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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088342
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】モータ制御装置、及び成形機
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/00 20060101AFI20240625BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02P3/00 D
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203456
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕成
(72)【発明者】
【氏名】広富 雄太
【テーマコード(参考)】
4F206
5H530
【Fターム(参考)】
4F206AR16
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM11
4F206JM16
4F206JT32
5H530AA07
5H530BB40
5H530CC22
5H530CD13
5H530CD24
5H530CD30
5H530CD32
5H530DD03
5H530DD04
5H530EF01
(57)【要約】
【課題】三相モータ、及び、三相モータを制御する制御部のいずれか一つ以上の劣化を抑制する。
【解決手段】一実施形態に係るモータ制御装置は、電源と三相モータとの間を流れる電流値を検出部から取得し、回転している三相モータに停止制御を行う際、三相モータの回転によって発生する当該三相モータのロータとステータとの間の磁界の変化に基づいた誘導起電力によって流れる電流を含め、検出部により検出される電流値が、略'0'アンペアに近づくように、電源から三相モータに出力される電流を制御するように構成されている制御部を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と三相モータとの間を流れる電流値を検出部から取得し、回転している前記三相モータに停止制御を行う際、前記三相モータの回転によって発生する当該三相モータのロータとステータとの間の磁界の変化に基づいた誘導起電力によって流れる電流を含め、前記検出部により検出される前記電流値が、略'0'アンペアに近づくように、前記電源から前記三相モータに出力される電流を制御するように構成されている制御部を備える、
モータ制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記三相モータの二相の各々に流れる前記電流値を、前記検出部から取得し、前記二相の各々を流れる前記電流値に基づいて、他の一相に流れる電流値を算出し、三相の各々に流れる電流値が、略'0'アンペアに近づくように、前記電源から前記三相モータに出力される電流を制御するように構成されている、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記三相モータの位置の変化を取得するエンコーダから取得した信号から異常が検出されて前記三相モータの停止制御を行う場合に、前記電流値が、略'0'アンペアに近づくように、前記電源から前記三相モータに出力される電流を制御するように構成されている、
請求項1に記載のモータ制御装置。
【請求項4】
電源と三相モータとの間を流れる電流値を検出部から取得し、回転している前記三相モータに停止制御を行う際、前記三相モータの回転によって発生する当該三相モータのロータとステータとの間の磁界の変化に基づいた誘導起電力によって流れる電流を打ち消すように、前記電源から前記三相モータに出力される電流を制御するように構成されている制御部を備える、
モータ制御装置。
【請求項5】
成形材料を出力する出力部材と、
前記出力部材を移動可能に接続されている複数の三相モータと、
前記複数の三相モータの各々に設けられた検出部から、電源と当該三相モータとの間を流れる電流値を取得し、回転している前記複数の三相モータに停止制御を行う際、前記複数の三相モータの各々において、回転によって発生する当該三相モータのロータとステータとの間の磁界の変化に基づいた誘導起電力によって流れる電流を含め、前記複数の三相モータの各々から取得された前記電流値が、略'0'に近づくように、前記複数の三相モータの各々に出力される電流を制御するように構成されている制御部と、
を備える成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、及び成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な装置の駆動源として、三相モータが用いられている。三相モータを停止させる際に、三相モータ内のロータの磁極の位置を把握するのが難しい場合、ステータコイルの固定相に直流電流を流すことで、ロータを停止させていた。当該停止制御では、ロータの回転速度が低減している間に、ステータで生じている磁界によって、ロータの回転速度の上昇と減少とが交互に生じる可能性がある。
【0003】
近年、モータの制御として様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された技術では、射出成形の工程に応じてサーボアンプに供給する直流電力を制御する技術が提案されている。特許文献1では、サーボアンプに電力を供給する電力貯蔵回路において、電力貯蔵回路のコイルに貯蔵された余剰電力の電磁エネルギーを消費して、コイルを流れる電流を徐々に減衰させて零にする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-58317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、サーボアンプに電力を供給する電力貯蔵回路における電力制御を行う技術であって、三相モータを停止させる際に、ステータコイルに流す直流電流を調整する技術ではない。つまり、特許文献1に記載された技術では、ロータに対して停止制御を行う際に、ロータの回転速度の上昇と減少とが交互に生じるのを抑制するように、ステータコイルに流れる電流を調整するのは難しい。
【0006】
本発明の一態様は、三相モータを停止させる際に、三相モータに流れる電流を調整することで三相モータの劣化を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るモータ制御装置は、電源と三相モータとの間を流れる電流値を検出部から取得し、回転している三相モータに停止制御を行う際、三相モータの回転によって発生する当該三相モータのロータとステータとの間の磁界の変化に基づいた誘導起電力によって流れる電流を含め、検出部により検出される電流値が、略'0'アンペアに近づくように、電源から三相モータに出力される電流を制御するように構成されている制御部を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、三相モータを停止させる際に、三相モータに流れる電流を調整して、三相モータ、及び、三相モータを制御する制御部(例えばモータドライバ)のいずれか一つ以上の劣化を抑制する技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る射出装置に設けられたシリンダ、計量モータ及び射出モータの接続構造を上面から示した図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る射出成形機の制御装置及び射出モータを制御するための構成要素を機能ブロックで示す図である。
図5図5は、従来の射出成形機で異常停止を示す動作指令を受け付けた場合における回転速度の変化を示した図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る射出成形機で異常停止を示す動作指令を受け付けた場合における回転速度の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0015】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0016】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0017】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0018】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0020】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0021】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0022】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0023】
なお、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0024】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0025】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0026】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0027】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0028】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0029】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0030】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0031】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0032】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0033】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組み合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0045】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。計量モータ340の具体的な構成については後述する。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。射出モータ350の具体的な構成については後述する。
【0066】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0067】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0070】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341(図4参照)を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0072】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0073】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0074】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0075】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0076】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0077】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0078】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0079】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0080】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0081】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0082】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0083】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0084】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0085】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0086】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0087】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0088】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0089】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704と、通信インターフェース705とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。また、制御装置700は、通信インターフェース705で外部の装置に情報を送信する。
【0090】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し生産する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0091】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0092】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0093】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0094】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0095】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0096】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。タッチパネル770は、表示された画面領域に操作を受け付け可能とする。また、タッチパネル770の画面領域には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0097】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0098】
(射出装置の構造)
次に、射出装置300の具体的な構成について説明する。
【0099】
図3は、本実施形態に係る射出装置300に設けられたシリンダ310、計量モータ340及び射出モータ350の接続構造を上面から示した図である。
【0100】
図3を参照して、本実施形態に係る射出装置300の構造の一例について説明する。射出装置300は、シリンダ310(出力部材の一例)の後端部を保持する固定プレート302と、固定プレート302の後方に設けられる可動プレート303と、を備える。固定プレート302は、スライドベース301に対して固定される。可動プレート303は、スライドベース301に対して進退自在に設けられる。スライドベース301には、可動プレート303を案内する図示しないガイドが敷設されてもよい。
【0101】
射出装置300は、スクリュ330と同軸的に設けられる駆動軸380と、スクリュ330と駆動軸380を連結するカップリング381と、を備える。駆動軸380は、スクリュ330から後方に延びており、可動プレート303の貫通穴に挿通される。その貫通穴には図示しない軸受が設けられ、その軸受が駆動軸380を回転自在に支持する。駆動軸380は、可動プレート303と共に進退させられる。
【0102】
計量モータ340は、駆動軸380を回転させることで、スクリュ330を回転させる。計量モータ340は、例えば可動プレート303に対して固定される。計量モータ340の回転運動は、回転伝達機構390によって駆動軸380に伝達される。回転伝達機構90は、例えば、計量モータ340の出力軸に設けられる駆動プーリ391と、駆動軸380の後端に設けられる受動プーリ392と、駆動プーリ391と受動プーリ392に掛け渡されるベルト393と、を含む。なお、回転伝達機構390は、プーリやベルトの代わりにギヤなどを含んでもよい。
【0103】
射出モータ350は、可動プレート303を進退させることで、駆動軸380と共にスクリュ330を進退させる。射出モータ350の回転運動は、運動変換機構370によって可動プレート303の直線運動に変換される。運動変換機構370は、ねじ軸371と、ねじ軸371に螺合されるねじナット372と、を有する。運動変換機構370は、例えばボールねじであり、ねじ軸371とねじナット372の間に図示しないボールを有する。ボールの代わりに、コロが用いられてもよい。
【0104】
射出モータ350は、例えば固定プレート302に対して固定される。この場合、ねじナット372は、可動プレート303に対して固定される。射出モータ350がねじ軸371を回転させることで、ねじナット372が進退させられる。これにより、可動プレート303が進退させられる。
【0105】
なお、射出モータ350とねじナット372の配置は逆でもよく、射出モータ350が可動プレート303に対して固定され、ねじナット372が固定プレート302に対して固定されてもよい。この場合、射出モータ350がねじ軸371を回転させると、ねじ軸371が回転しながら進退する。その結果、射出モータ350と共に可動プレート303が進退する。ねじナット372は、回転も進退もしない。
【0106】
射出モータ350と運動変換機構370は、例えばスクリュ330を中心に対称に複数(例えば一対)設けられる。これにより、複数の射出モータ350によってスクリュ330を真っ直ぐ押すことができ、スクリュ330の歪みを抑制できる。なお、射出モータ350および運動変換機構370の数は1つでもよく、射出モータ350および運動変換機構370はスクリュ330と同一直線上に設けられてもよい。
【0107】
図3に示される例では、2つの射出モータ350の各々が、運動変換機構370を介して、可動プレート303に接続されている。このため、可動プレート303を進退させるためには、2つの射出モータ350を同時に駆動させる必要がある。同様に、可動プレート303を停止させる際には、2つの射出モータ350が同時に停止する必要がある。
【0108】
つまり、スクリュ330を停止させる場合には、一方の射出モータ350と、他方の射出モータ350と、の間の回転速度にずれが生じると、可動プレート303に対する射出モータ350の位置にずれが生じる。回転速度にずれが生じている時間が長い場合には、可動プレート303に対する射出モータ350の位置の差が大きくなる。この場合、位置の差のずれによって、可動プレート303にひずみ若しくは傾きが生じ、運動変換機構370のねじ軸371、又は、スクリュ330と可動プレート303とを接続する駆動軸380等にもひずみ又は傾きなどの異常が生じる可能性がある。
【0109】
そこで、本実施形態においては、射出成形機10では以下に示す停止制御を行う。次に停止制御を行う構成について説明する。
【0110】
(第1の実施形態)
図4は、第1の実施形態に係る射出成形機10の制御装置700及び射出モータ350を制御するための構成要素を機能ブロックで示す図である。図4に図示される制御装置700の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図3に示すように、制御装置700のCPU701は、取得部711と、判定部712と、モータ制御部713と、を備える。
【0111】
本実施形態は、モータ制御装置の一例として、制御装置700と、2つのモータドライバ352と、を組み合わせた構成で、射出モータ350を制御する。本実施形態の構成は一例を示したものである。例えば、1つの装置が、制御装置700と2つのモータドライバ352とを組み合わせた機能を有し、当該1つの装置で、射出モータ350を制御してもよい。さらには、2つのモータドライバ352を一つにまとめた構成で、射出モータ350を制御してもよい。
【0112】
取得部711は、射出成形機10に設けられた各種センサから、検知結果を示す信号(情報の一例)を取得する。例えば、取得部711は、操作装置750から操作に関する信号を取得する。さらに、取得部711は、射出モータエンコーダ351から射出モータ350の回転に関する信号を取得する。
【0113】
判定部712は、取得部711が取得した信号に基づいて、射出成形機10で異常が生じたか否かを判定する。例えば、判定部712は、射出モータエンコーダ351からの信号から、射出モータ350のロータ350aの回転状況を認識できなくなった場合に、射出モータエンコーダ351に異常が生じたと判定する。さらには、判定部712は、操作装置750から、異常停止する旨の操作が行われた場合に、射出成形機10で異常が生じたと判定する。なお、本実施形態は、射出成形機10で異常が生じたか否かの判定の一例を示したものであって、各種センサ又は操作装置750からの信号に基づいた異常判定であればよい。
【0114】
モータ制御部713は、射出モータ350を回転させるために動作指令を生成し、当該動作指令を出力する。さらに、動作指令としては、例えば射出モータ350を停止させる指令が含まれてもよいし、射出モータ350の目標となる回転数が含まれてもよい。
【0115】
次に、射出モータ350に関連する構成について説明する。本実施形態では、射出モータ350と、射出モータエンコーダ351と、三相インバータ353と、第1電流センサ(検出部の一例)354と、第2電流センサ(検出部の一例)355と、が2個ずつ設けられている。2個ずつ設けられた上記の構成は同じものとする。そして、電源356からの電力が、三相インバータ353を介して、射出モータ350の各々に供給される。以下、射出モータ350、射出モータエンコーダ351、三相インバータ353、第1電流センサ354、及び第2電流センサ355について説明する。
【0116】
本実施形態に係る射出モータ350は、ロータ350aとステータ350bとで構成されている三相モータである。射出モータ350は、U相端子とV相端子とW相端子とが設けられ、U相端子とV相端子とW相端子とから供給される三相交流の電力によって、ロータ350aを回転させる。
【0117】
ロータ350aは、例えばS極とN極とを有する磁石であって、射出モータ350に接続されているねじ軸371と共に回転する。
【0118】
ステータ350bは、ロータ350aを回転させるための力を発生させるための構成であって、図示しない三相のU相コイルとV相コイルとW相コイルとを備え、各コイルで生じる極と磁界とが、三相インバータ353から供給される三相交流によって変化する。当該三相交流による電圧の変化によって、ロータ350aが回転する。
【0119】
射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、1回転毎に所定数のパルスを発生し、制御装置700へ出力する。制御装置700は、単位時間当たりに入力されるパルス数から射出モータ350の回転速度を、またパルスの総数から射出モータ350の回転量を求めることができる。
【0120】
第1電流センサ354は、三相インバータ353から射出モータ350のU相端子に供給される駆動電流を検出し、検出値をモータドライバ352に出力する。
【0121】
第2電流センサ355は、三相インバータ353から射出モータ350のV相端子に供給される駆動電流を検出し、検出値をモータドライバ352に出力する。
【0122】
モータドライバ352は、第1電流センサ354及び第2電流センサ355からの検出値と、射出モータ350の回転速度等と、制御装置700からの動作指令と、に基づいて、射出モータ350を回転させるための制御信号を生成し、三相インバータ353に出力する。モータドライバ352は、射出モータ350の実際の回転速度等(回転速度及び回転量)を、制御装置700から取得してもよいし、射出モータエンコーダ351から直接、取得してもよい。
【0123】
三相インバータ353は、コンバータ357と共に、複数の(図示しない)パワートランジスタと、複数の(図示しない)ダイオードと、に基づいて構成される。複数のパワートランジスタ及び複数のダイオードの構成は、従来と同様の構成とする。
【0124】
コンバータ357は、モータドライバ352からの制御信号に従って、電源356から供給される電力について電圧の変換等を行い、直流電流を出力する。
【0125】
そして、三相インバータ353は、モータドライバ352からの制御信号に基づいて、複数のパワートランジスタ及び複数のダイオードを制御して、コンバータ357から入力される直流電流を、三相交流に変換し、射出モータ350に三相交流で電力を供給する。これにより、射出モータ350が回転する。
【0126】
次に、モータドライバ352の具体的な制御について説明する。
【0127】
例えば、モータドライバ352は、入力された動作指令に回転速度が含まれている場合、取得した回転速度、及び、第1電流センサ354及び第2電流センサ355から入力された駆動電流を考慮して、動作指令に含まれている回転速度になるような制御信号を生成し、三相インバータ353に出力する。当該制御信号によって、三相インバータ353から、射出モータ350に供給される駆動電流が変化し、動作指令に示されている回転速度になるように、射出モータ350の回転トルク、速度等が制御される。
【0128】
さらに、モータドライバ352は、動作指令に異常停止する旨(回転速度'0')が含まれている場合に、第1電流センサ354及び第2電流センサ355から入力された駆動電流に基づいて、射出モータエンコーダ351を停止させるための制御信号を生成し、三相インバータ353に出力する。
【0129】
具体的には、モータドライバ352は、射出モータ350の異常停止制御を行う際に、三相の各々に流れる電流値が'0A(アンペア)'になるように、電源356から射出モータ350に出力される電流を制御する。つまり、射出モータ350の異常停止させる際、三相インバータ353から射出モータ350に対する三相交流による電力の供給を停止させても、射出モータ350内で、ロータ350aが回転しているので、ロータ350aとステータ350bとの間で発生する誘導起電力によって電流が流れる。
【0130】
そこで、本実施形態に係るモータドライバ352は、誘導起電力によって電流が流れる場合であっても、三相の各々に流れる電流が'0A'になるように(誘導電流を打ち消すように)、三相インバータ353を制御する。例えば、モータドライバ352は、コンバータ357を制御して、誘導起電力を打ち消すような電圧を印加する。つまり、誘導起電力と略同じ電圧を印加することで、電流が流れることを抑制できる。誘導起電力は、検出された電流値等から算出してもよい。さらに、モータドライバ352は、誘導起電力によって三相の各々に流れている電流値に対応するように、三相インバータ353内のパワートランジスタの制御を行って電力の出力先を制御する。これにより、モータドライバ352は、誘導起電力によって流れる電流を含め、三相の各々に流れる電流が'0A'になるように、三相インバータ353を介して射出モータ350に出力される電流を制御する。換言すれば、モータドライバ352は、誘導起電力によって流れる(誘導)電流を打ち消すように、電源356から射出モータ350(三相モータの一例)に出力される電流を制御する。なお、本実施形態は、三相の各々に流れる電流の電流値を'0A'にするための制御の一態様を示したものであって、当該手法に制限するものではない。例えば、三相の各々に流れる電流を'0A'にするための回路を別途設けてもよいし、周知の手法を問わず、あらゆる手法を用いてよい。
【0131】
本実施形態においては、モータドライバ352は、第1電流センサ354及び第2電流センサ355から、U相に流れる電流値及びV相に流れる電流値を取得した場合に、U相に流れる電流値及びV相に流れる電流値から、W相に流れる電流値を算出する。そして、モータドライバ352は、三相の各々に流れる電流値が'0A'になるように、三相インバータ353から射出モータ350に出力される電流を制御する。
【0132】
電流の制御手法は、周知の手法を問わず、あらゆる手法を用いてよい。なお、本実施形態では、三相の各々に流れる電流値が'0A'になるよう制御する例について説明するが、電流値が完全に'0A'になるよう制御する手法に制限するものではなく、'0A'に近い値であってもよい。換言すれば、射出モータ350に流れる三相の各々の電流値が略'0A'に近づけることで、射出モータ350に係る負担の低減等の効果を奏することができる。
【0133】
本実施形態に係る停止制御は、射出モータエンコーダ351から取得した信号に異常が検出された場合に有用である。つまり、射出モータエンコーダ351から取得した信号に異常が検出された場合、ロータ350aの磁極を考慮した停止制御が難しくなる。これに対して、本実施形態においては、モータドライバ352は、射出モータエンコーダ351から取得した信号に異常が検出されて射出モータ350の停止制御を行う場合に、三相の各々に流れる電流値が'0A'になるように、三相インバータ353から射出モータ350に出力される電流を制御する。これにより、射出モータエンコーダ351から取得した信号が異常な場合であっても、モータドライバ352は、ロータ350aの磁極を考慮した停止制御を実現できる。
【0134】
<回転速度変化の説明>
次に、従来の射出成形機で異常停止を行う場合における射出モータの回転速度の変化について説明する。
【0135】
図5は、従来の射出成形機で異常停止を示す動作指令を受け付けた場合における回転速度の変化を示した図である。図5に示される例では、本実施形態と同様に、射出成形機に2つの射出モータが設けられた例とする。図5の横軸は時間を示し、図5の縦軸は、回転速度及び位置を示している。
【0136】
図5で示される例では、動作指令1501は、一方の射出モータに対する回転速度の指令値が示されている。動作指令1502は、他方の射出モータに対する回転速度の指令値が示されている。
【0137】
回転速度1503は、一方の射出モータの回転速度を示し、回転速度1504は、他方の射出モータの回転速度を示している。
【0138】
位置ずれ1505は、一方の射出モータに接続されているねじナットのX軸方向の位置と、他方の射出モータに接続されているねじナットのX軸方向の位置と、のずれを示している。
【0139】
そして、制御装置から2つのモータドライバに出力された動作指令1501、1502が示されている。動作指令1501、1502は、時刻t1まで回転速度を上昇させる指令であって、時刻t1以降は、異常停止させる(回転速度を'0'にする)指令とする。
【0140】
このため、2つのモータドライバの各々は、接続されている射出モータのステータのU相、V相、及びW相のコイルの各々に、電圧を固定した上で直流電流を流す。電圧値は、任意の値でよく、U相、V相、及びW相のコイルに流れる電圧の合計は'0'となる。例えば、モータドライバが、U相に正の所定電圧で電力を供給するよう制御してもよい。この場合、モータドライバが、V相及びW相には負の所定電圧1/2で電力を供給するよう制御する。所定電圧は、任意の値でよく、例えば出力可能な電圧値の1/2としてもよい。そして、モータドライバは、射出モータの回転が停止した後、電圧の印加を停止する。
【0141】
この場合、回転速度1503、1504は、上述したステータのコイルで生じる磁極及び磁界によって、低下と上昇とを繰り返しながら、徐々に低下していく。図5に示される例では、時刻t1~t5の期間で、回転速度の低下と上昇とが繰り返されている。そして、一方の射出モータと他方の射出モータとの間でロータの位置状態が異なると、一方の射出モータと他方の射出モータとの間の回転速度にずれが生じる。
【0142】
図5に示される例では、時刻t2~時刻t3の間及び時刻t4~時刻t5の間で、回転速度にずれが生じている。このため、時刻t2~時刻t3の間及び時刻t4~時刻t5の間で位置ずれ1505が大きくなっている。
【0143】
位置ずれ1505が大きくなる場合、換言すれば、2つのねじナットのX軸方向の位置がずれた場合、ねじナットに螺合しているネジ軸、2つのねじナットに接続されている可動プレート、及び可動プレートに接続されている駆動軸及びスクリュのうちいずれか一つ以上の構成において、位置がずれたことによる負荷が生じる。負荷が大きい場合には、上述した構成においてひずみ又は傾きが生じる可能性がある。
【0144】
つまり、構成にひずみ及び傾きを抑制するためには、複数の射出モータの回転速度にずれが生じないように制御するのが好ましい。そこで、本実施形態に係る制御装置700及びモータドライバ352は、上述した制御を行う。
【0145】
図6は、本実施形態に係る射出成形機10で異常停止を示す動作指令を受け付けた場合における回転速度の変化を示した図である。図6の横軸は時間を示し、図6の縦軸は、回転速度及び位置を示している。
【0146】
図6で示される例では、動作指令1601は、一方の射出モータ350に対する回転速度の指令値が示されている。動作指令1602は、他方の射出モータ350に対する回転速度の指令値が示されている。
【0147】
回転速度1603は、一方の射出モータ350の回転速度を示し、回転速度1604は、他方の射出モータ350の回転速度を示している。
【0148】
位置ずれ1605は、一方の射出モータ350に接続されているねじナット372のX軸方向の位置と、他方の射出モータ350に接続されているねじナット372のX軸方向の位置と、のずれを示している。
【0149】
そして、制御装置700から2つのモータドライバ352の各々に出力された動作指令1601、1602が示されている。動作指令1601、1602は、時刻t11まで回転速度を上昇させる指令であって、時刻t11以降は、異常停止させる(回転速度を'0'にする)指令とする。
【0150】
2つのモータドライバ352の各々は、第1電流センサ354及び第2電流センサ355が検出した電流値に基づいて、誘導起電力によって流れる電流を含め、三相インバータ353から射出モータ350に接続される3相の線の各々の電流値が'0A'になるよう(誘導電流を打ち消すように)制御する。
【0151】
当該制御を行った場合、回転速度1603及び回転速度1604に示されるように、2つの射出モータ350の回転速度は、ずれが生じることなく低下していく。
【0152】
このため、図6に示される例では、位置ずれ1605は、図5に示される位置ずれ1505と比べて小さくなる。
【0153】
従って、本実施形態においては、モータドライバ352が上述した制御を行うことで、2つの射出モータ350の回転速度にずれを生じさせることなく、停止させる制御を行うことができる。
【0154】
本実施形態に係る射出成形機10は射出モータ350を2つ設けた例について説明した。しかしながら、本実施形態は、射出成形機10に射出モータ350を2つ設ける例に制限するものではなく、射出成形機10に射出モータ350を3つ以上設けてもよい。
【0155】
(変形例)
上述した実施形態においては、射出成形機10に複数の射出モータ350が設けられた例について説明した。しかしながら、上述した実施形態は、射出成形機10に複数の射出モータ350を設ける例に制限するものではない。そこで、本変形例では、射出成形機10に1つの射出モータ350を設ける例とする。
【0156】
射出成形機10に1つの射出モータ350を設けた場合であっても、モータドライバ352は、射出モータ350を停止させる際に、上述した実施形態と同様の制御を行う。
【0157】
本変形例では、モータドライバ352が、上述した実施形態と同様の制御を行う、換言すれば異常停止する際に、射出モータ350に接続される3相の線の各々の電流値が'0A'になるよう制御する。モータドライバ352が当該制御を行うことで、射出モータ350の回転速度が上昇と低下とを繰り返すことを抑制できる。したがって、本変形例では、射出モータ350を含む構成の劣化を抑制し、長寿命化を実現できる。
【0158】
上述した実施形態及び変形例は、射出モータ350として射出成形機10に搭載された射出モータ350に対してモータドライバ352等が停止制御を行う場合について説明した。しかしながら、上述した実施形態及び変形例は、上述した停止制御を行う装置を、射出成形機に制限するものではない。例えば、押し出し成形機などの他の成形機に搭載された三相モータに対して、モータ制御装置が上述した停止制御を行ってもよい。
【0159】
さらには、上述した実施形態では、制御装置700及びモータドライバ352(モータ制御装置の一例)が、射出成形機に搭載された場合の例であって、モータ制御装置が搭載される装置を限定するものではない。つまり、上述した制御を行うモータ制御装置は、三相モータが搭載される装置であれば、成形機を問わず、どのような装置に搭載されてもよい。
【0160】
<作用>
上述した実施形態及び変形例においては、モータドライバ352及び制御装置700が上述した停止制御を行うことで、射出モータ350の回転速度が上昇と低下とを繰り返すことを抑制できる。したがって、本変形例では、射出モータ350を含む構成の劣化を抑制できる。したがって、射出モータ350を含む構成の長寿命化を実現できる。
【0161】
また、上述した実施形態及び変形例においては、停止制御を行う際に、三相インバータ353から射出モータ350に接続される3相の線の各々の電流値が'0A'になるよう制御する。つまり、従来の停止制御と比べて、停止制御を行う際に流れる電流を低減できる。したがって、省電力化を実現すると共に、三相インバータ353等の保護を実現できる。
【0162】
さらに、複数の三相モータ(例えば射出モータ350)で停止制御を行う場合に、回転速度のずれを抑制できるので、複数の三相モータに接続された機構(例えば、ねじナット372に螺合しているねじ軸371、2つのねじナット372に接続されている可動プレート303、及び可動プレート303に接続されている駆動軸380及びスクリュ330)に負荷が生じるのを抑制できる。従って、当該機構にひずみ又は傾きが生じるのを抑制できる。
【0163】
以上、本発明に係るモータ制御装置、及び成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0164】
10 射出成形機
300 射出装置
301 スライドベース
302 固定プレート
303 可動プレート
310 シリンダ
350 射出モータ
351 射出モータエンコーダ
352 モータドライバ
353 三相インバータ
354 第1電流センサ
355 第2電流センサ
356 電源
357 コンバータ
700 制御装置
701 CPU
711 取得部
712 判定部
713 モータ制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6