(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088359
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20240625BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240625BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240625BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20240625BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240625BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240625BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L50/60
B60L15/20 J
B60L1/00 L
B60K11/04 A
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203489
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】織田 湧平
(72)【発明者】
【氏名】木下 健朗
(72)【発明者】
【氏名】宮岡 智幸
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 彪瑠
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AB06
3D038AC22
3D235AA14
3D235BB36
3D235BB45
3D235CC15
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC25
5H125BC29
5H125CD02
5H125CD07
5H125EE25
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】バッテリの温度上昇時に速やかに作業を再開可能な電動の作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体1に装着する作業機4を備えた作業車両において、走行車体1の駆動輪3を駆動する走行用電動機30又は作業機4を駆動する作業機用電動機40を設け、これら電動機30,40に給電して蓄電するメインバッテリ50を設け、メインバッテリ50の温度を測定する温度センサ95を設け、制御部Cは温度センサ95による検出値Tが予め設定した第1設定温度t1以上になると、走行用電動機30に停止出力し、メインバッテリ50に対するバッテリ冷却装置90に運転出力する構成とした。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(1)に装着する作業機(4)を備えた作業車両において、走行車体(1)の駆動輪(3)を駆動する走行用電動機(30)又は作業機(4)を駆動する作業機用電動機(40)を設け、これら電動機(30,40)に給電して蓄電するメインバッテリ(50)を設け、メインバッテリ(50)の温度を測定する温度センサ(95)を設け、制御部(C)は温度センサ(95)による検出値(T)が予め設定した第1設定温度(t1)以上になると、走行用電動機(30)に停止出力し、メインバッテリ(50)に対するバッテリ冷却装置(90)に運転出力する構成としたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
制御部(C)は第1設定温度(t1)よりも低い第2設定温度(t2)を記憶し、温度センサ(95)の検出値(T)が第1設定温度(t1)未満で第2設定温度(t2)以上の場合に、走行用電動機(30)及び作業機用電動機(40)に減速又は低速回転出力しバッテリ冷却装置(90)に運転出力する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
バッテリ冷却装置(90)は冷却ファン(92,94)による空冷冷却装置(90b)とし、冷却ファン(92,94)には補助バッテリ(82)で給電する構成とした請求項1又は請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
第1設定温度(t1)を超えると警報出力するよう構成した請求項1に記載の作業車両。
【請求項5】
第2設定温度(t2)を超えると警報出力するよう構成した請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園等を走行させて園内の芝刈りを行う芝刈作業機のような作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリと電動モータを搭載し、蓄電したバッテリから給電されて作動する電動モータを作動させ、作業機または駆動輪を駆動する作業車両において、複数のバッテリパックと、それぞれのバッテリパックの温度を評価する温度評価部を備え、バッテリ温度が基準値よりも高いバッテリパックから、電気の流れを遮断可能なバッテリスイッチを切り状態にする作業車両が公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、温度評価部によるバッテリ温度の評価結果に基づいて、バッテリスイッチの入り切りを制御することができる。しかしながら、上記の構成では給電可能なバッテリのすべてが温度上昇してしまうと作業機および走行が停止してしまい作業できなくなっていた。
【0005】
本発明は、電動の作業車両において、バッテリの温度上昇時に速やかに作業を再開可能な作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、走行車体1に装着する作業機4を備えた作業車両において、走行車体1の駆動輪3を駆動する走行用電動機30又は作業機4を駆動する作業機用電動機40を設け、これら電動機30,40に給電して蓄電するメインバッテリ50を設け、メインバッテリ50の温度を測定する温度センサ95を設け、制御部Cは温度センサ95による検出値Tが予め設定した第1設定温度t1以上になると、走行用電動機30に停止出力し、メインバッテリ50に対するバッテリ冷却装置90に運転出力する構成とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、制御部Cは第1設定温度t1よりも低い第2設定温度t2を記憶し、温度センサ95の検出値Tが第1設定温度t1未満で第2設定温度t2以上の場合に、走行用電動機30及び作業機用電動機40に減速又は低速回転出力しバッテリ冷却装置90に運転出力する構成とした。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、バッテリ冷却装置90は冷却ファン92,94による空冷冷却装置90bとし、冷却ファン92,94には補助バッテリ82で給電する構成とした。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、第1設定温度t1を超えると警報出力するよう構成した。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、第2設定温度t2を超えると警報出力するよう構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、メインバッテリ50の温度が上昇し第1設定温度t1を超えると走行車体1を停止し、メインバッテリ50を冷却することで作業再開につながる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果に加え、減速状態でありながらも作業を継続させることができ、効率を所定に維持できる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の効果に加え、メインバッテリ50の温度上昇の際、補助バッテリ82の給電で冷却ファン92,94を駆動でき、速やかにメインバッテリ50を冷却できる。
【0014】
請求項4及び請求項5に記載の発明によれば、請求項1に記載の効果又は請求項2に記載の効果に加え、作業者に報知することで作業走行感覚に違和感を生じさせない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態にかかる作業車両の左側面図である。
【
図2】ボンネットカバーを開放姿勢にした作業車両の左側面図である。
【
図3】作業車両の一部を破断した要部の斜視図である。
【
図7】後輪用の電動機と作業機用の電動機の左側面図である。
【
図10】バッテリとバッテリブラケットの斜視図である。
【
図12】前輪と、バッテリと、バッテリブラケットの正面図である。
【
図13】作業車両の一部を破断した要部の平面図である。
【
図15】本発明の実施形態にかかる作業車両の制御ブロック図である。
【
図17】(A)コレクタの昇降状態を示す側面図、(B)コレクタのダンプ状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、乗用芝刈り機等の作業車両は、走行車体1と、走行車体1の前部に左右一対の前輪2が設けられ、走行車体1の後部に左右一対の後輪3が設けられ、走行車体1の下側における前輪2と後輪3の間に芝等を刈取る作業機4が設けられている。また、走行車体1の上側の前部に後述のバッテリを収納するボンネット5が設けられ、ボンネット5の後側には操縦者が搭乗する操縦席60が設けられ、操縦席60の後側には操縦者を保護する安全フレーム(ロプス)8が設けられ、安全フレーム8の下部には作業機4で刈取られた芝等を貯留する集草容器7が設けられている。
【0017】
図2~4に示すように、ボンネット5内には、後輪3を駆動する電動機30等に供給する電力を蓄電するバッテリ50が設けられている。なお、ボンネット5は、後上部に設けられた左右方向に延在する支軸(図示省略)に支持されている。これにより、ボンネット5前部が上方に回動することができる。
【0018】
操縦席60の下側には、電装部品61が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成される空間を有効に活用することができる。
【0019】
安全フレーム8は、上下方向に延在する左支柱部8Lと、上下方向に延在する右支柱部8Rと、左支柱部8Lと右支柱部8Rの上部を連結する逆U字形状の連結部8Aから形成されている。
【0020】
図4~7に示すように、電装部品61の下側には後輪3を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機30が設けられている。電動機30の左右方向に延在して形成された出力軸30Aは、出力軸30Aから伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくしたり回転方向を逆さにするギアボックス31の上部に連結されている。なお、電動機30は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0021】
ギアボックス31で増減速された出力回転は、ギアボックス31の下部に設けられ差動歯車等で構成されたディファレンシャルギア32を介して左右方向に延在するドライブシャフト33に伝動される。ドライブシャフト33に伝動された出力回転は、ドライブシャフト33の両端部に支持された後輪3に伝動される。
【0022】
電動機30の下側には作業機4を駆動する3相交流電圧波形で操作される同期電動機や誘導電動機等の電動機40が設けられている。電動機40の前後方向に延在して形成された出力軸40Aは、前後方向に延在して設けられた自在継手41の後部に連結されている。また、出力軸40Aは、ドライブシャフト33の上側に、ドライブシャフト33と直交して設けられている。これにより、電動機30の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、電動機40と作業機4の間の伝動経路を短くすることができるので電動機40の出力回転を作業機4に効率良く伝動することができる。なお、電動機40は左右方向の中央よりも左側に偏移した位置に設けられている。
【0023】
自在継手41の前部は、自在継手41から伝動される出力回転を減速して出力トルクを大きくするギアボックス42に連結されている。ギアボックス42に伝動された出力回転は、ギアボックス42の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の左排出通路45Lに設けられた左刈刃(図示省略)に伝動される。
【0024】
ギアボックス42には、左右方向に延在する連結部材43が連結され、連結部材43の右部はギアボックス44に連結されている。ギアボックス44に伝動された出力回転は、ギアボックス44の上下方向に延在して形成された出力軸を介して作業機4の右排出通路45Rに設けられた右刈刃(図示省略)に伝動される。なお、ギアボックス42の出力軸とギアボックス44の出力軸の出力回転の回転速度は同一速度であり、回転方向は逆方向、すなわち、平面視において、ギアボックス42出力軸は時計方向に回転し、ギアボックス44の出力軸は反時計方向に回転する。
【0025】
左排出通路45Lと右排出通路45Rの搬出口は、刈取られた芝等を集草容器7に搬送するシュータ46の搬入口に連結されている。シュータ46の搬出口は集草容器7の搬入口に連結されている。
【0026】
平面視において、シュータ46の前部は自在継手41の右側に設けられ、シュータ46の後部はギアボックス31の右側に設けられ、背面視において、シュータ46と集草容器7は、ギアボックス31と右側の後輪3の間に設けられている。これにより、自在継手41とギアボックス31の右側に形成される空間に大きなシュータ46を設けることができ、作業機4で刈取った芝等を効率良く集草容器7に搬送することができる。
【0027】
側面視において、シュータ46の上壁は後上がり傾斜に形成され、シュータ46の後部は電装部品61の下側を下方に向かって延在して設けられている。これにより、シュータ46の後部を大きくしてシュータ46の内部での芝等の詰まりを防止することができる。
【0028】
図8,9に示すように、走行車体1は、前輪2と後輪3を支持する車体フレーム10と、ステアリングシャフト63を支持するステアリングポスト11から形成されている。
【0029】
車体フレーム10には、前後方向に延在する左前後フレーム10Lと右前後フレーム10Rが形成され、ステアリングポスト11の下部には、前方に延出する左連結部11Lと右連結部11Rが形成されている。
【0030】
左前後フレーム10Lに左連結部11Lがボルト等の締結手段によって固定され、右前後フレーム10Rに右連結部11Rがボルト等の締結手段によって固定されて一体となり走行車体1を形成している。
【0031】
左前後フレーム10Lの前部には左支持部材12Lが設けられ、左支持部材12Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右前後フレーム10Rの前部には右支持部材12Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材12Lと右支持部材12Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0032】
左連結部11Lの前部には左支持部材13Lが設けられ、左支持部材13Lの連結部は左上がり傾斜に形成されている。また、右連結部11Rの前部には右支持部材13Rが設けられ、右支持部材12Rの連結部は右上がり傾斜に形成されている。なお、左支持部材13Lと右支持部材13Rはチャンネル鋼材で形成されている。
【0033】
ステアリングポスト11の下部には、左右方向に所定の間隔を隔てて前側に突出する突出部14が形成され、突出部14の先端にはゴム部材等から形成された緩衝部材15が設けられている。
【0034】
図10に示すように、ボンネット部5内に設けられるバッテリ50の下部は、バッテリブラケット52の内周部に内嵌されている。バッテリ50は、複数のエネルギ密度が高いリチウムイオンバッテリを直列と並列に接続して形成されている。これにより、ボンネット部5に形成された空間を有効活用できる。また、リチウムイオンバッテリはエネルギ密度が高いので、一回のフル充電によって作業車両を長距離走行させることができる。
【0035】
図11に示すように、バッテリブラケット52は、前後方向に延在する左前後フレーム52L及び右前後フレーム52Rと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの前部を連結する前左右フレーム52Aと、左前後フレーム52Lと右前後フレーム52Rの後部を連結する後左右フレーム52Bで形成されている。なお、左前後フレーム52L及と右前後フレーム52Rはアングル鋼材で形成され、前左右フレーム52Aと後左右フレーム52Bはチャンネル鋼材で形成されている。
【0036】
左前後フレーム52Lの連結部は左上がり傾斜に形成され、右前後フレーム52Rの連結部は左上がり傾斜に形成されている。なお、背面視において、左支持部材13Lの連結部、左支持部材12Lの連結部、及び左前後フレーム52Lの連結部の左上がり傾斜は同一傾斜角度に形成され、右支持部材13Rの連結部、右支持部材12Rの連結部、及び右前後フレーム52Rの連結部の右上がり傾斜は同一傾斜角度に形成されている。
【0037】
左前後フレーム52Lの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の左防振部材53Lが設けられ、右前後フレーム52Rの連結部の下面には、前後方向に所定の間隔を隔てて丸形の右防振部材53Rが設けられている。
【0038】
左前後フレーム52Lは、左防振部材53Lを介して左前後フレーム10Lの左支持部材12Lと左連結部11Lの左支持部材13Lに連結され、右前後フレーム52Rは、右防振部材53Rを介して右前後フレーム10Rの右支持部材12Rと右連結部11Rの右支持部材13Rに連結される。これにより、作業車両の走行時に発生する走行車体本体10の振動がバッテリ50に伝わるのを抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0039】
図12に示すように、左前後フレーム52Lの連結部は、左防振部材53Lの中心と左側の左前輪2Lの中心を結ぶ左仮想線55Lに対して直交して設けられている。また、右前後フレーム52Rの連結部は、右防振部材53Rの中心と右側の右前輪2Rの中心を結ぶ右仮想線55Rに対して直交して設けられている。これにより、前輪2と後輪3を介して走行面の凹凸に起因する大きな振動を抑制して、バッテリ50の破損等を防止することができる。
【0040】
図2,3,14に示すように、操縦席60の前側にはステアリングハンドル62が設けられ、ステアリングハンドル62は上下方向に延在するステアリングシャフト63の上部に支持されている。
【0041】
操縦席60の左側の左フェンダ64Lには、シュータ46の内部に残った刈草を後側の集草容器7へ搬送等を操作するクリーナレバー65が設けられ、操縦席60の右側のフェンダ64Rには、作業機4の昇降を操作する操作レバー66が設けられている。また、操縦時に操縦者が足を載せるフロア67の左前部には、後述のブレーキペダル68が設けられ、右前部には、前進用アクセルペダル70と後進用アクセルペダル71が並設されている。
【0042】
作業機4のシュータ46と操縦席60の間に形成された空間に設けられた電装部品61は、バッテリ50から供給される直流電圧を交流電圧に変換して電動機30等を操作する3相交流電圧波形を生成するインバータ装置80と、バッテリ50の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視するバッテリ監視装置81と、操縦席60の前側に設けられた走行速度等を表示するメータパネルに供給する電池を蓄電する鉛蓄電池等の補助バッテリ82と、バッテリ50から供給される直流電圧をクリーナレバー65等の操作位置を検出するセンサに供給する直流電圧に変更するコンバータ装置83から形成されている。
【0043】
インバータ装置80は、電動機30を操作するインバータ装置84と電動機40を操作するインバータ装置85から形成されている。また、インバータ装置84には、回生ブレーキの作動時、すなわち、前進用アクセルペダル70又は後進用アクセルペダル71が解放されて走行車体1の慣性力よって出力軸30Aが回転して電動機30が発電機として作動する場合には、電動機30からインバータ装置80に供給された電力をバッテリ50に充電する充電装置としての機能も兼ね備えている。
【0044】
同様に、PTOがOFFに切り換わると、前記の左刈刃及び右刈刃の慣性力によって出力軸40Aが回転して電動機40が発電機として作動するが、この場合においても作業機4を停止すべく回生ブレーキが作動し、インバータ装置85には、電動機40からインバータ装置80に供給された電力をバッテリ50に充電する充電装置として機能する。
【0045】
平面視において、操縦席60の下側の前部にインバータ装置80が設けられ、インバータ装置80の後側にバッテリ監視装置81が設けられている。また、インバータ装置80の左側に補助バッテリ82が設けられ、バッテリ監視装置81の左側で補助バッテリ82の後側にコンバータ装置83が設けられている。これにより、操縦席60の下側に形成された空間を有効に活用することができる。また、重量が重いバッテリ監視装置81を後側に設けることにより、走行車体本体10の前部と後部に加わる重量の相違を抑制して走行安定性能を高めることができる。
【0046】
前記バッテリ監視装置81には残量を監視できる手段を備え、残量が所定未満に達すると先ず作業機用電動機40への駆動指令を停止する。これによって走行用電動機30のみの出力となって作業は中断するがバッテリ充電作業のための移動に支障がないものとなる。
【0047】
図8において、左前後フレーム10Lの後部には上方に延在する左上下フレーム20Lが設けられ、右前後フレーム10Rの後部には上方に延在する右上下フレーム20Rが設けられ、左上下フレーム20Lと右上下フレーム20Rの上部は左右方向に延在する左右フレーム21に連結されている。
【0048】
左右フレーム21の左部には安全フレーム8の左支柱部8Lの下部が連結される左連結部22Lが設けられ、左右フレーム21の右部には安全フレーム8の右支柱部8Rの下部が連結される右連結部22Rが設けられている。
【0049】
前記左上下フレーム20L、右上下フレーム20R及び左右フレーム21により構成されるフレーム構造枠は集草容器7の支持フレーム25を構成している。この支持フレーム25に、集草容器7を連結する。すなわち、集草容器7の前上部の支点ピン7Pをもって該支点ピン7P回りに上下回動自在に連結される。もって
図1に示すように、集草容器7は前面が前記支持フレーム25に囲われる遮蔽板部(図示せず)に接当する作業姿勢と、集草容器7後部が上方に跳ね上げ状態の刈草放出姿勢とに姿勢変更できる。集草容器7の右側には公知の回動ハンドル7Lを備えて上端の把持部をつかんで前方に倒すと非作業姿勢の前記刈草放出姿勢に変更できる。この場合には収容された芝草を前面の解放部から地面に排出する。
【0050】
次いで、バッテリ50(以下メインバッテリ50)の冷却構成について説明する。メインバッテリ50の周囲には、冷却装置90が設けられる。図例ではラジエータ91,第1冷却ファン92,冷却水経路93,第2冷却ファン94を配設している。したがって、第1冷却ファン92は、ラジエータ91内に循環する冷却液を通風冷却し、冷却水経路93をメインバッテリ50周囲に配設することにより水冷冷却装置90aを構成している。なお、冷却装置90としては、第1冷却ファン92による空冷形態としてもよく、この場合にはメインバッテリ50の後下部に配置する第2冷却ファン94を配置することにより両ファン92,94が相まって空冷効果を向上できる(空冷冷却装置90b)。このようにメインバッテリ50の冷却装置90として水冷冷却装置90aと空冷冷却装置90bの両方又はいずれか一方を構成するものである。
【0051】
ところで、前記のように、バッテリ監視装置81によりメインバッテリ50の温度、充電状態、電圧保護、各セル短絡状態を監視している。温度を検知する温度センサ95の検出値Tは、制御部Cに出力され、予め設定された第1設定温度t1、第2設定温度t2(t1>t2)と対比しながら、作業継続か否かを判断するとともに、冷却装置90の運転の要否を判定する構成である。なお、温度センサ95は、例えばメインバッテリ50上部又は側面に搭載されていてメインバッテリ50の温度を測定するものである。
【0052】
図16において、走行車体1のキースイッチをONして電動機30(以下走行用電動機30),電動機40(以下、作業機用電動機40)を駆動して作業開始する(S101,S102)。温度センサ95の検出値が制御部Cに入力され、第1設定温度t1と第2設定温度t2と対比される(S103,S104)。
【0053】
まず設定温度の低い第2設定温度t2と比較され(S105)、検出値Tが第2設定温度t2よりも低い場合にはメインバッテリ50の上昇温度は正常範囲内と判断され、走行用電動機30及び作業機用電動機40への給電が継続され作業は継続される(S106)。
【0054】
ステップ105で検出値Tが第2設定温度t2以上と判定されると、引き続き第1設定温度t1と比較される(S107)。上記S107で検出値Tが第1設定温度t1以下と判定されると、出力を低下して作業継続する旨の警報出力し(S108)、制御部Cは作業機用電動機40に対して所定回転低下出力するとともに走行用電動機30に対して所定に減速された走行状態とすべく減速出力する(S109,S110)。あわせてバッテリ冷却装置90に対して運転出力する(S111)。このS109,S110によって、走行車体1は低速となりかつ作業機回転は低下するが、作業は継続することができる。
【0055】
前記S107で検出値Tが第1設定温度t1よりも高い場合には、走行車体1及び作業機4の緊急停止の旨の警報が出力される(S112)。作業機用電動機40及び走行用電動機30に対して停止出力される(S113,S114)。そしてバッテリ冷却装置90に対して運転出力する(S115)。このS113,S114によって、走行車体1は停止しかつ作業機回転も停止して、作業は停止される。
【0056】
S107での高温側の第1設定温度t1との対比の結果、S109~S111の電力消費の少ない状況での省エネルギ運転を継続し、又はS113~S115の強制停止とすることとなるが、未だ未処理の作業区域を残しており、作業中断をするか否かを判定し(S116)、作業中断しない場合は、S103に戻って改めてバッテリ冷却の手順を繰り返すもので、S105で検出値Tが第2設定温度t2以下に回復すると作業は再開される(S106)。ここで作業再開とは、上記省エネルギ運転や強制停止の状態から当初の条件に戻って作業を行うものである。一方S116で作業中断とされるとキースイッチをオフして終了となる。
【0057】
前記警報出力のうち、S108,S112においては、両者緊急性を異ならせるため、メータパネルにバッテリ温度上昇及びバッテリ高温警告を知らせるシンボルを点滅させたり点灯させるなど表示方法や表示色を異ならせて警告する構成としている。
【0058】
前記S111及びS115におけるバッテリ冷却装置90の作動について、前記のように水冷冷却装置90aと空冷冷却装置90bの両方又はいずれか一方を備えて駆動出力する構成とするが、空冷冷却装置90bとする場合には、第1冷却ファン92及び第2冷却ファン94を駆動出力するが、これらの冷却ファン92,94への給電は前記補助バッテリ82によって行う構成である。このように構成すると、空冷冷却装置90bを採用する場合には速やかに冷却ファン92,94を駆動でき速やかにメインバッテリ50を冷却できる効果がある。 次いで、集草容器7A(以下、コレクタ7A)の異なる構成について説明する。
【0059】
コレクタ7Aは、コレクタ7Aの後面および上面が一体となって構成された蓋部141を備える。蓋部141は、コレクタ7Aのダンプと連動して、コレクタ7Aの本体から離れて、コレクタ7Aの後部を広く開放するように構成される(
図17(B))。
【0060】
また、コレクタ7Aは所謂ハイダンプコレクタと称されるもので、安全フレーム8の上部には、後方へと延伸している平行リンクアーム142,142が、上下に並んで回動可能に支持される。リンクアーム142,142は、その先端部同士が上下方向のダンプ用フレーム143と接続されて左右一対の4辺リンク機構が構成される。
【0061】
コレクタ昇降シリンダ152は、コレクタ7Aを昇降駆動する油圧シリンダであり、下側のリンクアーム142と安全フレーム8の下端部との間に配設される。ダンプシリンダ153は、コレクタ7Aをダンプ駆動する油圧シリンダであり、コレクタ7Aとダンプ用フレーム143との間に配設される。なお、コレクタ7Aは、ダンプ用フレーム143に設けられた左右方向の回動軸144に回動可能に取り付けられる。したがって、コレクタ昇降シリンダ152のロッドを伸長させると、リンクアーム142が上方へと回動してコレクタ7Aを上昇させ、コレクタ昇降シリンダ152のロッドを短縮させると、リンクアーム142が下方へと回動してコレクタ7Aを下降させる。また、ダンプシリンダ153のロッドを伸長させると、コレクタ7Aが回動軸144を中心に略水平状態から後方へと回動してダンプ状態となり、ダンプシリンダ153のロッドを短縮させると、コレクタ7Aがダンプ状態から略水平状態へと復帰する。
【0062】
上記コレクタ7Aを予め設定した中間高さ以上に上昇したこと検知するコレクタ上昇検知センサ101を設け、前記ステアリングハンドル62の切角を検知するハンドル切角センサ102を設ける。コレクタ7Aの所定高さ以上の上昇とステアリングハンドル62の全角度切りの両方を検出した場合、前後進のペダル70,71を踏んでも走行用電動機30に出力しないように制御する。このように構成すると、走行車体1転倒の危険を回避できる。
【0063】
また、ステアリングハンドル62の所定以上の切角を検出した状態で走行中、コレクタ7Aの上昇出力を検出した場合に、制御部Cは走行用電動機30に対し徐々に減速すべく出力し、ゆっくり停車させるよう構成する。このように構成すると、走行車体1転倒の危険を回避できる。なお、車速センサ103を備え、所定速度以下であるか否かに基づいて上記減速及び停止出力の要否を判定する構成としてもよい。所定安全速度の場合には通常の作業を継続でき作業効率を向上する。
【符号の説明】
【0064】
1 走行車体
3 後輪(駆動輪)
4 作業機
30 走行用電動機
40 作業機用電動機
50 メインバッテリ
82 補助バッテリ
90 バッテリ冷却装置
92 第1冷却ファン(冷却ファン)
94 第2冷却ファン(冷却ファン)
95 温度センサ
C 制御部
t1 第1設定温度
t2 第2設定温度
T 検出値