(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088409
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】射出成形機、架台、および筋交い
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203550
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】松浦 大志
(72)【発明者】
【氏名】山中 一真
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AR07
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP05
4F206JP30
4F206JQ06
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】架台の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型の開閉方向に生じる慣性力による架台の変形を低減化させる。
【解決手段】金型100を水平方向に開閉させる型締装置10と、溶融材料を射出する射出装置11と、型締装置10および射出装置11を支持する架台13と、からなる射出成形機1において、架台13は、金型100の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部21および22と、開口部の1以上の対角線上に配置される着脱可能または分割可能な筋交い60および61と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置と、当該型締装置および当該射出装置を支持する架台と、からなる射出成形機において、
前記架台は、前記金型の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部と、当該開口部の1以上の対角線上に配置される、着脱可能または分割可能な筋交いと、
を有することを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記筋交いが、前記開口部の対角にそれぞれ設けられた補強部材に、着脱可能または回転可能に接合されていることを特徴とする、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記筋交いは、前記開口部の対角にそれぞれ設けられた前記補強部材のうち、一方の補強部材に接合された第1の部材と、他方の補強部材に接合された第2の部材とに分割されることを特徴とする、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記第1の部材および前記第2の部材は、前記補強部材に接合された本体部と、当該本体部に沿って長手方向に摺動する摺動部とでそれぞれ構成されていることを特徴とする、
請求項3に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記第1の部材および前記第2の部材は、前記補強部材との接合部を回転軸として回転することを特徴とする、
請求項3または4に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記筋交いは、1つの前記開口部に2本配置されていることを特徴とする、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項7】
前記開口部の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の下側に位置する補強部材が接合されている柱に、当該柱を設置面に固定するための固定部材が取り付けられていることを特徴とする、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項8】
前記架台を構成する複数の柱のうち、前記型締装置の固定盤に最も近い柱に、前記開口部の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の上側に位置する補強部材が接合されていることを特徴とする、
請求項2に記載の射出成形機。
【請求項9】
金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置とを支持する架台において、
前記金型の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部の対角線上に着脱可能または分割可能な筋交いが配置されることを特徴とする架台。
【請求項10】
金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置とを支持する架台に設けられた矩形の開口部の対角線上に配置される着脱可能または分割可能な筋交い。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、架台、および筋交いに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を構成する架台には、制御装置など各種機器を収納するための空間と、その空間に収納された各種機器に作業者が物理的にアクセスできるようにするための開口部が設けられている。例えば、特許文献1には、型締側の梁部材を取り外し可能に接合することで各種機器を収納できるようにした架台の構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形機では、金型が水平方向に開閉すると、その開閉方向に生じる慣性力が架台に伝わる。このとき、金型の開閉方向に直交する方向に開口した開口部が架台に設けられていると、開口部がせん断変形を起こしてしまい、架台の剛性が低下する。これに対して、開口部のせん断変形を防ぐために、開口部に筋交い等の補強部材を設置することもできるが、開口部に設置された補強部材の存在が、開口部の内側の空間に収納された各種機器への物理的なアクセスの妨げになる。
【0005】
本発明の目的は、架台の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型の開閉方向に生じる慣性力による架台の変形を低減化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと完成させた本発明は、金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置と、当該型締装置および当該射出装置を支持する架台と、からなる射出成形機において、前記架台は、前記金型の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部と、当該開口部の1以上の対角線上に配置される、着脱可能または分割可能な筋交いと、を有することを特徴とする射出成形機である。
ここで、前記筋交いが、前記開口部の対角にそれぞれ設けられた補強部材に、着脱可能または回転可能に接合されていても良い。
また、前記筋交いは、前記開口部の対角にそれぞれ設けられた前記補強部材のうち、一方の補強部材に接合された第1の部材と、他方の補強部材に接合された第2の部材とに分割されても良い。
また、前記第1の部材および前記第2の部材は、前記補強部材に接合された本体部と、当該本体部に沿って長手方向に摺動する摺動部とでそれぞれ構成されていても良い。
また、前記本体部は、前記補強部材との接合部を回転軸として回転しても良い。
また、前記筋交いは、1つの前記開口部に2本配置されていても良い。
また、前記開口部の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の下側に位置する補強部材が接合されている柱に、当該柱を設置面に固定するための固定部材が取り付けられていても良い。
また、前記架台を構成する複数の柱のうち、前記型締装置の固定盤に最も近い柱に、前記開口部の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の上側に位置する補強部材が接合されていても良い。
また、本発明は、金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置とを支持する架台において、前記金型の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部の対角線上に着脱可能または分割可能な筋交いが配置されることを特徴とする架台である。
また、本発明は、金型を水平方向に開閉させる型締装置と、溶融材料を射出する射出装置とを支持する架台に設けられた矩形の開口部の対角線上に配置される着脱可能または分割可能な筋交いである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、架台の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型の開閉方向に生じる慣性力による架台の変形を低減化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)は、本実施の形態が適用される筋交いが取り付けられる前の射出成形機の構成の一例を示す正面図である。(B)は、(A)の架台の内側の状態を示すIB-IB部の断面図である。
【
図2】(A)は、
図1(A)の開口部を構成する柱と梁とが接合される部分の具体例を示すIIA-IIA部の断面図である。(B)は、ガセットの外観構成の一例を示す図である。
【
図3】(A)は、本実施の形態が適用される筋交いが取り付けられた後の射出成形機の構成の一例を示す正面図である。(B)は、(A)の枠IIIBで囲まれた領域の拡大図である。
【
図4】(A)は、
図3(B)の筋交いをガセットに取り付けた状態を示すIVA-IVA部の断面図である。(B)は、
図3(B)の筋交いをガセットに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】(A)は、第2の実施の形態にかかる筋交いの外観構成の一例を示す正面図である。(B)は、(A)の筋交いの外観構成の一例を示す側面図である。(C)は、(A)の筋交いが分割された状態を示す図である。(D)は、(C)の摺動部を本体部に収納した状態を示す図である。
【
図6】(A)は、第3の実施の形態にかかる筋交いの外観構成の一例を示す正面図である。(B)は、ガセットに回転可能に接合された筋交いの具体例を示す図である。
【
図7】(A)は、射出成形機の設置面に対する架台の柱の高さを固定する固定部材が配置された状態の一例を示す図である。(B)は、柱と梁とが接合されている部分の下部に、長さを調整できる固定部材を配置した場合の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
(射出成形機の構成)
図1(A)は、本実施の形態が適用される筋交いが取り付けられる前の射出成形機1の構成の一例を示す正面図である。
図1(B)は、
図1(A)の架台13の内側の状態を示すIB-IB部の断面図である。
図1(A)および(B)に示すように、射出成形機1は、型締装置10と、射出装置11と、制御装置12-1乃至12-3と、架台13とで構成される。
【0010】
図1(A)に示す型締装置10は、金型100を開閉させる装置であり、金型100内に射出された高圧の溶融材料(例えば、溶融樹脂)が金型100を押し開かないよう締め付ける。金型100は、固定盤101と可動盤102とに取り付けられており、可動盤102の動きに連動して水平方向かつ射出成形機1の長手方向(以下、単に「長手方向」と呼ぶ。)に開閉する。すなわち、可動盤102が長手方向の第1側に向かって移動することで金型100が開き、可動盤102が長手方向の第2側に向かって移動することで金型100が閉じる。
【0011】
射出装置11は、溶融材料(例えば、溶融樹脂)を射出する装置である。制御装置12-1乃至12-3は、架台13の内側に配置された、型締装置10および射出装置11の制御を行う装置である。以下、制御装置12-1乃至12-3を個別に説明する必要がない場合、これらをまとめて「制御装置12」と呼ぶ。
【0012】
架台13は、複数の柱と梁とで構成された構造物であり、柱30乃至36と、梁40乃至42とを含む。架台13は、上下方向の上側(以下、単に「上側」と呼ぶ。)に配置された型締装置10および射出装置11を上面で支持し、制御装置12を内側に収納する。架台13には、長手方向に対して直交する方向に開口した開口部20乃至24が形成されている。
【0013】
開口部20乃至24のうち、開口部20は、柱30と、柱31と、梁40と、梁41とで形成された、水平方向かつ射出成形機1の短手方向(以下、単に「短手方向」と呼ぶ。)で架台13の内側から第1側に向かって開口した矩形の開口部である。開口部21は、柱31と、柱32と、梁40と、梁41とで形成された、短手方向で架台13の内側から見て第1側に向かって開口した矩形の開口部である。開口部22は、柱32と、柱33と、梁40と、梁41とで形成された、短手方向で架台13の内側から見て第1側に向かって開口した矩形の開口部である。以下、「短手方向の第1側(または、第2側)」という記載は、「架台13の内側から見て第1側(または、第2側)」という意味で用いる。
【0014】
開口部23および24は、
図1(B)に示すように、短手方向の第2側に向かって開口した開口部である。短手方向の第2側には、柱34乃至36と、梁42とが少なくとも配置されており、開口部23および24が形成されている。このため、開口部23および24からも、制御装置12-1乃至12-3への物理的なアクセスが可能である。
【0015】
図1(A)および(B)に示すように、開口部21を形成する柱31と梁41とが接合されている部分には、柱31と梁41とを補強し、後述する筋交い60を接合するためのガセット50が溶接により接合されている。「ガセット」とは、補給部材の一例であり、筐体の構成部品を接続する箇所を補強する部材として接合される板材である。また、開口部21を形成する柱32と梁40とが接合されている部分には、ガセット51が溶接により接合されている。
【0016】
また、開口部22を形成する柱32と梁40とが接合されている部分と、柱33と梁41とが接合されている部分との各々には、ガセット52および53の各々が溶接により接合されている。また、開口部23にもガセット54および55の各々が溶接により接合されており、開口部24にもガセット56および57の各々が溶接により接合されている。ガセット50乃至57は、射出成形機1を稼働させる工場に搬入するタイミングで既に溶接により接合されていてもよい。
【0017】
図2(A)は、
図1(A)の開口部を構成する柱と梁とが接合される部分の具体例を示すIIA-IIA部の断面図である。
上述の
図1(A)に示す開口部21および22を形成する柱32と梁40とが接合されている部分では、
図2(A)に示すように、柱32の端部と梁40とが溶接により接合される。この溶接により形成される溶接ビード135は、
図1(A)および(B)に示すガセット51および52が柱32および梁40に接合される際、ガセット51および52の各々の角と干渉するおそれがある。他の部分に接合されるガセットも同様である。
【0018】
図2(B)は、ガセットの外観構成の一例を示す正面図である。
図2(B)には、ガセットの一例として、柱32と梁40とが接合している部分に溶接により接合されたガセット52の正面図が示されている。ガセット52は、切欠き部510と、2つの孔500とを有する略矩形の金属板であり、後述する筋交い61の一方の端部を着脱可能に接合する。切欠き部510は、溶接ビード135の干渉を避けるために設けられている。切欠き部510は、ガセット50乃至57の各々の角のうち、溶接ビード135に干渉するおそれのある角に予め設けられる。2つの孔500は、後述する筋交い61の一方の端部を着脱可能に接合するためのものであり、例えば、ボルトを通す孔として用いられる。
【0019】
図3(A)は、本実施の形態が適用される筋交い60および61が取り付けられた後の射出成形機1の構成の一例を示す正面図である。
図3(B)は、
図3(A)の枠IIIBで囲まれた領域の拡大図である。なお、
図3(A)において、ガセット50乃至53の各々に設けられた切欠き部は捨象されているが、実際には、
図3(B)に示すように存在するものとする。
【0020】
図3(A)に示す架台13の開口部21には、筋交い60が取り付けられている。筋交い60は、一方の端部がガセット50にボルト等で接合されており、他方の端部がガセット51にボルト等で接合されている。これにより、ガセット50および51に取り付けられた状態の筋交い60は、長手方向の第1側の端部が、上下方向の下側に位置し、長手方向の第2側の端部が、上下方向の上側に位置している。
【0021】
また、
図3(A)に示す架台13の開口部22には、筋交い61が取り付けられている。筋交い61は、一方の端部がガセット52に接合されており、他方の端部がガセット53に接合されている。これにより、ガセット52および53に取り付けられた状態の筋交い61は、長手方向の第1側の端部が、上下方向の上側に位置し、長手方向の第2側の端部が、上下方向の下側に位置している。
【0022】
図3(B)に示すように、柱32と梁40とが接合している部分と、柱33と梁41とが接合している部分との各々には、溶接により接合されたガセット52とガセット53との各々が配置されている。筋交い61の長手方向の第1側の端部は、2つの孔600を介してガセット52に着脱可能な態様で接合される。具体的には、2つの孔600と、ガセット52の2つの孔500(
図2(B)参照)とを介して、例えばボルトとナットとにより着脱可能な態様で接合される。また、筋交い61の長手方向の第2側の端部は、2つの孔600を介してガセット53に着脱可能な態様で接合される。具体的には、2つの孔600と、ガセット53の図示せぬ2つの孔とを介して、例えばボルトとナットとにより着脱可能な態様で接合される。
【0023】
また、図示はしないが、
図3(A)の筋交い60の長手方向の第1側の端部と、長手方向の第2側の端部との各々も、2つの孔を介してガセット50とガセット51の各々に着脱可能な態様で接合される。
【0024】
図4(A)は、
図3(B)の筋交い61をガセット52に取り付けた状態を示すIVA-IVA部の断面図である。
図4(B)は、
図3(B)の筋交い61をガセット52に取り付けた状態を示す斜視図である。
ガセット52が接合される柱32および梁40は、鋼材で構成された、断面形状が矩形の棒状の部材である。柱32と梁40とが接合している部分には、溶接ビード135が形成されている。筋交い61は、山形鋼である。なお、筋交い61は、山形鋼に限定されず、例えば、H形鋼、溝形鋼、角パイプなどの鋼材で構成されてもよい。
【0025】
ガセット52には、筋交い61の一方の端部が、2本のボルト65およびナット66を介して接合されている。ガセット52は、柱32および梁40の各々の中心よりも短手方向の第2側寄りに接合されている。これにより、ガセット52が接合されている位置から短手方向の第1側に向かってスペースが形成されるため、そのスペースに筋交い61が配置される。
【0026】
以上のような構成を有する射出成形機1によれば、例えば、型締装置10を稼働させていないタイミングでは、上述の
図1(A)および(B)に示すように、筋交いを取り外した状態にすることができる。これにより、架台13の開口部21の内側に配置された制御装置12-1および12-2と、開口部22の内側に配置された制御装置12-3との各々に対する作業者による物理的なアクセスが容易となる。これに対して、型締装置10を稼働させるタイミングでは、上述の
図3(A)および(B)に示すように、筋交い60および61を取り付けることができる。これにより、架台13の剛性を向上させることができる。なお、短手方向の第2側に向かって開口している開口部23および24の各々に、筋交いを取り付けることで、架台13の剛性をさらに向上させることもできる。
【0027】
<第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、例えば、
図3(A)および(B)に示すように、架台13の開口部21および22の各々の対角線上に取り付けられる筋交い60および61は、それぞれ1本の棒である。このため、作業者が開口部21および22から、架台13の内側に配置されている制御装置12-1乃至12-3に物理的にアクセスするためには、ガセット50および51から筋交い60を取り外し、ガセット52および53から筋交い61を取り外す作業などが必要になる。
【0028】
ガセット50および51から筋交い60を取り外すためには、上述の
図4(A)および(B)に示すように、ボルト65とナット66との組み合わせを合計4組取り外す必要がある。これに対して、第2の実施の形態にかかる筋交いは、ガセットに取り付けられた状態のまま、作業者による開口部における作業を可能にする。以下、第2の実施の形態について、第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0029】
図5(A)は、第2の実施の形態にかかる筋交い70の外観構成の一例を示す正面図である。
図5(B)は、
図5(A)の筋交い70の外観構成の一例を示す側面図である。
図5(A)に示す筋交い70は、本体部71および72と、摺動部73および74と、連結部材76とを有する。筋交い70は、連結部材76の着脱により分割させることができる。
【0030】
本体部71には、例えば、ガセットに接合させるための2つの孔75が設けられている。また、本体部72にも、ガセットに接合させるための2つの孔75が設けられている。本体部71の2つの孔75は、例えば、上述の
図3(B)の筋交い61の長手方向の第2側の端部の2つの孔600に対応する孔である。また、本体部72の2つの孔75は、例えば、上述の
図3(B)の筋交い61の長手方向の第1側の端部の2つの孔600に対応する孔である。
【0031】
摺動部73は、本体部71に沿って中心線1000の方向に摺動する部材である。摺動部74は、本体部72に沿って中心線1000の方向に摺動する部材である。摺動部73と摺動部74とは、連結部材76により連結されている。具体的には、連結部材76に設けられている4つの孔77を介して、摺動部73および74と連結部材76とが接合されている。摺動部73および74と連結部材76との接合は、例えば、ボルトとナットとの組み合わせにより行われる。
【0032】
図5(C)は、
図5(A)の筋交い70が分割された状態を示す図である。
図5(D)は、
図5(C)の摺動部73および74のそれぞれを、本体部71および72のそれぞれに収納した状態を示す図である。
摺動部73および74に接合されていた
図5(A)の連結部材76を取り外すと、筋交い70は、
図5(C)に示すように、本体部71と摺動部73との組み合わせと、本体部72と摺動部74との組み合わせとに分割される。ここで、摺動部73は、
図5(D)に示すように、摺動させることで本体部71の孔75の方向に収納することができる。また、摺動部74は、摺動させることで本体部72の孔75の方向に収納することができる。
【0033】
このように、
図5(A)に示す筋交い70は、
図5(C)および(D)に示すように、分割したうえで、摺動部73および74を収納することができる。このため、例えば、筋交い70の一方の端部が上述の
図3(B)のガセット52に接合されており、他方の端部がガセット53に接合されている場合には、連結部材76を取り外して摺動部73および74を収納することで開口部22にスペースが形成される。これにより、作業者による開口部22における作業が容易になる。
【0034】
<第3の実施の形態>
上述の第2の実施の形態では、例えば、
図5(A)乃至(D)に示すように、摺動部73および74を連結する連結部材76の着脱と、摺動部73および74の収納により、摺動部73と摺動部74との間に形成されたスペースを介した作業者による開口部における作業を容易にする。ただし、摺動部73を収納した状態の本体部71と、摺動部74を収納した状態の本体部72とが開口部に残るため、作業者のスムーズな作業の妨げになる場合がある。以下、第3の実施の形態について、第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる点を中心に説明する。
【0035】
図6(A)は、第3の実施の形態にかかる筋交い80の外観構成の一例を示す正面図である。
図6(B)は、ガセット52および53に回転可能に接合された筋交いの具体例を示す図である。
図6(A)に示すように、筋交い80は、本体部81および82と、摺動部83および84とを有する。筋交い80は、上述の
図5(A)乃至(D)の筋交い70と同様に、連結部材(例えば、
図5(A)の連結部材76)の着脱により分割可能な筋交いである。
【0036】
本体部81には、ガセットに回転可能に接合させるための孔85が設けられている。また、本体部82にも、ガセットに回転可能に接合させるための孔85が設けられている。このような構成の筋交い80によれば、例えば、
図6(B)に示すように、摺動部83を収納した状態の本体部81を、ガセット53との接合部90を回転軸として梁41の方向に向けて回転させておくことができる。また、摺動部84を収納した状態の本体部82を、ガセット52との接合部90を回転軸として上下方向の下側に向けて回転させて垂らしておくことができる。これにより、開口部22のスペースを広げることができる。
【0037】
<その他>
(固定部材およびガセットの配置)
図7(A)は、射出成形機1の設置面300に対する架台13の柱の高さを固定する固定部材200が配置された状態の一例を示す図である。
射出成形機1を設置する際、射出成形機1の安定性や水平性を確保するために、脚部のような固定部材200を用いて、射出成形機1の設置面300(例えば、床など)に対する架台13の柱の高さを固定することがある。固定部材200には、長さを調整できないものと、長さを調整できるものとがあり、これらのうち少なくとも一方を用いることができる。固定部材200としては、例えば、レベリングパッドやアジャスターフットなどが挙げられる。
【0038】
固定部材200は、射出成形機1と設置面300との間に双方に接触するように配置される。具体的には、固定部材200は、射出成形機1の架台13の梁41の下部に、設置面300に接触するように配置される。固定部材200のうち、長さを調整できない固定部材200は、厚さや枚数を変えることで射出成形機1の高さを調整できる。これに対して、長さを調整できる固定部材200は、固定部材200の長さを変えることで射出成形機1の高さを調整できる。例えば、
図7(B)には、柱33と梁41とが接合されている部分の下部に、長さを調整できる固定部材200を配置した場合の具体例が示されている。長さを調整できる固定部材200を配置する場合には、固定部材200を梁41に固定するための孔411が設けられる。
【0039】
配置される固定部材200の種類や数は、射出成形機1の用途や設置環境等に応じて決定される。例えば、長さを調整できない固定部材200のみが複数配置される場合や、長さを調整できる固定部材200のみが複数配置される場合がある。また、長さを調整できない固定部材200と、長さを調整できる固定部材200とが組み合わされて配置される場合もある。例えば、長さを調整できない固定部材200のみが複数配置された場合には、架台13と設置面300との間の距離や、固定部材200の長さによっては架台13の一部が意図に反して設置面から離隔してしまうことがある。このような場合には、長さを調整できない固定部材200だけではなく、長さを調整できる固定部材200も組み合わせて配置することで、架台13の一部が意図に反して設置面から離隔しないように調整することができる。
【0040】
また、射出成形機1の設置面が水平でない場合には、射出成形機1の水平性を保つために固定部材200を複数配置することがある。この場合、例えば、4箇所に固定部材200を配置するのであれば、そのうち1または2箇所については、長さを調整できない固定部材200を配置し、残りについては、長さを調整できる固定部材200を配置することも可能である。
【0041】
また、キャスター等により他の場所に移動させる機会がある射出成形機1には、長さを調整できる固定部材200のみを複数配置することがある。この場合、キャスター等により射出成形機1を移動させる際、固定部材200の長さを短くすることで、架台13の一部を設置面300から離隔させることができる。
【0042】
固定部材200は、本来、架台13のすべての柱の下部に配置されることが好ましい。しかしながら、コスト面から一部の柱の下部に配置されるのが一般的である。このように、固定部材200は、配置する数に制限が設けられることがあるため、射出成形機1の安定性や水平性を効率的に向上できる位置に配置されることが求められる。例えば、上述のガセットが接合される柱と梁とが接合された部分の下部に固定部材200を配置することで、射出成形機1の安定性や水平性を効率的に向上させることができる。
【0043】
例えば、
図7(A)の開口部21では、柱31と梁41とが接合する部分にガセット50が接合され、柱32と梁40とが接合する部分にガセット51が接合されている。また、開口部22では、柱32と梁40とが接合する部分にガセット52が接合され、柱33と梁41とが接合する部分にガセット53が接合されている。この場合、固定部材200は、柱31と梁41とが接合された部分の下部と、柱33と梁41とが接合された部分の下部との各々に配置されていることが好ましい。
【0044】
柱31には、開口部21の対角に配置されたガセット50および51のうち、上下方向の下側に位置するガセット50が接合されている。また、柱33には、開口部22の対角に配置されたガセット52および53のうち、上下方向の下側に位置するガセット53が接合されている。この場合、固定部材200は、ガセットが上下方向の下側に配置された柱31および33の各々と梁41とが接合された部分の下部にそれぞれ配置されることが好ましい。言い換えると、一組のガセットのうち一方は、固定部材200が配置される場所の柱の下端に予め接合しておくことが好ましい。
【0045】
射出成形機1を構成する型締装置10の金型100の開閉により生じる慣性力による架台13の変形は、架台13の位置に応じて異なる。例えば、型締装置10の固定盤101と架台13とが接している位置は、金型100の開閉により生じる慣性力の影響を大きく受ける。このため、固定盤101と架台13とが接している位置に最も近い柱の上端にガセットを配置するのが好ましい。例えば、
図7(A)において、固定盤101と架台13とが接している位置に最も近い柱は、柱31であるが、柱31の上端ではなく下端にガセット50が配置されている。
【0046】
そこで、
図7(A)に示すように、柱31と梁40とが接合する破線400で示す位置にガセット50を配置することで、固定盤101と架台13とが接している位置に最も近い柱31の上端にガセット50を配置できる。その結果、金型100の開閉により生じる慣性力による架台13の変形をより低減化させることが可能となる。この場合、ガセット50に対向するガセット51を、柱32と梁41とが接合する破線401で示す位置に配置し、さらに、ガセット51が下端に接合された柱32と梁41とが接合している場所の下部に固定部材200を配置してもよい。これより、射出成形機1の安定性や水平性を効率的に向上させることができる。
【0047】
(ガセットの遊び)
例えば、上述の
図3(B)の例のように、第1の実施の形態にかかる筋交い61は、作業者による開口部22への物理的なアクセスを可能とするために、ガセット52および53への着脱を可能にしている。ここで、筋交い61とガセット52および53との着脱は、例えば、筋交い61の両端部のそれぞれの2つの孔600と、ガセット52および53のそれぞれの2つの孔(例えば、
図2(B)の2つの孔500)とを介したボルトとナットとの組み合わせにより実現する。
【0048】
ただし、筋交い61の2つの孔600や、ガセット52および53のそれぞれの2つの孔に遊びがない場合には、スムーズな着脱が阻害されることがある。このため、筋交い61の両端部のそれぞれの2つの孔600と、ガセット52および53のそれぞれの2つの孔との少なくとも一方に遊びを設けてもよい。例えば、遊びを含む長孔が設けられても良い。
【0049】
(筋交いの本数)
例えば、上述の
図3(A)の開口部21および22の各々には、筋交い60および61の各々が取り付けられているが、1つの開口部に対する筋交いの本数は1本に限られない。例えば、1つの開口部に対する筋交いの本数が2本であってもよい。この場合、1つの開口部に設けられる2本の筋交いが交差することになるため、1つの開口部に設けられるガセットの数は2組(4つ)になる。また、交差する筋交い同士の干渉を避けるために、ガセットが接合される位置が工夫される。例えば、1つの開口部に接合される2組のガセットのうち1組が短手方向の第1側寄りに接合され、残る1組が短手方向の第2側寄りに接合されるようにしてもよい。また、ガセットを接合する位置について工夫することなく、筋交いの形状を変化させたり、向きを変えたりすることで干渉を防いでもよい。
【0050】
以上まとめると、本発明が適用される射出成形機、架台、および筋交いは、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、本発明が適用される射出成形機1は、金型100を水平方向に開閉させる型締装置10と、溶融材料(例えば、溶融樹脂)を射出する射出装置11と、型締装置10および射出装置11を支持する架台13と、からなる射出成形機において、架台13は、金型100の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部21および22と、開口部21および22の1以上の対角線上に配置される着脱可能または分割可能な筋交い60および61と、を有することを特徴とする射出成形機である。
これにより、架台13の開口部21および22に配置された筋交い60および61が着脱可能または分割可能であるため、架台13の内側に収納された各種機器(例えば、制御装置12-1乃至12-3)に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型100の開閉方向に生じる慣性力による架台13の変形を低減化させることができる。
【0051】
ここで、筋交い61が、開口部22の対角にそれぞれ設けられた補強部材(例えば、ガセット52および53)に、着脱可能または回転可能に接合されていても良い。
これにより、筋交い61が補強部材に着脱可能または回転可能に接合されているので、筋交い61を取り外し、または分割して回転させることで、架台13の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスが容易になる。
【0052】
また、筋交い70は、開口部22の対角にそれぞれ設けられた補強部材(例えば、ガセット52および53)のうち、一方の補強部材(例えば、ガセット52)に接合された第1の部材(例えば、本体部72および摺動部74)と、他方の補強部材(例えば、ガセット53)に接合された第2の部材(例えば、本体部71および摺動部73)とに分割されても良い。
これにより、開口部22の対角にそれぞれ設けられた補強部材のうち、一方の補強部材に接合された第1の部材と、他方の補強部材に接合された第2の部材とに分割されるので、筋交い70を補強部材から取り外すことなく、開口部22から各種機器への物理的なアクセスが可能になる。
【0053】
また、第1の部材および第2の部材は、補強部材(例えば、ガセット52および53)に接合された本体部71および72と、本体部71および72に沿って長手方向に摺動する摺動部73および74とでそれぞれ構成されていても良い。
これにより、第1の部材および第2の部材が、本体部71および72と、本体部71および72に沿って長手方向に摺動する摺動部73および74とで構成されているので、摺動部73および74を摺動させることで開口部22から各種機器への物理的なアクセスが容易になる。
【0054】
また、本体部81および82は、補強部材(例えば、ガセット52および53)との接合部90を回転軸として回転しても良い。
これにより、第1の部材および第2の部材のそれぞれの本体部81および82が、補強部材との接合部90を回転軸として回転するので、補強部材から第1の部材および第2の部材を取り外すことなく開口部22から各種機器に物理的にアクセスすることが容易になる。
【0055】
また、筋交いは、1つの開口部に2本配置されていても良い。
これにより、1つの開口部に2本の筋交いが配置されるので、金型100の開閉方向に生じる慣性力による架台13の変形をさらに低減化できる。
【0056】
また、開口部21の対角のそれぞれに設けられた補強部材(例えば、ガセット50および51)のうち、上下方向の下側に位置する補強部材(例えば、ガセット50)が接合されている柱31に、柱31を設置面に固定するための固定部材200が取り付けられていても良い。
これにより、開口部21の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の下側に位置する補強部材が接合されている柱31に、柱31を設置面に固定するための固定部材200が取り付けられているので、金型100の開閉方向に生じる慣性力による架台13の変形をさらに低減化できる。
【0057】
また、架台13を構成する複数の柱のうち、型締装置10の固定盤101に最も近い柱31に、開口部21の対角のそれぞれに設けられた補強部材(例えば、ガセット50および51)のうち、上下方向の上側に位置する補強部材(例えば、ガセット51)が接合されていても良い。
これにより、架台13を構成する複数の柱のうち、型締装置10の固定盤101に最も近い柱31に、開口部21の対角のそれぞれに設けられた補強部材のうち、上下方向の上側に位置する補強部材が接合されているので、金型100の開閉により生じる慣性力による架台13の変形をさらに低減化させることができる。
【0058】
また、本発明は、金型100を水平方向に開閉させる型締装置10と、溶融材料を射出する射出装置11とを支持する架台13において、金型100の開閉方向に直交する方向に開口した矩形の開口部21および22の対角線上に着脱可能または分割可能な筋交い60および61が配置されることを特徴とする架台13である。
これにより、架台13の開口部21および22に配置された筋交い60および61が着脱可能または分割可能であるため、架台13の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型100の開閉方向に生じる慣性力による架台13の変形を低減化させることができる。
【0059】
また、本発明は、金型100を水平方向に開閉させる型締装置10と、溶融材料を射出する射出装置11とを支持する架台13に設けられた矩形の開口部21および22の対角線上に配置される着脱可能または分割可能な筋交い60および61である。
これにより、架台13の開口部に配置された筋交い60および61が着脱可能または分割可能であるため、架台13の内側に収納された各種機器に対する物理的なアクセスを容易にし、かつ、金型100の開閉方向に生じる慣性力による架台13の変形を低減化させることができる。
【0060】
[他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述の実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、
図1(A)および
図3(A)に示す射出成形機1の外観構成、
図1(B)に示す制御装置12-1乃至12-3のレイアウト、
図2(A)に示す柱32と梁40との接合の態様、
図2(B)に示すガセット52の態様、
図3(A)および(B)、
図4(A)および(B)に示す筋交い60および61の取り付け態様、
図5(A)乃至(D)に示す筋交い70の態様、
図6(A)に示す筋交い80の態様、
図6(B)に示す筋交いの取り付け態様は、いずれも本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0061】
例えば、
図2(A)に示す柱32と梁40との接合の態様には、柱32が梁40に溶接した場合の例として、柱32の端部が余すことなく梁40に溶接されている。これにより、溶接ビード135の断面形状は「口」の字状になっている。ただし、溶接ビード135の断面形状は「ロ」の字状に限定されず、柱32の態様(例えば、断面形状や寸法など)に応じて様々な態様をとる。例えば、柱32がC形鋼である場合には、溶接ビードの断面は「コ」の字状になる。また、柱32がH形鋼である場合には、溶接ビードの断面は「H」の字状になる。
【0062】
また、例えば、
図2(B)に示すガセット52の切欠き部510の形状は直線状であるが、これに限定されない。例えば、円弧状など他の形状であってもよい。
【0063】
また、
図1(B)には、短手方向の第1側に向かって開口した開口部21および22と、短手方向の第2側に向かって開口した開口部23および24とが示されているが、これに限定されない。例えば、
図1(B)の梁41と梁42との間に柱と梁とを設けて、ガセットおよび筋交いを設置できるようにしてもよい。これにより、例えば、サイズが大きいために柱と梁とが多く設置された架台の剛性を向上させながら、架台の内側の空間における作業を容易化できる。
【符号の説明】
【0064】
1…射出成形機、10…型締装置、11…射出装置、12…制御装置、13…架台、100…金型、101…固定盤、102…可動盤、30乃至36…柱、40,41,42…梁、50,51,52,53,54,55,56,57…ガセット、60,61,70,80…筋交い、200…固定部材