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特開2024-88382発電量推定装置、発電量推定方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088382
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】発電量推定装置、発電量推定方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20240625BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02S50/00
G01W1/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203517
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】森本 充
(72)【発明者】
【氏名】竹原 輝巳
(72)【発明者】
【氏名】角田 あかり
(72)【発明者】
【氏名】井尻 有策
(72)【発明者】
【氏名】寶珍 輝尚
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251KA02
(57)【要約】
【課題】太陽光パネルの発電量を精度良く推定することが可能な発電量推定装置を提供する。
【解決手段】発電量推定装置(2)は、気象予測データを取得する取得部(21)と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから太陽光パネルの発電量を推定する推定部(22)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気象予測データを取得する取得部と、
実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、
を備える発電量推定装置。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測時の時刻情報と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習モデルである、
請求項1に記載の発電量推定装置。
【請求項3】
前記実測された日射量は、水平面全天日射量の実測データであって、
前記推定部は、
前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部を備え、
前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される、
請求項1に記載の発電量推定装置。
【請求項4】
前記実測された日射量は、前記太陽光パネルに対応した傾斜面全天日射量の実測データであって、
前記推定部は、
前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記太陽光パネルに対応した傾斜面全天日射量の予測データに変換する日射量変換部と、
前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、
前記傾斜面全天日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される、
請求項1に記載の発電量推定装置。
【請求項5】
前記実測された日射量は、水平面直達日射量の実測データであって、
前記推定部は、
前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記水平面直達日射量の予測データに変換する日射量変換部と、
前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、
前記水平面直達日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される、
請求項1に記載の発電量推定装置。
【請求項6】
前記実測された日射量は、前記太陽光パネルに対応した傾斜面直達日射量の実測データであって、
前記推定部は、
前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記太陽光パネルに対応した傾斜面直達日射量の予測データに変換する日射量変換部と、
前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、
前記傾斜面直達日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される、
請求項1に記載の発電量推定装置。
【請求項7】
前記気温変換部は、次式(式1)および(式2)を用いて、前記気象予測データに含まれる気温の予測データTbfを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データTafに変換する、
請求項3~6のいずれか1項に記載の発電量推定装置。
af=Tbf+γΔT ・・・(式1)
af:気象予測データの補正後の気温(℃)
bf:気象予測データの補正前の気温(℃)
γ:補正係数
ΔT:補正分の気温(℃)
【数1】
T,G:傾斜面全天日射量(W/m2
:水平面全天日射量(W/m2
ρ:地面の反射率
δ:シュテファン=ボルツマン定数(=5.670374419×10-8[W/(mK2)2])
:気象予測データの風速(m/s)
h:太陽高度(°)
【請求項8】
気象予測データを取得する取得部と、
実測された日射量と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、
を備える発電量推定装置。
【請求項9】
前記学習済みモデルは、実測された日射量と、実測時の時刻情報と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習モデルである、
請求項8に記載の発電量推定装置。
【請求項10】
気象予測データを取得する工程と、
実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する工程と、
を含む発電量推定方法。
【請求項11】
コンピュータに、
気象予測データを取得する処理と、
実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電の発電量を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の発電量を予測する技術として、下記の特許文献1に開示された発明がある。特許文献1は、記憶手段に記憶された快晴度と気象の関係に基づいて気象予測データに対応する快晴度を演算し、演算の結果得られた快晴度に対して、予測対象時間帯の各時刻に係る日射量の理論上の最大値を乗じることで各時刻の日射量を算出する。そして、日射量と発電出力との関係を示す変換効率に係る情報を日射量に乗算することで発電出力を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-164286号公報(2013年8月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、快晴度および変換効率を用いることによって、発電出力を算出している。しかしながら、快晴度および変換効率のそれぞれの精度が低下したとき、算出された発電出力の精度が著しく低下する可能性があるといった問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、太陽光パネルの発電量を精度良く推定することが可能な発電量推定装置、発電量推定方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発電量推定装置は、気象予測データを取得する取得部と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、を備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発電量推定装置は、気象予測データを取得する取得部と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、を備える。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る発電量推定方法は、気象予測データを取得する工程と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する工程と、を含む。
【0009】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、気象予測データを取得する処理と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、太陽光パネルの発電量を精度良く推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る学習装置を含んだシステムの機能的構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る学習装置を含んだシステムの処理手順を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る発電量推定装置の機能的構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る発電量推定装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
図5】水平面全天日射量を他の種類の日射量に変換する処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
図6】気温を太陽光パネルの裏面の気温に変換する処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<学習装置1を含んだシステムの構成例>
図1は、本発明の一実施形態に係る学習装置を含んだシステムの概略構成を示す機能ブロック図である。このシステムは、学習装置1と、日射量測定器12と、気温測定器13と、RTC(Real Time Clock)14と、発電量測定器15とを含む。
【0013】
日射量測定器12は、PV(Photovoltaic Power Generation)システムに含まれる太陽光パネル周辺に設置され、日射量を測定して測定結果を学習装置1へ出力する。日射量測定器12は、水平面全天日射量を測定するための測定器、傾斜面全天日射量を測定するための測定器、水平面直達日射量を測定するための測定器および傾斜面直達日射量を測定するための測定器の4種類のいずれかであり、それぞれの測定器の特性に合わせて太陽光パネル周辺に設置される。
【0014】
気温測定器13は、太陽光パネルに設置され、太陽光パネルの裏面の気温を測定して測定結果を学習装置1へ出力する。また、気温測定器13は、太陽光パネルの周辺に設置され、太陽光パネル周辺の気温を測定するようにしてもよい。
【0015】
RTC14は、時刻を計時しており、少なくとも現在の月日および時刻を時刻情報として学習装置1へ出力する。なお、時刻情報には、「月」、「日」、「時」、「分」、「秒」が含まれるものとするが、これらのどの情報を使用するかは任意である。
【0016】
発電量測定器15は、太陽光パネルに設置されており、太陽光パネルの現在の発電量を測定して測定結果を学習装置1へ出力する。
【0017】
学習装置1は、日射量測定器12によって実測された日射量と、気温測定器13によって実測された太陽光パネルの裏面の気温と、RTC14から出力される実測時の時刻情報と、発電量測定器15によって実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習モデルに学習させ、学習済みモデル11として出力する。この学習モデルは、日射量と、太陽光パネルの裏面の気温と、時刻情報とから、太陽光パネルの発電量を推定するように学習される。
【0018】
なお、学習装置1は、日射量測定器12によって実測された日射量と、気温測定器13によって実測された太陽光パネルの裏面の気温と、発電量測定器15によって実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習モデルに学習させるようにしてもよい。また、学習装置1は、日射量測定器12によって実測された日射量と、RTC14から出力される実測時の時刻情報と、発電量測定器15によって実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習モデルに学習させるようにしてもよい。
【0019】
学習装置1は、例えば、1日6時間(太陽光発電が可能な時間帯)のデータ1年分を学習モデルに学習させる。太陽光パネルの発電量は、日射量との相関が最も強いが、気温、季節、時間帯等との相関もあるため、これらのデータを含めて学習モデルを学習させることによって、学習済みモデルの予測精度を向上させることができる。
【0020】
<学習装置1を含んだシステムの処理手順>
図2は、学習装置1を含んだシステムの処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、日射量測定器12は、日射量を測定して学習装置1へ出力する(S11)。上述のように、日射量測定器12の種類に応じて、水平面全天日射量、傾斜面全天日射量、水平面直達日射量および傾斜面直達日射量のいずれかが出力される。
【0021】
次に、気温測定器13は、太陽光パネルの裏面で気温を測定して学習装置1へ出力する(S12)。また、RTC14は、現在の時刻情報を取得して学習装置1へ出力する(S13)。また、発電量測定器15は、太陽光パネルの発電量を測定して学習装置1へ出力する(S14)。
【0022】
次に、学習装置1は、日射量測定器12によって実測された日射量と、気温測定器13によって実測された太陽光パネルの裏面の気温と、RTC14から出力される実測時の時刻情報と、発電量測定器15によって実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習モデルに学習させる(S15)。
【0023】
そして、学習装置1は、処理を終了するか否かを判定する(S16)。処理を終了しない場合(S16,No)、学習装置1は、ステップS11に戻って以降の処理を繰り返す。また、処理を終了する場合(S16,Yes)、学習装置1は、学習済みモデル11を出力して、処理を終了する。
【0024】
なお、1年分の実データ(実測された日射量、実測された太陽光パネルの裏面の気温、実測時の時刻情報、実測された太陽光パネルの発電量)を取得して蓄積しておき、学習装置1が、その1年分の実データを学習して学習済みモデルを作成するようにしてもよい。
【0025】
<発電量推定装置2の構成例>
図3は、本発明の一実施形態に係る発電量推定装置2の概略構成を示す機能ブロック図である。この発電量推定装置2は、取得部21と、推定部22とを含む。また、推定部22は、日射量変換部221と、気温変換部222と、制御部223と、学習装置1によって作成された学習済みモデル11とを含む。
【0026】
取得部21は、キーボード、マウス、タッチパネル等のマンマシンインタフェース、またはネットワークアダプタ等によって構成されており、気象予測データを外部から取得し、推定部22へ出力する。気象予測データは、水平面全天日射量の予測データ、気温の予測データ、日時(日付、時間帯)、緯度、経度等の情報を含んでいる。
【0027】
例えば、取得部21がネットワークアダプタ等によって構成されている場合、インターネット等の広域通信網を介して、気象庁や民間の気象予測会社等の気象予測データ提供者が有するサーバ等から気象予測データを受信する。また、取得部21がマンマシンインタフェース等によって構成されている場合、ユーザが気象予測データを入力するようにしてもよい。
【0028】
日射量変換部221は、気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを、学習モデルを学習させたときの日射量の種類に対応する日射量に変換する。例えば、図1に示す日射量測定器12が、傾斜面全天日射量を測定する測定器であれば、日射量変換部221は、気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを傾斜面全天日射量の予測データに変換する。この傾斜面全天日射量は、太陽光パネルの設置角度や向き等が考慮された日射量であり、太陽光パネルの発電量を推定する学習モデルを作成するときに、この傾斜面全天日射量を用いることによって予測精度を向上させることができるが、上述の水平面全天日射量、水平面直達日射量または傾斜面直達日射量を用いるようにしてもよい。
【0029】
日射量変換部221は、例えば、Erbs等の直散分離モデルや傾斜面日射量モデルを用いて、水平面全天日射量の予測データを傾斜面全天日射量の予測データに変換する。この変換過程において、水平面直達日射量の予測データおよび傾斜面直達日射量の予測データも算出されることになる。
【0030】
また、日射量変換部221は、緯度、経度、日時等の情報から水平面全天日射量の理論的最大値を算出する。そして、日射量変換部221は、例えば、Erbs等の直散分離モデルや斜面日射量モデルを用いて、算出した水平面全天日射量の理論的最大値を、傾斜面全天日射量の理論的最大値、水平面直達日射量の理論的最大値および傾斜面直達日射量の理論的最大値に変換することができる。
【0031】
気温変換部222は、気象予測データに含まれる気温の予測データTbfを、太陽光パネルの裏面の気温に変換する。太陽光パネルの裏面の気温Tafは、次式(式1)および(式2)を用いて算出することができる。
【0032】
af=Tbf+γΔT ・・・(式1)
af:気象予測データの補正後の気温(℃)
bf:気象予測データの補正前の気温(℃)
γ:補正係数
ΔT:補正分の気温(℃)
【0033】
【数1】
T,G:傾斜面全天日射量(W/m2
:水平面全天日射量(W/m2
ρ:地面の反射率
δ:シュテファン=ボルツマン定数(=5.670374419×10-8[W/(mK2)2])
:気象予測データの風速(m/s)
h:太陽高度(°)。
【0034】
制御部223は、学習モデルを学習させたときの日射量の種類などの情報を保持しており、日射量変換部221が、水平面全天日射量の予測データを他の種類の日射量に変換するときに、日射量の種類を日射量変換部221へ出力する。また、制御部223は、日射量変換部221によって計算された傾斜面全天日射量の予測データや水平面全天日射量の予測データを、気温変換部222へ出力する。また、制御部223は、太陽光パネルの発電量を推定する際、気象予測データから予測対象の時刻情報を取得して、学習済みモデル11へ出力する。
【0035】
学習済みモデル11は、日射量変換部221から出力される日射量の予測データと、気温変換部222から出力される太陽光パネルの裏面の気温の予測データと、制御部223から出力される時刻情報とを入力とし、太陽光パネルの発電量の推定値を出力する。この発電量の推定値は、例えば、表示装置等に表示される。
【0036】
<発電量推定装置2の処理手順>
図4は、発電量推定装置2の処理手順を説明するためのフローチャートである。まず、日射量変換部221は、取得部21によって取得された気象予測データから予測対象の時刻における水平面全天日射量を抽出し、他の種類の日射量に変換して学習済みモデル11へ出力する(S21)。この処理の詳細は、後述する。
【0037】
次に、気温変換部222は、取得部21によって取得された気象予測データから予測対象の時刻における気温の予測データを抽出し、太陽光パネルの裏面の気温の予測データに変換して学習済みモデル11へ出力する(S22)。この処理の詳細は、後述する。
【0038】
次に、制御部223は、気象予測データから予測対象の時刻情報を取得して学習済みモデル11へ出力する(S23)。そして、学習済みモデル11に、日射量変換部221によって変換された日射量の予測データと、気温変換部222によって変換された太陽光パネルの裏面の気温の予測データと、制御部223から出力された予測対象の時刻情報とが入力される(S24)。学習済みモデル11は、太陽光パネルの発電量の推定結果を外部へ出力して(S25)、処理を終了する。
【0039】
図5は、水平面全天日射量を他の種類の日射量に変換する処理(図4のステップS21の処理)の詳細を説明するためのフローチャートである。まず、日射量変換部221は、予測対象時間帯の気象予測データを取得する(S31)。次に、日射量変換部221は、予測対象時間帯の各時刻における水平面全天日射量の理論的最大値を算出する(S32)。この水平面全天日射量の理論的最大値は、快晴のときの水平面全天日射量であり、緯度、経度、日時等の情報から算出することができる。
【0040】
次に、日射量変換部221は、実測の日射量の種類(学習モデルを学習させたときの日射量の種類)が水平面全天日射量であるかを判定する(S33)。実測の日射量が水平面全天日射量でなければ(S33,No)、ステップS37へ処理が進む。
【0041】
また、実測の日射量が水平面全天日射量であれば(S33,Yes)、日射量変換部221は、水平面全天日射量の理論的最大値が水平面全天日射量の予測データ以上であるかを判定する(S34)。水平面全天日射量の理論的最大値が水平面全天日射量の予測データよりも小さければ(S34,No)、水平面全天日射量の予測データを水平面全天日射量の理論的最大値に置換し(S35)、ステップS36に処理が進む。この処理は、水平面全天日射量の予測データが、水平面全天日射量の理論的最大値よりも大きくならないようにするためのものである。また、水平面全天日射量の理論的最大値が水平面全天日射量の予測データ以上であれば(S34,Yes)、ステップS36に処理が進む。
【0042】
ステップS36において、日射量変換部221は、水平面全天日射量の予測データを学習済みモデル11へ出力し、処理を終了する。また、ステップS37において、日射量変換部221は、水平面全天日射量の理論的最大値を傾斜面全天日射量の理論的最大値に変換する。このとき、水平面直達日射量の理論的最大値および傾斜面直達日射量の理論的最大値も算出される。
【0043】
そして、日射量変換部221は、水平面全天日射量の予測データを傾斜面全天日射量の予測データに変換する(S38)。このとき、水平面直達日射量の予測データおよび傾斜面直達日射量の予測データも算出される。
【0044】
次に、日射量変換部221は、実測の日射量の種類が傾斜面全天日射量であるかを判定する(S39)。実測の日射量が傾斜面全天日射量でなければ(S39,No)、ステップS43へ処理が進む。
【0045】
また、実測の日射量が傾斜面全天日射量であれば(S39,Yes)、日射量変換部221は、傾斜面全天日射量の理論的最大値が傾斜面全天日射量の予測データ以上であるかを判定する(S40)。傾斜面全天日射量の理論的最大値が傾斜面全天日射量の予測データよりも小さければ(S40,No)、傾斜面全天日射量の予測データを傾斜面全天日射量の理論的最大値に置換し(S41)、ステップS42に処理が進む。この処理は、傾斜面全天日射量の予測データが、傾斜面全天日射量の理論的最大値よりも大きくならないようにするためのものである。また、傾斜面全天日射量の理論的最大値が傾斜面全天日射量の予測データ以上であれば(S40,Yes)、ステップS42に処理が進む。
【0046】
ステップS42において、日射量変換部221は、傾斜面全天日射量の予測データを学習済みモデル11へ出力し、処理を終了する。また、ステップS43において、日射量変換部221は、実測の日射量の種類が水平面直達日射量であるかを判定する。実測の日射量が水平面直達日射量でなければ(S43,No)、ステップS47へ処理が進む。
【0047】
また、実測の日射量が水平面直達日射量であれば(S43,Yes)、日射量変換部221は、水平面直達日射量の理論的最大値が水平面直達日射量の予測データ以上であるかを判定する(S44)。水平面直達日射量の理論的最大値が水平面直達日射量の予測データよりも小さければ(S44,No)、水平面直達日射量の予測データを水平面直達日射量の理論的最大値に置換し(S45)、ステップS46に処理が進む。この処理は、水平面直達日射量の予測データが、水平面直達日射量の理論的最大値よりも大きくならないようにするためのものである。また、水平面直達日射量の理論的最大値が水平面直達日射量の予測データ以上であれば(S44,Yes)、ステップS46に処理が進む。
【0048】
ステップS46において、日射量変換部221は、水平面直達日射量の予測データを学習済みモデル11へ出力し、処理を終了する。また、ステップS47において、実測の日射量の種類が傾斜面直達日射量であるため、日射量変換部221は、傾斜面直達日射量の理論的最大値が傾斜面直達日射量の予測データ以上であるかを判定する。
【0049】
傾斜面直達日射量の理論的最大値が傾斜面直達日射量の予測データよりも小さければ(S47,No)、傾斜面直達日射量の予測データを傾斜面直達日射量の理論的最大値に置換し(S48)、ステップS49に処理が進む。この処理は、傾斜面直達日射量の予測データが、傾斜面直達日射量の理論的最大値よりも大きくならないようにするためのものである。また、傾斜面直達日射量の理論的最大値が傾斜面直達日射量の予測データ以上であれば(S47,Yes)、ステップS49に処理が進む。
【0050】
ステップS49において、日射量変換部221は、傾斜面直達日射量の予測データを学習済みモデル11へ出力し、処理を終了する。
【0051】
図6は、気温を太陽光パネルの裏面の気温に変換する処理(図4のステップS22の処理)の詳細を説明するためのフローチャートである。まず、気温変換部222は、取得部21から予測対象時間帯の気象予測データを取得する(S51)。
【0052】
次に、気温変換部222は、制御部223から、日射量変換部221によって算出された予測対象時間帯の各時刻における傾斜面全天日射量を取得する(S52)。そして、気温変換部222は、上述の(式1)および(式2)を用いて、予測対象時間帯の各時刻における気象予測データの気温を太陽光パネルの裏面の気温に変換して(S53)、処理を終了する。
【0053】
なお、機械学習として、NN(Neural Network)、RNN(Recurrent NN)等を適用することができるが、気象予測データの日射量および気温から太陽光パネルの発電量を予測できる技術、例えば、サポートベクターマシン、決定木分析、重回帰分析等を適用することも可能である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る発電量推定装置2によれば、推定部22は、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの裏面の気温と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから太陽光パネルの発電量を推定する。したがって、快晴度、変換効率等の算出が不要となり、太陽光パネルの発電量を精度良く推定することが可能となる。
【0055】
また、学習済みモデルを、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの裏面の気温と、実測時の時刻情報と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習モデルとすることができる。したがって、太陽光パネルの発電量と相関が高い実測時の時刻情報を含めて学習モデルを学習させることにより、太陽光パネルの発電量をさらに精度良く推定することが可能となる。
【0056】
さらに、実測データ(教師データ)の日射量の種類と気象予測データの日射量の種類が異なる場合であっても、気象予測データの日射量の種類を日射量変換部221によって実測データ(教師データ)の日射量の種類に合わせることで、太陽光パネルの発電量をさらに精度良く推定することが可能となる。
【0057】
例えば、実測データ(教師データ)の日射量の種類が傾斜面全天日射量、気象予測データの日射量の種類が水平面全天日射量の場合、日射量変換部221によって気象予測データの水平面全天日射量を実測データ(教師データ)の傾斜面全天日射量に変換することで、太陽光パネルの発電量をさらに精度良く推定することが可能となる。
【0058】
また、実測データ(教師データ)の日射量の種類が水平面直達日射量、気象予測データの日射量の種類が水平面全天日射量の場合、日射量変換部221によって気象予測データの水平面全天日射量を実測データ(教師データ)の水平面直達日射量に変換することで、太陽光パネルの発電量をさらに精度良く推定することが可能となる。
【0059】
また、実測データ(教師データ)の日射量の種類が傾斜面直達日射量、気象予測データの日射量の種類が水平面全天日射量の場合、日射量変換部221によって気象予測データの水平面全天日射量を実測データ(教師データ)の傾斜面直達日射量に変換することで、太陽光パネルの発電量をさらに精度良く推定することが可能となる。
【0060】
もちろん、実測データ(教師データ)の日射量の種類が水平面全天日射量、気象予測データの日射量の種類が水平面全天日射量の場合のように、実測データ(教師データ)の日射量の種類と気象予測データの日射量の種類が一致しているときでも対応可能である。
【0061】
〔ソフトウェアによる実現例〕
発電量推定装置2の制御ブロック(特に日射量変換部221、気温変換部222、制御部223)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0062】
後者の場合、発電量推定装置2は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0063】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る発電量推定装置は、気象予測データを取得する取得部と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、を備える。
【0064】
本発明の態様2に係る発電量推定装置は、上記態様1において、前記学習済みモデルは、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測時の時刻情報と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習モデルである。
【0065】
本発明の態様3に係る発電量推定装置は、上記態様1または2において、前記実測された日射量は、水平面全天日射量の実測データであって、前記推定部は、前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部を備え、前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される。
【0066】
本発明の態様4に係る発電量推定装置は、上記態様1または2において、前記実測された日射量は、前記太陽光パネルに対応した傾斜面全天日射量の実測データであって、前記推定部は、前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記太陽光パネルに対応した傾斜面全天日射量の予測データに変換する日射量変換部と、前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、前記傾斜面全天日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される。
【0067】
本発明の態様5に係る発電量推定装置は、上記態様1または2において、前記実測された日射量は、水平面直達日射量の実測データであって、前記推定部は、前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記水平面直達日射量の予測データに変換する日射量変換部と、前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、前記水平面直達日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される。
【0068】
本発明の態様6に係る発電量推定装置は、上記態様1または2において、前記実測された日射量は、前記太陽光パネルに対応した傾斜面直達日射量の実測データであって、前記推定部は、前記気象予測データに含まれる水平面全天日射量の予測データを前記太陽光パネルに対応した傾斜面直達日射量の予測データに変換する日射量変換部と、前記気象予測データに含まれる気温の予測データを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データに変換する気温変換部と、を備え、前記傾斜面直達日射量の予測データと前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データとが、前記学習済みモデルに入力される。
【0069】
本発明の態様7に係る発電量推定装置は、上記態様3~6のいずれかにおいて、前記気温変換部は、次式(式1)および(式2)を用いて、前記気象予測データに含まれる気温の予測データTbfを前記太陽光パネルの周辺の気温の予測データTafに変換する。
【0070】
af=Tbf+γΔT ・・・(式1)
af:気象予測データの補正後の気温(℃)
bf:気象予測データの補正前の気温(℃)
γ:補正係数
ΔT:補正分の気温(℃)
【0071】
【数1】
T,G:傾斜面全天日射量(W/m2
:水平面全天日射量(W/m2
ρ:地面の反射率
δ:シュテファン=ボルツマン定数(=5.670374419×10-8[W/(mK2)2])
:気象予測データの風速(m/s)
h:太陽高度(°)。
【0072】
本発明の態様8に係る発電量推定装置は、気象予測データを取得する取得部と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する推定部と、を備える。
【0073】
本発明の態様9に係る発電量推定装置は、上記態様8において、前記学習済みモデルは、実測された日射量と、実測時の時刻情報と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習モデルである。
【0074】
本発明の態様10に係る発電量推定方法は、気象予測データを取得する工程と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する工程と、を含む。
【0075】
本発明の態様11に係るプログラムは、コンピュータに、気象予測データを取得する処理と、実測された日射量と、実測された太陽光パネルの周辺の気温と、実測された前記太陽光パネルの発電量との組を教師データとして学習させた学習済みモデルを用いて、前記気象予測データに含まれる日射量の予測データおよび気温の予測データから前記太陽光パネルの発電量を推定する処理と、を実行させる。
【0076】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
1 学習装置
2 発電量推定装置
11 学習済みモデル
12 日射量測定器
13 気温測定器
14 RTC
15 発電量測定器
21 取得部
22 推定部
221 日射量変換部
222 気温変換部
223 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6