(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008837
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】時計用の電力生成デバイス
(51)【国際特許分類】
G04G 19/00 20060101AFI20240112BHJP
G04C 10/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G04G19/00 Y
G04C10/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023081265
(22)【出願日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】22183365.0
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ピエルパスクヮーレ・トルトラ
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ジャック・ボルン
(72)【発明者】
【氏名】アルノー・モーレル
【テーマコード(参考)】
2F002
2F101
【Fターム(参考)】
2F002AA04
2F002AA12
2F002AB01
2F002AB06
2F002AC01
2F002AC03
2F101DA05
2F101DA06
2F101DE06
2F101DJ01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機能的、外見上の汚染の発生や、動作の変化の恐れのない、時限電力生成デバイスを提供する。
【解決手段】時計用の時限電力生成デバイス100は、弾性復帰手段2に対してユーザが操作可能な操作用部材1を含み、弾性復帰手段2は、限られた期間にわたって電流を生成するために、発電器を間接的に駆動するよう配設され、また歯付き部材3を含み、操作用部材1に対して1つの自由度で可動であり、また操作用部材1と共に、各弾性復帰手段2を受承するための個々のチャンバ20を画定し、弾性復帰手段2は、操作用部材1を含む第1の支持用当接部11と、歯付き部材3を含む第2の支持用当接部32との間で、予圧を受けた静止位置と最大圧縮位置との間において、チャンバ20内で圧縮された状態で保持され、歯付き部材3は、発電器を直接駆動する、又は歯車列4を介して間接的に駆動するために、弾性復帰手段2によって駆動されるよう配設される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計(1000)用の時限電力生成デバイス(100)であって、
少なくとも1つの弾性復帰手段(2)に対してユーザが操作可能な操作用部材(1)を含み、前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)は、限られた期間にわたって電流を生成するために、少なくとも1つの発電器(6)を間接的に駆動するよう、配設され、
前記デバイス(100)は歯付き部材(3)を含み、前記歯付き部材(3)は、前記操作用部材(1)に対して1つの自由度で可動であり、また前記操作用部材(1)と共に、各前記弾性復帰手段(2)を受承するための個々のチャンバ(20)を画定し、前記弾性復帰手段(2)は、前記操作用部材(1)を含む第1の支持用当接部(11)と、前記歯付き部材(3)を含む第2の支持用当接部(32)との間で、予圧を受けた静止位置と最大圧縮位置との間において、前記弾性復帰手段(2)の前記チャンバ(20)内で圧縮された状態で保持され、
前記歯付き部材(3)は、前記発電器(6)を直接駆動する、又は歯車列(4)を介して間接的に駆動するために、前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)によって駆動されるよう、配設される、時限電力生成デバイス(100)において:
前記操作用部材(1)、前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)、及び前記歯付き部材(3)は、共通の主軸(DP)の周りで回転運動できること;並びに
前記操作用部材(1)は、ミドルケース(8、9)に対して移動可能である可動ベゼルであること
を特徴とする、時限電力生成デバイス(100)。
【請求項2】
前記操作用部材(1)に対するユーザの動作がなく、前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)が弛緩していない場合、前記デバイス(100)はスタンバイ位置となり、前記スタンバイ位置では、前記歯付き部材(3)が前記操作用部材(1)に対する当接位置となり、各前記弾性復帰手段(2)がそれぞれの前記チャンバ(20)内において、前記予圧を受けた静止位置となることを特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項3】
前記操作用部材(1)は第1の静止用当接部(12)を含むこと;及び
前記歯付き部材(3)は、前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)の静止位置において前記第1の静止用当接部(12)と当接状態で協働するように配設された、第2の静止用当接部(33)を含むこと
を特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項4】
前記第1の支持用当接部(11)は、前記操作用部材(1)を含む第1のキャッチ(10)によって支持されること;及び
前記第2の支持用当接部(32)は、前記歯付き部材(3)を含む第2のキャッチ(30)によって支持されること
を特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項5】
前記第1の静止用当接部(12)は、前記操作用部材(1)を含む前記第1のキャッチ(10)によって支持されること;及び
前記第2の静止用当接部(33)は前記第2のキャッチ(30)によって支持されること
を特徴とする、請求項3および4に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項6】
前記デバイス(100)は、前記スタンバイ位置において前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)による前記操作用部材(1)の駆動を妨げるように配設された、戻り防止機構を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項7】
前記戻り防止機構は、前記スタンバイ位置において前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)による前記操作用部材(1)の駆動に対抗する、少なくとも1つのノッチ付きリング(5)を含むことを特徴とする、請求項6に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)は、前記ユーザが前記操作用部材(1)を停止させたときに、前記歯付き部材(3)を前記操作用部材(1)から離れるように押して、前記静止位置に戻るように配設されることを特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)は、圧縮状態で動作するように配設されたコイルばねであることを特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項10】
前記歯付き部材(3)は、ピニオンギア(40)と協働するように配設された歯付き表面(34)を含み、前記ピニオンギア(40)は、二次軸(DS)の周りで回転可能であり、また前記歯付き部材(3)が前記少なくとも1つの弾性復帰手段(2)によって駆動されたときに前記発電器(6)を駆動するための前記歯車列(4)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の時限電力生成デバイス(100)。
【請求項11】
少なくとも1つの回路(7)の電源のための少なくとも1つの発電器(6)を含む、時計(1000)であって、
前記時計(1000)は、前記少なくとも1つの発電器(6)を駆動するために配設された、請求項1に記載の少なくとも1つの時限電力生成デバイス(100)を含むことを特徴とする、時計(1000)。
【請求項12】
前記時計(1000)は電気エネルギを貯蔵する手段を有しないことを特徴とする、請求項11に記載の時計(1000)。
【請求項13】
前記時計(1000)は腕時計であることを特徴とする、請求項11に記載の時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計用の時限電力生成デバイスに関し、これは、少なくとも1つの弾性復帰手段に対してユーザが操作可能な操作用部材を含み、上記少なくとも1つの弾性復帰手段は、限られた期間にわたって電流を生成するために、少なくとも1つの発電器を間接的に駆動するよう、配設される。
【0002】
本発明はまた、少なくとも1つの上記時限電力生成デバイスを含む少なくとも1つの回路に電気を供給するための少なくとも1つの発電器を含む、時計に関する。本発明は、特に腕時計である時計の電気的機能への給電のための電力の生成の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの時計、特に腕時計は、必要に応じて起動できる照明機能を備える。このような機能は、ディスプレイ、文字盤等のバックライトといった機能的な性質のものであっても、画像、ロゴ、更にはホログラムの表示といった、より遊び心のあるものであってもよい。照明システムは通常、主に電源と、1つ以上の光源(LED、OLED、エレクトロルミネッセンス等)と、電子制御システム(例えばパッシブ型部品、時間管理デバイス又はタイマー、電圧ブースター)とを含む。
【0004】
このような照明システムの部品はかさ高く、また重量が重い。これは腕時計の場合には欠点となる。特に、電気エネルギのソースは、一次バッテリ、充電式バッテリ、又は光電池、熱電電池若しくは圧電電池といったシステムで事前に生成された電荷の蓄積装置とすることができる。電子制御システムは通常、照明を起動し、その持続時間を定義するために設けられる。ユーザが自分で照明のスイッチをオフにしなければならないことは非常に稀である。
【0005】
これらのデバイスの大半は、エレクトロニクス産業からのものである。これらは化学部品(バッテリ内の電解質)とポリマー部品(包装、光導体、プリント回路)とによって形成される。これらの種類の材料は経年劣化するため、特定の範囲内の機械式時計において一般に禁止されている。これは、審美的な面での損傷(色の変化、しみ)を引き起こす可能性があり、又は更に悪いことには、腕時計の内部を循環する破片を発生させる可能性がある。
【0006】
この問題は、特に音、更には安全な通過を可能にする信号等を生成するための、照明回路以外の電力受け取り側回路についても同様である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、時計の機能的な及び/又は外見上の汚染を発生させて時計の価値及び/又は動作を変化させる恐れのある回路及びシステムを排除することによって、特に腕時計である時計内での電流の生成の簡略化を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、限定するものではないが例えば照明機能である電気的機能を起動するために、ベゼル等といった時計の外部の操作用部材を作動させることによって、ユーザが、必要な量の電気エネルギを限られた所定の期間にわたって自分で生成できるようにすることを目的とする。
【0009】
上記操作用部材は、特に電磁マイクロ発電器である発電器を一定期間にわたって駆動することによって、1つ以上の電力使用側電気回路に電流を供給するよう構成される。この機能は、電荷貯蔵システム又は電子タイミングデバイスを用いることなく実施されるため、デバイスのサイズ、質量、及びコストが削減される。
【0010】
従ってこの目的のために、本発明は、請求項1に記載の時計用の時限電力生成デバイスに関し、これは、少なくとも1つの弾性復帰手段に対してユーザが操作可能な操作用部材を含み、上記少なくとも1つの弾性復帰手段は、限られた期間にわたって電流を生成するために、少なくとも1つの発電器を間接的に駆動するよう、配設される。
【0011】
本発明はまた、少なくとも1つの上記時限電力生成デバイスを含む少なくとも1つの回路に電気を供給するための少なくとも1つの発電器を含む、時計に関する。
【0012】
本発明の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して以下の「発明を実施するための形態」を読めば、より明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、回転機構である特定の非限定的なケースにおける、本発明によるデバイスの制御部材の分解立体斜視図を示し、これは、主軸に関して同軸に配設された以下の要素を、上から下へと順に備える: ・この特定の非限定的なケースでは腕時計のベゼルによって形成された、操作用部材であって、環状セクタの形態の一連の溝を含み、これらは上記軸に向かって突出する内側キャッチによって分離され、これらの溝はそれぞれ、この特定の非限定的なケースではコイルばねである弾性復帰手段を受承するためのチャンバを形成する、操作用部材; ・この特定の例では3個である、複数の上記弾性復帰手段の組立体; ・上記ばねを上記チャンバ内に保持してそこで圧縮するように配設された、外側に突出する外側キャッチを含み、また、発電器の歯車列のピニオンギア又は同様の部品を駆動するために設けられた内周の歯部を含む、歯付き部材; ・上側の操作用部材に固定されたノッチ付きリングであって、非対称の歯を含み、時計の構造体に設置された図示されていない爪と協働することによって、操作用部材の一方向運動及び操作用部材の所定の位置での制動を保証するよう配設された、ノッチ付きリング。
【
図2】
図2は、歯付き部材が、発電器の歯車列を含むピニオンギアと噛合した状態の、
図1の制御部材を下から見た図を示す。上記ばねは静止位置にあり、この静止位置では、上記ばねには予圧が掛けられており、それぞれ、上側の操作用部材の内側キャッチと、内側の歯付き部材の外側キャッチとの間に延在し;上側の操作用部材の各内側キャッチは、内側の歯付き部材の外側キャッチ上に支承されている。
【
図3】
図3は、歯付き部材及びピニオンギアが、発電器の供給歯車列の抵抗トルクによって静止状態に保持されたまま、第1の角度ストロークが操作用部材に印加された後の
図2と同一の組立体を、
図2と同様の様式で示す。
【
図4】
図4は、ばねを更に圧縮して発電器の供給歯車列の抵抗トルクに打ち勝つ効果を有する第2の角度ストロークが操作用部材に印加された後の、
図2、3と同一の組立体を、
図2、3と同様の様式で示し、歯付き部材及びピニオンギアは回転駆動されて、歯車列を介して発電器を起動する。
【
図5】
図5は、本発明による時限電力生成デバイスの、
図4の6時位置における、主軸、及びピニオンギアの二次軸を通る概略断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明による時限電力生成デバイスの、
図4の1時位置における主軸を通る概略断面図を示す。
【
図7】
図7は、本発明による時限電力生成デバイスの一部の概略斜視図を示し、ピニオンギアと噛合した歯付き部材、裏板と受けとの間に配設された発電器、電力使用側回路を伴う。
【
図8】
図8は、本発明による時限電力生成デバイスを制御するための操作用部材を含む腕時計の概略正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、時計1000のための時限電力生成デバイス100に関する。
【0015】
このデバイス100は、少なくとも1つの弾性復帰手段2に対してユーザが操作可能な操作用部材1を含む。この少なくとも1つの弾性復帰手段2は、限られた期間にわたって電流を生成するために、少なくとも1つの発電器6を間接的に駆動するよう、配設される。
【0016】
有利には、この発電器6は電磁マイクロ発電器である。
【0017】
本発明によると、デバイス100は歯付き部材3を含み、これは操作用部材1に対して1つの自由度で可動であり、またこの操作用部材1と共に、各弾性復帰手段2を受承するための個々のチャンバ20を画定する。この弾性復帰手段2は、操作用部材1を含む第1の支持用当接部11と、歯付き部材3を含む第2の支持用当接部32との間で、予圧を受けた静止位置と最大圧縮位置との間において、そのチャンバ20内で圧縮された状態で保持される。歯付き部材3は、発電器6を直接駆動する、又は歯車列4を介して間接的に駆動するために、上記少なくとも1つの弾性復帰手段2によって駆動されるよう、配設される。
【0018】
より詳細には、操作用部材1に対するユーザの動作がなく、上記少なくとも1つの弾性復帰手段2が弛緩していない場合、デバイス100はスタンバイ位置となり、ここでは歯付き部材3が操作用部材1に当接し、各弾性復帰手段2がそれぞれのチャンバ20内において、予圧を受けた静止位置となる。
【0019】
より詳細には、操作用部材1は第1の静止用当接部12を含み、歯付き部材3は、少なくとも1つの弾性復帰手段2の静止位置において第1の静止用当接部12を支承してこれと協働するように配設された、第2の静止用当接部33を含む。
【0020】
より詳細には、第1の支持用当接部11は、操作用部材1を含む第1のキャッチ10によって支持され、第2の支持用当接部32は、歯付き部材3を含む第2のキャッチ30によって支持される。
【0021】
より詳細には、第1の静止用当接部12は、操作用部材1を含む第1のキャッチ10によって支持され、第2の静止用当接部33は第2のキャッチ30によって支持される。
【0022】
より詳細には、デバイス100は、スタンバイ位置において少なくとも1つの弾性復帰手段2による操作用部材1の駆動を妨げるように配設された、戻り防止機構を含む。
【0023】
より詳細には、この戻り防止機構は、スタンバイ位置において少なくとも1つの弾性復帰手段2による操作用部材1の駆動に対抗する、少なくとも1つのノッチ付きリング5を含む。有利には、このノッチ付きリング5は、腕時計の駆動に使用されるものと同様であり、ウルフティース55を備えたノッチ付きリングであり、一方向運動しかできない操作用部材1、特にベゼルと一体になるように設置される。このノッチ55は、時計1000を含む構造要素8、特にミドルケースによって支持される爪58と協働する。
【0024】
より詳細には、少なくとも1つの弾性復帰手段2は、ユーザが操作用部材1の駆動を停止させたときに、歯付き部材3を操作用部材1から離れるように押して、それ自体の静止位置に戻るように配設される。
【0025】
より詳細には、少なくとも1つの弾性復帰手段2は、圧縮状態で動作するように配設されたコイルばねである。例えば渦巻きばねのような他の実施形態も可能である。
【0026】
より詳細には、操作用部材1、少なくとも1つの弾性復帰手段2、及び歯付き部材3は、共通の主軸DPの周りで回転運動できる。
【0027】
より詳細には、操作用部材1は、ミドルケース8、9に対して可動であるベゼルである。
【0028】
図示されていない変形例では、操作用部材1はボルト又はプッシュボタン等である。
【0029】
より詳細には、歯付き部材3は、ピニオンギア40と協働するように配設された歯付き表面34を含み、ピニオンギア40は二次軸DSの周りで回転運動でき、また歯付き部材3が弾性復帰手段2によって駆動されたときに発電器6を駆動するための歯車列4を含む。
図7は、ピニオンギア40、歯車列4、発電器6が裏板49と受け48との間に配設され、そこでこれらの可動部品が枢動する、非限定的な構成を示しており、裏板49はミドルケース又は地板等であってよい。
【0030】
発電器6はピニオンギア40の回転に対する抵抗トルクに対抗することが理解され、この抵抗トルクは特に、発電器6が生成した電流の使用側の電気回路7に依存し、またこの抵抗トルクは全体として一定ではなく、電流が生成される際に変化する。弾性復帰手段2の組立体によって付与される駆動トルクが上記抵抗トルクより大きい場合にモーメントが発生して、弾性復帰手段2を弛緩させてその静止位置に戻すことができ、この弛緩の持続時間は、ユーザによる更なる移動がない場合、デバイス100自体の電源の、限定的な所定の持続時間に対応する。当然のことながら、ユーザが操作用部材1を駆動し続ける場合、操作用部材1は弾性復帰手段2を押し、その結果として歯付き部材3を押して、ピニオンギア40を駆動するが、ユーザがこの駆動運動を中止するとすぐに、上記所定の限定的な期間の間、弾性復帰手段2のみが駆動される。
【0031】
ピニオンギア40に関しては、これは時計回り又は反時計回りに駆動されて、同様に発電器6に給電できる。発電器6はいずれの駆動方向で動作するものの、弾性復帰手段2のエネルギ貯蔵システムを動作させるためには、操作用部材1の駆動を1方向のみに制限する必要があるため、実際にはピニオンギア40はこの方向のみに駆動されることになり、上記方向は、腕時計の製造時に個別に選択できる。このため、ここで図示されている、戻り防止ノッチ付きリング5及び爪58を伴う、一方向ベゼル1を含む変形例は、本発明の実装に好適である。
【0032】
本発明は更に、少なくとも1つの回路7に給電するための少なくとも1つの発電器6を含む、時計1000に関する。本発明によると、時計1000は、少なくとも1つの上述の時限電力生成デバイス100を含み、これは少なくとも1つの発電器6を駆動するために配設される。1つ以上の回路7の寸法、及びLED、OLED、音響発生器、信号送信器等といった、電力を受け取る部品の性質は、ピニオンギア40の駆動に対抗する抵抗トルクを直接決定し、従って弾性復帰手段2の駆動ストロークの閾値を直接決定し、従って電流供給の所定の限定的な持続時間を直接決定する。
【0033】
有利には、本発明により、電気エネルギ管理システム及び電気エネルギ貯蔵手段を不要とすることができる。
【0034】
より詳細には、時計1000は電気エネルギを貯蔵する手段を有しない。
【0035】
より詳細には、時計1000は腕時計である。
【0036】
図面は、時計1000が腕時計であり、操作用部材1が一方向に回転する制御用ベゼルである、特定の非限定的な実施形態を示す。この腕時計ベゼルのコンセプトにより、磁気マイクロ発電器6を起動できる。操作用部材1を形成するベゼルを回転させることによって、ユーザは、それぞれが弾性復帰手段2を構成する複数のばねの系を起動する。これらのばねに貯蔵されたエネルギは、特定の段階において、磁気マイクロ発電器6に接続された歯車列4を形成する複数の歯車の系を回転させるために使用される。磁気マイクロ発電器6が生成した電力は、例えば光源である電力受け取り側回路7に電流を供給するために使用される。そして照明の期間は、ばね2が
図2に対応する静止位置に戻るために必要な時間によって決定される。
【0037】
図1は、3つのばね2が操作用部材1の3つの内側キャッチ10と歯付き部材3の3つの外側キャッチ30との間に挿入されている特定の非限定的なケースにおける、制御機構の部品を示す。
【0038】
図2は、ユーザによる動作がない静止位置を示し、ベゼル1は、ウルフティース55を備えたノッチ付きリングと協働する爪58によって、所定の位置に保持されている。操作用部材1の3つの内側キャッチ10はそれぞれ、第2の静止用当接部33と当接する第1の静止用当接部12によって、歯付き部材3の3つの外側キャッチ30と当接する。この静止位置では、各ばね2は既に予圧がかかっており、即ち部分的に圧縮されている。歯付き部材3の内側の歯付き表面34は、磁気マイクロ発電器6の駆動歯車列4に属するピニオンギア40と噛合する。
【0039】
図3は、ベゼル1の第1の回転の後の組立体の位置を示し、内側のキャッチ10はばね2を圧縮し始めており、ノッチ付きリング5は、ベゼル1がばね2の作用で戻るのを防止する。
【0040】
歯付き部材3は初め、機構が解放されている
図4に示されているように、ばね2の圧力によって歯付き部材3が歯車系及びマイクロ発電器の静止トルクに打ち勝つことができるまで、静止位置にとどまる。この瞬間から、歯付き部材3はシステムを駆動し、歯車列4の逓倍数に依存する速度で磁気マイクロ発電器6を回転させることができる。
【0041】
回転中、磁気マイクロ発電器6のトルクは、生成される電流に依存する。磁気マイクロ発電器6と、例えばLEDを含む電力使用側回路7との間が直接接続される場合、回転の持続時間の関数としての光度の曲線を確立できる。
【0042】
本出願によると、腕時計用の照明システムによって吸収される電力は、3mW~15mWで変動し得る。時計用途では、照明の持続時間は少なくとも3秒であることが望ましい。
【0043】
図示されているシステムについて:歯車列4の逓倍数が1400~1900、より詳細には1600~1700;マイクロ発電器6の静止トルクが8~14μN・m、より詳細には10~12μN・m;リューズの始動トルクが0.020~0.036N・m、より詳細には0.025~0.030N・mである場合に、ばね2の剛性に関して0.025~0.050N/mm、より詳細には0.035~0.040N/mmの値を達成できる。
【0044】
要約すると、本発明により、特に腕時計である時計の追加の機能のための電流を生成するという課題に対する小型かつ経済的な解決策を、エネルギ貯蔵又は安定化のための電子部品を必要とすることなく提供できる。回転ベゼルを備えた腕時計の既存の部品の変更は:チャンバ20を形成する溝とベゼル1の内側キャッチ10との機械加工;このレベルでのミドルケースの修正を伴わない、ウルフティース55を備えたノッチ付きリング及び関連付けられた爪58の再使用;単純な幾何学的形状の歯付き部材3、市販のばね2、及びピニオンギア40の追加;歯付き部材3のハウジングに関連するミドルケースの唯一の修正;並びに上記ピニオン40及び公知の歯車列4の要素の実装に限られる。歯付き部材3はベゼル1の厚さ内に挿入でき、デバイス100が既存の腕時計の追加機構として設計されている場合に、デバイス100を設けることによって腕時計全体の厚さが受ける影響はごくわずかである。当然のことながら、歯車列4の要素と、マイクロ発電器6及び電力使用側回路7(フレックス、LED等、特に電子部品)とを、ミドルケースの寸法を増大させることなく直接統合するようなサイズを構成できる。
【符号の説明】
【0045】
1 操作用部材
2 弾性復帰手段
3 歯付き部材
4 歯車列
5 ノッチ付きリング
6 発電器
7 回路
8 ミドルケース
9 ミドルケース
10 第1のキャッチ
11 第1の支持用当接部
12 第1の静止用当接部
20 チャンバ
30 第2のキャッチ
32 第2の支持用当接部
33 第2の静止用当接部
34 歯付き表面
40 ピニオンギア
100 時限電力生成デバイス
1000 時計
DP 主軸
DS 二次軸
【外国語明細書】