(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088316
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】突極形回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/32 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02K1/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203426
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 光
(72)【発明者】
【氏名】片原田 浩之
【テーマコード(参考)】
5H601
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601CC14
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD27
5H601EE18
5H601EE25
5H601GA22
5H601GA32
5H601GE17
(57)【要約】
【課題】回転子の冷却効率を向上可能な突極形回転電機を提供する。
【解決手段】突極形回転電機は、筐体と、前記筐体に収容された固定子と、前記固定子に囲まれるとともに回転軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた複数の突極と、前記複数の突極に巻き付けられた複数の巻線と、前記複数の巻線のうち前記回転軸まわりの周方向において隣り合う二つの間に位置するとともに前記複数の巻線のうち当該二つを支持するブラケットと、前記周方向において前記ブラケットと前記複数の巻線のうち前記二つとの間に位置する二つの絶縁板と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、を備え、前記二つの絶縁板のそれぞれには、前記径方向における当該絶縁板の両端部に開口する溝が設けられ、前記溝は、前記径方向に対して傾斜している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容された固定子と、
前記固定子に囲まれるとともに回転軸まわりに回転可能なシャフトと、
前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた複数の突極と、前記複数の突極に巻き付けられた複数の巻線と、前記複数の巻線のうち前記回転軸まわりの周方向において隣り合う二つの間に位置するとともに前記複数の巻線のうち当該二つを支持するブラケットと、前記周方向において前記ブラケットと前記複数の巻線のうち前記二つとの間に位置する二つの絶縁板と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、
を備え、
前記二つの絶縁板のそれぞれには、前記径方向における当該絶縁板の両端部に開口する溝が設けられ、
前記溝は、前記径方向に対して傾斜している、
突極形回転電機。
【請求項2】
前記周方向における前記ブラケットの両端部のうち少なくとも一方から前記固定子に向かって突出する障壁、
をさらに備え、
前記障壁の先端は、前記径方向において前記固定子と前記回転子との間に位置する、
請求項1に記載の突極形回転電機。
【請求項3】
前記径方向の内側における前記溝の端部は、前記径方向の内側における前記絶縁板の端部に開口するとともに前記回転軸に沿う軸方向における前記絶縁板の一方の端部に開口する、
請求項1又は2に記載の突極形回転電機。
【請求項4】
前記二つの絶縁板は、互いに同一の形状を有する、
請求項1又は2に記載の突極形回転電機。
【請求項5】
筐体と、
前記筐体に収容された固定子と、
前記固定子に囲まれるとともに回転軸まわりに回転可能なシャフトと、
前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた複数の突極と、前記複数の突極に巻き付けられた複数の巻線と、前記複数の巻線のうち前記回転軸まわりの周方向において隣り合う二つの間に位置するとともに前記複数の巻線のうち当該二つを支持するブラケットと、前記周方向において前記ブラケットと前記複数の巻線のうち前記二つとの間に位置する二つの絶縁板と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、
前記周方向における前記ブラケットの両端部のうち少なくとも一方から前記固定子に向かって延びる障壁と、
を備え、
前記障壁の先端は、前記径方向において前記固定子と前記回転子との間に位置する、
突極形回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突極形回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、突極形の回転子を備えた突極形回転電機が知られている。回転子において、突極には巻線が巻き付けられる。巻線は、ブラケットにより突極に保持されている。巻線は、電流が流れることによって磁力を発生させるとともに発熱する。巻線は、例えば、回転子が回転することにより突極形回転電機の内部に生じる気流およびシャフトに取り付けられた内扇等によって冷却され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気流は、突極および巻線の表面に沿って流れることで、巻線を冷却する。しかし、回転方向における突極の背面側では通風剥離が生じやすい。さらに、ブラケットが軸方向の気流を妨げることで、回転子の冷却効率が低下することがある。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、回転子の冷却効率を向上可能な突極形回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の突極形回転電機は、筐体と、前記筐体に収容された固定子と、前記固定子に囲まれるとともに回転軸まわりに回転可能なシャフトと、前記固定子と前記シャフトとの間で前記回転軸の径方向に延びた複数の突極と、前記複数の突極に巻き付けられた複数の巻線と、前記複数の巻線のうち前記回転軸まわりの周方向において隣り合う二つの間に位置するとともに前記複数の巻線のうち当該二つを支持するブラケットと、前記周方向において前記ブラケットと前記複数の巻線のうち前記二つとの間に位置する二つの絶縁板と、を有し、前記シャフトに取り付けられた回転子と、を備え、前記二つの絶縁板のそれぞれには、前記径方向における当該絶縁板の両端部に開口する溝が設けられ、前記溝は、前記径方向に対して傾斜している。
【発明の効果】
【0007】
本発明の突極形回転電機によれば、回転子の冷却効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態の突極形回転電機の断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の回転子の断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の回転子の一部を拡大した断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態のブラケット及び絶縁板の平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の絶縁板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態に係る突極形回転電機1を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、並びに当該構成によってもたらされる作用及び結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。なお、本明細書では、序数は、部品や部材を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る突極形回転電機1の断面図である。
図1に示すように、突極形回転電機1は、筐体2と、固定子3と、シャフト4と、回転子5と、二つの軸受6と、を備える。
【0011】
以下の各図では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、筐体2の長手方向に沿う方向であり、前後方向とも称され得る。Y方向は、筐体2の短手方向に沿う方向であり、左右方向とも称され得る。Z方向は、筐体2の上下方向に沿う方向であり、上下方向とも称され得る。なお、本実施形態における前後左右上下のような方向を示す表現は、便宜上の呼称であり、突極形回転電機1の位置、姿勢、及び使用態様を限定するものではない。
【0012】
本実施形態の突極形回転電機1は、例えば、全閉形の回転電機である。このため、筐体2の内部に、当該筐体2の外部から隔てられた閉空間が設けられる。なお、突極形回転電機1は、この例に限定されない。例えば、突極形回転電機1は、開放形の回転電機であっても良い。
【0013】
筐体2は、金属等により箱型に形成される。筐体2は、固定子3と回転子5とを収容している。前後方向(X方向)における筐体2の両端には、X方向に開口した開口部21が設けられている。
【0014】
固定子3は、固定子鉄心31と、固定子巻線32と、を有する。固定子鉄心31は、筐体2に固定されている。固定子鉄心31は、径方向における回転子5の外側に位置し、回転子5を囲む円筒状に形成されている。固定子巻線32は、軸方向に延びるように固定子鉄心31の内周部31aに形成された複数のスロット(不図示)内を貫通して、当該固定子鉄心31に固定されている。
【0015】
シャフト4は、固定子3に部分的に囲まれている。シャフト4は、回転軸Axまわりに回転可能なように、二つの軸受6を介して筐体2に支持されている。言い換えると、二つの軸受6は、シャフト4を筐体2に対して回転可能に支持している。回転軸Axは、例えば、シャフト4の中心軸(中心線)である。なお、回転軸Axは、シャフト4の中心軸と異なっても良い。
【0016】
以下の説明では、便宜上、回転軸Axの軸方向、径方向、および周方向が定義されている。軸方向は、回転軸Axに沿う方向である。径方向は、回転軸Axと直交する方向である。周方向は、回転軸Axまわりの方向である。なお、以下の説明では、特に言及しない限り、軸方向、径方向、および周方向は、回転軸Axの軸方向、径方向、および周方向である。
【0017】
シャフト4は、筐体2の開口部21を貫通するように、回転軸Axに沿って軸方向に延びている。シャフト4のうち軸方向の両端部4a、4bの間の部分は、筐体2に収容されている。一方、シャフト4の軸方向の両端部4a、4bは、筐体2から外部に突出している。
【0018】
一方の端部4aは、例えば、種々の結合対象と結合される。また、他方の端部4bには、外扇が固定されている。外扇は、例えば外扇カバーに覆われ、シャフト4と一体に回転する。
【0019】
シャフト4における二つの軸受6と回転子5とのそれぞれの間には、内扇41が固定されている。内扇41は、シャフト4と一体に回転して軸方向に向かって流れる気流を発生させ、閉空間において冷却用気体を循環させる。
図1において内扇41は、例えば、紙面の右から左へ流れる気流を発生させ、回転子5や固定子3を冷却する。なお、以下の説明では特に断りがない限り、内扇41によって筐体2内に生じる気流の方向は上述の方向として説明する。
【0020】
図2は、本実施形態に係る回転子5の断面図である。
図2に示すように、回転子5は、回転子鉄心51と、複数の回転子巻線52と、複数のポールヘッド53と、複数の絶縁層54と、複数のブラケット55と、複数の絶縁板56と、を有する。なお、回転子巻線52は巻線の一例である。
【0021】
図1に示すように、回転子鉄心51は、シャフト4のうち軸方向の両端部4a、4bの間の部分に取り付けられている。このため、回転子鉄心51は、筐体2に収容されるとともに、シャフト4と一体に回転する。なお、以下の説明では特に断りがない限り、
図2において回転子5の回転方向は時計周りの方向として説明する。
【0022】
二つの軸受6は、筐体2の開口部21に設けられている。すなわち、回転子鉄心51は、軸方向において二つの軸受6の間に位置している。二つの軸受6は、例えば、すべり軸受等である。
【0023】
図2に示すように、回転子鉄心51は、中央部510と、複数の突極511を有する。中央部510は、シャフト4に取り付けられている。突極511は、中央部510から固定子鉄心31の内周部31aに向かって径方向外側に突出している。言い換えると、突極511は、固定子3とシャフト4との間で回転軸Axの径方向に延びている。内周部31aは、例えば、固定子鉄心31の内周面、又は固定子鉄心31の径方向内側の端部である。
【0024】
回転子巻線52は、回転子鉄心51の突極511の側面511aに巻き付いている。言い換えると、回転子巻線52は、突極511を囲んでいる。側面511aは、突極511が延びる方向と交差する方向(例えば軸方向および周方向)に向く突極511の外面である。
【0025】
各ポールヘッド53は、対応する突極511の回転軸Axの径方向の外側における端部に取り付けられる。各ポールヘッド53は、突極511の側面511aから軸方向及び周方向に張り出している。これにより、各ポールヘッド53は、回転子巻線52を径方向外側から押さえる。このため、ポールヘッド53は、径方向において突極511と固定子鉄心31の内周部31aとの間に位置する。
【0026】
ポールヘッド53は、端面53aと、底面53bと、を有する。端面53aは、径方向の外側を向くとともに略周方向に延びる円弧状の曲面である。端面53aの半径は、固定子鉄心31の内周部31aの半径より短い。そのため、端面53aは内周部31aから離間し、当該端面53aと内周部31aとの間に気流が通ることが可能な隙間18が形成される。なお、端面53aの中心は、固定子鉄心31の内周部31aの中心と異なっても良い。底面53bは、端面53aの反対側に位置し、突極511に向いている。
【0027】
絶縁層54は、例えば、合成樹脂等で形成された層である。絶縁層54は、突極511と回転子巻線52との間で径方向に延びた部分と、回転子巻線52とポールヘッド53との間で略周方向に延びた部分と、を有する。言い換えると、絶縁層54は、L字形状の断面を有する。
【0028】
ブラケット55は、例えば、アルミニウム等の金属で形成される部品である。ブラケット55は、周方向において隣り合う二つの突極511の間に位置するとともに、当該ブラケット55を貫通するボルトAによって回転子鉄心51に固定されている。なお、本実施形態では、複数のブラケット55のうち少なくとも二つが、軸方向に間隔を介して並べられる。
【0029】
各ブラケット55は、周方向において回転子巻線52および絶縁板56を突極511に固定している。言い換えると、各ブラケット55は、周方向において隣り合う二つの回転子巻線52および絶縁板56を支持している。
【0030】
図3は、本実施形態に係る回転子5の一部を拡大した断面図である。
図3に示すように、各ブラケット55に、少なくとも一つの障壁551が設けられる。障壁551は、ブラケット55と一体に形成され、周方向における当該ブラケット55の両端部55aのうち少なくとも一方から固定子3の内周部31aに向かって突出している。
【0031】
障壁551は、例えば、突極511の側面511aに沿う方向に延びている。
図2に示すように、径方向の外側における障壁551の先端551aは、径方向において固定子3と回転子5との間に位置する。
【0032】
本実施形態では、障壁551の先端551aは、ポールヘッド53の端面53aと、当該端面53aにおいて回転軸Axから最も離間している頭頂部53a1と、の間に位置する。このため、障壁551は、固定子鉄心31の内周部31aから離間している。なお、障壁551の長さは、先端551aがポールヘッド53の端面53aと頭頂部53a1との間に位置する長さであれば適宜変更しても良い。
【0033】
絶縁板56は、例えば、エポキシ樹脂等の合成樹脂で形成された板である。複数の絶縁板56は、互いに同一の形状を有する。なお、複数の絶縁板56は、互いに異なる形状を有しても良い。
【0034】
図4は、本実施形態のブラケット55及び絶縁板56の平面図である。
図4に示すように、各絶縁板56は、周方向において、それぞれ反転した状態で回転子巻線52とブラケット55との間に位置する。
図4において、軸方向の冷却用気体の流れる方向は紙面の上部方向から下部方向であり、また、回転方向は紙面の左方向から右方向であるものとする。
【0035】
軸方向における絶縁板56の幅は、軸方向におけるブラケット55の幅より若干大きい。径方向における絶縁板56の長さは、突極511に巻き付いている回転子巻線52の沿面距離より若干長い。これにより、絶縁板56は、回転子巻線52とブラケット55とが導通することを防ぐ。
【0036】
図5は、本実施形態に係る絶縁板56の平面図である。
図5に示すように、絶縁板56には、複数の凹部561と、複数の溝562と、が設けられている。さらに、絶縁板56は、係合部563を有する。
【0037】
複数の凹部561は、絶縁板56の径方向の内側における端部56bから絶縁板56の径方向の外側における端部56aに向かって凹んでいる。さらに、凹部561は、絶縁板56において回転子巻線52と接する面に設けられる。各凹部561は、絶縁板56が回転子巻線52とブラケット55との間に配置された際、ボルトAと接触する部分である。言い換えると、各凹部561は、絶縁板56が回転子巻線52とブラケット55との間に配置された際、ボルトAと嵌合する部分である。
【0038】
径方向の外側における溝562の端部562aは、絶縁板56の端部56aに開口する。径方向の内側における溝562の端部562bは、絶縁板56の端部56bに開口する。すなわち、複数の溝562のそれぞれは、径方向における絶縁板56の両端部56a、56bに開口する。複数の溝562のそれぞれは、径方向に対して傾斜している。
【0039】
図4に示すように、回転子5の回転方向に対して突極511の後面部となる回転子巻線52部分と接する絶縁板56(
図4の右側の絶縁板56)において、複数の溝562の傾斜方向は、軸方向の冷却用気体の流れる方向の風上側に端部562aが配され、風下側に端部562bあるいは後述の端部56c側の開口部が配されるように構成される。
【0040】
また、回転子5の回転方向に対して突極511の前面部となる回転子巻線52部分と接する絶縁板56(
図4の左側の絶縁板56)において、複数の溝562の傾斜方向は、軸方向の冷却用気体の流れる方向の風上側に端部562bあるいは後述の端部56c側の開口部が配され、風下側に端部562aが配されるように構成される。これにより、回転子5の回転により軸方向の冷却用気体の風の流れを助長することができる。
【0041】
図3に示すように、一方の絶縁板56に設けられた溝562の端部562bは、隣り合う二つの突極511の側面511aの間、且つ径方向の内側における回転子巻線52の端面52aと中央部510との間、に形成された空間Sを介して、他方の絶縁板56に設けられた溝562の端部562bと連通している。なお、
図5に示すように、複数の溝562のうち少なくとも一つの端部562bは、軸方向における絶縁板56の一方の端部56cに開口している。
【0042】
図3に示すように、各溝562は、絶縁板56における回転子巻線52に向く面56dから凹んで形成される。これにより、溝562を通過する気流は、回転子巻線52を直接冷却できる。
【0043】
なお、本実施形態では、絶縁板56には径方向に対して傾斜した複数の溝562が設けられているが、これに限らない。例えば、溝562の幅、形状および数等は、絶縁板56の強度的に許容可能な範囲で適宜変更されても良い。
【0044】
係合部563は、絶縁板56の厚さ方向に凹んでいる部分である。係合部563は、絶縁層54と係合する。これにより、係合部563は、回転子5が回転する遠心力によって絶縁板56が径方向の外側に飛散することを防ぐ。
【0045】
突極形回転電機1が稼働することで、シャフト4の回転に伴って、当該シャフト4に取り付けられている回転子5と内扇41とが回転する。内扇41が回転することで、筐体2の閉空間において軸方向に流れる気流が発生する。また、回転子5が回転することで、回転子5の表面に沿って気流が流れる。
【0046】
回転子5の表面に沿って流れる気流は、例えばポールヘッド53の端面53aに沿って、回転方向の反対側(背面側)に向かって流れる。回転子5の表面に沿って流れる気流は、ポールヘッド53を通過した後、障壁551に衝突する。
【0047】
障壁551に衝突した気流は、障壁551に誘導されて一方の絶縁板56の溝562の端部562aへ流入する。気流は、回転子巻線52を冷却しながら当該一方の絶縁板56の溝562を通過する。一方の絶縁板56の溝562を通過した気流は、空間Sを介して他方の絶縁板56の溝562の端部562bへ流入する。
【0048】
気流は、他方の突極511に巻き付けられた回転子巻線52を冷却しながら、他方の絶縁板56の溝562を通過する。他方の絶縁板56の溝562を通過した気流は、他方のポールヘッド53の端面53aに沿って流れる。以降、気流は、同様な手順で回転子5全体を冷却する。
【0049】
一方で、軸方向に向かって流れる気流は、例えばシャフト4の表面に沿って、ブラケット55の外面や空間Sを流れる。複数の溝562のうち少なくとも一つの端部562bは、軸方向における一方の端部56cに開口している。さらに、溝562は、上述のように径方向に対して傾斜している。そのため、軸方向に流れる気流は、回転子巻線52を冷却しながら絶縁板56の溝562を通過するとともに、ポールヘッド53の端面53aに誘導される。これにより、溝562は、内扇41によって循環している冷却用気体を回転子5の表面に誘導することができる。
【0050】
溝562が径方向に対して傾斜しているため、溝562を通過した冷却用気体は、実質的に軸方向に送られる。そのため、絶縁板56は、軸方向に流れる気流がブラケット55に衝突したとしても、当該気流を軸方向に送ることができる。
【0051】
なお、本実施形態の突極形回転電機1では、周方向におけるブラケット55の両端部55aに障壁551が設けられている構成を例として説明した。しかし、少なくとも周方向において気流の流入側に障壁551が設けられていれば良い。
【0052】
以上のように、本実施形態の突極形回転電機1は、筐体2と、固定子3と、シャフト4と、回転子5と、を備える。固定子3は、筐体2に収容されている。シャフト4は、固定子3に囲まれるとともに回転軸Axまわりに回転可能である。回転子5は、シャフト4に取り付けられており、複数の突極511と、複数の回転子巻線52と、ブラケット55と、二つの絶縁板56と、を有する。複数の突極511は、固定子3とシャフト4との間で回転軸Axの径方向に延びている。複数の回転子巻線52は、複数の突極511に巻き付けられている。ブラケット55は、複数の回転子巻線52のうち回転軸Axまわりの周方向において隣り合う二つの間に位置するとともに複数の回転子巻線52のうち当該二つを支持する。二つの絶縁板56は、周方向においてブラケット55と複数の回転子巻線52のうち二つとの間に位置する。二つの絶縁板56のそれぞれには、径方向における当該絶縁板56の両端部56a、56bに開口する溝562が設けられる。溝562は、径方向に対して傾斜している。
【0053】
回転子5が回転し始めると、回転方向とは逆方向に当該回転子5の表面を流れる気流が発生する。さらに、シャフト4に取り付けられた内扇41からは、軸方向に気流が発生する。周方向におけるブラケット55と回転子巻線52との間に位置する絶縁板56には、径方向に対して傾斜している溝562が設けられている。そのため、回転子5が回転することにより発生する気流および内扇41から発生した気流は、溝562を通過することで、軸方向に送られながら回転子5の表面を流れる。
【0054】
これにより、絶縁板56は、内扇41から発生する気流と、回転子5が回転することにより発生する気流と、を回転子巻線52に誘導する。従って、本実施形態の突極形回転電機1では、回転子5の冷却効率を向上可能である。
【0055】
また、本実施形態の突極形回転電機1は、周方向におけるブラケット55の両端部55aのうち少なくとも一方から固定子3に向かって突出する障壁551をさらに備える。障壁551の先端551aは、径方向において固定子3と回転子5との間に位置する。これにより、回転子5が回転することにより発生する気流は、障壁551に衝突することで、溝562に誘導される。従って、突極形回転電機1では、回転子5の冷却効率をさらに向上可能である。
【0056】
また、本実施形態では、径方向の内側における溝562の端部562bは、径方向の内側における絶縁板56の端部56bに開口するとともに回転軸Axに沿う軸方向における絶縁板56の一方の端部56cに開口する。これにより、溝562は、軸方向に流れる気流を軸方向に送り易くする。
【0057】
また、本実施形態では、二つの絶縁板56は、互いに同一の形状を有する。これにより、突極形回転電機1は、コストを低減することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
1…突極形回転電機、2…筐体、3…固定子、4…シャフト、5…回転子、51…回転子鉄心、511…突極、52…回転子巻線(巻線)、55…ブラケット、55a…端部、551…障壁、551a…先端、56…絶縁板、56a…径方向の外側における端部、56b…径方向の内側における端部、56c…軸方向における一方の端部、562…溝、562b…径方向の内側における溝の端部、Ax…回転軸。