(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088352
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】冷却衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20240625BHJP
A41D 13/005 20060101ALI20240625BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20240625BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20240625BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/005 103
A41D1/00 E
A41D27/18 Z
A41D27/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203472
(22)【出願日】2022-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年11月10日から11日に東京で開催された「空調風神服5社合同展示会2023」に出展 2.令和4年11月17日から18日に大阪で開催された「空調風神服5社合同展示会2023」に出展
(71)【出願人】
【識別番号】000130732
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将平
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC18
3B011AC21
3B030AA03
3B030AA05
3B030AB08
3B035AA03
3B035AA11
3B035AB03
3B035AC20
3B211AA01
3B211AB01
3B211AC02
3B211AC18
3B211AC21
(57)【要約】
【課題】冷却効果を高めることができる冷却衣服を提供する。
【解決手段】冷却衣服の襟4は、使用者6の首筋6a側となる襟内面体4aと、この襟内面体4aの外側に設けた襟外面体4bと、これらの襟外面体4bと襟内面体4a間に設けた襟芯材4cとを有し、襟外面体4b、襟内面体4a、襟芯材4cに通気孔が設けられているため、襟内面体4a側に送風機による空気Aが勢いよく流れると、襟内面体4a側に負圧域が形成され、これにより襟外面体4b側の空気が襟4の通気孔を通過して首筋6a側へと流れる空気流Bとなる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
服本体と、
前記服本体外の空気を、当該服本体内に供給する送風機と、
前記服本体に設けた襟と、を備え、
前記襟は、
着用者の首側となる襟内面体と、
前記襟内面体の外側に設けられた襟外面体と、
前記襟外面体と前記襟内面体間に設けられた襟芯材と、を有し、
前記襟外面体、前記襟内面体及び前記襟芯材に通気孔が設けられた冷却衣服。
【請求項2】
前記服本体を構成する前身頃の少なくとも上部が、前記服本体の前側において左前身頃と右前身頃とに分離され、前記左前身頃と前記右前身頃間が、ファスナーによって開閉自在であり、
前記ファスナーの上端が、前記服本体の襟ぐり以下の部分であり、
前記襟が、前記ファスナーの上端の上方において左右に分離されている請求項1に記載の冷却衣服。
【請求項3】
前記服本体の前側において左右に分離された前記襟間の距離は、下方よりも上方の方が広い請求項2に記載の冷却衣服。
【請求項4】
前記襟が、左右方向に長いダブルラッセル布によって構成された請求項1から3のいずれか一つに記載の冷却衣服。
【請求項5】
前記襟は、
左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布が、当該ダブルラッセル布の厚み方向に重ね合わせられ、前記襟の上端側となる当該ダブルラッセル布の上部がバイアステープによって包み込まれて一体化されている請求項1から3のいずれか一つに記載の冷却衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、服本体外の空気を送風機で、服本体内に取り込む冷却衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却衣服は、服本体外の空気を送風機で、服本体内に取り込み、襟や袖部分等から服本体外に流出させることで、服本体内を冷却する構成となっている。
また、着用者の首周りの冷却効果を向上させるために、着用者の首周りを覆うように構成された襟の内側に、メッシュ生地による襟口通風孔を設け、服本体に取り込まれた空気を着用者の首周りに供給するものも提案されている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行文献では、服本体内に取り込まれた空気を、襟の内側に設けたメッシュ生地による襟口通風孔から着用者の首周りに供給し、着用者の首周りの冷却効果を向上させようとしている。
しかしながら、この先行文献では、襟の上部にまでファスナーを設けているので、通気抵抗が大きくなり、十分な風量を首周りに提供できないことが課題となる。
すなわち、この先行文献において、襟口通風孔から着用者の首周りに空気を供給するためには襟が着用者の首周りに近接することが必要で、そのために、襟の上部にまでファスナーを設け、襟を筒状に保ち、襟口通風孔から着用者の首周りに空気を供給するようにしている。
【0005】
しかし、そのような構成にすると、襟と首周り間に形成される通気路の開口面積が狭くなり、通気抵抗が大きくなり、その結果として、服本体に取り込む空気量も少なくなり、首の周りに供給する空気量も少なくなり、冷却衣服としての冷却効果が低くなる。
また、襟部分のファスナーを開けると、風により襟が外周に広がり、空気流も外周に広がり、結果的に、空気流が首から離れ、冷却効果が低くなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、冷却衣服としての冷却効果を高めることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために本発明の冷却衣服は、服本体と、前記服本体外の空気を、この服本体内に供給する送風機と、前記服本体に設けた襟とを備え、前記襟は、着用者の首側となる襟内面体と、この襟内面体の外側に設けた襟外面体と、これらの襟外面体と襟内面体間に設けた襟芯材とを有するとともに、前記襟外面体、襟内面、襟芯材には通気孔を設けた構成とした。
また、本発明の冷却衣服における服本体を構成する前身頃の少なくとも上部は、この服本体の前側において、左前身頃と右前身頃に分離され、これらの左前身頃と右前身頃間は、ファスナーによって開閉自在となっており、前記ファスナーの上端は、前記服本体の襟ぐり以下の部分とし、前記襟は、前記ファスナーの上端の上方において、左右に分離された構成とした。
さらに、本発明の冷却衣服における服本体の前側において左右に分離された襟間の距離は、下方よりも上方の方を広くした。
また、本発明の冷却衣服における襟は、左右方向に長いダブルラッセル布によって構成した。
さらに、本発明の冷却衣服における襟は、左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布を、このダブルラッセル布の厚さ方向に重ね合わせ、襟の上端側をバイアステープによって包み込んで一体化した構成とした。
【発明の効果】
【0008】
以上の様に本発明の冷却衣服は、服本体と、前記服本体外の空気を、この服本体内に供給する送風機と、前記服本体に設けた襟とを備え、前記襟は、着用者の首側となる襟内面体と、この襟内面体の外側に設けた襟外面体と、これらの襟外面体と襟内面体間に設けた襟芯材とを有するとともに、前記襟外面体、襟内面、襟芯材には通気孔を設けた構成としたので、冷却効果を高めることが出来る。
すなわち、本発明においては、襟を、着用者の首側となる襟内面体と、この襟内面体の外側に設けた襟外面体と、これらの襟外面体と襟内面体間に設けた襟芯材とを有するとともに、前記襟外面体、襟内面、襟芯材には通気孔を設けた構成としたので、襟自身が自立形となり、服本体側から襟内面体へと送風機からの空気流が流れると、この空気流に誘引され、襟外面体の通気孔、襟芯材の通気孔、襟内面体の通気孔へと、襟外面体の外側の空気が流れることとなり、その結果、着用者の首部分に流れる空気流が増加し、冷却服としての冷却効果を高めることができる。
また、着用者の首部分に流れる空気流が増加し、首部分の冷却効果を高めることができるので、首部分に供給する空気量を多くしようとして、従来の様に、襟を首に近づける必要が無く、その結果、襟部分における風路抵抗が大きくならず、服本体内に多くの空気を取り込めるようになり、この点からも、冷却服としての冷却効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
図1、
図2は本発明の一実施形態にかかる冷却衣服1を示している。
本実施形態では、袖なしのベストタイプを例に説明する。
【0011】
冷却衣服1は、服本体2と、前記服本体2外の空気を、この服本体2内に供給する送風機3と、前記服本体2に設けた襟4と、を備えている。
前記服本体2の前面側は、左右に分離された左前身頃2bと右前身頃2aにより構成され、これらの左前身頃2bと右前身頃2a間は、ファスナー5によって開閉自在となっている。
【0012】
ファスナー5は、左前身頃2bと右前身頃2a間を分離し、使用者(
図5の符号6)が、服本体2を容易に着脱できるようにしたもので、線ファスナー(スライドファスナーなど)、面ファスナー(マジックファスナー(登録商標)など)、点ファスナー(ボタン、フックなど)が活用できる。
なお、本実施形態では、左前身頃2bと右前身頃2aを、上部から下部にかけて、完全に左右に分離したが、使用者(
図5の符号6)が、服本体2を容易に着脱できるようにするためであれば、左前身頃2bと右前身頃2aの上部(襟4側)だけが左右に分離され、そこにファスナー5を設けるようにしても良い。
【0013】
一方、服本体2の後ろ身頃2cの下方には、2個の送風機3が左右に離れて装着されている。
この送風機3は周知のように、服本体2などに装着された電池(図示せず)によって駆動され、送風機3の駆動により、服本体2外の空気が服本体2内に供給され、袖口2dや襟4部分から服本体2外に流出する構成とし、これにより使用者6の身体の風冷をするようにしている。
【0014】
本実施形態で特徴的なのは、
図5に示すように使用者6の首筋6aや顔6bに多くの空気を供給することで、使用者6の快適感を高めるようにしたことである。
そのために、本実施形態の襟4は、
図3~
図5に示すように、着用者6の首筋6a側となる襟内面体4aと、この襟内面体4aの外側に設けた襟外面体4bと、これらの襟外面体4bと襟内面体4a間に設けた襟芯材4cとを有するとともに、前記襟外面体4b、襟内面体4a、襟芯材4cには通気孔を設けた構成とした。
【0015】
具体的には、本実施形態の襟4は、左右方向に長いダブルラッセル布によって構成した。さらに詳細に説明すると、本実施形態では、前記襟4は、左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布を、
図4のように、このダブルラッセル布の厚さ方向に重ね合わせ、襟4の上端側をバイアステープ7によって包み込んで一体化し、襟4の下端側は、あて布8を用いて左前身頃2bと右前身頃2aに縫い付けた。
【0016】
ダブルラッセル布は、周知のように、表編地と裏編地間を連結糸で連結したもので、表編地と裏編地と連結糸部分には十分な大きさの通気孔が設けられている。
したがって、本実施形態の襟4のように、左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布を、
図4のように、このダブルラッセル布の厚さ方向に重ね合わせ、襟4の上端側をバイアステープ7によって包み込んで一体化し、襟4の下端側は、あて布8を用いて左前身頃2bと右前身頃2aに縫い付けた状態でも、襟4の内外に通ずる風路が、この襟4には形成されている状態となっている。
また、ダブルラッセル布の特徴として、定形性の保持力が強いという点がある。
【0017】
本実施形態の襟4は、上述のように、左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布を、
図4のように、このダブルラッセル布の厚さ方向に重ね合わせ、襟4の上端側をバイアステープ7によって包み込んで一体化し、襟4の下端側は、あて布8を用いて左前身頃2bと右前身頃2aに縫い付けた状態としている。
このため、首筋6a側の一枚のダブルラッセル布の、首筋6a側面が襟内面体4aとなり、首筋6aとは反対側の他の一枚のダブルラッセル布の首筋6aとは反対側面が襟外面体4bとなる。
また、これらの襟外面体4bと襟内面体4a間の部分が、襟芯材4dとなる。
【0018】
なお、糸の太さや、編み方を工夫することで、1枚のダブルラッセル布で襟4を作ることもできる。その場合には、一枚のダブルラッセル布の首筋6a側面が襟内面体4a、その一枚のダブルラッセル布の首筋6aとは反対側面が襟外面体4bとなる。
【0019】
本実施形態の襟4は、上述のように、左右方向に長い複数枚のダブルラッセル布を、
図4のように、このダブルラッセル布の厚さ方向に重ね合わせ、襟4の上端側をバイアステープ7によって包み込んで一体化し、襟4の下端側は、あて布8を用いて左前身頃2bと右前身頃2aに縫い付けた状態としているので、襟4として定形性を保て、自立型となる。
【0020】
また、このように定形性を保て、自立型の襟4としても、襟4の内外に通ずる十分な風路が、この襟4には形成されている状態となっている。
【0021】
前記ファスナー5の上端は、
図1、
図3のように前記服本体2の襟ぐり2e以下の部分とし、また、前記襟4は、前記ファスナー5の上端の上方において、左右に分離された構成としている。
つまり、ファスナー5を襟4まで設けずに、首筋6a周囲に十分な風路が確保されるようにしている。そのためには、襟4が定形性を保て、自立型となっていることが必要である。
【0022】
本実施形態においては、前記服本体2の前側において左右に分離された襟4間の距離は、
図3に示すように、下方(襟ぐり2e側)よりも、上方(顔6b側)の方を広くした。
これは、服本体2内から顔6b側に向かう風路を広くとり、顔6bに十分な風を当てて、快適性を高めるためである。
【0023】
以上の構成において、送風機3を駆動すると、服本体2外の空気が服本体2内に供給され、袖口2dや襟4部分から服本体2外に空気が流出することで、使用者6の身体の風冷をすることができる。
【0024】
図5は本実施形態の特徴を説明する図である。
この
図5に示すように、送風機3によって服本体2内に取り込まれた空気の大部分は、襟4部分から首筋6aを介して顔6b部分へと吹き出す。
特徴的なのは、
図5に示すように首筋6a部分に、送風機3による空気Aが勢いよく流れるときに、襟4の通気孔を介し、襟4を貫通し、首筋6a側へと流れる空気流Bが形成されるということである。
つまり、襟4の襟内面体4a側に送風機3による空気Aが勢いよく流れることで、襟4の襟内面体4a側に負圧域が形成され、これにより襟外面体4b側の空気が襟4の通気孔を介し、襟4を貫通し、首筋6a側へと流れる空気流Bとなるのである。
【0025】
結果として、襟4の襟内面体4a側には、空気A、空気流Bが合算された状態で流れることになり、空気量が多くなり、首筋6a、顔6b部分の冷却効果が高まる。
また、襟4を貫通し、首筋6a側へと流れる空気流Bが形成されることで、襟4の襟内面体4a側を流れる送風機3による空気Aは首筋6a側へと押される状態にもなり、その結果として、首筋6a部分の冷却効果が高まる。
【0026】
さらに、襟4を貫通し、首筋6a側へと流れる空気流Bが形成されると、襟4の快適性を高めることもできる。
例えば、送風機3を駆動前で、使用者6が服本体2を装着したときには、首筋6aの汗の一部が襟4に付着することもあるが、送風機3を駆動すれば、直ちに、襟4を通過する空気流Bが形成され、汗は蒸発するので、襟4に汗が長期的に滞留し、臭気の問題や、汗シミの問題を発生させることが少なく、快適性を高めることができるのである。
【0027】
なお、襟は、ダブルラッセル布に限らず、メッシュ等の通気性の良い生地でもよい。襟の上端側となるダブルラッセル布の上部は、バイアステープに限らず、縫製のみによって形成されてもよい。
【0028】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 冷却衣服
2 服本体
2a 右前身頃
2b 左前身頃
2c 後ろ身頃
2d 袖口
2e 襟ぐり
3 送風機
4 襟
4a 襟内面体
4b 襟外面体
4c 襟芯材
5 ファスナー
6 使用者
6a 首筋
6b 顔
7 バイアステープ
8 あて布
A 空気
B 空気流