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特開2024-88320無電解めっき用触媒付与浴、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088320
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】無電解めっき用触媒付与浴、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/18 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
C23C18/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203430
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】中野 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】小田島 舞
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】田邉 克久
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA02
4K022AA42
4K022BA06
4K022BA14
4K022BA18
4K022CA06
4K022CA15
4K022CA21
4K022CA23
4K022DA01
(57)【要約】
【課題】無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立可能な無電解めっき用触媒付与浴、該無電解めっき用触媒付与浴を用いた触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を提供する。
【解決手段】パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む無電解めっき用触媒付与浴。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項2】
パラジウム化合物をパラジウム濃度として1~1000mg/L含む請求項1記載の無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項3】
アミノカルボン酸を0.2~20g/L含む請求項1記載の無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項4】
無機酸を含む請求項1記載の無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項5】
pHが6.5以下である請求項1記載の無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項6】
前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する無電解めっきである請求項1記載の無電解めっき用触媒付与浴。
【請求項7】
無電解めっき対象材料と、請求項1~6のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法。
【請求項8】
無電解めっき対象材料と、請求項1~6のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程、及び
触媒付与工程の後に、無電解めっき処理する工程
を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法。
【請求項9】
金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核、及び前記触媒核上の皮膜を含み、
前記触媒核がパラジウムを含有し、
前記皮膜が無電解めっき皮膜である材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき用触媒付与浴、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高密度化に伴い、それに使用されるプリント配線基板やパッケージ基板(以下においては、単に基板とも記載する)の銅配線パターン及び配線間の微細化が進んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下のことが明らかとなった。
微細化された銅配線へ無電解めっき処理を行う場合、軽微なパターン外析出であっても容易に配線間が繋がってしまい、短絡が生じるため、高いパターン性が求められる。
【0004】
銅配線上にニッケルやパラジウム等の無電解めっき処理を行う際、触媒付与(アクチベーター)工程が必要であり、パラジウム触媒を付与する技術が広く用いられている。このアクチベーター工程において、配線間にパラジウム触媒が残留することで、後工程である無電解めっきによりパターン外析出する場合がある。
【0005】
配線間への無電解めっき析出を抑制するため、アクチベーター工程後にポストディップ工程が行われている。ポストディップの種類として、残留した触媒を除去する効果を示すもの、残留した触媒に吸着して不活性化する効果を示すものがある。どちらの効果においても、銅配線パターン上に付与された触媒にも影響する場合が多く、銅配線パターン上への無電解めっきを阻害して未析出に繋がることがある。
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、更に以下のことが明らかとなった。
(1)パターン性の問題について
従来のアクチベーターを配線や配線の間隔が微細な基板に使用した場合、想定外の箇所に触媒を付与してしまうため、意図しない箇所へ無電解めっきが析出してしまう問題がある。微細化された銅配線へ無電解めっき処理を行う場合、軽微なパターン外析出であっても容易に配線間が繋がってしまい、短絡が生じる。
パターン性の問題に対する原因の考察として、以下が考えられる。
(a)アクチベーター工程で基板に薬液が付着した状態で、次工程の水洗に入る。
(b)酸性の薬液に接触させた後に、中性のイオン交換水に接触させると、パラジウムがイオンの状態から不安定な状態となる。また、配線間(パターン外)が狭くなると水洗で洗い落としきれない状態となる。
(c)無電解めっき浴に接触させる時に、パターン外に残った不安定なパラジウムが反応開始点となり、パターン外析出となる。
【0007】
(2)ポストディップによる問題について
従来のアクチベーターを使用した場合、その後ポストディップ工程により残留した触媒の除去、及び残留した触媒に吸着して不活性化する必要があるが、触媒の除去、不活性化は配線内に付与した触媒にも影響する場合が多く、めっきの未析出に繋がることがある。この問題の影響は基板及び配線、配線間隔の微細化が進むほど、従来に比べて大きくなる。
【0008】
以上の通り、アクチベーターとポストディップ工程を組み合わせた従来技術では、基板の銅配線パターン及び配線間の微細化が進むにつれ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立させることが難しくなっていることが判明した。
【0009】
本発明は、本発明者らが新たに見出した前記課題を解決し、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立可能な無電解めっき用触媒付与浴、該無電解めっき用触媒付与浴を用いた触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法、無電解めっき皮膜を含む材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の組成の無電解めっき用触媒付与浴を用いることにより、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明(1)は、パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0011】
本発明(2)は、パラジウム化合物をパラジウム濃度として1~1000mg/L含む本発明(1)記載の無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0012】
本発明(3)は、アミノカルボン酸を0.2~20g/L含む本発明(1)又は(2)記載の無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0013】
本発明(4)は、無機酸を含む本発明(1)~(3)のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0014】
本発明(5)は、pHが6.5以下である本発明(1)~(4)のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0015】
本発明(6)は、前記無電解めっきが、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する無電解めっきである本発明(1)~(5)のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴に関する。
【0016】
本発明(7)は、無電解めっき対象材料と、本発明(1)~(6)のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程を含む、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法に関する。
【0017】
本発明(8)は、無電解めっき対象材料と、本発明(1)~(6)のいずれかに記載の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程、及び、触媒付与工程の後に、無電解めっき処理する工程を含む、無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法に関する。
【0018】
本発明(9)は、金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核、及び前記触媒核上の皮膜を含み、前記触媒核がパラジウムを含有し、前記皮膜が無電解めっき皮膜である材料に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む無電解めっき用触媒付与浴であるので、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の無電解めっき用触媒付与浴(無電解めっき用触媒付与液)は、パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む。これにより、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立できる。
【0021】
前記無電解めっき用触媒付与浴で前述の効果が得られる理由は、以下のように推察される。
(1)パターン性の問題の解決について
(a)本発明の無電解めっき用触媒付与浴(アクチベーター浴)に錯化剤として添加するアミノカルボン酸は、アクチベーターに含まれるパラジウム(触媒として付与する金属)と錯体を形成できる。
(b)錯体を形成することで、水洗工程に入った時にパラジウムが不安定になりにくくなり、水洗工程で洗い流されやすくなる。
(c)それにより、配線外に存在するパラジウムが簡単に除去され、配線外での無電解めっきの反応開始点が減るため、パターン性が向上すると考えられる。
(d)銅配線上のパラジウムは置換反応により金属状態のパラジウムで存在するため、水洗で洗い落とされないので、配線外のパラジウムのみ除去することができる。
以上の通り、本発明の無電解めっき用触媒付与浴により、良好なパターン性が得られる。
(2)ポストディップによる問題(無電解めっきの析出性)の解決について
上記(1)の解説の通り、水洗のみで配線外の不要なパラジウムを除去できるため、従来のポストディップ工程が不要になり、結果としてポストディップ工程に係る問題、即ち無電解めっきの未析出のおそれがなくなり、良好な無電解めっきの析出性が得られる。
以上の通り、本発明の無電解めっき用触媒付与浴は、パラジウム化合物、アミノカルボン酸の相乗作用により、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立できる。
【0022】
本発明の無電解めっき用触媒付与浴により無電解めっき対象材料に触媒付与処理することにより、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造できる。この触媒核を含む無電解めっき対象材料は、前記の通り、配線外での無電解めっきの反応開始点が少なく、配線上には反応開始点となるパラジウムが触媒核として存在するため、パターン性と無電解めっきの析出性に優れる。そして、この触媒核を含む無電解めっき対象材料に無電解めっき処理を行うことにより、パターン外への析出を抑制しつつ、無電解めっき処理が可能となり、無電解めっき皮膜を含む材料を製造できる。この無電解めっき皮膜を含む材料は、パターン性と無電解めっきの析出性に優れているため、銅配線パターン及び/又は配線間の微細化が進んだプリント配線基板やパッケージ基板に好適に用いられ、小型化、高密度化された電子機器に好適に用いられる。
【0023】
<無電解めっき用触媒付与浴>
本発明の無電解めっき用触媒付与浴は、パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む。
【0024】
<<パラジウム化合物>>
パラジウム化合物は、配線上に析出し、無電解めっきの反応開始点となる触媒核を形成する。
パラジウム化合物は、無電解めっき用触媒付与浴に可溶性であれば特に限定されない。その具体例としては、例えば、無機及び有機パラジウム塩が挙げられ、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、臭化パラジウム、ヨウ化パラジウム、テトラアンミンパラジウム塩酸塩、テトラアンミンパラジウム硫酸塩、ジニトロジアンミンパラジウム等を例示できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、塩化パラジウム、硫酸パラジウムが好ましい。
【0025】
無電解めっき用触媒付与浴は、パラジウム化合物をパラジウム(金属パラジウム(Pd))濃度として1~1000mg/L含むことが好ましく、3~200mg/L含むことがより好ましく、5~100mg/L含むことが更に好ましく、10~100mg/L含むことが特に好ましい。上記範囲内であると、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0026】
無電解めっき用触媒付与浴において、パラジウム化合物以外の金属化合物の含有量が、金属濃度として、好ましくは0.1mg/L以下、より好ましくは0.05mg/L以下、更に好ましくは0.01mg/L以下である。これにより、本発明の効果がより良好に得られる傾向がある。
ここで、パラジウム以外の金属を複数含有する場合、前記金属濃度は合計濃度を意味する。他の成分の濃度についても同様である。
【0027】
無電解めっき用触媒付与浴に含まれる金属100質量%中、パラジウムの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0028】
<<アミノカルボン酸>>
アミノカルボン酸は、パラジウムと錯体を形成する。すなわち、アミノカルボン酸は、錯化剤として機能する。アミノカルボン酸としては、L体であっても、D体、DL体であっても良いが、L体が好ましい。アミノカルボン酸は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本明細書において、アミノカルボン酸は、アミノ基及びカルボキシル基を有する化合物、いわゆるアミノ酸であるが、アミノ基及び/又はカルボキシル基が誘導体化された誘導体であってもよい。もちろん、アミノ基及び/又はカルボキシル基が環の一部を形成していてもよい。
【0029】
アミノカルボン酸は、パラジウムと錯体を形成可能であれば特に限定されない。なかでも、本発明者らの検討の結果、(1)硫黄原子を含有するアミノカルボン酸及びその誘導体、(2)疎水性の低いアミノカルボン酸及びその誘導体を用いた場合に特にパターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向があることが判明した。そのため、アミノカルボン酸は、(1)硫黄原子を含有するアミノカルボン酸及びその誘導体、(2)疎水性の低いアミノカルボン酸及びその誘導体が好ましい。
【0030】
硫黄原子を含有するアミノカルボン酸及びその誘導体としては、メチオニン、システイン、これらの誘導体が挙げられる。誘導体としては、メチル化体、エチル化体などのアルキル化体やアセチル化体が好ましい。
【0031】
疎水性の低いアミノカルボン酸及びその誘導体としては、グリシンを基準として、グリシンの疎水性よりも低い(グリシンよりもより親水性の)アミノカルボン酸及びその誘導体が好ましく、具体的には、セリン、グルタミン、アスパラギン酸、アルギニン、リジン、アスパラギン、ヒスチジン、プロリン、これらの誘導体が挙げられる。なかでも、グルタミン、ヒスチジン、アスパラギン酸、プロリン、これらの誘導体が好ましく、ヒスチジン、アスパラギン酸、プロリン、これらの誘導体がより好ましく、ヒスチジン、プロリン、これらの誘導体が更に好ましい。誘導体としては、アルキル化体、アセチル化体が好ましい。
【0032】
アミノカルボン酸の疎水性は、Sereda et al, J . Chrom.., 676: 139-53, 1994.により算出できる。表1に、Sereda et al, J . Chrom.., 676: 139-53, 1994.により算出した20種類のアミノ酸の疎水性指数を示す。本願明細書において、疎水性指数とは、アミノカルボン酸がどれだけ水に溶けるかという相対的な疎水性の指標である。表1の値はpH2で測定され、値が0のグリシンに対して、最も疎水性の高いロイシン、イソロイシンの値が100となるように換算した相対値である。グリシンよりも親水性の高いアミノカルボン酸に対しては、負の値となる。
【0033】
【表1】
【0034】
Sereda et al, J . Chrom.., 676: 139-53, 1994.により算出したアミノカルボン酸(アミノカルボン酸誘導体も含む)の疎水性(前記疎水性指数)は、好ましくは-1以下、好ましくは-5以下、より好ましくは-10以下、更に好ましくは-15以下であり、下限は特に限定されないが、好ましくは-50以上である。上記範囲内であると、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0035】
無電解めっき用触媒付与浴は、アミノカルボン酸を0.2~20g/L含むことが好ましく、0.5~15g/L含むことがより好ましく、0.8~10g/L含むことが更に好ましい。上記範囲内であると、アミノカルボン酸とパラジウムがより適度に錯体を形成し、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0036】
無電解めっき用触媒付与浴に含まれる錯化剤100質量%中、アミノカルボン酸の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0037】
無電解めっき用触媒付与浴において、アミノカルボン酸濃度と、パラジウム(金属パラジウム(Pd))濃度の比率(アミノカルボン酸濃度(g/L)/Pd濃度(g/L))が、好ましくは10~1000、より好ましくは20~500、更に好ましくは50~200 である。上記範囲内であると、アミノカルボン酸とパラジウムがより適度に錯体を形成し、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0038】
なお、本明細書において、無電解めっき用触媒付与浴中の、パラジウム(金属パラジウム(Pd))濃度等の金属濃度は、ICP(堀場製作所社製)により測定される。
また、本明細書において、無電解めっき用触媒付与浴中のアミノカルボン酸濃度は、液体クロマトグラフィー(島津製作所社製)により測定される。
【0039】
<<pH>>
無電解めっき用触媒付与浴のpHは、好ましくは6.5以下、より好ましくは5.5以下、更に好ましくは4.5以下、特に好ましくは3.5以下、最も好ましくは2.5以下、より最も好ましくは1.5以下、更に最も好ましくは1.0以下であり、下限は特に限定されない。pHが6.5以下であると、 アミノカルボン酸とパラジウムがより適度に錯体を形成し、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
なお、本明細書において、無電解めっき用触媒付与浴のpHは、25℃において測定される値である。
【0040】
無電解めっき用触媒付与浴のpHの調整は、パラジウム化合物、アミノカルボン酸の種類の選択により行なうこともできる。また必要に応じて、アルカリ成分、酸成分を添加してもよい。
アルカリ成分は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニウム等が挙げられる。酸成分は、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸、リン酸等が挙げられる。これらアルカリ成分、酸成分は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、無機酸が好ましい。
【0041】
無機酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、炭酸、リン酸等が挙げられる。なかでも、硫酸、塩酸が好ましい。
【0042】
無電解めっき用触媒付与浴は、無機酸を1~200g/L含むことが好ましく5~150g/L含むことがより好ましく、10~100g/L含むことが更に好ましい。上記範囲内であると、アミノカルボン酸とパラジウムがより適度に錯体を形成し、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0043】
無電解めっき用触媒付与浴は、pH緩衝性を高めるために、緩衝剤を含有してもよい。
緩衝剤としては、緩衝性があれば特に限定されず、例えば、pH6.5以下に緩衝性がある化合物としては、例えば、クエン酸、酒石酸、酢酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無電解めっき用触媒付与浴中の緩衝剤濃度は、好ましくは1.0~50g/L、より好ましくは5.0~30g/Lである。
【0044】
<<その他>>
無電解めっき用触媒付与浴は、前記成分と共に、無電解めっき用触媒付与浴に汎用されている成分、例えば、Cuイオン捕捉剤、界面活性剤等を含有してもよい。
【0045】
本発明の無電解めっき用触媒付与浴は、銅及び/又は銅合金が表面に露出している材料に対する無電解めっき用触媒付与浴として好適に使用可能である。
【0046】
<触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法(触媒付与方法)>
本発明の触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法(本発明の無電解めっき対象材料に触媒付与処理する方法)は、無電解めっき対象材料と、本発明の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程を含む。
【0047】
無電解めっき対象材料は、金属が表面に露出している材料である限り、特に制限されない。例えば、素材として、ガラス繊維強化エポキシ、ポリイミド、PET等のプラスチック類、ガラス、セラミック、金属酸化物、金属、紙、合成又は天然繊維などの材質を1種で又は組み合わせてなるものであり、その形状としては、板、フィルム、布状、繊維状、チューブ等のいずれであってもよい。表面に露出している金属としては、例えば、銅、銅合金、銀、銀合金、金、金合金、モリブデン、タングステン等が挙げられる。これらの内で、銅合金、銀合金、金合金としては、それぞれ、例えば、銅、銀、又は金を50重量%以上含む合金に対して適用できる。なかでも、表面に露出している金属が銅、銅合金であることが好ましい。無電解めっき対象材料として、具体的には、例えばプリント配線板、半導体パッケージ、電子部品、セラミック基板等が挙げられる。これらの材料において、表面に露出している金属は、配線を構成し得る。
【0048】
無電解めっき対象材料は、周知の方法で、脱脂処理等のクリーナー処理、湯洗処理、ソフトエッチング処理、酸洗浄処理、プレディップ処理等の前処理が施されたものであることが好ましい。
【0049】
無電解めっき対象材料と、本発明の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる具体的な方法については、特に限定されないが、通常は、本発明の無電解めっき用触媒付与浴中に被処理物を浸漬すればよい。その他、無電解めっき対象材料の表面に該触媒付与浴を噴霧や塗布する方法などによっても触媒付与処理を行うことができる。
【0050】
触媒付与工程では、本発明の無電解めっき用触媒付与浴の液温は、特に限定されないが、通常、5~80℃程度とすることが好ましく、15~50℃程度とすることがより好ましい。
【0051】
触媒付与工程の処理時間については、特に限定されないが、通常、5秒~30分程度とすることが好ましく、15秒~10分程度とすることがより好ましい。
【0052】
本発明の触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法(本発明の無電解めっき対象材料に触媒付与処理する方法)により、無電解めっき対象材料の表面金属上にパラジウムを含む触媒核が形成される。触媒核は、本発明の無電解めっき用触媒付与浴中の成分(特に金属成分)に応じた組成を有する。例えば、本発明の無電解めっき用触媒付与浴が金属元素含有化合物を含む場合、触媒核は、パラジウム、及び当該金属を含む。
【0053】
触媒核中のパラジウム含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上であり、100質量%であってもよい。これにより、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
【0054】
本明細書において、触媒核中の各元素の含有量は、ICP(堀場製作所社製)により測定される。
【0055】
該触媒核を含む無電解めっき対象材料を無電解めっき処理することにより、パターン性と無電解めっきの析出性等がより優れた状態で、無電解めっき皮膜を形成することができる。触媒核は表面活性化の目的であるので、その触媒量は、例えば2μg/dm以上、2~100μg/dmであることができる。
【0056】
<無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法>
本発明の無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法(本発明の無電解めっき対象材料を無電解めっきする方法)は、無電解めっき対象材料と、本発明の無電解めっき用触媒付与浴とを接触させる触媒付与工程、及び触媒付与工程の後に、無電解めっき処理するめっき工程を含む。
【0057】
触媒付与工程については、触媒核を含む無電解めっき対象材料を製造する方法において説明した工程と同一である。
【0058】
めっき工程では、触媒付与工程の後に、触媒付与工程により得られた触媒核を含む無電解めっき対象材料に対して、無電解めっき処理を行う。具体的には、めっき工程では、触媒付与工程により得られた触媒核を含む無電解めっき対象材料に対して、無電解めっき浴を接触させることにより、無電解めっき処理を行う。これにより、無電解めっき皮膜を含む材料が製造される。
【0059】
無電解めっき浴としては特に限定はなく、自己触媒性の無電解めっき浴を用いることができる。例えば、無電解パラジウムめっき浴、無電解パラジウム合金めっき浴、無電解銅めっき浴、無電解銅合金めっき浴、無電解銀めっき浴、無電解銀合金めっき浴、無電解ニッケルめっき浴、無電解ニッケル合金めっき浴、無電解コバルトめっき浴、無電解コバルト合金めっき浴、無電解金めっき浴、無電解金合金めっき浴、等を用いることができる。これらの無電解めっき浴の具体的な組成については、特に限定はなく、例えば、還元剤成分を含む公知の組成の自己触媒性の無電解めっき浴を用いればよい。めっき条件についても、使用するめっき浴の種類に応じて、通常のめっき条件に従えばよい。また、これらのめっき浴を組み合わせてもよい。すなわち、例えば、無電解パラジウムめっき浴によりめっき皮膜を形成した後、無電解ニッケルめっき浴によりめっき皮膜を形成してもよい。
【0060】
無電解めっき浴としては、無電解パラジウムめっき浴、無電解パラジウム合金めっき浴、無電解ニッケルめっき浴、無電解ニッケル合金めっき浴、無電解コバルトめっき浴、無電解コバルト合金めっき浴が好ましく、無電解パラジウムめっき浴、無電解パラジウム合金めっき浴、無電解ニッケルめっき浴、無電解ニッケル合金めっき浴がより好ましい。
【0061】
前記の通り、本発明では、ポストディップ工程を行わないことが好ましい。具体的には、前記触媒付与工程、前記めっき工程の間にポストディップ工程を行わないことが好ましい。これにより、パターン性と無電解めっきの析出性をより両立できる傾向がある。
更に、本発明では、前記触媒付与工程の後に、水洗工程を行うことが好ましい。これにより、配線外の不要なパラジウムを除去できるため、従来のポストディップ工程が不要になり、結果としてポストディップ工程に係る問題、即ち無電解めっきの未析出のおそれがなくなり、良好な無電解めっきの析出性が得られる。
【0062】
本発明の無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法(本発明の無電解めっき対象材料を無電解めっきする方法)により、パターン性と無電解めっきの析出性等により優れた無電解めっき皮膜を形成することができる。本発明の無電解めっき皮膜を含む材料を製造する方法(本発明の無電解めっき対象材料を無電解めっきする方法)により、このような無電解めっき皮膜を備える材料、具体的には、金属が表面に露出している材料、前記金属上の触媒核、及び前記触媒核上の皮膜を含み、前記触媒核がパラジウムを含有し、前記皮膜が無電解めっき皮膜である、材料を得ることができる。
【0063】
以上に説明した処理における処理条件や、各種の濃度設定に関しては、以上のような条件に限られるものではなく、形成する皮膜の厚み等によって適宜変更できることは言うまでもない。
【0064】
本発明により得られた無電解めっき皮膜を含む材料は、様々な電子部品に用いることが可能である。電子部品としては、例えば、家電機器、車載機器、送電システム、輸送機器、通信機器等に用いられる電子部品が挙げられ、具体的には、エアコン、エレベーター、電気自動車、ハイブリッド自動車、電車、発電装置用のパワーコントロールユニット等のパワーモジュール、一般家電、パソコン等が挙げられる。
【実施例0065】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0066】
表4~7に示す条件に従い、銅配線幅50μm、配線間20μmの基板に各処理を施して、無電解ニッケルめっき(ニッケル膜厚:4μm)又は無電解パラジウムめっき(パラジウム膜厚:0.15μm)を行い、配線間のニッケル又はパラジウムの析出の程度によりパターン性を評価した。
ここで、パターン性の評価は、無電解ニッケルめっきの場合は、無電解ニッケルめっき後に、配線間が10μm以上あいている状態を「良好」、配線間が繋がっている状態を「不可」、配線間の繋がりがなく、距離が10μm未満であるものを「可」と評価した。
また、パターン性の評価は、無電解パラジウムめっきの場合は、無電解パラジウムめっき後に、配線間が15μm以上あいている状態を「良好」、配線間の距離が10~15μm未満あいている状態を「可」、距離が10μm未満であるものを「不可」と評価した。
更に、無電解めっきの析出性については、無電解ニッケル又はパラジウムが析出した場合を「〇」、未析出になった場合を「×」と評価した。評価結果を表4~7に示す。
なお、表4~7において、表中のパラジウム濃度は、パラジウム元素換算濃度(mg/L)である。
また、表2、3では、上の工程から順に処理を行った。
なお、表4~7に示す通り、実施例では、ポストディップ工程を行わなかった。
【0067】
【表2】

【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
表2~7より、パラジウム化合物、アミノカルボン酸を含む実施例の無電解めっき用触媒付与浴は、無電解めっきの未析出の原因となるポストディップ工程を省略しても、良好なパターン性が得られ、パターン性と無電解めっきの析出性を両立できることが分かった。