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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088437
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】電池用包装材
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20240625BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240625BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240625BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240625BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/121
H01M50/131
H01M50/129
H01G11/78
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203602
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】501428187
【氏名又は名称】株式会社レゾナック・パッケージング
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】川北 圭太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB04C
4F100AB10C
4F100AB12C
4F100AB33C
4F100AK03D
4F100AK07D
4F100AK42B
4F100AK46B
4F100AK50A
4F100AK55A
4F100BA04
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JL02
4F100JL12
5E078AA14
5E078HA02
5E078HA13
5E078HA26
5H011AA02
5H011AA03
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC10
5H011DD03
5H011KK02
5H011KK04
5H011KK05
(57)【要約】
【課題】良好な成形性を維持しつつ、高温でヒートシールしてもシールバーへの付着によるシール不良を防止できる電池用包装材を提供する。
【解決手段】外側から内側へ順に、少なくとも基材保護層20、基材層13、バリア層11、熱融着性樹脂層15を含む電池用包装材1であって、前記基材保護層20がガラス転移点220℃以上の樹脂と滑剤を含む樹脂組成物で構成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側から内側へ順に、少なくとも基材保護層、基材層、バリア層、熱融着性樹脂層を含む電池用包装材であって、
前記基材保護層がガラス転移点220℃以上の樹脂と滑剤を含む樹脂組成物で構成されていることを特徴とする電池用包装材。
【請求項2】
前記基材保護層に含まれる樹脂のガラス転移点(Tg)が250℃~350℃であり、数平均分子量(Mn)が5000~30000である請求項1に記載の電池用包装材。
【請求項3】
前記基材保護層に含まれる樹脂が、硬化剤を含まないポリアミドイミド樹脂である請求項2に記載の電池用包装材。
【請求項4】
前記基材保護層に含まれる滑剤が、不飽和脂肪酸ビスアミド、N置換アミドから選ばれた1種以上の滑剤である請求項3に記載の電池用包装材。
【請求項5】
前記基材保護層における樹脂量が0.1g/m~5g/mであり、前記基材保護層中の滑剤の含有量が1質量%~20質量%である請求項1または2に記載の電池用包装材。
【請求項6】
請求項1または2に記載された電池用包装材に、深絞り成形または張り出し成形による凹部が形成されていることを特徴とする成形ケース。
【請求項7】
請求項6に記載された成形ケースを備えることを特徴とする電池ケース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォン、タブレット等の携帯機器に使用される電池やコンデンサ、ハイブリッド自動車、電気自動車、風力発電、太陽光発電、夜間電気の蓄電用に使用される電池やコンデンサ等の蓄電デバイス用のケース材料として用いられる電池用包装材およびその関連技術に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した電池用包装材として金属箔の両面に樹脂フィルムを貼り合わせたラミネートタイプの包装材が用いられ、ケースの外縁部をシールバーで挟んでヒートシールすることによりケースが密封される。
【0003】
電池作製時のヒートシール工程においては、電池用包装材の間にタブリードと呼ばれる金属製端子を挟んで同時にシールされるため、食品等のレトルトパウチなどのシールに比べて高い温度、圧力、長い時間の加熱が必要である。このため、耐熱性の観点から、ケースの外面となる樹脂層にポリアミド樹脂を用いるのが一般的である。しかし、耐熱性が高いとされるポリアミド樹脂を用いても、樹脂層に含まれる分子量の小さい化合物がシール時に表面に析出して包装材がシールバーに付着してしまい、シール不良を起こすことが問題視されていた。
【0004】
シール不良を防ぐためにポリアミド樹脂層の外側にポリエステル樹脂を貼り合せたりコーティングすることがなされてきたが、付加した層によって成形性が低下することがあった。また、シールバーへの付着防止のために、シールバーへのフッ素樹脂コーティング等が行われているが、熱伝導率の低下によってサイクル時間が増加したり、シール温度をより高温にしなければならない等の問題があった。
【0005】
上記の問題点を解消する方法として、特許文献1では、ポリアミド樹脂に含まれる特定成分(カプロラクタムモノマー)の含有量を制限することでシールバーへの付着を防止する技術が開示されている。また、特許文献2では、ポリアミド樹脂の融解熱分布曲線から導き出されるオンセット温度を規定することでシールバーへの付着を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6755723号
【特許文献2】特開2019-139832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、蓄電デバイス製造のタクトタイムの短縮が注目されており、コスト低減のためにより短時間でヒートシールをして生産性向上を図ることが求められている。そして、ヒートシールの時間を短縮するために、シール温度およびシール圧力をさらに高く設定する傾向がある。このため、特許文献1、2に記載された技術ではシールバーへの付着によるシール不良の問題を解消できない場合が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した背景技術に鑑み、良好な成形性を維持しつつ、高温でヒートシールしてもシールバーへの付着によるシール不良を防止できる電池用包装材の提供を目的とする。
【0009】
即ち、本発明は下記[1]~[7]に記載の構成を有する。
【0010】
[1]外側から内側へ順に、少なくとも基材保護層、基材層、バリア層、熱融着性樹脂層を含む電池用包装材であって、
前記基材保護層がガラス転移点220℃以上の樹脂と滑剤を含む樹脂組成物で構成されていることを特徴とする電池用包装材。
【0011】
[2]前記基材保護層に含まれる樹脂のガラス転移点(Tg)が250℃~350℃であり、数平均分子量(Mn)が5000~30000である前項1に記載の電池用包装材。
【0012】
[3]前記基材保護層に含まれる樹脂が、硬化剤を含まないポリアミドイミド樹脂である前項2に記載の電池用包装材。
【0013】
[4]前記基材保護層に含まれる滑剤が、不飽和脂肪酸ビスアミド、N置換アミドから選ばれた1種以上の滑剤である前項3に記載の電池用包装材。
【0014】
[5]前記基材保護層における樹脂量が0.1g/m~5g/mであり、前記基材保護層中の滑剤の含有量が1質量%~20質量%である前項1~4のいずれかに記載の電池用包装材。
【0015】
[6]前項1~5のいずれかに記載された電池用包装材に、深絞り成形または張り出し成形による凹部が形成されていることを特徴とする成形ケース。
【0016】
[7]前項6に記載された成形ケースを備えることを特徴とする電池ケース。
【発明の効果】
【0017】
上記[1]に記載の電池用包装材は、基材保護層がガラス転移点220℃以上の樹脂と滑剤を含む樹脂組成物で構成されているので、耐熱性が高く、ヒートシール時に電池用包装材のシールバーへ付着が防止されてシール不良が発生しにくい。また、基材保護層に含まれる滑剤によって滑り性が良く成形性が良い。
【0018】
上記[2]に記載の電池用包装材は、基材保護層を構成する樹脂のガラス転移点(Tg)が250℃~350℃であるから、特に耐熱性に優れている。しかも、樹脂の数平均分子量(Mn)が5000~30000であり、樹脂に応じた溶剤で樹脂の粘度を容易に調整することができるので、基材層表面に所望の厚さの基材保護層を形成することができる。
【0019】
上記[3]に記載の電池用包装材は、基材保護層を構成する樹脂が硬化剤を含まないポリアミドイミド樹脂であるから、柔軟性があり、ヒートシール時の高温や圧力に起因するクラック等の損傷が発生しにくい。
【0020】
上記[4]に記載の電池用包装材は、基材保護層に添加される滑剤が不飽和脂肪酸ビスアミド、N置換アミドから選ばれた1種以上である。これらの滑剤はアミド基が脂肪族炭化水素に挟まれた構造であり、ポリアミドイミド樹脂に捕捉されにくいので、同一添加量でも、他の滑剤よりも良好な滑り性を得ることができ、成形性を向上させることができる。
【0021】
上記[5]に記載の電池用包装材は、前記基材保護層における樹脂量が0.1g/m~5g/mであるから、耐熱性と成形性のバランスが良い。また、前記基材保護層中の滑剤の含有量が1質量%~20質量%であるから、滑り性が良く、かつブリードアウト量が抑制される。
【0022】
上記[6]に記載の成形ケースは電池用包装材の基材保護層に滑剤が含まれているから、深絞り成形や張り出し成形において深い成形が可能となり、電池本体の収容空間を拡大することにより電池容量の増大を図ることができる。
【0023】
上記[7]に記載の電池ケースは、電池用包装材の基材保護層がガラス転移点220℃以上の樹脂を含む樹脂組成物で形成されているから、ヒートシール時にシールバーへ付着が防止されてシール不良が発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の電池用包装材の一例を示す断面図である。
図2図1の電池用包装材で作製した電池ケースの断面図である。
図3】シールバー付着試験の方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に、本発明の電池用包装材にかかる一例を示す。
【0026】
[電池用包装材]
本発明の電池用包装材は、基本構成として、外側から内側へ順に、少なくとも基材保護層、基材層、バリア層、熱融着性樹脂層を含む積層体である。
【0027】
図1の電池用包装材1は、バリア層11の一方の面に第1接着剤層12を介して基材層13が貼り合わされ、他方の面に第2接着剤層14を介して熱融着性樹脂層15が貼り合わされ、さらに基材層13の外側に基材保護層20が形成された積層体である。
【0028】
前記電池用包装材1は、例えば図2に示すように、凹部52を形成した本体51とフラットな蓋55に加工され、両者の熱融着性樹脂層15同士を向かい合わせに配置して、凹部52内に電池本体56を収容し、凹部52の周囲のフランジ部53と蓋55をヒートシールすることにより電池ケース50が作製される。電池ケース50において、前記基材保護層20が外側となり、前記熱融着性樹脂層15が内側となる。従って、本発明において、電池用包装材を構成する各層の位置を方向で説明する場合に、ケースの内外の方向に合わせて、基材保護層20側の方向を外側、熱融着性樹脂層15側の方向を内側と称する。また、前記電池用包装材1の最外層は基材保護層20であり、最内層は熱融着性樹脂層15である。
【0029】
本発明の電池用包装材1は、最外層でありケース50の外面となる基材保護層20を滑剤を添加した特定の樹脂で構成することにより、良好な成形性を維持しつつ、シール不良を防ぐことができる。
【0030】
以下に、前記電池用包装材1を構成する各層について詳述する。
【0031】
(基材保護層)
基材保護層20は電池用包装材1の最外層であり、ヒートシール時にシールバーに接触する層である。前記基材保護層20はガラス転移点(Tg)が220℃以上の樹脂と滑剤を含む樹脂組成物で構成されている。
【0032】
ガラス転移点(Tg)とは樹脂粒子の分子鎖がミクロブラウン運動を開始する温度であり、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」に基づいて、示差走査熱量計(DSC)分析による吸熱の開始温度(オンセット点)で示される。ガラス転移点(Tg)が高いほど耐熱性が高く、ヒートシールのシール温度および/またはシール圧力が高くなってもシールバーに付着しにくくなり、シール不良が発生しにくくなる。本発明で用いる樹脂のガラス転移点(Tg)は220℃以上であるから耐熱性が高く、上記の効果が得られる。ガラス転移点(Tg)が220℃以上の樹脂として、ポリアミドイミド樹脂(ガラス転移点250℃~335℃)、ポリエーテルサルホン(ガラス転移点225℃~230℃)を例示できる。
【0033】
また、樹脂組成物は滑剤を含んでいるので、ガラス転移点(Tg)の高い樹脂を用いても高い成形性が得られる。
【0034】
前記樹脂の好ましい特性は、ガラス転移点(Tg)が250℃~350℃であり、かつ数平均分子量(Mn)が5000~30000であることである。
【0035】
後述する基材層13の材料として用いられる二軸延伸ポリエステルフィルムの融点は250℃であり、二軸延伸ポリアミドフィルムの融点は205~210℃であるから、これらの融点より高いガラス転移点を有する樹脂を用いることにより、基材層13の融点よりも高い温度でヒートシールを行っても、シールバーへの付着を防止できる。なお、ガラス転移点(Tg)が350℃を超える樹脂は溶剤に溶けにくく加工性に悪く不適である。特に好ましいガラス転移温度(Tg)は250℃~300℃である。
【0036】
本発明における数平均分子量(Mn)はJIS K 7252-1:2016「プラスチック-サイズ排除クロマトグラフィーによる高分子の平均分子量及び分子量分布の求め方 第1部:通則」に基づいて測定した。数平均分子量(Mn)は、高分子中に含まれる分子量Miにおける分子数をNiとするとMnは下記(I)式によって求められる。
【0037】
Mn=ΣMiNi/ΣNi … (I)
樹脂の数平均分子量(Mn)が5000~30000であれば樹脂に応じた溶剤を選択して粘度を容易に調整することができるので、基材層13表面に所望の厚さの基材保護層20を形成することができる。特に好ましい数平均分子量(Mn)は5500~20000である。基材保護層20は、例えば、溶剤で粘度調整した樹脂液に滑剤を添加し分散させたコート液を基材層13に所要厚さに塗布して200℃~300℃で乾燥させることによって形成することができる。コート液の塗布方法はグラビアロール、リバースロール等によるロールコートを例示できる。
【0038】
基材保護層20における樹脂量は0.1g/m~5g/mが好ましい。前記樹脂量は滑剤および溶剤を除く正味の樹脂量である。樹脂量が0.1g/m未満では耐熱性向上効果が少なく、5g/mを超えると成形性が低下するおそれがある。樹脂量が前記範囲内の場合は耐熱性と成形性のバランスが良い。特に好ましい樹脂量は0.2g/m~3g/mである。また、基材保護層20の厚さは前記樹脂量が多い程厚くなり、厚さは0.1μm~6μmが好ましく、特に0.3μm~2.0μmが好ましい。
【0039】
上述したガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)の条件を満たす樹脂として、ポリアミドイミド樹脂を挙げることができ、特に硬化剤を含まないポリアミドイミド樹脂を推奨できる。硬化剤とは主材料に加えることで主材料の硬化を促進させるものであり、2液硬化型接着剤や塗膜において、主剤の重合反応を促進させる添加剤である。硬化反応は100%の反応率で起こるのではなく、硬化後の接着剤中や塗膜中に未反応の硬化剤が残存する。基材保護層20に未反応の硬化剤が残存していると、硬化剤がシールバーに付着してシール不良を起こしやすい。従って、硬化剤を含まないポリアミドイミド樹脂による基材保護層20は柔軟性があり、ヒートシール時の高温や圧力に起因するクラック等の損傷が発生しにくい。
【0040】
ポリアミドイミド樹脂で硬化剤を用いずに基材保護層20を形成する方法は以下のとおりである。ポリアミドイミド樹脂を溶剤で溶解して樹脂液の粘度を調節し、この樹脂液に滑剤を分散させてコート液とする。このコート液を基材層13の表面に所要の厚さに塗布して、溶剤を揮発させて硬化膜を形成する。前記溶解用溶剤として、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、キシレン、メチルエチルケトン、エタノール、トルエン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等を用いることができる。
【0041】
上述した滑剤は特に限定されず、不飽和脂肪酸ビスアミド、N置換アミド、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、飽和脂肪酸ビスアミド等を用いることができ、1種でも2種以上を併用することもできる。これらの滑剤は基材保護層20の表面に析出して電池用包装材1の外面に滑り性を与え、電池用包装材1の成形性を向上させる。
【0042】
前記不飽和脂肪酸アミドとして、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドを例示できる。
【0043】
前記N置換アミドとして、N-オレイルパルミチン酸アミド(NOPA)、N-ステアリルステアリン酸アミド(NSSA)、N-ステアリルオレイン酸アミド(NSOA)、N-オレイルステアリン酸アミド(NOSA)、N-ステアリルエルカ酸アミド(NSEA)を例示できる。
【0044】
前記飽和脂肪酸アミドとして、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドを例示できる。
【0045】
飽和脂肪酸ビスアミドとして、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドを例示できる。
【0046】
上述した滑剤のなかでも、不飽和脂肪酸ビスアミド、N置換アミドから選ばれた1種以上の滑剤を推奨できる。これらの滑剤はアミド基が脂肪族炭化水素に挟まれた構造であり、ポリアミドイミド樹脂に捕捉されにくいので、同一添加量で他の滑剤よりも良好な滑り性を得ることができ、成形性を向上させることができる。
【0047】
前記滑剤の含有量、即ち樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤の割合は1質量%~20質量%の範囲が好ましい。滑剤の含有量が1質量%未満では良好な滑り性が得られず、20質量%を超えるとブリードアウト量が多くなり、滑剤が基材保護層20表面に白粉状に析出して成形金型や製造ラインに付着するおそれがある。特に好ましい滑剤の含有量は2質量%~10質量%である。
【0048】
(基材層)
前記基材層13には電池用包装材1をヒートシールする際のヒートシール温度で溶融しない耐熱性樹脂フィルムを用いる。前記耐熱性樹脂としては、熱融着性樹脂層15を構成する樹脂の融点より10℃以上、好ましくは20℃以上高い融点を有する耐熱性樹脂を用いる。この条件を満たす樹脂として、例えば、ナイロンフィルム等のポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等が挙げられ、これらの延伸フィルムが好ましく用いられる。中でも、前記基材層13としては、2軸延伸ナイロンフィルム等の2軸延伸ポリアミドフィルム、2軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は2軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。前記ナイロンフィルムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロンフィルム、6,6ナイロンフィルム、MXDナイロンフィルム等が挙げられる。前記基材層13は、単層で形成されていても良いし、或いは、例えばポリエステルフィルム/ポリアミドフィルムからなる複層(PETフィルム/ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。
【0049】
前記基材層13の厚さは、9μm~50μmであるのが好ましく、包装材として十分な強度を確保でき、かつ張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記基材層13のさらに好ましい厚さは12μm~30μmである。基材層13が複層である場合は合計厚さを上記の厚さとする。また、複数の層を貼り合わせる接着剤の厚さも上記の厚さに含まれる。
【0050】
(バリア層)
前記バリア層11は、電池用包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記バリア層11としては、金属箔である限り特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、SUS箔(ステンレス箔)、銅箔、ニッケル箔、チタン箔、クラッド箔が挙げられ、アルミニウム箔を好適に用いることができる。前記バリア層11の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形、絞り成形等の成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。前記バリア層11の特に好ましい厚さは30μm~80μmである。
【0051】
また、前記バリア層11は前記金属箔の少なくとも熱融着性樹脂層15側の面に化成処理等の下地処理が施されて化成皮膜が形成されていることが好ましい。化成皮膜は金属箔表面の耐食性を高め、電池の電解質等の内容物による金属箔の腐食を防止できる。化成皮膜は、例えば、金属箔にクロメート処理、ジルコニウム化合物を用いたノンクロム型化成処理を施すことによって形成することができる。
【0052】
クロメート処理方法では、例えば、脱脂処理を行った金属箔の表面に、下記1)~3)のいずれかの混合物の水溶液を塗工した後乾燥させる。
1)リン酸と、クロム酸と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方と、の混合物
2)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂およびフェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方と、の混合物
3)リン酸と、アクリル系樹脂、キトサン誘導体樹脂、フェノール系樹脂のうちのいずれかと、クロム酸およびクロム(III)塩のうちの少なくとも一方と、フッ化物の金属塩およびフッ化物の非金属塩のうちの少なくとも一方と、の混合物
前記化成皮膜はクロム付着量として0.1mg/m~50mg/mが好ましく、特に2mg/m~20mg/mが好ましい。かかるクロム付着量の化成皮膜によって高耐食性の電池用包装材となし得る。
【0053】
(熱融着性樹脂層)
熱融着性樹脂層15は腐食性の強い電解質などに対しても優れた耐薬品性を具備させるとともに、電池用包装材1にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0054】
前記熱融着性樹脂層15を構成する樹脂はポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を例示でき、特にプロピレン系樹脂が好ましい。プロピレン系樹脂としては、キャストポリプロピレン(CPP)やインフレーションポリプロピレン(IPP)等の無延伸フィルムが好ましい。前記プロピレン系樹脂として、プロピレンの単独重合体(hPP)の他、共重合成分としてエチレンおよびプロピレンを含有するエチレン-プロピレン共重合体を例示できる。前記エチレン-プロピレン共重合体は、ランダム共重合体(rPP)、ブロック共重合体(bPP)のいずれでもよい。
【0055】
また、熱融着性樹脂層は単層、多層のいずれでもよく、多層の熱融着性樹脂層を構成する多層フィルムは共押出し等で作製することができる。3層フィルムは、上述した種々のプロピレン系樹脂フィルムのうち、ヒートシール性、デラミネーション耐性、絶縁性が優れている点で、hPPまたはbPPを中間層とし、中間層の両外側にrPP層を配した3層共押出CPPフィルムを推奨できる。
【0056】
前記熱融着性樹脂層15の厚さは20μm~100μmが好ましく、特に30μm~80μmが好ましい。多層フィルムの総厚も上記範囲が好ましい。3層フィルムの各層の好ましい厚さの比は、総厚を10としたときに、第2接着材層14側の層:中間層:最内層=1~3:4~8:1~3である。
【0057】
また、熱融着性樹脂層15には、電池用包装材1の滑り性を向上させるために、脂肪酸アミド系の滑剤を添加してもよい。熱融着性樹脂層15中の滑剤含有量は500質量ppm~4000質量ppmが好ましい。
【0058】
(第1接着剤層)
前記第1接着剤層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、2液硬化型のポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、変性ポリプロピレン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤を用いることができる。前記2液硬化型接着剤としては、例えば、ポリウレタン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液(主剤)と、イソシアネートからなる第2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤などが挙げられる。中でも、ポリエステル系ポリオール及びポリエステルウレタン系ポリオールからなる群より選ばれるポリオールの1種または2種以上からなる第1液と、イソシアネートからなる2液(硬化剤)とで構成される2液硬化型接着剤を用いるのが好ましい。前記第1接着剤層12の好ましい厚さは2μm~5μmである。
【0059】
(第2接着剤層)
前記第2接着剤層14としては、特に限定されるものではないが、上述の第1接着剤層12と同じ接着剤の他に、ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン 等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、アミノ樹脂等の接着性樹脂を例示できる。これらの接着性樹脂は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせても使用できる。
【0060】
前記接着剤(第1接着剤層で例示した接着剤)を用いる場合は、バリア層11または熱融着性樹脂層15上に、接着剤組成物をグラビアコート法、リバースロールコート法等で塗布し、溶媒を蒸発させて乾燥皮膜とした後にバリア層11と熱融着性樹脂層15を貼り合わせる。その後、当該接着剤組成物の硬化条件に従って硬化させる。上述の第1接着剤層12によるバリア層11と基材層13との貼り合わせも同じ手法で貼り合わせることができる。
【0061】
また、前記接着性樹脂を用いる場合は、バリア層11上に、該接着性樹脂と熱融着性樹脂層15を形成する樹脂を共押出しすることにより積層する方法(押出しラミネーション法)や、予め接着性樹脂と熱融着性樹脂層15を積層した積層体を形成しておき、この積層体をバリア層11上に熱ラミネーション法により積層する方法、バリア層11と熱融着性樹脂層15との間に、溶融させた接着性樹脂を流し込みながら、バリア層と熱融着性樹脂層15を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等によりバリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層15を積層する。
【0062】
[成形ケースおよび電池ケース]
本発明の成形ケースは上述した電池用包装材を深絞り成形または張り出し成形により形成された凹部を有している。図2の凹部52を有する本体51が本発明の成形ケースに該当する。
【0063】
本発明の電池ケースは前記成形ケースを備えている。図2の本体51を備えた電池ケース50が本発明の電池ケースに該当する。
【0064】
本発明の電池用包装材は基材保護層の滑り性が良く成形性に優れているから、凹部52の成形に有利であり深い凹部の成形に適している。また、深い凹部を形成して電池本体の収容空間を拡大することにより電池容量の増大を図ることができる。また、本発明の電池ケースは、電池用包装材の基材保護層がガラス転移点220℃以上の樹脂を含む樹脂組成物で形成されているから、ヒートシール時にシールバーへ付着が防止されてシール不良が発生しにくい。
【実施例0065】
実施例1~8、比較例1~3として、図1の積層形態の電池用包装材1を作製した。これらの電池用包装材1は、外側から内側へ順に、基材保護層20、基材層13、第1接着剤層12、バリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層15が積層されていることが共通し、基材保護層20を構成する樹脂と滑剤が異なる(表1参照)。また、比較例4は、基材層13、第1接着剤層12、バリア層11、第2接着剤層14、熱融着性樹脂層15の積層体であり、基材保護層を持たない電池用包装材(図示省略)である。
【0066】
各例の電池用包装材に共通する材料は下記のとおりである。
【0067】
(共通材料)
バリア層11として、JIS H4160で規定されたA8021-Oからなり、厚さが35μmのアルミニウム箔を用いた。前記アルミニウム箔の両面に、リン酸、ポリアクリル酸(アクリル系樹脂)、クロム(III)塩化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布した後、180℃で乾燥を行って、化成皮膜を形成したものを使用した。この化成皮膜のクロム付着量は片面当たり10mg/mである。
【0068】
基材層13として、厚さ15μmの2軸延伸6ナイロンフィルムを用いた。前記2軸延伸6ナイロンフィルムの一方の面にコロナ処理を行った。
【0069】
熱融着性樹脂層15として、厚さ30μmのキャストポリプロピレン(CPP)フィルムを用いた。
【0070】
第1接着剤層12として2液硬化型ウレタン系接着剤を用いた。
【0071】
第2接着剤層14として2液硬化型マレイン酸変性プロピレン接着剤を用いた。
【0072】
(実施例1、2)
化成皮膜を形成したバリア層11の一方の面に、厚さ3μmの第1接着剤層12を形成して基材層13のコロナ処理面をドライラミネートした。その後、60℃で7日間エージングして第1中間積層体を作製した。
【0073】
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0074】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリアミドイミド樹脂を、エタノール:トルエン=1:1(質量比)の混合溶剤中に溶解させて、ポリアミドイミド樹脂固形分濃度25質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0075】
前記第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、100℃で10秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量および滑剤含有量は表1に示すとおりである。
【0076】
次に、第2中間積層体のバリア層11の他方の面に、厚さ2μmの第2接着剤層14を形成し、熱融着性樹脂層15を重ね合わせ、ゴムニップロールと100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートして積層体を作製し、ロール軸に巻き取った。ロール軸に巻き取った積層体を40℃で7日間エージングし、電池用包装材1とした。また、エージング後の基材保護層20の厚さは表1に示すとおりである。
【0077】
(実施例3、4)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0078】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリアミドイミド樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン:キシレン:メチルエチルケトン=3.5:2.5:1(質量比)の混合溶剤中に溶解させて、ポリアミドイミド樹脂固形分濃度30質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0079】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、190℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0080】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0081】
(実施例5)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0082】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリアミドイミド樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン溶媒中に溶解させて、ポリアミドイミド樹脂固形分濃度15質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0083】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、190℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0084】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0085】
(実施例6)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0086】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリアミドイミド樹脂を、γ-ブチロラクトン:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン=32:1(質量比)の混合溶剤中に溶解させて、ポリアミドイミド樹脂固形分濃度20質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0087】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、180℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0088】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0089】
(実施例7)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0090】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリアミドイミド樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン溶媒中に溶解させて、ポリアミドイミド樹脂固形分濃度14質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0091】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、190℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0092】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0093】
(実施例8)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
【0094】
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリエーテルサルホン樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン溶媒中に溶解させて、ポリエーテルサルホン樹脂固形分濃度10質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0095】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、190℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0096】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0097】
(比較例1)
実施例7において、基材保護層20を形成するコート液に滑剤を添加しなかったことを除き、実施例7と同じ方法で電池用包装材1を作製した。
【0098】
(比較例2)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリメタクリル酸樹脂を、N-メチル-2-ピロリドン:キシレン:メチルエチルケトン=3.5:2.5:1(質量比)の混合溶剤中に溶解させて、ポリメタクリル酸樹脂固形分濃度10質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0099】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、190℃で30秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0100】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0101】
(比較例3)
基材保護層20を形成するコート液を下記の材料を用いて調製した。
表1に示すガラス転移点(Tg)および数平均分子量(Mn)のポリエステルウレタン樹脂を、メチルエチルケトン:トルエン=2:1(質量比)の混合溶剤中に溶解させて、ポリエステルウレタン樹脂固形分濃度40質量%の樹脂液を準備し、この樹脂液に表1に示す滑剤を添加して分散させてコート液とした。前記滑剤添加量は、樹脂と滑剤の合計量に対する滑剤量が表1に示す割合となるように調整した。
【0102】
実施例1と同じ第1中間積層体の基材層13の表面に、調製したコート液をグラビアロールにて塗布し、100℃で10秒間乾燥させて基材保護層20を形成した。この積層体を第2中間積層体とする。前記基材保護層20における樹脂量は表1に示すとおりである。
【0103】
次に、実施例1と同じ方法で、第2中間積層体に熱融着性樹脂層15に積層し、エージングして電池包装材1とした。
【0104】
(比較例4)
実施例1と同じ第1中間積層体のバリア層11の他方の面に、厚さ2μmの第2接着剤層14を形成し、熱融着性樹脂層15を重ね合わせ、ゴムニップロールと100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートして積層体を作製し、ロール軸に巻き取った。ロール軸に巻き取った積層体を40℃で7日間エージングし、電池用包装材とした。
【0105】
[電池用包装材の評価]
作製した電池用包装材1のシールバーへの付着し易さおよび成形性について下記の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
【0106】
(シールバーへの付着し易さ:シールバー付着試験)
図3にシールバー付着試験の方法の概略を示す。
【0107】
各電池要包装材1から幅50mm×長さ100mmの長方形の試料を採取し、試料の基材保護層20を外側に、熱融着性樹脂層15を内側して長辺の中央で二つ折りに折り曲げて幅50mm×50mmの折り曲げ試験片31を作製した。この折り曲げ試験片31の一端部32は長方形の試料の2つの短辺が揃いかつ重なっており、他端部33は輪になっている。そして他端部33にたこ糸37を通して輪にした。
【0108】
この折り曲げ試験片31の一端部32を、シール幅5mmのアルミニウム製上型35とシール幅5mmのフッ素樹脂コートされたアルミニウム製下型36で挟み、上型35および下型36の両方を加熱してヒートシールした。ヒートシールは、210℃×0.3MPa×3秒と、230℃×0.3MPa×3秒の2種類の温度条件で行った。
【0109】
ヒートシール後に、折り曲げ試験片31から下型36を離して、折り曲げ試験片31を上型35に付着させておいた。そして、折り曲げ試験片31の他端部33のたこ糸37の輪にプッシュプルゲージ(型式DPX-10:IMADA製)のフックを掛けて折り曲げ試験片31が上型35から離れるまで引っ張り、離れた時の引張強度を測定し、これを付着強度とした。測定した引張強度(付着強度)を下記の基準で4段階で評価し、◎○△を合格とした。
◎: 引張強度が0.1kg未満
〇: 引張強度が0.1kg以上、0.8kg未満
△: 引張強度が0.8kg以上、1.0kg未満
×: 引張強度が1.0kg以上
(成形性)
作製した電池用包装材1を100mm×125mmに切断して成形用素材とした。そして、パンチ(パンチ形状:33mm×54mm、コーナーR:2mm、パンチ肩R:1.3mm)とダイス(ダイス形状:ダイス肩R:1mm)を用い、株式会社アマダ製のプレス機(品番:TP-25C-XZ)にて深絞り成形を行った。前記深絞り成形はパンチの天面を成形用素材の熱融着性樹脂層15に接触させて基材保護層20を外側に突出させる態様で行い、成形深さDを0.5mm単位で変えて行った。
【0110】
そして、成形品のコーナー部に照明を当ててピンホールや割れによる透過光の有無を目視観察し、ピンホールおよび割れが全く発生しない良好な成形を行うことができる最大成形深さ(mm)を調べ、最大成形深さを下記判定基準に基づいて成形性を評価し、◎〇△を合格とした。
【0111】
◎:最大成形深さが6mm以上
〇:最大成形深さが5mm以上6mm未満
△:最大成形深さが4mm以上5mm未満
×:最大成形深さが4mm未満
【0112】
【表1】
【0113】
表1より、実施例の電池用包装材は、ヒートシール時にシールバーに付着しにくく、かつ成形性が良いことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の電池用包装材は、電池やコンデンサ等の蓄電デバイスのケース材料として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0115】
1…電池用包装材
11…バリア層
12…第1接着剤層
13…基材層
14…第2接着剤層
15…熱融着性樹脂層
20…基材保護層
図1
図2
図3