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特開2024-88350光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088350
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/64 20060101AFI20240625BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240625BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240625BHJP
【FI】
B01J38/64
A61L9/00 C
B01J35/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203470
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】川内 雄雅
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180BB06
4C180BB08
4C180BB09
4C180CC03
4C180CC13
4C180DD03
4C180DD09
4C180EA33X
4C180EA34X
4C180HH05
4C180HH15
4G169AA02
4G169AA09
4G169AA10
4G169BA47C
4G169BA48A
4G169CA01
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EA09
4G169EA11
4G169EA12
4G169EA13
4G169EA18
4G169FC04
4G169GA12
4G169HA15
4G169HE03
4G169HE07
4G169HF02
4G169HF05
(57)【要約】
【課題】異物が付着した光触媒体の機能回復を効果的に行うことができる光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法を提供することである。
【解決手段】実施形態に係る光触媒体の機能回復方法は、異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程を具備している。前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程を具備し、
前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液である光触媒体の機能回復方法。
【請求項2】
前記アルカリ性の水溶液は、
セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの少なくともいずれかと、水と、を含む、
または、
アルカリ電解水、
である請求項1記載の光触媒体の機能回復方法。
【請求項3】
前記光触媒体を、前記洗浄液に浸漬させる時間は、15分以上、24時間以下である請求項1または2に記載の光触媒体の機能回復方法。
【請求項4】
前記異物は、喫煙により生じたタール、および脂肪酸の少なくともいずれかを含む請求項1または2に記載の光触媒体の機能回復方法。
【請求項5】
異物が付着した光触媒体を、気体浄化装置から取り外す工程と;
取り外した前記異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程と;
を具備し、
前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液であり、
前記異物は、喫煙により生じたタール、および脂肪酸の少なくともいずれかを含む気体浄化装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康意識の高まりを反映して、電車や自動車などの車内、冷蔵庫内、居住空間などの、いわゆる閉鎖空間における気体の浄化(例えば、空気の浄化)の要望が高まっている。例えば、雰囲気に含まれているアンモニア、エチレン、および、アセトアルデヒドなどのVOC(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)の除去、雰囲気の脱臭、雰囲気に含まれている細菌やウイルスの殺菌や不活性化の要求が高まっている。そのため、複数の発光素子を有する光源と、光触媒が坦持された光触媒体とを備えた気体浄化装置が提案されている。
【0003】
ここで、気体浄化装置を動作させると、気体浄化装置が設けられている雰囲気に含まれている浄化の対象となるもの(例えば、VOC、細菌、ウイルスなど)が、気体浄化装置の内部に吸引される。浄化の対象となるものは光触媒作用により浄化できるが、光触媒作用では浄化が難しい異物が気体浄化装置の内部に吸引される場合がある。この様な異物が、光触媒体に坦持されている光触媒に付着すると、光触媒体の機能が低下することになる。
【0004】
この場合、異物が付着することで低下した光触媒体の機能は、異物が付着した光触媒体を水道水で洗浄することで回復させることができる。
ところが、異物の種類や性質によっては、水道水による洗浄では、光触媒体に付着した異物を除去するのが難しい場合がある。そのため、水道水による洗浄により、異物が付着した光触媒体の機能回復を図るのには限度があった。
そこで、異物が付着した光触媒体の機能回復を効果的に行うことができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-028324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、異物が付着した光触媒体の機能回復を効果的に行うことができる光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る光触媒体の機能回復方法は、異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程を具備している。前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、異物が付着した光触媒体の機能回復を効果的に行うことができる光触媒体の機能回復方法、および気体浄化装置のメンテナンス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】気体浄化装置の設置を例示するための模式断面図である。
図2】気体浄化装置の模式断面斜視図である。
図3】光触媒体の機能回復効果(洗浄液の洗浄効果)を例示するための表である。
図4】洗浄液への浸漬時間と、光触媒体の機能回復効果との関係を例示するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0011】
まず、機能回復の対象となる光触媒体6を備えた気体浄化装置1について例示する。
気体浄化装置1は、気体浄化装置1が設けられる雰囲気にある気体Gを浄化する。気体Gは、例えば、空気を主成分とし、浄化の対象となるものを含んでいる。浄化の対象となるものは、光触媒作用、および紫外線の少なくともいずれかにより浄化できるものであればよい。浄化の対象となるものは、例えば、化学物質、細菌、ウイルスなどである。化学物質は、例えば、アンモニア、エチレン、およびアセトアルデヒドなどのVOC(Volatile Organic Compounds;揮発性有機化合物)である。
【0012】
また、気体Gには、光触媒作用、および紫外線では浄化し難い異物をさらに含む場合がある。例えば、喫煙により生じたタールの粒子や、調理などにより生じた油の粒子などが、気体Gに含まれている場合がある。
【0013】
図1は、気体浄化装置1の設置を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、気体浄化装置1は、筐体100の内部に設けられている。筐体100の内部空間には、処理を行う気体Gが流れる。筐体100には、吸気口100aおよび排気口100bを設けることができる。筐体100の、排気口100bが設けられる壁は、吸気口100aが設けられる壁と対向している。図1に示すように、気体浄化装置1の内部における気体Gの流れ方向は、吸気口100aから排気口100bに向かう方向と交差している。この様にすれば、筐体100の内部空間において、処理を行う気体Gが撹拌されるので、処理の対象となるものの分布に偏りが生じるのを抑制することができる。そのため、気体Gの浄化を効率良く行うことができる。
【0014】
図2は、気体浄化装置1の模式断面斜視図である。
図2に示すように、気体浄化装置1は、例えば、フレーム2、フィルタ3、ファン4、光源5、および光触媒体6を有する。
【0015】
フレーム2は、箱状を呈している。気体Gの吸気側から見た場合に、フレーム2の輪郭は、例えば、多角形とすることができる。図2に例示をしたフレーム2の輪郭は、四角形である。フレーム2の輪郭が、四角形であれば、フレーム2に対する光触媒体6の着脱が容易となったり、気体浄化装置1の配置に対するスペース効率が向上したりする。
【0016】
例えば、フレーム2は、直方体形状を呈し、内部に、処理を行う気体Gが流れる空間を有する。フレーム2の内部には、光源5および光触媒体6が設けられる。フレーム2の、一方の端部(吸気側の端部)には孔2aが設けられている。孔2aは、処理の対象となる気体Gの流入口となる。フレーム2の、他方の端部(排気側の端部)には孔2bが設けられている。孔2bは、孔2aと対向している。孔2bは、処理済みの気体Gの流出口となる。そのため、フレーム2の内部に、孔2aから孔2bに向かって流れる気流を形成することができる。
【0017】
フレーム2の内部には、ブラケット2c、2dが設けられている。ブラケット2cには、光触媒体6が着脱自在に設けられる。ブラケット2cは、例えば、光触媒体6の端部を保持する。ブラケット2dには、光源5が着脱自在に設けられる。ブラケット2dは、例えば、光源5の端部を保持する。
【0018】
また、フレーム2の側部は開口している。フレーム2の側部の開口を介して、光触媒体6、および光源5の着脱を行うことができる。フレーム2の側部の開口には、蓋2eを着脱自在に設けることができる。また、フレーム2の側部などには、気体浄化装置1の外部に設けられた点灯回路や電源などと、気体浄化装置1に設けられたファン4および光源5との電気的な接続を行うためのコネクタを設けることができる。
【0019】
フレーム2、および蓋2eの材料は、光源5から照射される紫外線に対する耐性、および気体Gに含まれている化学物質に対する耐性があれば特に限定はない。フレーム2、および蓋2eの材料は、例えば、ステンレスや、アルミニウム合金など金属、ABS樹脂(アクリルニトリルーブタジエンースチレン共重合合成樹脂)や、ポリプロピレン樹脂などの樹脂とすることができる。この場合、フレーム2の内壁は、光源5から照射される紫外線に対する反射率が高くなるようにすることが好ましい。例えば、フレーム2をアルミニウム合金などの金属から形成したり、樹脂から形成されたフレーム2の内壁に、アルミニウム合金などの金属から形成された板やシートを設けたりすることができる。
【0020】
フィルタ3は、フレーム2の吸気側の端部に設けられている。フィルタ3は、フレーム2の端部に設けられた孔2aを覆っている。フィルタ3は、例えば、ブラケット3aにより、フレーム2の吸気側の端部に着脱自在に設けられている。ブラケット3aは、枠状を呈し、フィルタ3の周縁部分を保持する。ブラケット3aの中央部分には孔が設けられ、孔の内部にフィルタ3の中央部分が露出している。そのため、フィルタ3を介して、気体Gをフレーム2の内部に吸引することができる。
【0021】
フィルタ3は、フレーム2の外部にあるゴミなどが、フレーム2の内部に吸引されるのを抑制する。フィルタ3は、例えば、目視にて確認できる程度の大きさのゴミを捕捉する。フィルタ3は、例えば、ステンレス製の平織金網(線径φ0.1mm、100メッシュ)とすることができる。なお、フィルタ3は、例えば、ステンレス製の畳織金網、綾織金網などであってもよい。
【0022】
ファン4は、フレーム2の排気側の端部に着脱自在に設けることができる。ファン4は、フレーム2の端部に設けられた孔2bに接続されている。ファン4は、フレーム2の孔2bを介して、フレーム2の内部にある気体Gをフレーム2の外部に排出する。そのため、フレーム2の内部に、フィルタ3側からファン4側に向かう気体Gの流れを形成することができる。ファン4は、例えば、シロッコファン、軸流ファン、遠心ファンなどとすることができる。
【0023】
光源5は、フレーム2の内部に少なくとも1つ設けることができる。図1、および図2に例示をした気体浄化装置1には、互いに離隔させて、並べて設けられた2つの光源5が設けられている。図2に例示をした光源5には、発光素子5b、5cが設けられているが、光源5は、所定の波長を有する光を照射可能なものであればよい。例えば、光源5は、所定の波長を有する光を照射する放電ランプを備えたものであってもよい。放電ランプは、例えば、低圧水銀ランプやエキシマランプなどである。以下においては、一例として、発光素子5b、5cを有する光源5について説明する。
【0024】
光源5は、フレーム2の内部において、ブラケット2dに着脱自在に設けられている。光源5は、光触媒体6と対向している。光源5は、例えば、フレーム2に設けられたコネクタを介して、気体浄化装置1の外部に設けられた点灯回路や電源などと電気的に接続される。
【0025】
光源5は、例えば、基板5a、発光素子5b、および発光素子5cを有する。
基板5aは、板状を呈している。基板5aは、光触媒体6と対向させて、気体Gの流路に設けられる。基板5aの材料や構造には特に限定はない。例えば、基板5aは、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの無機材料(セラミックス)、紙フェノールやガラスエポキシなどの有機材料などから形成することができる。また、基板5aは、金属板の表面を絶縁材料で被覆したメタルコア基板などであってもよい。
【0026】
発光素子5b、5cは、基板5aの、光触媒体6と対向する面に並べて設けることができる。発光素子5b、5cの形式には特に限定はない。発光素子5b、5cは、例えば、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)型などの表面実装型の発光素子、砲弾型などのリード線を有する発光素子、チップ状の発光素子(ベアチップ)とすることができる。
【0027】
例えば、発光素子5bは、主に、光触媒体6に坦持されている光触媒を励起させるための光を照射する。この場合、光触媒が、酸化チタンなどを含む紫外線応答型の光触媒の場合には、発光素子5bは、ピーク波長が、例えば、315nm以上、420nm以下の紫外線(UV-A)を照射する。光触媒が、酸化タングステンなどの可視光応答型の光触媒の場合には、発光素子5bは、ピーク波長が、例えば、405nm以上、600nm以下の可視光を照射する。
【0028】
例えば、発光素子5cは、主に、細菌やウィルスの殺菌や不活性化を行うための紫外線を照射する。この場合、細菌やウイルスのDNAやRNAは、波長が300nm以下の紫外線を吸収し易い。そのため、発光素子5cは、ピーク波長が、270nm以上、300nm以下の紫外線(UV-C)を照射するものとすることが好ましい。
【0029】
気体浄化装置1の用途が、例えば、脱臭のみの場合には、発光素子5cを省くことができる。ただし、光触媒を励起させるための発光素子5bと、殺菌などを行うための発光素子5cが設けられていれば、種々の雰囲気における浄化に対応することができる。
【0030】
光触媒体6は、フレーム2の内部に設けられている。光触媒体6は、例えば、フレーム2の内部に設けられたブラケット2cに着脱自在に設けられる。
光触媒体6は、例えば、基材61、光触媒、および防着部を有する。
基材61は、例えば、ハニカム構造を有し、直径が3mm程度の孔を複数有するセラミック板とすることができる。また、基材61は、シート状を呈し、複数のガラス繊維を織り込むことで形成されたものや、金属を含む複数の線状体を織り込むことで形成されたものとしてもよい。線状体に含まれる金属は、例えば、ステンレス、ニッケル、モネル、リン青銅、チタン、銅、銅合金、銀、銀合金などである。
【0031】
光触媒は、粒状を呈し、基材61に坦持されている。光触媒は、所定の波長を有する光が入射した際に光触媒作用を発現する。光触媒の種類は、気体浄化装置1の用途や、気体Gに含まれている処理の対象となる物質などに応じて適宜選択することができる。例えば、光触媒は、紫外線応答型の光触媒や可視光応答型の光触媒とすることができる。紫外線応答型の光触媒は、例えば、酸化チタンなどを含んでいる。可視光応答型の光触媒は、例えば、酸化タングステン、窒素などをドープした酸化チタン、異種金属をイオン注入した酸化チタンなどを含んでいる。
【0032】
防着部は、光触媒とともに基材61に坦持させることができる。防着部は、例えば、ケイ素化合物を含む。ケイ素化合物は、例えば、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素)、ケイ素の窒化物、ケイ素の酸窒化物、ケイ素の炭化物、ケイ素の硫化物などである。防着部は、必ずしも必要ではなく省くこともできる。ただし、ケイ素化合物を含む防着部が坦持されていれば、有機物などの異物が光触媒に付着するのを抑制することができる。そのため、光触媒作用による浄化効果が経時的に低下するのを抑制することができる。また、ケイ素化合物を含む防着部が坦持されていれば、光触媒と基材61との間の接合強度を高めることもできる。
【0033】
ここで、気体浄化装置1を動作させると、気体浄化装置1が設けられている雰囲気に含まれている浄化の対象となるもの(例えば、VOC、細菌、ウイルスなど)が、気体Gとともにフレーム2の内部に吸引される。フレーム2の内部に吸引された浄化の対象となるものは、光触媒作用、および紫外線の少なくともいずれかにより浄化される。
【0034】
ところが、光触媒作用、および紫外線では浄化が難しい異物がフレーム2の内部に吸引されて、光触媒体6に坦持されている光触媒に付着する場合がある。前述した様に、防着部が、光触媒とともに基材61に坦持されていれば、異物が光触媒体に付着するのを抑制することができる。しかしながら、気体浄化装置1の動作時間が長い場合などにおいては、異物が光触媒体に付着するのを抑制できない場合がある。
【0035】
異物が光触媒に付着すると、発光素子5bから照射された光が異物により遮られたり、気体Gが異物により光触媒と接触しにくくなったりする。そのため、光触媒体6の機能が経時的に低下する場合がある。
【0036】
ここで、光触媒体6に付着している異物がゴミやほこりなどの場合には、異物の付着力が弱い。そのため、異物が付着している光触媒体6を水道水で洗浄すれば、光触媒体6から異物を除去することができる。光触媒体6から異物が除去されれば、異物が付着することで低下した光触媒体6の機能を回復させることができる。
【0037】
ところが、異物の種類や性質によっては、異物の付着力が強い場合がある。例えば、気体浄化装置1が、電車や自動車などの車内や、居住空間などの生活環境で用いられる場合には、気体浄化装置1が設けられる雰囲気に、喫煙により生じたタールの粒子や、調理などにより生じた油の粒子などが浮遊している場合がある。タールの粒子や、油の粒子などが、フレーム2の内部に吸引されると、タールや、油(脂肪酸)が光触媒体6に付着する場合がある。タールや、油(脂肪酸)は粘着性を有しているので、これらが光触媒体6に付着すると、水道水による洗浄では、これらを除去するのが難しい。この場合、水道水の水勢を強めたり、水道水に振動を印加したりして洗浄力を高めると、光触媒体6の基材61に坦持されている光触媒や防着部が脱落するおそれがある。
【0038】
そこで、本実施の形態に係る光触媒体6の機能回復方法においては、洗浄液を用いた洗浄を行う。
ここで、タール、および油(脂肪酸)は酸性である。そのため、アルカリ性の洗浄液を用いれば、酸性のタール、および油(脂肪酸)を中和させることができる。中和させることで生成された物質は、親水性が高い。そのため、タール、および油(脂肪酸)は、アルカリ性の水溶液により除去することができる。
【0039】
洗浄液は、例えば、水道水などの水と、アルカリ性の添加剤を含むことができる。アルカリ性の添加剤は、例えば、重曹、セスキ炭酸ナトリウム(テトラトリタ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ソーダなどとも称される)、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物で水に可溶性のもの(例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)などとすることができる。また、洗浄液は、例えば、アルカリ電解水などであってもよい。
【0040】
洗浄液の水素イオン指数は、pH8以上とすることができる。この場合、洗浄液の水素イオン指数を高くし過ぎると、洗浄液の取り扱いが煩雑となったり、光触媒体6の基材61、光触媒、および防着部に悪影響が生じたりするおそれがある。そのため、洗浄液の水素イオン指数は、pH8以上、pH12以下とすることが好ましい。洗浄液の水素イオン指数は、例えば、水道水などの水に加えるアルカリ性の添加剤の量により調整することができる。
【0041】
また、タール、および油(脂肪酸)は油性の物質である。そのため、洗浄液に、界面活性剤が含まれていれば、乳化作用により、タール、および油(脂肪酸)と、洗浄液に含まれている水とが混ざり合うようになる。そのため、タール、および油(脂肪酸)は、界面活性剤を含む水溶液を用いても除去することができる。洗浄液は、例えば、水道水などの水と、界面活性剤を含むことができる。
【0042】
界面活性剤を含む洗浄液は、中性とすることが好ましい。洗浄液が中性であれば、洗浄液の取り扱いが容易となったり、光触媒体6の基材61、光触媒、および防着部に悪影響が生じるのを抑制したりすることができる。洗浄液における界面活性剤の濃度は、例えば、3wt%~10wt%程度とすることができる。
【0043】
なお、洗浄液として、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液を用いれば、タールや、油(脂肪酸)のみならず、前述した、ゴミやほこりなどの異物も除去することができる。
【0044】
また、洗浄液(アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液)の温度には特に限定はない。洗浄液は、例えば、常温(例えば、25℃程度)とすることができる。この場合、洗浄液の温度を常温よりも高くすれば、タールの中和や、油(脂肪酸)の乳化がより生じ易くなる。ただし、洗浄液の温度を高くし過ぎると、洗浄剤の取り扱いや、メンテナンス作業が煩雑となる。そのため、洗浄液の温度は、50℃以下とすることが好ましい。この場合、洗浄液の温度が、常温であれば、洗浄剤の取り扱いや、メンテナンス作業が容易となる。
【0045】
図3は、光触媒体の機能回復効果(洗浄液の洗浄効果)を例示するための表である。
図3中の洗浄液Aは、界面活性剤と、水(水道水)を含んでいる。界面活性剤の濃度は、5wt%程度である。
図3中の洗浄液Bは、セスキ炭酸ナトリウムと、水(水道水)を含んでいる。セスキ炭酸ナトリウムの濃度は、1wt%程度である。洗浄液Bの水素イオン指数は、pH9.8程度である。
また、光触媒体6の機能回復処理においては、所定の時間使用した光触媒体6を、水道水、洗浄液A、および洗浄液Bのそれぞれに15分間浸漬し、水道水で濯いだ後に、常温乾燥(例えば、25℃程度の室内での乾燥)させた。なお、水道水、洗浄液A、および洗浄液Bの温度は、常温である。また、所定の時間使用した光触媒体6には、喫煙により生じたタール、および、調理などにより生じた油(脂肪酸)の少なくともいずれかを含む異物が付着している。
【0046】
光触媒体6の機能回復効果は、アセトアルデヒドの除去率を指標とした。光触媒体6が設けられた気体浄化装置1は、内容積が1mの容器の内部に設置した。そして、未使用の光触媒体6を用いた場合のアセトアルデヒドの除去率を基準とし、水道水、洗浄液A、および洗浄液Bのそれぞれを用いて機能回復処理を施した光触媒体6のアセトアルデヒドの除去率を比較した。アセトアルデヒドの除去率は、気体浄化装置1の動作の開始から、2時間経過後の除去率である。
【0047】
図3に示すように、水道水のみを用いて機能回復処理を施すよりも、洗浄液A、または洗浄液Bを用いて機能回復処理を施す方が、より高いアセトアルデヒドの除去率を得ることができる。このことは、洗浄液A、または洗浄液Bを用いて機能回復処理を施せば、光触媒体の機能回復効果を向上させることができることを意味する。なお、洗浄液Bは、添加剤としてセスキ炭酸ナトリウムを用いた場合であるが、他のアルカリ性の添加剤を用いても、水道水のみを用いて機能回復処理を施すよりも、光触媒体の機能回復効果を向上させることができる。
【0048】
以上に説明した様に、本実施の形態に係る光触媒体の機能回復方法は、異物が付着した光触媒体6を、洗浄液に浸漬させる工程を具備している。そして、洗浄液として、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液を用いることで、異物が付着した光触媒体6の機能回復を行うようにしている。
【0049】
図4は、洗浄液Bへの浸漬時間と、光触媒体6の機能回復効果との関係を例示するための表である。
光触媒体6の機能回復処理においては、所定の時間使用した光触媒体6を、洗浄液Bに所定の時間浸漬し、水道水で濯いだ後に、常温乾燥させた。なお、洗浄液Bの温度は、常温である。
光触媒体6の機能回復効果は、図3において説明したものと同様にして評価した。なお、図3において説明した様に、水道水のみを用いた場合の機能回復効果は、46%である。
【0050】
図4から分かるように、浸漬時間が24時間以下であれば、水道水のみを用いて機能回復処理を施すよりも、洗浄液Bを用いた方が、光触媒体の機能回復効果を向上させることができる。
そのため、洗浄液Bを用い、浸漬時間を15分以上、24時間以下とすれば、異物が付着した光触媒体6の機能回復をより効果に行うことができる。
【0051】
次に、本実施の形態に係る気体浄化装置1のメンテナンス方法について例示する。
気体浄化装置1のメンテナンスは、定期的に、あるいは、必要に応じて行うことができる。この場合、気体浄化装置1のメンテナンスの間隔は、気体浄化装置1が設けられる環境に応じて適宜変更することができる。例えば、気体浄化装置1が設けられる雰囲気に含まれる化学物質、細菌、ウイルス、異物(例えば、喫煙により生じたタールの粒子や、調理などにより生じた油の粒子)が多い場合には、メンテナンスの間隔を短くし、気体浄化装置1が設けられる雰囲気が比較的清浄な場合には、メンテナンスの間隔を長くすることができる。
【0052】
本実施の形態に係る気体浄化装置1のメンテナンス方法は、例えば、異物が付着した光触媒体6を、気体浄化装置1から取り外す工程と、取り外した異物が付着した光触媒体6を、洗浄液に浸漬させる工程とを具備している。
この場合、気体浄化装置1が設けられる環境に応じて、洗浄液の種類を選択することができる。
例えば、気体浄化装置1が設けられる環境の雰囲気に、異物(例えば、喫煙により生じたタールの粒子や、調理などにより生じた油の粒子)が含まれていないか、異物の量が少ない場合には、水道水などの水のみが含まれる洗浄液を用いて、光触媒体6の機能回復処理を行うことができる。
この様にすれば、洗浄液のコストの低減、ひいてはメンテナンスのコストの低減を図ることができる。
【0053】
なお、異物の量が少ない場合であっても、異物の付着量が、経時的に増加する場合がある。そのため、通常は、水道水などの水のみを用いた洗浄を行い、定期的に、あるいは、必要に応じて、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液を用いた洗浄を行うこともできる。
この様にすれば、メンテナンスのコストの低減を図るとともに、異物が付着した光触媒体6の機能回復を効果に行うことができる。
【0054】
これに対して、気体浄化装置1が設けられる環境の雰囲気に含まれている、異物(例えば、喫煙により生じたタールの粒子や、調理などにより生じた油の粒子)の量が多い場合には、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液を用いて、光触媒体6の機能回復処理を行うことができる。
【0055】
例えば、気体浄化装置1が、喫煙室やその近傍、または調理室やその近傍に設けられる場合には、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液を用いて、光触媒体6の機能回復処理を行うことができる。
この様にすれば、異物が付着した光触媒体6の機能回復を効果に行うことができる。
【0056】
また、光触媒体6に付着している異物の量が多い場合には、例えば、光触媒体6を洗浄液に浸漬させる時間を長くしたり、洗浄液の温度を常温以上としたりすることができる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0058】
以下、前述した実施形態に関する付記を示す。
【0059】
(付記1)
異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程を具備し、
前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液である光触媒体の機能回復方法。
【0060】
(付記2)
前記アルカリ性の水溶液は、
セスキ炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、および炭酸水素ナトリウムの少なくともいずれかと、水と、を含む、
または、
アルカリ電解水、
である付記1記載の光触媒体の機能回復方法。
【0061】
(付記3)
前記光触媒体を、前記洗浄液に浸漬させる時間は、15分以上、24時間以下である付記1または2に記載の光触媒体の機能回復方法。
【0062】
(付記4)
前記異物は、喫煙により生じたタール、および脂肪酸の少なくともいずれかを含む付記1~3のいずれか1つに記載の光触媒体の機能回復方法。
【0063】
(付記5)
異物が付着した光触媒体を、気体浄化装置から取り外す工程と;
取り外した前記異物が付着した光触媒体を、洗浄液に浸漬させる工程と;
を具備し、
前記洗浄液は、アルカリ性の水溶液、または界面活性剤を含む水溶液であり、
前記異物は、喫煙により生じたタール、および脂肪酸の少なくともいずれかを含む気体浄化装置のメンテナンス方法。
【符号の説明】
【0064】
1 気体浄化装置、2 フレーム、5 光源、6 光触媒体、61 基材、G 気体
図1
図2
図3
図4