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  • 特開-無効電力補償装置 図1
  • 特開-無効電力補償装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088315
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】無効電力補償装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02J3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203425
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】大島 広暉
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066FA05
5G066FB01
5G066FB15
(57)【要約】
【課題】電圧フリッカを低減しつつ、母線における力率の悪化を改善できる無効電力補償装置を提供する。
【解決手段】実施形態は、交流アーク炉を構成する電極およびスクラップに電力を供給する母線から電圧フリッカを検出し、前記電圧フリッカおよび前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電圧フリッカにもとづく無効電力である第1無効電力を相殺するように第1指令値を生成する第1指令値生成部と、前記母線の電圧および前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電極およびスクラップに注入される無効電力である第2無効電力を相殺するように第2指令値を生成する第2指令値生成部と、前記第1指令値および前記第2指令値にもとづいて、前記母線に注入する無効電力を生成する電力変換器と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流アーク炉を構成する電極およびスクラップに電力を供給する母線から電圧フリッカを検出し、前記電圧フリッカおよび前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電圧フリッカにもとづく無効電力である第1無効電力を相殺するように第1指令値を生成する第1指令値生成部と、
前記母線の電圧および前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電極およびスクラップに注入される無効電力である第2無効電力を相殺するように第2指令値を生成する第2指令値生成部と、
前記第1指令値および前記第2指令値にもとづいて、前記母線に注入する無効電力を生成する電力変換器と、
を備えた無効電力補償装置。
【請求項2】
前記電力変換器は、前記第1指令値と前記第2指令値との加算値にもとづいて、前記無効電力を生成する請求項1記載の無効電力補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電気炉の電力系統に接続される無効電力補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気炉が接続されている系統では、無効電力の急峻な変動により、電圧フリッカが発生する。電圧フリッカを発生する負荷を有する需要家は、無効電力補償装置を設置し、電圧フリッカを電気炉に電力を供給する電力系統を所有する電力会社が定めた規制値以内に収める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-036033号公報
【特許文献2】特開2011-115018号公報
【特許文献3】特開平2-253318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気炉に設置される無効電力補償装置は、操業中にフリッカ抑制制御を行う。一方で、電気炉は、溶解末期、精錬期等において、電圧フリッカ発生量が低減し、力率が悪化するため、系統電圧の低下による投入電力不足や電力損失増加のおそれがある。
【0005】
本発明の実施形態は、電圧フリッカを低減しつつ、母線における力率の悪化を改善できる無効電力補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、交流アーク炉を構成する電極およびスクラップに電力を供給する母線から電圧フリッカを検出し、前記電圧フリッカおよび前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電圧フリッカにもとづく無効電力である第1無効電力を相殺するように第1指令値を生成する第1指令値生成部と、前記母線の電圧および前記電極に流れる電流にもとづいて、前記電極およびスクラップに注入される無効電力である第2無効電力を相殺するように第2指令値を生成する第2指令値生成部と、前記第1指令値および前記第2指令値にもとづいて、前記母線に注入する無効電力を生成する電力変換器と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、電圧フリッカを低減しつつ、母線における力率の悪化を改善できる無効電力補償装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図2図2(a)および図2(b)は、実施形態に係る無効電力補償装置の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る無効電力補償装置を例示する模式的なブロック図である。
図1には、実施形態に係る無効電力補償装置10のほか、無効電力補償装置10が用いられる電気炉の構成が模式的に示されている。この電気炉では、電力系統1から系統インピーダンス102を介して母線100が配電されている。母線100には、炉用変圧器3を介して、電極5が接続されている。電力系統1および母線100は、たとえば、3相交流であり、電極5は、各相に少なくとも1つ設けられる。電極5は、炉4内に装入されたスクラップ6に対向するように設けられている。図示しないが、電極5は、電極昇降制御装置によって、アーク放電を維持するように、スクラップ6との間の距離を適切に制御される。
【0011】
電極5に流れる電流は、変流器2によって検出される。電極5には、母線100の電圧が印加され、母線100の電圧は、計器用変圧器7によって検出される。
【0012】
無効電力補償装置10は、変流器2および計器用変圧器7に接続されている。無効電力補償装置10は、変流器2によって検出された母線100から炉用変圧器3に流れる電流i0のデータを入力する。無効電力補償装置10は、計器用変圧器7によって検出された母線100の電圧v0のデータを入力する。無効電力補償装置10は、電流i0および電圧v0のデータにもとづいて、適切な無効電力に関する指令値を生成し、生成した指令値にもとづいて、母線100に無効電力を注入し、母線100の無効力電力を補償する。
【0013】
無効電力補償装置10の構成例について説明する。
図1に示すように、無効電力補償装置10は、第1指令値生成部12と、第2指令値生成部14と、加算器16と、電力変換器18と、を備える。
【0014】
第1指令値生成部12は、変流器2および計器用変圧器7に接続されている。第1指令値生成部12は、変流器2によって検出された炉用変圧器3の1次側に流れる電流i0のデータを入力する。第1指令値生成部12は、計器用変圧器7によって検出された母線100の電圧v0のデータを入力する。第1指令値生成部12は、電圧フリッカ検出機能を有しており、入力した電圧v0および電流i0のデータから電圧フリッカを抽出する。第1指令値生成部12は、抽出した母線100の電圧フリッカのデータおよび電流i0のデータにもとづいて、電圧フリッカによって発生する無効電力(第1無効電力)を相殺するように第1指令値Q1*を生成して出力する。
【0015】
第2指令値生成部14は、変流器2および計器用変圧器7に接続されている。第2指令値生成部14は、変流器2によって検出された炉用変圧器3の1次側に入力する電流i0のデータを入力する。第2指令値生成部14は、母線100の電圧から電圧フリッカに対応する成分を除去する機能を有している。電圧フリッカ成分を除去する機能は、たとえば、フィルタ回路等により実現される。なお、第2指令値生成部14は、第1指令値生成部12によって検出された電圧フリッカ検出値があらかじめ設定されたしきい値以下となった場合に、第2指令値Q2*を出力して、母線100の力率を改善するようにしてもよい。
【0016】
第2指令値生成部14は、母線100の電圧v0から電圧フリッカ成分を除去した電圧のデータおよび電流i0のデータを用いて無効電力(第2無効電力)の値を演算する。第2指令値生成部14は、電極5およびスクラップ6に注入されている無効電力電力を相殺するように第2指令値Q2*を生成して出力する。
【0017】
加算器16は、第1指令値生成部12の出力および第2指令値生成部14の出力が接続されている。加算器16は、第1指令値生成部12から出力される第1指令値Q1*に、第2指令値生成部14から出力される第2指令値Q2*を加算して出力する。加算器16は、リミッタ機能を有していてもよい。
【0018】
電力変換器18は、加算器16の出力に接続されている。電力変換器18の出力は、母線100に接続されており、加算器16から出力された無効電力指令値Q*(=Q1*+Q2*)に追従するように、無効電力を生成して出力する。
【0019】
実施形態に係る無効電力補償装置10の動作について説明する。
図2(a)および図2(b)は、実施形態に係る無効電力補償装置の動作を説明するための模式図である。
図2(a)に示すように、この例では、屋内系統に接続された電極および無効電力補償装置(図では、SVCSと表記)に加え、進相コンデンサが接続されている。進相コンデンサは、電気炉のアーク放電時の動作により、屋内系統が遅れ位相となることを補償するために設けられている。
【0020】
電気炉を構成する電極およびスクラップに注入される無効電力をQとし、進相コンデンサに注入される無効電力をQとし、電力系統から注入される無効電力をQとする。この場合には、無効電力補償装置は、Q-(Q+Q)となるように無効電力QSVCSを母線100に注入する。
【0021】
図2(b)の上段の図は、アーク炉の無効電力Qの時間変化と、進相コンデンサの無効電力Qを示している。
図2(b)の中段の図は、無効電力補償装置10の第1指令値生成部12が生成する指令値を表している。
図2(b)の下段の図は、無効電力補償装置10の第1指令値生成部12および第2指令値生成部14によって生成された無効電力指令値により、無効電力補償された屋内系統の無効電力の時間変化を表している。
【0022】
図2(b)の上段の図に示すように、アーク炉に注入される無効電力は、電圧フリッカにより時間変動する。そして、無効電力Qは、位相遅れをともなっている。
【0023】
図2(b)の中段の図に示すように、電圧フリッカによる無効電力の変動を相殺するように、指令値を生成して、電力変換器に供給すると、電力変換器は電圧フリッカを相殺するように無効電力を生成して出力する。
【0024】
このとき、進相コンデンサによる進み位相の無効電力Qが加算されて、屋内系統に注入される。そのため、図2(c)の下段の図に示すように、屋内系統の無効電力は、進みや遅れなく、無効電力の変動を抑制して、屋内系統に注入される。
【0025】
ここで、スクラップの溶解の程度等により、Qの遅れの度合いが大きくなることがある。その場合には、Qの振幅自体は小さいことが多い。Qの遅れが大きくなると、進相コンデンサの進み無効電力は固定値であるため、無効電力補償が不十分になることがある。
【0026】
図1に示したように、実施形態に係る無効電力補償装置10では、アーク炉の無効電力を監視し、さらに遅れた無効電力を相殺するように第2指令値を生成する。無効電力補償装置10は、電圧フリッカを低減するための第1指令値を生成し、アーク炉の無効電力の遅れを補償するための第2指令値を生成して、これらを加算した無効電力指令値を生成して、電力変換器に出力するので、スクラップの溶解工程のほとんどの工程において、屋内系統の無効電力を補償することが可能になり、母線100の力率を改善することができる。
【0027】
実施形態に係る無効電力補償装置10の効果について説明する。
実施形態に係る無効電力補償装置10は、上述したように、電気炉においてスクラップを溶解する過程で発生する電圧フリッカにもとづく無効電力を相殺するように第1指令値Q1*を生成する。電力変換器18は、第1指令値Q1*に追従するように無効電力を生成して、母線100に注入する。
【0028】
実施形態に係る無効電力補償装置10は、第1指令値Q1*のほか、電圧フリッカ以外の無効電力を補償するように第2指令値Q2*を生成する。無効電力補償装置10は、第1指令値Q1*に第2指令値Q2*を加算して、電力変換器18に供給するので、電力変換器18は、電圧フリッカにもとづく無効電力のほか生じる遅れ無効電力を補償するように無効電力を生成して、母線100に注入する。
【0029】
すでに述べたように、電気炉では、スクラップの溶解末期や精錬期等においては、電圧フリッカが低減するものの、遅れ力率が生じやすく、投入電力の低下や電力損失が増加するおそれがある。実施形態に係る無効電力補償装置10では、上述のように第1指令値Q1*と第2指令値Q2*の加算値を無効電力指令値Q*とするので、電力変換器18の出力容量まで、無効電力を母線100に注入することが可能になる。
【0030】
そのため、十分な電力を、炉4に装入されたスクラップ6に供給することができ、工程完了までの期間の増大を抑制し、したがって、生産性の向上に寄与することができる。
【0031】
このようにして、電圧フリッカを低減しつつ、母線における力率の悪化を改善できる無効電力補償装置を実現することができる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
1…電力系統、2…変流器、3…炉用変圧器、4…炉、5…電極、6…スクラップ、7…計器用変圧器、10…無効電力補償装置、12…第1指令値生成部、14…第2指令値生成部、16…加算器、18…電力変換器、100…母線
図1
図2