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特開2024-88360可視煙判定装置、プログラム、可視煙判定システム及び可視煙判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088360
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】可視煙判定装置、プログラム、可視煙判定システム及び可視煙判定方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20240625BHJP
【FI】
G06T7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203490
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健一
(72)【発明者】
【氏名】辻 典宏
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA03
5L096FA32
5L096FA52
5L096GA40
5L096GA51
(57)【要約】
【課題】画像解析により監視対象の設備から可視煙が発生しているか否かを判定することに加え、可視煙がどのような色の可視煙かも判定する。
【解決手段】可視煙判定装置は、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、前記可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、
前記可視煙が発生していると判定された前記可視煙判定領域について、前記可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、
前記可視煙色指標値に基づいて、前記可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、
を備える、可視煙判定装置。
【請求項2】
前記可視煙色指標値算出部は、前記可視煙色指標値として、可視煙の色の判定基準となる基準色の可視煙に対応する基準色指標値、及び、発生を監視したい可視煙の色として少なくとも1つの監視色にそれぞれ対応する少なくとも1つの監視色指標値を算出し、
前記可視煙色判定部は、前記基準色指標値及び前記監視色指標値に基づいて、前記可視煙の色を判定する、請求項1に記載の可視煙判定装置。
【請求項3】
前記可視煙の基準色は、発生頻度が最も高い可視煙の色とし、
前記可視煙の監視色は、発生頻度が2番目に高い可視煙の色、または、再発防止措置の優先度の高い可視煙の色のうち、少なくともいずれか1つを含む、請求項2に記載の可視煙判定装置。
【請求項4】
前記可視煙色判定部は、
前記監視色それぞれに対して、前記監視色指標値と前記基準色指標値との差分に基づいて評価値を算出し、
すべての前記評価値が、前記基準色の可視煙を判定するために設定された閾値より小さいとき、前記可視煙の色は前記基準色であると判定する、請求項2に記載の可視煙判定装置。
【請求項5】
前記可視煙色判定部は、少なくとも1つの前記評価値が前記閾値以上であるとき、前記可視煙の色は前記評価値が最大の前記監視色指標値に対応する監視色であると判定する、請求項4に記載の可視煙判定装置。
【請求項6】
前記閾値を設定する閾値設定部を備え、
前記閾値設定部は、過去の所定期間内に撮像された複数の撮像画像を用いて、
前記可視煙色判定部が前記基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で前記基準色と確認し、かつ、前記可視煙色判定部が前記基準色の可視煙と判定した数と、人が目視で前記基準色と確認した可視煙の数との比率で定められる比率1を、所定の比率以上とする、
前記可視煙色判定部が前記基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で前記基準色と確認し、かつ、前記可視煙色判定部が前記基準色の可視煙と判定した数と、前記可視煙色判定部が前記基準色の可視煙と判定した数の比率で定められる比率2を、所定の比率以上とする、または、
前記比率1と前記比率2との調和平均値を最大とする、
のいずれかにより、前記閾値を設定する、請求項4に記載の可視煙判定装置。
【請求項7】
前記撮像画像内には、複数の可視煙判定領域が設定されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の可視煙判定装置。
【請求項8】
前記撮像画像は256階調のRGB表色系画像であり、
前記可視煙色指標値算出部は、画素の赤成分、緑成分及び青成分により表される関数を用いて、前記各画素の画素情報を算出する、請求項1~6のいずれか1項に記載の可視煙判定装置。
【請求項9】
前記可視煙色判定部が判定した前記可視煙の色に基づいて、前記可視煙の色に対応付けられた1または複数の設備を可視煙発生設備として判定する可視煙発生設備判定部を備える、請求項1~6のいずれか1項に記載の可視煙判定装置。
【請求項10】
発報装置に対して可視煙発生の報知を指示する報知指示部を備え、
前記報知指示部は、前記可視煙発生判定部により可視煙が発生していると判定された前記可視煙判定領域と、前記可視煙色判定部により判定された前記可視煙の色とを、前記発報装置へ出力する、請求項1~6のいずれか1項に記載の可視煙判定装置。
【請求項11】
前記監視対象の設備はコークス炉または焼結機のうち少なくともいずれか1つである、請求項1~6のいずれか1項に記載の可視煙判定装置。
【請求項12】
コンピュータを、
可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、前記可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、
前記可視煙が発生していると判定された前記可視煙判定領域について、前記可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、
前記可視煙色指標値に基づいて、前記可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、
を備える、可視煙判定装置として機能させるプログラム。
【請求項13】
可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して撮像画像を取得する撮像装置と、
前記撮像画像に基づいて、前記監視対象の設備から可視煙が発生していることを判定する可視煙判定装置と、
を有し、
前記可視煙判定装置は、
前記撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、前記可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、
前記可視煙が発生していると判定された前記可視煙判定領域について、前記可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、
前記可視煙色指標値に基づいて、前記可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、
を備える、可視煙判定システム。
【請求項14】
可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、前記可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定ステップと、
前記可視煙が発生していると判定された前記可視煙判定領域について、前記可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出ステップと、
前記可視煙色指標値に基づいて、前記可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定ステップと、
を含む、可視煙判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視煙判定装置、プログラム、可視煙判定システム及び可視煙判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所では、大気環境の保全対策の一環として、コークス炉や焼結機等の設備から排出される排ガスに対して排出基準値や遵守値を満たすように処理を施してから排出している。そのうえ、自然調和の観点や地域住民の要望に応えるべく、可視煙の発生を抑制するための操業が行われている。しかし、例えば、何らかの原因でコークス炉においてコークスの燃焼不良が生じると、コークスの押し出し時に黒煙が発生することがある。そこで、このような事象をただちに確認して、速やか再発を防止するための措置を行うことが重要である。
【0003】
そこで、監視対象である設備を被写体として撮像した撮像画像を自動的に画像解析して、可視煙の発生を判定する取り組みが行われている。監視映像に画像解析技術を適用して煙を検知する方法として、例えば特許文献1には、日照、降雨等で変化する変動画像を画素分解し、数枚の画像の画素をそれぞれに移動平均した標準画像を原画像として、リアルタイムの変動画像を画素毎に差演算して、背景部を構成する不変画像部分を除去し、変動画像部分から成る発塵発煙画像の面積及び輝度差が一定の設定値を超えると警報を発する手段を具備した発煙又は発塵の検知装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、画像を時間経過に従って移動平均することにより得た各画素の輝度の推移を時間微分し、その時間微分して得た一次微分係数がピークを生じて、そのピーク値が一定値を超えた画素の数の割合が一定値を超えた場合に、発塵発煙画像であると推定する手段を具備した発煙又は発塵の検知装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特許文献2と同様の手段で発塵発煙画像であると推定する際に、解析対象エリアとその部分以外の部分との一次微分係数の定常時の値に対する変化率を比較し、両変化率の間の比が2倍以上の場合に発塵発煙画像であると推定する手段を具備した発煙又は発塵の検知装置が開示されている。
【0006】
特許文献4には、画像の背景領域と可視煙判定用領域との色相毎の明度差が、少なくとも1つの色相において予め設定された閾値以上のとき、撮像された煙を可視煙と判定する可視煙判定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-352077号公報
【特許文献2】特開平4-358285号公報
【特許文献3】特開平5-10738号公報
【特許文献4】特開2015-169618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、可視煙はコークス炉や焼結機等複数の設備から発生することがあり、設備毎に可視煙の色が異なる傾向にある。例えばコークス炉だと石炭やコークス等の黒色の可視煙、焼結機だと鉄鉱石の赤褐色の可視煙が発生することが多い。
【0009】
しかし、上記特許文献1~4の装置に組み込まれた可視煙検知方法は、いずれも、撮像した画像中から得られる検知指標に閾値を設定し、その設定値を超えた場合に可視煙と判定する方法であり、いずれもその可視煙がどのような色の可視煙であるかは判定していない。このため、何らかの原因で可視煙が発生し、それを可視煙と判定したとしても、その可視煙がどのような設備から発生した可視煙なのかがすぐにわからない可能性があり、再発を防止するための措置に遅れが生じる可能性もある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、画像解析により監視対象の設備から可視煙が発生しているか否かを判定することに加え、可視煙がどのような色の可視煙かも判定することの可能な、可視煙判定装置、プログラム、可視煙判定システム及び可視煙判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、を備える、可視煙判定装置が提供される。
【0012】
可視煙色指標値算出部は、可視煙色指標値として、可視煙の色の判定基準となる基準色の可視煙に対応する基準色指標値、及び、発生を監視したい可視煙の色として少なくとも1つの監視色にそれぞれ対応する少なくとも1つの監視色指標値を算出し、可視煙色判定部は、基準色指標値及び監視色指標値に基づいて、可視煙の色を判定してもよい。
【0013】
可視煙の基準色は、発生頻度が最も高い可視煙の色としてもよい。また、可視煙の監視色は、発生頻度が2番目に高い可視煙の色、または、再発防止措置の優先度の高い可視煙の色のうち、少なくともいずれか1つを含むようにしてもよい。
【0014】
可視煙色判定部は、監視色それぞれに対して、監視色指標値と基準色指標値との差分に基づいて評価値を算出し、すべての評価値が、基準色の可視煙を判定するために設定された閾値より小さいとき、可視煙の色は基準色であると判定してもよい。
【0015】
可視煙色判定部は、少なくとも1つの評価値が閾値以上であるとき、可視煙の色は評価値が最大の監視色指標値に対応する監視色であると判定してもよい。
【0016】
可視煙判定装置は、閾値を設定する閾値設定部を備えてもよい。閾値設定部は、過去の所定期間内に撮像された複数の撮像画像を用いて、可視煙色判定部が基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で基準色と確認し、かつ、可視煙色判定部が基準色の可視煙と判定した数と、人が目視で基準色と確認した可視煙の数との比率で定められる比率1を、所定の比率以上とする、可視煙色判定部が基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で基準色と確認し、かつ、可視煙色判定部が基準色の可視煙と判定した数と、可視煙色判定部が基準色の可視煙と判定した数の比率で定められる比率2を、所定の比率以上とする、または、比率1と比率2との調和平均値を最大とする、のいずれかにより、閾値を設定し得る。
【0017】
撮像画像内には、複数の可視煙判定領域が設定されていてもよい。
【0018】
撮像画像は256階調のRGB表色系画像であるとき、可視煙色指標値算出部は、画素の赤成分、緑成分及び青成分により表される関数を用いて、各画素の画素情報を算出してもよい。
【0019】
また、可視煙判定装置は、可視煙色判定部が判定した可視煙の色に基づいて、可視煙の色に対応付けられた1または複数の設備を可視煙発生設備として判定する可視煙発生設備判定部を備えてもよい。
【0020】
可視煙判定装置は、発報装置に対して可視煙発生の報知を指示する報知指示部を備えてもよい。報知指示部は、可視煙発生判定部により可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域と、可視煙色判定部により判定された可視煙の色とを、発報装置へ出力する。
【0021】
監視対象の設備はコークス炉または焼結機のうち少なくともいずれか1つであってもよい。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、を備える、可視煙判定装置として機能させるプログラムが提供される。
【0023】
さらに、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して撮像画像を取得する撮像装置と、撮像画像に基づいて、監視対象の設備から可視煙が発生していることを判定する可視煙判定装置と、を有し、可視煙判定装置は、撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定部と、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出部と、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定部と、を備える、可視煙判定システムが提供される。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像して得られた撮像画像内に設定された可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙判定領域に可視煙が発生しているか否かを判定する可視煙発生判定ステップと、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する可視煙色指標値算出ステップと、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する可視煙色判定ステップと、を含む、可視煙判定方法が提供される。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように本発明によれば、画像解析により監視対象の設備から可視煙が発生しているか否かを判定することに加え、可視煙がどのような色の可視煙かも判定することができる。可視煙の色から可視煙の成分を絞り込むことができるため、その成分を使用している設備を、可視煙が発生した設備(可視煙発生設備)の候補として絞り込むことができる。したがって、可視煙の色が報知されない場合に比べ、速やかに再発を防止するための措置を行うことができる。さらに、可視煙の色と紐づく可視煙発生設備も報知すれば、可視煙がどの設備から発生したかも可視煙発生と同時にわかるため、より速やかに再発を防止するための措置を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】可視煙発生の監視対象である設備の上空を撮像した撮像画像の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る可視煙判定装置を備える可視煙判定システムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図3】可視煙判定領域及び背景領域の設定の一例を示す模式図である。
図4】同実施形態に係る可視煙判定方法を示すフローチャートである。
図5】同実施形態に係る可視煙判定装置として機能する情報処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図6】実施例のケース1における、各可視煙色指標値の推移と、監視色についての評価値の推移とを示すグラフである。
図7】実施例のケース2における、各可視煙色指標値の推移と、監視色についての評価値の推移とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
[1.概要]
まず、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る可視煙判定装置による可視煙判定の概要を説明する。図1は、可視煙発生の監視対象である設備の上空を撮像した撮像画像の一例を示す模式図である。
【0029】
本実施形態に係る可視煙判定装置は、可視煙発生の監視対象である設備の上空を撮像した撮像画像において、可視煙の発生の有無を判定するとともに、発生した可視煙の色を判定する。
【0030】
撮像画像は、可視煙発生の監視対象である設備の方向(設備またはその設備の上方など)を撮像して得られた画像である。例えば図1に示す撮像画像10は、様々な監視対象の設備5を備える工場を遠方から撮像した画像であり、樹木7の奥にある監視対象の設備5(複数の煙突3を含む)と、その上空とが写っている。撮像画像10においては直接視認できないが、樹木7に隠れている監視対象の設備5も複数存在する。工場内の監視対象の設備5から可視煙が発生すると、図1に示すように、撮像画像10には可視煙9も写る。なお、図1に示す可視煙9は、樹木7に隠れている監視対象の設備5から発生した煙の例を示している。
【0031】
ここで、可視煙の色は、可視煙が発生している設備によって異なる傾向がある。例えば製鉄所においては、石炭系あるいはコークス系の材料を取り扱う設備からは黒っぽい煙が発生し、焼結機からは赤っぽい煙が発生する。このような設備と発生する可視煙の色との関係から、可視煙判定装置にて可視煙の発生を検出した際に、可視煙の色を判定して特定することで、可視煙が発生している設備を特定することが可能となる。その結果、図1に示すように、監視対象の設備5が樹木7に隠れていても、検出された可視煙9の色に基づき、可視煙9が発生している設備5を即座に特定することができる。
【0032】
以下、本実施形態に係る可視煙判定手法について詳細に説明する。
【0033】
[2.可視煙判定システム]
まず、図2に基づいて、本実施形態に係る可視煙判定装置100を備える可視煙判定システム1について説明する。図2は、本実施形態に係る可視煙判定装置100を備える可視煙判定システム1の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0034】
可視煙判定システム1は、図4に示すように、撮像装置50と、可視煙判定装置100と、発報装置200とにより構成される。また、可視煙判定システム1は、情報処理端末300が可視煙判定装置100と情報を送受信可能に構成されてもよい。
【0035】
[2-1.撮像装置]
撮像装置50は、可視煙発生の監視対象である設備の方向を撮像する。なお、撮像装置50の撮像範囲には、必ずしも監視対象の設備が含まれていなくともよく、監視対象の設備から可視煙が発生した場合に可視煙が現れる領域(例えば、設備の上方)が含まれていればよい。すなわち、撮像画像には、監視対象の設備が目視にて確認できるように写っている必要はなく、設備から発生した可視煙が写っていればよい。撮像装置50の撮像範囲には、1つの監視対象の設備のみを含んでもよく、複数の監視対象の設備を含んでもよい。
【0036】
撮像装置50は、撮像範囲を連続して撮像し、撮像画像を取得する。撮像装置50は、例えば、動画として撮像範囲を撮像してもよい。この場合、動画の各フレームが、可視煙判定装置100によって画像処理される撮像画像となる。あるいは、撮像装置50は、所定の間隔で連続して撮像範囲を撮像してもよい。例えば、撮像装置50は、3秒毎に1枚の静止画像を取得してもよい。撮像装置50は、カラー画像を取得するカラーカメラである。撮像装置50の撮像画像は、可視煙判定装置100へ出力される。
【0037】
[2-2.可視煙判定装置]
可視煙判定装置100は、撮像装置50の撮像画像を画像処理して、監視対象である設備から可視煙が発生しているか否かを判定する。可視煙判定装置100は、領域設定部110と、可視煙発生判定部120と、可視煙色指標算出部130と、可視煙色判定部140と、閾値設定部150と、報知指示部160と、可視煙発生設備判定部170と、記憶部180とを有する。
【0038】
(領域設定部)
領域設定部110は、撮像画像内に可視煙判定領域を設定する。可視煙判定領域は、撮像画像中において監視対象の設備から可視煙が発生しているか否かを判定する範囲を規定した領域である。領域設定部110は、撮像画像中に少なくとも1つの可視煙判定領域を設定する。例えば、領域設定部110は、監視対象の設備毎、設備間、または設備上方に可視煙判定領域を設定してもよく、撮像画像の全体を可視煙判定領域に設定してもよい。例えば、領域設定部110は、図3に示すように、撮像画像10中の、監視対象の設備5(煙突3を含む)の間、及び、上方に可視煙判定領域A~Mを設定してもよい。監視対象の設備5がコークス炉であるとき、可視煙判定領域は、例えばコークス炉設備の上方に設定される。可視煙判定領域は、図3では矩形領域であるが、本発明は係る例に限定されず、他の形状であってもよい。また、複数の可視煙判定領域を設定する場合、各可視煙判定領域の形状及びサイズは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
また、領域設定部110は、撮像画像内に背景領域Xをさらに設定してもよい。背景領域Xは、監視対象の設備から可視煙が発生した場合であっても発生した可視煙により領域全体が覆われることがない領域である。可視煙判定装置100の可視煙発生の判定精度を高めるため、背景領域Xは、可視煙判定領域よりも広い領域であることが望ましい。例えば、領域設定部110は、図3に示すように、撮像画像10中の可視煙判定領域A~Mの上方に、背景領域Xを設定してもよい。
【0040】
可視煙判定領域A~M及び背景領域Xの形状、サイズ、位置及び個数は、過去に取得された撮像画像において可視煙が現れた位置に基づいて経験的に設定される。例えば、領域設定部110は、必ずしも設備5(煙突3を含む)の上方に可視煙判定領域を設定する必要はなく、過去の所定期間内に撮像された複数の撮像画像に基づいて、監視対象の設備から発生した可視煙が撮像された実績のある領域を可視煙判定領域として設定し、可視煙により全体が覆われることのなかった領域を背景領域として設定してもよい。
【0041】
領域設定部110は、撮像画像内に可視煙判定領域を設定すると、可視煙発生判定部120及び可視煙色指標値算出部140に対して、撮像画像内に設定した領域に関する情報(撮像画像内における各領域の位置情報)を出力する。
【0042】
(可視煙発生判定部)
可視煙発生判定部120は、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙が発生しているか否かを判定する。画素情報は、例えば、輝度または明度を表す情報である。可視煙発生判定部120は、周知の可視煙判定手法を用いて、可視煙の発生を判定すればよい。例えば、可視煙発生判定部120は、可視煙発生の指標として、空間的な輝度、明度、あるいはそれらの時間変化によって表される指標値を用い、当該指標値が基準値を超えたことにより可視煙の発生を判定してもよい。可視煙発生判定部120は、各可視煙判定領域について可視煙が発生しているか否かを判定し、可視煙が発生していると判定した可視煙判定領域を、可視煙色判定部140及び報知指示部160へ出力する。
【0043】
(可視煙色指標値算出部)
可視煙色指標算出部130は、可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する。可視煙色指標算出部130は、少なくとも可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について可視煙色指標値を算出すればよいが、可視煙発生の有無によらず、設定されているすべての可視煙判定領域について可視煙色指標値を算出してもよい。
【0044】
可視煙色指標値の算出に用いる画素情報は、例えば、輝度または明度を表す情報である。画素情報として輝度値または明度のいずれを用いるかは、検出したい煙の色味等の特徴に応じて決定すればよい。例えば、可視煙色指標算出部130は、RGB画素情報として得られる赤、青、緑の成分値の割合に基づいて、可視煙色指標値を算出してもよい。具体的には、例えば、可視煙の少なくとも2つ以上の色毎に、赤、青、緑の成分値に異なる割合(係数)をかけて総和した値を可視煙色指標値としてもよい。
【0045】
本実施形態では、撮像装置50により取得される撮像画像はカラー画像であることから、可視煙色指標算出部130は、画素の赤成分、緑成分及び青成分により表される関数を用いて各画素の画素情報を算出する。そして、可視煙色指標算出部130は、算出した画素情報に基づいて、可視煙色指標値として、基準色の可視煙に対応する基準色指標値、及び、少なくとも1つの監視色にそれぞれ対応する少なくとも1つの監視色指標値を算出する。
【0046】
ここで、基準色及び少なくとも1つの監視色は、それぞれ可視煙を色別に区別するために設定される色である。基準色は、可視煙の色の判定基準となる色として設定される。また、監視色は、発生を監視したい可視煙の色である。監視色は、基準色とは異なる色であり、かつ、基準色とは区別したい色が設定される。基準色は、最も発生頻度が高い可視煙の色が好ましい。また、監視色は、発生頻度が2番目に高い色、または、発生頻度が低くても他の色の可視煙に比べて再発防止措置の優先度の高い可視煙の色、等が好ましい。
【0047】
可視煙色指標算出部130は、撮像画像内に設定された領域内の各画素の画素情報に基づき、まず、基準色指標値を算出する。基準色指標値は、基準色の色味の程度を表す指標として算出される。監視色は、可視煙が発生する設備との関連性が高く、その色によって可視煙の発生元の設備を特定し得る色とする。例えば、製鉄所で発生する可視煙を監視する場合、コークス炉との関連性の高い黒色を基準色とすればよい。このとき、基準色指標値は、領域内の画素をグレースケール化して表された画素情報によって算出される。例えば、撮像画像が256階調のRGB表色系画像であるとき、グレースケール化した画素情報として、各画素の輝度値及び明度値が、画素の赤成分、緑成分及び青成分により表される関数を用いて、以下のように表し得る。
【0048】
輝度値
=赤成分×0.21+緑成分×0.72+青成分×0.07
明度値
={(max(赤成分,緑成分,青成分))+(min(赤成分,緑成分,青成分))}/2
【0049】
可視煙色指標算出部130は、上述のグレースケール化した画素情報を用いて、基準色指標値として、撮像画像内に設定された各領域について、領域のグレースケール化した画素情報を代表する代表画素情報を生成してもよい。代表画素情報は、領域内の各画素の画素情報の特徴を表す代表的な画素情報である。輝度値が画素情報であるとき、代表画素情報は、例えば、領域内の各画素の輝度値の総和を当該領域内の画素数で割った値(すなわち、平均輝度値)としてもよい。また、明度が画素情報であるとき、代表画素情報は、例えば、領域内の各画素の明度の総和を当該領域内の画素数で割った値(すなわち、平均明度値)としてもよい。
【0050】
また、可視煙色指標算出部130は、撮像画像内に設定された領域内の各画素の画素情報に基づき、監視色指標値を算出する。監視色指標値は、監視色の色味の程度を表す指標として算出される。監視色は、可視煙が発生する設備との関連性が高く、その色によって可視煙の発生元の設備を特定し得る色とする。例えば、製鉄所で発生する可視煙を監視する場合、焼結機との関連性の高い赤色等を監視色とすればよい。監視色は、1または複数設定される。
【0051】
例えば、基準色が黒色であり、赤色を監視色とする場合、可視煙色指標算出部130は、撮像画像内に設定された各領域について、画素の赤成分を用いて、黒色に対する赤色の程度を表す画像情報(以下、「赤色画素情報」ともいう。)を算出する。すなわち、例えば輝度値が画素情報であるとき、赤色画像情報は、画素の赤成分で表される関数を用いて、以下のように表し得る。
【0052】
赤色画素情報(輝度)=赤成分×1.00+緑成分×0.00+青成分×0.00
【0053】
可視煙色指標算出部130は、赤色画素情報を用いて、撮像画像内に設定された領域内の各画素の赤色画素情報に基づき、当該領域の赤色画素情報を代表する代表赤色画素情報を生成する。例えば、可視煙色指標算出部130は、領域内の各画素の赤色画素情報の総和を当該領域内の画素数で割った値(すなわち、平均値)を、代表赤色画素情報として求める。可視煙色指標算出部130は、代表赤色画素情報を、赤色の可視煙の色指標値(以下、「監視色指標値A」ともいう。)としてもよい。
【0054】
また、例えば、基準色が黒色であり、黄色を監視色とする場合、可視煙色指標算出部130は、撮像画像内に設定された各領域について、画素の赤成分及び緑成分を用いて、黒色に対する黄色の程度を表す画像情報(以下、「黄色画素情報」ともいう。)を算出する。すなわち、例えば輝度値が画素情報であるとき、黄色画像情報は、画素の赤成分及び緑成分で表される関数を用いて、以下のように表し得る。
【0055】
黄色画素情報(輝度)=赤成分×0.50+緑成分×0.50+青成分×0.00
【0056】
可視煙色指標算出部130は、黄色画素情報を用いて、撮像画像内に設定された領域内の各画素の黄色画素情報に基づき、当該領域の黄色画素情報を代表する代表黄色画素情報を生成する。例えば、可視煙色指標算出部130は、領域内の各画素の黄色画素情報の総和を当該領域内の画素数で割った値(すなわち、平均値)を、代表黄色画素情報として求める。可視煙色指標算出部130は、代表黄色画素情報を、黄色の可視煙の色指標値(以下、「監視色指標値B」ともいう。)としてもよい。
【0057】
可視煙色指標算出部130は、算出した基準色指標値及び監視色指標値を、可視煙色判定部140へ出力する。
【0058】
(可視煙色判定部)
可視煙色判定部140は、可視煙色指標値に基づいて、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定する。可視煙色判定部140は、まず、監視色それぞれに対して、監視色指標値と基準色指標値との差分に基づいて評価値を算出する。例えば、可視煙色判定部140は、監視色指標値それぞれについて、基準色指標値との差分の絶対値を評価値として算出してもよい。例えば、赤色及び黄色が監視色として設定されているとき、可視煙色判定部140は、赤色の監視色指標値Aと基準色指標値との差分の絶対値を赤色の評価値Aとして算出し、黄色の監視色指標値Bと基準色指標値との差分の絶対値を黄色の評価値Bとして算出する。すなわち、可視煙色判定部140は、監視色iについて、下記式(1)に基づき評価値iを算出する。なお、iは監視色の種類を表し、i=A,B,C,・・・とする。例えば、Aは赤色、Bは黄色、に対応する。
【0059】
評価値i=|基準色指標値-監視色指標値i| ・・・(1)
(i=A,B,C,・・・)
【0060】
また、例えば、可視煙色判定部140は、監視色それぞれに対して、監視色指標値と基準色指標値との差分を評価値として算出してもよい。例えば、赤色及び黄色が監視色として設定されているとき、可視煙色判定部140は、赤色の監視色指標値Aと基準色指標値との差分を赤色の評価値Aとして算出し、黄色の監視色指標値Bと基準色指標値との差分を黄色の評価値Bとして算出する。すなわち、可視煙色判定部140は、監視色iについて、下記式に基づき評価値iを算出する。なお、iは監視色の種類を表し、i=A,B,C,・・・とする。例えば、Aは赤色、Bは黄色、に対応する。
【0061】
評価値i=監視色指標値-基準色指標値i ・・・(2)
(i=A,B,C,・・・)
【0062】
可視煙色判定部140は、すべての監視色について評価値を算出すると、まず、これらすべての評価値と、基準色の可視煙を判定するために設定された閾値とを比較する。閾値は、後述する閾値設定部150により設定される基準色指標値に関する値である。そして、可視煙色判定部140は、すべての評価値が閾値より小さいとき、可視煙の色は基準色であると判定する。一方、可視煙色判定部140は、少なくとも1つの評価値が閾値以上であるとき、可視煙の色は評価値が最大の監視色指標値に対応する監視色であると判定する。
【0063】
このように、可視煙色判定部140は、可視煙が基準色であるか否かを判定し、可視煙が基準色ではない場合には、基準色指標値から最も乖離する監視色指標値に対応する監視色の可視煙が発生しているとする。可視煙色判定部140は、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を、報知指示部160へ出力する。
【0064】
(閾値設定部)
閾値設定部150は、過去の判定結果に基づいて、基準色の可視煙を判定するための閾値を設定する。具体的には、閾値設定部150は、記憶部180に記録されている過去の基準色の可視煙の判定結果を用いて、閾値値を設定し得る。記憶部180には、過去の所定期間内に撮像された複数の撮像画像について、可視煙判定装置100により判定された各可視煙判定領域の基準色指標値の時系列データが記録されている。また、記憶部180には、これらの撮像画像について、監視者が目視にて可視煙を確認し、基準色の可視煙が発生している可視煙判定領域と発生時刻とが記録されている。
【0065】
例えば、閾値設定部150は、可視煙色判定部140が基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で基準色と確認し、かつ、可視煙色判定部140が基準色の可視煙と判定した数と、人が目視で基準色と確認した可視煙の数との比率で定められる比率1を、所定の比率以上とするように、閾値を設定してもよい。比率1は、人が目視で基準色と確認した可視煙の数を基準として設定される値であり、再現率を表す。
【0066】
また、閾値設定部150は、可視煙色判定部140が基準色と判定した可視煙に対して、人が目視で基準色と確認し、かつ、可視煙色判定部140が基準色の可視煙と判定した数と、可視煙色判定部140が基準色の可視煙と判定した数の比率で定められる比率2を、所定の比率以上とするように、閾値を設定してもよい。比率2は、可視煙色判定部140が基準色と確認した可視煙の数を基準として設定される値であり、適合率を表す。
【0067】
あるいは、閾値設定部150は、比率1と比率2との調和平均値を最大とすることにより閾値を設定してもよい。つまり、閾値設定部150は、再現率と適合率との調和平均であるF値を最大とすることにより閾値を設定する。再現率と適合率とはトレードオフの関係にあることから、その中庸となる基準値を設定したい場合には、かかる方法によって閾値を設定すればよい。
【0068】
このように、基準色指標値の閾値の設定方法は複数あり、目的に応じて使用する方法を使い分ければよい。なお、基準色指標値の閾値は、各可視煙判定領域それぞれ異なる値を設定してもよく、すべての可視煙判定領域の基準値を同一としてもよい。閾値設定部150は、基準色指標値の閾値を設定した場合には可視煙色判定部140へ出力する。また、閾値設定部150は、基準色指標値の閾値を記憶部180に記録してもよい。
【0069】
(可視煙発生設備判定部)
可視煙発生設備判定部170は、可視煙色判定部140が判定した可視煙の色に基づき、可視煙の色に対応付けられた1または複数の設備を、可視煙が発生している設備(以下、「可視煙発生設備」ともいう。)として判定してもよい。可視煙の色と設備との対応付けは、予め監視者によって設定され、例えば記憶部180に記録されている。記憶部180には、例えば、黒色(基準色)とコークス炉、赤色と焼結機、といったように、可視煙の色と設備とを対応付けた可視煙色-設備テーブルが記録されている。可視煙発生設備判定部170は、可視煙判定領域に発生している可視煙の色を判定すると、記憶部180の可視煙色-設備テーブルを参照し、当該可視煙の色に対応する設備を判定することができる。可視煙発生設備判定部170は、可視煙判定領域に発生している可視煙の色に対応する設備を判定したとき、可視煙発生設備として報知指示部160へ出力してもよい。
【0070】
(報知指示部)
報知指示部160は、発報装置200に対して可視煙発生の報知を指示する。報知指示部160は、可視煙発生判定部120により可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域と、可視煙色判定部140により判定された可視煙の色とを、発報装置200へ出力する。また、可視煙発生設備判定部170により可視煙判定領域に発生している可視煙の色に対応する設備が判定されたときには、可視煙発生及び発生している可視煙の色とともに、可視煙発生設備を発報装置200に対して出力してもよい。
【0071】
(記憶部)
記憶部180は、可視煙判定装置100にて利用する各種情報を記憶する記憶部である。記憶部180には、例えば、過去に撮像された複数の撮像画像について、可視煙判定装置100により判定された各可視煙判定領域の可視煙色指標値の時系列データや、これらの撮像画像について監視者が目視にて確認した可視煙が発生している可視煙判定領域及び発生時刻等が記録されている。また、記憶部180には、可視煙の色と設備とを対応付けた可視煙色-設備テーブルが記録されている。さらに、記憶部180には、閾値設定部150が設定した基準色指標値の閾値が記録されてもよい。
【0072】
[2-3.発報装置]
発報装置200は、可視煙判定装置100からの通知を受けて、監視対象の設備からの可視煙発生及び発生した可視煙の色を、設備の監視者や工場等の関係者に報知する。また、発報装置200は、可視煙判定装置100から可視煙発生設備が通知された場合には、可視煙発生及び発生した可視煙の色とともに、可視煙発生設備も報知する。
【0073】
発報装置200は、例えば、コンピュータやタブレット端末、移動通信端末等の情報処理端末であって、ディスプレイ等の、情報を表示する表示部を備える。発報装置200は、スピーカ等の、音声を出力する音声出力部を備えていてもよい。発報装置200は、可視煙判定装置100からの通知を受けて、可視煙の発生を、表示部にメッセージ表示して監視者に通知してもよく、電子メールを工場等の関係者に通知してもよい。この際、可視煙と判定された煙の画像を表示部に表示したり、電子メールに添付したりしてもよい。
【0074】
[2-4.情報処理端末]
情報処理端末300は、可視煙判定装置100と情報を送受信可能な端末であり、例えば、監視者等が、可視煙判定装置100に対して可視煙の色と設備との対応付け等を行う際に用いられる。情報処理端末300は、例えば発報装置200と兼用してもよい。
【0075】
以上、本実施形態に係る可視煙判定システム1の構成について説明した。なお、可視煙判定装置100の各機能部は、1つの装置に設けられるものとして説明したが、本発明はかかる例に限定されない。可視煙判定装置100の各機能部は、複数の装置によって構成されてもよい。また、可視煙判定装置100の各機能を実現するためのプログラムを作成し、コンピュータ等に実装することも可能である。また、このようなプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記プログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0076】
[3.可視煙判定方法]
次に、図4に基づいて、本実施形態に係る可視煙判定方法を説明する。図4は、本実施形態に係る可視煙判定方法を示すフローチャートである。
【0077】
図4に示すように、まず、撮像装置50は、可視煙発生の監視対象である設備を被写体として撮像し、撮像画像を取得する(S100)。撮像装置50は、連続して撮像を行い、撮像画像を取得する毎に可視煙判定装置100へ撮像画像を出力する。
【0078】
撮像装置50から撮像画像が入力されると、可視煙判定装置100は、撮像装置50の撮像画像を画像処理して、監視対象である設備から可視煙が発生しているか否かを判定するため、領域設定部110は、撮像画像内に可視煙判定領域を設定する(S110)。例えば、領域設定部110は、図3に示したように、撮像画像10中に、監視対象の設備の上方に可視煙判定領域A~Mを設定する。撮像画像に対して設定する可視煙判定領域の形状、サイズ、位置及び個数は、例えば、過去に取得された撮像画像において可視煙が現れた位置に基づいて適宜設定される。このとき、領域設定部110は、撮像画像内に背景領域をさらに設定してもよい。例えば、領域設定部110は、図3に示したように、撮像画像10中の可視煙判定領域A~Mの上方に、背景領域Xを設定してもよい。
【0079】
領域設定部110は、撮像画像内に可視煙判定領域を設定すると、可視煙発生判定部120及び可視煙色指標算出部130に、撮像画像内に設定した領域に関する情報(撮像画像内における各領域の位置情報)を出力する。
【0080】
撮像画像内に可視煙判定領域が設定されると、可視煙色指標算出部130は、可視煙判定領域について、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙の色の指標となる可視煙色指標値を算出する(S120)。可視煙色指標算出部130は、少なくとも可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について可視煙色指標値を算出すればよいが、本例では設定されているすべての可視煙判定領域について可視煙色指標値を算出する。可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域についてのみ可視煙色指標値を算出する場合には、ステップS120の処理は、後述するステップS130の後に実施すればよい。
【0081】
ステップS120では、可視煙色指標算出部130は、可視煙色指標値として、基準色の可視煙に対応する基準色指標値、及び、少なくとも1つの監視色にそれぞれ対応する少なくとも1つの監視色指標値を算出する。
【0082】
まず、可視煙色指標算出部130は、領域内の画素をグレースケール化して表された画素情報に基づき、基準色指標値を算出する。また、可視煙色指標算出部130は、監視色それぞれについて、基準色に対する監視色の程度を表す画素情報を算出し、当該画素情報に基づき監視色指標値を算出する。例えば、赤色と黄色が監視色であるとき、可視煙色指標算出部130は、黒色に対する赤色の程度を表す画像情報(赤色画素情報)に基づき、赤色の可視煙の色指標値(監視色指標値A)を算出するとともに、黒色に対する黄色の程度を表す画像情報(黄色画素情報)に基づき、黄色の可視煙の色指標値(監視色指標値B)を算出する。可視煙色指標算出部130は、算出した基準色指標値及び監視色指標値を、可視煙色判定部140へ出力する。
【0083】
可視煙色指標値が算出されると、可視煙発生判定部120は、可視煙判定領域内の各画素の画素情報に基づいて、可視煙が発生しているか否かを判定する(S130)。可視煙発生判定部120は、周知の可視煙判定手法を用いて、可視煙の発生を判定すればよい。例えば、可視煙発生判定部120は、可視煙発生の指標として、空間的な輝度、明度、あるいはそれらの時間変化によって表される指標値を用い、当該指標値が基準値を超えたことにより可視煙の発生を判定する。可視煙発生判定部120は、各可視煙判定領域について可視煙が発生しているか否かを判定し、可視煙は発生していないと判定した場合は(S130:NO)、当該撮像画像についての処理は終了し、次の撮像画像についてステップS100からの処理を実施する。
【0084】
一方、ステップS130にて可視煙が発生したと判定されると(S130:YES)、可視煙発生判定部120は、可視煙が発生していると判定した可視煙判定領域を、可視煙色判定部140及び報知指示部160へ出力する。
【0085】
可視煙色判定部140は、可視煙が発生していると判定された可視煙判定領域について、発生している可視煙の色を判定する。このため、可視煙色判定部140は、まず、監視色それぞれに対して、監視色指標値と基準色指標値との差分に基づいて評価値を算出する(S140)。例えば、可視煙色判定部140は、監視色それぞれに対して、監視色指標値と基準色指標値との差分の絶対値を、評価値として算出する。この場合、例えば赤色及び黄色が監視色として設定されているとき、可視煙色判定部140は、赤色の監視色指標値Aと基準色指標値との差分の絶対値を赤色の評価値Aとして算出し、黄色の監視色指標値Bと基準色指標値との差分の絶対値を黄色の評価値Bとして算出する。
【0086】
可視煙色判定部140は、すべての監視色について評価値を算出すると、これらすべての評価値と、基準色の可視煙を判定するために設定された閾値とを比較する(S150)。そして、可視煙色判定部140は、すべての評価値が閾値より小さいとき(S150:YES)、可視煙の色は基準色であると判定し、報知指示部160から基準色の可視煙が発生していることが報知装置200へ通知される(S160)。一方、可視煙色判定部140は、少なくとも1つの評価値が閾値以上であるとき(S150:NO)、可視煙の色は評価値が最大の監視色指標値に対応する監視色であると判定し、報知指示部160から当該監視色の可視煙が発生していることが報知装置200へ通知される(S170)。例えば、赤色の評価値Aと黄色の評価値Bとを算出したとき、評価値Bよりも評価値Aが大きい場合には、可視煙色判定部140は、赤色の可視煙が発生していると判定する。
【0087】
なお、ステップS160及びステップS170において、可視煙発生設備判定部170は、可視煙色判定部140が判定した可視煙の色に基づき、可視煙の色に対応付けられた1または複数の設備を可視煙発生設備として判定し、報知指示部160へ出力してもよい。報知指示部160は、可視煙発生設備判定部170が判定した可視煙発生設備を、報知装置200へ通知する。
【0088】
可視煙判定装置100からの通知を受けて、発報装置200は、監視対象の設備からの可視煙発生及び発生した可視煙の色を、設備の監視者や工場等の関係者に報知する(S180)。また、発報装置200は、可視煙判定装置100から可視煙発生設備が通知された場合には、可視煙発生及び発生した可視煙の色とともに、可視煙発生設備も報知してもよい。
【0089】
以上、本実施形態に係る可視煙判定方法について説明した。本実施形態に係る可視煙判定方法によれば、可視煙の発生の有無を判定するとともに、発生した可視煙の色を判定する。可視煙判定装置にて可視煙の発生を検出した際に、可視煙の色を判定して特定することで、可視煙が発生している設備を特定することが可能となる。その結果、可視煙が発生している設備に対して速やかに再発を防止するための措置を行うことができる。
【0090】
[4.ハードウェア構成]
図5に基づいて、本実施形態に係る可視煙判定装置100のハードウェア構成について説明する。図5は、本実施形態に係る可視煙判定装置100として機能する情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0091】
情報処理装置900は、プロセッサ(図5ではCPU901)と、ROM903と、RAM905とを含む。また、情報処理装置900は、バス907と、入力I/F909と、出力I/F911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを含む。
【0092】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能する。CPU901は、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体925に記録された各種プログラムに従って、情報処理装置900内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムあるいは演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラム、あるいは、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0093】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0094】
入力I/F909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが操作する操作手段である入力装置921からの入力を受け付けるインタフェースである。入力I/F909は、例えば、ユーザが入力装置921を用いて入力した情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等として構成されている。入力装置921は、例えば、赤外線あるいはその他の電波を利用したリモートコントロール装置、あるいは、情報処理装置900の操作に対応したPDA等の外部機器927であってもよい。情報処理装置900のユーザは、入力装置921を操作し、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0095】
出力I/F911は、入力された情報を、ユーザに対して視覚的または聴覚的に通知可能な出力装置923へ出力するインタフェースである。出力装置923は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプ等の表示装置であってもよい。あるいは、出力装置923は、スピーカ及びヘッドホン等の音声出力装置や、プリンター、移動通信端末、ファクシミリ等であってもよい。出力I/F911は、出力装置923に対して、例えば、情報処理装置900により実行された各種処理にて得られた処理結果を出力するよう指示する。具体的には、出力I/F911は、表示装置に対して情報処理装置900による処理結果を、テキストまたはイメージで表示するよう指示する。また、出力I/F911は、音声出力装置に対し、再生指示を受けた音声データ等のオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力するよう指示する。
【0096】
ストレージ装置913は、情報処理装置900の記憶部の1つであり、データ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、SSD(Solid State Drive)等の半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成される。ストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラム、プログラムの実行により生成された各種データ、及び、外部から取得した各種データ等を格納する。
【0097】
ドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に内蔵あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に記録されている情報を読み出し、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されているリムーバブル記録媒体925に情報を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体925は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクまたは半導体メモリ等である。具体的には、リムーバブル記録媒体925は、CDメディア、DVDメディア、Blu-ray(登録商標)メディア、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体925は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0098】
接続ポート917は、機器を情報処理装置900に直接接続するためのポートである。接続ポート917は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS-232Cポート等である。情報処理装置900は、接続ポート917に接続された外部機器927から、直接各種データを取得したり外部機器927に各種データを提供したりすることができる。
【0099】
通信装置919は、例えば、通信網929に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網929は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成されている。例えば、通信網929は、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等である。
【0100】
以上、情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示した。上述の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されてもよく、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されてもよい。情報処理装置900のハードウェア構成は、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて適宜変更可能である。
【実施例0101】
本発明の効果を検証すべく、コークス炉と焼結機とを監視対象の設備として、撮像装置による撮像画像を画像処理して、可視煙がどちらの設備から発生したのかを判定した。実施期間は1日間であり、監視時間は午前中(8時~10時)とした。撮影画像はRGB表色系画像であり、撮像画像には図3に示すように可視煙判定領域A~Mを設定した。撮像画像に対して、上述した画素の赤成分値、緑成分値、青成分値及びそれらの成分により表される関数の値を用いて画素情報を求め、領域内の各画素の値の総和を当該領域内の画素数で割った値(すなわち、平均値)を代表画素情報とした。
【0102】
本検証では、基準色を黒色、監視色Aを赤色、監視色Bを黄色とした。可視煙色指標値は輝度値により表した。赤色の監視色指標値AはRGB値の赤成分値とし、可視煙が赤色を帯びていると基準色指標値に比べて高めの値となる。黄色の監視色指標値BはRGB値の赤成分値と緑成分値の和を2で割った値とし、可視煙が黄色を帯びていると基準色指標値に比べて高めの値となる。
【0103】
また、一部の可視煙の色について設備との対応付けを行った。本検証では、コークス炉から可視煙が発生した場合、撮像映像内に黒色の可視煙が写るため、基準色である黒色とコークス炉とを対応付けた。また、焼結機から可視煙が発生した場合には撮像映像内に赤褐色の可視煙が写るため、監視色Aである赤色と焼結機とを対応付けた。監視色Bの可視煙はコークス炉及び焼結機以外の設備から発生するものであるため、監視色Bとその他の設備とを対応付けた。
【0104】
このような条件で、上述の図3に示したフローチャートに基づき、可視煙判定を実施した。その結果、監視時間において可視煙判定領域Gで可視煙を2回検知した。時間T1における1回目の可視煙検知をケース1、時間T2における2回目の可視煙検知をケース2とする。図6に、ケース1における、各可視煙色指標値の推移と、監視色についての評価値(監視色指標値と基準色指標値との差の絶対値)の推移とを示す。また、図7に、ケース2における、各可視煙色指標値の推移と、監視色についての評価値(監視色指標値と基準色指標値との差の絶対値)の推移とを示す。
【0105】
1回目に可視煙検知したケース1では、図6に示すように、時間T1頃に、評価値Aのみ閾値を超えた。評価値Aは、評価値Bよりも値が大きいため、監視色Aの可視煙が発生していると判定された。実際に時間T1における撮影画像を確かめると、赤褐色の可視煙が発生していることを目視で確認できた。また、焼結機から発生した可視煙であることも確認できた。ケース1で発生した可視煙は赤褐色のため、それぞれのRGB成分が低下する中で、RGB赤色成分は相対的に低下量が小さくなる。したがって、基準色指標値と監視色指標値Aとの差が拡大していることが図6からもわかる。
【0106】
2回目に可視煙検知したケース2では、図7に示すように、時間T2頃に、いずれの監視色の評価値(評価値A、B)も閾値を超えていないため、基準色である黒色の可視煙が発生していると判定された。実際に時間T2における撮影画像を確かめると、黒色の可視煙が発生していることを目視で確認できた。また、コークス炉から発生した可視煙であることも確認できた。ケース2で発生した可視煙は黒色のため、それぞれのRGB成分の低下量にそれほど偏りは生じない。したがって、いずれの監視色指標値も基準色指標値との差は殆ど無いことが図7からもわかる。
【0107】
これにより、ケース1では監視色Aの可視煙発生を判定するとともに焼結機からの可視煙であると特定でき、ケース2では基準色の可視煙発生を判定するとともにコークス炉からの可視煙であると特定できた。
【0108】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0109】
1 可視煙判定システム
10 撮像画像
50 撮像装置
100 可視煙判定装置
110 領域設定部
120 可視煙発生判定部
130 可視煙色指標値算出部
140 可視煙色判定部
150 閾値設定部
160 報知指示部
170 可視煙発生設備判定部
180 記憶部
200 発報装置
300 情報処理端末
900 情報処理装置
901 CPU
903 ROM
905 RAM
907 バス
909 入力I/F
911 出力I/F
913 ストレージ装置
915 ドライブ
917 接続ポート
919 通信装置
921 入力装置
923 出力装置
925 リムーバブル記録媒体
927 外部機器
929 通信網
図1
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