削加工で形成される。
【0069】
第1の焼鈍工程(PLB)においては、旋盤工程で形成された基板を高温に保持した後徐冷する焼鈍が行われる。焼鈍により切削加工で生じた内部ひずみが除去される。
【0070】
グラインダ工程においては、第1の焼鈍工程(PLB)において焼鈍された基板に対して、回転する砥石研削、研削などの加工を2段階で行い、所定の厚みthのハードディスク用基板30が高い精度で得られる寸法の基板が形成される。
【0071】
次いで、第2の焼鈍工程(PGB)において、焼鈍が行われ、めっき工程においては、第2の焼鈍工程(PGB)において焼鈍された基板に対して、所定の厚みの無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)が施される。次いで、第3の焼鈍工程(PPB)においては、焼鈍が行われる。
【0072】
ポリッシュ工程においては、めっきが施された基板、即ち、被研磨体Wに対して両面研磨装置10の定盤11により、鏡面研磨が2段階で実施される。ポリッシュ工程においては、まず、
図3に示すキャリア33に被研磨体Wの1バッチ分50個がセットされる。被研磨体Wのセットが完了すると、設定された研磨条件で両面研磨装置10が稼働し被研磨体Wの両面に対する鏡面研磨が開始される。
【0073】
両面研磨装置10が稼働すると、
図4(a)および
図4(b)に示すように、上定盤21が時計回りに回転し、下定盤32、キャリア33およびサンギア34が反時計回りに回転する。なお、サンギア34は、時計回りに回転するようにしてもよい。この場合は、キャリア33の回転方向は時計回りになる。
【0074】
鏡面研磨が開始されると、研磨剤供給ユニット14から研磨剤が被研磨体Wに供給される。被研磨体Wは、上定盤21に装着された上研磨布22と、下定盤32に装着された下研磨布37との間で被研磨体Wの両面が同時に研磨される。
【0075】
第1円環領域A21および第2円環領域A22は、キャリア33が自転しながら公転する際に、キャリア脆弱部33bの移動方向V11が上定盤21の回転方向V21に沿う方向(
図7を参照)もしくは対向する方向(
図6を参照)となる領域である。この第1円環領域A21および第2円環領域A22では、キャリア33の中心P11とキャリア脆弱部33bの中心点33cとの間を結ぶキャリア中心線が上定盤21の回転方向V21に対して直交もしくはほぼ直交に近い角度で交差する。そして、第1円環領域A21および第2円環領域A22では、曲線C21、C22の接線と、曲線C11の接線とが一致もしくは所定の角度範囲内に収まる。
【0076】
上定盤21においては、
図5に示すように、上定盤21の貫通穴21a、21bは、前述のように、第1円環領域A21および第2円環領域A22の領域内には開口しておらず、外領域A31内にのみ開口している。したがって、第1円環領域A21および第2円環領域A22においてキャリア33のキャリア脆弱部33bが上定盤21の貫通穴21a、21bに対向することはない。したがって、被研磨体Wを研磨する際に、キャリア脆弱部33bが弾性変形したとしても、第1円環領域A21および第2円環領域A22においてキャリア脆弱部33bが上定盤21の貫通穴21a、21bの部分に干渉することはない。したがって、キャリア脆弱部33bが上定盤21の貫通穴21a、21bの部分に干渉して上研磨布22の開口穴22a、22bの周辺にキズが発生するのを防ぐことができる。つまり、上定盤21の貫通穴21a、21b周辺の上研磨布22にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0077】
表面検査工程においては、平坦度検査工程で、所定の基準値を超えていない被研磨体Wについて被研磨体Wの表面の状態が所定の基準値を超えているか否かが検査され、検査の結果、被研磨体Wの表面状態が所定の基準値を超えていないもののみが次工程に送られる。
【0078】
清浄度検査工程においては、表面検査工程で、被研磨体Wの表面状態が所定の基準値を超えていないもののみについて清浄度検査が行われる。被研磨体の所定のロットからサンプルを抜き取り,サンプルの清浄度の検査結果をロット判定基準と比較して,口ットの合格・不合格の判定が下される。合格と判定された被研磨体Wは、次の出荷工程に進められる。
【0079】
なお、平坦度検査および表面検査の所定の基準値、並びに清浄度検査のロット判定基準
は、ハードディスク用基板の大きさ厚みなどの設定諸元や実験値などのデータに基づいて適宜選択される。
【0080】
以下、実施形態に係る両面研磨装置10および両面研磨装置10の効果について説明する。
【0081】
本実施形態に係る両面研磨装置10は、複数の被研磨体Wをそれぞれ保持する複数の保持穴33hが設けられた円板状のキャリア33と、キャリア33を上下から挟み込んで相対回転する上定盤21および下定盤32とを有する定盤11を備え、上定盤21と下定盤32との間でキャリア33を自転させながら公転させて被研磨体Wの両面を研磨する。
【0082】
本実施形態に係る両面研磨装置10は、複数の貫通穴21a、21bが、上定盤21の下面の外領域A31にのみに開口しており、第1円環領域A21および第2円環領域A22には開口していない。上定盤21の下面の第1円環領域A21および第2円環領域A22は、
図6および
図7に示すように、キャリアが自転しながら公転する際に、キャリア脆弱部33bの移動方向が上定盤21の回転方向に沿う方向もしくは対向する方向となる領域である。この第1円環領域A21および第2円環領域A22には、貫通穴21a、21bは開口しておらず、第1円環領域A21および第2円環領域A22において、キャリア33のキャリア脆弱部33bが上定盤21の複数の貫通穴21a、21bに対向することはない。
【0083】
したがって、被研磨体Wを研磨する際に、第1円環領域A21および第2円環領域A22においてキャリア脆弱部33bが上定盤21の貫通穴21a、21bに干渉するのを防ぎ、上研磨布22の開口穴22a、22bの周辺、つまり、上定盤21の貫通穴21a、21b周辺の上研磨布22にキズが発生するのを防ぐことができる。その結果、従来の両面研磨装置において、研磨布に形成された開口穴の付近にキズが生ずるという問題が解消され、最適な鏡面研磨がされた被研磨体Wが得られるという効果が得られる。
【0084】
本実施形態に係る両面研磨装置10は、第1円環領域A21および第2円環領域A22のキャリア径方向の幅w21、w22は、第1交点I11、第2交点I12から上定盤21の径方向内側および径方向外側にそれぞれ10mm~25mmであり、キャリア脆弱部33bにおけるキャリア径方向幅と同じ大きさを有している。
【0085】
第1円環領域A21および第2円環領域A22の幅w21、w22が、キャリア脆弱部33bのキャリア径方向幅と同様の10mmから25mmの幅であるので、複数の貫通穴21a、21bの部分を、キャリア脆弱部33bが通過することはない。したがって、キャリア脆弱部33bが変形して貫通穴21a、21bに干渉するのを防ぐことができる。その結果、上研磨布22の複数の開口穴22a、22bの周辺部分が、キャリア脆弱部33bによって傷つけられることはなく、被研磨体Wは、適正に研磨され、従来の研磨布において、発生した傷により被研磨体Wに転写されていた模様のようなもの(
図10(d)を参照)が発生することはなく従来の模様の問題が解消されるという効果が得られる。
【0086】
本実施形態に係る両面研磨装置10は、複数の貫通穴21a、21bが上定盤21を貫通し、これら複数の貫通穴21a、21bに対向する位置に上研磨布22を貫通する開口穴22a、22bが設けられている。その結果、研磨剤を研磨剤供給ユニット14から配管14aを通して被研磨体Wの両面に供給することができる。また、流体を流体供給ユニット13から、配管13aを通して上研磨布22に供給することができ、上研磨布22に貼り付いている被研磨体Wを上研磨布22から剥離させることができる。
【0087】
図8は、本実施形態における貫通穴の位置を示し、
図9は、比較例における貫通穴の位置を示す図、
図10は、両面研磨装置の比較例を示す図である。
図10(a)は、キャリアおよび上定盤の部分の拡大図、
図10(b)は、上定盤の回転方向とキャリア脆弱部が通過する位置を示す図、
図10(c)は、研磨布の平面図、
図10(d)は、被研磨体の平面図を示す。
【0088】
図8に示す本実施形態の両面研磨装置と、
図9および
図10に示す比較例とでは、上定盤21の下面に設けられる複数の貫通穴の位置が異なっており、比較例では、
図9および
図10(b)に示すように、第1円環領域A21および第2円環領域A22にも複数の貫通穴21a、21bが設けられている。したがって、
図10(c)に示すように、上研磨布22の開口穴22a、22bの周囲に線状のキズScが発生する。このように貫通穴21a、21bの部分で発生した上研磨布22のダメージは、
図10(d)に示すように、被研磨体Wの表面に転写され、被研磨体Wに線状の痕跡が発生するおそれがある。なお、
図10(d)に示す線状の痕跡は、被研磨体Wの目視で確認できるものではなく、光学系表面解析装置(例えば、Candela(KLA tencor社製)の6100シリーズなど)で確認することができるものである。このような痕跡は、目視で確認できるか否かにかかわらず、発生させない必要がある。
【0089】
これに対し、本実施形態に係る両面研磨装置10は、
図8に示すように、複数の貫通穴21a、21bが、第1円環領域A21および第2円環領域A22には開口していない。したがって、被研磨体Wを研磨する際に、第1円環領域A21および第2円環領域A22においてキャリア脆弱部33bが上定盤21の貫通穴21a、21bに干渉するのを防ぎ、上研磨布22の開口穴22a、22bの周辺にキズが発生するのを防ぐことができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。また、本実施形態に記載の部材は一例であって、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0091】
10・・・両面研磨装置、11・・・定盤、11A・・・上定盤ユニット(定盤)、11B・・・下定盤ユニット(定盤)、21・・・上定盤(定盤)、21a、21b・・・貫通穴、22・・・上研磨布、22a、22b・・・開口穴、30・・・ハードディスク用基板、32・・・下定盤(定盤)、33・・・キャリア、33h・・・保持穴、34・・・サンギア、37・・・下研磨布、A21・・・第1円環領域、A22・・・第2円環領域、A31・・・外領域、I11・・・第1交点、I12・・・第2交点、W・・・被研磨体