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  • 特開-遠隔操作システム 図1
  • 特開-遠隔操作システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088431
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B25J3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203587
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 光樹
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707BS10
3C707JT05
3C707JU12
3C707KS21
3C707KS33
3C707KX10
3C707LT00
3C707LU06
3C707LV23
(57)【要約】
【課題】操作者がマスターロボットを操作する際に、大きな力を必要とせず、操作感が阻害されないように操作者に反力を提示することが可能な遠隔操作システムを提供する。
【解決手段】第1ダミー物体がマスターロボットに保持される。スレーブロボットが第1物体を保持し、第1物体を第2物体に接触させて作業を行う。制御装置が、マスターロボットの動作に基づいてスレーブロボットを追従動作させる。スレーブ力検出器が、第1物体が第2物体から受ける反力を検出する。反力発生機構が、第1ダミー物体に力を作用させる。制御装置は、スレーブ力検出器の検出値に基づいて反力発生機構を動作させることにより、スレーブ力検出器で検出された反力の検出値に応じた力を第1ダミー物体に作用させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ダミー物体が保持されるマスターロボットと、
第1物体を保持し、前記第1物体を第2物体に接触させて作業を行うスレーブロボットと、
前記マスターロボットの動作に基づいて前記スレーブロボットを追従動作させる制御装置と、
前記第1物体が前記第2物体から受ける反力を検出するスレーブ力検出器と、
前記第1ダミー物体に力を作用させる反力発生機構と
を備え、
前記制御装置は、前記スレーブ力検出器の検出値に基づいて前記反力発生機構を動作させることにより、前記スレーブ力検出器で検出された反力の検出値に応じた力を前記第1ダミー物体に作用させる遠隔操作システム。
【請求項2】
前記反力発生機構は、前記第1ダミー物体に作用させる力を検出するマスター力検出器を含み、
前記制御装置は、前記マスター力検出器の検出値を、前記スレーブ力検出器で検出された反力の検出値に近づける力フィードバック制御を行う請求項1に記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記反力発生機構は、さらに、前記第1ダミー物体に接触する第2ダミー物体、及び前記第2ダミー物体の位置を検出する位置検出器を含み、
前記制御装置は、前記位置検出器で検出された位置の検出値を、予め決められた位置指令値に近づける位置フィードバック制御を行う請求項2に記載の遠隔操作システム。
【請求項4】
前記位置フィードバック制御のゲインは、前記力フィードバック制御のゲインより小さい請求項3に記載の遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
マスターロボットを操作者が操作し、遠隔にあるスレーブロボットの手先位置及び姿勢がマスターロボットの手先位置及び姿勢に追従するように、スレーブロボットを動作(以下、追従動作という。)させて作業を行う遠隔操作システムが公知である。研削、研磨のような力加減が重要な加工を行う場合は、操作者が押付力を調整しながら作業を行う。このような加工作業を、遠隔操作システムを用いて行う場合は、実際に加工を行っているスレーブロボット側の接触力情報を操作者に提示するために、マスターロボットにアクチュエータが搭載されることが多い。直接作業を行っている場合と同様の力を、操作者が感じられるようにすることにより、ワークと作業環境(ツール)との接触の感覚をつかみやすくなる。
【0003】
ワークと作業環境との接触力が大きくなると、マスターロボット側で発生すべき力が大きくなる。マスターロボット側で大きな力を発生するために、アクチュエータの大出力化や、減速機の付加等が必要になる。アクチュエータの出力を大きくすると、一般的にアクチュエータ自体が大型化することにより、慣性が大きくなる。また、減速機を付加すると、減速機の内部摩擦が発生する。さらに、減速機を介してモータ等のアクチュエータを動かすときに、アクチュエータの慣性を大きく感じることになる。いずれの場合も、操作者がマスターロボットを操作する際に、大きな力が必要になる。
【0004】
マスターロボットのアクチュエータと、操作者が操作するアーム部との間に減速機とクラッチを挿入した遠隔操作システムが公知である(特許文献1)。スレーブロボット側のワークとツールとが接触していないときは、アクチュエータとアーム部とをクラッチで切り離すことにより、アクチュエータの慣性や減速機で発生する摩擦力を操作者に伝えないようにすることができる。スレーブロボット側のワークとツールとが接触しているときはクラッチを繋いでアクチュエータが発生する力を操作者に伝える。これにより、スレーブロボットが作業環境から受ける反力を操作者に提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-333764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スレーブロボット側のワークとツールとが振動して接触状態と非接触状態とが頻繁に切り替わる場合や、小さい力を要する作業の場合は、クラッチの接続と切り離しとが頻繁に繰り返される。このため、操作者への反力の提示が断続的に制御される。その結果、操作感が阻害されるとともに、細かい力の制御が困難である。本発明の目的は、操作者がマスターロボットを操作する際に、大きな力を必要とせず、操作感が阻害されないように操作者に反力を提示することが可能な遠隔操作システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によると、
第1ダミー物体が保持されるマスターロボットと、
第1物体を保持し、前記第1物体を第2物体に接触させて作業を行うスレーブロボットと、
前記マスターロボットの動作に基づいて前記スレーブロボットを追従動作させる制御装置と、
前記第1物体が前記第2物体から受ける反力を検出するスレーブ力検出器と、
前記第1ダミー物体に力を作用させる反力発生機構と
を備え、
前記制御装置は、前記スレーブ力検出器の検出値に基づいて前記反力発生機構を動作させることにより、前記スレーブ力検出器で検出された反力の検出値に応じた力を前記第1ダミー物体に作用させる遠隔操作システムを提供することである。
【発明の効果】
【0008】
反力発生機構が、スレーブ力検出器で検出された反力の検出値に応じた力を第1ダミー物体に作用させるため、マスターロボットにアクチュエータを搭載する必要がない。操作者がマスターロボットを操作する際に、アクチュエータからの慣性力を受けない。このため、マスターロボットの操作に大きな力が必要とされない。また、操作感が阻害されないように、第1ダミー物体に力を作用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施例による遠隔操作システムの概略図である。
図2図2は、本実施例による遠隔操作システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び図2を参照して、一実施例による遠隔操作システムについて説明する。
図1は、本実施例による遠隔操作システムの概略図である。本実施例による遠隔操作システムは、マスターロボット10、反力発生機構20、スレーブロボット40、及び制御装置60を含む。
【0011】
マスターロボット10として、複数の関節11及び複数のリンクアーム12を有する多軸ロボットアームを備えたものが用いられる。マスターロボット10の基部に固定された基準座標系をxyz直交座標系と標記する。複数の関節11のそれぞれに、マスター位置検出器13が搭載されている。なお、マスターロボット10の各関節11には、モータ等のアクチュエータは搭載されていない。マスター位置検出器13として、例えばロータリエンコーダが用いられる。複数のマスター位置検出器13のそれぞれの検出値が制御装置60に入力される。マスターロボット10の先端の把持部に、第1ダミー物体15が把持されている。第1ダミー物体15の把持部に対する相対位置及び姿勢は固定されている。
【0012】
複数のマスター位置検出器13のそれぞれの検出値から、第1ダミー物体15のxyz直交座標系における位置及び姿勢を求めることができる。
【0013】
第2ダミー物体25が、反力発生機構20によって支持されている。反力発生機構20として、例えばスタック型直交3軸ロボットが用いられる。スタック型直交3軸ロボットの複数の軸の可動方向を、それぞれu軸、v軸、w軸とするuvw直交座標系を定義する。マスターロボット10の姿勢の基準となるxyz直交座標系に対するuvw直交座標系の相対位置は予め決定されている。
【0014】
反力発生機構20は、軸ごとに搭載されたアクチュエータ21及び位置検出器22を含む。なお、図1では、1つの軸のアクチュエータ21及び位置検出器22を示している。アクチュエータ21として、例えばリニアアクチュエータが用いられる。位置検出器22として、例えばリニアエンコーダが用いられる。複数のアクチュエータ21のそれぞれは、制御装置60から制御されることにより駆動される。複数の位置検出器22のそれぞれの検出値が制御装置60に入力される。
【0015】
反力発生機構20は、さらにマスター力検出器23を含む。マスター力検出器23は、第2ダミー物体25に作用する力を測定する。マスター力検出器23の検出値が制御装置60に入力される。マスター力検出器23で測定された力は、uvw直交座標系のu成分、v成分、及びw成分に分解することができる。
【0016】
スレーブロボット40として、複数の関節41及び複数のリンクアーム42を有する多軸ロボットアームを備えたものが用いられる。スレーブロボット40の基部に固定された基準座標系をXYZ直交座標系と標記する。複数の関節41のそれぞれに、スレーブ位置検出器43及びスレーブアクチュエータ44が搭載されている。
【0017】
スレーブ位置検出器43として、例えばロータリエンコーダが用いられる。スレーブアクチュエータ44として、例えば回転型モータが用いられる。複数のスレーブ位置検出器43のそれぞれの検出値が制御装置60に入力される。スレーブアクチュエータ44のそれぞれは、制御装置60から制御されることにより駆動される。
【0018】
スレーブロボット40の先端の把持部に、第1物体51が把持されている。第1物体51の把持部に対する相対位置及び姿勢は固定されている。
【0019】
スレーブロボット40の動作可能範囲内に第2物体52が配置されている。第2物体52は、支柱53によって支持されている。XYZ直交座標系における第2物体52の位置及び姿勢は固定されている。
【0020】
例えば、第1物体51は加工すべきワークであり、第2物体52は、ワークを加工するツールである。ツールとして、例えば研削器、研磨器等が用いられる。マスターロボット10側の第1ダミー物体15及び第2ダミー物体25は、それぞれスレーブロボット40側の第1物体51及び第2物体52を模したものである。例えば、第1ダミー物体15の形状及び大きさは、第1物体51の形状及び大きさと同一である。第2ダミー物体25の形状及び大きさは、第2物体52の形状及び大きさと同一である。なお、作業中に第1物体51と第2物体52とが相互に接触する可能性のある範囲のみについて、形状及び大きさを同一にしてもよい。
【0021】
なお、2つの物体の接触の感覚を再現するために、第1ダミー物体15の硬さを第1物体51の硬さと同一にし、第2ダミー物体25の硬さを第2物体52の硬さと同一にすることが好ましい。また、第1ダミー物体15と第2ダミー物体25との接触箇所の摩擦係数を、第1物体51と第2物体52との接触箇所の摩擦係数と同一にすることが好ましい。
【0022】
スレーブロボット40に、スレーブ力検出器45が搭載されている。スレーブ力検出器45は、第1物体51が第2物体52から受ける力を測定する。スレーブ力検出器45の検出値が制御装置60に入力される。
【0023】
操作者90がマスターロボット10を操作する。制御装置60は、マスターロボット10の姿勢の変化に基づいて、スレーブロボット40を追従動作させる。これにより、第1ダミー物体15の位置及び姿勢の変化に応じて、第1物体51の位置及び姿勢が変化する。さらに、制御装置60は、第1物体51が第2物体52から受ける力とほぼ同一の力を、第2ダミー物体25が第1ダミー物体15に作用させるように、反力発生機構20を制御する。
【0024】
次に、図2を参照して、制御装置60が行う制御について説明する。図2は、本実施例による遠隔操作システムのブロック図である。
【0025】
まず、スレーブロボット40をマスターロボット10の姿勢の変化に対して追従動作させる制御について説明する。
【0026】
複数のマスター位置検出器13から制御装置60の座標変換ブロック61にマスター手先位置情報が入力される。マスター手先位置情報には、複数のマスター位置検出器13により検出された検出値が含まれる。座標変換ブロック61は、複数のマスター位置検出器13のそれぞれの検出値を、マスターロボット10のxyz座標系における手先位置情報に変換する。手先位置情報は、x座標、y座標、z座標、x軸、y軸、z軸の周りの回転位置θ、θ、θで表される。さらに、マスターロボット10の手先位置情報を、XYZ座標系におけるスレーブロボット40の手先位置情報に変換し、スレーブ手先位置指令を出力する。スレーブ手先位置指令は、X座標、Y座標、Z座標、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転位置θ、θ、θを含む。
【0027】
座標変換ブロック61で生成されたスレーブ手先位置指令が、手先位置関節軸座標変換ブロック63に入力される。手先位置関節軸座標変換ブロック63は、スレーブ手先位置指令で指令された手先位置の座標を、スレーブロボット40の関節41のそれぞれの軸(以下、i軸という。)に対応する座標に変換し、i軸位置指令を生成する。i軸位置指令は、位置制御ブロック64に入力される。位置制御ブロック64は、スレーブロボット40の関節41の関節軸ごとに設けられている。
【0028】
スレーブロボット40の関節軸ごとのスレーブ位置検出器43からi軸位置検出値が位置制御ブロック64に入力される。位置制御ブロック64は、i軸位置指令で指令された位置に対するi軸位置検出値の偏差がゼロに近づくように、i軸操作量を生成し、i軸のスレーブアクチュエータ44に与える。これにより、スレーブアクチュエータ44が駆動され、スレーブロボット40の手先位置が変化する。この制御は、スレーブロボット40の関節軸ごとに行われる。
【0029】
次に、反力発生機構20の制御について説明する。
スレーブ力検出器45で検出された反力情報が座標変換ブロック65に入力される。反力情報には、第1物体51が第2物体52から受ける反力のX成分、Y成分、Z成分が含まれる。座標変換ブロック65は、反力情報を、反力発生機構のu軸、v軸、w軸(図1)の各軸(以下、u軸、v軸、及びw軸の1つの軸をj軸という。)の成分に変換し、j軸力指令値を出力する。j軸力指令値は、位置力制御ブロック67に入力される。
【0030】
マスター力検出器23による力検出値が、座標変換ブロック66に入力される。この力検出値は、第2ダミー物体25が第1ダミー物体15に与える力の検出値である。座標変換ブロック66は、マスター力検出器23の力検出値から、uvw直交座標系のu軸、v軸、w軸の各軸(j軸)の成分であるj軸力検出値を算出する。j軸力検出値は、位置力制御ブロック67に入力される。
【0031】
位置力制御ブロック67に、さらに、j軸位置指令値が入力される。j軸位置指令値は固定値である。例えば、j軸位置指令値は、マスターロボット10に対して定義されたxyz座標系における第2ダミー物体25(図1)の位置が、スレーブロボット40に対して定義されたXYZ座標系における第2物体52(図1)の位置と同一になるように設定される。j軸位置指令値によって特定される第2ダミー物体25の位置を基準位置ということとする。
【0032】
位置力制御ブロック67に、さらに、マスターロボット10の複数の関節11のそれぞれに搭載された位置検出器22のj軸位置検出値が入力される。j軸位置検出値は、第2ダミー物体25の現在の位置を表している。
【0033】
位置力制御ブロック67は、j軸力指令値に対するj軸力検出値の偏差がゼロに近づき、かつj軸位置指令値に対するj軸位置検出値の偏差がゼロに近づくように、j軸操作量を生成し、j軸のアクチュエータ21を駆動する。このように、位置力制御ブロック67は、力フィードバック制御と位置フィードバック制御とを行う。力フィードバック制御により、第2ダミー物体25が第1ダミー物体15に与える力が、スレーブロボット40側の第2物体52が第1物体51に与える力に近づくように制御される。また、位置フィードバック制御により、第2ダミー物体25の位置を基準位置に戻すように制御される。
【0034】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
操作者90が、第1ダミー物体15を保持したマスターロボット10を操作して、第1ダミー物体15を第2ダミー物体25に接触させると、スレーブロボット40が追従動作を行い、第1物体51が第2物体52に接触する。このとき、第1物体51が第2物体52から受ける反力に相当する力が、第2ダミー物体25から第1ダミー物体15に作用する。操作者90は、提示された力を感じながら第1ダミー物体15の位置を調整することができる。操作者90が第1ダミー物体15の位置を調整すると、その調整に合わせてスレーブロボット40が追従動作するため、スレーブロボット40側の第1物体51が第2物体52から受ける反力が調整される。このため、作業の精度や品質を向上させることができる。
【0035】
また、マスターロボット10の関節11にアクチュエータが搭載されていないため、マスターロボット10の動作が、アクチュエータからの慣性力やアクチュエータ内部の摩擦力の影響を受けない。このため、操作者90がマスターロボット10を操作するときに必要な力が小さくなり、操作性が向上する。
【0036】
さらに、作業者は、第1ダミー物体15と第2ダミー物体25とを直接視認しながら作業を行うことができる。このため、スレーブロボット40側の第1物体51と第2物体52との位置関係を把握しやすくなる。これにより、第1物体51が第2物体52に接触するまで、第1ダミー物体15を第2ダミー物体25に近づける操作を行いやすくなる。
【0037】
位置力制御ブロック67(図2)は、力フィードバック制御のみならず、第2ダミー物体25を基準位置に戻す位置フィードバック制御も行っている。スレーブロボット40側の第2物体52は固定されているため、第2物体52を模した第2ダミー物体25を過度に移動させると実際の作業環境が再現されなくなってしまう。第2ダミー物体25の位置制御を行うことにより、マスターロボット10側の作業環境と、スレーブロボット40側の作業環境とのずれが過大になってしまう状態が生じにくくなる。
【0038】
また、何らかの原因で、第1ダミー物体15と第2ダミー物体25との位置関係が、第1物体51と第2物体52との位置関係からずれる場合がある。例えば、第1ダミー物体15が第2ダミー物体25から離れた時点で、第1物体51が第2物体52に接触しており、両者の間に反力が発生している状況が生じ得る。位置力制御ブロック67が力フィードバック制御のみを行い、位置フィードバック制御を行っていない場合、この反力に相当する力を第1ダミー物体15に与えるために、第2ダミー物体25が大きく動き出してしまう。本実施例では、第2ダミー物体25の位置制御を行っているため、第2ダミー物体25の過度の移動が抑制される。
【0039】
なお、第1物体51が第2物体52から受ける反力を、第1ダミー物体15と第2ダミー物体25との間に再現させるために、位置フィードバック制御のゲインを、力フィードバック制御のゲインより小さくすることが好ましい。
【0040】
次に、上記実施例の変形例について説明する。
上記実施例では、第2ダミー物体25が第1ダミー物体15に与える力を、マスター力検出器23で検出しているが、その他の手段で力を求めてもよい。例えば、反力推定オブザーバの情報を用いてもよい。反力推定オブザーバの構成については、例えば、日本ロボット学会誌11巻5号「反作用力推定オブザーバに基づいた多自由度ロボットの力センサレスコンプライアンス制御」に説明されている。
【0041】
また、上記実施例では、第1物体51が第2物体52から受ける反力の測定に、スレーブロボット40の手先に取り付けたスレーブ力検出器45を用いているが、その他の手段で反力を求めてもよい。例えば、スレーブロボット40の複数の関節41のそれぞれにトルクセンサを取り付け、複数のトルクセンサのそれぞれの検出値から反力を計算してもよい。または、スレーブロボット40の各関節軸に関する反力推定オブザーバの情報から反力を計算してもよい。
【0042】
上記実施例では、マスターロボット10及びスレーブロボット40として多軸ロボットアームを有するものを用いている。多軸ロボットアームの自由度は、加工作業の内容に応じて決定すればよい。多軸ロボットアームとして、6自由度のものを用いてもよいし、5自由度以下のものを用いてもよいし、7自由度以上のものを用いてもよい。
【0043】
上記実施例では、マスター位置検出器13として、マスターロボット10の複数の関節11のそれぞれに搭載したロータリエンコーダを用いている。すなわち、マスター位置検出器13の自由度の数が、マスターロボット10の自由度の数と同一である。一変形例として、マスターロボット10の自由度の数よりも多い自由度を持つマスター位置検出器13を用いてもよい。例えば、マスター位置検出器13として、モーションキャプチャや慣性計測装置(IMU)を用いてもよい。
【0044】
上記実施例では、マスターロボット10及びスレーブロボット40が、シリアルリンク型の多軸ロボットアームを含んでいるが、その他の構成のロボットを用いてもよい。例えば、複数の直交軸と複数の回転軸とを含むスタック型のロボット、パラレルリンク型のロボット等を用いてもよい。
【0045】
上記実施例では、反力発生機構20として、スタック型直交3軸ロボットを用いているが、その他の構成のものを用いてもよい。例えば、シリアルリンク型のロボット、パラレルリンク型のロボット等を用いてもよい。
【0046】
上述の実施例は例示であり、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0047】
10 マスターロボット
11 関節
12 リンクアーム
13 マスター位置検出器
15 第1ダミー物体
20 反力発生機構
21 アクチュエータ
22 位置検出器
23 マスター力検出器
25 第2ダミー物体
40 スレーブロボット
41 関節
42 リンクアーム
43 スレーブ位置検出器
44 スレーブアクチュエータ
45 スレーブ力検出器
51 第1物体
52 第2物体
53 支柱
60 制御装置
61 座標変換ブロック
63 手先位置関節軸座標変換ブロック
64 位置制御ブロック
65、66 座標変換ブロック
67 位置力制御ブロック
90 操作者
図1
図2