(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008844
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】圃場水管理システム
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
A01G25/00 501D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023088558
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】P 2022110231
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100090181
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 義人
(72)【発明者】
【氏名】井内 友昭
(72)【発明者】
【氏名】四元 友治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】制御装置の浮上を防止しつつ作業性を向上できる圃場水管理システムを提供する。
【解決手段】圃場水管理システム10は、変位機構を備える送水制御装置12、送水制御装置が内部に設けられる桝104、および変位機構を駆動する電動アクチュエータを備える。また、電動アクチュエータの駆動装置40と制御装置42とを分割して、制御装置を架台150上に載置すると共に、桝の内部には、制御装置の水没時の浮上を防止する浮上防止状態と、制御装置の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態とに切替可能な浮上防止部材160を設ける。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の水管理を行う圃場水管理システムであって、
前記圃場への給水または前記圃場からの排水を制御する変位機構を備える送水制御装置、
開閉可能な天蓋を有し、前記送水制御装置が内部に設けられる桝、
前記桝の内部に設けられる架台、および
前記送水制御装置の前記変位機構を駆動する電動アクチュエータを備え、
前記電動アクチュエータは、
前記変位機構を駆動する駆動部を有する駆動装置、および
当該電動アクチュエータの動作を制御する制御部を有する制御装置を含み、
前記駆動装置と前記制御装置とを分割して、前記駆動装置を前記送水制御装置に取り付けると共に、前記制御装置を前記架台上に載置し、さらに
前記桝の内部に設けられ、前記制御装置の水没時の浮上を防止する浮上防止状態と、前記制御装置の前記桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態とに切替可能な浮上防止部材を備える、圃場水管理システム。
【請求項2】
前記浮上防止部材は、前記制御装置の両側の位置において前記架台に立設された支柱部と、前記制御装置の上面に沿って延びるように前記支柱部の上端部同士を連結する梁部とを有するブリッジ状に形成されている、請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項3】
前記電動アクチュエータは、前記桝の内部に設けられる太陽電池パネルを備え、
前記天蓋は、前記太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、
前記浮上防止部材は、前記支柱部の下端部が前記架台に設けられた嵌入部に嵌め入れられることで当該架台に対して着脱可能に取り付けられ、
前記太陽電池パネルは、前記浮上防止部材の前記梁部に取り付けられ、
前記浮上防止部材は、前記天蓋に係止されることで前記浮上防止状態となり、前記天蓋を開くと共に当該浮上防止部材を前記太陽電池パネルごと前記架台から取り外すことで前記非浮上防止状態となる、請求項2記載の圃場水管理システム。
【請求項4】
前記電動アクチュエータは、前記桝の内部に設けられる太陽電池パネルを備え、
前記天蓋は、前記太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、
前記浮上防止部材は、前記梁部が前記支柱部に対してヒンジを介して開閉可能に設けられており、
前記太陽電池パネルは、前記浮上防止部材の前記梁部に取り付けられ、
前記浮上防止部材は、前記天蓋に係止されることで前記浮上防止状態となり、前記天蓋を開くと共に前記梁部を前記太陽電池パネルごと開くことで前記非浮上防止状態となる、請求項2記載の圃場水管理システム。
【請求項5】
前記浮上防止部材は、前記梁部が前記制御装置を係止する第1位置と前記制御装置に対する前記梁部の係止が解除される第2位置とに回動可能に前記架台に取り付けられている、請求項2記載の圃場水管理システム。
【請求項6】
前記電動アクチュエータは、前記桝の内部において、前記制御装置の上面に磁石部材を介して着脱可能に取り付けられる太陽電池パネルを備え、
前記天蓋は、前記太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、
前記浮上防止部材は、前記太陽電池パネルの外側面から外方に突出する張出部材を含み、前記張出部材が前記天蓋に係止されることで前記浮上防止状態となり、前記天蓋が開かれて前記張出部材に対する当該天蓋の係止が解除されることで前記非浮上防止状態となる、請求項1記載の圃場水管理システム。
【請求項7】
前記架台は、前記桝の内側面に固定される縦片部と先端が自由端となっている横片部とを有する略L字状のメインフレームを含む、請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項8】
前記浮上防止部材の前記梁部と前記制御装置の上面との間には隙間が形成されている、請求項3または4記載の圃場水管理システム。
【請求項9】
前記架台と前記浮上防止部材の前記支柱部とは弾性部材を介して接続される、請求項8記載の圃場水管理システム。
【請求項10】
前記架台に設けられ、前記制御装置を位置決めすると共に当該制御装置の上下方向の移動を案内するガイド部を備える、請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項11】
筒状の側壁と前記側壁の上部を封止する天壁とを含む有頂筒状に形成され、前記制御装置を覆うように設けられる浸水防止カバーを備える、請求項1または2記載の圃場水管理システム。
【請求項12】
前記浸水防止カバーは、前記浮上防止状態にある前記浮上防止部材によって係止されることで、水没時における浮上が規制される、請求項11記載の圃場水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圃場水管理システムに関し、特にたとえば、送水制御装置およびこれを駆動する電動アクチュエータを備え、圃場の水管理を行う、圃場水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の圃場水管理システムの一例が特許文献1に開示される。特許文献1の技術では、給水栓および落水口などの送水制御装置の上に、送水制御装置の変位機構を駆動する電動アクチュエータが設置される。特許文献1の技術では、電動アクチュエータの重量および高さ寸法が比較的大きくなる。このため、送水制御装置への電動アクチュエータの取付時および取外し時における作業性の向上が求められていた。
【0003】
そこで、本発明者らは、特許文献2において、送水制御装置に対する電動アクチュエータの取付作業および取外し作業に要する労力を低減できる圃場水管理システムを提案した。特許文献2の技術では、電動アクチュエータは、変位機構を駆動する駆動部を有する駆動装置と、電動アクチュエータの動作を制御する制御部を有する制御装置とが分割されて構成される。そして、駆動装置は、送水制御装置の上に取り付けられ、制御装置は、駆動装置と横並びで桝の内部に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-103099号公報
【特許文献2】特願2021-146173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の技術では、制御装置の設置位置が低くなるので、従来の電動アクチュエータよりも制御装置が水没する可能性が高くなる。このため、制御装置には防水対策が施されるが、防水構造の制御装置が水没すると浮力が生じる。そこで、特許文献2の技術では、浮上防止のため、制御装置はボルトによって架台に固定される。しかしながら、制御装置には、手動操作用の操作パネルが設けられている。この操作パネルを操作するためには、作業者は畦畔にかがみ込み、桝内をのぞき込んで行う必要があるので、作業性のさらなる向上が求められる。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、圃場水管理システムを提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、制御装置の浮上を防止しつつ、制御装置での作業性を高めることができる、圃場水管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、圃場の水管理を行う圃場水管理システムであって、圃場への給水または圃場からの排水を制御する変位機構を備える送水制御装置、開閉可能な天蓋を有し、送水制御装置が内部に設けられる桝、桝の内部に設けられる架台、および送水制御装置の変位機構を駆動する電動アクチュエータを備え、電動アクチュエータは、変位機構を駆動する駆動部を有する駆動装置、および当該電動アクチュエータの動作を制御する制御部を有する制御装置を含み、駆動装置と制御装置とを分割して、駆動装置を送水制御装置に取り付けると共に、制御装置を架台上に載置し、さらに桝の内部に設けられ、制御装置の水没時の浮上を防止する浮上防止状態と、制御装置の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態とに切替可能な浮上防止部材を備える、圃場水管理システムである。
【0009】
第1の発明では、圃場水管理システムは、圃場の水管理を行う圃場用設備であって、給水栓および落水口などの送水制御装置、送水制御装置を内部に収容する天蓋付きの桝、および電動アクチュエータを備える。電動アクチュエータは、送水制御装置の変位機構を駆動する駆動部を有する駆動装置と、電動アクチュエータの動作を制御する制御部を有する制御装置とを備える。この電動アクチュエータは、駆動装置と制御装置とが分割されて別体となっており、駆動装置が送水制御装置に取り付けられると共に、制御装置が架台上に載置される。そして、圃場水管理システムは、桝の内部に設けられた浮上防止部材をさらに備える。この浮上防止部材は、制御装置の水没時の浮上を防止する浮上防止状態と、制御装置の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態とに切替可能に設けられている。
【0010】
第1の発明によれば、浮上防止部材を備えるので、電動アクチュエータの制御装置を架台に締結することなく、水没時における制御装置の浮上を適切に防止できる。また、浮上防止部材を非浮上防止状態にすることで、制御装置を桝の外部に容易に取り出すことができるので、制御装置での作業性を高めることができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、浮上防止部材は、制御装置の両側の位置において架台に立設された支柱部と、制御装置の上面に沿って延びるように支柱部の上端部同士を連結する梁部とを有するブリッジ状に形成されている。
【0012】
第3の発明は、第2の発明に従属し、電動アクチュエータは、桝の内部に設けられる太陽電池パネルを備え、天蓋は、太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、浮上防止部材は、支柱部の下端部が架台に設けられた嵌入部に嵌め入れられることで当該架台に対して着脱可能に取り付けられ、太陽電池パネルは、浮上防止部材の梁部に取り付けられ、浮上防止部材は、天蓋に係止されることで浮上防止状態となり、天蓋を開くと共に当該浮上防止部材を太陽電池パネルごと架台から取り外すことで非浮上防止状態となる。
【0013】
第3の発明によれば、浮上防止部材をパネル用架台と兼用するので、部材コストを低減できる。
【0014】
第4の発明は、第2の発明に従属し、電動アクチュエータは、桝の内部に設けられる太陽電池パネルを備え、天蓋は、太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、浮上防止部材は、梁部が支柱部に対してヒンジを介して開閉可能に設けられており、太陽電池パネルは、浮上防止部材の梁部に取り付けられ、浮上防止部材は、天蓋に係止されることで浮上防止状態となり、天蓋を開くと共に梁部を太陽電池パネルごと開くことで非浮上防止状態となる。
【0015】
第4の発明によれば、浮上防止部材をパネル用架台と兼用するので、部材コストを低減できる。
【0016】
第5の発明は、第2の発明に従属し、浮上防止部材は、梁部が制御装置を係止する第1位置と制御装置に対する梁部の係止が解除される第2位置とに回動可能に架台に取り付けられている。
【0017】
第5の発明によれば、天蓋とは別に制御装置を保持できるので、水没時における制御装置の浮上をより確実に防止することができる。
【0018】
第6の発明は、第1の発明に従属し、電動アクチュエータは、桝の内部において、制御装置の上面に磁石部材を介して着脱可能に取り付けられる太陽電池パネルを備え、天蓋は、太陽電池パネルと対応する位置に形成された開口を有し、浮上防止部材は、太陽電池パネルの外側面から外方に突出する張出部材を含み、張出部材が天蓋に係止されることで浮上防止状態となり、天蓋が開かれて張出部材に対する当該天蓋の係止が解除されることで非浮上防止状態となる。
【0019】
第6の発明によれば、太陽電池パネルを取り付けるパネル用架台を省略できるので、部材コストを低減できると共に、制御装置を取り出すときの作業性を向上できる。さらに、磁石部材を介して制御装置に太陽電池パネルを結合しておくことで、制御装置に対して太陽電池パネルを容易に着脱できる。
【0020】
第7の発明は、第1または第2の発明に従属し、架台は、桝の内側面に固定される縦片部と先端が自由端となっている横片部とを有する略L字状のメインフレームを含む。
【0021】
第7の発明によれば、架台に踏み付け荷重が加わっても、ばね効果を発揮してその荷重を緩和できる。
【0022】
第8の発明は、第3または第4の発明に従属し、浮上防止部材の梁部と制御装置の上面との間には隙間が形成されている。
【0023】
第8の発明によれば、仮に太陽電池パネルおよび浮上防止部材に踏み付け荷重が加わっても、その荷重が制御装置に伝わらないので、制御装置の破損を防止できる。
【0024】
第9の発明は、第8の発明に従属し、架台と浮上防止部材の支柱部とは弾性部材を介して接続される。
【0025】
第9の発明によれば、太陽電池パネルの破損を適切に防止できる。
【0026】
第10の発明は、第1または第2の発明に従属し、架台に設けられ、制御装置を位置決めすると共に当該制御装置の上下方向の移動を案内するガイド部を備える。
【0027】
第10の発明によれば、架台に対して制御装置を適切に位置決めできると共に、制御装置の上下移動を適切に案内できる。
【0028】
第11の発明は、第1または第2の発明に従属し、筒状の側壁と側壁の上部を封止する天壁とを含む有頂筒状に形成され、制御装置を覆うように設けられる浸水防止カバーを備える。
【0029】
第11の発明によれば、制御装置内への浸水をより確実に防止することができる。
【0030】
第12の発明は、第11の発明に従属し、浸水防止カバーは、浮上防止状態にある浮上防止部材によって係止されることで、水没時における浮上が規制される。
【発明の効果】
【0031】
この発明によれば、浮上防止部材を備えるので、電動アクチュエータの制御装置を架台に締結することなく、水没時における制御装置の浮上を適切に防止できる。また、浮上防止部材を非浮上防止状態にすることで、制御装置を桝の外部に容易に取り出すことができるので、制御装置での作業性を高めることができる。
【0032】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】この発明の一実施例である圃場水管理システムを示す図である。
【
図2】圃場水管理システムに用いられる電動アクチュエータの外観を示す図である。
【
図3】電動アクチュエータが備える駆動装置の内部構造を示す図である。
【
図4】電動アクチュエータが備えるアダプタを示す断面図である。
【
図5】電動アクチュエータが備える制御装置の外観を示す図である。
【
図7】電動アクチュエータが備える太陽電池パネルを示す図である
【
図9】電動アクチュエータの電気的な構成を示すブロック部である。
【
図10】電動アクチュエータを設置した給水桝を示す平面図である。
【
図11】電動アクチュエータを設置した給水桝の内部構造を示す図である。
【
図13】給水バルブに駆動装置を取り付けた様子を示す図である。
【
図14】架台に制御装置および太陽電池パネルを取り付けた様子を示す図である。
【
図15】架台およびパネル用架台を示す斜視図である。
【
図16】この発明の他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す正面図である。
【
図19】この発明のさらに他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す正面図である。
【
図21】この発明のさらに他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す正面図である。
【
図22】この発明の他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す側面図である。
【
図23】
図22の圃場水管理システムが備える浸水防止カバー周辺部分の外観を示す斜視図である。
【
図24】この発明のさらに他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す正面図である。
【
図25】この発明のさらに他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す正面図である。
【
図26】この発明のさらに他の実施例の圃場水管理システムにおける制御装置の設置態様を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照して、この発明の一実施例である圃場水管理システム10(以下、単に「システム10」と言う。)は、圃場100の水管理を遠隔操作または予め記憶されたプログラムに基づく自動制御などによって行う圃場用設備である。この実施例では、圃場100に設けられる送水制御装置の一例である給水栓12と、送水制御装置の他の例である落水口14とを備え、給水栓12および落水口14のそれぞれに電動アクチュエータ16が取り付けられる。給水栓12および落水口14の変位機構を駆動する電動アクチュエータとしては、同じ構造を有する電動アクチュエータ16が用いられる。
【0035】
また、この実施例では、システム10は、畦畔102によって区画された複数の耕作区を含むシステムとなっている。給水栓12および落水口14のそれぞれは、各耕作区に設置され、これらに取り付けられる各電動アクチュエータ16は、特定小電力無線規格(920MHz帯)に従った無線通信方法によって中継機(親機)と無線通信可能に接続される。そして、各電動アクチュエータ16は、この中継機およびネットワーク上に設けられた管理サーバ等を経由して、ユーザが所有するスマートフォン、タブレット端末、PDAおよびPCのような遠隔操作端末と無線通信可能に接続される。
【0036】
なお、この無線通信においては、クラウドコンピューティングを利用するとよい。たとえば、各電動アクチュエータ16で取得された情報(後述する弁体30の開度および仕切体34の設定位置などの給水栓12および落水口14の状態に関する情報、およびセンサ端末120から受信した圃場100の水位などのセンサ情報など)を管理サーバの一例であるクラウドサーバに随時送信して記憶しておく。ユーザは、遠隔操作端末からクラウドサーバにアクセスすることで、各電動アクチュエータ16で取得された情報を確認し、遠隔操作端末を用いて各電動アクチュエータ16を遠隔操作することで、圃場100の水管理を行うことができる。
【0037】
また、
図1では図示を省略しているが、圃場100には、圃場水位を検出する超音波センサ等の水位センサ、気温や水温を検出する各温度センサ、気圧を検出する圧力センサ、土壌水分を検出する土壌水分センサ等のセンサ端末120(
図9参照)が適宜設けられる。センサ端末120は、後述する第3中継テーブル90などを介して、または無線によって、電動アクチュエータ16と接続される。
【0038】
給水栓12は、用水パイプライン106から耕作区(圃場100)への給水を制御するための給水装置であって、弁軸および弁体などを含む変位機構を有する。この実施例では、一般的に広く普及している、弁軸の軸回転に伴い弁軸及び弁体が上下動する方式の給水栓を用いている。
【0039】
図1および
図13を参照して簡単に説明すると、給水栓12は、円筒状の弁箱20を備える。弁箱20の上半部は、ドーム状の飛散防止カバー22によって覆われており、弁箱20の側壁上部には、複数の吐水口24が周方向に並ぶように形成される。また、弁箱20の上端部には、内周面に雌ねじが形成された軸受26が設けられ、この軸受26には、飛散防止カバー22を貫通するように、外周面に雄ねじが形成された弁軸28が螺合されている。この弁軸28の下端には、下面に止水ゴム30aを有する円板状の弁体30が設けられる。また、弁箱20内の略中央部には、通水口32aを有する弁座32が設けられる。このような給水栓12において、弁軸28に対して軸線回りの回転力が加えられると、送りねじ機構によって弁軸28および弁体30が上下動し、弁座32の通水口32aが開閉される。すなわち、この実施例の給水栓12は、弁軸28の回転に伴い上下動する弁体30を含む変位機構を備える。
【0040】
このような給水栓12は、
図1に示すように、畦畔102に設けられた給水桝104(桝の一例)内に配置され、畦畔102(農道)の下に敷設される用水パイプライン106から分岐して圃場100内まで延びる分岐管108の下流側端部に取り付けられる。そして、給水栓12の上には、後述する電動アクチュエータ16の駆動装置40が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって給水栓12の変位機構(弁軸28および弁体30)が作動される。
【0041】
一方、落水口14は、圃場100からの排水を制御するための排水装置であって、仕切体などを含む変位機構を有する。この実施例では、水位設定機能を有する落水口14を用いている。簡単に説明すると、落水口14は、上端開口が排水口として機能する円筒状の仕切体34を備えており、この仕切体34が上下動することで、排水口を任意の高さに調整することが可能である。
【0042】
このような落水口14は、畦畔102に設けられた排水桝110(桝の他の一例)内に配置され、排水路112まで延びる排水管114の上流側端部に取り付けられる。そして、落水口14には、電動アクチュエータ16の駆動装置40が取り付けられ、電動アクチュエータ16によって落水口14の変位機構(仕切体34)が上下動される。ただし、落水口14に電動アクチュエータ16の駆動装置40を取り付ける際には、駆動装置40の回転軸60(
図3参照)の回転力を上下方向(軸方向)の力に変換して仕切体34に伝達可能なアダプタ36が用いられる。
【0043】
次に、電動アクチュエータ16の構成について具体的に説明する。
図2に示すように、電動アクチュエータ16は、駆動装置40、制御装置42および太陽電池パネル44等を備える。この実施例では、駆動装置40、制御装置42および太陽電池パネル44は、それぞれ分割されて別体として構成される。そして、駆動装置40と制御装置42とは、フラット型ケーブル等の第1中継ケーブル46によって電気的に接続され、制御装置42と太陽電池パネル44とは、第2中継ケーブル86によって電気的に接続される。また、駆動装置40の下端部には、給水栓12などの送水制御装置に駆動装置40を取り付けるための取付台48が接続される。取付台48を含む駆動装置40の高さ寸法H(上下方向長さ)は、たとえば289mmである。
【0044】
図3に示すように、駆動装置40は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成された有頂筒状の第1筐体52(駆動装置の筐体)を備える。この実施例では、第1筐体52は、円筒状の側壁52aと、側壁52aの上端部を封止する円板状の天壁52bとを含む。側壁52aと天壁52bとは、塩ビ溶接によって固着されており、第1筐体52は、側壁52aおよび天壁52bが気密構造を有するように形成される。ただし、この発明における「気密」とは、第1筐体52が水没しても、その部分から第1筐体52内の空気が漏れない程度に、耐用期間中は気密性および水密性が保たれることを言う。
【0045】
ここで、第1筐体52内への水の浸入を防止するためには、第1筐体52の全体が気密構造となるように形成できればよい。しかし、駆動装置40は、後述のように回転軸60を備えており、回転軸60のような駆動部分が第1筐体52から突出する部分(貫通部分)を長期間に亘って気密構造とすることは困難である。そこで、この実施例では、第1筐体52の側壁52aおよび天壁52bが気密構造となるように構成し、回転軸60は第1筐体52の下面側(底壁側)から突出させるようにしている。これによって、第1筐体52の下面側が気密構造となっていなくても、給水桝104内に水が溢れて第1筐体52が水没したときに、第1筐体52内の空気は抜けなくなるので、第1筐体52内への水の浸入を防ぐことができる(つまり、第1筐体52内に空気を溜めておくことができる)。したがって、仮に給水桝104内に水が溢れて第1筐体52が水没しても、第1筐体52内に配置される部品が水に濡れてしまうことを防止できる。
【0046】
第1筐体52内には、モータ54およびメインギア56等を含む駆動部が収容される。これら駆動部は、側壁52aの下端部に設けられた支持フレーム52cによって支持される。モータ54は、後述する蓄電池74に蓄えられた電力によって駆動される。この実施例では、モータ54としてエンコーダ付きのモータが用いられる。モータ54の出力軸の先端部には、小ギア58が設けられており、メインギア56は、この小ギア58と連結されることで、モータ54からの駆動力を受けて軸線回りに回転する。
【0047】
メインギア56は、両ボス型のギアであり、メインギア56の軸部には、略円柱状の回転軸60が挿通される。この回転軸60の下端部には、給水栓12の弁軸28の上端部と連結されるカップリング部60aが形成される。また、メインギア56の軸部の内周面には、軸方向に沿って延びるキー溝56aが形成され、回転軸60の外周面には、キー溝56aと嵌合される滑りキー60bが軸方向に沿って延びるように形成される。これによって、回転軸60は、メインギア56が回転すると共に回転し、かつメインギア56の軸部に対して軸方向に摺動可能となる。
【0048】
また、第1筐体52の側壁52aの下端部には、制御装置42に繋がる第1中継ケーブル46の一方端部を接続するための第1接続端子62が設けられる。この第1接続端子62は、電力線および通信線を含む内部ケーブル64を介してモータ54に接続される。
【0049】
図4に示すように、取付台48は、円筒部66と、円筒部66の下端部に設けられ、中央部に通孔68aを有する取付部68とを含む。図示は省略するが、円筒部66には、回転軸60などの動作確認および清掃などの維持管理作業を行うための点検口が形成される。また、円筒部66の上端部には、周方向に並ぶ複数のボルト孔66aが形成されており、このボルト孔66aを用いて第1筐体52の下端部に取付台48がボルト止めされる。さらに、取付部68には、周方向および径方向に並ぶ複数のボルト孔68bが形成されており、このボルト孔68bを用いて取付台48(延いては駆動装置40)が給水栓12の上面にボルト止めされる。
【0050】
図5および
図6に示すように、制御装置42は、ABS等の合成樹脂によって形成され、防水性および防塵性を有する直方体状の第2筐体70(制御装置の筐体)を備える。第2筐体70は、有底角筒状のケース本体70aと、ケース本体70aの上部にヒンジ部70cを介して開閉自在に設けられた蓋部70bとを含む。ケース本体70aと蓋部70bとの間(つまり第2筐体70の開閉部)にはゴムパッキン等の止水部材(図示せず)が設けられており、第2筐体70は、その全体が気密構造を有するように形成される。これにより、仮に給水桝104内に水が溢れて第2筐体70が水没しても、第2筐体70内に配置される部品が水に濡れてしまうことが防止される。
【0051】
第2筐体70内には、電子基板72、蓄電池74、操作パネル76およびアンテナ78等が収容される。電子基板72には、CPUおよびメモリ等を含む制御部80、および無線通信モジュール等を含む無線通信部82などが配設される(
図9参照)。蓄電池74は、太陽電池パネル44によって発電された電力を蓄電する。操作パネル76は、使用者による手動操作を受け付ける、つまり使用者が手動(電動手動)で電動アクチュエータ16を操作するための入力装置である。操作パネル76には、主電源スイッチ、上昇ボタン、下降ボタン、および電動アクチュエータ16の動作モード(遠隔モード、自動モードまたは手動モード等)を切り替えるための選択ボタン等が適宜設けられる。
【0052】
また、第2筐体70のケース本体70aの側壁には、駆動装置40(モータ54)に繋がる第1中継ケーブル46の他端部を接続するための第2接続端子84が設けられる。また、第2筐体70のケース本体70aの側壁には、太陽電池パネル44に繋がる第2中継ケーブル86の一方端部を接続するための第3接続端子88、および水位センサ等のセンサ端末120に繋がる第3中継テーブル90の一方端部を接続するための第5接続端子92が設けられる。これら接続端子84,88,92としては、防水仕様の接続端子(防水コネクタ)が用いられる。
【0053】
図7および
図8に示すように、太陽電池パネル44は、複数の太陽電池セルが強化ガラスおよび封止材などによってパッケージ化されたものである。この実施例では、太陽電池パネル44は、矩形枠状の金属製の取付板94によって支持される。また、太陽電池パネル44の下部には、制御装置42に繋がる第2中継ケーブル86の他端部を接続するための第4接続端子96が設けられる。
【0054】
図9は、電動アクチュエータ16の電気的な構成を示すブロック部である。
図9に示すように、電動アクチュエータ16は、CPUおよびメモリ等を含む制御部80を備える。制御部80には、モータ54、太陽電池パネル44、蓄電池74、操作パネル76、無線通信部82およびセンサ端末120等が電気的に接続される。制御部80のCPUは、電動アクチュエータ16の全体制御を司り、モータ54等の駆動を制御する。メモリは、ROM、RAMおよびHDDなどを包括的に示したものであり、電動アクチュエータ16の動作を制御する制御プログラムを記憶したり、CPUが動作する際のワークエリアとして機能したりする。
【0055】
無線通信部82は、内部ケーブルを介してアンテナ78と接続され、このアンテナ78を介して中継機などの外部機器と無線通信を行う。センサ端末120は、検出した圃場水位や気温などのセンサ情報を制御部80に入力する。なお、センサ端末120は、無線通信部82を介して制御部80に接続されてもよい。
【0056】
モータ54は、メインギア56、小ギア58および回転軸60などで構成される伝達機構を介して、給水栓12および落水口14などの送水制御装置と機械的に接続される。制御部80のCPUは、モータ54の駆動を制御することで、送水制御装置の動作を制御する。また、この実施例では、上述のようにモータ54としてエンコーダ付きのモータが用いられる。モータ54のエンコーダは、出力軸54aの回転方向および回転数に応じたパルス信号を制御部80のCPUに出力する。制御部80のCPUは、エンコーダから入力されたパルス信号、つまり出力軸54aの回転方向および回転数に基づいて、給水栓12の弁体30または落水口14の仕切体34などの位置を算出する。ただし、エンコーダは、必ずしもモータ54に設けられる必要はなく、メインギア56などに設けても構わない。また、エンコーダを用いずに、ポテンシオメータや上下限のリミットスイッチによって位置検出を行ってもよい。
【0057】
上述のような電動アクチュエータ16は、
図10および
図11に示すように、給水桝104および排水桝110のそれぞれの内部に収容される。この実施例のシステム10では、電動アクチュエータ16の駆動装置40と制御装置42とを分割して横並びで配置することで、電動アクチュエータ16を低背化して各桝内に納めることを可能にしている。また、桝内に制御装置42を配置すると、水没時に制御装置42が浮いてしまう恐れがある一方で、制御装置42に設けた操作パネル76を操作し難くなる。そこで、この実施例のシステム10では、ボルト等の締結手段を用いることなく制御装置42の浮上を防止しつつ、桝内から制御装置42を容易に取り出すことを可能とする設置構造を採用した。なお、給水側および排水側における電動アクチュエータ16の設置構造は基本的に同じなので、以下では、代表して給水側における電動アクチュエータ16の設置構造について説明する。
【0058】
図10-
図12に示すように、給水桝104は、角筒状の桝本体130を備え、このシステム10が適用された圃場100の畦畔102に設けられる。桝本体130の圃場100側の側壁には、圃場100に用水を供給するための開口部132が形成され、この開口部132には、上下動可能に堰板134が設けられる。また、桝本体130の上部には、蓋枠136を介して天蓋138が着脱可能に設けられる。天蓋138としては、グレーチング、FRP、および縞鋼板製などの各種の蓋を適宜用いることができるが、この実施例では、天蓋138としてグレーチングを用いている。この天蓋138には、太陽電池パネル44に太陽光をより多く当てるために、太陽電池パネル44と対応する位置に開口138aが形成される。また、給水桝104の上面(桝本体130および天蓋138の上面)は、畦畔102上を走行する農機などの邪魔にならないように、畦畔102の上面と面一に設けられる。
【0059】
このような給水桝104の内部には、給水栓12が設けられる。そして、この給水栓12の上には、給水桝104内に納まるように、電動アクチュエータ16の駆動装置40が着脱可能に取り付けられる。
図13に示すように、給水栓12の上に駆動装置40を取り付ける際には、給水栓12の飛散防止カバー22上に駆動装置40を載置した状態で、飛散防止カバー22および軸受26と取付台48の取付部68とをボルト止めする。また、給水栓12の弁軸28の上端部と電動アクチュエータ16の回転軸60のカップリング部60aとを回転不可に連結する。この際、制御装置42および太陽電池パネル44を駆動装置40から分割し、電動アクチュエータ16の給水栓12に取り付ける部分を駆動装置40のみにしたので、この電動アクチュエータ16への取付部分の小型化および軽量化を図ることができる。したがって、給水栓12に対して電動アクチュエータ16を取り付けるとき(および取り外すとき)の作業性を向上させることができる。
【0060】
図10および
図11と共に、
図14および
図15を参照して、制御装置42は、給水桝104内に設けられた架台150上に載置されることで、駆動装置40と横並びで給水桝104の内部に設けられる。
【0061】
架台150は、一対のメインフレーム152と一対の連結板部154とを含み、鋼材を溶接等によって連結することで形成される。メインフレーム152は、給水桝104の内側面に固定される縦片部152aと、縦片部152aの下端部から横方向に延び、先端が自由端となっている横片部152bとを有する略L字状に形成される。連結板部154は、長板状に形成され、一対のメインフレーム152間を架け渡すように設けられる。この連結板部154の上面が制御装置42を載置する載置面となる。
【0062】
連結板部154の上面には、制御装置42の4つの角部と対応する位置のそれぞれに、L字状のガイド部156が設けられる。このガイド部156は、制御装置42を前後左右方向において位置決めすると共に、後述のように制御装置42が上下方向に移動するときに、その移動を案内するための部分である。ガイド部156の上下方向の長さは、後述する隙間164の大きさよりも大きく設定される。
【0063】
さらに、メインフレーム152の横片部152bには、制御装置42の両側となる位置に、縦筒状の4つの嵌入部158が設けられる。これら嵌入部158のそれぞれには、後述するパネル用架台160の支柱部160aの下端部が挿抜可能(摺動可能)に嵌め入れられる。
【0064】
また、太陽電池パネル44は、架台150に対して着脱可能に設けられた一対のパネル用架台160の上に取り付けられる。このパネル用架台160は、制御装置42の水没時の浮上を防止する浮上防止状態と、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態とに切替可能な浮上防止部材としても用いられる。つまり、この実施例では、浮上防止部材がパネル用架台160と兼用される。以下、具体的に説明する。
【0065】
浮上防止部材の一例であるパネル用架台160は、鋼材によって形成される。このパネル用架台160は、制御装置42の両側の位置において架台150の横片部152bに立設された支柱部160aと、制御装置42の上面に沿って延びるように支柱部160aの上端部同士を連結する梁部160bとを有するブリッジ状に形成される。また、梁部160bの長さは、天蓋138に形成された開口138aの幅(梁部160bの延びる方向における開口寸法)よりも大きく設定される。
【0066】
また、支柱部160aの下部には、円板状の鍔部160cが設けられる。さらに、一対のパネル用架台160の梁部160bどうしを架け渡すように、一対の長板状の連結部材162が設けられる。太陽電池パネル44は、梁部160b上に載置されると共に、取付板94が連結部材162にボルト止めされることで、パネル用架台160に固定される。
【0067】
このようなパネル用架台160および太陽電池パネル44は、支柱部160aの下端部が架台150の嵌入部158に嵌め入れられることで、架台150に対して着脱可能に取り付けられる。また、架台150にパネル用架台160を取り付けた状態においては、梁部160bと制御装置42の上面との間に所定間隔の隙間164が形成され、パネル用架台160と制御装置42とが直接接触しないようにされる。これにより、仮に太陽電池パネル44(延いてはパネル用架台160および架台150)に踏み付け荷重が加わっても、その荷重が制御装置42に伝わらず、制御装置42の破損が回避される。また、上述のように架台150のメインフレーム152がL字状に形成されていることから、仮に太陽電池パネル44に踏み付け荷重が加わっても、ばね効果を発揮してその荷重を緩和できる。
【0068】
さらに、この実施例では、架台150とパネル用架台160の支柱部160aとは、弾性部材の一例であるコイルばね166を介して接続され、パネル用架台160および太陽電池パネル44は、下方に沈み込み可能に設けられる。すなわち、太陽電池パネル44に踏み付け荷重が加わったときに、太陽電池パネル44およびパネル用架台160が下方に移動し、荷重が解除されたときに元の状態に復帰するように構成される。具体的には、架台150の嵌入部158には、コイルばね166の上端部が上方に突出するように嵌め入れられる。そして、支柱部160aの下端部を嵌入部158に嵌め入れると共に、鍔部160cをコイルばね166の上面によって係止させることで、パネル用架台160が架台150によって支持される。また、架台150にパネル用架台160を取り付けた状態において、隙間164の大きさ(高さ寸法)は、嵌入部158の上面と鍔部160cの下面との間隔(つまりコイルばね166最大圧縮量)よりも大きく設定される。このような接続構造を採用することで、太陽電池パネル44の破損をより適切に防止できる。また、パネル用架台160が下方に移動しても、パネル用架台160と制御装置42とが接触しないので、制御装置42の破損が回避される。
【0069】
また、制御装置42および太陽電池パネル44を給水桝104内に設ける際には、給水桝104の上面にできるだけ近い位置(つまり高い位置)に配置されることが好ましい。これは、給水桝104内に水が溜まった際に、制御装置42および太陽電池パネル44がなるべく水没しないようにするためである。また、制御装置42および太陽電池パネル44を給水桝104内から容易に取り出せるようにするためである。さらに、太陽電池パネル44により多くの太陽光を当てるためである。この実施例では、太陽電池パネル44が天蓋138の開口138aに嵌め入れられて、太陽電池パネル44の上面は、給水桝104の上面と面一に設けられる。
【0070】
なお、図示は省略するが、給水桝104内には、駆動装置40と制御装置42との間を仕切る矩形状の仕切り板を設けてもよい。仕切り板を設けておくことによって、給水栓12から圃場100に給水するときに、水しぶきが制御装置42に直接かかることが防止される。
【0071】
上述のようなシステム10においては、たとえば、ユーザが遠隔操作端末を用いて管理サーバにアクセスし、給水栓12を全閉、全開または任意の開度とするため等の操作指示(制御信号)を送信すると、この操作指示に応じた制御信号が管理サーバから中継機を介して電動アクチュエータ16に対して送信される。電動アクチュエータ16の制御部80は、無線通信部82が受信した制御信号に応じてモータ54を駆動させる。このモータ54の駆動力は、メインギア56に伝達されて、メインギア56と共に回転軸60が回転する。これにより、回転軸60に固定的に連結された給水栓12の弁軸28に対して、回転力が付与される。回転力が加えられた弁軸28は、自身と軸受26との送りねじ機構によって上下動され、弁体30が全開位置および全閉位置などに移動される。
【0072】
同様に、ユーザが落水口14の排水口高さ(仕切体34の高さ位置)を設定するための操作指示を送信すると、電動アクチュエータ16の制御部80は、制御信号に応じてモータ54を駆動させ、落水口14の排水口高さを変更する。また、電動アクチュエータ16で取得された情報(給水栓12および落水口14の状態に関する情報、およびセンサ端末120から受信したセンサ情報など)は、定期的に、電動アクチュエータ16の無線通信部82から中継機を介して管理サーバに送信される。
【0073】
また、豪雨時または圃場100への給水時などに桝内が冠水し、制御装置42が水没したときには、制御装置42は、ガイド部156にガイドされながら真上に少し浮上するが、パネル用架台160(浮上防止部材)の梁部160bによって係止されることで、浮上が防止される。また、パネル用架台160は、梁部160bが直接または太陽電池パネル44の取付板94を介して天蓋138に係止されることで、上方向の移動(浮上)が規制される。すなわち、パネル用架台160は、天蓋138に係止されることで、制御装置42の水没時の浮上を防止する浮上防止状態となる。なお、桝内の水が排出されると、制御装置42は、ガイド部156にガイドされながら下方に移動して、元の位置に戻る。この際、ガイド部156の上下方向の長さが隙間164の大きさよりも大きいため、制御装置42は、水没時に一旦浮上しても、前後左右にずれることなく元の位置に戻る。
【0074】
一方、電動アクチュエータ16を手動操作する必要が生じたときには、作業者は、天蓋138を開く(取り外す)と共に、パネル用架台160を太陽電池パネル44ごと架台150から取り外すとよい。これにより、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる。すなわち、パネル用架台160は、天蓋138を開くと共に、パネル用架台160を太陽電池パネル44ごと架台150から取り外すことで、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態に切り替えられる。作業者は、制御装置42を桝の外部に取り出すことで、制御装置42に設けられた操作パネル76を容易に操作することができる。
【0075】
以上のように、この実施例によれば、浮上防止状態と非浮上防止状態とに切替可能なパネル用架台160(浮上防止部材)を備えるので、電動アクチュエータ16の制御装置42を架台150に締結することなく、水没時における制御装置42の浮上を防止できる。また、制御装置42を桝の外部に容易に取り出すことができるので、制御装置42での作業性を高めることができる。
【0076】
また、この実施例によれば、浮上防止部材をパネル用架台160と兼用するので、部材コストを低減できる。また、パネル用架台160と制御装置42とが直接接触しないようにされるので、仮に太陽電池パネル44に踏み付け荷重が加わっても、その荷重が制御装置42に伝わらない。したがって、制御装置42の破損を防止できる。
【0077】
さらに、この実施例によれば、電動アクチュエータ16の駆動装置40と制御装置42とを分割し、送水制御装置に取り付ける部分を駆動装置40のみにしたので、この取付部分の小型化(低背化)および軽量化を図ることができる。したがって、送水制御装置に対する電動アクチュエータ16の取付作業および取外し作業に要する労力を低減できる。さらに、駆動装置40と制御装置42とを分割することで、各装置の運搬および保管が容易となる。
【0078】
さらにまた、この実施例によれば、駆動装置40、制御装置42および太陽電池パネル44を含む電動アクチュエータ16の全体を桝内に納めるようにしたので、冬場の休耕期などに雪の重み等で電動アクチュエータ16が損傷してしまうことを防止できる。また、桝上面からの露出部分がなくなることで、農機が電動アクチュエータ16にぶつかる等の事故を防止でき、また、電動アクチュエータ16が農作業の邪魔になることを防止できる。特に、駆動装置40を桝内に納めることでその損傷を防止できるので、冬場の休耕期などにおける駆動装置40の取り外し自体を不要とすることができ、手間をより低減できる。さらに、冬場の休耕期などに、制御装置42を桝内から取り出して他の場所に保管する等、柔軟な取り扱いも可能となる。
【0079】
なお、上述の実施例では、天蓋138を利用して制御装置42の水没時の浮上を防止しているが、天蓋138の材質や構造によって浮上を防止する重さが不足する場合には、天蓋138にウエイト(重量体)を取り付けて、不足分の重さを補うようにするとよい。このことは、後述する第3実施例および第4実施例などにおいても同様である。
【0080】
次に、
図16~
図18を参照して、この発明の他の実施例(第2実施例)のシステム10について説明する。この第2実施例では、浮上防止部材の構成が上述の実施例(第1実施例)と異なる。その他の部分については同様であるので、上述の第1実施例と共通する部分については、同じ参照番号を付し、重複する説明は省略または簡略化する。重複する説明を省略等することは、後述する他の実施例についても同様である。なお、
図16~
図18(後述する
図24も同様)においては、分かり易くするため、パネル用架台160の一部および太陽電池パネル44を省略している。
【0081】
図16~
図18に示すように、この第2実施例では、パネル用架台160とは別に、一対の浮上防止部材170を設けている。浮上防止部材170は、制御装置42の両側の位置において架台150の横片部152bに立設された支柱部170aと、制御装置42の上面に沿って延びるように支柱部170aの上端部同士を連結する梁部170bとを有するブリッジ状に形成される。支柱部170aは、架台150の横片部152bから斜め上方向に延びる下片部と、鉛直方向に延びる上片部とを含む屈曲形状(略くの字状)に形成される。また、浮上防止部材170は、支柱部170aの下端から横方向に突出する軸部170cを有している。この軸部170cを架台150に設けた軸受部172に嵌め入れることで、浮上防止部材170は、架台150に対して軸部170cを支点に回動可能に取り付けられる。このような浮上防止部材170は、梁部170bが制御装置42を係止する第1位置と、制御装置42に対する梁部170bの係止が解除される第2位置とに回動可能である。
【0082】
このようなシステム10において、制御装置42が水没したときには、制御装置42は、第1位置にある浮上防止部材170の梁部170bによって係止されることで、浮上が防止される。すなわち、浮上防止部材170は、第1位置にあるときに、制御装置42の水没時の浮上を防止する浮上防止状態となる。
【0083】
一方、電動アクチュエータ16を手動操作する必要が生じたときには、作業者は、天蓋138を開くと共に、パネル用架台160を太陽電池パネル44ごと架台150から取り外した後、浮上防止部材170を第2位置まで回動させる(開く)とよい。これにより、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる。すなわち、パネル用架台160は、第2位置に回動させることで、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態に切り替えられる。
【0084】
この第2実施例によれば、第1実施例と同様に、制御装置42を架台150に締結することなく、水没時における制御装置42の浮上を防止しつつ、制御装置42での作業性を高めることができる。また、天蓋138とは別に制御装置42を保持できるので、浮上防止部材170を回動させるという手間が増えるものの、水没時における制御装置42の浮上をより確実に防止することができる。
【0085】
続いて、
図19および
図20を参照して、この発明のさらに他の実施例(第3実施例)のシステム10について説明する。この第3実施例では、浮上防止部材として用いるパネル用架台180の構成が上述の第1実施例と異なる。
【0086】
図19および
図20に示すように、第3実施例では、太陽電池パネル44を取り付けるための一対のパネル用架台180が浮上防止部材として用いられる。パネル用架台180は、制御装置42の両側の位置において架台150の横片部152bに立設された支柱部180aと、制御装置42の上面に沿って延びるように支柱部180aの上端部同士を連結する梁部180bとを有するブリッジ状に形成される。そして、梁部180bが支柱部180aに対してヒンジ180cを介して開閉可能に設けられる。すなわち、梁部180bの一方端部は、一方の支柱部180aの上端部に対してヒンジ180cを介して連結され、梁部180bの他端部は、他方の支柱部180aの上端部に対して分離可能に連結(支持)される。
【0087】
このようなシステム10において、制御装置42が水没したときには、制御装置42は、ガイド部156にガイドされながら少し浮上するが、パネル用架台180(浮上防止部材)の梁部180bによって係止されることで、浮上が防止される。また、パネル用架台180は、梁部160bが直接または太陽電池パネル44の取付板94を介して天蓋138に係止されることで、上方向の移動が規制される。すなわち、パネル用架台180は、天蓋138に係止されることで、制御装置42の水没時の浮上を防止する浮上防止状態となる。
【0088】
一方、電動アクチュエータ16を手動操作する必要が生じたときには、作業者は、天蓋138を開くと共に、パネル用架台180を太陽電池パネル44ごと開く(回動させる)ことで、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる。すなわち、パネル用架台160は、天蓋138を開くと共に、パネル用架台160を太陽電池パネル44ごと開くことで、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態に切り替えられる。
【0089】
この第3実施例によれば、第1実施例と同様に、制御装置42を架台150に締結することなく、水没時における制御装置42の浮上を防止しつつ、制御装置42での作業性を高めることができる。
【0090】
なお、上述の第3実施例では、浮上防止部材の一例であるパネル用架台180の梁部160bを天蓋138に係止させることで、パネル用架台180を浮上防止状態にしているが、これに限定されない。たとえば、パネル用架台160の分離部分(ヒンジ180cを設ける側と反対側の梁部180bと支柱部180aとの連結部分)に留め金などのロック機構(図示せず)を設け、このロック機構を用いてパネル用架台180を浮上防止状態と非浮上防止状態とに切り替えることもできる。
【0091】
続いて、
図21を参照して、この発明のさらに他の実施例(第4実施例)のシステム10について説明する。この第4実施例では、太陽電池パネル44の設置態様および浮上防止部材の構成が上述の第1実施例と異なる。
【0092】
図21に示すように、第4実施例では、太陽電池パネル44は、制御装置42の上面に取り付けられる。この際、太陽電池パネル44は、図示しない磁石部材を介して(つまり磁石による結合によって)、制御装置42に対して着脱可能に取り付けられる。また、太陽電池パネル44の外側面には、外方に突出する矩形板状または鍔状などに形成される張出部材190が設けられる。この第4実施例では、この張出部材190が浮上防止部材として用いられる。
【0093】
このようなシステム10において、制御装置42が水没したときには、制御装置42は、太陽電池パネル44に設けた張出部材190が天蓋138に係止されることで、上方向の移動が規制される。すなわち、張出部材190は、天蓋138に係止されることで、制御装置42の水没時の浮上を防止する浮上防止状態となる。
【0094】
一方、電動アクチュエータ16を手動操作する必要が生じたときには、作業者は、天蓋138を開くことで、太陽電池パネル44を取り出した後、或いは太陽電池パネル44ごと、制御装置42を桝の外部に取り出すことが可能となる。すなわち、張出部材190は、天蓋138を開かれて、張出部材190に対する天蓋138の係止が解除されることで、制御装置42の桝の外部への取り出しが可能となる非浮上防止状態に切り替えられる。
【0095】
この第4実施例によれば、第1実施例と同様に、制御装置42を架台150に締結することなく、水没時における制御装置42の浮上を防止しつつ、制御装置42での作業性を高めることができる。また、太陽電池パネル44を取り付けるパネル用架台を省略できるので、部材コストを低減できると共に、制御装置42を取り出すときの作業性を向上できる。さらに、磁石部材を介して制御装置42に太陽電池パネル44を結合しておくことで、制御装置42に太陽電池パネル44を容易に着脱できる。
【0096】
なお、上述の第4実施例では、太陽電池パネル44を制御装置42に磁石部材を介して取り付けたが、これに限定されず、太陽電池パネル44は、制御装置42にボルト等の締結部材を用いて固定することもできる。
【0097】
続いて、
図22および
図23を参照して、この発明のさらに他の実施例(第5実施例)のシステム10について説明する。この第5実施例では、浸水防止カバー200をさらに備える点が上述の第1実施例と異なる。
【0098】
図22および
図23に示すように、第5実施例では、制御装置42を覆うように設けられる浸水防止カバー200を備える。上述のように、制御装置42の第2筐体70は、その全体が気密構造を有するように形成されており、基本的には、第2筐体70が水没してもその内部に水が入り込まないようにされている。しかしながら、蓋部70bの繰り返しの開閉や経年によるケース本体70aと蓋部70bとの間(つまり第2筐体70の開閉部)に設けられる止水部材の劣化、またはこの間への異物の噛み込み等によって、止水効果が低下する可能性がある。そこで、この第5実施例では、制御装置42を覆うように浸水防止カバー200を設けることで、制御装置42内(第2筐体70内)への浸水をより確実に防止できるようにしている。以下、浸水防止カバー200の構成について説明する。
【0099】
浸水防止カバー200は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって下側開放の有頂筒状に形成される。この実施例の浸水防止カバー200は、角筒状の側壁200aと、側壁200aの上端部を封止する矩形板状の天壁200bとを含む有頂角筒状に形成される。側壁200aと天壁200bとは、塩ビ溶接などによって一体化されており、浸水防止カバー200は、側壁200aおよび天壁200bが気密構造を有するように形成される。
【0100】
このような浸水防止カバー200を備えることで、洪水時などに給水桝104内に水が溢れて制御装置42が水没しそうになっても、浸水防止カバー200内に空気を溜めておくことができる、つまり浸水防止カバー200内への浸水を水圧と浸水防止カバー200内の気圧(内圧)とが釣り合う一定の浸水レベルで止めることができるので、第2筐体70の開閉部が水に浸かってしまうことを防止できる。ただし、洪水時に想定される浸水防止カバー200内への浸水レベルよりも上方の位置に第2筐体70の開閉部が配置されるように、浸水防止カバー200を設けておく必要がある。
【0101】
また、第5実施例では、制御装置42とパネル用架台160(浮上防止部材)との間に浸水防止カバー200が配置され、浸水防止カバー200は、浮上防止状態にあるパネル用架台160によって係止されることで、水没時における浮上が規制される。これに加えて、第5実施例では、連結部材162を介してパネル用架台160に浸水防止カバー200が連結(固定)される。たとえば、浸水防止カバー200の天壁200bの上面には、ナット等の雌ねじ部材202が固着される。そして、雌ねじ部材202が連結部材162にボルト止めされることで、パネル用架台160に浸水防止カバー200が連結される。浸水防止カバー200をパネル用架台160に連結しておくことで、制御装置42に設けられた操作パネル76の操作時においてパネル用架台160を架台150から取り外す際に、浸水防止カバー200も合わせて取り外されるので、作業性が向上する。ただし、浸水防止カバー200は、必ずしもパネル用架台160に連結されて係止される必要はなく、パネル用架台160によって係止されるだけでもよい。また、浸水防止カバー200は、他の方法で保持されてもよい。
【0102】
さらに、第5実施例では、第2筐体70の蓋部70bの上面(制御装置42の上面)と浸水防止カバー200の天壁200bの下面との間に、発泡樹脂またはゴム等で形成される緩衝材204(詰めもの)が分散して設けられる。緩衝材204を設けることによって、水没時における制御装置42の浮上を防止できる。また、緩衝材204を用いて第2筐体70と浸水防止カバー200との間に空間206を形成することで、浸水防止カバー200内の空間容積(隙間容積)を確保できる。これにより、浸水防止カバー200内への浸水レベルをより低位で止めることができるので、第2筐体70の開閉部が水に浸かってしまうことをより確実に防止できる。
【0103】
第5実施例によれば、上述の第1実施例と同様の作用効果を奏することに加えて、制御装置42を覆う浸水防止カバー200を備えるので、制御装置42内(第2筐体70内)への浸水をより確実に防止できる。
【0104】
なお、上述の第5実施例では、パネル用架台160の内側に浸水防止カバー200を設けているが、パネル用架台160の外側に浸水防止カバー200を設けてもよい。また、パネル用架台160を下側開放の有頂筒状に形成して、このパネル用架台160を浸水防止カバー200として兼用させることもできる。この場合、浸水防止カバー200が、天蓋138を利用した浮上防止の構造を兼ねる。
【0105】
また、第5実施例は、第1実施例のシステム10に浸水防止カバー200を追加した構成を備えているが、
図24-
図26に示すように、第2-第4実施例などの他の実施例のシステム10に浸水防止カバー200を適用することもできる。
【0106】
図24には、第2実施例のシステム10に浸水防止カバー200を適用した実施例を示す。この実施例では、浸水防止カバー200は、浮上防止部材170に連結されることなく、浮上防止状態にある浮上防止部材170によって係止されることで、水没時における浮上が規制される。また、制御装置42の上面と浸水防止カバー200の天壁200bの下面との間には、緩衝材204が設けられる。
【0107】
また、
図25には、第3実施例のシステム10に浸水防止カバー200を適用した実施例を示す。この実施例では、浸水防止カバー200は、パネル用架台180(浮上防止部材)に連結されることなく、浮上防止状態にあるパネル用架台180によって係止されることで、水没時における浮上が規制される。また、この実施例では、浸水防止カバー200の天壁200bの上面とパネル用架台180の梁部180bの下面との間に緩衝材204が設けられる。
【0108】
さらに、
図26には、第4実施例のシステム10に浸水防止カバー200を適用した実施例を示す。この実施例では、浸水防止カバー200は、張出部材190(浮上防止部材)に連結されることなく、浮上防止状態にある張出部材190によって係止されることで、水没時における浮上が規制される。また、制御装置42の上面と浸水防止カバー200の天壁200bの下面との間には、緩衝材204が設けられる。なお、この実施例では、太陽電池パネル44は、浸水防止カバー200に対して着脱可能に取り付けられる。
【0109】
また、上述の各実施例では、給水桝104の上面を畦畔102の上面と面一にするようにした。しかし、給水桝104などの桝の上面の高さ位置は、圃場100の態様に応じて適宜変更可能であり、桝の上端部が畦畔102の上面から突出するように桝が設けられても構わない。ただし、農機が桝にぶつかる等の事故を防止するため、桝の上面は、当該桝が設けられた畦畔102の上面以下の高さ位置または畦畔102の上面と略同じ高さ位置に設けられることが好ましい。その中でも、桝の上面を畦畔102の上面と面一にすることがより好ましいが、たとえば、圃場100と畦畔102の上面との高低差が大きく、桝が畦畔102の斜面(法面)の途中に設けられるような場合は、桝の上面を畦畔102の上面よりも低い位置に設けることもできる。
【0110】
さらに、太陽電池パネル44の設置態様は、上述の各実施例の態様に限定されず、適宜変更可能である。たとえば、太陽電池パネル44をパネル用架台160などに取り付けるに際して、太陽電池パネル44の設置角度(水平面に対する傾斜角度)および設置方向(パネル上面が向く方角)の少なくとも一方を調整可能にすることもできる。これにより、太陽電池パネル44に太陽光をより適切に照射させることができ、また、太陽電池パネル44を傾斜させることでその上面にごみ等が滞留することを防止できる。
【0111】
さらに、太陽電池パネル44の設置位置は、給水桝104等の桝内に限定されず、太陽電池パネル44は、たとえば、天蓋138に設けることもできるし、給水桝104などの桝の外部に設けることもできる。また、容量の大きい蓄電池74を用いる場合には、電動アクチュエータ16は、必ずしも太陽電池パネル44を備える必要はない。また、商用電源などの他の電源を使用できる環境にシステム10が適用される場合には、電動アクチュエータ16は、必ずしも太陽電池パネル44および蓄電池74を備える必要はない。
【0112】
また、上述の各実施例では、アンテナ78を制御装置42の第2筐体70内に設けるようにしたが、アンテナ78の設置位置は適宜変更可能である。たとえば、給水桝104などの桝内において、第2筐体70の外部にアンテナ78を設けることもできるし、桝の外部にアンテナ78を設けることもできる。桝の外部にアンテナ78を設ける場合には、たとえば、湾曲可能な支柱上にアンテナ78を設けておけば、アンテナ78に負荷がかかった際の破損を防止することができる。
【0113】
さらに、上述の各実施例では、システム10は、送水制御装置の一例である給水栓12および他の例である落水口14の双方を備えているが、給水栓12および落水口14のいずれか一方を備えているだけでもよい。また、システム10が給水栓12および落水口14の双方を備えている場合でも、電動アクチュエータ16の駆動装置40と制御装置42とを分割して設置する構成は、給水栓12側および落水口14側のいずれか一方の電動アクチュエータ16のみに採用することもできる。
【0114】
また、上述の各実施例では、電動アクチュエータ16の無線通信部82は、中継機を介して管理サーバ等と無線通信するようにしたが、中継機は、必ずしも設置される必要はない。たとえば、無線通信部82は、中継機を介さずに、管理サーバまたは遠隔操作端末などの外部機器と無線通信を行い、電動アクチュエータ16の制御信号を受信するようにしてもよい。
【0115】
また、この発明において、太陽電池パネル44等が桝の内部に設けられるとは、太陽電池パネル44等が桝の上面および外側面からはみ出すことなく設置されることを言うが、設置後に基準状態(はみ出さない状態)から変位して桝外にはみ出し可能な場合も、桝内に設けられることに含むものとする。
【0116】
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および具体的形状などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0117】
10 …圃場水管理システム
12 …給水栓(送水制御装置)
14 …落水口(送水制御装置)
16 …電動アクチュエータ
40 …駆動装置
42 …制御装置
44 …太陽電池パネル
54 …モータ(駆動部)
56 …メインギア(駆動部)
74 …蓄電池
80 …制御部
82 …無線通信部
100 …圃場
102 …畦畔
104 …給水桝
110 …排水桝
138 …天蓋
150 …架台
152 …メインフレーム
156 …ガイド部
158 …嵌入部
160 …パネル用架台(浮上防止部材)
160a …支柱部
160b …梁部
170 …浮上防止部材
180 …パネル用架台(浮上防止部材)
190 …張出部材(浮上防止部材)
200 …浸水防止カバー