(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088419
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ひずみゲージ
(51)【国際特許分類】
G01B 7/16 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203562
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真一
【テーマコード(参考)】
2F063
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063CA28
2F063EC05
2F063EC14
2F063EC18
2F063EC27
(57)【要約】
【課題】破断および亀裂が生じにくいひずみゲージを実現する。
【解決手段】 本ひずみゲージは、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、を有し、前記抵抗体は、平面視において、検知部と、前記検知部と直列に接続された接続部と、を含む細長状部が複数並置された所定のパターンを形成しており、前記接続部は、前記検知部よりも弾性率が低い材料から形成され、前記検知部に直接接するように配置され、前記所定のパターンにおいて、ある細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線と、当該ある細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線とは前記平面視において同一直線上にない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材上に形成された抵抗体と、を有し、
前記抵抗体は、平面視において、検知部と、前記検知部と直列に接続された接続部と、を含む細長状部が複数並置された所定のパターンを形成しており、
前記接続部は、前記検知部よりも弾性率が低い材料から形成され、前記検知部に直接接するように配置され、
前記所定のパターンにおいて、ある細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線と、当該ある細長状部と隣り合う細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線とは前記平面視において同一直線上にない、ひずみゲージ。
【請求項2】
前記所定のパターンにおいて、少なくとも1つの前記細長状部の前記境界線は、前記細長状部の短手方向と平行でない、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項3】
前記所定のパターンにおいて、前記複数の細長状部はそれぞれ、長手方向が同一方向を向くよう並置されており、
前記複数の細長状部において、個々の前記境界線は前記細長状部の短手方向と略平行であり、かつ、それぞれの前記境界線と隣り合う前記境界線とは前記平面視において同一直線上にない、請求項1に記載のひずみゲージ。
【請求項4】
前記抵抗体は、隣り合う前記細長状部の端部同士を接続する折り返し部分を含み、
1つ以上の前記折り返し部分に前記接続部が配置されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項5】
前記基材上に形成され、配線を介して前記抵抗体と電気的に接続された一対の電極を有し、
1つ以上の前記配線に前記接続部が配置されている、請求項1乃至4の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項6】
前記接続部の弾性率は、前記検知部の弾性率の1/2倍以下である、請求項1乃至5の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【請求項7】
前記検知部は、Cr、CrN、およびCr2Nを含む膜から形成されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載のひずみゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体は、例えば、絶縁性樹脂上に形成されている。ひずみゲージは起歪体に貼り付けられ、起歪体の動き(例えば、ひずみ)に追従し伸び縮みする。このとき、ひずみゲージの抵抗体は変形するため抵抗値が変化する。この抵抗値の変化量から起歪体のひずみ量を特定することができる。また、近年、抵抗体部分に異種材料を含んだひずみゲージが開発されている(特許文献1および2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-152523号公報
【特許文献2】特開2019-132791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ひずみゲージの抵抗体はひずみ検出の際に伸縮する必要がある。そのため、例えばより大きなひずみを検出可能なひずみゲージを実現しようとすると、ひずみゲージ自身により大きな応力がかかることとなる。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたもので、破断および亀裂が生じにくいひずみゲージの実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ひずみゲージは、基材と、前記基材上に形成された抵抗体と、を有し、前記抵抗体は、平面視において、検知部と、前記検知部と直列に接続された接続部と、を含む細長状部が複数並置された所定のパターンを形成しており、前記接続部は、前記検知部よりも弾性率が低い材料から形成され、前記検知部に直接接するように配置され、前記所定のパターンにおいて、ある細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線と、当該ある細長状部と隣り合う細長状部における前記検知部と前記接続部との境界線とは前記平面視において同一直線上にない。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、破断および亀裂が生じにくいひずみゲージを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図2】実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
【
図3】実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
【
図4】実施形態に係るひずみゲージの他の例を示す断面図である。
【
図5】実施形態の変形例1に係るひずみゲージにおける検知部と接続部との接続部分の例を示す部分平面図である。
【
図6】実施形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図7】実施形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図8】
図6に示すひずみゲージの接続部の拡大図である。
【
図9】実施形態の変形例3に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図10】実施形態の変形例3に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図11】実施形態の変形例4に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明の実施形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一の符号を付す場合がある。また、各図面の説明において、既に説明した構成部と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0010】
[ひずみゲージの構造]
図1は、実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2は、実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、
図1のA-A線に沿う断面を示している。
図3は、実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)であり、
図1のB-B線に沿う断面図である。なお、
図1~
図3に示したひずみゲージの各部の形状および大きさはあくまで一例であり、本実施形態に係るひずみゲージの外観はこれに限定されない。
【0011】
図1~
図3を参照すると、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、配線40と、電極50と、カバー層60とを有している。なお、便宜上、カバー層60の外縁のみを破線で示している。なお、カバー層60は必須構成ではない。
【0012】
本実施形態では、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体30が設けられていない側を「下側」と称する。また、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることもできる。また、ひずみゲージ1は任意の角度で配置することもできる。また、本実施形態において「平面視」とは、基材10の上面10aを、上側から下側への法線方向に視た場合を指すこととする。そして、「平面形状」とは、前記平面視で対象物を視たときの、当該対象物の形状を指すものとする。
【0013】
(基材10)
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材である。基材10は可撓性を有する。基材10の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ1の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材10の厚さは5μm~500μm程度であってよい。ひずみゲージ1の下面側には、接着層等を介して起歪体が接合されていてもよい。なお、起歪体の表面から受感部へのひずみの伝達性、および、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材10の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材10の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0014】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0015】
基材10が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材10は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0016】
基材10の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられる。また、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材10の材料としてもよい。また、基材10の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属を用いる場合、金属製の基材10上に絶縁膜が設けられる。
【0017】
(抵抗体30)
抵抗体30は、基材10の上側に形成される薄膜である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。抵抗体30は、終端30e、細長状部31、および折り返し部分32を含む。なお、説明の便宜上、抵抗体30のうち、細長状部31と配線40との接続部分を「終端30e」と称するが、終端30eは細長状部31と一体であってよい。また、終端30eは、細長状部31の検知部33と同一の材料を用いて、同一工程で形成されてもよい。折り返し部分32も同様に、細長状部31と一体であってよいし、検知部33と、同一の材料を用いて、同一工程で形成されてもよい。
【0018】
終端30eは抵抗体30の一部分であって、抵抗体30の両端に設けられている。終端30eは配線40と細長状部31とを接続している。例えば、
図1の例では、終端30eは、2つの配線40に最も近い部分の細長状部31と配線40とをそれぞれ繋いでいる。
【0019】
細長状部31は、抵抗体30の一部分である。ひずみゲージ1では、複数の細長状部31が、その長手方向を所定の方向に向けて並置されている。なお、以下の説明において、細長状部31の長手方向(
図1のA-A線の方向)と同一方向を単に「長手方向」と言う場合がある。また、細長状部31の短手方向(
図1のA-A線と垂直な方向)と同一方向を単に「短手方向」と言う場合がある。細長状部31は、検知部33と接続部34とを含む。検知部33および接続部34については、後で詳述する。
【0020】
折り返し部分32は、抵抗体30の一部分であり、隣り合う細長状部31の端部同士を接続する部分である。折り返し部分32は、隣り合う細長状部31の端部を
図1に示すように互い違いに連結する。これにより、抵抗体30は全体として、ジグザグに折り返すパターンを形成する。
【0021】
(検知部33)
検知部33は、細長状部31のひずみ受感部である。検知部33は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、またはCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、検知部33は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0022】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0023】
例えば、検知部33がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。また、例えば、検知部33がCr混相膜である場合、検知部33がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCSおよび抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、検知部33を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、検知部33はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、検知部33はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0024】
また、検知部33がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nが20重量%以下であることで、ひずみゲージ1のゲージ率の低下を抑制できる。
【0025】
また、Cr混相膜におけるCrNとCr2Nとの比率は、CrNとCr2Nの重量の合計に対し、Cr2Nの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCr2Nの重量の合計に対し、Cr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。Cr2Nは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCr2Nの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCr2Nの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで検知部33のセラミックス化を低減することができる。したがって、検知部33の脆性破壊を起こりにくくすることができる。
【0026】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のN2もしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0027】
ひずみゲージ1において、検知部33の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、検知部33の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、検知部33の材料としてCr混相膜を用いた場合のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0028】
検知部33の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ1の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、検知部33の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、検知部33の厚さが0.1μm以上であると、検知部33を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、検知部33の厚さが1μm以下である場合、検知部33を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラックおよび(ii)膜の基材10からの反りが、低減される。検知部33の幅は、抵抗値や横感度等の要求仕様に対して最適化し、かつ破断および亀裂対策も考慮して、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。なお、前述のように、折り返し部分32と、終端30eとについても、検知部33と同様の材料および厚さで形成されてよい。
【0029】
(接続部34)
接続部34は、抵抗体30の破断および亀裂を防止するために、細長状部31に設けられる構造物である。1つの接続部34の長手方向の長さは、例えば、50μm程度である。また、接続部34の短手方向の長さは、細長状部31と略同一であってよい。接続部34は、
図1~
図3に示すように、検知部33に直接接するように配置される。接続部34は検知部33と物理的および電気的に接続されており、1つの細長状部31を形成している。
【0030】
接続部34は、検知部33よりも弾性率が低い材料から形成されている。具体的には、接続部34の弾性率は、検知部33の弾性率の1/2倍以下であることが好ましい。更に言えば、接続部34の弾性率は、検知部33の弾性率の1/3倍以下であることが好ましく、1/4倍以下であることがより好ましい。
【0031】
前述の通り、接続部34は、検知部33よりも低抵抗の材料から形成されていることが好ましい。これは、接続部34のひずみ検知への影響を低減するためである。具体的には、接続部34の材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Fe等が挙げられる。これらの金属は、弾性率が比較的低く、比較的低抵抗(すなわち、高導電率)である。なお、弾性率が低い材料は、延性が高く、破断や亀裂が生じにくい。細長状部31に接続部34のような弾性率の低い部位を設けることで、抵抗体30全体として、破断および亀裂を生じにくくさせることができる。
【0032】
例えば、検知部33としてCr混相膜を用いる場合、弾性率は400GPa程度である。この場合、例えば、接続部34の材料として弾性率が200GPa程度のPtや170GPa程度のFeを用いることができる。また、検知部33としてニッケルクロムを用いる場合、検知部33の弾性率は214GPa程度である。この場合、例えば、接続部34の材料としては、弾性率が80GPa程度のAuや70GPa程度のAlを用いることができる。
【0033】
接続部34の幅および厚さは、検知部33の幅および厚さと等しいことが好ましい。これにより、隣接する検知部33を接続部34が確実に導通させることができる。ここでは、接続部34の幅および厚さが、検知部33の幅および厚さに対して、それぞれ±10%以下である場合に、両者は等しいとする。
【0034】
(接続部34の配置と接続)
接続部34は、例えば
図1に示すように、1つの細長状部31の中で、ある検知部33と他の検知部33に挟まれるように設けられる。また、検知部33と接続部34とは直列に接続される。本実施形態に係るひずみゲージ1は、接続部34の位置を工夫して設計することにより、抵抗体30の破断および亀裂を防止している。具体的には、本実施形態に係るひずみゲージ1では、検知部33と接続部34との接続部分を平面視したときの検知部33と接続部34との境界線が、特定の条件を満たすように、接続部34を配置している。以下、この特定の条件について詳述する。なお、以降、「検知部33と接続部34との接続部分を平面視したときの検知部33と接続部34との境界線」のことを単に「境界線」とも称する。
【0035】
「特定の条件」とは、抵抗体30のパターンにおいて、ある細長状部31(細長状部31Aとする)における境界線と、細長状部31Aと隣り合う細長状部(細長状部31Bとする)における境界線とが、平面視において同一直線上にないことである。なお、細長状部31Aの両隣に隣り合う細長状部31Bが存在する場合、接続部34は、細長状部31Aの各境界線と、一方の細長状部31Bの各境界線とが平面視において同一直線上に存在せず、かつ、細長状部31Aの各境界線と、他方の細長状部31Bの各境界線とが同一直線上に存在しないように配置される。
【0036】
図1の例で説明すると、
図1における接続部34は、平面視において平行四辺形の形状をしている。このような形状の接続部34であれば、
図1に示すように、接続部34を短手方向に平行に並置することで、各境界線が、短手方向に隣り合う境界線と同一直線上に存在しないようにすることができる。例えば、
図1の境界線35aと境界線35c、境界線35aと境界線35e、境界線35bと境界線35d、および境界線35bと境界線35fはそれぞれ同一直線上にない。また、抵抗体30全体として、短手方向に隣り合う2つの境界線が同一直線上にある箇所も無い。
【0037】
なお、
図1の例では各細長状部31に1つずつ接続部34を設けているが、本発明における接続部34の配置はこれに限られない。本発明では、複数の細長状部31のうち、少なくとも2つの細長状部31に接続部34が設けられていればよい。また、1つの細長状部31に設けられる接続部34の数は限定されない。例えば、1つの細長状部31に1つの接続部34が設けられていてもよいし、複数の接続部34が設けられていてもよいし、接続部34が設けられていない細長状部31があってもよい。また、各細長状部31の接続部34の個数は異なっていてもよい。抵抗体30における接続部34の個数は、ひずみゲージ1の全体の面積の増大を伴わない範囲で適宜決定されることが好ましい。また、前述の特定の条件さえ満たすならば、細長状部31における接続部34の位置も特に限定されない。さらに、抵抗体30全体における、各接続部34の位置(すなわち、平面視での抵抗体30全体における各接続部34の分布)も特に限定されない。なお、接続部34は、細長状部31の、終端30eと接する部分に配置することもできる。この場合、接続部34の両端が、それぞれ検知部33および終端30eと接続される。
【0038】
なお、接続部34を設けることは、厚さ0.05μm以上2μm以下の検知部33を用いる場合に特に有効であり、厚さ0.05μm以上1μm以下の検知部33を用いる場合に極めて有効である。
【0039】
(配線40)
配線40は、抵抗体30と電極50とを電気的に接続するための部材である。配線40の一端は電極50と接続されており、他の一端は抵抗体30の終端30eと接続されている。配線40は、直線状には限定されず、任意の形状とすることができる。また、配線40は、任意の幅および任意の長さとすることができる。
【0040】
(電極50)
電極50は、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力する。本実施形態では、基材10上に1対の電極50が設けられている。電極50は、配線40を介して抵抗体30と電気的に接続されている。本実施形態において、電極50は、平面視において配線40よりも拡幅して略矩形状に形成されている。しかしながら、電極50の形状はこれに限定されない。例えば、電極50は平面視において略円形または略楕円形であってもよい。各電極50には、例えば外部接続用のリード線等が接合される。
【0041】
各電極50は、金属層51と、金属層51の上面に積層された金属層52とを有している。金属層51は、配線40を介して抵抗体30の終端30eと電気的に接続されている。本実施形態において、金属層51は、平面視において、略矩形状に形成されている。金属層51は、配線40と同じ幅に形成しても構わない。
【0042】
なお、検知部33と配線40と金属層51とは便宜上別符号としているが、検知部33と配線40と金属層51は同一工程において同一材料により一体に形成できる。したがって、検知部33と配線40と金属層51とは、厚さが略同一であってよい。
【0043】
金属層52は、検知部33よりも低抵抗の材料から形成されている。金属層52の材料は、検知部33よりも低抵抗の材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、検知部33がCr混相膜である場合、金属層52の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、または、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、あるいは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。金属層52の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、3μm~5μm程度とすることができる。
【0044】
なお、金属層52の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、金属層52を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。あるいは、金属層52を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極50の最上層を金層とすることで、電極50のはんだ濡れ性を向上できる。
【0045】
カバー層60は、基材10上に形成され、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出する。配線40の一部は、カバー層60から露出してもよい。抵抗体30および配線40を被覆するカバー層60を設けることで、抵抗体30および配線40に機械的な損傷等が生じることを防止できる。また、カバー層60を設けることで、抵抗体30および配線40を湿気等から保護できる。なお、カバー層60は、電極50を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0046】
カバー層60の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層60の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層60を設けることで、抵抗体30に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。また、カバー層60を設けることで、抵抗体30を湿気等から保護することができる。
【0047】
[ひずみゲージの製造方法]
ひずみゲージ1を製造するためには、まず、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて検知部33、終端30e、配線40、および金属層51となる層である。したがって、金属層Aの材料や厚さは、前述の検知部33、終端30e、配線40、および金属層51の材料や厚さと同様である。
【0048】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。
【0049】
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層Aを成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により所定の膜厚の機能層を真空成膜することが好ましい。
【0050】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(検知部33)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0051】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0052】
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層A(検知部33)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種または複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、または、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0053】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0054】
ただし、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等を施すことによって、基材10の上面10aを活性化してもよい。これにより、密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜してもよい。
【0055】
機能層の材料と金属層Aの材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、機能層としてTiを用い、金属層Aとしてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0056】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層Aを成膜できる。あるいは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層Aを成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrNおよびCr2Nの割合、並びにCrNおよびCr2N中のCr2Nの割合を調整できる。
【0057】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。また、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCSおよび抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0058】
なお、金属層AがCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層Aの結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および基材10と金属層Aとの密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0059】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上できる。また、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性が向上できる。
【0060】
次に、フォトリソグラフィ法により、金属層Aを
図1に示した平面形状にパターニングすることで、検知部33、配線40、および金属層51を形成する。そして、検知部33と直接接するように、検知部33と直列に接続部34を形成することで抵抗体30が形成される。接続部34は、例えば、蒸着法、スパッタリング法等により形成できる。接続部34は、ゾルゲル法、インクジェット法等の塗布技術を用いて形成してもよい。
【0061】
次に、金属層51の上面に、金属層52を形成する。金属層52は、例えば、周知のセミアディティブ法により形成できる。金属層52の材料や厚さは、前述のとおりである。
【0062】
その後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出するカバー層60を設ける。これにより、ひずみゲージ1が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し電極50を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させることで作製できる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30および配線40を被覆し、かつ電極50を露出するように作成されてよい。例えば、液状またはペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を上面10aに塗布して加熱する(すなわち、樹脂を硬化させる)ことによって、カバー層60を作製することができる。
【0063】
なお、検知部33、配線40、および金属層51の下地層として基材10の上面10aに機能層を設けた場合には、ひずみゲージ1は
図4に示す断面形状となる。
図4は、実施形態に係るひずみゲージの他の例を示す断面図である。符号20で示す層が機能層である。機能層20を設けた場合のひずみゲージ1の平面形状は、例えば、
図1の抵抗体30、配線40、および金属層51と同様となる。
(本実施形態に係るひずみゲージ1の作用と効果)
【0064】
ひずみゲージ1では、検知部33と直列に、当該検知部33よりも相対的に弾性率が低い接続部34を配置しているので、外的要因等によりひずみゲージ1に強い力が加わっても、接続部34がひずんでその力をある程度緩和することができる。これは、換言すると、接続部34が、抵抗体30においてあたかもバネのように振舞うともいえる。このように、本実施形態に係るひずみゲージ1によれば、抵抗体30に破断および亀裂が生じることを防止できる。つまり、ひずみ限界(すなわち、耐ひずみ性)が高いひずみゲージを実現できる。
【0065】
さらに、本実施形態に係るひずみゲージ1では、ある細長状部31における境界線と、当該細長状部31と隣り合う細長状部31における境界線とが、平面視において同一直線上にない。つまり、検知部33と接続部34との物理的な接続部分が平面視において同一直線上に無いので、ある一方向に前記接続部分が並ぶことが無い。したがって、本実施形態に係るひずみゲージ1によれば、検知部33と接続部34との物理的な接続部分からの破断および亀裂を起こりにくくすることができる。したがって、本実施形態によれば、破断および亀裂が生じにくいひずみゲージを実現することができる。
【0066】
以下、前述の実施形態の変形例について説明する。なお、以下で説明する各変形例について、実施形態と同一の処理および構成は繰り返し説明しない場合がある。
【0067】
〈変形例1〉
前記実施形態に係る接続部34は、平面視において平行四辺形の形状をしていた。しかしながら、接続部の形状はこれに限られない。例えば、接続部は、平面視において矩形であってもよいし、曲線の辺を含む形状であってもよい。また、検知部33と境界線34の境界線は、直線であってもよいし、曲線であってもよい。
【0068】
図5は、変形例1に係るひずみゲージ1Aにおける、検知部と接続部との接続の例を示す部分平面図である。例えば
図5の(a)および(b)の接続部34aおよび34bのように、境界線35は、平面視において接続部34aおよび34bの中央側に窪んでいてもよい。また、当該境界線35は、
図5の(a)に示すような直線であってもよいし、
図5の(b)に示すような曲線であってもよい。
【0069】
〈変形例2〉
また、抵抗体における接続部の配置位置は、実施形態にて説明した例に限定されない。例えば、抵抗体の折り返し部分のうち、1つ以上の折り返し部分に接続部が配置されていてもよい。すなわち、ひずみゲージにおける折り返し部分の一部が接続部に置換されていてもよい。
【0070】
図6は、実施形態の変形例2に係るひずみゲージ1Bを例示する平面図である。
図7は、実施形態の変形例2に係るひずみゲージ1Bを例示する断面図であり、
図6のC-C線に沿う断面を示している。
図8は、
図6に示すひずみゲージ1Bの接続部34cの拡大図である。
【0071】
図6および
図7に示す通り、ひずみゲージ1Bは、実施形態1に係るひずみゲージ1で折り返し部分32であった箇所の一部が、接続部34cに置換されている点でひずみゲージ1と異なる。また、ひずみゲージ1Bの例では、
図6に示すように、折り返し部分32と接続部34cとが、短手方向に交互に配置されている。
【0072】
このように、接続部を折り返し部分があった位置にも設けることで、折り返し部分に強い力が加わった場合でも、接続部(特に、接続部34c)がひずんでその力をある程度緩和することができる。したがって、抵抗体30の破断および亀裂を防止することができる。また、本変形例において、
図6に示すように、折り返し部分32と置換した接続部34cが短手方向に連続して並ばないようにした場合、検知部33と接続部34cとの物理的な接続部分が同じ方向に並ぶことを極力防ぐことができる。したがって、ひずみゲージ1Bは、抵抗体30の物理的な接続部分からの破断および亀裂を起こりにくくすることができる。
【0073】
さらに、ひずみゲージ1Bにおいて、接続部34cと、検知部33との境界線は、平面視において短手方向に対して平行でないことが望ましい(すなわち、短手方向に対し所定角度で傾く斜線、または曲線であることが望ましい)。
図8に示すように、接続部34cは、その境界線353および354がそれぞれ短手方向と平行にならないように形成されることが望ましい。
【0074】
検知部33と接続部34cがこのような形状であることで、境界線353および354が同一直線上に並ぶことを極力防ぐことができる。したがって、ひずみゲージ1Bは、抵抗体30の物理的な接続部分からの破断および亀裂を起こりにくくすることができる。
【0075】
〈変形例3〉
ひずみゲージの配線部分に接続部を配置してもよい。
図9は、実施形態の変形例3に係るひずみゲージ1Cを例示する平面図である。
図10は、実施形態の変形例3に係るひずみゲージ1Cを例示する断面図であり、
図9のD-D線に沿う断面を示している。
図9および
図10を参照すると、ひずみゲージ1Cは、配線40が配線40Bに置換されている点で、ひずみゲージ1と相違する。
【0076】
配線40Bは、複数の導電部43と、導電部43と直列に接続された接続部44とを含む。接続部44は、導電部43に直接接するように形成されている。接続部44は、例えば
図9に示すように、各々の配線40Bに1つずつ配置することができる。接続部44は、隣接する導電部43の間に配置され、隣接する導電部43を導通させている。また、終端30eを接続部44で置換する場合は、接続部44は、導電部43と細長状部31を導通させる。
【0077】
接続部44の幅および厚さは、導電部43の幅および厚さと等しいことが好ましい。これにより、隣接する導電部43を接続部44が確実に導通させることができる。なお、ここで言う「等しい」とは必ずしも完全一致ではなく、接続部44の幅および厚さが、導電部43の幅および厚さに対して、それぞれ±10%以下であることを意味する。
【0078】
ひずみゲージ1Cによれば、配線40Bに接続部44を配置することで、接続部44が外的要因により強い力が加わった際にバネのように振舞うため、導電部43における破断および亀裂を防止できる。
【0079】
図9の例では、接続部44は、実施形態に係る接続部34と同様に、平面視において平行四辺形の形状をしている。このような形状の接続部44であれば、
図9に示すように、接続部44を接続部34と短手方向に平行に並置することで、各接続部(接続部44および接続部34)の境界線が、隣り合う接続部の境界線と同一直線上に存在しないようにすることができる。このように、接続部44を、隣り合う接続部34と平面視において同一直線上に存在しないように配置するのであれば、接続部44の形状、配置位置、および配置個数は特に限定されない。例えば、1つの配線40Bに複数の接続部44が設けられていてもよい。また、各配線40Bの接続部44の個数は異なっていてもよい。また、接続部44が設けられていない配線40Bがあってもよい。
【0080】
また、接続部44は終端30eに置換されて配置されてもよい。接続部44を、隣り合う接続部34と平面視において同一直線上に存在しないように配置することにより、接続部44と導電部43、および、接続部34と検知部33との物理的な接続部分からの破断または亀裂を起こりにくくすることができる。
【0081】
<変形例4>
前述の通り、ひずみゲージの接続部は矩形であってもよい。また、接続部が矩形である場合、接続部は、平面視において短手方向に1つおきに同じ位置になるように配置されてもよい。すなわち、ひずみゲージの抵抗体全体として、平面視で接続部が互い違いに配置されていてもよい。なお、この場合も、平面視かつ短手方向において、隣り合う接続部の境界線は同一直線上にないように接続部を配置する。
【0082】
図11は、実施形態の変形例4に係るひずみゲージ1Dを例示する平面図である。
図11の例では、接続部34は矩形であり、各細長状部31に2つずつ設けられている。また、隣り合う細長状部31の接続部34は、それぞれ短手方向において異なる位置に配置されている。つまり、ひずみゲージ1Dは、短手方向に隣り合う接続部34同士の境界線が、同一直線上に存在しないように設計されている。
【0083】
なお、接続部34の位置は、抵抗体30全体において一直線に並ぶ境界線がより少なくなるように設計されることが望ましい。例えば、
図11に示すひずみゲージ1Dは、抵抗体30全体において接続部34が長手方向に少しずつずれて配置されている。すなわち、ひずみゲージ1Dでは、ある接続部34の境界線と、他の接続部34の境界線とが極力一直線に並ばないように設計されている。
【0084】
具体例を挙げて説明すると、例えば、細長状部311と、その隣の細長状部312とでは接続部34の配置位置が異なり、かつ、細長状部311および細長状部312のいずれの境界線35も平面視において同一直線上にない。また、細長状部311と、その2つ隣の細長状部313とについても、いずれの境界線35も平面視において同一直線上にない。このように、接続部34を長手方向に少しずつずらして配置することで、接続部34により衝撃および外部応力を緩和しつつも、検知部33と接続部34との物理的な接続部分からの破断および亀裂を起こりにくくすることができる。
【0085】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係るひずみゲージは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態および変形例に示した構成を組み合わせたひずみゲージを実現してもよい。また例えば、上述した実施形態および変形例に係る各ひずみゲージについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D ひずみゲージ、10 基材、10a 上面、20 機能層、30 抵抗体、30e 終端、31 細長状部、32 折り返し部分、33 検知部、34,34a,34b,34c,44 接続部、35 境界線、40,40B 配線、43 導電部、51,52 金属層、50 電極、60 カバー層