(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088397
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 9/14 20060101AFI20240625BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240625BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240625BHJP
B05D 3/04 20060101ALI20240625BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B05C9/14
B05D7/00 A
B05D3/02 D
B05D3/04 Z
B05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203536
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中谷 耕太
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC05
4D075AC80
4D075AC88
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB57Z
4D075BB91Z
4D075CA02
4D075CA03
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DC18
4D075DC24
4D075EA05
4F041AA12
4F041AB01
4F041CA02
4F041CA12
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA19
4F042DB02
4F042DB17
4F042DB39
4F042DF23
(57)【要約】
【課題】レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制する。
【解決手段】塗工装置(101)は、搬送経路(20)にて搬送される基材フィルム(1)の表面(1A)にコーティング膜(2)を形成する塗工部(30)と、基材フィルム(1)の表面(1A)上のコーティング膜(2)を熱風乾燥するドライヤー(40)と、ドライヤー(40)の上流側に配された、無風または微風でコーティング膜(2)を加熱乾燥するプレ乾燥部(50)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材フィルムを搬送する搬送経路と、
前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工部と、
前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥部と、
前記熱風乾燥部の上流側に配された、無風または微風で前記塗工膜を加熱乾燥するプレ乾燥部と、を備える、塗工装置。
【請求項2】
前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面側に配置された第1プレ乾燥部を備える、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記プレ乾燥部は、前記第1プレ乾燥部の下流側に配置された第2プレ乾燥部を備える、請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記第2プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面と反対側に配置されている、請求項3に記載の塗工装置。
【請求項5】
前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して下側に配置されている、請求項1~4の何れか1項に記載の塗工装置。
【請求項6】
前記塗工部は、前記基材フィルムの下面に前記塗工膜を形成するように配置され、
前記搬送経路は、前記熱風乾燥部の上流部分において、前記塗工膜の形成面が下側になるように前記基材フィルムが水平方向に対して上側に立ち上がって搬送されるように構成された立ち上り部分を有し、
前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面側に配置された第1プレ乾燥部を備え、
前記第1プレ乾燥部は、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムにおいて、前記立ち上り部分または当該立ち上り部分よりも上流部分の下側に配置されている、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項7】
前記搬送経路は、前記立ち上り部分から下流へ前記基材フィルムが立ち上り反転して搬送されるように構成された反転部分を有し、
前記プレ乾燥部は、前記第1プレ乾燥部の下流側に配置された第2プレ乾燥部を備え、
前記第2プレ乾燥部は、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムにおいて、前記反転部分または当該反転部分よりも下流部分の下側に配置されている、請求項6に記載の塗工装置。
【請求項8】
長尺の基材フィルムを搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工工程と、
前記搬送工程にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、
前記熱風乾燥工程の前に、無風または微風で前記塗工膜を加熱乾燥するプレ乾燥工程と、を含む、基材フィルムに塗工膜を形成する塗工方法。
【請求項9】
基材フィルムに塗工膜が積層された積層フィルムの製造方法であって、
請求項8に記載の塗工方法を一工程として含む、積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性樹脂材料を有機溶媒に溶解した塗工液を基材またはフィルム上に塗工し、塗工により形成される塗工膜を乾燥することによって機能性塗工膜を製造する技術が知られている。例えば、特許文献1には、塗工膜を接触式加熱手段に接触させると共に熱風を塗工膜にあてて塗工膜から水を除去する技術が開示されている。
【0003】
また、近年、スマートフォン等のディスプレイのフレキシブル化のため、リジットなガラス材料の代替としてフレキシブルな樹脂フィルムが検討されている。樹脂フィルムにガラスに匹敵する硬度を持たせるために、樹脂フィルムの表面にハードコート層を設けたハードコートフィルムが用いられている。
【0004】
ハードコート層は、樹脂フィルムの表面に、塗工液として光硬化性または熱硬化性のコーティング液(ハードコート組成物)を塗布して塗工膜(ハードコート層)を形成し、必要に応じて溶媒を除去した後に、組成物を硬化させることにより形成される。
【0005】
ハードコートフィルムの塗工生産ラインにおいても、特許文献1の技術と同様に、樹脂フィルムに塗工液を塗布した後、熱風をあてることにより塗工膜の固化と溶媒の除去が実施される。例えば、樹脂フィルムに塗布された塗工膜は、ドライヤー内で、熱風を用いて加熱および乾燥される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ハードコート組成物を塗工液とした塗工膜は、塗工膜の搬送過程において、流動性があり、レベリング性(塗工膜平滑性)が低下する。それゆえ、上述のような、特許文献1の乾燥技術を採用した従来技術では、ドライヤー内で塗工膜に熱風をあてたことに起因して、塗工膜に顕著な外観ムラが発生する。
【0008】
本発明の一態様は、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制し得る塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)長尺の基材フィルムを搬送する搬送経路と、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工部と、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥部と、前記熱風乾燥部の上流側に配された、無風または微風で前記塗工膜を加熱乾燥するプレ乾燥部と、を備える、塗工装置。
【0011】
(2)前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面側に配置された第1プレ乾燥部を備える、(1)の塗工装置。
【0012】
(3)前記プレ乾燥部は、前記第1プレ乾燥部の下流側に配置された第2プレ乾燥部を備える、(1)または(2)の塗工装置。
【0013】
(4)前記第2プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面と反対側に配置されている、(3)の塗工装置。
【0014】
(5)前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して下側に配置されている、(1)~(4)の何れかの塗工装置。
【0015】
(6)前記塗工部は、前記基材フィルムの下面に前記塗工膜を形成するように配置され、前記搬送経路は、前記熱風乾燥部の上流部分において、前記塗工膜の形成面が下側になるように前記基材フィルムが水平方向に対して上側に立ち上がって搬送されるように構成された立ち上り部分を有し、前記プレ乾燥部は、前記基材フィルムに対して前記塗工膜の形成面側に配置された第1プレ乾燥部を備え、前記第1プレ乾燥部は、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムにおいて、前記立ち上り部分または当該立ち上り部分よりも上流部分の下側に配置されている、(1)~(5)の何れかの塗工装置。
【0016】
(7)前記搬送経路は、前記立ち上り部分から下流へ前記基材フィルムが立ち上り反転して搬送されるように構成された反転部分を有し、前記プレ乾燥部は、前記第1プレ乾燥部の下流側に配置された第2プレ乾燥部を備え、前記第2プレ乾燥部は、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムにおいて、前記反転部分または当該反転部分よりも下流部分の下側に配置されている、(6)の塗工装置。
【0017】
(8)長尺の基材フィルムを搬送する搬送工程と、前記搬送工程により搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工工程と、前記搬送工程にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、前記熱風乾燥工程の前に、無風または微風で前記塗工膜を加熱乾燥するプレ乾燥工程と、を含む、基材フィルムに塗工膜を形成する塗工方法。
【0018】
(9)基材フィルムに塗工膜が積層された積層フィルムの製造方法であって、(8)の塗工方法を一工程として含む、積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態1に係る塗工装置を用いて製造された積層フィルムの概略構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る塗工装置を備えた積層フィルムの製造装置の一例の概略構成を示す図である。
【
図3】
図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例を概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例として、フィンチューブを備えたプレ乾燥部の概略構成を示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る塗工装置を備えた積層フィルムの製造装置の一例の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0022】
<本発明の一実施形態の技術的思想>
上述したハードコートフィルムに対しては、ガラス代替フィルムとしての屈曲性、硬度等に対して高い物性レベルが求められるのに加えて、その外観に対しても、高い品質レベルが求められている。ここで、ハードコート(以下、HCと称する場合がある)層に対して、さらに耐指紋(以下、AF:Anti-Fingerprintと称する場合がある)性を付与するための層を積層するに際し、リコート性を確保する過程で、ハードコート組成物からなる塗工膜(以下、ハードコート塗工膜と称する場合がある)のレベリング性が低下し、HC層の外観ムラが悪化するという問題がある。
【0023】
当該HC層の外観ムラに対して鋭意検討した結果、本発明者らは、外観ムラは、基材フィルムの表面に形成された塗工膜を熱風乾燥するドライヤーに起因することを見出した。すなわち、従来の熱風乾燥処理では、流動性があるハードコート塗工膜は、熱風をあてることにより、固化するとともに溶媒が除去される。このとき、塗工膜が形成された基材フィルムは、狭い間口を介して、ドライヤー内に搬送される。さらには、ドライヤー内では、基材フィルムに形成された塗工膜に対して、ノズルを介して比較的風速が高い熱風をあてている。本発明者は、次の(1)および(2)に起因して、従来の熱風乾燥処理によって、ハードコート塗工膜の外観ムラが生じることを見出した。(1)狭い間口を介して搬送することにより、レベリング性が低いハードコート塗工膜が、間口部分に発生する僅かな空気の流れによっても表面不良が発生する。さらに、(2)このハードコート塗工膜は、ノズルを介した熱風により顕著な表面不良が発生する。
【0024】
上記(1)および(2)の原因に対して鋭意検討した結果、本発明者は、ドライヤーによる熱風乾燥処理の前に、ハードコート塗工膜に対して、無風または微風のプレ乾燥処理を行うことにより、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できることを見出し、本実施形態に至った。本実施形態によれば、ハードコート塗工膜に対して、無風または微風のプレ乾燥処理を行うので、表面不良が発生することなく、ハードコート塗工膜を固化できる。このため、プレ乾燥処理に続く熱風乾燥処理において、ハードコート塗工膜の顕著な表面不良の発生を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できる。その結果、本実施形態によれば、品質レベルが高いハードコートフィルムを製造することができる。
【0025】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る塗工装置を用いて製造された積層フィルム7の概略構成を示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、積層フィルム7は、基材フィルム1と、基材フィルム1の表面1A(塗工面)に積層されたコーティング層3と、を備えている。コーティング層3は、基材フィルム1の表面1Aに塗工されたコーティング膜2(
図2参照)が硬化したものである。ここで、基材フィルム1において、コーティング膜2またはコーティング層3が設けられた面を表面1Aとし、その反対側の面を裏面1Bとする
図2は、本実施形態に係る塗工装置101を備えた積層フィルム7の製造装置100の一例の概略構成を示す図である。
図2に示すように、製造装置100は、繰出しロール11と、塗工装置101と、硬化部80と、巻取りロール71と、備えている。
【0027】
繰出しロール11には、長尺の基材フィルム1がロール状に巻回された巻回体10が巻き掛けられている。巻回体10から繰り出された帯状の基材フィルム1は、塗工装置101へと搬送される。
【0028】
塗工装置101では、基材フィルム1の表面1Aにコーティング液が塗工され、コーティング膜2が形成される。そして、コーティング膜2は、加熱され、溶媒が乾燥除去される。
【0029】
塗工装置101によって、コーティング膜2が塗工された基材フィルム1は、搬送経路60により連続搬送される。搬送経路60は、搬送ロール61~64によって形成されている。硬化部80は、コーティング膜2を硬化しコーティング層3を形成するものである。例えば、コーティング液に使用される硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合、硬化部80は、コーティング膜2に対して活性エネルギー線を照射する光源を備えている。当該光源は、光硬化樹脂の硬化に使用される活性エネルギー線の種類に応じて適宜設定可能であるが、例えばUV照射機である。また、コーティング液に使用される硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、コーティング膜2に対して所定の温度に加熱する熱源を備えている。なお、コーティング液に使用される硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、硬化部80は省略可能である。この場合、製造装置100は、塗工装置101によるコーティング膜2の溶媒の乾燥除去とともに、コーティング膜2を熱硬化する構成であってもよい。
【0030】
このように、製造装置100は、搬送経路60に沿って連続搬送される、コーティング膜2が塗工された基材フィルム1に対して、硬化部80にてコーティング膜2を硬化する構成となっている。そして、これにより、基材フィルム1上にコーティング層3が形成された積層フィルム7が製造される。積層フィルム7は、巻取りロール71により巻き取られ、長尺フィルムの巻回体70となる。
【0031】
塗工装置101は、搬送経路20と、塗工部30と、ドライヤー40(熱風乾燥部)と、プレ乾燥部50と、を備えている。
【0032】
搬送経路20は、長尺の基材フィルム1を搬送する経路である。具体的には、搬送経路20は、基材フィルム1をドライヤー40へ連続搬送するための経路であり、搬送ロール21~28によって形成されている。
【0033】
繰出しロール11から繰り出された基材フィルム1は、搬送ロール21により下流に連続的に移動し、塗工部30に搬送される。
【0034】
塗工部30は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1の表面1Aにコーティング膜2(塗工膜)を形成する。塗工部30は、ダイス31と、バックアップロール32と、を備えている。ダイス31は、タンクから供給されるコーティング液を、基材フィルム1の表面1Aに吐出する。バックアップロール32は、基材フィルム1の表面1Aにコーティング液が塗工されるときに基材フィルム1の裏面1Bを支持する役割を有する。ダイス31とバックアップロール32とは互いに対向している。塗工部30では、バックアップロール32に基材フィルム1の裏面1Bが接している状態で、基材フィルム1の表面1Aに、ダイス31から吐出されたコーティング液が塗工される。
【0035】
なお、
図2に示す構成では、塗工部30は、ダイス31を有するダイコータである。塗工部30は、ダイコータに限定されず、基材フィルム1の表面に対してコーティング液を一様に塗布できる構成であれば、特に限定されない。塗工部30として、例えば、グラビアコーター、バーコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0036】
表面1Aにコーティング膜2が形成された基材フィルム1は、搬送ロール22~28によって形成された搬送経路に沿って、ドライヤー40に搬送される。ドライヤー40は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1の表面1Aに形成されたコーティング膜2を熱風乾燥する。ドライヤー40は、コーティング膜2を熱風乾燥可能な構成であれば、特に限定されない。例えば、ドライヤー40は、加熱炉である。当該加熱炉は、炉内に基材フィルム1が入る間口を有し、熱源を備えた熱風生成部、および熱風生成部からの熱風をコーティング膜2へあてるノズルを炉内に備えた構成である。
【0037】
ドライヤー40内での加熱温度は、特に限定されず、40℃~200℃であることが好ましく、50℃~120℃であることがより好ましい。また、ドライヤー40内にてコーティング膜2にあてる熱風の風速は、特に限定されず、0.1m/s~20m/sであることが好ましく、1m/s~10m/sであることがより好ましい。ドライヤー40内での加熱温度およびドライヤー40内での熱風の風速が上記数値範囲内であることによって、コーティング膜中の溶媒分の乾燥除去という効果を奏する。
【0038】
なお、本実施形態に係る製造装置100は、
図2に示す構成に限定されず、積層フィルムの製造装置の従来公知の構成を採用することができる。例えば、製造装置100において、基材フィルム1を搬送する搬送経路20を構成する部材は、搬送ロール21~28に限定されず、適宜、ニップロールを含んでいてもよい。また、製造装置100は、コーティング膜2の表面を処理する表面処理部を備えていてもよい。当該表面処理部は、塗工部30により塗工されたコーティング膜2に発生するスジなどの外観不良を低減または解消する機能を有し、回転体等を備える。
【0039】
(搬送経路20)
図2に示すように、製造装置100において、搬送経路20は、立ち上り部分20Aと、反転部分20Bと、を有する。立ち上り部分20Aは、搬送ロール23、24、および25によって形成される搬送路である。立ち上り部分20Aは、ドライヤー40の上流部分において、搬送ロール21および22により形成され水平方向に延びる搬送路に対して、搬送方向の下流側へ立ち上がって設けられている。立ち上り部分20Aにおいては、基材フィルム1は、コーティング膜2の形成面である表面1Aが下側になるように、水平方向に対して上側に立ち上がって搬送される。
【0040】
また、反転部分20Bは、搬送ロール25、26、および27によって形成される搬送路である。反転部分20Bは、立ち上り部分20Aの下流側から立ち上り、立ち上り部分20Aに対して方向を前後反転して延びる。反転部分20Bとは立ち上り部分20Aと、上下方向において屈曲した構成となっている。反転部分20Bでは、基材フィルム1は、立ち上り部分20Aから下流へ立ち上り反転して搬送されることになる。反転部分20Bでは、基材フィルム1は、コーティング膜2の形成面である表面1Aが上側になっている。
【0041】
(プレ乾燥部50)
ここで、製造装置100は、プレ乾燥部50を備えている。プレ乾燥部50は、ドライヤー40の上流側に配されている。また、プレ乾燥部50は、無風または微風でコーティング膜2を加熱乾燥する。
【0042】
ここで、製造装置100においては、塗工部30により塗工されたコーティング膜2は、ドライヤー40内の熱風により乾燥処理される。ドライヤー40内では、流動性があるコーティング液からなるコーティング膜2の固化、およびコーティング液の溶媒の除去が行われる。しかし、コーティング液の粘度が比較的低く、レベリング性が低い場合、コーティング膜2は、ドライヤー40内に吹き付ける熱風に起因して、顕著な外観ムラが発生するおそれがある。
【0043】
製造装置100においては、ドライヤー40の上流側に、無風または微風でコーティング膜2を加熱乾燥するプレ乾燥部50が配置されている。このプレ乾燥部50により、基材フィルム1に形成されたコーティング膜2は、ドライヤー40に入る前に、外観ムラを発生させることなく、固化することになる。このため、ドライヤー40内でのコーティング膜2の顕著な外観ムラの発生を抑制することができる。よって、製造装置100によれば、レベリング性が低いコーティング膜2であっても外観ムラを抑制できる。特に、コーティング膜2がハードコート塗工膜である場合、品質レベルが高いハードコートフィルムを製造することができる。
【0044】
ここで、「無風または微風」とは、コーティング膜2に対して外観ムラが発生しない程度の風速である。コーティング膜2がハードコート塗工膜である場合、「無風または微風」は、0m/s~0.5m/sであることが好ましく、0m/s~0.1m/sであることがより好ましい。また、プレ乾燥部50による加熱温度は、外観ムラが発生しない程度にコーティング膜2を固化する温度であればよい。コーティング膜2がハードコート塗工膜である場合、プレ乾燥部50による加熱温度は、20℃~50℃であることが好ましく、25℃~45℃であることがより好ましい。
【0045】
プレ乾燥部50は、基材フィルム1に対してコーティング膜2の形成面である表面1A側に配置された第1プレ乾燥部51を備えることが好ましい。これにより、ドライヤー40に入る前に、基材フィルム1に形成されたコーティング膜2を有効に固化することができる。
【0046】
さらに、プレ乾燥部50は、第1プレ乾燥部51の下流側に配置された第2プレ乾燥部52を備えることが好ましい。これにより、基材フィルム1は、第1プレ乾燥部51によって、コーティング膜2の形成面(表面1A)側から加熱された後、さらに、第2プレ乾燥部52により加熱されることになる。それゆえ、ドライヤー40に入る前に、より確実にコーティング膜2を固化することができる。
【0047】
第2プレ乾燥部52の配置は、特に限定されず、基材フィルム1に対して、表面1A側、および裏面1B側の少なくとも一方の側の配置であればよい。例えば、
図2に示す製造装置100においては、第2プレ乾燥部52は、基材フィルム1に対してコーティング膜2の形成面と反対側、すなわち裏面1B側に配置されている。
【0048】
図2に示す製造装置100において、プレ乾燥部50は、第1プレ乾燥部51および第2プレ乾燥部52の両方を備えている。しかし、本実施形態に係る製造装置100において、プレ乾燥部50は、
図2に示す構成に限定されず、第1プレ乾燥部51および第2プレ乾燥部52の少なくとも一方を備えていればよい。プレ乾燥部50は、少なくとも第1プレ乾燥部51を備えていることが好ましい。
【0049】
図2に示すように、搬送経路20が立ち上り部分20Aを有している場合、第1プレ乾燥部51は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1において、立ち上り部分20Aまたは立ち上り部分20Aよりも上流部分の下側に配置されていることが好ましい。第1プレ乾燥部51より放出される熱は、無風また微風であるので、熱対流により、下側から上側へ移動することになる。一方、立ち上り部分20Aおよびその上流部分にて搬送される基材フィルム1において、コーティング膜2の形成面(表面1A)は、下側にある。それゆえ、立ち上り部分20Aおよびその上流部分の下側に第1プレ乾燥部51を配置することにより、効率的にコーティング膜2を固化することができる。
【0050】
また、
図2に示すように、搬送経路20が反転部分20Bを有している場合、第2プレ乾燥部52は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1において、反転部分20Bまたは反転部分20Bよりも下流部分に配置されていることが好ましい。また、第2プレ乾燥部52より放出される熱は、第1プレ乾燥部51と同様に、無風また微風であるので、熱対流により、下側から上側へ移動することになる。それゆえ、反転部分20Bまたは反転部分20Bよりも下流部分に第2プレ乾燥部52を配置する場合、上記熱対流の特性から、第2プレ乾燥部52は、反転部分20Bまたは反転部分20Bよりも下流部分の下側に配置されていることが好ましい。このような配置では、第2プレ乾燥部52は、裏面1Bから基材フィルム1を加熱することになる。
【0051】
プレ乾燥部50は、無風または微風で熱を放出できる構成であれば、従来公知の構成を採用することができる。
図3は、プレ乾燥部50の構成例を概略的に示す斜視図である。なお、
図3および
図4に示すプレ乾燥部50の構成例は、第1プレ乾燥部51および第2プレ乾燥部52に対して適用可能であることはいうまでもない。
【0052】
図3に示すように、プレ乾燥部50は、熱媒循環型プレートヒーターであってもよい。当該プレートヒーターは、熱媒が流通する供給管54と、放熱板55と、を備えている。供給管54は、放熱板55に熱媒を供給するための管であり、放熱板55内で熱媒を循環させる内部流路を有する。当該内部流路を循環する熱媒により、放熱板55が加熱し、外部へ熱を放出する。
【0053】
供給管54を流通する熱媒は、特に限定されず、従来公知の熱媒を採用できる。当該熱媒としては、例えば、空気、蒸気等の気体;オイル、水等の液体が挙げられる。また、放熱板55の材料および構造は、熱媒からの熱を放熱可能であれば、従来公知の技術を採用することができる。例えば、放熱板55の材料は、ステンレス鋼、銅、アルミニウムといった、熱伝導率が高い素材から構成されている。
【0054】
また、放熱板55は、フィンを備えた構成であってもよい。このようなフィンを備えたプレ乾燥部は、例えば、フィンチューブ式のヒーターが挙げられる。
図4は、プレ乾燥部50の構成例として、フィンチューブを備えたプレ乾燥部50Aの概略構成を示す断面図である。
【0055】
図4に示すように、プレ乾燥部50Aは、供給管54とフィン55Aとを備えたフィンチューブを有する。例えばこのフィンチューブが板状に折れ曲がることにより、プレートヒーターが構成される。フィン55Aは、供給管54を取り囲むように設けられている。フィン55Aの構造により、フィンチューブは、外気との接触面積が増大する。それゆえ、フィン55Aにより、供給管54を流通する熱媒からの熱を効率的に放出できる。
【0056】
(塗工方法)
本実施形態に係る塗工方法は、基材フィルム1にコーティング膜2を形成する方法であり、搬送工程と、塗工工程と、熱風乾燥工程と、プレ乾燥工程と、を含む。本実施形態に係る塗工方法は、上記工程を含んでいればよく、例えば、
図2に示す塗工装置101を用いた塗工方法が挙げられる。以下、
図2に示す塗工装置101を用いた方法として、本実施形態に係る塗工方法を説明する。
【0057】
(搬送工程)
上記搬送工程では、長尺の基材フィルム1を搬送する。具体的には、
図2に示すように、繰出しロール11から長尺の基材フィルム1を巻き出して、長手方向に連続搬送する。搬送工程では、
図2に示す搬送ロール21~28により形成される搬送経路20に沿って、基材フィルム1が連続搬送されることになる。
【0058】
(基材フィルム1)
基材フィルム1は、厚さが均一であり、かつ可撓性があるフィルムまたはシート状の基材を長尺帯状に形成したものであることが好ましい。基材フィルム1の材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、紙、布、金属などが挙げられ、用途に応じて適宜選択され得る。基材フィルム1の材料としては、透明性のあるプラスチックフィルムであれば特に制限されることなく使用可能である。基材フィルム1を構成する材料が樹脂である場合、当該材料として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;セルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリイミド;これら樹脂の混合物等が挙げられる。積層フィルムの用途がスマートフォン等のディスプレイである場合、これら樹脂の中でも、基材フィルム1の材料は、ポリイミド系樹脂であることが好ましい。
【0059】
基材フィルム1の膜厚は、10μm~300μmが好ましく、20μm~200μmがより好ましい。基材フィルム1の膜厚が10μm未満であると、基材フィルム1の強度が低下することで加工性が劣化し、また300μmを超えると透明性が低下するか、または基材フィルム1の重量が大きくなるという問題が生じる。
【0060】
基材フィルム1の形状は、連続搬送可能な帯状であればよく、幅(短手方向)および長さ(長手方向)は限定されない。基材フィルムの幅は、搬送性安定化の点で、好ましくは1cm~200cm、より好ましくは10cm~100cmである。基材フィルムの長さは、巻き取り後のハンドリング性の点で、100cm~100000cmであることが好ましい。
【0061】
基材フィルム1は、単層または他の層を含む複数層から形成されてもよい。複数層から形成される場合、他の層としては、接着材層、粘着剤層等が挙げられる。また裏面に同様のコーティング層3が形成されていてもよい。
【0062】
(塗工工程)
上記塗工工程では、上記搬送工程により搬送される基材フィルム1の表面1Aにコーティング膜2(塗工膜)を形成する。
図2に示すように、上記塗工工程では、バックアップロール32に基材フィルム1の裏面1Bが接している状態で、基材フィルム1の表面1A上に、ダイス31から吐出されたコーティング液が塗布される。
【0063】
基材フィルム1上にコーティング液を塗布する方法は、
図2に示すようなダイコータを用いた方法に限定されず、グラビアコーター、バーコーター、スプレーコーター等を用いた方法であってもよい。
【0064】
(コーティング液)
コーティング液は、コーティング膜2の原料であり、硬化性樹脂、硬化剤、および溶剤に加えて、添加剤を更に含んでよい。コーティング膜2は、積層フィルムに含まれるコーティング層の乾燥前の状態をいう。コーティング液に使用される硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもかまわない。また、コーティング液に使用される硬化剤は、光重合開始剤であっても熱重合開始剤であってもよい。
【0065】
コーティング液に使用される硬化性樹脂(光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)は、2個以上の重合性(光重合性、熱重合性)の官能基を有する多官能化合物である。多官能化合物はモノマーまたはオリゴマーであってもよい。重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基、およびエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基が挙げられる。
【0066】
コーティング液に使用される硬化性樹脂の具体例として、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂として、WO2018/096729号、WO2014/204010号、特開2017-8142号公報等に開示されている、光重合性官能基としてエポキシ基を有するポリシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0067】
硬化剤が熱重合開始剤である場合、当該熱硬化開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂となる。また、硬化剤が光重合開始剤である場合、当該光重合開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は光硬化性樹脂となる。
【0068】
光重合開始剤としては、硬化性樹脂の重合性に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)等を用いればよい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミノキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素等の強酸;スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩類;鉄-アレン錯体類;シラノール-金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類等のスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類等が挙げられる。
【0069】
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.05~10重量部程度であり、0.1~5重量部、または0.2~2重量部であってもよい。
【0070】
光重合開始剤以外に、感光性の向上等を目的として光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤としては、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。中でも、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、およびベンゾフェノン誘導体が好ましい。
【0071】
コーティング液には、微粒子、着色剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、ハードコート組成物は、上記の光硬化性樹脂に加えて、熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料を含んでいてもよい。
【0072】
コーティング液には、無溶媒型でもよく、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、フィルム基材を溶解させないものが好ましい。一方、ポリイミドフィルムを膨潤させる程度の溶解性を有する溶媒を用いることにより、基材のフィルムとコーティング層との密着性が向上する場合がある。
【0073】
溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類:ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類が挙げられる。
【0074】
溶剤は、コーティング液を100重量%とした場合、5~90重量%、好ましくは、10~85重量%の範囲で含まれていてよい。溶剤が5重量%未満の場合は、高粘度となることでコーティング膜表面のレベリング作用が低下し、コーティング不良が発生しやすくなる。また90重量%を超える場合は、コーティング膜の膜厚の調整が難しく、外観不良が生じるという不具合がある。
【0075】
(コーティング液の調製)
コーティング液の調製方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサー等による混合、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダー等による混練等を行ってもよい。
【0076】
コーティング液は、比較的低粘度のコーティング液を用いた場合のコーティング膜の外観欠陥解消に有効であることから、1cp~100cpの粘度を有することが好ましく、5cp~80cpの粘度がより好ましく10cp~70cpの粘度がさらに好ましい。
【0077】
(熱風乾燥工程)
上記熱風乾燥工程では、上記搬送工程にて搬送される基材フィルム1の表面1Aに形成されたコーティング膜2を熱風乾燥する。上記熱風乾燥工程では、ドライヤー40を用いて、コーティング膜2に熱風をあてることにより、コーティング膜2を固化するとともに、溶媒を除去する。
【0078】
(プレ乾燥工程)
上記プレ乾燥工程では、上記熱風乾燥工程の前に、無風または微風でコーティング膜2を加熱乾燥する。
図2に示すように、プレ乾燥工程では、第1プレ乾燥部51および第2プレ乾燥部52を備えたプレ乾燥部50を用いて、基材フィルム1上のコーティング膜2をプレ乾燥する。
【0079】
本実施形態に係る塗工方法によれば、上記プレ乾燥工程を行うことによって、レベリング性が低いコーティング膜2であっても外観ムラを抑制できる。
【0080】
なお、本実施形態に係る塗工方法は、上記搬送工程、上記塗工工程、および上記熱風乾燥工程、プレ乾燥工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
【0081】
例えば、本実施形態に係る塗工方法は、基材フィルム1に塗工されたコーティング膜2の表面処理を行う表面処理工程を含んでいてもよい。当該表面処理工程では、上記塗工工程の後に、コーティング膜2に回転体を接触させて、コーティング膜2のコーティング液の表面を均している。これにより、塗工工程でコーティング膜2に発生し得るスジ等の欠陥を低減または解消し得る。上記回転体の回転方向は、基材フィルム1の搬送方向に対して、正方向であっても逆方向であってもよい。
【0082】
(積層フィルム7の製造方法)
本実施形態に係る積層フィルム7の製造方法は、基材フィルム1にコーティング膜2(コーティング層3)が積層された積層フィルム7の製造方法である。本実施形態に係る製造方法は、上述した塗工方法を一工程として含む方法である。本実施形態に係る製造方法は、例えば、
図2に示す製造装置100を用いた積層フィルム7の製造方法が挙げられる。
【0083】
本実施形態に係る製造方法は、主に、熱風乾燥工程後に、基材フィルム1に形成されたコーティング膜2を硬化部80により硬化し、コーティング層3を形成する硬化工程を含む。当該硬化工程での硬化方法は、コーティング膜2を硬化可能であれば、従来公知の方法を採用することができる。
【0084】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0085】
図5は、本実施形態に係る塗工装置101Aを備えた積層フィルム7の製造装置100Aの一例の概略構成を示す図である。
図5に示すように、本実施形態に係る塗工装置101Aは、プレ乾燥部50Bの構成が、
図2に示す塗工装置101と異なる。
【0086】
図5に示すように、プレ乾燥部50Bは、第1プレ乾燥部51および第2プレ乾燥部52に加え、第3プレ乾燥部53を備えている。第3プレ乾燥部53は、基材フィルム1の上側から基材フィルム1に対し無風または微風の熱を放出する。第3プレ乾燥部53は、第2プレ乾燥部52と対向するように配置されている。
【0087】
搬送経路20の反転部分20Bから下流側では、基材フィルム1は、コーティング膜2が形成された表面1Aが第3プレ乾燥部53により加熱される一方、裏面1Bは第2プレ乾燥部52により加熱されることになる。
【0088】
第3プレ乾燥部53は、基材フィルム1の上側から熱を放出する構成である。この場合、第3プレ乾燥部53は、輻射熱を利用して、基材フィルム1を上側から加熱する構成である。それゆえ、第3プレ乾燥部53は、搬送経路20にて搬送される搬送経路20との距離等を適宜設定することによって、効率的に基材フィルム1を加熱することが可能である。第3プレ乾燥部53と基材フィルム1との距離は、特に限定されないが、0.5cm~50cmであることが好ましく、1cm~20cmであることがより好ましい。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 基材フィルム
1A 表面
2 コーティング膜(塗工膜)
3 コーティング層
7 積層フィルム
20、60 搬送経路
20A 立ち上り部分
20B 反転部分
30 塗工部
40 ドライヤー(熱風乾燥部)
50、50A、50B プレ乾燥部
51 第1プレ乾燥部
52 第2プレ乾燥部
53 第3プレ乾燥部
100、100A 製造装置
101、101A 塗工装置