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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088318
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】バックル
(51)【国際特許分類】
   A44B 11/12 20060101AFI20240625BHJP
   B60R 22/48 20060101ALI20240625BHJP
   A44B 11/16 20060101ALI20240625BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20240625BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A44B11/12
B60R22/48 104
A44B11/16
A61B5/113
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203428
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 友紀
【テーマコード(参考)】
3B090
4C038
【Fターム(参考)】
3B090BC03
3B090BC08
3B090BC22
4C038VA04
4C038VB19
4C038VB28
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】タングのプレートがバックルに挿入された状態において、バックルに対するタングの動きを計測し、計測結果に応じてバックルに搭載した光源の発光を制御する。
【解決手段】バックルは、車両のシートベルトに取り付けられたタングのプレートが挿入される挿入口が形成されたバックル本体と、前記バックル本体を収める外形カバーと、前記挿入口に挿入された前記プレートから受ける荷重により回転移動するレバーと、前記レバーの回転移動により変形する弾性体と、前記弾性体の変形に応じた信号を出力するセンサと、前記センサから出力される前記信号を処理する処理部と、前記処理部の処理結果に応じた発光を行う光源と、を備える。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のシートベルトに取り付けられたタングのプレートが挿入される挿入口が形成されたバックル本体と、
前記バックル本体を収める外形カバーと、
前記挿入口に挿入された前記プレートから受ける荷重により回転移動するレバーと、
前記レバーの回転移動により変形する弾性体と、
前記弾性体の変形に応じた信号を出力するセンサと、
前記センサから出力される前記信号を処理する処理部と、
前記処理部の処理結果に応じた発光を行う光源と、
を備えるバックル。
【請求項2】
前記処理部は、前記信号に基づいて前記シートベルトを着用した乗員の呼吸状態を計測し、前記呼吸状態に基づいて前記光源の発光量又は発光色を制御する、請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記処理部は、前記乗員が息を吸った時と息を吐いた時とで前記光源の発光量を変える、請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記処理部は、前記信号に基づいて前記乗員の呼吸数を算出し、前記呼吸数が所定範囲内か否かによって、前記光源の発光パターン又は発光色を切り替える、請求項2に記載のバックル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バックルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートベルトを着用する乗員の呼吸によってシートベルトの張力が変化することに着目し、シートベルトの張力変化により生ずる圧力変化を検出することで乗員の呼吸を検出する圧力センサを設けたバックルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-290324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の圧力センサは、バックルと、バックル外に設けられた付着部材との間に配置されている。そのため、従来の圧力センサでは、タングのプレートがバックルに挿入された状態において、付着部材に対するバックルの動きを計測することはできるが、バックルに対するタングの動きを計測することは難しい。
【0005】
本開示は、タングのプレートがバックルに挿入された状態において、バックルに対するタングの動きを計測し、計測結果に応じてバックルに搭載した光源の発光を制御できるバックルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によるバックルは、車両のシートベルトに取り付けられたタングのプレートが挿入される挿入口が形成されたバックル本体と、前記バックル本体を収める外形カバーと、前記挿入口に挿入された前記プレートから受ける荷重により回転移動するレバーと、前記レバーの回転移動により変形する弾性体と、前記弾性体の変形に応じた信号を出力するセンサと、前記センサから出力される前記信号を処理する処理部と、前記処理部の処理結果に応じた発光を行う光源と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、タングのプレートがバックルに挿入された状態において、バックルに対するタングの動きを計測し、計測結果に応じてバックルに搭載した光源の発光を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るバックルの外観正面図である。
図2】本実施形態に係るバックルの断面A-Aにおける断面図である。
図3】本実施形態に係るバックルの分解斜視図である。
図4】本実施形態に係るバックルの一部の部品の分解斜視図である。
図5】本実施形態に係るバックルの一部の部品の分解斜視図である。
図6】シートベルトの張力の検知機構を説明するための断面図である。
図7】シートベルトの張力の検知機構を説明するための断面図である。
図8】シートベルトの張力の検知機構を説明するための断面図である。
図9】弾性体の一例である板バネとレバーとの位置関係を示す図である。
図10】レバーの下面(板バネと対向する表面)を示す図である。
図11】板バネが第1押部で押された状態を例示する断面図である。
図12】板バネが第1押部及び第2押部で押された状態を例示する断面図である。
図13】複数の支持部材で支持された板バネを示す斜視図である。
図14】レバーがタングのプレートから受ける荷重と、レバーの回転ストローク長との関係の一例を示す図である。
図15】本実施形態に係る光源の発光制御方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
図1は、本実施形態に係るバックルの外観正面図である。図2は、本実施形態に係るバックルの断面A-Aにおける断面図である。X軸方向は、バックル8の幅方向を表す。Y軸方向は、車両に搭載された状態でのバックル8の高さ方向を表す。Z軸方向は、バックル8の厚さ方向を表す。
【0011】
バックル8は、車両のシートベルト4に取り付けられるタング7が着脱可能に連結される部品であり、例えば、乗員が座るためのシート又はシートの近傍の車体に固定される。バックル8には、タング7の平面状のプレート7aが挿抜される。タング7は、シートベルト4が挿通するベルト挿通具の一例であり、シートベルト4にスライド可能に取り付けられた部品である。シートベルト4は、車両のシートに座る乗員を拘束するウェビングであり、リトラクタに引き出し可能に巻き取られる帯状部材である。
【0012】
バックル8は、本体部8aと、ステー8bとを有する。本体部8aは、タング7が着脱可能に連結される部位である。ステー8bは、バックル8の本体部8aを支持する支持部材の一例である。ステー8bは、乗員が座るためのシート又はシートの近傍の車体に固定される。
【0013】
タング7がバックル8に連結された状態で、シートベルト4のうち不図示のショルダーアンカーとタング7との間の部分が、乗員の胸部及び肩部を拘束するショルダーベルト部9である。タング7がバックル8に連結された状態で、シートベルト4のうち不図示のベルトアンカーとタング7との間の部分が、乗員の腰部を拘束するラップベルト部10である。
【0014】
図3は、本実施形態に係るバックルの分解斜視図である。図4図5は、本実施形態に係るバックルの一部の部品の分解斜視図である。図3図5に示すように、バックル8(本体部8a)は、バックル本体8c、回路基板16、光源用基板100、アッパーカバー12、ロアカバー14、レバー40及び板バネ50を備える。
【0015】
バックル本体8cは、シートベルト4に取り付けられたタング7と連結可能なサブアッセンブリ品である。バックル本体8cは、例えば、タング7とバックル8との連結を解除するプッシュ操作を乗員の手指から受けるボタン31と、ボタン31等のバックル本体8cの構成部品を保持するバックルベース37とを有する。バックル本体8cには、タングの金属プレートが挿入される挿入口15が形成されている。
【0016】
アッパーカバー12は、ボタン31が露出するようにバックル本体8cを覆う樹脂部品である。アッパーカバー12は、ロアカバー14との間にバックル本体8cを挟んで保持する。この実施形態では、レバー40がアッパーカバー12に取り付けられている。レバー40は、X軸方向に突出するピボット41を有し、ピボット41を中心に回転可能にアッパーカバー12に支持されている。
【0017】
回路基板16及び光源用基板100は、ロアカバー14の内面に固定されている。回路基板16は、この実施形態では、センサ20、処理部60及び出力部80を備える。光源用基板100には、光源110(例えばLED素子)が搭載されている。この実施形態では、2個の光源用基板100が、回路基板16のバックル幅方向の両側に配置されるが、光源用基板100や光源110の数はこれに限定されない。回路基板16と光源用基板100とは配線(図示略)により電気的に接続されている。
【0018】
回路基板16に搭載されたセンサ20は、シートベルト4に生ずる張力(以下、「張力N」とも称する)を検出し、検出された張力Nに応じて変化する出力信号を出力する。シートベルト4が乗員に装着されていると、乗員の体動や呼吸によって生ずる乗員の胸や腹の動きがシートベルト4に伝わるため、シートベルト4の張力Nが変化する。シートベルト4の張力Nの変化は、タング7に伝達し、タング7を介してバックル8に伝達する。センサ20は、バックル8の本体部8aに設けられている。
【0019】
センサ20は、例えば、シートベルト4の張力Nの変化によって生ずる変形又は変位を、シートベルト4の張力Nとして検出する。例えば、センサ20は、シートベルト4からタング7を介してバックル8に入力される荷重の変化を検出するひずみセンサ又は圧電センサである。センサ20は、シートベルト4の張力Nの変化によって生ずる静電容量の変化を検出する静電容量センサでもよい。
【0020】
静電容量センサは、非接触センサの一例であるが、センサ20は、他のセンス形式の非接触センサでもよい。センサ20は、シートベルト4の張力Nの変化によって生ずるインダクタンスの変化を検出するインダクティブセンサでも、シートベルト4の張力Nの変化によって生ずる磁気の変化を検出する磁気センサでもよい。センサ20は、シートベルト4の張力Nの変化によって生ずる変形又は変位を、送信した光又は電波の反射によって検出するセンサなどでもよい。
【0021】
処理部60は、センサ20から出力されるセンサ信号を処理し、例えば、微小なセンサ信号を増幅する処理を行う。これにより、微小なアナログのセンサ信号の扱いが容易になる。処理部60は、センサ信号をフィルタリングする処理を行ってもよい。
【0022】
例えば、処理部60は、センサ20により検知された張力変化に基づいて、呼吸又は脈拍であるバイタルサインを検知する。例えば、処理部60は、センサ20の出力信号から、張力Nの変化を表す信号成分の周期性を検出することで、呼吸又は脈拍であるバイタルサインを検知する。周期性がある場合、シートベルト4を着用する乗員の呼吸又は脈拍の周期的動作が、張力変化として、センサ20により検出されていると推定されるからである。処理部60は、センサ20により検知された張力Nの変化を表す信号成分から、バイタルサインに相当する周波数成分を所定のフィルタにより抽出することで、バイタルサインを検知する。呼吸信号は、3秒から6秒程度の周期を有し、脈拍信号は、0.5秒~1秒程度の周期を有する。
【0023】
処理部60は、センサ20の出力信号から、張力Nの変化を表す信号成分の大きさを検出してもよい。処理部60は、張力Nの変化を表す信号成分の大きさを検出することで、張力Nの大きさを検知する。当該信号成分の大きさは、張力Nの大きさに対応するからである。
【0024】
処理部60は、バックルスイッチの検知状態と処理部60によるバイタルサインの検知状態に基づいて、車両のシート上の物体が乗員かチャイルドシートかを判定してもよい。詳細な判定方法については後述する。チャイルドシートとは、CRS(Child Restraint System)とも称され、幼児用拘束装置の一つである。チャイルドシートは、幼児用に限られず、学童用でもよい。
【0025】
処理部60は、例えば、一又は複数のコンピュータ(具体的には、マイクロコンピュータ)を含む集積回路である。処理部60は、それぞれ異なる集積回路によって実現されてもよいし、一の集積回路に一体化されてもよい。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ及びメモリを有する。処理部60の各機能は、メモリに記憶されたプログラムによってプロセッサが動作することにより実現される。処理部60の各機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application
Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0026】
出力部80は、処理部60による処理結果(例えば、センサ信号を増幅した信号、乗員かチャイルドシートかの判定結果など)を、バックル8の外部装置に有線又は無線で出力する。外部装置は、当該判定結果に基づいて、所定の制御を実行する。例えば、外部装置は、シート上の物体が乗員であるとの判定結果の場合、エアバッグの展開要と判定し、シート上の物体がチャイルドシートであるとの判定結果の場合、エアバッグの展開不要と判定する。
【0027】
処理部60は、センサ信号に基づいて光源110の発光量を制御する制御信号を生成する。また、処理部60は、車両ドアの開閉センサや車両シートの着座センサ等の車両システムから受け取った信号に基づいて、光源110の発光量を制御する制御信号を生成する。出力部80は、処理部60により生成された制御信号を光源110へ出力する。
【0028】
ロアカバー14は、回路基板16及び光源用基板100が固定される内側表面を有するバックルカバーの一例である。ロアカバー14は、回路基板16及び光源用基板100を覆う樹脂部品である。
【0029】
アッパーカバー12及びロアカバー14は、バックル8の外形カバーであり、バックル本体8c、回路基板16、光源用基板100、レバー40及び板バネ50を収める筐体である。本実施形態では、これらの部品を収めるため、バックル8の外形カバーは、アッパーカバー12とロアカバー14の二つの部品によって構成されているが、三つ以上の部品によって構成されてもよい。
【0030】
バックル8が車両に取り付けられた状態で、アッパーカバー12は、バックル8にタングを介して連結されるシートベルトを着用する乗員とは反対側に面し、ロアカバー14は、当該乗員側に面する。
【0031】
図6,7,8は、シートベルトの張力の検知機構を説明するための断面図である。タング7がバックル8に挿入されると(図6参照)、タング7の先端部はエジェクタ33に接触する。タング7の先端部との接触により押されたエジェクタ33は、タング7が挿し込まれる方向に移動して、ラッチ34が回転するとともに、スライダ32が下がる。ラッチ34の回転により、ラッチ34はタング7に係合し、スライダ32がロックピン35の下に入り込む(図7参照)。
【0032】
挿入口15は、ボタン31とレバー40との間にある隙間である。挿入口15の開口高さe(図6参照)は、その隙間の高さによって決まる。レバー40の初期位置状態での挿入口15の開口高さeがタング7のプレート7aの板厚dよりも僅かに狭くなるように、レバー40及び板バネ50は形成されている。そのため、図7において、タング7のプレート7aを挿入口15に挿入すると、レバー40は、タング7のプレート7aにより作用点P2で押されることでピボット41を中心に時計周りに僅かに回転する。板バネ50は、僅かに回転するレバー40によって押し込まれる。レバー40により押し込まれた板バネ50の弾性力によって、ボタン31とレバー40との間でのタング7のプレート7aのがたつきが抑えられる(プリテンション領域)。これにより、シートベルトの張力Nの微小な変化は、タング7のプレート7a、レバー40及び板バネ50を介して、センサ20に精度良く伝わる。その結果、センサ20は、張力Nの微小な変化を高精度に検知できる。
【0033】
図8において、タング7の力点P1にかかる荷重(張力N)により、タング7のプレート7aは、バックルベース37の上壁37aを支点P3として、レバー40の上面を作用点P2で押し込む。作用点P2でタング7に押し込まれたレバー40は、ピボット41を中心に時計回りに回転し、板バネ50を押し込む。板バネ50は、荷重を受け、それ自身がたわみながら、センサ20へ力を伝達する。バックルベース37の下壁37bは、下壁37b側へのタング7の移動を規制するメカニカルストッパ38を有する。タング7のプレート7aはメカニカルストッパ38に接触することで、下壁37b側へのタング7の移動は止まる。メカニカルストッパにより、レバー40及び板バネ50を介してセンサ20に加わる力を制限することができ、センサ20を衝突などによる大荷重から保護できる。
【0034】
バックル8の本体部8a内には、作用点P2と、支点P3とがある。作用点P2は、タング7に入力される荷重F1に応じて支点P3を中心とする回転力(以下、「回転力Fr」とも称する)が作用する点を表す。支点P3は、回転力Frの回転中心を表す。荷重F1は、シートベルト4の張力によって力点P1に加わる力を表す。力点P1は、タング7のプレート7aが挿入された状態でバックル8の外部にあり、シートベルト4と接触する基端部7eに位置する。また、バックル8内には、センサ20が備えられている。本実施形態では、センサ20は、作用点P2に働く力に応じた信号(より詳しくは、板バネ50の変形に応じた信号)を出力する。
【0035】
シートベルト4の張力が増大すると、荷重F1は図示の矢印の向きに上昇するので、バックル8と連結した状態のタング7は、乗員側(負のZ軸方向のロアカバー14側)に僅かに引き寄せられる。荷重F1が上昇しタング7が乗員側に変位すると、作用点P2に作用する回転力Frは増大するので、作用点P2からレバー40及び板バネ50を介してセンサ20が受ける力も増大する。
【0036】
逆に、シートベルト4の張力が減少すると、荷重F1は低下するので、バックル8と連結した状態のタング7は、乗員とは反対側(正のZ軸方向のアッパーカバー12側)に引き戻される。荷重F1が低下しタング7が乗員とは反対側に変位すると、作用点P2に作用する回転力Frは減少するので、作用点P2からレバー40及び板バネ50を介してセンサ20が受ける力も減少する。
【0037】
したがって、作用点P2に働く力に応じてセンサ20から出力される信号に基づいて、プレート7aがバックル8に挿入された状態でのタング7の変位を処理部60等により計測することができる。特に、本実施形態では、作用点P2に作用する回転力Frの回転中心である支点P3は、バックル8の外部ではなく、バックル8の内部にある。支点P3がバックル8の内部にあるので、作用点P2に働く力の大きさは、バックル8に対するタング7の相対的な変位量を表すことになる。したがって、プレート7aがバックル8に挿入された状態において、作用点P2に働く力に応じてセンサ20から出力される信号を処理することによって、バックル8に対するタング7の相対的な動きを計測することが可能となる。プレート7aがバックル8に挿入された状態において、バックル8に対するタング7の相対的な動きが計測可能となることで、例えば、タング7に直接接触するシートベルト4の張力変化を測定することが可能となる。
【0038】
バックルの外部の部材に対するバックルの相対的な動きを計測する従来の技術では、バックルがシートクッションや乗員の腰と接触すると、力の伝達パスが変わるので、バックルに連結されたタングの動きを正確に計測することが難しくなる。タングの動きが正確に計測されないと、タングに取り付けられるシートベルトの張力変化を正確に測定することは難しい。
【0039】
これに対し、本実施形態では、支点P3がバックル8の内部にあるので、作用点P2に働く力をセンサ20によって検出することにより、バックル8に対するタング7の相対的な動きを計測することができる。また、バックル8と連結するタング7は、バックル8に比べて乗員やシートと接触干渉しにくい箇所に位置する。そのため、バックル8に対するタング7の相対的な動きを計測することで、バックル8が乗員等に接触しているか否かにかかわらず、タング7の動きを安定的に計測することが可能となる。
【0040】
なお、センサ20から出力される信号を処理することによって、シートベルト4の張力状態の計測が可能となるが、それ以外の状態を計測することも可能である。例えば、乗員の呼吸状態や、乗員の覚醒状態などが挙げられる。
【0041】
シートベルト4を着用する乗員が呼吸することによって、乗員の体表(例えば、腰部の表面、腹部の表面、胸部の表面など)は、呼吸に同期して微妙に変位する。例えば、乗員が息を吸うと、乗員の体表は車両前後方向及び車幅方向に膨らみ、乗員が息を吐くと、乗員の体表は車両前後方向及び車幅方向に萎む。シートベルト4は乗員の体表に接しているので、乗員の体表が呼吸に同期して変位すると、シートベルト4の張力も乗員の呼吸に同期して変化する。シートベルト4の張力が呼吸に同期して変化すると、シートベルト4に取り付けられるタング7に入力される荷重F1も呼吸に同期して変化する。したがって、作用点P2に働く力に応じてセンサ20から出力される信号を処理することによって、乗員の呼吸状態を計測することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係るバックル8は、挿入口15に挿入されたプレート7aから受ける荷重により回転移動するレバー40と、レバー40の回転移動により変形する板バネ50と、板バネ50の変形に応じた信号を出力するセンサ20と、センサ20から出力される信号を処理する処理部60と、を備える。これにより、タング7のプレート7aがバックル8に挿入された状態において、バックル8に対するタング7の動きを処理部60等により計測できる。
【0043】
次に、レバー40及び板バネ50についてより詳細に説明する。
【0044】
図9は、弾性体の一例である板バネとレバーとの位置関係を示す図である。作用点P2は、レバー40の上面42に位置する。回転力Frが作用点P2に作用すると、レバー40は、ピボット41を中心に回転移動することで、上面42とは反対側の下面43で板バネ50の上面51を押圧する。
【0045】
図10は、レバーの下面(板バネと対向する表面)を示す図である。レバー40の下面43には、板バネ50を押圧するための押部44,45を有する。押部44は、第1押部の一例であり、本実施形態では、下面43の中央部から突出する突起である。押部44は、板バネ50の上面51と接触する先端部44aを有する。押部45は、第2押部の一例であり、本実施形態では、下面43の端部から突出する突起である。押部45は、板バネ50の上面51と接触する先端部45aを有する。押部45の先端部45aは、ピボット41の軸長方向において、押部44の先端部44aよりも幅広である。押部45の先端部45aは、押部44の先端部44aよりも離れた箇所に設けられている。
【0046】
図11は、板バネ50が押部44の先端部44aに押された状態を例示する断面図である。図12は、板バネ50が押部44の先端部44a及び押部45の先端部45aに押された状態を例示する断面図である。
【0047】
図11において、タング7のプレート7aは、レバー40の上面42を作用点P2で押し込む。作用点P2でタング7のプレート7aに押し込まれたレバー40は、ピボット41を中心に時計回りに回転移動し、押部44の先端部44aで板バネ50を上面51から押し込む。板バネ50は、荷重を受け、それ自身がたわみ変形しながら、センサ20へ力を伝達する。センサ20は、変形する板バネ50から力を受け、その力の大きさに応じたセンサ信号を処理部60に出力する。図11に示すタイミングでは、押部44の先端部44aは、板バネ50の上面51に接触しているが、押部45の先端部45aは、板バネ50の上面51に接触していない。
【0048】
図12において、作用点P2に加わる回転力Frが更に大きくなると、レバー40は、ピボット41を中心に時計回りに更に回転移動し、押部44の先端部44a及び押部45の先端部45aで板バネ50を上面51から押し込む。板バネ50は、より大きな荷重を受け、それ自身がたわみ変形しながら、センサ20に、より大きな力を伝達する。
【0049】
図13は、複数の支持部材で支持された板バネを示す斜視図である。板バネ50は、薄板状の弾性体であり、例えば、ステンレスにより形成されている。板バネ50は、下面52を有する。板バネ50は、複数の支持部材53(53a,53b,53c,53d,53e)により下面52から支持されており、例えば、複数の支持部材53によりロアカバー14に固定されている。
【0050】
本実施形態に係る板バネ50は、五つの角56(56a,56b,56c,56d,56e)が支持されたM字状体54と、M字状体54の中央隙間54aに中央部54bから延びる片持ち梁55とを含む構造である。センサ20は、板バネ50のZ軸方向での平面視において、中央の角56cと中央部54bとの間に位置し、且つ、下面52に接触した状態で配置されている。
【0051】
角56a,56b,56c,56d,56eは、それぞれ、対応する支持部材53a,53b,53c,53d,53eにより下面52から支持されている。角56a,56c,56eは、M字状体54のM字の下辺に沿って並ぶ角であり、角56b,56dは、M字状体54のM字の上辺に沿って並ぶ角である。
【0052】
M字状体54は、片持ち梁55を挟む両脇部分58を有する。レバー40が回転移動すると、最初、片持ち梁55のみが、第1接触線57aでレバー40の押部44の先端部44aに押される。レバー40が更に回転移動すると、片持ち梁55が第1接触線57aで押部44の先端部44aに押されると共に、両脇部分58が第2接触線57bで押部45の先端部45aに押される。
【0053】
このように、板バネ50は、レバー40の回転移動により変形する片持ち梁55と、レバー40の更なる回転移動により片持ち梁55と共に変形するM字状体54とを含む弾性構造を有する。片持ち張り55は、レバー40の回転移動により変形する第1弾性部の一例である。M字状体54は、レバー40の回転移動により第1弾性部と共に変形する第2弾性部の一例であり、両持ち梁として機能する。板バネ50がこのような弾性構造を有することで、図14に示すような特性が得られる。
【0054】
図14は、レバー40がタング7のプレート7aから受ける荷重F(回転力Fr)と、レバー40の回転ストローク長Sとの関係(FS特性)の一例を示す図である。図14は、荷重Fに対するレバー40の回転ストローク長Sの変化率が、荷重Fが第1荷重領域A1のとき、第1荷重領域A1よりも高い第2荷重領域A2のときに比べて大きいFS特性を示す。荷重Fがf0からf1までの第1荷重領域A1は、レバー40の押部44のみが板バネ50を押している領域(図11の状態)を示す。荷重Fがf1からf2までの第2荷重領域A2は、レバー40の押部44及び押部45が板バネ50を押している領域(図12の状態)を示す。プレート7aがメカニカルストッパ38に接触すると、回転ストローク長Sの上昇は止まり、荷重Fが増大しても、回転ストローク長Sは一定に維持される。
【0055】
また、図14に示すFS特性は、板バネ50が、荷重Fの大きさに応じて弾性率が変化する弾性特性を有することを示している。この場合、板バネ50の弾性率は、荷重Fが第1荷重領域A1のとき、第2荷重領域A2のときに比べて小さい。
【0056】
板バネ50に図14に示すようなFS特性を持たせると、板バネ50を押し込むことでプレート7aにプリテンションをかける上述のプリテンション領域において、荷重Fが低減するので、センサ20に板バネ50を介して加わる力を抑えられる。これにより、プリテンション領域において、センサ20のセンサ特性がセンサ20に加わる過大な力によりずれることを低減できる。
【0057】
次に、処理部60による光源110の発光制御方法を図15に示すフローチャートに沿って説明する。
【0058】
処理部60が、車両システムから、車両ドアの開閉検知信号及び/又は車両シートの着座検知信号を受信すると、乗員が車両に乗ったと判定し(ステップS1_Yes)、光源110を発光させる(ステップS2)。処理部60が、車両システムから、車両ドアの開閉検知信号や車両シートの着座検知信号を受信しない場合は、回路基板16に実装された加速度センサの信号から乗員が車両に乗ったことを推定し(ステップS1_Yes)、光源110を発光させてもよい(ステップS2)。
【0059】
光源110が発光することで、乗員はバックル8の位置を容易に確認できる。タング7がバックル8に挿入されると(ステップS3_Yes)、処理部60は、光源110を消灯させる(ステップS4)。タング7の挿入に伴い、処理部60は乗員の呼吸状態の計測を開始する。
【0060】
処理部60は、センサ20から出力される信号を処理して、乗員の呼吸状態を検知すると(ステップS5_Yes)、呼吸に同期して光源110の発光量を調整する(ステップS6)。
【0061】
乗員が息を吸った時と息を吐いた時とでシートベルト4の張力が変化し、タング7に入力される荷重(センサ20が受ける力)が変化する。例えば、処理部60は、センサ20が受ける力が大きい程、光源110の発光量が大きくなるように調整する。これにより、乗員の呼吸状態を視覚化することができる。
【0062】
処理部60は、センサ20を用いて乗員の呼吸状態を計測する初期段階(例えば、計測を開始してから5分間)における平均呼吸数を求め、平均呼吸数を中心とした一定範囲を正常範囲と設定し、呼吸数が正常範囲内にあるときの光源110の発光パターンと、正常範囲から外れたときの光源110の発光パターンとが異なるものとなるようにしてもよい。光源110の発光パターンの変化から、乗員の呼吸状態の変化を把握することができる。
【0063】
光源110の発光パターンでなく、発光色を変えてもよい。例えば、呼吸数が正常範囲内にあるときは光源110が緑や青色を発光し、正常範囲から外れたときは光源110が赤色を発光する。
【0064】
車両に乗り込んでから数分は乗員の呼吸が乱れていることがあり得るため、例えば、計測を開始してから5分経過後10分経過するまでの間の平均呼吸数から正常範囲を設定してもよい。
【0065】
呼吸数の正常範囲は、事前に設定されたものであってもよい。この場合、呼吸数の正常範囲を示すデータが、回路基板16に搭載されたメモリ(図示略)に記録されている。
【0066】
処理部60は、タング7に入力される荷重(センサ20が受ける力)の変化量を用いて一回換気量を算出し、1分あたりの呼吸数に一回換気量を乗じて分時換気量を求め、分時換気量に基づいて乗員の覚醒度を判定し、判定結果に応じて光源110の発光パターンや発光色を制御してもよい。
【0067】
センサ20から出力される信号を処理して、乗員の心拍等の他の生体情報を検出し、生体情報に基づいて光源110の発光量を調整してもよい。
【0068】
以上、実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【0069】
例えば、レバーの回転移動により変形する弾性体は、板バネに限らず、ゴムなどの他の弾性体でもよい。
【符号の説明】
【0070】
4 シートベルト
7 タング
8 バックル
8a 本体部
8b ステー
8c バックル本体
12 アッパーカバー
13 バックルスイッチ
14 ロアカバー
15 挿入口
16 回路基板
20 センサ
38 メカニカルストッパ
40 レバー
41 ピボット
42 上面
43 下面
50 板バネ
51 上面
52 下面
53,53a,53b,53c,53d,53e 支持部材
54 M字状体
54a 中央隙間
54b 中央部
55 片持ち梁
56,56a,56b,56c,56d,56e 角
57a 第1接触線
57b 第2接触線
58 両脇部分
60 処理部
70 判定部
80 出力部
100 光源用基板
110 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15