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特開2024-88398塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法
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  • 特開-塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088398
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20240625BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240625BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240625BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20240625BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240625BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B05C9/14
B05D7/00 A
B05D3/02 D
B05D3/04 Z
B05C5/02
C09D201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203537
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中谷 耕太
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AC02
4D075AC05
4D075AC80
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075BB24Z
4D075BB33Z
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB57Z
4D075BB91Z
4D075BB95Z
4D075CA02
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB53
4D075DC13
4D075DC18
4D075DC24
4D075EA05
4D075EB33
4D075EB37
4D075EB43
4D075EC08
4D075EC30
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041CA02
4F041CA13
4F041CA22
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA04
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA11
4F042BA19
4F042BA27
4F042DB02
4F042DB25
4F042DB31
4F042DB36
4F042DF19
4F042DF23
4J038DL031
(57)【要約】
【課題】レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制する。
【解決手段】塗工装置(101)は、搬送経路(20)にて搬送される基材フィルム(1)の表面(1A)にコーティング膜(2)を形成する塗工部(30)と、基材フィルム(1)の表面(1A)上のコーティング膜(2)を熱風乾燥するドライヤー(40)と、ドライヤー(40)の上流側に配された、特定の風速のエアでコーティング膜(2)を加熱乾燥するプレ乾燥部(50)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の基材フィルムを搬送する搬送経路と、
前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工部と、
前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥部と、
前記熱風乾燥部の上流側に配された、前記塗工膜へエアを吹き付けて加熱乾燥するプレ乾燥部と、を備え、
前記プレ乾燥部において、0.5分間で測定されるエアの風速は、平均値が0.50m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.10m/s以下である、塗工装置。
【請求項2】
前記プレ乾燥部は、不織布および多孔質体の少なくとも一方を備え、当該不織布または多孔質体の少なくとも一方を通過させたエアを前記塗工膜へ吹き付けるものである、請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記不織布または多孔質体は、差圧294Paかつ温度25℃における空気流量が8.0L/cm・分以下である、請求項2に記載の塗工装置。
【請求項4】
長尺の基材フィルムを搬送する搬送工程と、
前記搬送工程により搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工工程と、
前記搬送工程にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、
前記熱風乾燥工程の前に、前記塗工膜へエアを吹き付けて加熱乾燥するプレ乾燥工程と、を含み、
前記プレ乾燥工程において、0.5分間で測定されるエアの風速は、平均値が0.50m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.10m/s以下である、基材フィルムに塗工膜を形成する塗工方法。
【請求項5】
基材フィルムに塗工膜が積層された積層フィルムの製造方法であって、
請求項4に記載の塗工方法を一工程として含む、積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機能性樹脂材料を有機溶媒に溶解した塗工液を基材またはフィルム上に塗工し、塗工により形成される塗工膜を乾燥することによって機能性塗工膜を製造する技術が知られている。例えば、特許文献1には、基材フィルム上に、塗工液を塗工する工程および被塗工液を乾燥する工程を含む被膜シートの製造方法において、塗膜表面に、フィルムの走行方向に沿って乾燥風を吹き付けることが開示されている。
【0003】
また、近年、スマートフォン等のディスプレイのフレキシブル化のため、リジットなガラス材料の代替としてフレキシブルな樹脂フィルムが検討されている。樹脂フィルムにガラスに匹敵する硬度を持たせるために、樹脂フィルムの表面にハードコート層を設けたハードコートフィルムが用いられている。
【0004】
ハードコート層は、樹脂フィルムの表面に、塗工液として光硬化性または熱硬化性のコーティング液(ハードコート組成物)を塗布して塗工膜(ハードコート層)を形成し、必要に応じて溶媒を除去した後に、組成物を硬化させることにより形成される。
【0005】
ハードコートフィルムの塗工生産ラインにおいても、特許文献1の技術と同様に、樹脂フィルムに塗工液を塗布した後、熱風をあてることにより塗工膜の固化と溶媒の除去が実施される。例えば、樹脂フィルムに塗布された塗工膜は、ドライヤー内で、熱風を用いて加熱および乾燥される。特許文献1では、吹き付ける乾燥風の風速が、4~20m/secであり、フィルム幅方向での風速ばらつきが±30%以下であることが好ましいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-261791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ハードコート組成物を塗工液とした塗工膜は、塗工膜の搬送過程において、流動性があり、レベリング性(塗工膜平滑性)が低下する。それゆえ、上述のような、特許文献1の乾燥技術を採用した従来技術では、ドライヤー内で塗工膜に熱風をあてたことに起因して、塗工膜に顕著な外観ムラが発生する。
【0008】
本発明の一態様は、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制し得る塗工装置、塗工方法、および積層フィルムの製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様は、以下の構成を有する。
【0010】
(1)長尺の基材フィルムを搬送する搬送経路と、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工部と、前記搬送経路にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥部と、前記熱風乾燥部の上流側に配された、前記塗工膜へエアを吹き付けて加熱乾燥するプレ乾燥部と、を備え、前記プレ乾燥部において、0.5分間で測定されるエアの風速は、平均値が0.50m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.10m/s以下である、塗工装置。
【0011】
(2)前記プレ乾燥部は、不織布および多孔質体の少なくとも一方を備え、当該不織布または多孔質体の少なくとも一方を通過させたエアを前記塗工膜へ吹き付けるものである、(1)の塗工装置。
【0012】
(3)前記不織布または多孔質体は、差圧294Paかつ温度25℃における空気流量が8.0L/cm・分以下である、(2)に記載の塗工装置。
【0013】
(4)長尺の基材フィルムを搬送する搬送工程と、前記搬送工程により搬送される基材フィルムの表面に塗工膜を形成する塗工工程と、前記搬送工程にて搬送される基材フィルムの表面に形成された前記塗工膜を熱風乾燥する熱風乾燥工程と、前記熱風乾燥工程の前に、前記塗工膜へエアを吹き付けて加熱乾燥するプレ乾燥工程と、を含み、前記プレ乾燥工程において、0.5分間で測定されるエアの風速は、平均値が0.50m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.10m/s以下である、基材フィルムに塗工膜を形成する塗工方法。
【0014】
(5)基材フィルムに塗工膜が積層された積層フィルムの製造方法であって、(4)の塗工方法を一工程として含む、積層フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る塗工装置を用いて製造された積層フィルムの概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る塗工装置を備えた積層フィルムの製造装置の一例の概略構成を示す図である。
図3図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例として、不織布を備えたプレ乾燥部の概略構成を示す断面図である。
図4図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例として、多孔質体を備えたプレ乾燥部の概略構成を示す断面図である。
図5図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例を概略的に示す斜視図である。
図6図2に示す塗工装置に備えられたプレ乾燥部の構成例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。尚、本明細書においては特記しない限り、数値範囲を表わす「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)、B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0018】
<本発明の一実施形態の技術的思想>
上述したハードコートフィルムに対しては、ガラス代替フィルムとしての屈曲性、硬度等に対して高い物性レベルが求められるのに加えて、その外観に対しても、高い品質レベルが求められている。ここで、ハードコート(以下、HCと称する場合がある)層に対して、さらに耐指紋(以下、AF:Anti-Fingerprintと称する場合がある)性を付与するための層を積層するに際し、リコート性を確保する過程で、ハードコート組成物からなる塗工膜(以下、ハードコート塗工膜と称する場合がある)のレベリング性が低下し、HC層の外観ムラが悪化するという問題がある。
【0019】
当該HC層の外観ムラに対して鋭意検討した結果、本発明者らは、外観ムラは、基材フィルムの表面に形成された塗工膜を熱風乾燥するドライヤーに起因することを見出した。すなわち、従来の熱風乾燥処理では、流動性があるハードコート塗工膜は、熱風をあてることにより、固化するとともに溶媒が除去される。このとき、塗工膜が形成された基材フィルムは、狭い間口を介して、ドライヤー内に搬送される。さらには、ドライヤー内では、基材フィルムに形成された塗工膜に対して、ノズルを介して比較的風速が高い熱風をあてている。本発明者は、次の(1)および(2)に起因して、従来の熱風乾燥処理によって、ハードコート塗工膜の外観ムラが生じることを見出した。(1)狭い間口を介して搬送することにより、レベリング性が低いハードコート塗工膜が、間口部分に発生する僅かな空気の流れによっても表面不良が発生する。さらに、(2)このハードコート塗工膜は、ノズルを介した熱風により顕著な表面不良が発生する。
【0020】
上記(1)および(2)の原因に対して鋭意検討した結果、本発明者は、ドライヤーによる熱風乾燥処理の前に、ハードコート塗工膜に対して、微風且つ風速が均一なエアを吹き付けるプレ乾燥処理を行うことにより、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できることを見出し、本実施形態に至った。本実施形態によれば、ハードコート塗工膜に対して、微風且つ風速が均一なエアを吹き付けるプレ乾燥処理を行うので、表面不良が発生することなく、ハードコート塗工膜を固化できる。このため、プレ乾燥処理に続く熱風乾燥処理において、ハードコート塗工膜の顕著な表面不良の発生を抑制することができる。よって、本実施形態によれば、レベリング性が低い塗工膜であっても外観ムラを抑制できる。その結果、本実施形態によれば、品質レベルが高いハードコートフィルムを製造することができる。
【0021】
<実施形態>
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る塗工装置を用いて製造された積層フィルム7の概略構成を示す断面図である。
【0022】
図1に示すように、積層フィルム7は、基材フィルム1と、基材フィルム1の表面1A(塗工面)に積層されたコーティング層3と、を備えている。コーティング層3は、基材フィルム1の表面1Aに塗工されたコーティング膜2(図2参照)が硬化したものである。ここで、基材フィルム1において、コーティング膜2またはコーティング層3が設けられた面を表面1Aとし、その反対側の面を裏面1Bとする。
【0023】
図2は、本実施形態に係る塗工装置101を備えた積層フィルム7の製造装置100の一例の概略構成を示す図である。図2に示すように、製造装置100は、繰出しロール11と、塗工装置101と、硬化部80と、巻取りロール71と、備えている。
【0024】
繰出しロール11には、長尺の基材フィルム1がロール状に巻回された巻回体10が巻き掛けられている。巻回体10から繰り出された帯状の基材フィルム1は、塗工装置101へと搬送される。
【0025】
塗工装置101では、基材フィルム1の表面1Aにコーティング液が塗工され、コーティング膜2が形成される。そして、コーティング膜2は、加熱され、溶媒が乾燥除去される。
【0026】
塗工装置101によって、コーティング膜2が塗工された基材フィルム1は、搬送経路60により連続搬送される。搬送経路60は、搬送ロール61~63によって形成されている。硬化部80は、コーティング膜2を硬化しコーティング層3を形成するものである。例えば、コーティング液に使用される硬化性樹脂が光硬化性樹脂である場合、硬化部80は、コーティング膜2に対して活性エネルギー線を照射する光源を備えている。当該光源は、光硬化樹脂の硬化に使用される活性エネルギー線の種類に応じて適宜設定可能であるが、例えばUV照射機である。また、コーティング液に使用される硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、コーティング膜2に対して所定の温度に加熱する熱源を備えている。なお、コーティング液に使用される硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合、硬化部80は省略可能である。この場合、製造装置100は、塗工装置101によるコーティング膜2の溶媒の乾燥除去とともに、コーティング膜2を熱硬化する構成であってもよい。
【0027】
このように、製造装置100は、搬送経路60に沿って連続搬送される、コーティング膜2が塗工された基材フィルム1に対して、硬化部80にてコーティング膜2を硬化する構成となっている。そして、これにより、基材フィルム1上にコーティング層3が形成された積層フィルム7が製造される。積層フィルム7は、巻取りロール71により巻き取られ、長尺フィルムの巻回体70となる。
【0028】
塗工装置101は、搬送経路20と、塗工部30と、ドライヤー40(熱風乾燥部)と、プレ乾燥部50と、を備えている。
【0029】
搬送経路20は、長尺の基材フィルム1を搬送する経路である。具体的には、搬送経路20は、基材フィルム1をドライヤー40へ連続搬送するための経路であり、搬送ロール21~23によって形成されている。
【0030】
繰出しロール11から繰り出された基材フィルム1は、搬送ロール21により下流に連続的に移動し、塗工部30に搬送される。
【0031】
塗工部30は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1の表面1Aにコーティング膜2(塗工膜)を形成する。塗工部30は、ダイス31と、バックアップロール32と、を備えている。ダイス31は、タンクから供給されるコーティング液を、基材フィルム1の表面1Aに吐出する。バックアップロール32は、基材フィルム1の表面1Aにコーティング液が塗工されるときに基材フィルム1の裏面1Bを支持する役割を有する。ダイス31とバックアップロール32とは互いに対向している。塗工部30では、バックアップロール32に基材フィルム1の裏面1Bが接している状態で、基材フィルム1の表面1Aに、ダイス31から吐出されたコーティング液が塗工される。
【0032】
なお、図2に示す構成では、塗工部30は、ダイス31を有するダイコータである。塗工部30は、ダイコータに限定されず、基材フィルム1の表面に対してコーティング液を一様に塗布できる構成であれば、特に限定されない。塗工部30として、例えば、グラビアコーター、バーコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0033】
表面1Aにコーティング膜2が形成された基材フィルム1は、搬送ロール22~23によって形成された搬送経路に沿って、ドライヤー40に搬送される。ドライヤー40は、搬送経路20にて搬送される基材フィルム1の表面1Aに形成されたコーティング膜2を熱風乾燥する。ドライヤー40は、コーティング膜2を熱風乾燥可能な構成であれば、特に限定されない。例えば、ドライヤー40は、加熱炉である。当該加熱炉は、炉内に基材フィルム1が入る間口を有し、熱源を備えた熱風生成部、および熱風生成部からの熱風をコーティング膜2へあてるノズルを炉内に備えた構成である。
【0034】
ドライヤー40内での加熱温度は、特に限定されず、40℃~200℃であることが好ましく、50℃~120℃であることがより好ましい。また、ドライヤー40内にてコーティング膜2にあてる熱風の風速は、特に限定されず、0.1m/s~20m/sであることが好ましく、1m/s~10m/sであることがより好ましい。ドライヤー40内での加熱温度およびドライヤー40内での熱風の風速が上記数値範囲内であることによって、コーティング膜中の溶媒分の乾燥除去という効果を奏する。
【0035】
なお、本実施形態に係る製造装置100は、図2に示す構成に限定されず、積層フィルムの製造装置の従来公知の構成を採用することができる。例えば、製造装置100において、基材フィルム1を搬送する搬送経路20を構成する部材は、搬送ロール21~23に限定されず、適宜、ニップロールを含んでいてもよい。また、製造装置100は、コーティング膜2の表面を処理する表面処理部を備えていてもよい。当該表面処理部は、塗工部30により塗工されたコーティング膜2に発生するスジなどの外観不良を低減または解消する機能を有し、回転体等を備える。
【0036】
(プレ乾燥部50)
ここで、製造装置100は、プレ乾燥部50を備えている。プレ乾燥部50は、ドライヤー40の上流側に配されている。また、プレ乾燥部50は、微風且つ風速が均一なエアでコーティング膜2を加熱乾燥する。
【0037】
ここで、製造装置100においては、塗工部30により塗工されたコーティング膜2は、ドライヤー40内の熱風により乾燥処理される。ドライヤー40内では、流動性があるコーティング液からなるコーティング膜2の固化、およびコーティング液の溶媒の除去が行われる。しかし、コーティング液の粘度が比較的低く、レベリング性が低い場合、コーティング膜2は、ドライヤー40内に吹き付ける熱風に起因して、顕著な外観ムラが発生するおそれがある。
【0038】
製造装置100においては、ドライヤー40の上流側に、微風且つ風速が均一なエアでコーティング膜2を加熱乾燥するプレ乾燥部50が配置されている。このプレ乾燥部50により、基材フィルム1に形成されたコーティング膜2は、ドライヤー40に入る前に、外観ムラを発生させることなく、固化することになる。このため、ドライヤー40内でのコーティング膜2の顕著な外観ムラの発生を抑制することができる。よって、製造装置100によれば、レベリング性が低いコーティング膜2であっても外観ムラを抑制できる。特に、コーティング膜2がハードコート塗工膜である場合、品質レベルが高いハードコートフィルムを製造することができる。
【0039】
プレ乾燥部50において、0.5分間で測定されたエアの風速は、平均値が0.50m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.10m/s以下である。これにより、微風且つ風速が均一なエアをコーティング膜2へ吹き付けることができる。前記平均値は、0.4m/s以下であることが好ましく、0.30m/s以下であることがより好ましい。前記平均値の下限は限定されないが、0.05m/s以上であってもよい。前記最大値と最小値との差は0.10m/s未満であることが好ましく、0.09m/s以下であることがより好ましい。前記最大値と最小値との差は可能な限り小さいことが好ましく、理想的には0m/sであることが好ましい。
【0040】
プレ乾燥部50は、前記のようにエアの風速を制御できる構成であれば特に限定されない。例えばプレ乾燥部50は、不織布および多孔質体の少なくとも一方を備えていてもよい。プレ乾燥部50は、当該不織布および多孔質体の少なくとも一方を通過させたエアをコーティング膜2へ吹き付けるものであってもよい。図3は、不織布52を備えたプレ乾燥部50の概略構成を示す断面図である。図3のプレ乾燥部50は、送風機51と不織布52とを備えている。送風機51から送られたエアは不織布52を通過して整流される。図4は、多孔質体53を備えたプレ乾燥部50の概略構成を示す断面図である。図4のプレ乾燥部50は、送風機51と多孔質体53とを備えている。送風機51から送られたエアは多孔質体53を通過して整流される。このようにしてエアの風速を、微風且つ均一に制御することができる。
【0041】
不織布52を構成する繊維としては、金属焼結繊維、合成繊維、天然繊維等が挙げられる。本明細書において金属焼結繊維とは、金属繊維を焼結させて得られた繊維を意味する。エアの風速および空気流量等を好適に制御する観点からは、金属焼結繊維が好ましい。金属焼結繊維を構成する金属としては、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。
【0042】
多孔質体53としては、金属焼結多孔質体、樹脂製多孔質体等が挙げられる。本明細書において金属焼結多孔質体とは、金属粉体を焼結させて得られた多孔質体を意味する。エアの風速および空気流量等を好適に制御する観点からは、金属焼結多孔質体が好ましい。金属焼結多孔質体を構成する金属としては、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル等が挙げられる。
【0043】
不織布52または多孔質体53は、差圧294Paかつ温度25℃における空気流量が8.0L/cm・分以下であることが好ましく、7.0L/cm・分以下であることがより好ましい。前記空気流量が8.0L/cm・分以下であれば、得られる積層フィルムの外観のムラを好適に抑制することができる。前記空気流量の下限は特に限定されないが、0.01L/cm・分以上であってもよく、0.05L/cm・分以上であってもよい。
【0044】
プレ乾燥部50による加熱温度は、外観ムラが発生しない程度にコーティング膜2を固化する温度であればよい。コーティング膜2がハードコート塗工膜である場合、プレ乾燥部50による加熱温度は、20℃~50℃であることが好ましく、25℃~45℃であることがより好ましい。
【0045】
プレ乾燥部50は、コーティング膜2へエアを吹き付けるためのノズルを備え得る。得られる積層フィルムの外観のムラを好適に抑制する観点からは、ノズルとコーティング膜との間の距離は、5~20mmであることが好ましく、8~15mmであることがより好ましい。
【0046】
エアを吹き付ける角度および方向は特に限定されず、コーティング膜2に対して垂直にエアを吹き付けてもよく、搬送方向に角度をつけてもよい。得られる積層フィルムの外観のムラを好適に抑制する観点からは、コーティング膜2に対して垂直にエアを吹き付けることが好ましい。
【0047】
エアを吹き付ける範囲も限定されないが、コーティング膜2の幅方向全体にわたってエアを吹き付けることが好ましい。ここで幅方向とは、コーティング膜2の面内において搬送方向に垂直な方向を意味する。プレ乾燥部50のノズルのエア吹付部(開口部)の形状は、例えばコーティング膜2の幅方向に相当する辺に対して機械方向に相当する辺が短い形状であってもよく、幅方向に相当する辺と機械方向に相当する辺とが同程度の長さである形状であってもよい。例えば図5において、プレ乾燥部50のノズルのエア吹付部は、コーティング膜2の幅方向に相当する辺に対して機械方向に相当する辺が短い。また、図6において、プレ乾燥部50のノズルのエア吹付部は、コーティング膜2の幅方向に相当する辺と機械方向に相当する辺とが同程度の長さである。
【0048】
(塗工方法)
本実施形態に係る塗工方法は、基材フィルム1にコーティング膜2を形成する方法であり、搬送工程と、塗工工程と、熱風乾燥工程と、プレ乾燥工程と、を含む。本実施形態に係る塗工方法は、上記工程を含んでいればよく、例えば、図2に示す塗工装置101を用いた塗工方法が挙げられる。以下、図2に示す塗工装置101を用いた方法として、本実施形態に係る塗工方法を説明する。
【0049】
(搬送工程)
上記搬送工程では、長尺の基材フィルム1を搬送する。具体的には、図2に示すように、繰出しロール11から長尺の基材フィルム1を巻き出して、長手方向に連続搬送する。搬送工程では、図2に示す搬送ロール21~23により形成される搬送経路20に沿って、基材フィルム1が連続搬送されることになる。
【0050】
(基材フィルム1)
基材フィルム1は、厚さが均一であり、かつ可撓性があるフィルムまたはシート状の基材を長尺帯状に形成したものであることが好ましい。基材フィルム1の材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂、紙、布、金属などが挙げられ、用途に応じて適宜選択され得る。基材フィルム1の材料としては、透明性のあるプラスチックフィルムであれば特に制限されることなく使用可能である。基材フィルム1を構成する材料が樹脂である場合、当該材料として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ環状オレフィン等のポリオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;セルロース系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート;ポリイミド;これら樹脂の混合物等が挙げられる。積層フィルムの用途がスマートフォン等のディスプレイである場合、これら樹脂の中でも、基材フィルム1の材料は、ポリイミド系樹脂であることが好ましい。
【0051】
基材フィルム1の膜厚は、10μm~300μmが好ましく、20μm~200μmがより好ましい。基材フィルム1の膜厚が10μm未満であると、基材フィルム1の強度が低下することで加工性が劣化し、また300μmを超えると透明性が低下するか、または基材フィルム1の重量が大きくなるという問題が生じる。
【0052】
基材フィルム1の形状は、連続搬送可能な帯状であればよく、幅(短手方向)および長さ(長手方向)は限定されない。基材フィルムの幅は、搬送性安定化の点で、好ましくは1cm~200cm、より好ましくは10cm~100cmである。基材フィルムの長さは、巻き取り後のハンドリング性の点で、100cm~100000cmであることが好ましい。
【0053】
基材フィルム1は、単層または他の層を含む複数層から形成されてもよい。複数層から形成される場合、他の層としては、接着材層、粘着剤層等が挙げられる。また裏面に同様のコーティング層3が形成されていてもよい。
【0054】
(塗工工程)
上記塗工工程では、上記搬送工程により搬送される基材フィルム1の表面1Aにコーティング膜2(塗工膜)を形成する。図2に示すように、上記塗工工程では、バックアップロール32に基材フィルム1の裏面1Bが接している状態で、基材フィルム1の表面1A上に、ダイス31から吐出されたコーティング液が塗布される。
【0055】
基材フィルム1上にコーティング液を塗布する方法は、図2に示すようなダイコータを用いた方法に限定されず、グラビアコーター、バーコーター、スプレーコーター等を用いた方法であってもよい。
【0056】
(コーティング液)
コーティング液は、コーティング膜2の原料であり、硬化性樹脂、硬化剤、および溶剤に加えて、添加剤を更に含んでよい。コーティング膜2は、積層フィルムに含まれるコーティング層の乾燥前の状態をいう。コーティング液に使用される硬化性樹脂は、光硬化性樹脂であっても、熱硬化性樹脂であってもかまわない。また、コーティング液に使用される硬化剤は、光重合開始剤であっても熱重合開始剤であってもよい。
【0057】
コーティング液に使用される硬化性樹脂(光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)は、2個以上の重合性(光重合性、熱重合性)の官能基を有する多官能化合物である。多官能化合物はモノマーまたはオリゴマーであってもよい。重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和二重結合を有する官能基、およびエポキシ基、オキセタン基等の環状エーテル基が挙げられる。
【0058】
コーティング液に使用される硬化性樹脂の具体例として、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。光硬化性樹脂として、WO2018/096729号、WO2014/204010号、特開2017-8142号公報等に開示されている、光重合性官能基としてエポキシ基を有するポリシロキサン樹脂を用いてもよい。
【0059】
硬化剤が熱重合開始剤である場合、当該熱硬化開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂となる。また、硬化剤が光重合開始剤である場合、当該光重合開始剤との組み合わせにより、硬化性樹脂は光硬化性樹脂となる。
【0060】
光重合開始剤としては、硬化性樹脂の重合性に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)等を用いればよい。光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α-アミノキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。光カチオン重合開始剤としては、トルエンスルホン酸または四フッ化ホウ素等の強酸;スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、セレニウム塩等のオニウム塩類;鉄-アレン錯体類;シラノール-金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類等のスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類等が挙げられる。
【0061】
光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、0.05~10重量部程度であり、0.1~5重量部、または0.2~2重量部であってもよい。
【0062】
光重合開始剤以外に、感光性の向上等を目的として光増感剤を含んでいてもよい。光増感剤としては、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイン誘導体等が挙げられる。中でも、光誘起電子供与性の観点から、アントラセン誘導体、チオキサントン誘導体、およびベンゾフェノン誘導体が好ましい。
【0063】
コーティング液には、微粒子、着色剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、ハードコート組成物は、上記の光硬化性樹脂に加えて、熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料を含んでいてもよい。
【0064】
コーティング液には、無溶媒型でもよく、溶媒を含んでいてもよい。溶媒は、フィルム基材を溶解させないものが好ましい。一方、ポリイミドフィルムを膨潤させる程度の溶解性を有する溶媒を用いることにより、基材のフィルムとコーティング層との密着性が向上する場合がある。
【0065】
溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類:ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類が挙げられる。
【0066】
溶剤は、コーティング液を100重量%とした場合、5~90重量%、好ましくは、10~85重量%の範囲で含まれていてよい。溶剤が5重量%未満の場合は、高粘度となることでコーティング膜表面のレベリング作用が低下し、コーティング不良が発生しやすくなる。また90重量%を超える場合は、コーティング膜の膜厚の調整が難しく、外観不良が生じるという不具合がある。
【0067】
(コーティング液の調製)
コーティング液の調製方法は特に限定されない。例えば、上記の各成分を配合し、ハンドミキサーやスタティックミキサー等による混合、プラネタリーミキサーやディスパー、ロール、ニーダー等による混練等を行ってもよい。
【0068】
コーティング液は、比較的低粘度のコーティング液を用いた場合のコーティング膜の外観欠陥解消に有効であることから、1cp~100cpの粘度を有することが好ましく、5cp~80cpの粘度がより好ましく10cp~70cpの粘度がさらに好ましい。
【0069】
(熱風乾燥工程)
上記熱風乾燥工程では、上記搬送工程にて搬送される基材フィルム1の表面1Aに形成されたコーティング膜2を熱風乾燥する。上記熱風乾燥工程では、ドライヤー40を用いて、コーティング膜2に熱風をあてることにより、コーティング膜2を固化するとともに、溶媒を除去する。
【0070】
(プレ乾燥工程)
上記プレ乾燥工程では、上記熱風乾燥工程の前に、微風且つ風速が均一なエアでコーティング膜2を加熱乾燥する。図2に示すように、プレ乾燥工程では、プレ乾燥部50を用いて、基材フィルム1上のコーティング膜2をプレ乾燥する。
【0071】
本実施形態に係る塗工方法によれば、上記プレ乾燥工程を行うことによって、レベリング性が低いコーティング膜2であっても外観ムラを抑制できる。
【0072】
なお、本実施形態に係る塗工方法は、上記搬送工程、上記塗工工程、および上記熱風乾燥工程、プレ乾燥工程以外の他の工程を含んでいてもよい。
【0073】
例えば、本実施形態に係る塗工方法は、基材フィルム1に塗工されたコーティング膜2の表面処理を行う表面処理工程を含んでいてもよい。当該表面処理工程では、上記塗工工程の後に、コーティング膜2に回転体を接触させて、コーティング膜2のコーティング液の表面を均している。これにより、塗工工程でコーティング膜2に発生し得るスジ等の欠陥を低減または解消し得る。上記回転体の回転方向は、基材フィルム1の搬送方向に対して、正方向であっても逆方向であってもよい。
【0074】
(積層フィルム7の製造方法)
本実施形態に係る積層フィルム7の製造方法は、基材フィルム1にコーティング膜2(コーティング層3)が積層された積層フィルム7の製造方法である。本実施形態に係る製造方法は、上述した塗工方法を一工程として含む方法である。本実施形態に係る製造方法は、例えば、図2に示す製造装置100を用いた積層フィルム7の製造方法が挙げられる。
【0075】
本実施形態に係る製造方法は、主に、熱風乾燥工程後に、基材フィルム1に形成されたコーティング膜2を硬化部80により硬化し、コーティング層3を形成する硬化工程を含む。当該硬化工程での硬化方法は、コーティング膜2を硬化可能であれば、従来公知の方法を採用することができる。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0077】
以下、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明する。これらの実施例および比較例は、単に本発明を説明するためのものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されないことは当業者にとって自明である。
【0078】
(1)ポリアミド酸溶液の調製
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を383重量部投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを31.8重量部、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンを10.5重量部投入し、窒素雰囲気化で撹拌してジアミン溶液を得た。当該ジアミン溶液に、p-フェニレンビス(トリメリット酸無水物)を15.9重量部、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン酸無水物を37.4重量部、および3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を10.4重量部加え、窒素雰囲気下で撹拌してポリアミド酸溶液を得た。
【0079】
(2)イミド化およびポリイミド樹脂の抽出
(1)にて得られたポリアミド酸溶液(ポリアミド酸の固形分100重量部)に、イミド化触媒としてピリジン38.4重量部を添加し、撹拌した。その後、無水酢酸49.5重量部を添加し、120℃で2時間撹拌後、室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。当該ポリイミド溶液を撹拌しながら、1Lのイソプロピルアルコールを滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、濾別したポリイミド樹脂をイソプロピルアルコールで3回洗浄した後、120℃で12時間乾燥させてポリイミド樹脂の粉体を得た。
【0080】
(3)ポリイミドフィルム(基材フィルム)の作製
(2)にて得られたポリイミド樹脂を塩化メチレンに溶解し、固形分濃度10%のポリイミド溶液を得た。コンマコーターを用いて、ポリイミド溶液を基材上に塗布し、40℃で10分、80℃で10分、150℃で10分、180℃で10分の順番で、大気圧雰囲気下で乾燥した後、基材から剥離して、厚み50μmの透明ポリイミドフィルム(基材フィルム)を得た。
【0081】
(4)ハードコート組成物(コーティング液)の調製
反応容器に、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100重量部、塩化マグネシウム0.12重量部、水11重量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテル11重量部を仕込み、130℃で3時間攪拌後、60℃で減圧脱気してシロキサン樹脂を得た。そして、得られたシロキサン系樹脂100重量部、トリアリールスルホニウム・SbF塩のプロピレンカーボネート溶液2重量部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンのキシレン/イソブタノール溶液0.2重量部、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル150重量部を配合し、ハードコート組成物を得た。
【0082】
(実施例1)
上述のように製造した基材フィルムを、2m/分の搬送速度で長手方向に連続搬送しながら、ダイコータ(塗工部)を用いて、基材フィルム上に調製したコーティング液を塗工した。これにより膜厚が20μmとなるようにコーティング膜を形成した(塗工工程)。
【0083】
コーティング膜が形成された基材フィルムを連続搬送し(搬送工程)、プレ乾燥部にてコーティング膜が形成された面側からエアを吹き付けて加熱乾燥した(プレ乾燥工程)。プレ乾燥部においては、幅方向300mm×搬送方向50mmの開口部を有するノズルを用いた。ノズルとコーティング膜との間の距離は10mmとした。エアはコーティング膜に対して垂直に吹き付けた。プレ乾燥部では、差圧294Paかつ温度25℃における空気流量が1.1L/cm・分である不織布Aにエアを通過させることにより、エアを整流した。
【0084】
コーティング膜が形成された基材フィルムを、ドライヤー(熱風乾燥部)により乾燥させて、コーティング層が形成された基材フィルムを得た(熱風乾燥工程)。次に、UV照射機(岩崎電気株式会社製、H03M-L21)を用いて、1000~2000mJ/cmのUV光を照射して、連続搬送されている基材フィルムに形成されたコーティング層を硬化させて、積層フィルムを得た。
【0085】
(実施例2および3、比較例1)
プレ乾燥部においてエアを整流するための素材を、表1に記載の不織布B、多孔質体Aまたは不織布Cに変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。
【0086】
(比較例2)
プレ乾燥部においてエアを整流するための素材を用いなかったこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。
【0087】
(比較例3)
プレ乾燥部を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、積層フィルムを得た。
【0088】
(プレ乾燥部における風速)
プレ乾燥部のエア吹付部において、風速計(日本カノマックス社製「6332D」)を用いて0.5分間エアの風速を測定した。そして、0.5分間で測定されたエアの風速について、平均値、および、最大値と最小値との差を算出した。
【0089】
(積層フィルムの外観評価方法)
積層フィルムの外観を以下の評価方法により評価した。暗室内で、白色スクリーンから140cm離れた位置に、外観検査照明(日本技術センター製「S-light SA」)を配置し、照明および白色スクリーンから等距離(それぞれからの距離が70cm)の位置に、積層フィルムを配置した。照明からの光を積層フィルムに照射して、その投影光を白色スクリーンに映し、ムラの有無を目視にて評価した。ムラがない場合は○(良好)と評価し、ムラがある場合は×(不良)と評価した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
プレ乾燥部において0.5分間で測定されたエアの風速について、平均値が0.5m/s以下であり、最大値と最小値との差が0.1m/s以下である塗工装置を用いた実施例1~3では、外観ムラのない積層フィルムが得られた。一方、プレ乾燥部において0.5分間で測定されたエアの風速について、平均値が0.5m/sを超え、最大値と最小値との差も0.1m/sを超える塗工装置を用いた比較例1および2では、得られた積層フィルムの外観にムラが見られた。プレ乾燥部を設けなかった比較例3においても、得られた積層フィルムの外観にムラが見られた。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の一実施形態は、外観に優れる、積層フィルムを提供することができる。そのため、本発明の一実施形態によって得られた積層フィルムは、ガラス代替フィルムとして、例えば、パソコン、スマートフォンおよびタブレット等の前面板、自動車等の窓ガラス等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0093】
1 基材フィルム
1A 表面
2 コーティング膜(塗工膜)
3 コーティング層
7 積層フィルム
20、60 搬送経路
30 塗工部
40 ドライヤー(熱風乾燥部)
50 プレ乾燥部
52 不織布
53 多孔質体
100 製造装置
101 塗工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6