IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

特開2024-88400測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法
<>
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図1
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図2
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図3
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図4
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図5
  • 特開-測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088400
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/74 20060101AFI20240625BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20240625BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G01S13/74
E05B49/00 K
G01S7/02 216
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203540
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 太樹
(72)【発明者】
【氏名】高井 大輔
【テーマコード(参考)】
2E250
5J070
【Fターム(参考)】
2E250AA03
2E250BB41
2E250CC20
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
5J070AC02
5J070AC12
5J070AC13
5J070AD03
5J070AE09
5J070AF01
5J070AK22
5J070BC05
5J070BC06
5J070BC13
(57)【要約】
【課題】通信機の位置を高精度に測定可能な測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法を提供する。
【解決手段】測位システム(100A)は、通行口を有する測位対象領域(10A)の上方に配置され、複数のアンテナ(111)を有する送受信部(110)と、前記測位対象領域内で移動可能な通信機(200)と前記送受信部との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、前記通信機と前記送受信部との間の距離を測定する測距部(123)と、前記送受信部の前記複数のアンテナが前記通信機から前記信号を受信した際の位相差に基づいて、前記送受信部に対する前記通信機の位置を表す角度を測定する測角部(124)と、前記測距部によって測定された距離と、前記測角部によって測定された角度とに基づいて、前記通信機の前記通行口への接近の有無を判定する判定部(125)とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通行口を有する測位対象領域の上方に配置され、複数のアンテナを有する送受信部と、
前記測位対象領域内で移動可能な通信機と前記送受信部との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、前記通信機と前記送受信部との間の距離を測定する測距部と、
前記送受信部の前記複数のアンテナが前記通信機から前記信号を受信した際の位相差に基づいて、前記送受信部に対する前記通信機の位置を表す角度を測定する測角部と、
前記測距部によって測定された距離と、前記測角部によって測定された角度とに基づいて、前記通信機の前記通行口への接近の有無を判定する判定部と
を含む、測位システム。
【請求項2】
前記通行口の位置を表す位置データを格納する格納部をさらに含み、
前記判定部は、前記位置データと、前記測距部によって測定された距離と、前記測角部によって測定された角度とに基づいて、前記通信機の前記通行口への接近の有無を判定する、請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の測位システムと、
前記通信機の識別子、又は、前記通信機とともに移動可能な移動体の識別子を用いた認証処理を実行可能な認証処理部と、
前記通行口に設けられている扉の施錠及び解錠を切り替える錠切替部と
を含み、
前記判定部によって前記通信機と前記通行口との間の距離が所定距離以内であると判定され、かつ、前記認証処理部によって前記認証処理による認証が成立したと判定されると、前記錠切替部は前記扉を解錠する、入退場管理システム。
【請求項4】
前記錠切替部は、前記通信機が前記通行口を通じて前記測位対象領域の外部に移動してから所定時間が経過すると、前記扉を施錠する、請求項3に記載の入退場管理システム。
【請求項5】
通行口を有する測位対象領域の上方に配置され、複数のアンテナを有する送受信部と、
前記測位対象領域内で移動可能な通信機と前記送受信部との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、前記通信機と前記送受信部との間の距離を測定する測距部と、
前記送受信部の前記複数のアンテナが前記通信機から前記信号を受信した際の位相差に基づいて、前記送受信部に対する前記通信機の位置を表す角度を測定する測角部と、
を含む、測位システムにおいて、
前記測距部によって測定された距離と、前記測角部によって測定された角度とに基づいて、前記通信機の前記通行口への接近の有無を判定する、測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、第1領域と前記第1領域に隣接する第2領域とのうち前記第1領域に存在する携帯通信端末から受信する無線信号に基づいて、前記第1領域における前記携帯通信端末の位置に関する第1情報を生成する情報生成部と、前記第1情報に基づいて、前記第1領域から前記第2領域への前記携帯通信端末の移動行動に関する第2情報を出力する出力部と、を備える情報出力システムがある。第1情報及び第2情報は、無線信号の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)に関する情報である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-179952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の情報出力システム(測位システム)は、無線信号の受信強度(RSSI)で携帯通信端末(通信機)の位置を第1領域又は第2領域のいずれであるかを判定している。無線信号は、反射せずに直接到来するダイレクトパスの他に、途中で壁等の構造物によって反射されるマルチパスを経て到来する場合もある。このため、受信強度に基づく測定では、マルチパスによる誤差が大きく、通信機の位置を高精度に測定することが困難であった。
【0005】
そこで、通信機の位置を高精度に測定可能な測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の測位システムは、通行口を有する測位対象領域の上方に配置され、複数のアンテナを有する送受信部と、前記測位対象領域内で移動可能な通信機と前記送受信部との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、前記通信機と前記送受信部との間の距離を測定する測距部と、前記送受信部の前記複数のアンテナが前記通信機から前記信号を受信した際の位相差に基づいて、前記送受信部に対する前記通信機の位置を表す角度を測定する測角部と、前記測距部によって測定された距離と、前記測角部によって測定された角度とに基づいて、前記通信機の前記通行口への接近の有無を判定する判定部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
通信機の位置を高精度に測定可能な測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の測位システムを含む入退場管理システムが設置された空間の構成の一例を示す図である。
図2】測位対象領域の一例を示す平面図である。
図3】入退場管理システム及びスマートフォンの構成の一例を示す図である。
図4】判定領域の一例を示す図である。
図5】入退場管理システムの制御装置が実行する処理の一例を表すフローチャート(パート1)である。
図6】入退場管理システムの制御装置が実行する処理の一例を表すフローチャート(パート2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の測位システムを含む入退場管理システム100が設置された空間の構成の一例を示す図である。
【0011】
壁10には自動扉11及び12が設けられている。自動扉11及び12は、通行口に設けられている扉の一例である。壁10の外側の空間から壁10の内側の空間に入る通行口、及び、壁10の内側の空間から壁10の外側の空間に出る通行口は、自動扉11及び12が設けられている通行口のみである。壁10は、部屋を囲む壁や、建物等の外部と内部を仕切る壁等の様々な壁であってよい。以下では、一例として、壁10が部屋10Rを囲む壁である形態について説明する。
【0012】
入退場管理システム100は、利用者20のスマートフォン200の識別子を利用した認証処理を行い、自動扉11及び12の開閉制御を行うことで、部屋10Rにおける入退場管理を行う。利用者20は、スマートフォン200とともに移動可能な移動体の一例であり、スマートフォン200は通信機の一例である。
【0013】
入退場管理システム100は、自動扉11及び12の各々の前にスマートフォン200が近づいたと判定すると認証処理を行い、認証が成立すると、自動扉11又は12を開ける。入退場管理システム100は、自動扉11及び12の各々の前にスマートフォン200が近づくたびに、認証処理を行う。
【0014】
入退場管理システム100は、部屋10R内における利用者20のスマートフォン200の位置を測距処理及び測角処理で求めた基準点からの距離及び角度で特定することで、利用者20が自動扉11及び12の各々の前に利用者20が来たことを検出する。基準点は、入退場管理システム100の送受信部110の中心点である。なお、入退場管理システム100は、利用者20のスマートフォン200の識別子を利用した認証処理の代わりに、利用者20の生体情報(例えば、顔認証又は指紋認証等)を用いた認証処理や、利用者20が所持する識別情報(社員証や学生証等)を行ってもよい。
【0015】
自動扉11は、一例として閉じられており、自動扉12は、一例として開けられている。自動扉11及び12を閉じた状態にすることは、自動扉11及び12を閉じて、かつ、施錠した状態にすることである。また、自動扉11及び12を開けた状態にすることは、自動扉11及び12を解錠して、かつ、扉を開けた状態にすることである。すなわち、入退場管理システム100が自動扉11及び12の開閉制御を行う際には、自動扉11及び12の解錠及び施錠を切り替えることになる。
【0016】
なお、ここでは、部屋10Rに自動扉11及び12が設けられている形態について説明するが、自動扉11及び12の少なくとも一方の代わりに、利用者20が手で触れて開閉可能な手動の扉を設けてもよい。部屋10Rに手動の扉が設けられている場合には、入退場管理システム100は、手動の扉の解錠及び施錠を切り替えればよい。
【0017】
<入退場管理システム100の構成>
入退場管理システム100は、送受信部110及び制御装置120を含む。
【0018】
<送受信部110>
送受信部110は、一例として、部屋10Rの天井に設けられており、部屋10R内における自動扉11及び12の前を含む略全体を通信可能領域として、スマートフォン200と通信可能な装置である。なお、送受信部110は、部屋10R内における少なくとも自動扉11及び12の前の三次元的な領域に、通信可能領域を有していればよい。このため、送受信部110が配置される場所は、部屋10Rの天井に限らず、例えば、天井から吊り下げられていてもよい。送受信部110は、部屋10Rの上方に設けられることが好ましい。部屋10Rの上方とは、平均的な人の身長よりも高い位置であり、一例として2m以上の位置が好適である。
【0019】
<制御装置120>
制御装置120は、送受信部110とケーブル等で接続され、送受信部110とデータ通信可能に構成されており、部屋10Rの内部又は外部に設けられている。なお、制御装置120は、送受信部110と無線データ通信が可能に構成されていてもよい。この場合には、制御装置120と送受信部110との間における無線通信の形式は、スマートフォン200と送受信部110との間における無線通信形式と異なるものであればよい。
【0020】
制御装置120は、送受信部110を介してスマートフォン200とデータ通信を行い、TOA(Time of Arrival)形式による測距処理、及び、AOA(Angle of Arrival)形式による測角処理を行うことで、部屋10R内における送受信部110に対するスマートフォン200の位置を三次元的に測定する。
【0021】
送受信部110がスマートフォン200と通信可能な通信可能領域は、入退場管理システム100に含まれる測位システムが、スマートフォン200を測位可能な測位対象領域である。すなわち、送受信部110の通信可能領域は、測位システムの測位対象領域と等しい。測位対象領域については、図2を用いて後述し、測距処理及び測角処理の詳細については、図3を用いて後述する。また、実施形態の測位システムについても図3を用いて後述する。
【0022】
<測位対象領域10A>
図2は、測位対象領域10Aの一例を示す平面図である。図2には、部屋10Rを天井の上側から平面的に見た状態を透過的に示す。送受信部110は、部屋10Rの天井の中央に設けられている。また、図2では、自動扉11及び12に加えて、自動扉13を示す。自動扉13は、自動扉11及び12と同様であり、自動扉11の向かい側に設けられており、図2では自動扉13は閉じられている。
【0023】
測位対象領域10Aは、部屋10Rの略全体に及ぶ三次元領域であり、自動扉11乃至13の前に設けられる判定領域11A乃至13Aを含んでいる。判定領域11A乃至13Aは、それぞれ、自動扉11乃至13の前にスマートフォン200が存在するかどうかを入退場管理システム100が判定する際に用いる三次元領域である。
【0024】
また、部屋10Rの外部から部屋10Rの内部に入る通行口は、自動扉11乃至13のみである。このため、部屋10Rから出るためには、自動扉11、12、又は13を通る必要がある。自動扉11は、スマートフォン200が判定領域11A内に存在すると入退場管理システム100が判定し、かつ、認証が成立した上で開けられる。同様に、自動扉12は、スマートフォン200が判定領域12A内に存在すると入退場管理システム100が判定し、かつ、認証が成立した上で開けられる。自動扉13は、スマートフォン200が判定領域13A内に存在すると入退場管理システム100が判定し、かつ、認証が成立した上で開けられる。
【0025】
なお、部屋10Rの外部から自動扉11、12、又は13を開けるには、入退場管理システム100と同様の入退場管理システムによるスマートフォン200の接近の有無の判定処置と認証処理とが行われてもよく、その他の形式の認証処理等が行われてもよく、認証処理等が行われなくてもよい。
【0026】
<入退場管理システム100及びスマートフォン200の構成>
図3は、入退場管理システム100及びスマートフォン200の構成の一例を示す図である。入退場管理システム100及びスマートフォン200は、一例としてBluetooth(登録商標) Low Energyでパケット通信を行う。
【0027】
<入退場管理システム100の構成>
入退場管理システム100は、送受信部110及び制御装置120を含む。送受信部110は、3つのアンテナ111及び通信部115を有する。制御装置120は、MCU(Micro Controller Unit)で構成される。
【0028】
<アンテナ111>
アンテナ111は、通信部115に接続されており、スマートフォン200から送信される信号を受信する。なお、図1には入退場管理システム100が3つのアンテナ111を含む構成を示すが、入退場管理システム100はアンテナ111を4つ以上含んでいてもよい。3つのアンテナ111は、互いに直交する2軸のうちの第1軸上に2つが配置され、互いに直交する2軸のうちの第2軸上に2つが配置され、それらのアンテナのうち1つが第1軸上かつ第2軸上に共通に配置される構成である。
【0029】
<通信部115>
通信部115は、AFE(Analog Front End)及びAD(Analog to Digital)コンバータ等を含み、アンテナ111がスマートフォン200から受信した信号に対してAD変換等の信号処理を行って制御装置120に出力する。
【0030】
<制御装置120>
制御装置120は、主制御部121、送受信処理部122、測距部123、測角部124、判定部125、認証処理部126、開閉制御部127、及びメモリ128を有する。開閉制御部127は、自動扉11乃至13に設けられている施錠及び解錠を切り替える錠切替部の一例であり、メモリ128は、格納部の一例である。
【0031】
制御装置120は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及び内部バス等を含むマイクロコンピュータによって実現される。主制御部121、送受信処理部122、測距部123、測角部124、判定部125、認証処理部126、及び開閉制御部127は、制御装置120が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ128は、制御装置120のメモリを機能的に表したものである。
【0032】
<測位システム100Aの構成>
ここで、実施形態の測位システム100Aは、入退場管理システム100から、認証処理部126及び開閉制御部127を省いた構成を有する。このため、図3では、測位システム100Aの構成要素を破線で囲んで示す。測位システム100Aは、送受信部110と、主制御部121、送受信処理部122、測距部123、測角部124、判定部125、及びメモリ128とを含む。
【0033】
<主制御部121>
主制御部121は、制御装置120の全体を統括する処理部であり、送受信処理部122、測距部123、測角部124、判定部125、認証処理部126、及び開閉制御部127が実行する処理以外の処理を行う。
【0034】
<送受信処理部122>
送受信処理部122は、入退場管理システム100の測距部123及び測角部124が測距処理及び測角処理をそれぞれ実行するために必要な信号の往復時間、位相差、及び周波数成分等のデータを取得するために、スマートフォン200の送受信処理部222との間で信号の送受信を行う。本実施形態では、一例として、入退場管理システム100の送受信部110及びスマートフォン200の間の距離を算出する測距処理は、入退場管理システム100の測距部123が実行する。また、送受信部110に対するスマートフォン200の位置を表す角度を測定する測角処理は、入退場管理システム100の測角部124が実行する。このため、送受信処理部122は、測距部123及び測角部124が測距処理及び測角処理をそれぞれ実行する際に、スマートフォン200の送受信処理部222との間で、次のような処理を行う。
【0035】
送受信処理部122は、測距部123がTOA(Time of Arrival)形式による測距処理を行う際に、スマートフォン200の送受信処理部222との間で信号の送信及び受信を行う。この場合に、送受信処理部122は、3つのアンテナ111のうちの1つを用いて、信号の送信及び受信を行えばよい。送受信処理部122は、スマートフォン200から受信する信号の位相を測定する。また、スマートフォン200から、位相を表すデータを受信する。位相を表すデータは、スマートフォン200のアンテナ211が信号を受信したときの位相を表すデータである。
【0036】
また、送受信処理部122は、測角部124がAOA(Angle of Arrival)形式による測角処理を行う際には、スマートフォン200から受信する信号を3つのアンテナ111で受信し、3つのアンテナ111が信号を受信した際の位相差を測定し、測定した位相差を表すデータを判定部125に伝送する。なお、AOA形式による測角処理を行う際に、TOA形式による測距のためにスマートフォン200の送受信処理部222が送信する信号を3つのアンテナ111で受信することで、送受信処理部122は、TOA形式での測距のための信号の送受信と、AOA形式での測角のための信号の受信とを同時に行うことができる。
【0037】
<測距部123>
測距部123は、TOA形式による測距処理を実行可能である。測距部123は、TOA形式による測距処理を実行するために、送受信処理部122から複数周波数の各々についての位相差を表すデータを取得し、複数の位相差と周波数との関係に基づいて、入退場管理システム100の送受信部110及びスマートフォン200の間の距離を計算する。入退場管理システム100の送受信部110及びスマートフォン200の間の距離とは、一例として、送受信部110の3つのアンテナ111の重心の位置と、スマートフォン200のアンテナ211との間の距離である。TOA形式で計算される距離は、RSSIのような信号の信号強度に基づいて計算される距離に比べて精度が非常に高い。
【0038】
<測角部124>
測角部124は、3つのアンテナ111を利用して、AOA形式で、入退場管理システム100の送受信部110に対するスマートフォン200の位置の極座標系における仰角及び方位角を測定する測角処理を実行可能である。
【0039】
より具体的には、測角部124は、スマートフォン200から送信される信号を3つのアンテナ111で受信する際の位相差に基づいて、AOA形式で仰角及び方位角を測定する。3つのアンテナ111で信号を受信する際の位相差は、第1軸上に位置する2つのアンテナ111で信号を受信する際の第1位相差、及び、第2軸上に位置する2つのアンテナ111で信号を受信する際の第2位相差である。測角部124は、第1位相差と、第2位相差との比から、送受信部110に対するスマートフォン200の位置を表す方位角を算出する。また、測角部124は、方位角と、第1位相差又は第2位相差とに基づいて、送受信部110に対するスマートフォン200の位置を表す仰角を算出する。AOA形式の測角処理では、送受信部110に対するスマートフォン200の位置の極座標系における仰角及び方位角を測定できる。送受信部110に対するスマートフォン200の位置とは、より具体的には、送受信部110の3つのアンテナ111の重心の位置に対する、スマートフォン200のアンテナ211の位置である。
【0040】
<判定部125>
判定部125は、測距部123によって測定された距離と、測角部124によって測定された角度とに基づいて、スマートフォン200の自動扉11乃至13への接近の有無を判定する。より具体的には、判定部125は、メモリ128に格納された自動扉11乃至13の位置を表す位置データと、測距部123によって測定された距離と、測角部124によって測定された角度とに基づいて、スマートフォン200が、自動扉11乃至13の前の判定領域11A乃至13Aのうちのいずれかの内部に存在するかどうかを判定する。スマートフォン200が、判定領域11Aの内部に存在することは、スマートフォン200と自動扉11との間の距離が、所定距離以内であることに相当する。これは、判定領域12A及び13Aについても同様である。
【0041】
<認証処理部126>
認証処理部126は、スマートフォン200の識別子を用いた認証処理を実行する。なお、認証処理部126は、利用者20の生体情報(例えば、顔認証又は指紋認証等)を用いた認証処理や、利用者20が所持する識別情報(社員番号や学生番号等)を行ってもよい。利用者20の生体情報や、利用者20が所持する識別情報は、利用者20の識別子の一例である。
【0042】
<開閉制御部127>
開閉制御部127は、自動扉11乃至13の施錠及び解錠を切り替える処理を行う。より具体的には、開閉制御部127は、判定部125によってスマートフォン200と自動扉11との間の距離が所定距離以内である(スマートフォン200が判定領域11A内に存在する)と判定され、かつ、認証処理部126によって認証処理による認証が成立したと判定されると、自動扉11を解錠する。開閉制御部127は、自動扉12及び13についても同様の処理を行う。
【0043】
<メモリ128>
メモリ128は、主制御部121、送受信処理部122、測距部123、測角部124、判定部125、認証処理部126、及び開閉制御部127が処理を実行する際に必要なプログラムやデータを格納する。
【0044】
<スマートフォン200の構成>
スマートフォン200は、アンテナ211、通信部215、及びMCU220を含む。各アンテナ211は、通信部215に接続されており、入退場管理システム100から送信される信号を受信する。通信部215は、AFEやADコンバータ等を含み、アンテナ211が受信した信号に対してAD変換等の信号処理を行ってMCU220に出力する。なお、スマートフォン200は、1つのアンテナ211を含むが、複数のアンテナ211を含んでもよい。
【0045】
<MCU220>
MCU220は、主制御部221、送受信処理部222、及びメモリ233を有する。
【0046】
主制御部221及び送受信処理部222は、MCU220が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ233は、MCU220のメモリを機能的に表したものである。
【0047】
<主制御部221>
主制御部221は、MCU220の全体を統括する処理部であり、信号強度測定部232が実行する処理以外の処理を行う。主制御部221は、スマートフォン200の各種機能を実現するための処理を実行する。
【0048】
<送受信処理部222>
送受信処理部222は、入退場管理システム100の測距部123及び測角部124が測距処理及び測角処理を行うために必要な位相差や周波数成分等のデータを取得するために、入退場管理システム100の送受信処理部122との間で信号の送受信を行う。
【0049】
送受信処理部222は、入退場管理システム100の測距部123がTOA形式による測距処理を行う際には、入退場管理システム100の送受信処理部122との間で複数周波数のTOA用の信号を双方向に送信する。この場合に、送受信処理部222は、入退場管理システム100から受信するTOA用の信号の位相を測定し、位相を表すデータを入退場管理システム100の送受信処理部122に送信する。位相を表すデータは、スマートフォン200のアンテナ211がTOA用の信号を受信したときの位相を表すデータである。
【0050】
<メモリ233>
メモリ233は、主制御部221及び送受信処理部222が処理を実行する際に必要なプログラムやデータ等を格納する。
【0051】
<判定領域11A>
図4は、判定領域11Aの一例を示す図である。図4には、自動扉11の前に設定される判定領域11Aを示す。図4ではXYZ座標を定義する。
【0052】
また、図4には、自動扉11の基準座標(X1,Y1,Z1)を示す。自動扉11の基準座標(X1,Y1,Z1)は、自動扉11の基準点のXYZ座標である。自動扉11の基準点は、一例として自動扉11のX方向、Y方向、及びZ方向の中心の座標である。このような自動扉11の基準座標(X1,Y1,Z1)を表すデータと、自動扉11のX方向、Y方向、及びZ方向の長さを表すデータとをメモリ128に格納しておけばよい。
【0053】
判定領域11Aは、X座標が閾値AX1よりも大きく閾値AX2未満であり、Y座標が閾値AY1よりも大きく閾値AY2未満であり、Z座標が閾値AZ1よりも大きく閾値AZ2未満の領域である。なお、閾値AX2は閾値AX1よりも大きく、閾値AY2は閾値AY1よりも大きく、閾値AZ2は閾値AZ1よりも大きい。すなわち、スマートフォン200のXYZ座標が、AX1<X<AX2、AY1<Y<AY2、及び、AZ1<Z<AZ2を満たせば、スマートフォン200は判定領域11A内に存在することになる。
【0054】
このような閾値AX1、AX2、AY1、AY2、AZ1、AZ2は、判定領域12A及び13Aについても同様に設定される。なお、判定領域12Aについて、閾値BX1、BX2、BY1、BY2、BZ1、BZ2が設定され、判定領域13Aについて、閾値CX1、CX2、CY1、CY2、CZ1、CZ2が設定されることとする。
【0055】
<フローチャート>
図5は、入退場管理システム100の制御装置120が実行する処理(パート1)の一例を表すフローチャートである。図5には、入退場管理システム100の制御装置120のうちの測位システム100Aに関して、送受信処理部122、測距部123、測角部124、及び判定部125が実行する処理を示す。
【0056】
処理がスタートすると、送受信処理部122は、スマートフォン200の送受信処理部222とTOA用の信号の送受信処理を行い、測角部124は、AOA形式で測角処理を行う(ステップS1)。
【0057】
測距部123は、TOA形式で測距処理を行う(ステップS2)。
【0058】
判定部125は、測角処理で求められた角度(方位角θ、仰角φ)と、測距処理で求められた距離rとを用いて、スマートフォン200のXYZ座標を求める(ステップS3)。なお、XYZ座標は、角度(方位角θ、仰角φ)と、距離rとを用いて、次のように求めることができる。X=rsinθcosφ、Y=rsinθsinφ、Z=rcosθである。
【0059】
判定部125は、スマートフォン200のXYZ座標が、AX1<X<AX2、AY1<Y<AY2、及び、AZ1<Z<AZ2を満たすかどうかを判定する(ステップS4)。
【0060】
判定部125は、スマートフォン200のXYZ座標が、AX1<X<AX2、AY1<Y<AY2、及び、AZ1<Z<AZ2を満たす(S4:YES)と判定すると、スマートフォン200は判定領域11A内に存在すると判定する(ステップS5)。
【0061】
また、判定部125は、ステップS4において、スマートフォン200のXYZ座標が、AX1<X<AX2、AY1<Y<AY2、及び、AZ1<Z<AZ2を満たさない(S4:NO)と判定すると、スマートフォン200のXYZ座標が、BX1<X<BX2、BY1<Y<BY2、及び、BZ1<Z<BZ2を満たすかどうかを判定する(ステップS6)。
【0062】
判定部125は、スマートフォン200のXYZ座標が、BX1<X<BX2、BY1<Y<BY2、及び、BZ1<Z<BZ2を満たす(S6:YES)と判定すると、スマートフォン200は判定領域12A内に存在すると判定する(ステップS7)。
【0063】
また、判定部125は、ステップS6において、スマートフォン200のXYZ座標が、BX1<X<BX2、BY1<Y<BY2、及び、BZ1<Z<BZ2を満たさない(S6:NO)と判定すると、スマートフォン200のXYZ座標が、CX1<X<CX2、CY1<Y<CY2、及び、CZ1<Z<CZ2を満たすかどうかを判定する(ステップS8)。
【0064】
判定部125は、スマートフォン200のXYZ座標が、CX1<X<CX2、CY1<Y<CY2、及び、CZ1<Z<CZ2を満たす(S8:YES)と判定すると、スマートフォン200は判定領域13A内に存在すると判定する(ステップS9)。
【0065】
また、判定部125は、ステップS9において、スマートフォン200のXYZ座標が、CX1<X<CX2、CY1<Y<CY2、及び、CZ1<Z<CZ2を満たさない(S8:NO)と判定すると、スマートフォン200は判定領域11A乃至13A内に存在しないと判定する(ステップS10)。スマートフォン200は部屋10R内に存在するが、判定領域11A乃至13Aのいずれの内部にも存在しないことになる。
【0066】
以上で、一連の処理が終了する。図5に示す処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0067】
図6は、入退場管理システムの制御装置が実行する処理の一例を表すフローチャート(パート2)である。
【0068】
判定部125は、スマートフォン200が判定領域11A~13Aのうちのいずれかの内部に存在するかを判定する(ステップS11)。判定部125は、ステップS5、S7、S9、及びS10の判定結果に基づいて、スマートフォン200が判定領域11A~13Aのいずれかの内部に存在するかどうかを判定する。
【0069】
判定部125によってスマートフォン200が判定領域11A~13Aのうちのいずれかの内部に存在する(S11:YES)と判定されると、認証処理部126は、スマートフォン200の識別子を利用した認証処理を行う(ステップS12)。
【0070】
認証処理部126は、認証処理による認証が成立したかどうかを判定する(ステップS13)。
【0071】
認証処理部126によって認証処理による認証が成立した(S13:YES)と判定されると、開閉制御部127は、自動扉11、12、又は13のうち、スマートフォン200が存在すると判定された判定領域(11A~13Aのいずれか)に対応する自動扉を解錠して、開く(ステップS14)。
【0072】
開閉制御部127は、スマートフォン200が自動扉(11~13のいずれか)を通じて測位対象領域10Aの外部に移動してから所定時間が経過すると、自動扉を閉じて施錠する(ステップS15)。認証が成立していない利用者の入退場を抑制するためである。所定時間は、一例として、1秒から2秒程度である。
【0073】
以上で、一連の処理が終了する(エンド)。図6に示す処理は、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0074】
なお、ステップS11において、判定部125によってスマートフォン200が判定領域11A~13Aのいずれの内部にも存在しない(S11:NO)と判定された場合は、一連の処理が終了すればよい(エンド)。この場合には、自動扉11~13のいずれを開くこともなく処理を終了する。
【0075】
また、ステップS13で認証処理部126によって認証が成立しなかった場合(S13:NO)場合は、一連の処理が終了すればよい(エンド)。認証が成立しない場合には、自動扉11~13のいずれを開くこともなく処理を終了する。
【0076】
<効果>
測位システム100Aは、自動扉11及び12を有する測位対象領域10Aの上方に配置され、複数のアンテナ111を有する送受信部110と、測位対象領域10A内で移動可能なスマートフォン200と送受信部110との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、スマートフォン200と送受信部110との間の距離を測定する測距部123と、送受信部110の複数のアンテナ111がスマートフォン200から信号を受信した際の位相差に基づいて、送受信部110に対するスマートフォン200の位置を表す角度を測定する測角部124と、測距部123によって測定された距離と、測角部124によって測定された角度とに基づいて、スマートフォン200の自動扉11及び12への接近の有無を判定する判定部125とを含む。
【0077】
このため、TOA形式の測距処理と、AOA形式の測角処理とによって、スマートフォン200の自動扉11及び12への接近の有無を高精度に判定することができる。特に、TOA形式の測距処理は、RSSIのような信号強度に基づく測距処理に比べて、マルチパス等の影響を受けにくく、高精度な測距が可能である。
【0078】
したがって、スマートフォン200の位置を高精度に測定可能な測位システム100Aを提供することができる。また、入退場管理システム100は、測位システム100Aを含むため、スマートフォン200の位置を高精度に測定可能な入退場管理システム100を提供することができる。
【0079】
また、自動扉11及び12の位置を表す位置データを格納するメモリ128をさらに含み、判定部125は、位置データと、測距部123によって測定された距離と、測角部124によって測定された角度とに基づいて、スマートフォン200の自動扉11及び12への接近の有無を判定する。
【0080】
このため、自動扉11及び12の位置を表す位置データを用いて、スマートフォン200の自動扉11及び12に対する位置をより高精度に測定可能な測位システム100Aを提供することができる。
【0081】
また、入退場管理システム100は、測位システム100Aと、スマートフォン200の識別子、又は、スマートフォン200とともに移動可能な移動体の識別子を用いた認証処理を実行可能な認証処理部126と、自動扉11及び12の施錠及び解錠を切り替える開閉制御部127とを含み、判定部125によってスマートフォン200と自動扉11又は12との間の距離が所定距離以内であると判定され、かつ、認証処理部126によって認証処理による認証が成立したと判定されると、開閉制御部127は自動扉11又は12を解錠する。
【0082】
このため、認証が成立した場合に、高精度に測定されたスマートフォン200の自動扉11及び12に対する位置を用いて、自動扉11又は12を解錠可能な入退場管理システム100を提供することができる。
【0083】
また、入退場管理システム100では、開閉制御部127は、スマートフォン200が自動扉11及び12を通じて測位対象領域10Aの外部に移動してから所定時間が経過すると、扉を施錠する。
【0084】
このため、高精度に測定されたスマートフォン200の自動扉11乃至13のいずれかに対する位置を用いて、自動扉11乃至13のいずれかを通じて測位対象領域10Aの外部に移動してから所定時間が経過すると、開けた自動扉を施錠できる。したがって、高精度に測定されたスマートフォン200の自動扉11乃至13のいずれかに対する位置を用いて、利用者の入退場を高精度に管理可能であるとともに、認証を受けていない者の入退場を高精度に抑制可能な入退場管理システム100を提供することができる。
【0085】
測位方法は、自動扉11及び12を有する測位対象領域10Aの上方に配置され、複数のアンテナ111を有する送受信部110と、測位対象領域10A内で移動可能なスマートフォン200と送受信部110との間で複数周波数の信号を双方向に送信した結果に基づいて、スマートフォン200と送受信部110との間の距離を測定する測距部123と、送受信部110の複数のアンテナ111がスマートフォン200から信号を受信した際の位相差に基づいて、送受信部110に対するスマートフォン200の位置を表す角度を測定する測角部124と、を含む、測位システム100Aにおいて、測距部123によって測定された距離と、測角部124によって測定された角度とに基づいて、スマートフォン200の自動扉11及び12への接近の有無を判定する。
【0086】
このため、TOA形式の測距処理と、AOA形式の測角処理とによって、スマートフォン200の自動扉11及び12への接近の有無を高精度に判定することができる。特に、TOA形式の測距処理は、RSSIのような信号強度に基づく測距処理に比べて、マルチパス等の影響を受けにくく、高精度な測距が可能である。
【0087】
したがって、スマートフォン200の位置を高精度に測定可能な測位方法を提供することができる。
【0088】
以上、本開示の例示的な実施形態の測位システム、入退場管理システム、及び、測位方法について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10 壁
10A 測位対象領域
10R 部屋
11、12、13 自動扉(通行口に設けられている扉の一例)
11A、12A、13A 判定領域
20 利用者(移動体の一例)
100 入退場管理システム
110 送受信部
120 制御装置
111 アンテナ
115 通信部
121 主制御部
122 送受信処理部
123 測距部
124 測角部
125 判定部
126 認証処理部
127 開閉制御部(錠切替部の一例)
128 メモリ(格納部の一例)
200 スマートフォン(通信機の一例)
211 アンテナ
215 通信部
220 MCU
221 主制御部
222 送受信処理部
233 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6