(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088346
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ロッカーボギー車
(51)【国際特許分類】
B60G 17/00 20060101AFI20240625BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60G17/00
B62B5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203462
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健太
(72)【発明者】
【氏名】山中 和之
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋三
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊幸
【テーマコード(参考)】
3D050
3D301
【Fターム(参考)】
3D050EE09
3D050KK04
3D050KK06
3D301AA48
3D301BA04
3D301DA29
3D301DA44
3D301EA22
3D301EA30
(57)【要約】
【課題】不整地や段差を走行する場合においても、荷台に載荷された物品の荷崩れを抑制する。
【解決手段】ロッカーボギー車1は、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンク20と、ボギーリンク20の前輪11と中輪12の間の中間部21cと、後輪13と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンク32を有するロッカーリンク体30と、ロッカーリンク体30と荷台41を連結して荷台41を支持する荷台支持機構42と、制御部と、を備え、荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bを備え、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bのいずれか一方または双方は、ロッカーリンク体30と荷台41との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータ43を備え、制御部は、直動型アクチュエータ43を伸縮させて、荷台41が水平となるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪、中輪、及び後輪の各々が、左右に一対設けられ、荷台に載荷された物品を搬送するロッカーボギー車であって、
前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンクと、
前記ボギーリンクの前記前輪と前記中輪の間の中間部と、前記後輪と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンクを有するロッカーリンク体と、
前記ロッカーリンク体と前記荷台を連結して前記荷台を支持する荷台支持機構と、
制御部と、
を備え、
前記荷台支持機構は、前記ロッカーリンク体の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構と後側支持機構を備え、前記前側支持機構と前記後側支持機構のいずれか一方または双方は、前記ロッカーリンク体と前記荷台との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータを備え、
前記制御部は、前記直動型アクチュエータを伸縮させて、前記荷台が水平となるように制御する、ロッカーボギー車。
【請求項2】
前記直動型アクチュエータは、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方に、それぞれ設けられ、
前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、前記ロッカーリンク体に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部を介して前記ロッカーリンク体に接続され、
前記制御部は、前記直動型アクチュエータを伸縮させつつ前記回転支持部を前記ロッカーリンク体に対して回転制御して、前記荷台が水平となるように制御する、請求項1に記載のロッカーボギー車。
【請求項3】
前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、前記荷台に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能な、角度調整機構を介して、前記荷台に接続されている、請求項2に記載のロッカーボギー車。
【請求項4】
前記制御部は、前記前輪を上昇または下降させる際に、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方の前記回転支持部を、前記ロッカーリンク体に対して後方に向けて回転させて、前記荷台が後方へと移動するように制御する、請求項2または3に記載のロッカーボギー車。
【請求項5】
前記制御部は、前記後輪を上昇させる際に、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方の前記回転支持部を、前記ロッカーリンク体に対して前方に向けて回転させて、前記荷台が前方へと移動するように制御する、請求項4に記載のロッカーボギー車。
【請求項6】
前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、左右に一対設けられている、請求項2または3に記載のロッカーボギー車。
【請求項7】
前記荷台の姿勢を計測可能な姿勢センサを更に備え、
前記制御部は、前記姿勢センサの計測結果を基に、前記直動型アクチュエータを伸縮させつつ前記回転支持部を回転制御して、前記荷台が水平となるように制御する、請求項2または3に記載のロッカーボギー車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカーボギー車に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪により走行する移動装置においては、不整地を走行させたり、段差を踏破させたりするような場合における走行性能が、一般的には高くはない。このような移動装置に関し、不整地や段差の走行性能を高めるための技術開発が行われている。
特に、このような移動装置を用いて物品を運搬する場合においては、移動装置が不整地や段差を走行すると、荷台が傾き、運搬物が荷崩れし、転倒、落下してしまう可能性がある。
これに対し、特許文献1には、荷台と、荷台を支える少なくとも4つの脚と、荷台の水平状態を保持する水平保持機構と、段差上または斜面上を上り下り可能に自己の重心位置を制御し、脚の姿勢を制御する制御機構とを備える構成が開示されている。
ところで、車輪により走行する移動装置としては、ロッカーリンクとボギーリンクにより3対の動輪を有する構造で、高い不整地走行性能を有する、ロッカーボギー車が挙げられる。このようなロッカーボギー車によって、不整地や段差を走行させる場合においても、運搬物の荷崩れを抑制し、走行性能をより高めることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、不整地や段差を走行する場合においても、荷台に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることができる、ロッカーボギー車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明のロッカーボギー車は、前輪、中輪、及び後輪の各々が、左右に一対設けられ、荷台に載荷された物品を搬送するロッカーボギー車であって、前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンクと、前記ボギーリンクの前記前輪と前記中輪の間の中間部と、前記後輪と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンクを有するロッカーリンク体と、前記ロッカーリンク体と前記荷台を連結して前記荷台を支持する荷台支持機構と、制御部と、を備え、前記荷台支持機構は、前記ロッカーリンク体の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構と後側支持機構を備え、前記前側支持機構と前記後側支持機構のいずれか一方または双方は、前記ロッカーリンク体と前記荷台との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータを備え、前記制御部は、前記直動型アクチュエータを伸縮させて、前記荷台が水平となるように制御する。
このような構成によれば、ロッカーボギー車は、前輪と中輪の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンクと、ボギーリンクの前輪と中輪の間の中間部と、後輪と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンクを備えることで、不整地を走行させることができる。特に段差を、例えばロッカーボギー車が第1地表面に位置し、第1地表面から垂直面により連続して第1地表面よりも高く段差の先に位置する第2地表面へと上るように、走行する際には、まず、中輪及び後輪を第1地表面に接地させつつ、ボギーリンクをロッカーリンクに軸支される中間部を中心として回転させて、前輪を中輪及び後輪よりも上昇させ、その状態で前進することで、前輪を第2地表面に接地させる。続いて、ボギーリンクを逆方向に回転させ、中輪を前輪と同じ高さまで持ち上げ、その状態で更に前進させて、前輪に加えて中輪も第2地表面に接地させる。そして、前輪と中輪で車体を支持し前進させつつ、後輪で垂直面を蹴上がるようにすることで、後輪を第2地表面に持ち上げる。これにより、ロッカーボギー車は、段差を上ることができる。同様な手順で段差を下ることも可能であり、このようにしてロッカーボギー車は、段差を踏破し、走行することができる。
このようにしてロッカーボギー車が不整地や段差を走行するに際し、前輪、中輪、及び後輪のいずれかを、他に比べて高さが異なる位置へと変位させる必要がある。すると、ボギーリンク及びロッカーリンクは双方とも、水平面に対する角度が変わるため、ロッカーリンクを有するロッカーリンク体に対して荷台支持機構によって支持された荷台もこれに伴って、水平面に対して傾斜しようとする。ここで、荷台支持機構は、ロッカーリンク体の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構と後側支持機構を備え、前側支持機構と後側支持機構のいずれか一方または双方は、ロッカーリンク体と荷台との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータを備え、制御部は、直動型アクチュエータを伸縮させて、荷台が水平となるように制御する。このため、直動型アクチュエータが前側支持機構に設けられた場合には、前側が後側に対して持ち上がるようにロッカーリンク体が傾斜した際には直動型アクチュエータを収縮させ、前側が後側に対して下がるようにロッカーリンク体が傾斜した際には直動型アクチュエータを伸長させることで、荷台が水平となるように制御することができる。また、直動型アクチュエータが後側支持機構に設けられた場合には、前側が後側に対して持ち上がるようにロッカーリンク体が傾斜した際には直動型アクチュエータを伸長させ、前側が後側に対して下がるようにロッカーリンク体が傾斜した際には直動型アクチュエータを収縮させることで、荷台が水平となるように制御することができる。あるいは、直動型アクチュエータが前側支持機構と後側支持機構の双方に設けられた場合には、上記のいずれかの動作で、あるいは上記の動作を組み合わせることで、荷台が水平となるように制御することができる。
また、上記のように、荷台が水平となるように制御されるため、不整地や段差を走行する場合においても走行が安定し、走行性能を高めることができる。
このようにして、不整地や段差を走行した場合においても、荷台が水平となるように制御され、結果として、荷台に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることが可能となる。
【0006】
本発明の一態様においては、前記直動型アクチュエータが、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方に、それぞれ設けられ、前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、前記ロッカーリンク体に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部を介して前記ロッカーリンク体に接続され、前記制御部は、前記直動型アクチュエータを伸縮させつつ前記回転支持部を前記ロッカーリンク体に対して回転制御して、前記荷台が水平となるように制御する。
このような構成によれば、直動型アクチュエータは、前側支持機構と後側支持機構の双方に、それぞれ設けられ、前側支持機構と後側支持機構の各々は、ロッカーリンク体に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部を介してロッカーリンク体に接続されているため、各直動型アクチュエータを、それぞれ個別に、伸長、収縮させつつ回転させることができる。このため、より大きな段差や上下動を伴う不整地を走行する場合においても、これに対応して、制御部により、荷台が水平となるような制御を柔軟に行うことができる。
また、ロッカーボギー車のロッカーリンク体が大きく傾斜し、直動型アクチュエータを大きく伸長または収縮させる場合においては、単純に直動型アクチュエータを伸縮させるのみだと、前側支持機構と後側支持機構との、荷台側に接続される端部間の距離が変わるため、伸縮が荷台の剛性により阻まれることがある。ここで、前側支持機構と後側支持機構は、ロッカーリンク体に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部を介してロッカーリンク体に接続され、制御部は、直動型アクチュエータを伸縮させつつ回転支持部をロッカーリンク体に対して回転制御して、荷台が水平となるように制御する構成となっている。したがって、例えば直動型アクチュエータを伸長または収縮させつつ、荷台側における前側支持機構と後側支持機構の端部間の距離が一定となるように、回転支持部を回転制御して前側支持機構や後側支持機構を回転させることが可能となり、直動型アクチュエータの伸長、収縮動作が制限されることが抑制される。
【0007】
本発明の一態様においては、前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、前記荷台に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能な、角度調整機構を介して、前記荷台に接続されている。
このような構成によれば、ロッカーボギー車のロッカーリンク体が傾斜し、荷台が水平となるように前側支持機構と後側支持機構の直動型アクチュエータを伸長または収縮させると、前側支持機構及び後側支持機構の、荷台に対する角度が変わることがある。ここで、上記のような構成においては、前側支持機構と後側支持機構の各々は、荷台に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能な、角度調整機構を介して、荷台に接続されているため、前側支持機構及び後側支持機構の、荷台に対する角度の変化に追従することができる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記制御部は、前記前輪を上昇または下降させる際に、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方の前記回転支持部を、前記ロッカーリンク体に対して後方に向けて回転させて、前記荷台が後方へと移動するように制御する。
このような構成によれば、例えば段差を上る際に、前輪を上昇させる場合においては、前側支持機構と後側支持機構の双方の回転支持部を、ロッカーリンク体に対して後方に向けて回転させて、荷台が後方へと移動するように制御することで、荷台の重心が後方へ移動するため、前輪に作用する荷重が低減し、前輪を上昇させやすくなる。
また、段差を下る際に、前輪を下降させる場合においては、前側支持機構と後側支持機構の双方の回転支持部を、ロッカーリンク体に対して後方に向けて回転させて、荷台が後方へと移動するように制御することで、荷台の重心が後方へ移動するため、前輪を下降させて段差の先に位置する地表面に接触するまでの、前輪が地表面により支持されておらず中に浮いている間に、荷重によりロッカーボギー車が前方へ転倒し、段差の下に転落することが抑制される。
【0009】
本発明の一態様においては、前記制御部は、前記後輪を上昇させる際に、前記前側支持機構と前記後側支持機構の双方の前記回転支持部を、前記ロッカーリンク体に対して前方に向けて回転させて、前記荷台が前方へと移動するように制御する。
このような構成によれば、例えば段差を上る際においては、前輪と中輪をまず段差(上段)の先に位置する地表面へと接触させ、前輪と中輪により車体を支持した状態で、後輪を、前輪、中輪と同じ高さ位置に上昇させる。ここで、後輪を上昇させる際に、前側支持機構と後側支持機構の双方の回転支持部を、ロッカーリンク体に対して前方に向けて回転させて、荷台が前方へと移動するように制御することで、荷台の重心が前方へと移動するため、後輪に作用する荷重が低減し、後輪を上昇させやすくなるとともに、荷重によりロッカーボギー車が後方へ転倒し、段差の下に転落することが抑制される。
【0010】
本発明の一態様においては、前記前側支持機構と前記後側支持機構の各々は、左右に一対設けられている。
このような構成によれば、荷台が横方向に傾くのを抑制し、安定して荷台を支持することができる。
また、例えばロッカーリンク体の右側が左側に対して上昇するように、ロッカーリンク体が横方向に傾くような場合においても、例えば右側に設けられた前側支持機構と後側支持機構をそれぞれ収縮させ、あるいは左側に設けられた前側支持機構と後側支持機構をそれぞれ伸長させることで、荷台が水平となるように制御することができる。また、ロッカーリンク体の右側が左側に対して下降するような場合においても、例えば右側に設けられた前側支持機構と後側支持機構をそれぞれ伸長させ、あるいは左側に設けられた前側支持機構と後側支持機構をそれぞれ収縮させることで、荷台が水平となるように制御することができる。このようにして、前後方向のみならず、横方向にロッカーリンク体が傾くような場合であっても、荷台を水平となるように制御することができる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明のロッカーボギー車は、前記荷台の姿勢を計測可能な姿勢センサを更に備え、前記制御部は、前記姿勢センサの計測結果を基に、前記直動型アクチュエータを伸縮させつつ前記回転支持部を回転制御して、前記荷台が水平となるように制御する。
このような構成によれば、不整地や段差を走行する場合においても、荷台に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることができる、ロッカーボギー車を実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不整地や段差を走行する場合においても、荷台に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るロッカーボギー車の構成を示す側面図である。
【
図2】ロッカーボギー車の車体部の構成を示す平面図である。
【
図3】本実施形態におけるロッカーボギー車の制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るロッカーボギー車の走行動作を示すフローチャートである。
【
図5】ロッカーボギー車で段差を上るに際し、前輪を上昇させて段差の先の第2地表面に接地させた状態を示す図である。
【
図6】ロッカーボギー車で段差を上るに際し、中輪を段差の先の第2地表面の高さまで上昇させた状態を示す図である。
【
図7】ロッカーボギー車で段差を上るに際し、後輪を段差の垂直面に突き当てた後に上昇させている状態を示す図である。
【
図8】ロッカーボギー車で段差を上るに際し、荷台の重心を前方に移動させたうえで、後輪を上昇させている状態を示す図である。
【
図9】ロッカーボギー車で段差を上った状態を示す図である。
【
図10】ロッカーボギー車で段差を下るに際し、前輪を段差の先の垂直面に接触させつつ下降させている状態を示す図である。
【
図11】ロッカーボギー車で段差を下るに際し、前輪を段差の先の第1地表面に接置させた状態を示す図である。
【
図12】ロッカーボギー車で段差を下るに際し、中輪を段差の先の第2地表面に向けて下降させている状態を示す図である。
【
図13】ロッカーボギー車で段差を下るに際し、中輪を第2地表面に接地させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明によるロッカーボギー車を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係るロッカーボギー車の構成を示す側面図を
図1に示す。
図2は、ロッカーボギー車の車体部の構成を示す平面図である。
ロッカーボギー車1は、車体部10と、荷台部40と、制御部60(
図3参照)と、を備えている。
車体部10は、ボギーリンク20と、ロッカーリンク体30と、前輪11、中輪12、及び後輪13と、を備えている。ロッカーボギー車1は、前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対設けられ、荷台41に載荷された物品を搬送する。
【0015】
ボギーリンク20は、ロッカーボギー車1の車幅方向の両側である左右に一対設けられている。一対のボギーリンク20は、右側に設けられた右ボギーリンク20Rと、左側に設けられた左ボギーリンク20Lと、を有している。右ボギーリンク20Rと左ボギーリンク20Lとは左右対称な構成を有している。以下の説明において、右ボギーリンク20Rと左ボギーリンク20Lとを区別する必要がある場合を除き、右ボギーリンク20R、左ボギーリンク20Lの各々を、単にボギーリンク20と称する。
ボギーリンク20は、前輪11と中輪12の各々を、左右方向に延びる軸周りに回転自在に軸支している。ボギーリンク20は、車体部10の前後方向に延びるアーム21と、アーム21の前後両端部の各々から下方に延びる前脚部23、及び中脚部24と、を一体に有している。前輪11は、ボギーリンク20の前端部に配置された前脚部23に、回転自在に支持されている。中輪12は、ボギーリンク20の後端部に配置された中脚部24に、回転自在に支持されている。
このようにして、ボギーリンク20は、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結している。
【0016】
ロッカーリンク体30は、本体31と、一対のロッカーリンク32と、を有している。
本体31は、ロッカーボギー車1の車体の本体である。例えば、後に説明する制御部60は、この本体31に設置され得る。本体31は、左右方向において、一対のロッカーリンク32同士の間に配置されている。本体31は、上方から見て、例えば矩形状に形成されている。
【0017】
一対のロッカーリンク32は、ロッカーボギー車1の左右に設けられている。一対のロッカーリンク32は、右側に設けられた右ロッカーリンク32Rと、左側に設けられた左ロッカーリンク32Lと、を有している。右ロッカーリンク32Rと左ロッカーリンク32Lとは、左右対称な構成とされている。
ロッカーリンク32は、前後方向に延びるリンクアーム33と、リンクアーム33の後端部から下方に延びる後脚部34と、を一体に有している。リンクアーム33の前端部は、ボギーリンク20のアーム21の前後方向の中間部21cに、左右方向に延びる駆動軸35を介して、駆動軸35の中心軸回りに回転自在に軸支されている。これにより、リンクアーム33は、ボギーリンク20に対し、駆動軸35を中心として揺動可能とされている。後脚部34の下端部には、後輪13が回転自在に支持されている。このように、ロッカーリンク32は、ボギーリンク20の前輪11と中輪12の間の中間部21cと、後輪13と、を軸支し、これらを連結している。
【0018】
後に説明するように、ロッカーボギー車1が段差を走行する際などにおいて、ロッカーリンク32は傾斜する。本実施形態においては、ロッカーリンク体30は、ロッカーリンク32と一体に、相対移動及び相対変位が不能となるように設けられて、ロッカーリンク32の傾斜に伴って、ロッカーリンク32とともに、ロッカーリンク32と同様に傾斜する、ロッカーボギー車1の部分である。
したがって、上記のようにロッカーリンク体30が本体31を含む場合においては、右ロッカーリンク32R及び左ロッカーリンク32Lは、本体31に一体に固定され、ロッカーリンク32が傾斜した場合には、本体31は、ロッカーリンク32とともに傾斜する。
図1においては、ロッカーリンク32を本体31とは異なる部位として図示しているが、リンクアーム33と本体31とが一体となり、本体31が直接ボギーリンク20を駆動軸35により軸支しつつ、本体から後脚部34が下方に延びるように設けられた構造となっていてもよい。後に説明する荷台支持機構は、ロッカーリンク体30に接続されるものであるが、この場合においては、荷台支持機構は、本体31に対して接続され得る。
これに対し、ロッカーボギー車としては、右ロッカーリンク32R及び左ロッカーリンク32Lが、本体31に軸支され、本体31に対して相対的に回転自在に設けられている場合も考えられ得る。この場合においては、本体31はロッカーリンク体30には含まれないため、後に説明する荷台支持機構は、本体31ではなく、ロッカーリンク体30を構成する部分のどこかに接続される。
以下の説明において、右ロッカーリンク32Rと左ロッカーリンク32Lとを区別する必要がある場合を除き、右ロッカーリンク32R、左ロッカーリンク32Lの各々を、単にロッカーリンク32と称する。
【0019】
ボギーリンク20(右ボギーリンク20R、左ボギーリンク20L)は、ロッカーリンク32(右ロッカーリンク32R、左ロッカーリンク32L)に対し、ボギーリンク制御モータ37により、駆動軸35の中心軸回りに相対的に回動するように駆動される。つまり、ボギーリンク20はロッカーリンク32に対し、ボギーリンク制御モータ37により、動的に回転可能とされている。ボギーリンク20とロッカーリンク32とは、駆動軸35回りの相対角度が制御可能となっている。また、ボギーリンク20とロッカーリンク32とは、ボギーリンク制御モータ37による駆動をOFFにすることで、駆動軸35まわりに自由回転可能な状態となる。このようなボギーリンク制御モータ37は、回転駆動力を自在に制御できるアクチュエータ、例えば、トルクモータまたはハーモニックドライブ(登録商標)等により実現可能である。
なお、ロッカーリンク32には角度センサ(図示無し)が設けられている。角度センサは、駆動軸35に取り付けられ、ボギーリンク20に対するロッカーリンク32の相対的な回転角度を検出する。角度センサで検出されたボギーリンク20に対するロッカーリンク32の相対的な回転角度の情報は、後述する制御部60に出力される。
【0020】
前輪11は、ロッカーボギー車1の前端部において、左右に一対設けられている。一対の前輪11は、右側に設けられた右前輪11Rと、左側に設けられた左前輪11Lと、を有している。
中輪12は、ロッカーボギー車1の前後方向の中間部において、左右に一対設けられている。一対の中輪12は、右側に設けられた右中輪12Rと、左側に設けられた左中輪12Lと、を有している。
後輪13は、ロッカーボギー車1の後端部において、左右に一対設けられている。一対の後輪13は、右側に設けられた右後輪13Rと、左側に設けられた左後輪13Lと、を有している。
【0021】
前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、及び後輪13(右後輪13R、右後輪13R)の各々は、メカナムホイール(登録商標)である。前輪11、及び後輪13の各々は、主輪と、主輪の外周に設けられ、車軸に対して45°の傾きで回転可能に支持され、周方向に並んだ複数個のフリーホイールと、を有する。
中輪12(右中輪12R、左中輪12L)は、オムニホイール(登録商標)である。中輪12は、主輪と、主輪の外周に設けられ、車軸に対して90°の向きに回転可能に支持され、周方向に並んだ複数個のフリーホイールと、を有する。
【0022】
右前輪11Rの主輪は、モータ14Rによって回転駆動される。左前輪11Lの主輪は、モータ14Lによって回転駆動される。右中輪12Rの主輪は、モータ15Rによって回転駆動される。左中輪12Lの主輪は、モータ15Lによって回転駆動される。右後輪13Rの主輪は、モータ16Rによって回転駆動される。左後輪13Lの主輪は、モータ16Lによって駆動される。これらのモータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lは、各々独立に制御可能である。つまり、前輪11、中輪12、後輪13の各々は、それぞれ独立に駆動制御可能である。
車体部10は、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、中輪12(右中輪12R、左中輪12L)、後輪13(右後輪13R、右後輪13R)の各々を、前進方向または後進方向にそれぞれ回転するよう制御する。これにより、車体部10は、前進、後進、横行、斜行またはスピンターン等の走行が可能とされている。
【0023】
ロッカーボギー車1は、車体部10の走行を制御するため、障害物検出部18を備えている。障害物検出部18は、例えば、後に説明する荷台41上に設けられている。障害物検出部18は、荷台41上に限らず、車体部10の本体31等、他の場所に設けられていてもよい。障害物検出部18は、車体部10の進行方向前方に位置する段差、傾斜等を含む障害物を検出するとともに、検出した障害物までの測距を行う。
障害物検出部18は、例えば、3DLiDAR(Light Detection And RangingまたはLaser Imaging Detection And Ranging)である。障害物検出部18は、3DLiDARに限らず、例えば、ToF(Time of Flight)で距離情報を取得する深さ(Depth)センサ、超音波センサ、赤外線センサ、レーダ等であってもよい。また、障害物検出部18は、CCD(Charge Coupled Device)カメラを有し、近赤外線IRを用いて2次元画像及び深さ(Depth)データを取得するようにしてもよい。
障害物検出部18は、検出した障害物までの距離情報を、後述する制御部60に出力する。
【0024】
荷台部40は、荷台41と、荷台支持機構42と、姿勢センサ50と、を備えている。
荷台41は、車体部10の上方に、車体部10から離間して配置されている。荷台41は、例えば、上方から見て矩形状をなしている。荷台41の形状は、矩形状に限らず、適宜他の形状であってもよい。荷台41の上面41tは、物品が載置可能な平面とされている。
【0025】
荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30と荷台41を連結し、荷台41を下方から支持している。荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30の前側に設けられた前側支持機構42Aと、ロッカーリンク体30の後側に設けられた後側支持機構42Bと、を備えている。本実施形態において、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、左右に一対設けられている。
後に説明するように、荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30(ロッカーリンク32)が傾斜した場合に、ロッカーリンク体30の傾斜に対応して、荷台41が水平となるように、制御部60(より詳細には、後に説明する荷台水平制御部62)によって制御される。このため、本実施形態のようにロッカーリンク32が本体31に一体に固定されている場合においては、荷台支持機構42は
図2に示されるように、本体31に設けられて構わない。ロッカーリンク32が本体31に軸支される場合においては、荷台支持機構42はロッカーリンク32に、例えばリンクアーム33に対して設けられるのが望ましい。
前側支持機構42A、及び後側支持機構42Bは、それぞれ、直動型アクチュエータ43と、回転支持部44と、角度調整機構45と、を備えている。
【0026】
直動型アクチュエータ43は、ロッカーリンク体30と荷台41との間で、上下方向に延びている。直動型アクチュエータ43は、上下方向に伸縮可能であり、ロッカーリンク体30と荷台41との距離を調整可能となるように設けられている。
ここで、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とは、各々独立して伸縮動作するよう、制御部60(荷台水平制御部62)によって制御される。また、左右一対の荷台支持機構42においては、右側に位置する前側支持機構42A、及び後側支持機構42Bと、左側に位置する前側支持機構42A、及び後側支持機構42Bとで、各々独立して伸縮動作するよう、制御部60によって制御される。
【0027】
回転支持部44は、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々において、直動型アクチュエータ43の下端部を、ロッカーリンク体30に対して前後方向に回転可能となるように、ロッカーリンク体30に接続している。回転支持部44は、左右方向に延びる回転軸44sを有しており、直動型アクチュエータ43の下端部が、回転軸44s周りに回転自在に連結されている。回転支持部44は、回転軸44sを介して直動型アクチュエータ43を前後方向に揺動駆動可能とされている。
ここで、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とは、各々独立して回転動作するよう、制御部60(荷台水平制御部62)によって制御される。また、左右一対の荷台支持機構42においては、右側に位置する回転支持部44と、左側に位置する回転支持部44とで、各々独立して回転動作するよう、制御部60によって制御される。
【0028】
角度調整機構45は、直動型アクチュエータ43の上端部と荷台41との間に設けられている。角度調整機構45は、直動型アクチュエータ43の荷台41に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能となるように、直動型アクチュエータ43を荷台41に接続する。本実施形態においては、角度調整機構45としては、直動型アクチュエータ43の荷台41に対する角度が、任意の方向に調整可能となるような、ボールジョイントが用いられている。角度調整機構45としては、直動型アクチュエータ43の上端部と荷台41とを、左右方向に延びる軸周りに回転自在に連結するものであってもよい。
【0029】
姿勢センサ50は、荷台41の姿勢を計測可能である。本実施形態では、姿勢センサ50として、例えば、荷台41の、例えば荷台41の上面41tの、水平状態を計測可能となるように、荷台41の前後方向の運動を検出する加速度センサ、荷台41の回転運動を検出するジャイロセンサ、荷台41の位置を検出する位置センサを備えている。姿勢センサ50は、計測結果を、制御部60に出力する。
【0030】
図3は、本実施形態におけるロッカーボギー車の制御部の機能構成を示すブロック図である。
制御部60は、予め設定されたプログラムに基づいて、ロッカーボギー車1の動作を制御する。
図3に示すように、制御部60は、走行制御部61と、荷台水平制御部62と、を機能的に有している。
【0031】
走行制御部61は、車体部10における走行動作を制御する。走行制御部61は、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御することで、前輪11、中輪12、後輪13を回転駆動させ、車体部10を自走させる。走行制御部61は、障害物検出部18によって走行時に進行方向前方に段差が検出された場合、ボギーリンク制御モータ37を制御して、ボギーリンク20をロッカーリンク32に対して相対的に揺動させることで、車体部10で段差を踏破させる。
【0032】
荷台水平制御部62は、姿勢センサ50で検出される荷台41の姿勢に基づいて、荷台41の上面41tが水平状態を保つように、荷台支持機構42の直動型アクチュエータ43、及び回転支持部44の動作を制御する。また、段差踏破を安定して行えるように、荷台支持機構42の直動型アクチュエータ43、及び回転支持部44を動作させて、重心移動の制御も行える。
【0033】
図4は、本実施形態に係るロッカーボギー車1の走行動作を示すフローチャートである。
ロッカーボギー車1が走行を開始すると、制御部60は、予め設定された目標値にロッカーボギー車1が到着するまで、以下に示すような処理を繰り返し実行する。
まず、走行制御部61は、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御し、車体部10を、目標位置に向けて予め設定された経路に沿って走行させる(ステップS1)。
走行制御部61は、予め設定された時間間隔毎に、障害物検出部18で検出される情報に基づいて、車体部10の進行方向前方に、段差があるか否かを判定する(ステップS2)。
その結果、進行方向前方に段差がなければ、ステップS1に戻り、経路に沿った走行を継続する。
一方、ステップS2で、進行方向前方に段差があると判定された場合、走行制御部61は、ボギーリンク制御モータ37を制御することで、ボギーリンク20をロッカーリンク32に対して相対的に揺動させ、車体部10で段差を踏破させる(ステップS3)。
また、ステップS2で、進行方向前方に段差があると判定された場合、荷台水平制御部62は、姿勢センサ50で検出される荷台41の姿勢に基づいて、荷台41の上面41tが水平状態を保つように、荷台支持機構42の直動型アクチュエータ43、及び回転支持部44の動作を制御する(ステップS4)。
【0034】
以下、上記したようなフローチャートに沿った処理を制御部60が実行することによって実現されるロッカーボギー車1の走行動作について、具体例を挙げて説明する。以下の説明において、制御部60が制御すると説明した場合には、制御部60の走行制御部61や荷台水平制御部62のいずれかが、その役割に応じて、制御することを示すものである。
図1に示すように、ロッカーボギー車1が、段差の無い、水平な第1地表面F1を走行する場合、車体部10は、前輪11、中輪12、及び後輪13の全てを、段差の無い第1地表面F1に接地させている。この状態で、制御部60が、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御して、前輪11、中輪12、及び後輪13の各々を回転駆動させることにより、車体部10を、第1地表面F1上で、予め設定された経路に沿って走行させる。
【0035】
図5は、ロッカーボギー車で段差を上るに際し、前輪を上昇させて段差の先の第2地表面に接地させた状態を示す図である。
ロッカーボギー車1の進行方向の前方に、第1地表面F1から上方に立ち上がる垂直面Fvを有する段差D1があり、段差D1の先が水平な第2地表面F2となっている場合、ロッカーボギー車1は、まず、中輪12及び後輪13を第1地表面F1に接地させた状態で、前輪11を、第2地表面F2に上らせる。これには、まず、前輪11を、段差D1の垂直面Fvに突き当てる。この状態で前輪11を回転させて、前輪11と垂直面Fvとの間に生じる摩擦力により、回転駆動される前輪11で垂直面Fvを蹴上がるように、前輪11を垂直面Fvに沿って上方に移動させつつ、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、前輪11が上昇するように回転させる。これにより、前輪11を、第1地表面F1から持ち上げて中輪12及び後輪13よりも高い第2地表面F2まで上らせる。その後、中輪12と後輪13を前進駆動させて、車体部10をそのまま前進させ、前輪11を、段差D1の先に位置する第2地表面F2に接地させる。
【0036】
このようにして前輪11を持ち上げると、ロッカーリンク体30の前側が持ち上がって、前方から後方に向けて下がるように、斜めに傾斜する。これに伴い、荷台41も、同様に斜めに傾斜しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の傾斜動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43が、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43よりも短くなるように、例えば前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を収縮させる。なお、このとき、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸長させるようにしてもよい。
このような、直動型アクチュエータ43の動作により、直動型アクチュエータ43と荷台41との角度が変化する。この角度の変化は、角度調整機構45によって吸収される。
【0037】
回転支持部44を回転させない状態で、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43の、いずれか一方または双方を伸縮させ、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43の長さが変わると、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43の、荷台41側の端部(上端部)においては、上端部間の距離が変わるように、上端部の位置が変位する。基本的には、このような変位は、荷台41の剛性により抑制されるため、直動型アクチュエータ43の伸縮動作が制限される。
ここで、本実施形態においては、角度調整機構45としては、ボールジョイントが用いられている。前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離の変化は、僅かなものであれば、このボールジョイントにより吸収される。
【0038】
図6は、ロッカーボギー車で段差を上るに際し、中輪を段差の先の第2地表面の高さまで上昇させた状態を示す図である。
続いて、
図6に示すように、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、前輪11を上昇させた場合とは逆方向に回転させ、前輪11が第2地表面F2に、後輪13が第1地表面F1に、それぞれ接地した状態のまま、中輪12を、前輪11と同じ高さまで上昇させる。その後、前輪11と後輪13を前進駆動させて、車体部10をそのまま前進させ、中輪12を、段差D1の先に位置する第2地表面F2に載せる。
このようにして中輪12を持ち上げると、ロッカーリンク体30の前側が更に持ち上がって、傾斜が大きくなる。これに伴い、荷台41も、同様に傾斜しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の傾斜動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43の長さの差が、
図5に示される状態よりも更に大きくなるように、例えば後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸長させる。なお、このとき、例えば前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を更に収縮させるようにしてもよい。
【0039】
図6に示されるように、前側支持機構42Aや後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸縮させて、直動型アクチュエータ43の長さの差が大きく変化すると、ボールジョイントでは吸収できない程度に、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離の変化も大きくなる。
図6を用いて説明したような、ロッカーリンク体30の傾斜が大きくなる場合においては、荷台41を水平な姿勢とするために、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bは、これらの長さの差が大きくなるように、制御部60によって各直動型アクチュエータ43が制御されている。このような場合には、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が大きくなろうとするので、前側支持機構42Aを後に向けて回転させて、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が大きくならず一定の値となるように、制御部60は、回転支持部44を制御する。前側支持機構42Aを後に向けて回転させるのに替えて、後側支持機構42Bを前に向けて回転させても構わない。
図6のように、前輪11または中輪12を上昇させるような場合においては、前輪11または中輪12に作用する荷重が小さいほうが、前輪11または中輪12を上昇させやすくなるため、前側支持機構42Aを後に向けて回転させて、荷台41の重心を後方へと移動させるほうが、より望ましい。
逆に、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの長さの差が小さくなるように、制御部60によって各直動型アクチュエータ43が制御されているような場合には、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が小さくなろうとするので、前側支持機構42Aを前に向けて回転させて、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が小さくならず一定の値となるように、制御部60は、回転支持部44を制御する。前側支持機構42Aを前に向けて回転させるのに替えて、後側支持機構42Bを後に向けて回転させても構わない。
【0040】
なお、
図6においては、中輪12を、前輪11と同じ高さまで上昇させ、その後、前輪11と後輪13を前進駆動させて、車体部10をそのまま前進させ、中輪12を、段差D1の先に位置する第2地表面F2に載せるように説明した。これに替えて、前輪11を第2地表面F2まで上らせた後、前輪11と後輪13を前進駆動させて、車体部10をそのまま前進させ、中輪12を垂直面Fvに突き当て、この状態で中輪12を回転させて、中輪12と垂直面Fvとの間に生じる摩擦力により、回転駆動される中輪12で垂直面Fvを蹴上がるように、中輪12を垂直面Fvに沿って上方に移動させるようにしてもよい。
【0041】
直動型アクチュエータ43や、回転支持部44の動作による、直動型アクチュエータ43と荷台41との角度の変化は、角度調整機構45によって吸収される。これは、以降に説明する各動作についても同様であるため、以降、その都度における説明を省略する。
【0042】
図7は、ロッカーボギー車で段差を上るに際し、後輪を段差の垂直面に突き当てた後に上昇させている状態を示す図である。
その後、ロッカーボギー車1を更に前進させ、後輪13を、段差D1の垂直面Fvに突き当てる。この状態で、後輪13を回転させて、後輪13と垂直面Fvとの間に生じる摩擦力により、回転駆動される後輪13で垂直面Fvを蹴上がるように、後輪13を垂直面Fvに沿って上方に移動させつつ、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、後輪13が上昇するように回転させる。これにより、後輪13が、第2地表面F2まで上る。
このようにして後輪13を持ち上げると、ロッカーリンク体30の後側が上方に持ち上がり、ロッカーリンク体30の傾斜角度が小さくなる。これに伴い、荷台41の姿勢も変化しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、例えば後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を収縮させる。なお、このとき、例えば前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を伸長させるようにしてもよい。
【0043】
このとき、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bは、長さの差が小さくなるように、制御部60によって各直動型アクチュエータ43が制御され、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が小さくなろうとする。このため、既に説明したように、前側支持機構42Aを前に向けて回転させ、あるいは後側支持機構42Bを後に向けて回転させて、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの上端部間の距離が小さくならず一定の値となるように、制御部60は、回転支持部44を制御する。
【0044】
このようにして、ロッカーボギー車1で、段差D1を上る際に、荷台41を水平状態に保つことができる。
【0045】
ところで、上記したようなロッカーボギー車1においては、段差D1を上り下りする際に、荷台41を水平状態に保ちつつ、車体部10に対する荷台41の重心を前後方向に移動させることもできる。
図8は、ロッカーボギー車で段差を上るに際し、荷台の重心を前方に移動させたうえで、後輪を上昇させている状態を示す図である。
例えば、
図6に示される状態に続いて、後輪13を上昇させようとする場合に、
図7を用いて説明した動作に替えて、
図8に示されるような、以下の動作を実行することもできる。具体的には、後輪13を上昇させる前に、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、ロッカーリンク体30に対して前方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御する。その後、
図8に示されるように、
図7として説明したものと同様な要領で、後輪13を上昇させて、段差D1を上らせる。
これにより、荷台41が、
図7に示した場合に比較して前方に移動し、車体部10に対し、荷台41の重心が前方に移動する。その結果、後輪13に作用する荷台41からの荷重が小さくなるので、ロッカーボギー車1が後方へ転倒するのを抑えつつ、後輪13を容易に垂直面Fvに沿って上らせることができる。
【0046】
このように、重心を制御するという観点においては、例えば
図5、
図6に示されるような、前輪11や中輪12を上げるような場合に、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御してもよい。この場合には、荷台41が、
図5、6に示した場合に比較して後方に移動し、車体部10に対し、荷台41の重心が後方に移動する。その結果、前輪11や中輪12に作用する荷台41からの荷重が小さくなるので、前輪11や中輪12を容易に上昇させることができる。
ただし、荷台41の重心が後方に移動することで、ロッカーボギー車1が後方へ転倒しないよう、留意する必要がある。具体的には、
図5において、荷台41の重心は、後輪13より後方に移動しすぎると転倒しやすくなる。
図6においては、荷台41の重心は、前輪11と後輪13で支えられ、
図7に移行する前に、荷台41の重心を前方に移動することで、段差上昇時の後への転倒を回避し、後輪13を上げ易くなる。
【0047】
図9は、ロッカーボギー車で段差を上がり、第2地表面に到達した状態を示す図である。
段差D1を上った後には、
図9に示すように、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを同期して制御し、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43の傾斜を、初期状態に戻す。これにより、荷台41の重心位置が、ロッカーボギー車1が段差D1を上る前の、元の状態に戻る。
【0048】
図10は、ロッカーボギー車で段差を下るに際し、前輪を段差の先の垂直面に接触させつつ下降させている状態を示す図である。
図10に示すように、ロッカーボギー車1の進行方向の前方に、第2地表面F2から下方に延びる垂直面Fwを有する段差D2があり、段差D2の先が、第2地表面F2から垂直面Fvにより連続して第2地表面F2よりも低く段差D2の先に位置する、水平な第1地表面F1となっている場合、ロッカーボギー車1は、まず、中輪12及び後輪13を第2地表面F2に接地させた状態で、前輪11を、第1地表面F1に下ろす。これには、前輪11を、段差D2の垂直面Fwから前方へと乗り出し、前輪11が垂直面Fwに接触させるようにする。この状態で前輪11を回転させて、前輪11と垂直面Fwとの間に生じる摩擦力により前輪11の落下を抑制しながら、回転駆動される前輪11で垂直面Fwを徐々に下るように、前輪11を垂直面Fwに沿って下方に移動させつつ、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、前輪11が下降するように回転させる。これにより、前輪11を、第2地表面F2から下ろし、中輪12及び後輪13よりも低い第1地表面F1に接地させる。
【0049】
このようにして前輪11を下ろすと、ロッカーリンク体30の前側が下がって、前方から後方に向けて上がるように、斜めに傾斜する。これに伴い、荷台41も、同様に斜めに傾斜しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の傾斜動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43が、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43よりも長くなるように、例えば後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を収縮させる。なお、このとき、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を伸長させるようにしてもよい。
【0050】
本実施形態においては、このようにして前輪11を段差D2から下ろす場合には、前輪11を下降させる前に、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、
図10に示されるように、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御する。これにより、荷台41が後方に移動し、車体部10に対し、荷台41の重心が後方に移動する。その結果、前輪11に作用する荷台41からの荷重が小さくなるので、ロッカーボギー車1が前方へ転倒するのを抑えつつ、前輪11を容易に垂直面Fwに沿って下ろすことができる。
【0051】
図11は、ロッカーボギー車で段差を下るに際し、前輪を段差の先の第1地表面に接置させた状態を示す図である。
図10に示した状態から、前輪11を垂直面Fwに沿って下ろしていくにしたがって、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、前輪11が下降するように更に回転させる。
これにより、ロッカーリンク体30の前側が更に下がって、更に斜めに大きく傾斜し、荷台41も、これに伴って、同様に斜めに傾斜しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の傾斜動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを、更に伸縮駆動させる。具体的には、例えば
図10の状態において後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を収縮させるようにした場合には、この収縮動作を続行するようにしても良いし、収縮動作中に、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43が収縮限界を迎えた場合には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を伸長するように、制御部60が直動型アクチュエータ43を制御しても構わない。
【0052】
その後、
図11に示すように、前輪11が段差D2の先の第1地表面F1に接地したら、ロッカーボギー車1が前方へ転倒する可能性が低減する。したがって、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、ロッカーリンク体30に対して前方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御する。これにより、荷台41の重心が、第1地表面F1上に接地した前輪11の側へと移動する。
【0053】
図12は、ロッカーボギー車で段差を下るに際し、中輪を段差の先の第2地表面に向けて下降させている状態を示す図である。
続いて、前輪11が第1地表面F1に接触し、後輪13が第2地表面F2に接地した状態で、中輪12が垂直面Fwに到達すると、
図12に示すように、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、中輪12が下降する方向に回転させながら、中輪12と垂直面Fwとの間に生じる摩擦力により中輪12の落下を抑制しつつ、回転駆動される中輪12で垂直面Fwを徐々に下るように、前輪11を垂直面Fwに沿って、第1地表面F1まで下ろしていく。
このようにして中輪12を下ろすと、ロッカーリンク体30の前側が更に下がって、更に斜めに大きく傾斜し、荷台41も、これに伴って、同様に斜めに傾斜しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の傾斜動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、例えば前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43が長くなるように伸長させる。
【0054】
なお、このようにして中輪12を段差D2から下ろす場合においては、中輪12を下降させる前に、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御する。これにより、荷台41が、
図11に示した場合に比較して後方に移動し、車体部10に対し、荷台41の重心が後方に移動する。その結果、前輪11と中輪12に作用する荷台41からの荷重が小さくなるので、ロッカーボギー車1が前方へ転倒するのを抑えつつ、中輪12を容易に垂直面Fwに沿って下ろすことができる。
図13は、ロッカーボギー車で段差を下るに際し、中輪を第2地表面に接地させた状態を示す図である。
【0055】
中輪12が第1地表面F1に到達した後、前輪11、及び中輪12を第1地表面F1に接地させ、後輪13を第2地表面F2に接触させた状態で、ロッカーボギー車1を前方に移動させていく。すると、後輪13が垂直面Fwに到達する。この場合、ボギーリンク制御モータ37により、ボギーリンク20を、ロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として、後輪13が下降する方向に回転させながら、後輪13と垂直面Fwとの間に生じる摩擦力により後輪13の落下を抑制しつつ、回転駆動される後輪13で垂直面Fwを徐々に下るように、後輪13を垂直面Fwに沿って、第1地表面F1まで下ろしていく。
このようにして後輪13を下ろすと、ロッカーリンク体30の後側が下がって、ロッカーリンク体30の傾斜角度が小さくなる。これに伴い、荷台41の姿勢も変化しようとする。制御部60は、姿勢センサ50で、この荷台41の姿勢の変化を計測し、荷台41が水平状態を保つように、ロッカーリンク体30の動作に追従させて、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とを伸縮駆動させる。具体的には、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸長させる。
【0056】
その後、後輪13が、第1地表面F1に到達することで、ロッカーボギー車1は、段差D2を踏破する。
本実施形態においては、このようにして後輪13を段差D2から下ろす場合には、後輪13を下降させる前に、制御部60は、前側支持機構42Aの回転支持部44と、後側支持機構42Bの回転支持部44とを、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43と、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43とが、ロッカーリンク体30に対して前方に向けて回転、傾斜するように、同期して制御する。これにより、車体部10に対し、荷台41の重心が前方に移動し、後輪13に作用する荷台41からの荷重が小さくなるので、後輪13が第1地表面F1に下りて接地した際に、荷台41上に載置された物品への衝撃を低減することができる。
【0057】
上述したようなロッカーボギー車1は、前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対設けられ、荷台41に載荷された物品を搬送するロッカーボギー車1であって、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンク20と、ボギーリンク20の前輪11と中輪12の間の中間部21cと、後輪13と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンク32を有するロッカーリンク体30と、ロッカーリンク体30と荷台41を連結して荷台41を支持する荷台支持機構42と、制御部60と、を備え、荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bを備え、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方は、ロッカーリンク体30と荷台41との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータ43を備え、制御部60は、直動型アクチュエータ43を伸縮させて、荷台41が水平となるように制御する。
このような構成によれば、ロッカーボギー車1は、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結するボギーリンク20と、ボギーリンク20の前輪11と中輪12の間の中間部21cと、後輪13と、を軸支し、これらを連結するロッカーリンク32を備えることで、不整地を走行させることができる。特に段差D1、D2を、例えばロッカーボギー車1が第1地表面F1に位置し、第1地表面F1から垂直面Fvにより連続して第1地表面F1よりも高く段差D1の先に位置する第2地表面F2へと上るように、走行する際には、まず、中輪12及び後輪13を第1地表面F1に接地させつつ、ボギーリンク20をロッカーリンク32に軸支される中間部21cを中心として回転させて、前輪11を中輪12及び後輪13よりも上昇させ、その状態で前進することで、前輪11を第2地表面F2に接地させる。続いて、ボギーリンク20を逆方向に回転させ、中輪12を前輪11と同じ高さまで持ち上げ、その状態で更に前進させて、前輪11に加えて中輪12も第2地表面F2に接地させる。そして、前輪11と中輪12で車体を支持し前進させつつ、後輪13で垂直面Fvを蹴上がるようにすることで、後輪13を第2地表面F2に持ち上げる。これにより、ロッカーボギー車1は、段差D1を上ることができる。同様な手順で段差D2を下ることも可能であり、このようにしてロッカーボギー車1は、段差D1、D2を踏破し、走行することができる。
このようにしてロッカーボギー車1が不整地や段差D1、D2を走行するに際し、前輪11、中輪12、及び後輪13のいずれかを、他に比べて高さが異なる位置へと変位させる必要がある。すると、ボギーリンク20及びロッカーリンク32は双方とも、水平面に対する角度が変わるため、ロッカーリンク32を有するロッカーリンク体30に対して荷台支持機構42によって支持された荷台41もこれに伴って、水平面に対して傾斜しようとする。ここで、荷台支持機構42は、ロッカーリンク体30の前側と後側の各々に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bを備え、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方は、ロッカーリンク体30と荷台41との間の距離を調整可能となるように設けられた直動型アクチュエータ43を備え、制御部60は、直動型アクチュエータ43を伸縮させて、荷台41が水平となるように制御する。例えば、前側が後側に対して持ち上がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を収縮させるか、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸長させ、あるいはこれらの動作を組み合わせることで、荷台41が水平となるように制御することができる。また、前側が後側に対して下がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には、前側支持機構42Aの直動型アクチュエータ43を伸長させるか、後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を収縮させ、あるいはこれらの動作を組み合わせることで、荷台41が水平となるように制御することができる。
また、上記のように、荷台41が水平となるように制御されるため、不整地や段差を走行する場合においても走行が安定し、走行性能を高めることができる。
このようにして、不整地や段差D1、D2を走行した場合においても、荷台41が水平となるように制御され、結果として、荷台41に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることが可能となる。
【0058】
また、直動型アクチュエータ43は、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方に、それぞれ設けられ、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、ロッカーリンク体30に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部44を介してロッカーリンク体30に接続され、制御部60は、直動型アクチュエータ43を伸縮させつつ回転支持部44をロッカーリンク体30に対して回転制御して、荷台41が水平となるように制御する。
このような構成によれば、直動型アクチュエータ43は、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方に、それぞれ設けられ、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、ロッカーリンク体30に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部44を介してロッカーリンク体30に接続されているため、各直動型アクチュエータ43を、それぞれ個別に、伸長、収縮させつつ回転させることができる。このため、より大きな段差D1、D2や上下動を伴う不整地を走行する場合においても、これに対応して、制御部60により、荷台41が水平となるような制御を柔軟に行うことができる。
また、ロッカーボギー車1のロッカーリンク体30が大きく傾斜し、直動型アクチュエータ43を大きく伸長または収縮させる場合においては、単純に直動型アクチュエータ43を伸縮させるのみだと、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bとの、荷台41側に接続される端部間の距離が変わるため、伸縮が荷台41の剛性により阻まれることがある。ここで、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bは、ロッカーリンク体30に対して前後方向に回転可能となるように、回転支持部44を介してロッカーリンク体30に接続され、制御部60は、直動型アクチュエータ43を伸縮させつつ回転支持部44をロッカーリンク体30に対して回転制御して、荷台41が水平となるように制御する構成となっている。したがって、例えば直動型アクチュエータ43を伸長または収縮させつつ、荷台41側における前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離が一定となるように、回転支持部44を回転制御して前側支持機構42Aや後側支持機構42Bを回転させることが可能となり、直動型アクチュエータ43の伸長、収縮動作が制限されることが抑制される。
【0059】
また、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、荷台41に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能な、角度調整機構45を介して、荷台41に接続されている。
このような構成によれば、ロッカーボギー車1のロッカーリンク体30が傾斜し、荷台41が水平となるように前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの直動型アクチュエータ43を伸長または収縮させると、前側支持機構42A及び後側支持機構42Bの、荷台41に対する角度が変わることがある。ここで、上記のような構成においては、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、荷台41に対する角度が、少なくとも前後方向に調整可能な、角度調整機構45を介して、荷台41に接続されているため、前側支持機構42A及び後側支持機構42Bの、荷台41に対する角度の変化に追従することができる。
【0060】
また、制御部60は、前輪11を上昇または下降させる際に、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方の回転支持部44を、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転させて、荷台41が後方へと移動するように制御する。
このような構成によれば、例えば段差D1を上る際に、前輪11を上昇させる場合においては、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方の回転支持部44を、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転させて、荷台41が後方へと移動するように制御することで、荷台41の重心が後方へ移動するため、前輪11に作用する荷重が低減し、前輪11を上昇させやすくなる。
また、段差D2を下る際に、前輪11を下降させる場合においては、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方の回転支持部44を、ロッカーリンク体30に対して後方に向けて回転させて、荷台41が後方へと移動するように制御することで、荷台41の重心が後方へ移動するため、前輪11を下降させて段差D2の先に位置する地表面F1に接触するまでの、前輪11が地表面F1、F2により支持されておらず中に浮いている間に、荷重によりロッカーボギー車1が前方へ転倒し、段差D2の下に転落することが抑制される。
【0061】
また、制御部60は、後輪13を上昇させる際に、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方の回転支持部44を、ロッカーリンク体30に対して前方に向けて回転させて、荷台41が前方へと移動するように制御する。
このような構成によれば、例えば段差D1を上る際においては、前輪11と中輪12をまず段差(上段)D1の先に位置する地表面F2へと接触させ、前輪11と中輪12により車体を支持した状態で、後輪13を、前輪11、中輪12と同じ高さ位置に上昇させる。ここで、後輪13を上昇させる際に、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方の回転支持部44を、ロッカーリンク体30に対して前方に向けて回転させて、荷台41が前方へと移動するように制御することで、荷台41の重心が前方へと移動するため、後輪13に作用する荷重が低減し、後輪13を上昇させやすくなるとともに、荷重によりロッカーボギー車1が後方へ転倒し、段差D1の下に転落することが抑制される。
【0062】
また、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの各々は、左右に一対設けられている。
このような構成によれば、荷台41が横方向に傾くのを抑制し、安定して荷台41を支持することができる。
また、例えばロッカーリンク体30の右側が左側に対して上昇するように、ロッカーリンク体30が横方向に傾くような場合においても、例えば右側に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bをそれぞれ収縮させ、あるいは左側に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bをそれぞれ伸長させることで、荷台41が水平となるように制御することができる。また、ロッカーリンク体30の右側が左側に対して下降するような場合においても、例えば右側に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bをそれぞれ伸長させ、あるいは左側に設けられた前側支持機構42Aと後側支持機構42Bをそれぞれ収縮させることで、荷台41が水平となるように制御することができる。このようにして、前後方向のみならず、横方向にロッカーリンク体30が傾くような場合であっても、荷台41を水平となるように制御することができる。
【0063】
また、ロッカーボギー車1は、荷台41の姿勢を計測可能な姿勢センサ50を更に備え、制御部60は、姿勢センサ50の計測結果を基に、直動型アクチュエータ43を伸縮させつつ回転支持部44を回転制御して、荷台41が水平となるように制御する。
このような構成によれば、不整地や段差を走行する場合においても、荷台41に載荷された物品の荷崩れを抑制し、走行性能を高めることができる、ロッカーボギー車1を実現することができる。
【0064】
(その他の変形例)
なお、上記実施形態では、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの双方が、直動型アクチュエータ43を備えるようにしたが、これに限られない。前側支持機構42Aと後側支持機構42Bのいずれか一方のみが、直動型アクチュエータ43を備えるようにしてもよい。
例えば、直動型アクチュエータ43が前側支持機構42Aのみに設けられ、後側支持機構42Bには直動型アクチュエータ43が設けられない構成としてもよい。この場合、前側が後側に対して持ち上がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には直動型アクチュエータ43を収縮させ、前側が後側に対して下がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には直動型アクチュエータ43を伸長させることで、荷台41が水平となるように制御することができる。
また、直動型アクチュエータ43が後側支持機構42Bのみに設けられ、前側支持機構42Aには直動型アクチュエータ43が設けられない構成としてもよい。この場合、前側が後側に対して持ち上がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には直動型アクチュエータ43を伸長させ、前側が後側に対して下がるようにロッカーリンク体30が傾斜した際には直動型アクチュエータ43を収縮させることで、荷台41が水平となるように制御することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、荷台支持機構42を、前側と後側の各々に左右1個ずつ、計4個を備えるようにしたが、これに限られない。荷台支持機構42は、前側と後側に1個ずつ、計2個を備えるようにしてもよい。この場合、荷台41が左右方向に倒れないよう、角度調整機構45は、直動型アクチュエータ43の上端部と荷台41とを、左右方向に延びる軸周りに回転自在に連結するのが好ましい。
あるいは、荷台支持機構42を、前側に1個、後側に左右1個ずつ、計3個を備えるようにしても良いし、前側に左右1個ずつ、後側に1個、計3個を備えるようにしても良い。
これ以外にも、荷台支持機構42は、例えば5組以上を備えるようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、直動型アクチュエータ43と荷台41とを、角度調整機構45により接続するようにしたが、これに代えて、例えば、ゴムなどの可撓性を有する部材で直動型アクチュエータ43と荷台41とを接続するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ロッカーボギー車1のロッカーリンク体30が大きく傾斜し、直動型アクチュエータ43を大きく伸長または収縮させる場合においては、単純に直動型アクチュエータ43を伸縮させるのみだと、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの、荷台41側の端部においては、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離が変わるように変位するため、伸縮が荷台41の剛性により阻まれることがあるところ、制御部60が、直動型アクチュエータ43を伸長または収縮させつつ、荷台41側における前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離が一定となるように前側支持機構42Aや後側支持機構42Bが回転するように、回転支持部44を回転制御した。しかし、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離を調整する手段は、これに限られない。
例えば、荷台41の下面にレールを設け、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部がレール上に、レールに対してスライドするように設けることで、前側支持機構42Aと後側支持機構42Bの端部間の距離の変化に追従するようにしてもよい。
【0068】
また、本実施形態に係るロッカーボギー車1は、自律走行を前提としているが、自律走行のみならず、遠隔操作可能な構成としてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 ロッカーボギー車
11 前輪
12 中輪
13 後輪
20 ボギーリンク
21c 中間部
30 ロッカーリンク体
32 ロッカーリンク
41 荷台
42 荷台支持機構
42A 前側支持機構
42B 後側支持機構
43 直動型アクチュエータ
44 回転支持部
45 角度調整機構
50 姿勢センサ
60 制御部