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特開2024-88445ヒアルロン酸系ポリイオンコンプレックス及び親油性抗酸化剤を含む組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088445
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸系ポリイオンコンプレックス及び親油性抗酸化剤を含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240625BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20240625BHJP
   A61K 8/65 20060101ALI20240625BHJP
   C09K 15/08 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/55
A61K8/37
A61K8/365
A61K8/34
A61K8/67
A61Q1/00
A61Q19/00
A61Q5/00
A61K8/64
A61K8/65
C09K15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022203615
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】島谷 満
(72)【発明者】
【氏名】池田 侑市
(72)【発明者】
【氏名】奥田 真介
【テーマコード(参考)】
4C083
4H025
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB051
4C083AC102
4C083AC301
4C083AC352
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC441
4C083AC471
4C083AC532
4C083AC712
4C083AC901
4C083AC902
4C083AD092
4C083AD131
4C083AD282
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD431
4C083AD641
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB33
4C083BB34
4C083BB35
4C083BB47
4C083BB51
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083EE12
4H025AA15
4H025AC01
4H025AC04
(57)【要約】
【課題】べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は少なくとも1種の両性ポリマー、並びに少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩を含む、少なくとも1種のコンプレックスと、(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、(c)水とを含む、組成物であって、アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、組成物に関する。本発明による組成物は、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、
少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、
(c)水と
を含む組成物であって、
アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、且つ
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、
組成物。
【請求項2】
カチオン化ヒアルロン酸が、少なくとも1つの第四級アンモニウム基含有基を有し、且つ0.05~0.6、好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.15~0.4のカチオン化度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カチオン性ポリマーが、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中のカチオン性及び/又はアニオン性及び/又は両性ポリマーの総量が、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、有機酸又はその塩、好ましくは親水性又は水溶性の有機酸又はその塩、より好ましくはフィチン酸又はその塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(b)親油性抗酸化剤が、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量が、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
組成物中の(c)水の量が、組成物の総質量に対して、10質量%~99質量%、好ましくは30質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(d)好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、少なくとも1種の界面活性剤を更に含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製する方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質上に、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む、
方法。
【請求項13】
基質、好ましくはケラチン物質上に、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、好ましくは化粧皮膜。
【請求項14】
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、
任意選択で、(d)好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、少なくとも1種の界面活性剤と
を含む、
皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、
皮膜、好ましくは化粧皮膜。
【請求項15】
皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質に、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、
美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイオンコンプレックスを含む組成物、及びポリイオンコンプレックスの皮膜、並びにポリイオンコンプレックスを使用することによって皮膜を調製する方法、及びポリイオンコンプレックスを使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、皮膚内で見出される主たるグルコサミノグリカンである。そのため、線維芽細胞は、コラーゲン、コラーゲン以外のマトリックス糖タンパク質(フィブロネクチン、ラミニン)、プロテオグリカン及びエラスチンを主に合成する。ケラチン生成細胞は、それらの部分のために、硫酸化グリコサミノグリカン及びヒアルロン酸を主に合成する。ヒアルロン酸はまた、ヒアルロナン(HA)とも呼ばれる。
【0003】
ヒアルロン酸は、表皮内及び真皮内に遊離状態で存在し、皮膚の膨満状態を左右する。この多糖は、実際、その質量の1000倍までに相当する大きい体積の水を保持することができる。この意味で、ヒアルロン酸は、組織内に結合されている水の量の増加において、更には皮膚の機械的性質及びしわ形成においても、重要な役割を果たす。
【0004】
ヒアルロン酸は、その高い保湿効果に起因して、化粧成分として広く使用されてきた。
【0005】
しかしながら、ヒアルロン酸の水溶液はべとつき、このことが不快なテクスチャをもたらしうる。また、ヒアルロン酸の水溶液が皮膚上で乾燥するときに形成されるヒアルロン酸皮膜もべとつき、このような皮膜もまた不快なテクスチャをもたらしうる。
【0006】
WO2021/125069は、カチオン性ポリマー、及びアニオン性ポリマーとしてのヒアルロン酸を有するポリイオンコンプレックス粒子を形成することによって、ヒアルロン酸に起因するべとつきを低減することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2021/125069
【特許文献2】欧州特許出願第0080976号
【特許文献3】仏国特許第2077143号
【特許文献4】仏国特許第2393573号
【特許文献5】仏国特許第1492597号
【特許文献6】米国特許第4131576号
【特許文献7】米国特許第3589578号
【特許文献8】米国特許第4031307号
【特許文献9】仏国特許第2162025号
【特許文献10】仏国特許第2280361号
【特許文献11】仏国特許第2252840号
【特許文献12】仏国特許第2368508号
【特許文献13】仏国特許第1583363号
【特許文献14】米国特許第3227615号
【特許文献15】米国特許第2961347号
【特許文献16】仏国特許第2080759号
【特許文献17】仏国特許第2080759号の追加特許第2190406号
【特許文献18】仏国特許第2320330号
【特許文献19】仏国特許第2270846号
【特許文献20】仏国特許第2316271号
【特許文献21】仏国特許第2336434号
【特許文献22】仏国特許第2413907号
【特許文献23】米国特許第2273780号
【特許文献24】米国特許第2375853号
【特許文献25】米国特許第2388614号
【特許文献26】米国特許第2454547号
【特許文献27】米国特許第3206462号
【特許文献28】米国特許第2261002号
【特許文献29】米国特許第2271378号
【特許文献30】米国特許第3874870号
【特許文献31】米国特許第4001432号
【特許文献32】米国特許第3929990号
【特許文献33】米国特許第3966904号
【特許文献34】米国特許第4005193号
【特許文献35】米国特許第4025617号
【特許文献36】米国特許第4025627号
【特許文献37】米国特許第4025653号
【特許文献38】米国特許第4026945号
【特許文献39】米国特許第4027020号
【特許文献40】欧州特許出願第0122324号
【特許文献41】特許FR2608150
【特許文献42】特許出願FR699818
【特許文献43】特許出願FR2706478
【特許文献44】特許出願FR2907339
【特許文献45】特許出願FR2814943
【特許文献46】特許出願FR2873026
【特許文献47】米国特許第4698360号
【特許文献48】米国特許第6372266号
【特許文献49】米国特許第5720956号
【特許文献50】特許出願FR2908769
【特許文献51】特許出願FR2704754
【特許文献52】特許出願FR2877004
【特許文献53】特許出願FR2854160
【特許文献54】特許出願EP0511118
【特許文献55】特許出願WO94/11338
【特許文献56】特許出願FR2698095
【特許文献57】特許出願FR2737205
【特許文献58】特許出願EP0755925
【特許文献59】特許出願FR2825920
【特許文献60】米国特許第2528378号
【特許文献61】米国特許第2781354号
【特許文献62】米国特許第4874554号
【特許文献63】米国特許第4137180号
【特許文献64】US-A-5364633
【特許文献65】US-A-5411744
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】CTFA辞典
【非特許文献2】「Hyaluronan fragments: an information-rich system」、R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006年) 699~715頁
【非特許文献3】D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998年) 2101~2127頁
【非特許文献4】CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年
【非特許文献5】CTFA辞典、第3版、1982年
【非特許文献6】CTFA辞典、第5版、1993年
【非特許文献7】「Handbook of Surfactants」、M.R.Porter著、Blackie & Son出版(Glasgow及びLondon)、1991年、116~178頁
【発明の概要】
【0009】
べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる、ヒアルロン酸系ポリイオンコンプレックスを含む組成物が、必要とされている。
【0010】
そのため、本発明の第1の目的は、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる組成物を提供することである。
【0011】
本発明の上記の目的は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、
並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、
少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、
(c)水と
を含む組成物であって、
アニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、且つ
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、組成物によって達成することができる。
【0012】
カチオン化ヒアルロン酸は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基含有基を有してもよく、且つ0.05~0.6、好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.15~0.4のカチオン化度を有する。
【0013】
カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してよい。
【0014】
カチオン性ポリマーは、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばコラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにそれらの塩からなる群から選択することができる。
【0015】
本発明による組成物中のカチオン性及び/又はアニオン性及び/又は両性ポリマーの総量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%であってよい。
【0016】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩であってもよく、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機酸又はその塩であってもよく、より好ましくはフィチン酸又はその塩であってもよい。
【0017】
本発明による組成物中の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってよい。
【0018】
(b)親油性抗酸化剤は、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0019】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってよい。
【0020】
本発明による組成物中の(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~99質量%、好ましくは30質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってよい。
【0021】
本発明による組成物は、好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、(d)少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでよい。
【0022】
本発明の第2の目的は、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる皮膜を調製する方法を提供することである。
【0023】
本発明の上記の目的は、皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製する方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法によって達成することができる。
【0024】
本発明の第3の目的は、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる皮膜を提供することである。
【0025】
本発明の上記の目的は、
(1)基質、好ましくはケラチン物質上に、
本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、好ましくは化粧皮膜、
或いは
(2)(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、
少なくとも1種のポリイオンコンプレックス、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤、
並びに
任意選択で、好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、(d)少なくとも1種の界面活性剤
を含む、皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、皮膜、好ましくは化粧皮膜によって達成することができる。
【0026】
本発明はまた、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、
ケラチン物質に、本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程と
を含む、美容方法にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
鋭意検討の結果、本発明者等は、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる組成物を提供することが可能であることを発見した。そのため、本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、
並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、
少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と
(c)水と
を含み、
アニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、且つ
両性ポリマーは、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される。
【0028】
更に、本発明者らは、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる皮膜を調製する方法を提供することが可能であることを発見した。そのため、本発明による方法は、皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製する方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法である。
【0029】
更に、本発明者らは、べとつきが少なく、且つ長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる皮膜を提供することが可能であることを発見した。そのため、本発明による皮膜は、
(1)基質、好ましくはケラチン物質上に、
本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、好ましくは化粧皮膜、
或いは、
(2)(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、並びに
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、
任意選択で、好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、(d)少なくとも1種の界面活性剤と
を含む、皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択され、
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、
皮膜、好ましくは化粧皮膜である。
【0030】
本発明による組成物のべとつきは、ポリイオンコンプレックスを形成しないヒアルロン酸を含む組成物と比べて、低減させることができる。
【0031】
本発明による組成物及び皮膜は、長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる。
【0032】
そのため、本発明は、例えば皮脂等の不飽和脂質の過酸化によって引き起こされる損傷から皮膚を保護するのに有用であり得、損傷は、落屑の変化、スクアレン減少、ざ瘡及び黒色面皰、皮膚のくすみ、並びに老化、例えばしわ及び/又は小じわの形成でありうる。
【0033】
更に、本発明による組成物は、ヒアルロン酸又はカチオン化ヒアルロン酸に基づいて、長く持続する美容効果及び/又は改善した保湿テクスチャを付与することができる。
【0034】
更に、本発明による組成物及び皮膜は、透明又は半透明であることができる。
【0035】
組成物を、基質上に、好ましくは皮膚及び毛髪等のケラチン物質上に、より好ましくは皮膚上に塗布し、組成物を乾燥させることによって、少なくとも1種の界面活性剤を含みうる、ポリイオンコンプレックスを含む皮膜を容易に調製することが可能である。
【0036】
本発明による皮膜のべとつきは、ポリイオンコンプレックスを形成しないヒアルロン酸の皮膜と比べて、低減させることができる。
【0037】
本発明による皮膜は多孔質であってよい。本発明による皮膜の表面は、平らでなくてもよく、粗くてもよい。
【0038】
本発明による皮膜は、多様な美容機能を有することができる。例えば、皮膜は、ポリイオンコンプレックス中で、ヒアルロン酸又はカチオン化ヒアルロン酸に基づく保湿効果をもたらすことができる。
【0039】
本発明による皮膜は、皮脂を捕捉することができ、皮膚等のケラチン物質の外観にマット感を付与することができ、悪臭を吸収する若しくは吸着することができ、及び/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護することができる。
【0040】
皮膜が、油等の少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、皮膜はまた、美容有効成分によって付与される美容効果も有することができる。例えば、ポリイオンコンプレックス皮膜が、UV遮蔽剤、(b)親油性抗酸化剤以外の抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、白色剤、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、皮膜は、UV線を遮蔽し、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、及び/又は皮膚を白色化することができる。
【0041】
本発明による皮膜は透明であっても半透明であってもよく、したがって、皮膜が比較的厚い場合であってさえ、知覚しにくい場合がある。
【0042】
更に、本発明による皮膜は耐水性であり、したがって、皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗又は雨に起因して濡れている場合であってさえ、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。
【0043】
更に、本発明による皮膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、アルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0044】
そのため、本発明による皮膜が親水性又は水溶性のUV遮蔽剤を含む場合、本発明による皮膜は、水に耐性(防水性)であり且つ長く持続しうるUV遮蔽効果を呈することができるが、アルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0045】
本明細書で以降、本発明による組成物、方法、皮膜等が、より詳細に説明されることになる。
【0046】
[ポリイオンコンプレックス]
本発明による組成物は、(a)少なくとも1種のポリイオンコンプレックスを含む。2種以上の異なるタイプの(a)ポリイオンコンプレックスを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの(a)ポリイオンコンプレックス、又は異なるタイプの(a)ポリイオンコンプレックスの組み合わせを使用することができる。
【0047】
(a)ポリイオンコンプレックスは、粒子の形態にあってよい。
【0048】
ポリイオンコンプレックス粒子の径は、5nm~100μm、好ましくは100nm~50μm、より好ましくは200nm~40μm、更により好ましくは500nm~30μmであってよい。1μm未満の粒径は、動的光散乱法によって測定することができ、1μm超の粒径は、光学顕微鏡によって測定することができる。この粒径は、数平均直径に基づくことができる。
【0049】
本発明による組成物中の(a)ポリイオンコンプレックスの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0050】
本発明による組成物中の(a)ポリイオンコンプレックスの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0051】
本発明による組成物中の(a)ポリイオンコンプレックスの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.05質量%~10質量%、より好ましくは0.1質量%~5質量%であってよい。
【0052】
(a)ポリイオンコンプレックスは、少なくとも1種のポリマー、又はポリマーの組み合わせを含む。具体的には、(a)ポリイオンコンプレックスは、
(1)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
(2)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
(3)少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
(4)少なくとも1種の両性ポリマー
を含む。
【0053】
カチオン性ポリマーのタイプに限定はない。2種以上の異なるタイプのカチオン性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのカチオン性ポリマー、又は異なるタイプのカチオン性ポリマーの組み合わせを使用することができる。
【0054】
上記(1)において、カチオン性ポリマー/アニオン性ポリマーの量、例えば化学当量の比は、0.05~18、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5.0であってよい。詳細には、カチオン性ポリマーのカチオン性基の数/アニオン性ポリマーのアニオン性基の数が、0.05~18、より好ましくは0.1~10、更により好ましくは0.5~5.0であることが好ましい場合がある。
【0055】
上記(2)において、カチオン性ポリマー/両性ポリマーの量、例えば化学当量の比は、0.05~18、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5.0であってよい。詳細には、カチオン性ポリマーのカチオン性基の数/両性ポリマーのカチオン性基とアニオン性基との数が、0.05~18、より好ましくは0.1~10、更により好ましくは0.5~5.0であることが好ましい場合がある。
【0056】
上記(3)において、アニオン性ポリマー/両性ポリマーの量、例えば化学当量の比は、0.05~18、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5.0であってよい。詳細には、アニオン性ポリマーのアニオン性基の数/両性ポリマーのカチオン性基とアニオン性基との数が、0.05~18、より好ましくは0.1~10、更により好ましくは0.5~5.0であることが好ましい場合がある。
【0057】
本発明による組成物中の上記(1)~(4)のいずれか1つによるポリマーの総量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってよい。
【0058】
本発明による組成物中の上記(1)~(4)のいずれか1つによるポリマーの総量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0059】
本発明による組成物中の上記(1)~(4)のいずれか1つによるポリマーの総量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%であってよい。
【0060】
(カチオン性ポリマー)
カチオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。カチオン性ポリマーの電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであってよい。
【0061】
カチオン性ポリマーの分子量が、500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更により好ましくは3000以上であることが好ましい場合がある。
【0062】
説明中に別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味する。
【0063】
カチオン性ポリマーは、第一級、第二級又は第三級アミノ基、第四級アンモニウム基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基及びピリジル基からなる群から選択される、少なくとも1つの正電荷を有することができる及び/又は正電荷を有する部分を有してよい。用語(第一級)「アミノ基」は、本明細書では、-NH2基を意味する。
【0064】
カチオン性ポリマーは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。用語「コポリマー」は、2種類のモノマーから得たコポリマーと、2種類超のモノマーから得たもの、例えば3種類のモノマーから得たターポリマーとの両方を意味すると理解される。
【0065】
カチオン性ポリマーは、天然及び合成カチオン性ポリマーから選択することができる。カチオン性ポリマーの非限定な例は、以下の通りである。
【0066】
(1)アクリル酸又はメタクリル酸のエステル及びアミドに由来し、以下の式の単位から選ばれる少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0067】
【化1】
【0068】
[式中、
R1及びR2は、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、例としてはメチル基及びエチル基から選ばれ、
R3は、同一であっても異なっていてもよく、水素及びCH3から選ばれ、
記号Aは、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子、例えば2~3個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキル基、及び1~4個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基から選ばれ、
R4、R5及びR6は、同一であっても異なっていてもよく、1~18個の炭素原子を含むアルキル基、及びベンジル基、並びに少なくとも1つの実施形態では、1~6個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオン、例えば、メト硫酸アニオン、並びにハロゲン化物イオン、例としては塩化物イオン及び臭化物イオンである]。
【0069】
ファミリー(1)のコポリマーはまた、コモノマーに由来する少なくとも1つの単位も含んでよく、これは、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、窒素原子が(C1~C4)低級アルキル基で置換されているアクリルアミド及びメタクリルアミド、アクリル酸又はメタクリル酸及びそれらのエステルに由来する基、ビニルラクタム、例えばビニルピロリドン及びビニルカプロラクタム、並びにビニルエステルから選ぶことができる。
【0070】
ファミリー(1)のコポリマーの例には、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
アクリルアミドと、硫酸ジメチル又はハロゲン化ジメチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとのコポリマー、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドとのコポリマー、例えば欧州特許出願第0080976号に記載されているもの、
アクリルアミドとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメトスルフェートとのコポリマー、
四級化又は非四級化ビニルピロリドン/アクリル酸又はメタクリル酸ジアルキルアミノアルキルコポリマー、例えば仏国特許第2077143号及び同第2393573号に記載されているもの、
メタクリル酸ジメチルアミノエチル/ビニルカプロラクタム/ビニルピロリドンターポリマー、
ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピルジメチルアミンコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドコポリマー、並びに
架橋メタクリロイルオキシ(C1~C4)アルキルトリ(C1~C4)アルキルアンモニウム塩ポリマー、例えば塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルの単独重合によって、又はアクリルアミドと、塩化メチルで四級化されたメタクリル酸ジメチルアミノエチルとの共重合によって、その単独重合又は共重合に続いて、オレフィン性不飽和を含有する化合物、例えばメチレンビスアクリルアミドで架橋することによって得られるポリマー。
【0071】
(2)カチオン性セルロースポリマー、例えば仏国特許第1492597号に記載されている、1つ又は複数の第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUnion Carbide Corporation社により名称「JR」(JR 400、JR 125、JR 30M)又は「LR」(LR 400、LR 30M)で販売されているポリマー。これらのポリマーはまた、CTFA辞典において、トリメチルアンモニウム基で置換されているエポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースの第四級アンモニウムとして定義されている。
【0072】
カチオン性セルロースポリマーが、少なくとも1つの第四級アンモニウム基、好ましくは第四級トリアルキルアンモニウム基、より好ましくは第四級トリメチルアンモニウム基を有することが好ましい。
【0073】
第四級アンモニウム基は、以下の化学式(I):
【0074】
【化2】
【0075】
[式中、
R1及びR2のそれぞれは、C1~3アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
R3は、C1~24アルキル基、好ましくはメチル基又はエチル基、より好ましくはメチル基を示し、
X-は、アニオン、好ましくはハロゲン化物イオン、より好ましくは塩化物イオンを示し、
nは、0~30、好ましくは0~10、より好ましくは0の整数を示し、
R4は、C1~4アルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基を示す]
によって表されうる第四級アンモニウム基含有基中に存在しうる。
【0076】
上記の化学式(I)中の最左のエーテル結合(-O-)は、多糖の糖環に結合することができる。
【0077】
第四級アンモニウム基含有基が、-O-CH2-CH(OH)-CH2-N+(CH3)3であることが好ましい。
【0078】
(3)カチオン性セルロースポリマー、例えば第四級アンモニウムの水溶性モノマーでグラフトされた、且つ例えば米国特許第4131576号に記載されている、セルロースコポリマー及びセルロース誘導体、例えばヒドロキシアルキルセルロース、例としては、例えば、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム及びジメチルジアリルアンモニウムの各塩から選ばれる塩でグラフトされたヒドロキシメチル-、ヒドロキシエチル-及びヒドロキシプロピルセルロース。
【0079】
これらのポリマーに相当する市販製品には、例えば、National Starch社により名称「Celquat(登録商標)L 200」及び「Celquat(登録商標)H 100」で販売されている製品が挙げられる。
【0080】
(4)米国特許第3589578号及び同第4031307号に記載されている、非セルロース系カチオン性多糖、例えばカチオン性トリアルキルアンモニウム基を含むグアーガム、カチオン性ヒアルロン酸及びデキストランヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド。塩、例えば2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムの塩化物で修飾されたグアーガム(グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド)もまた、使用してもよい。
【0081】
このような製品は、例としては、MEYHALL社により商品名JAGUAR(登録商標)C13 S、JAGUAR(登録商標)C15、JAGUAR(登録商標)C17及びJAGUAR(登録商標)C162で販売されている。
【0082】
(5)ピペラジニル単位、及び酸素、硫黄、窒素、芳香族環及び複素環式環から選ばれる少なくとも1つの要素により任意選択で割り込まれた直鎖又は分枝鎖を含む二価のアルキレン又はヒドロキシアルキレン基を含むポリマー、並びにまたこれらのポリマーの酸化及び/又は四級化生成物。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2162025号及び同第2280361号に記載されている。
【0083】
(6)例えば酸性化合物をポリアミンと重縮合させることによって調製される水溶性ポリアミノアミドであり、これらのポリアミノアミドは、エピハロヒドリン;ジエポキシド;二無水物;不飽和二無水物;ビス不飽和誘導体;ビスハロヒドリン;ビスアゼチジニウム;ビスハロアシルジアミン;ビスアルキルハライド;ビスハロヒドリン、ビスアゼチジニウム、ビスハロアシルジアミン、ビスアルキルハライド、エピハロヒドリン、ジエポキシド及びビス不飽和誘導体から選ばれる要素と反応性である二官能性化合物の反応から得られるオリゴマーから選ばれる要素で架橋されている場合があり;その架橋剤は、ポリアミノアミドのアミン基1つ当たり0.025~0.35molの範囲の量で使用され;これらのポリアミノアミドは、任意選択でアルキル化されているか、又はこれらが少なくとも1つの第三級アミン官能基を含む場合、それらは、四級化されていてもよい。このようなポリマーは、例えば仏国特許第2252840号及び同第2368508号に記載されている。
【0084】
(7)ポリアルキレンポリアミンをポリカルボン酸と縮合させ、続いて二官能性作用剤でアルキル化することから得られるポリアミノアミド誘導体、例えば、メチル、エチル及びプロピル基等の、アルキル基が1~4個の炭素原子を含み、エチレン基等の、アルキレン基が1~4個の炭素原子を含む、アジピン酸/ジアルキルアミノヒドロキシアルキルジアルキレントリアミンポリマー。このようなポリマーは、例としては仏国特許第1583363号に記載されている。少なくとも1つの実施形態では、これらの誘導体は、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンポリマーから選ぶことができる。
【0085】
(8)2つの第一級アミン基及び少なくとも1つの第二級アミン基を含むポリアルキレンポリアミンと、ジグリコール酸、及び3~8個の炭素原子を含む飽和脂肪族ジカルボン酸から選ばれるジカルボン酸との反応によって得られるポリマー。ポリアルキレンポリアミンのジカルボン酸に対するモル比は、0.8:1~1.4:1の範囲であってよく、それから得られるポリアミノアミドを、エピクロロヒドリンと、エピクロロヒドリンの、ポリアミノアミドの第二級アミン基に対するモル比0.5:1~1.8:1の範囲で反応させる。このようなポリマーは、例えば、米国特許第3227615号及び同第2961347号に記載されている。
【0086】
(9)アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリル-アンモニウムのシクロポリマー、例えば、鎖の主要構成要素として、以下の式(Ia)及び(Ib)の単位から選ばれる少なくとも1つの単位を含むホモポリマー及びコポリマー:
【0087】
【化3】
【0088】
[式中、
k及びtは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1に等しく、和k+tは、1に等しく、
R12は、水素及びメチル基から選ばれ、
R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~6個の炭素原子を含むアルキル基、アルキル基が例えば1~5個の炭素原子を含むヒドロキシアルキル基、及び低級(C1~C4)アミドアルキル基から選ばれ、又はR10及びR11は、それらが結合している窒素原子と一緒になって、複素環式基、例えばピペリジニル及びモルホリニルを形成してもよく、
Y'は、アニオン、例えば臭化物イオン、塩化物イオン、酢酸イオン、ホウ酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、硫酸水素イオン、亜硫酸水素イオン、硫酸イオン及びリン酸イオンである]
これらのポリマーは、例えば仏国特許第2080759号及びその追加特許第2190406号に記載されている。
【0089】
一実施形態では、R10及びR11は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれる。
【0090】
このようなポリマーの例には、(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、例えばCALGON社により名称「MERQUAT(登録商標)100」で販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドホモポリマー(及び低質量平均分子量のそのホモログ)、並びに名称「MERQUAT(登録商標)550」で販売されているジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない。
【0091】
(10)式(II)の少なくとも1つの繰り返し単位を含む第四級ジアンモニウムポリマー:
【0092】
【化4】
【0093】
{式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を含む脂肪族、脂環式及びアリール脂肪族基、並びに低級ヒドロキシアルキル脂肪族基から選ばれ、或いは、R13、R14、R15及びR16は、それらが結合している窒素原子と一緒になって又は別々に、窒素以外の第2のヘテロ原子を任意選択で含む複素環を形成してもよく、或いは、R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、ニトリル基、エステル基、アシル基、アミド基、-CO-O-R17-E基及び-CO-NH-R17-E基(式中、R17は、アルキレン基であり、Eは、第四級アンモニウム基である)から選ばれる少なくとも1つの基で置換されている直鎖状又は分枝状のC1~C6アルキル基から選ばれ、
A1及びB1は、同一であっても異なっていてもよく、2~20個の炭素原子を含むポリメチレン基から選ばれ、これは、直鎖状又は分枝状、飽和又は不飽和であってよく、これは、芳香環、酸素、硫黄、スルホキシド基、スルホン基、ジスルフィド基、アミノ基、アルキルアミノ基、ヒドロキシル基、第四級アンモニウム基、ウレイド基、アミド基及びエステル基から選ばれる少なくとも1つの要素を、主鎖中に、連結されて又は挿入されて含んでよく、
X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンであり、
A1、R13及びR15は、それらが結合している2個の窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成してもよく、
A1が、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基から選ばれる場合、B1は、以下から選ぶことができ:
-(CH2)n--CO-E'-OC-(CH2)n-
[式中、E'は、
a)式-O-Z-O-(式中、Zは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基、及び以下の式の基:
-(CH2-CH2-O)x-CH2-CH2-
-[CH2-CH(CH3)-O]y-CH2-CH(CH3)-
(式中、x及びyは、同一であっても異なっていてもよく、定義された独自の重合度を表す1~4の範囲の整数、及び平均重合度を表す1~4の範囲の数から選ばれる)
から選ばれる)のグリコール残基、
b)ビス-第二級ジアミン残基、例えばピペラジン誘導体、
c)式-NH-Y-NH-(式中、Yは、直鎖状又は分枝状の炭化水素系基及び二価基-CH2-CH2-S-S-CH2-CH2-から選ばれる)のビス-第一級ジアミン残基、並びに
d)式-NH-CO-NH-のウレイレン基
から選ばれる]}
【0094】
少なくとも1つの実施形態では、X-は、アニオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオンである。
【0095】
このタイプのポリマーは、例えば、仏国特許第2320330号、同第2270846号、同第2316271号、同第2336434号及び同第2413907号、並びに米国特許第2273780号、同第2375853号、同第2388614号、同第2454547号、同第3206462号、同第2261002号、同第2271378号、同第3874870号、同第4001432号、同第3929990号、同第3966904号、同第4005193号、同第4025617号、同第4025627号、同第4025653号、同第4026945号及び同第4027020号に記載されている。
【0096】
このようなポリマーの非限定的な例には、式(III):
【0097】
【化5】
【0098】
[式中、
R13、R14、R15及びR16は、同一であっても異なっていてもよく、1~4個の炭素原子を含むアルキル基及びヒドロキシアルキル基から選ばれ、n及びpは、同一であっても異なっていてもよく、2~20の範囲の整数であり、X-は、無機酸又は有機酸に由来するアニオンである]
の少なくとも1つの繰り返し単位を含むものが挙げられる。
【0099】
(11)式(IV)の単位を含むポリ第四級アンモニウムポリマー:
【0100】
【化6】
【0101】
[式中、
R18、R19、R20及びR21は、同一であっても異なっていてもよく、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、β-ヒドロキシエチル基、β-ヒドロキシプロピル基、-CH2CH2(OCH2CH2)pOH基(式中、pは、0~6の範囲の整数から選ばれる)から選ばれ、但し条件としてR18、R19、R20及びR21が同時に水素であることはなく、
r及びsは、同一であっても異なっていてもよく、1~6の範囲の整数から選ばれ、
qは、0~34の範囲の整数から選ばれ、
X-は、アニオン、例えばハロゲン化物イオンであり、
Aは、ジハライドの基及び-CH2-CH2-O-CH2-CH2-の基から選ばれる]
【0102】
このような化合物は、例としては欧州特許出願第0122324号に記載されている。
【0103】
(12)ビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマー。
好適なカチオン性ポリマーの他の例には、カチオン性タンパク質及びカチオン性タンパク質加水分解物、ポリアルキレンイミン、例えばポリエチレンイミン、ビニルピリジン単位及びビニルピリジニウム単位から選ばれる単位を含むポリマー、ポリアミンとエピクロロヒドリンとの縮合物、第四級ポリウレイレン、並びにキチン誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0104】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1種のカチオン性ポリマーは、第四級アンモニウム基を含むセルロースエーテル誘導体、例えばUNION CARBIDE CORPORATION社により名称「JR 400」で販売されている製品、カチオン性シクロポリマー、例としてはCALGON社により名称MERQUAT(登録商標)100、MERQUAT(登録商標)550及びMERQUAT(登録商標)Sで販売されているジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー及びコポリマー、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩で修飾されたグアーガム、並びにビニルピロリドンとビニルイミダゾールとの第四級ポリマーから選ばれる。
【0105】
(13)ポリアミン
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基を有する、ホモポリマー又はコポリマーであってよい(コ)ポリアミンを使用することもまた可能である。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってよい。アミノ基は、(コ)ポリアミンのポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。
【0106】
(コ)ポリアミンの例として、キトサン、(コ)ポリアリルアミン、(コ)ポリビニルアミン、(コ)ポリアニリン、(コ)ポリビニルイミダゾール、(コ)ポリジメチルアミノエチレンメタクリレート、(コ)ポリビニルピリジン、例えば(コ)ポリ-1-メチル-2-ビニルピリジン、(コ)ポリイミン、例えば(コ)ポリエチレンイミン、(コ)ポリピリジン、例えば(コ)ポリ(第四級ピリジン)、(コ)ポリビグアニド、例えば(コ)ポリアミノプロピルビグアニド、(コ)ポリリジン、(コ)ポリオルニチン、(コ)ポリアルギニン、(コ)ポリヒスチジン、アミノデキストラン、アミノセルロース、アミノ(コ)ポリビニルアセタール、及びそれらの塩を挙げることができる。
【0107】
(コ)ポリアミンとして、(コ)ポリリジンを使用することが好ましい。ポリリジンは周知である。ポリリジンは、細菌発酵によって生成されうるL-リジンの天然ホモポリマーであることができる。ポリリジンは、α-ポリリジン又はε-ポリリジンであってよい。例えば、ポリリジンは、ε-ポリリジン、例えば、食品中の天然保存料として典型的に使用されるε-ポリ-L-リジンであることができる。ポリリジンは、水、プロピレングリコール及びグリセロール等の極性溶媒に可溶である高分子電解質である。ポリリジンは、ポリD-リジン及びポリL-リジン等の多様な形態で市販されている。ポリリジンは、塩及び/又は溶液の形態にあることができる。
【0108】
(14)カチオン性ポリアミノ酸
カチオン性ポリマーとして、複数のアミノ基及びカルボキシル基を有する、カチオン性ホモポリマー又はコポリマーでありうるカチオン性ポリアミノ酸を使用することが可能でありうる。アミノ基は、第一級、第二級、第三級又は第四級アミノ基であってよい。アミノ基は、カチオン性ポリアミノ酸のポリマー主鎖、又は存在する場合はペンダント基中に存在してよい。カルボキシル基は、存在する場合はカチオン性ポリアミノ酸のペンダント基中に存在してよい。
【0109】
カチオン性ポリアミノ酸の例として、カチオン化コラーゲン、カチオン化ゼラチン、ステアルジモニウム(steardimoium)ヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コムギタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解コンキオリンタンパク質、ステアルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質、ヒドロキシプロピルトリモニウム加水分解ダイズタンパク質、ココジモニウムヒドロキシプロピル加水分解ダイズタンパク質等を挙げることができる。
【0110】
以下の説明は、カチオン性ポリマーの好ましい実施形態に関する。
【0111】
カチオン性ポリマーがカチオン性デンプンから選択されることが好ましい場合がある。
【0112】
カチオン性デンプンの例として、2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウム塩(例えば塩化物)で修飾されたデンプン、例えば、Ondeo社から名称SENSOMER Cl-50、又はIngredion社から名称Pencare(商標)DP 1015で販売されている、INCI名によりデンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドとして知られる製品を挙げることができる。
【0113】
カチオン性ポリマーがカチオン性ガムから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0114】
ガムは、例えば、カッシアガム、カラヤガム、コンニャクガム、トラガカントガム、タラガム、アカシアガム及びアラビアガムからなる群から選択することができる。
【0115】
カチオン性ガムの例には、カチオン性ポリガラクトマンナン誘導体、例えばグアーガム誘導体及びカッシアガム誘導体、例えばCTFA:グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルグアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド及びカッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドが挙げられる。グアーヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Rhodia Inc.社からJaguar(商標)の商標名シリーズで、及びAshland Inc.社からN-Hanceの商標名シリーズで市販されている。カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリドは、Lubrizol Advanced Materials, Inc.社からSensomer(商標)CT-250及びSensomer(商標)CT-400の商標名、又はAshland Inc.社からClearHance(商標)で市販されている。
【0116】
カチオン性ポリマーがキトサンから選択されることもまた好ましい場合がある。
【0117】
カチオン性ポリマーが、アルキルジアリルアミンのシクロポリマー、及びジアルキルジアリルアンモニウムのシクロポリマー、例えば(コ)ポリジアリルジアルキルアンモニウムクロリド、(コ)ポリアミン、例えば(コ)ポリリジン、カチオン性(コ)ポリアミノ酸、例えばカチオン化コラーゲン、カチオン性セルロースポリマー、並びにこれらの塩からなる群から選択されることが、より好ましい場合がある。
【0118】
カチオン性ポリマーが、ポリリジン、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-67、デンプンヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、カッシアヒドロキシプロピルトリモニウムクロリド、キトサン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが、更により好ましい場合がある。
【0119】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってよい。
【0120】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0121】
本発明による組成物中のカチオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%であってよい。
【0122】
(アニオン性ポリマー)
アニオン性ポリマーは、正電荷密度を有する。アニオン性ポリマーの電荷密度は、アニオン性ポリマーが合成アニオン性ポリマーである場合、0.1meq/g~20meq/g、好ましくは1~15meq/g、より好ましくは4~10meq/gであってよく、アニオン性ポリマーの平均置換度は、アニオン性ポリマーが天然アニオン性ポリマーである場合、0.1~3.0、好ましくは0.2~2.7、より好ましくは0.3~2.5であってよい。
【0123】
アニオン性ポリマーの分子量が、300以上、好ましくは1,000以上、更により好ましくは5,000以上、更により好ましくは10,000以上、更により好ましくは50,000以上、更により好ましくは100,000以上、更により好ましくは1,000,000以上であることが、好ましい場合がある。
【0124】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味しうる。
【0125】
本発明によれば、アニオン性ポリマーは、ヒアルロン酸、その塩、及びその誘導体から選択される。
【0126】
ヒアルロン酸は、化学式:
【0127】
【化7】
【0128】
によって表すことができる。
【0129】
本発明の文脈では、用語「ヒアルロン酸」は、具体的には、式:
【0130】
【化8】
【0131】
のヒアルロン酸の基本単位を包含する。
【0132】
これは、二糖ダイマー、すなわちD-グルクロン酸及びN-アセチルグルコサミンを含むヒアルロン酸の最小画分である。
【0133】
用語、ヒアルロン酸の「誘導体」はまた、本発明の文脈では、380から13,000,000ダルトンの間の範囲でありうる分子量(MW)を有する、交互β(1,4)及びβ(1,3)グルコシド結合を介して鎖内で一緒に結合される上に挙げたポリマー単位を含む直鎖状ポリマーを含む。この分子量は、主に、ヒアルロン酸が得られる源に、及び/又は調製方法に依存する。
【0134】
用語、ヒアルロン酸の「塩」は、本発明の文脈では、ヒアルロン酸の任意の塩を含む。塩として、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0135】
自然状態では、ヒアルロン酸は、真皮及び上皮組織等の脊椎動物の臓器の結合組織の基体中の細胞周囲ゲル中に存在し、具体的には、表皮中、関節の滑液中、硝子体液中、ヒト臍帯中、及び鶏冠突起中に存在する。
【0136】
そのため、用語「ヒアルロン酸」は、特に上で想起される分子量範囲内の分子量を有するヒアルロン酸の全画分又はサブ単位を含む。
【0137】
本発明の文脈では、炎症活性を有さないヒアルロン酸分画が好ましくは使用される。
【0138】
様々なヒアルロン酸画分の例示を介して、ヒアルロン酸の列挙される生物活性をその分子量に応じて見直している、文献「Hyaluronan fragments: an information-rich system」、R. Sternら、European Journal of Cell Biology 58 (2006年) 699~715頁を参考にしてもよい。
【0139】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に包含される使用に好適なヒアルロン酸画分は、50kDaから5,000kDaの間、特定すると100kDaから5,000kDaの間、とりわけ400kDaから5,000kDaの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、高分子量ヒアルロン酸である。
【0140】
或いは、本発明に包含される使用にも好適でありうるヒアルロン酸画分は、50kDaから400kDaの間の分子量を有する。この場合、使用される用語は、中間分子量ヒアルロン酸である。
【0141】
再び、或いは、本発明に包含される使用に好適でありうるヒアルロン酸画分は、50kDa未満の分子量を有する。この場合、使用される用語は、低分子量ヒアルロン酸である。
【0142】
2種以上のヒアルロン酸又はその塩の組み合わせ、例えば、高分子量ヒアルロン酸又はその塩と中間分子量ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせ、高分子量ヒアルロン酸又はその塩と低分子量ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせ、及び中間分子量ヒアルロン酸又はその塩と低分子量ヒアルロン酸又はその塩との組み合わせを使用することが、好ましい場合がある。
【0143】
最後に、用語、ヒアルロン酸の「誘導体」はまた、ヒアルロン酸エステル、特に酸官能基のカルボン酸基の全て又は一部がオキシエチレン化アルキル又はアルコールでエステル化されているものであって、1~20個の炭素原子を含有する、特にヒアルロン酸のD-グルクロン酸のレベルにおける置換度が0.5~50%の範囲であるものも含む。
【0144】
特に、ヒアルロン酸のメチル、エチル、n-プロピル、n-ペンチル、ベンジル及びドデシルエステルを挙げることができる。このようなエステルは、詳細には、D. Campocciaら、「Semisynthetic resorbable materials from hyaluronan esterification」、Biomaterials 19 (1998年) 2101~2127頁に記載されてきた。
【0145】
ヒアルロン酸誘導体は、例えば、アセチル化ヒアルロン酸又はその塩であってよい。
【0146】
上に示した分子量はまた、ヒアルロン酸エステルにも有効である。
【0147】
ヒアルロン酸は、具体的には、Hyactive社により商品名CPN(MW:10~150kDa)で、Soliance社により商品名Cristalhyal(MW:1.1×106)で、Bioland社により名称Nutra HA(MW:820,000Da)で、Bioland社により名称Nutra AF(MW:69,000Da)で、Bioland社により名称Oligo HA(MW:6100Da)で、或いはVam Farmacos Metica社により名称D Factor(MW:380Da)で供給されているヒアルロン酸でありうる。
【0148】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってよい。
【0149】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0150】
本発明による組成物中のアニオン性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%であってよい。
【0151】
(両性ポリマー)
両性ポリマーは、正電荷密度と負電荷密度との両方を有する。
【0152】
両性ポリマーの正電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであってよい。
【0153】
両性ポリマーの負電荷密度は、0.01meq/g~20meq/g、好ましくは0.05~15meq/g、より好ましくは0.1~10meq/gであってよい。
【0154】
両性ポリマーの分子量が、500以上、好ましくは1,000以上、より好ましくは10,000以上、更により好ましくは100,000以上であることが好ましい場合がある。
【0155】
両性ポリマーの分子量が、1,000,000以下、好ましくは900,000以下、より好ましくは800,000以下であることが好ましい場合がある。
【0156】
説明において別段の定義がない限り、「分子量」は、数平均分子量を意味しうる。
【0157】
本発明によれば、両性ポリマーは、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される。
【0158】
カチオン化ヒアルロン酸は、その分子内に、少なくとも1つのカチオン性基、例えばアンモニウム基を含む。カチオン性基は、塩の対カチオンを示さず、その理由は、対カチオンがヒアルロン酸の分子内にないためである。
【0159】
塩として、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0160】
カチオン化ヒアルロン酸は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基含有基を有してもよい。
【0161】
カチオン化ヒアルロン酸及び/又はその塩は、以下の一般式(1):
【0162】
【化9】
【0163】
[式中、
R4~R9は、個々に、水素原子又は第四級アンモニウム基含有基(R4~R9の全てが水素原子を表す事例を除く)を表し、nは、2~5,000の整数を表す]
によって表される構造を有しうる。
【0164】
上記の一般式(1)中でR4~R9によって表される第四級アンモニウム基含有基の例には、以下の一般式(2):
【0165】
【化10】
【0166】
[式中、
R1~R3は、個々に、炭化水素基を表し、X-は、一価のアニオンを表す]
によって示される基が挙げられる。
【0167】
上記の一般式(2)中でR1~R3によって表される炭化水素基の例には、直鎖状又は分枝状のアルキル基、不飽和の炭化水素基及び芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中で、アルキル基が好ましい。アルキル基の例には、1~30個(好ましくは1~6個)の炭素原子を有するアルキル基が挙げられる。R1~R3によって表される炭化水素基が、1~3個の炭素原子を有するアルキル基であることが、より好ましい。
【0168】
上記の一般式(2)中でX-によって表される一価のアニオンの例には、ハロゲンイオン、例えばフッ素イオン、臭素イオン、塩素イオン及びヨウ素イオンが挙げられる。
【0169】
第四級アンモニウム基含有基は、原材料として使用されるヒアルロン酸及び/又はその塩(本明細書で以降、「原材料ヒアルロン酸及び/又はその塩」と称されうる)中に含まれるカルボキシル基の水素原子を、第四級アンモニウム基含有基に置き換えることによって導入することができる。この場合、第四級アンモニウム基含有基は、本実施形態によるカチオン化ヒアルロン酸及び/又はその塩中に含まれる(-C(-O)O--)基の酸素原子に結合される。第四級アンモニウム基含有基が本実施形態によるカチオン化ヒアルロン酸及び/又はその塩中に含まれる(-C(-O)O-)基の酸素原子に結合されているという事実は、核磁気共鳴(13C NMR)スペクトルの化学シフトを分析することにより決定される、第四級アンモニウム基含有基が酸素原子を介して結合されている-C(-O)O-基の炭素原子に起因するピークの存在によって確認することができる。
【0170】
具体的には、第四級アンモニウム基含有基は、原材料ヒアルロン酸並びに/又はその塩のカルボキシル基(及び/若しくはヒドロキシル基)を、第四級アンモニウム基を含有するカチオン化剤と反応させることによって得ることができる。カチオン化剤が、以下の一般式(3)によって示される2,3-エポキシプロピルトリアルキルアンモニウムハロゲン化物、及び以下の一般式(4)によって示される3-ハロゲノ-2-ヒドロキシプロピルトリアルキルアンモニウムハロゲン化物のうちの少なくとも1種であることが好ましい。原材料ヒアルロン酸及び/又はその塩の、カチオン化剤との反応は、本明細書で以降、製造方法において記載される。
【0171】
【化11】
【0172】
[式中、
R1~R3は、一般式(2)について定義したものと同一であり、Xはハロゲン原子を表す]
【0173】
【化12】
【0174】
[式中、
R1~R3は、一般式(2)について定義したものと同一であり、X及びYは、個々に、ハロゲン原子を表す]
【0175】
上記の一般式(3)及び(4)中でX及びYによって表されるハロゲン原子の例には、フッ素原子、臭素原子、塩素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0176】
カチオン化ヒアルロン酸は、少なくとも1つの第四級アンモニウム基含有基を有してよく、且つ0.05~0.6、好ましくは0.1~0.5、より好ましくは0.15~0.4のカチオン化度を有する。
【0177】
本実施形態によるカチオン化ヒアルロン酸及び/又はその塩のカチオン化度(すなわち、第四級アンモニウム基含有基での置換度)は、原材料ヒアルロン酸ナトリウムの窒素含有量、及びカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有量を、セミミクロケルダール法によって算出し、窒素含有量の増加に基づく以下の数式によりカチオン化度を算出することによって決定することができる。
【0178】
原材料ヒアルロン酸ナトリウムの窒素含有量をNN(%)と称し、(x)のカチオン化度を有するカチオン化ヒアルロン酸の窒素含有量をNS(%)と称するとき、窒素含有量の増加(NS-NN)とカチオン化度(x)との間の関係は、以下の数式:
NS-NN(%)
=[14x/(カチオン化ヒアルロン酸の二糖類単位の分子量)]×100
=[14x/(原材料ヒアルロン酸ナトリウムの二糖類単位の分子量)+129.5x]×100
=[14x/(401.3+129.5x)]×100
によって示される。
【0179】
したがって、カチオン化度(すなわち、第四級アンモニウム基含有基での置換度)は、以下の数式:
カチオン化度(x)=[(NS-NN)×401.3]/[1400-129.5*(NS-NN)]
よって算出することができる。
【0180】
原材料ヒアルロン酸が未知であるときのカチオン化ヒアルロン酸のカチオン化度は、原材料ヒアルロン酸ナトリウムが、99%以上の純度を有するヒアルロン酸ナトリウムであるという仮定において、上記の数式により算出することができる。
【0181】
ヒアルロン酸中の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上の、及び/又は50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下のアニオン性基が、カチオン性基で、好ましくは第四級アンモニウム基含有基で、より好ましくは上記の一般式(2)によって表される第四級アンモニウム基含有基で置き換えられることが可能である。
【0182】
カチオン化ヒアルロン酸として、日本のキユーピー株式会社によるHyaloveil及びHyaloveul-MPFとして市販されているヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウムを挙げることができる。
【0183】
本発明による組成物中の両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であってよい。
【0184】
本発明による組成物中の両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0185】
本発明による組成物中の両性ポリマーの量は、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.03質量%~10質量%、より好ましくは0.05質量%~5質量%であってよい。
【0186】
(2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩、すなわち、少なくとも1種の、2つ以上の酸解離定数を有する非ポリマー酸又はその塩を含むことができる。pKa値(酸解離定数)は、当業者に周知であり、25℃等の恒温にて決定されるべきである。
【0187】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、(a)ポリイオンコンプレックス中に組み入れることができる。2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、架橋剤、具体的にはカチオン性ポリマー及び/又は両性ポリマーのためのアニオン性架橋剤として機能することができる。
【0188】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと共に使用されることが好ましい。
【0189】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、酸が、2種以上のモノマーを重合することによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー酸は、ポリカルボン酸等の2種以上のモノマーを重合することによって得られる酸には相当しない。
【0190】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の分子量が、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0191】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩のタイプに限定はない。2種以上の異なるタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩を組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は異なるタイプの、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩の組み合わせを使用することができる。
【0192】
用語「塩」は、本明細書では、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸に、好適な塩基を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸と塩基との反応から得ることができる。塩として、金属塩、例えば、Na及びK等のアルカリ金属との塩、並びにMg及びCa等のアルカリ土類金属との塩、並びにアンモニウム塩を挙げることができる。
【0193】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、有機酸又はその塩、好ましくは親水性又は水溶性の有機酸又はその塩であってよい。
【0194】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、カルボン酸基、硫酸基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの酸基を有しうる。
【0195】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、非ポリマー多価酸であってよい。
【0196】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸は、ジカルボン酸、ジスルホン酸及び二リン酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0197】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、オキサロ酢酸、酒石酸、及びそれらの塩;アスパラギン酸、グルタミン酸、及びそれらの塩;テレフタリリデンジカンファースルホン酸又はその塩(メギゾリルSX)、ベンゾフェノン-9;フィチン酸及びその塩;赤色2号(アマランス)、赤色102号(ニューコクシン)、黄色5号(タルトラジン)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)、赤色201号(リソールルビンB)、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色227号(ファストアシッドマジェンタ)、黄色203号(キノリンイエローWS)、緑色201号(アリザニンシアニングリーンF)、緑色204号(ピラニンコンク)、緑色205号(ライトグリーンSFイエロー)、青色203号(パテントブルーCA)、青色205号(アルファズリンFG)、赤色401号(ビオラミンR)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、赤色502号(ポンソー3R)、赤色503号(ポンソーR)、赤色504号(ポンソーSX)、緑色401号(ナフトールグリーンB)、緑色402号(ギネアグリーンB)及び黒色401号(ナフトールブルーブラック);葉酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの塩;シスチン及びその塩;EDTA及びその塩;グリチルリチン及びその塩;並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0198】
2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩が、テレフタリリデンジカンファースルホン酸及びその塩(メギゾリルSX)、黄色6号(サンセットイエローFCF)、アスコルビン酸、フィチン酸、及びそれらの塩、並びにこれらの混合物からなる群から選択されることが、好ましい場合がある。
【0199】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0200】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0201】
本発明による組成物中の2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってよい。
【0202】
(2つ以上の塩基解離定数を有する非ポリマー塩基)
本発明による組成物は、少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩、すなわち、少なくとも1種の、2つ以上の塩基解離定数を有する非ポリマー塩基又はその塩を含んでよい。pKb値(塩基解離定数)は当業者に周知であり、25℃等の恒温にて決定されるべきである。
【0203】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩は、(a)ポリイオンコンプレックス中に組み入れることができる。2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基は、架橋剤、具体的にはアニオン性ポリマー及び/又は両性ポリマーのためのカチオン性架橋剤として機能することができる。
【0204】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩が、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと共に使用されることが好ましい。
【0205】
用語「非ポリマー」は、本明細書では、塩基が、2種以上のモノマーを重合させることによって得られるものではないことを意味する。したがって、非ポリマー塩基は、ポリアリルアミン等の2種以上のモノマーを重合させることによって得られる塩基には相当しない。
【0206】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩の分子量が、1000以下、好ましくは800以下、より好ましくは700以下であることが好ましい。
【0207】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩のタイプに、限定はない。2つ以上のpKb値を有する2種以上の異なるタイプの非ポリマー塩基又はその塩を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩、又は異なるタイプの、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩の組み合わせを使用することができる。
【0208】
用語「塩」は、本明細書では、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基に、好適な酸を添加することによって形成される塩を意味し、これは、当業者に公知の方法に従って、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基を、酸と反応させることから得ることができる。塩として、アンモニウム塩、例えば、HCl及びHNO3等の無機酸との塩、並びにカルボン酸及びスルホン酸等の有機酸との塩を挙げることができる。
【0209】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩は、有機塩基又はその塩、好ましくは親水性若しくは水溶性の有機塩基又はその塩であってよい。
【0210】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基は、アミノ基、グアニジン基、ビグアニド基、イミダゾール基、イミノ基、ピリジル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも2つの塩基性基を有しうる。
【0211】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基は、非ポリマージアミン、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサンジアミン、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体、非ポリマーポリアミン、例えばスペルミン及びスペルミジン、塩基性アミノ酸、並びにこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0212】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩は、アルギニン、リジン、ヒスチジン、システイン、シスチン、チロシン、トリプトファン、オルニチン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0213】
2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩が、アルギニン、リジン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0214】
本発明による組成物中の2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0215】
本発明による組成物中の2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0216】
本発明による組成物中の2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基又はその塩の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってよい。
【0217】
[親油性抗酸化剤]
本発明による組成物は、(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤を含む。2種以上の親油性抗酸化剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの親油性抗酸化剤、又は異なるタイプの親油性抗酸化剤の組み合わせを使用することができる。
【0218】
本発明によれば、抗酸化剤は、皮膚中に存在しうる様々なラジカル形態を除去することができる化合物又は物質であり、好ましくは抗酸化剤は、存在する様々なラジカル形態の全てを同時に除去する。
【0219】
(b)親油性抗酸化剤は、n-ブタノールと水との間の抗酸化剤の分配係数が、>1、より好ましくは>10、更により好ましくは>100であることを意味する。
【0220】
(b)親油性抗酸化剤は、疎水性であり、アスコルビン酸又はグルタチオン等の親水性抗酸化剤ではない。
【0221】
(b)親油性抗酸化剤として、分子内にヒンダードフェノール構造又はセミヒンダードフェノール構造を有するフェノール性抗酸化剤を挙げることができる。このような化合物の特定の例として、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシベンゼンプロパン酸(INCI名テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチルを有する)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、モノ-又はジ-又はトリ-(α-メチルベンジル)フェノール、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、トリス[N-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)]イソシアヌレート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、ブチリデン-1,1ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナト]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2-チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-tert-ブチル-6-(3'-tert-ブチル-5'-メチル-2'-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート、4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート及び1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を挙げることができる。
【0222】
(b)親油性抗酸化剤として、BHA(ブチル化ヒドロキシルアニソール)及びBHT(ブチル化ヒドロキシルトルエン)、ビタミンE(又はトコフェロール及びトコトリエノール)及びその誘導体、例えばホスフェート誘導体、例としては昭和電工株式会社により販売されているTPNA(登録商標)、コエンザイムQ10(又はユビキノン)、イデベノン、一定のカロテノイド、例えばルテイン、アスタキサンチン、β-カロテン、ポリフェノール、フェノール酸及び誘導体(例えばクロロゲン酸)、及びポリフェノールの主なサブグループを表すフラボノイドを挙げることができる。
【0223】
フラボノイドの中で、とりわけ、カルコン、ヒドロキシル化カルコン及びその還元誘導体(とりわけ特許FR2608150に記載のもの)、例としてはフロレチン、ネオヘスペリジン、フロリジン、アスパラチン等、フラバノン、例としてはヘスペレチン及びナリンジン、フラボノール、例としてはケルセチン、ルチン、フラバノール、例としてはカテキン、EGCG、フラボン、例としてはアピゲニジン、並びに最後にアントシアンを挙げることができる。タンニンもまた更に挙げることができる。更に参照しうるのは、特許出願FR699818、FR2706478、FR2907339、FR2814943及びFR2873026に記載されている化合物である。
【0224】
ポリフェノール化合物は、とりわけ、緑茶、リンゴ、ホップ、グアバ、ココア、又はクリ、オーク、セイヨウトチノキ若しくはハシバミ等の木の抽出物から選ばれる植物抽出物に由来してよい。例えば、米国特許第4698360号、米国特許第6372266号及び米国特許第5720956号に記載されている方法に従って得られるフランスカイガンショウ樹皮の抽出物を使用することもまた可能である。こうした抽出物の例として、INCI名がフランスカイガンショウ(樹皮の抽出物)でCTFA名がマツ(フランスカイガンショウ)の樹皮の抽出物と称される化合物を引用することができる。それは、具体的には、BIOLANDES AROMES社及び/又はHORPHAG Research社により名称PYCNOGENOL(登録商標)で市販されているフランスカイガンショウ樹皮の抽出物であってよい。LAYN Natural Ingredients社からのマツ樹皮(Maritime)の抽出物、Blue California社からのPine Bark、更にはD.R.T.(Les Derives Resiniques et Terpeniques)社からのOligopin(登録商標)もまた、引用することができる。
【0225】
本発明の文脈では、用語「ポリフェノール化合物」は、このようにまた、これらのポリフェノール化合物に富む植物抽出物それ自体も包含する。
【0226】
また挙げることができる(b)親油性抗酸化剤には、ジチオラン、例としてはアスパラガス酸又はその誘導体、例としては珪質のジチオラン誘導体、とりわけ、例えば特許出願FR2908769に記載されているものがある。
【0227】
また挙げることができる(b)親油性抗酸化剤には、以下のものがある:
グルタチオン及びその誘導体(GSH及び/又はGSHOEt)、例えばグルタチオンアルキルエステル(例えば特許出願FR2704754及びFR2908769に記載のもの);並びに
システイン及びその誘導体、例えばN-アセチルシステイン又はL-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸である。更に参照できるのは、特許出願FR2877004及びFR2854160に記載のシステイン誘導体;並びに
フェルラ酸及びその誘導体(エステル、塩等)である。特に挙げることができるのは、フェルラ酸とC1~C30アルコールとのエステル、特定するとフェルラ酸メチル、フェルラ酸エチル、フェルラ酸イソプロピル、フェルラ酸オクチル及びフェルラ酸オリザニルであり;
酸化ストレスに対して保護するための一定の酵素、例えばカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、ラクトペルオキシダーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ及びキノンリダクターゼ;
ベンジルシクラノン;置換ナフタレノン;ピドレート(とりわけ特許出願EP0511118に記載されているもの);コーヒー酸及びその誘導体、ガンマオリザノール;メラトニン、スルホラファン及びそれを含有する抽出物(クレスを除く);
ジイソプロピルの、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸とのエステル、とりわけ特許出願WO94/11338、FR2698095、FR2737205又はEP0755925に記載のもの、
並びに
デフェロキサミン(又はデスフェラール)で、特許出願FR2825920に記載のもの。
【0228】
好ましくは使用される(b)親油性抗酸化剤は、カルコン、より特定するとフロレチン又はネオフェスペリジン、N,N'-ビス(ベンジル)エチレンジアミン-N,N'-二酢酸のジイソプロピルエステル、又はPYCNOGENOL(登録商標)等のフランスカイガンショウ樹皮の抽出物である。
【0229】
(b)親油性抗酸化剤の例として、テトラ-ジ-t-ブチルヒドロキシヒドロケイ皮酸ペンタエリスリチル、ノルジヒドログアヤレチン酸、没食子酸プロピル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、パルミチン酸アスコルビル、トコフェロール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0230】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であってよい。
【0231】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であってよい。
【0232】
本発明による組成物中の(b)親油性抗酸化剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~15質量%、好ましくは0.005質量%~10質量%、より好ましくは0.01質量%~5質量%であってよい。
【0233】
[水]
本発明による組成物は、(c)水を含む。
【0234】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であってよい。
【0235】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、99質量%以下、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下であってよい。
【0236】
(c)水の量は、組成物の総質量に対して、10質量%~99質量%、好ましくは30質量%~97質量%、より好ましくは50質量%~95質量%であってよい。
【0237】
[界面活性剤]
本発明による組成物は、(d)少なくとも1種の界面活性剤を更に含んでよい。2種以上の界面活性剤を組み合わせて使用してよい。そのため、単一のタイプの界面活性剤、又は異なるタイプの界面活性剤の組み合わせを使用することができる。
【0238】
本発明において使用される界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤からなる群から選択することができる。
【0239】
(アニオン性界面活性剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアニオン性界面活性剤を含んでよい。2種以上のアニオン性界面活性剤を組み合わせて使用してよい。
【0240】
アニオン性界面活性剤が、(C6~C30)アルキル硫酸塩、(C6~C30)アルキルエーテル硫酸塩、(C6~C30)アルキルアミドエーテル硫酸塩、アルキルアリールポリエーテル硫酸塩、モノグリセリド硫酸塩;(C6~C30)アルキルスルホン酸塩、(C6~C30)アルキルアミドスルホン酸塩、(C6~C30)アルキルアリールスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩;(C6~C30)アルキルリン酸塩;(C6~C30)アルキルスルホコハク酸塩、(C6~C30)アルキルエーテルスルホコハク酸塩、(C6~C30)アルキルアミドスルホコハク酸塩;(C6~C30)アルキルスルホ酢酸塩;(C6~C24)アシルサルコシン酸塩;(C6~C24)アシルグルタミン酸塩;(C6~C30)アルキルポリグリコシドカルボン酸エーテル;(C6~C30)アルキルポリグリコシドスルホコハク酸塩;(C6~C30)アルキルスルホコハク酸塩;(C6~C24)アシルイセチオン酸塩;N-(C6~C24)アシルタウリン酸塩;C6~C30脂肪酸塩;ヤシ油酸塩又は水添ヤシ油酸塩;(C8~C20)アシル乳酸塩;(C6~C30)アルキル-D-ガラクトシドウロン酸塩;ポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルエーテルカルボン酸塩;ポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルアリールエーテルカルボン酸塩;及びポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルアミドエーテルカルボン酸塩;並びに対応する酸の形態からなる群から選択されることが好ましい。
【0241】
少なくとも1つの実施形態では、アニオン性界面活性剤は塩の形態にあり、例えばアルカリ金属、例としてはナトリウムの塩;アルカリ土類金属、例としてはマグネシウムの塩;アンモニウム塩;アミン塩;及びアミノアルコール塩である。条件によっては、アニオン性界面活性剤は酸の形態にあってもよい。
【0242】
アニオン性界面活性剤が、(C6~C30)アルキル硫酸塩、(C6~C30)アルキルエーテル硫酸塩、又は塩化されている若しくは塩化されていないポリオキシアルキレン化(C6~C30)アルキルエーテルカルボン酸の塩から選択されることが、より好ましい。
【0243】
(両性界面活性剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の両性界面活性剤を含んでよい。2種以上の両性界面活性剤を組み合わせて使用してよい。
【0244】
両性又は双性イオン性界面活性剤は、例えば(非限定的な一覧)、アミン誘導体、例えば脂肪族の第二級又は第三級アミン、及び任意選択で四級化されているアミン誘導体とすることができ、そこで脂肪族基は、8~22個の炭素原子を含み、少なくとも1つの水可溶化アニオン性基(例えば、カルボキシレート、スルホネート、スルフェート、ホスフェート又はホスホネート)を含有する、直鎖又は分枝鎖である。
【0245】
両性界面活性剤は、好ましくは、ベタイン及びアミドアミンカルボキシル化誘導体からなる群から選択することができる。
【0246】
両性界面活性剤が、ベタインタイプの界面活性剤から選択されることが好ましい。
【0247】
ベタインタイプ両性界面活性剤は、好ましくは、アルキルベタイン、アルキルアミドアルキルベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン及びアルキルアミドアルキルスルホベタイン、具体的には、(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルベタイン、スルホベタイン及び(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタインからなる群から選択される。一実施形態では、ベタインタイプの両性界面活性剤は、(C8~C24)アルキルベタイン、(C8~C24)アルキルアミド(C1~C8)アルキルスルホベタイン、スルホベタイン及びホスホベタインから選ばれる。
【0248】
挙げることができる非限定的な例には、CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary & Handbook、第15版、2014年で、単独で又は混合物として、名称、ココベタイン、ラウリルベタイン、セチルベタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、パルミタミドプロピルベタイン、ステアラミドプロピルベタイン、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、オレアミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココヒドロキシスルタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン及びココスルタインで分類されている化合物がある。
【0249】
ベタインタイプ両性界面活性剤は、好ましくは、アルキルベタイン及びアルキルアミドアルキルベタイン、具体的にはココベタイン及びコカミドプロピルベタインである。
【0250】
アミドアミンカルボキシル化誘導体の中で、名称Miranolで販売される製品を挙げることができ、これらは、米国特許第2528378号及び同第2781354号に記載されており、CTFA辞典、第3版、1982年(これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる)において名称アンホカルボキシグリシネート及びアンホカルボキシプロピオネートで分類され、それぞれの構造は以下の通りである:
R1-CONHCH2CH2-N+(R2)(R3)(CH2COO-)M+X- (B1)
[式中、
R1は、加水分解ヤシ油中に存在する酸R1-COOHのアルキル基、ヘプチル基、ノニル基又はウンデシル基を示し、
R2は、ベータ-ヒドロキシエチル基を示し、
R3は、カルボキシメチル基を示し、
M+は、ナトリウム等のアルカリ金属に由来するカチオン性イオン;アンモニウムイオン;又は有機アミンに由来するイオンを示し、
X-は、有機若しくは無機アニオン性イオン、例えばハロゲン化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキル(C1~C4)硫酸イオン、アルキル(C1~C4)-若しくはアルキル(C1~C4)アリール-スルホン酸イオン、特にメチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンを示し;又はM+及びX-は、存在しない]
R1'-CONHCH2CH2-N(B)(C) (B2)
[式中、
R1'は、ヤシ油中若しくは加水分解亜麻仁油中に存在する酸R1'-COOHのアルキル基、C7、C9、C11若しくはC13アルキル基、C17アルキル基及びそのイソ型等のアルキル基、又は不飽和C17基を示し、
Bは、-CH2CH2OX'を表し、
Cは、-(CH2)z-Y'(式中、z=1又は2)を表し、
X'は、-CH2-COOH基、-CH2-COOZ'、-CH2CH2-COOH、-CH2CH2-COOZ'、又は水素原子を示し、
Y'は、-COOH、-COOZ'、-CH2-CHOH-SO3Z'、-CH2-CHOH-SO3H基又は-CH2-CH(OH)-SO3-Z'基を示し、
これらの式中、Z'は、ナトリウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のイオン、有機アミンに由来するイオン、又はアンモニウムイオンを表す]
並びに
Ra''-NH-CH(Y'')-(CH2)n-C(O)-NH-(CH2)n'-N(Rd)(Re) (B'2)
[式中、
Y''は、-C(O)OH、-C(O)OZ''、-CH2-CH(OH)-SO3H又は-CH2-CH(OH)-SO3-Z''(式中、Z''は、ナトリウム等のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属に由来するカチオン性イオン、有機アミンに由来するイオン、又はアンモニウムイオンを示す)を示し、
Rd及びReは、C1~C4アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、
Ra''は、酸からのC10~C30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
n及びn'は、独立に、1~3の整数を示す]。
【0251】
式B1及びB2を有する両性界面活性剤が、(C8~C24)-アルキルアンホモノアセテート、(C8~C24)アルキルアンホジアセテート、(C8~C24)アルキルアンホモノプロピオネート及び(C8~C24)アルキルアンホジプロピオネートから選択されることが好ましい。
【0252】
これらの化合物は、CTFA辞典、第5版、1993年において、名称、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリルアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸二ナトリウム、カプリルアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸及びココアンホジプロピオン酸で分類されている。
【0253】
例として、Rhodia Chimie社により商標名Miranol(登録商標)C2M concentrateで販売されているココアンホジアセテートを挙げることができる。
【0254】
式(B'2)の化合物の中で、CHIMEX社により呼称CHIMEXANE HBで市販されているジエチルアミノプロピルココアスパルタミドナトリウム(CTFA)を挙げることができる。
【0255】
(カチオン性界面活性剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のカチオン性界面活性剤を含んでよい。2種以上のカチオン性界面活性剤を組み合わせて使用してよい。
【0256】
カチオン性界面活性剤は、任意選択でポリオキシアルキレン化された、第一級、第二級又は第三級脂肪アミン塩、第四級アンモニウム塩、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0257】
挙げることができる第四級アンモニウム塩の例には、以下が挙げられるがこれらに限定されない:
以下の一般式(B3)のもの:
【0258】
【化13】
【0259】
[式中、
R1、R2、R3及びR4は、同一であっても異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を含み、任意選択で酸素、窒素、硫黄及びハロゲン等のヘテロ原子を含む、直鎖状及び分枝状の脂肪族基から選ばれる。脂肪族基は、例えば、アルキル、アルコキシ、C2~C6ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、(C12~C22)アルキルアミド(C2~C6)アルキル、(C12~C22)アルキルアセテート及びヒドロキシアルキルの各基;並びに芳香族基、例えばアリール及びアルキルアリールから選ぶことができ;X-は、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、(C2~C6)アルキル硫酸イオン、及びアルキルスルホン酸イオン又はアルキルアリールスルホン酸イオンから選ばれる]
イミダゾリンの第四級アンモニウム塩、例としては以下の式(B4)のもの:
【0260】
【化14】
【0261】
[式中、
R5は、8~30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基、例えば獣脂の若しくはヤシ油の脂肪酸誘導体から選ばれ、
R6は、水素、C1~C4アルキル基、並びに8~30個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選ばれ、
R7は、C1~C4アルキル基から選ばれ、
R8は、水素及びC1~C4アルキル基から選ばれ、
X-は、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、酢酸イオン、乳酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキルスルホン酸イオン及びアルキルアリールスルホン酸イオンから選ばれる]。
一実施形態では、R5及びR6は、例えば、12~21個の炭素原子を含むアルケニル基及びアルキル基から選ばれる基の混合物、例えば獣脂の脂肪酸誘導体であり、R7はメチルであり、R8は水素である。このような製品の例には、Witco社により名称「Rewoquat(登録商標)」W75、W90、W75PG及びW75HPGで販売されているクオタニウム-27(CTFA 1997年)及びクオタニウム-83(CTFA 1997年)が挙げられるが、これらに限定されない;
式(B5)のジ又はトリ第四級アンモニウム塩:
【0262】
【化15】
【0263】
[式中、
R9は、16~30個の炭素原子を含む脂肪族基から選ばれ、
R10は、水素、又は1~4個の炭素原子を含むアルキル基、又は-(CH2)3(R16a)(R17a)(R18a)N+X-基から選ばれ、
R11、R12、R13、R14、R16a、R17a及びR18aは、同一であっても異なっていてもよく、水素、及び1~4個の炭素原子を含むアルキル基から選ばれ、
X-は、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、エチル硫酸イオン及びメチル硫酸イオンから選ばれる]。
【0264】
このようなジ第四級アンモニウム塩の一例は、FINETEX社のFINQUAT CT-P(クオタニウム-89)又はFINQUAT CT(クオタニウム-75)である;
並びに
少なくとも1つのエステル官能基を含む第四級アンモニウム塩、例えば以下の式(B6)のもの:
【0265】
【化16】
【0266】
[式中、
R22は、C1~C6アルキル基、並びにC1~C6ヒドロキシアルキル基及びジヒドロキシアルキル基から選ばれ、
R23は、
以下の基:
【0267】
【化17】
【0268】
、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC1~C22炭化水素系基R27、並びに水素から選ばれ、
R25は、
以下の基:
【0269】
【化18】
【0270】
、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC1~C6炭化水素系基R29、並びに水素から選ばれ、
R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和のC7~C21炭化水素系基から選ばれ、
r、s及びtは、同一であっても異なっていてもよく、2~6の範囲の整数から選ばれ、
r1及びt1のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1であり、r2+r1=2r且つt1+2t=2tであり、
yは、1~10の範囲の整数から選ばれ、
x及びzは、同一であっても異なっていてもよく、0~10の範囲の整数から選ばれ、
X-は、単一の及び錯体の、有機及び無機のアニオンから選ばれ、但し条件として、和x+y+zは1~15の範囲であり、xが0である場合、R23はR27を示し、zが0である場合、R25はR29を示す。R22は、直鎖状及び分枝状のアルキル基から選ぶことができる]
一実施形態では、R22は、直鎖状のアルキル基から選ばれる。別の実施形態では、R22は、メチル、エチル、ヒドロキシエチル及びジヒドロキシプロピルの各基から選ばれ、例えば、メチル基及びエチル基から選ばれる。一実施形態では、和x+y+zは、1~10の範囲である。R23が炭化水素系基R27であるとき、これは、長鎖であって12~22個の炭素原子を含んでもよく、又は短鎖であって1~3個の炭素原子を含んでもよい。R25が炭化水素系基R29であるとき、これは、例えば、1~3個の炭素原子を含んでもよい。非限定的な例として、一実施形態では、R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC11~C21炭化水素系基から選ばれ、例えば直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC11~C21アルキル基及びアルケニル基から選ばれる。別の実施形態では、x及びzは、同一であっても異なっていてもよく、0又は1である。一実施形態では、yは1に等しい。別の実施形態では、r、s及びtは、同一であっても異なっていてもよく、2又は3に等しく、例えば2に等しい。アニオンX-は、例えば、ハロゲン化物イオン、例えば塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン;並びにC1~C4アルキル硫酸イオン、例えばメチル硫酸イオンから選ぶことができる。しかしながら、メタンスルホン酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、トシル酸イオン、有機酸に由来するアニオン、例えば酢酸イオン及び乳酸イオン、並びにエステル官能基を含むアンモニウムに適合する任意の他のアニオンが、本発明に従って使用されうるアニオンの他の非限定的な例である。一実施形態では、アニオンX-は、塩化物イオン及びメチル硫酸イオンから選ばれる。
【0271】
別の実施形態では、式(B6)のアンモニウム塩を使用することができ、式中、
R22は、メチル基及びエチル基から選ばれ、
x及びyは、1に等しく、
zは、0又は1に等しく、
r、s及びtは、2に等しく、
R23は、
以下の基:
【0272】
【化19】
【0273】
、メチル、エチル及びC14~C22炭化水素系の各基、並びに水素から選ばれ、
R25は、
以下の基:
【0274】
【化20】
【0275】
及び水素から選ばれ、
R24、R26及びR28は、同一であっても異なっていてもよく、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC13~C17炭化水素系基、例えば、直鎖状及び分枝状の、飽和及び不飽和のC13~C17アルキル基及びアルケニル基から選ばれる。
【0276】
一実施形態では、炭化水素系の基は、直鎖状である。
【0277】
挙げることができる式(B6)の化合物の非限定的な例には、塩、例えば、ジアシルオキシエチル-ジメチルアンモニウムの、ジアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-メチルアンモニウムの、モノアシルオキシエチル-ジヒドロキシエチル-メチルアンモニウムの、トリアシルオキシエチル-メチルアンモニウムの、モノアシルオキシエチル-ヒドロキシエチル-ジメチル-アンモニウムの、並びにこれらの混合物の、塩化物及びメチル硫酸塩がある。一実施形態では、アシル基は、14~18個の炭素原子を含んでよく、且つ例えば、植物油、例としてはパーム油及びヒマワリ油に由来してよい。化合物がいくつかのアシル基を含むとき、これらの基は、同一であっても異なっていてもよい。
【0278】
これらの生成物は、例えば、任意選択でオキシアルキレン化されたトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アルキルジエタノールアミン又はアルキルジイソプロパノールアミンを、脂肪酸に、又は植物若しくは動物起源の脂肪酸の混合物に、直接エステル化することによって、又はそれらのメチルエステルをエステル交換することによって、得ることができる。このエステル化の後に、アルキル化剤を使用して四級化してもよく、アルキル化剤は、ハロゲン化アルキル、例えばハロゲン化メチル及びハロゲン化エチル;硫酸ジアルキル、例えば硫酸ジメチル及び硫酸ジエチル;メタンスルホン酸メチル;パラ-トルエンスルホン酸メチル;グリコールクロロヒドリン;並びにグリセロールクロロヒドリンから選ばれる。
【0279】
このような化合物は、例えば、Cognis社により名称Dehyquart(登録商標)で、Stepan社により名称Stepanquat(登録商標)で、Ceca社により名称Noxamium(登録商標)で、及びRewo-Goldschmidt社により名称「Rewoquat(登録商標)WE 18」で販売されている。
【0280】
本発明による組成物中で使用されうるアンモニウム塩の他の非限定的な例には、米国特許第4874554号及び同第4137180号に記載されている、少なくとも1つのエステル官能基を含むアンモニウム塩が挙げられる。
【0281】
本発明による組成物中で使用されうる上に挙げた第四級アンモニウム塩には、式(I)に相当するもの、例えば、テトラアルキルアンモニウムクロリド、例としてはジアルキルジメチルアンモニウムクロリド及びアルキルトリメチルアンモニウムクロリド(ここで、アルキル基は、約12~22個の炭素原子を含む)、例えばベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド及びベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、並びにVan Dyk社により名称「Ceraphyl(登録商標)70」で販売されているステアラミドプロピルジメチル(酢酸ミリスチル)アンモニウムクロリドが挙げられるがこれらに限定されない。
【0282】
一実施形態によれば、本発明による組成物中で使用されうるカチオン性界面活性剤は、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、クオタニウム-83、クオタニウム-87、クオタニウム-22、ベヘニルアミドプロピル-2,3-ジヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムクロリド、パルミチルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド及びステアラミドプロピルジメチルアミンから選ばれる。
【0283】
(非イオン性界面活性剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を含んでよい。2種以上の非イオン性界面活性剤を組み合わせて使用してよい。
【0284】
非イオン性界面活性剤は、それら自体において又はそれら自体の周知の化合物である(例えば、この点に関して、「Handbook of Surfactants」、M.R.Porter著、Blackie & Son出版(Glasgow及びLondon)、1991年、116~178頁を参照されたい)。そのため、非イオン性界面活性剤は、例えば、アルコール、アルファ-ジオール、アルキルフェノール、及び脂肪酸のエステルから選ぶことができ、これらの化合物は、エトキシル化、プロポキシル化又はグリセロール化されており、例えば8~30個の炭素原子を含む、少なくとも1つの脂肪鎖を有し、エチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基の数が2~50の範囲であること、及びグリセロール基の数が1~30の範囲であることが可能である。マルトース誘導体もまた挙げることができる。また非限定的に挙げることができるのは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのコポリマー;エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドと脂肪アルコールとの縮合物;例えば2~30molのエチレンオキシドを含むポリエトキシル化脂肪アミド;例えば1.5~5個、例えば1.5~4個のグリセロール基を含むポリグリセロール化脂肪アミド;2~30molのエチレンオキシドを含む、ソルビタンのエトキシル化脂肪酸エステル;植物起源のエトキシル化油;スクロースの脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールの脂肪酸エステル;グリセロール(C6~C24)アルキルポリグリコシドのポリエトキシル化脂肪酸モノエステル又はジエステル;N-(C6~C24)アルキルグルカミン誘導体;(C10~C14)アルキルアミンオキシド又はN-(C10~C14)アシルアミノプロピルモルホリンオキシド等のアミンオキシド;シリコーン界面活性剤;並びにこれらの混合物である。
【0285】
非イオン性界面活性剤は、好ましくは、モノオキシアルキレン化、ポリオキシアルキレン化、モノグリセロール化又はポリグリセロール化非イオン性界面活性剤から選ぶことができる。オキシアルキレン単位は、より詳細には、オキシエチレン単位若しくはオキシプロピレン単位、又はこれらの組み合わせであり、好ましくはオキシエチレン単位である。
【0286】
挙げることができるモノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化非イオン性界面活性剤の例には、以下がある:
モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化(C8~C24)アルキルフェノール、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化C8~C30アルコール、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化C8~C30アミド、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC8~C30酸と、ポリアルキレングリコールとのエステル、
飽和又は不飽和の、直鎖状又は分枝状のC8~C30酸と、ソルビトールとの、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化エステル、
飽和又は不飽和の、モノオキシアルキレン化又はポリオキシアルキレン化植物油、
とりわけ単独又は混合物としてのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの縮合物。
【0287】
界面活性剤は、好ましくは、1から100の間、最も好ましくは2から50の間のモル数のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを含有する。本発明の実施形態の1つによれば、ポリオキシアルキレン化非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン化脂肪アルコール(脂肪アルコールのポリエチレングリコールエーテル)及びポリオキシエチレン化脂肪エステル(脂肪酸のポリエチレングリコールエステル)から選ばれる。
【0288】
挙げることができるポリオキシエチレン化飽和脂肪アルコール(又はC8~C30アルコール)の例には、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ5~50個のオキシエチレン単位を含有するもの、より特定すると7~12個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはラウレス-7からラウレス-12);ベヘニルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ9~50個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはベヘネス-9からベヘネス-50);セテアリルアルコール(セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物)のエチレンオキシド付加物、とりわけ10~50個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはセテアレス-10からセテアレス-50、例えばセテアレス-33);セチルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ10~50個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはセテス-10からセテス-50);ステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ10~50個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはステアレス-10からステアレス-50、例えばステアレス-20);イソステアリルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ10~50個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはイソステアレス-10からイソステアレス-50);並びにこれらの混合物がある。
【0289】
挙げることができるポリオキシエチレン化不飽和脂肪アルコール(又はC8~C30アルコール)の例には、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物、とりわけ2~50個のオキシエチレン単位を含有するもの、より特定すると10~40個のオキシエチレン単位を含有するもの(CTFA名としてはオレス-10からオレス-40);及びこれらの混合物がある。
【0290】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化非イオン性界面活性剤の例として、モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40アルコールが、好ましくは使用される。
【0291】
特に、モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40アルコールは、以下の式:
RO-[CH2-CH(CH2OH)-O]m-H、又はRO-[CH(CH2OH)-CH2O]m-H
[式中、Rは、直鎖状又は分枝状のC8~C40、好ましくはC8~C30アルキル基又はアルケニル基を表し、mは、1~30、好ましくは1.5~10の範囲の数を表す]
に相当する。
【0292】
本発明の文脈において好適である化合物の例として、4molのグリセロールを含有するラウリルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4ラウリルエーテル)、1.5molのグリセロールを含有するラウリルアルコール、4molのグリセロールを含有するオレイルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-4オレイルエーテル)、2molのグリセロールを含有するオレイルアルコール(INCI名:ポリグリセリル-2オレイルエーテル)、2molのグリセロールを含有するセテアリルアルコール、6molのグリセロールを含有するセテアリルアルコール、6molのグリセロールを含有するオレオセチルアルコール、及び6molのグリセロールを含有するオクタデカノールを挙げることができる。
【0293】
mの値が統計値を表すのと同様に、アルコールは、アルコールの混合物を表してもよく、このことは、市販品において、複数種のポリグリセロール化脂肪アルコールが混合物の形態で共存してもよいことを意味する。
【0294】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化アルコールの中で、1molのグリセロールを含有するC8/C10アルコール、1molのグリセロールを含有するC10/C12アルコール、及び1.5molのグリセロールを含有するC12アルコールを使用することが好ましい。
【0295】
モノグリセロール化又はポリグリセロール化C8~C40脂肪エステルは、以下の式:
R'O-[CH2-CH(CH2OR''')-O]m-R''、又はR'O-[CH(CH2OR''')-CH2O]m-R''
[式中、R'、R''及びR'''のそれぞれは、独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝状のC8~C40、好ましくはC8~C30アルキル-CO-基又はアルケニル-CO-基を表し、但し条件としてR'、R''及びR'''のうちの少なくとも1つは水素原子ではなく、mは、1~30、好ましくは1.5~10の範囲の数を表す]
に相当しうる。
【0296】
挙げることができるポリオキシエチレン化脂肪エステルの例には、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はベヘン酸及びこれらの混合物のエステルのエチレンオキシド付加物、とりわけ9~100個のオキシエチレン単位を含有するもの、例えばラウリン酸PEG-9からPEG-50(CTFA名:ラウリン酸PEG-9からラウリン酸PEG-50)、パルミチン酸PEG-9からPEG-50(CTFA名:パルミチン酸PEG-9からパルミチン酸PEG-50);ステアリン酸PEG-9からPEG-50(CTFA名:ステアリン酸PEG-9からステアリン酸PEG-50);パルミトステアリン酸PEG-9からPEG-50;ベヘン酸PEG-9からPEG-50(CTFA名:ベヘン酸PEG-9からベヘン酸PEG-50);モノステアリン酸ポリエチレングリコール100 EO(CTFA名:ステアリン酸PEG-100);及びこれらの混合物がある。
【0297】
本発明の実施形態の1つによれば、非イオン性界面活性剤は、ポリオールと、例えば8~24個の炭素原子、好ましくは12~22個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和の鎖を有する脂肪酸とのエステル、及び好ましくは10~200個、より好ましくは10~100個のオキシアルキレン単位を含有するそのポリオキシアルキレン化誘導体、例えば、1種又は複数のC8~C24の、好ましくはC12~C22の脂肪酸のグリセリルエステル、及び好ましくは10~200個、より好ましくは10~100個のオキシアルキレン単位を含有するそのポリオキシアルキレン化誘導体;1種又は複数のC8~C24、好ましくはC12~C22の脂肪酸のソルビトールエステル、及び好ましくは10~200個、より好ましくは10~100個のオキシアルキレン単位を含有するそのポリオキシアルキレン化誘導体;1種又は複数のC8~C24、好ましくはC12~C22の脂肪酸の糖(スクロース、マルトース、グルコース、フルクトース及び/又はアルキルグリコース)エステル、及び好ましくは10~200個、より好ましくは10~100個のオキシアルキレン単位を含有するそのポリオキシアルキレン化誘導体;脂肪アルコールのエーテル;糖と、1種又は複数のC8~C24、好ましくはC12~C22の脂肪アルコールとのエーテル;並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0298】
脂肪酸のグリセリルエステルとして、ステアリン酸グリセリル(モノ-、ジ-及び/又はトリステアリン酸グリセリル)(CTFA名:ステアリン酸グリセリル)、ラウリン酸グリセリル又はリシノール酸グリセリル、並びにこれらの混合物を引用することができ、それらのポリオキシアルキレン化誘導体として、脂肪酸とポリオキシアルキレン化グリセロールとの、モノ-、ジ-又はトリエステル(脂肪酸と、グリセロールのポリアルキレングリコールエーテルとの、モノ-、ジ-又はトリエステル)、好ましくはポリオキシエチレン化ステアリン酸グリセリル(モノ-、ジ-及び/又はトリステアレート)、例えばステアリン酸PEG-20グリセリル(モノ-、ジ-及び/又はトリステアレート)を引用することができる。
【0299】
これらの界面活性剤の混合物、例えば、Uniqema社により名称ARLACEL 165で市販されている、ステアリン酸グリセリル及びステアリン酸PEG-100を含有する製品、並びにGoldschmidt社により名称TEGINで市販されている、ステアリン酸グリセリル(モノ-及びジステアリン酸グリセリル)及びステアリン酸カリウムを含有する製品(CTFA名:ステアリン酸グリセリルSE)もまた使用することができる。
【0300】
C8~C24脂肪酸のソルビトールエステル及びそのポリオキシアルキレン化誘導体は、パルミチン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、並びに脂肪酸と、例えば20~100個のEOを含有するアルコキシル化ソルビタンとのエステル、例えば、ICI社により名称Span 60で販売されているモノステアリン酸ソルビタン(CTFA名:ステアリン酸ソルビタン)、ICI社により名称Span 40で販売されているモノパルミチン酸ソルビタン(CTFA名:パルミチン酸ソルビタン)、及びICI社により名称Tween 65で販売されているトリステアリン酸ソルビタン20 EO(CTFA名:ポリソルベート65)、トリオレイン酸ポリエチレンソルビタン(ポリソルベート85)、又はUniqema社により商標名Tween 20若しくはTween 60で市販されている化合物から選択することができる。
【0301】
脂肪酸とグルコース又はアルキルグルコースとのエステルとして、パルミチン酸グルコース、セスキステアリン酸アルキルグルコース、例えばセスキステアリン酸メチルグルコース、パルミチン酸アルキルグルコース、例えばパルミチン酸メチルグルコース又はエチルグルコース、メチルグルコシド脂肪エステル、メチルグルコシドとオレイン酸とのジエステル(CTFA名:ジオレイン酸メチルグルコース)、メチルグルコシドと、オレイン酸/ヒドロキシステアリン酸の混合物との混合エステル(CTFA名:ジオレイン酸メチルグルコース/ヒドロキシステアレート)、メチルグルコシドとイソステアリン酸とのエステル(CTFA名:イソステアリン酸メチルグルコース)、メチルグルコシドとラウリン酸とのエステル(CTFA名:ラウリン酸メチルグルコース)、メチルグルコシド及びイソステアリン酸のモノエステルとジエステルとの混合物(CTFA名:セスキ-イソステアリン酸メチルグルコース)、メチルグルコシド及びステアリン酸のモノエステルとジエステルとの混合物(CTFA名:セスキステアリン酸メチルグルコース)、及び特にAMERCHOL社により名称Glucate SSで市販されている製品、並びにこれらの混合物を引用することができる。
【0302】
脂肪酸とグルコース又はアルキルグルコースとのエトキシル化エーテルとして、脂肪酸とメチルグルコースとのエトキシル化エーテル、特に約20モルのエチレンオキシドを有するメチルグルコースとステアリン酸とのジエステルのポリエチレングリコールエーテル(CTFA名:ジステアリン酸PEG-20メチルグルコース)、例えばAMERCHOL社により名称Glucam E-20 distearateで市販されている製品、約20モルのエチレンオキシドを有するメチル-グルコース及びステアリン酸のモノエステルとジエステルとの混合物のポリエチレングリコールエーテル(CTFA名:セスキステアリン酸PEG-20メチルグルコース)、具体的にはAMERCHOL社により名称Glucamate SSE-20で市販されている製品、及びGOLDSCHMIDT社により名称Grillocose PSE-20で市販されている製品、並びにこれらの混合物を、例えば引用することができる。
【0303】
スクロースエステルとして、パルミト-ステアリン酸サッカロース、ステアリン酸サッカロース及びモノラウリン酸サッカロースを、例えば引用することができる。
【0304】
糖エーテルとして、アルキルポリグルコシドを使用することができ、例えばデシルグルコシド、例えば花王株式会社により名称MYDOL 10で市販されている製品、Henkel社により名称PLANTAREN 2000で市販されている製品、及びSeppic社により名称ORAMIX NS 10で市販されている製品;カプリリル/カプリルグルコシド、例えばSeppic社により名称ORAMIX CG 110で、又はBASF社により名称LUTENSOL GD 70で市販されている製品;ラウリルグルコシド、例えばHenkel社により名称PLANTAREN 1200 N及び名称PLANTACARE 1200で市販されている製品;ココ-グルコシド、例えばHenkel社により名称PLANTACARE 818/UPで市販されている製品;おそらくはセトステアリルアルコールと混合されているセトステアリルグルコシド、例えばSeppic社により名称MONTANOV 68で、Goldschmidt社により名称TEGO-CARE CG90で、及びHenkel社により名称EMULGADE KE3302で市販されているもの;アラキジルグルコシド、例えばアラキジルとベヘニルアルコールとアラキジルグルコシドとの混合物の形態でSeppic社により名称MONTANOV 202で市販されているもの;ココイルエチルグルコシド、例えばセチルとステアリルアルコールとの混合物(35/65)の形態でSeppic社により名称MONTANOV 82で市販されているもの、並びにそれらの混合物を、特に引用することができる。
【0305】
アルコキシル化植物油のグリセリドの混合物、例えばエトキシル化(200 EO)パームとコプラ(7 EO)グリセリドとの混合物もまた、引用することができる。
【0306】
本発明による非イオン性界面活性剤は、好ましくは、アルケニル又は分枝状のC12~C22アシル鎖、例えばオレイル基又はイソステアリル基を含有する。より好ましくは、本発明による非イオン性界面活性剤は、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリルである。
【0307】
本発明の実施形態のうちの1つによれば、非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、具体的には以下の式:
HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)cH
[式中、a、b及びcは、a+cが2~100の範囲であり、bが14~60の範囲であるような整数である]
のコポリマー、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0308】
本発明の実施形態のうちの1つによれば、非イオン性界面活性剤は、シリコーン界面活性剤から選択することができる。非限定的に挙げることができるのは、US-A-5364633及びUS-A-5411744の文献に開示されたものである。
【0309】
シリコーン界面活性剤は、好ましくは、式(I):
【0310】
【化21】
【0311】
[式中、
R1、R2及びR3は、互いに独立に、C1~C6アルキル基又は-(CH2)x-(OCH2CH2)y-(OCH2CH2CH2)z-OR4基を表し、少なくとも1つのR1基、R2基又はR3基は、アルキル基ではなく、R4は、水素、アルキル基又はアシル基であり、
Aは、0~200の範囲の整数であり、
Bは、0~50の範囲の整数であり、但し条件としてAとBとが同時に0に等しいことはなく、
xは、1~6の範囲の整数であり、
yは、1~30の範囲の整数であり、且つ
zは0~5の範囲の整数である]
の化合物であってよい。
【0312】
本発明の好ましい一実施形態によれば、式(I)の化合物中、アルキル基は、メチル基であり、xは、2~6の範囲の整数であり、yは、4~30の範囲の整数である。
【0313】
式(I)のシリコーン界面活性剤の例として挙げることができるのは、式(II):
【0314】
【化22】
【0315】
[式中、Aは、20~105の範囲の整数であり、Bは、2~10の範囲の整数であり、yは、10~20の範囲の整数である]
の化合物である。
【0316】
式(I)のシリコーン界面活性剤の例として、また挙げることができるのは、式(III):
H-(OCH2CH2)y-(CH2)3-[(CH3)2SiO]A'-(CH2)3-(OCH2CH2)y-OH (III)
[式中、A'及びyは、10~20の範囲の整数である]
の化合物である。
【0317】
使用されうる本発明の化合物は、Dow Corning社により名称DC 5329、DC 7439-146、DC 2-5695及びQ4-3667で販売されているものである。化合物DC 5329、DC 7439-146及びDC 2-5695は、式(II)[式中、それぞれ、Aは22、Bは2、yは12であり;Aは103、Bは10、yは12であり;Aは27、Bは3、yは12である]の化合物である。
【0318】
化合物Q4-3667は、式(III)[式中、Aは15であり、yは13である]の化合物である。
【0319】
(d)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤から選択されることが好ましい。
【0320】
(d)界面活性剤が、ポリグリセリル脂肪酸エステルから選択されることがより好ましい。
【0321】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~10個のグリセロール、好ましくは2~8個のグリセロール、より好ましくは2~6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有してよい。換言すると、ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~10個のポリグリセリル単位、好ましくは2~8個のポリグリセリル単位、より好ましくは2~6個のポリグリセリル単位を含んでよい。全てのポリグリセリル脂肪酸エステルがポリグリセリル短鎖(例えば、10個未満のポリグリセリル単位、好ましくは8個未満のポリグリセリル単位、より好ましくは6個未満のポリグリセリル単位)を有する場合、本発明による組成物の安定性は増強されうる。
【0322】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、4~32個の炭素原子、好ましくは8~26個の炭素原子、より好ましくは10~20個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状の、飽和又は不飽和の脂肪酸、好ましくは飽和の脂肪酸の、モノ、ジ及びトリエステル、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、カプリル酸及びミリスチン酸から選ぶことができる。
【0323】
(d)界面活性剤が、飽和又は不飽和のポリグリセリル脂肪酸モノエステルから選択されることが好ましい。
【0324】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、4.0~16.0、好ましくは4.5~15.5、より好ましくは5.0~15.0のHLB(親水性親油性バランス)値を有してよい。用語HLB(「親水性-親油性バランス」)は当業者には周知であり、分子中の親水性部分と親油性部分との間の比を反映する。2種以上のポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、HLB値は、全てのポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB値の秤量平均により決定される。
【0325】
ポリグリセリル脂肪酸エステルは、ステアリン酸PG-2(HLB:5.0)、イソステアリン酸PG-2(HLB:5.5)、オレイン酸PG-2(HLB:6.5)、カプリン酸PG-2(HLB:9.5)、ラウリン酸PG-2(HLB:8.5)、オレイン酸PG-4(HLB:8.8)、ラウリン酸PG-4(HLB:10.4)、イソステアリン酸PG-4(HLB:8.2)、ラウリン酸PG-5(HLB:15.8)、イソステアリン酸PG-6(HLB:10.8)、ヤシ油脂肪酸PG-3(HLB:12.0)、カプリン酸PG-3(HLB:10.0)、カプリル酸PG-4(HLB:14)、カプリン酸PG-4(HLB:14.0)、ミリスチン酸PG-5(HLB:15.4)、ステアリン酸PG-5(HLB:15.0)、オレイン酸PG-5(HLB:14.9)、カプリル酸PG-6(HLB:14.6)、カプリン酸PG-6(HLB:13.1)、ラウリン酸PG-6(HLB:14.5)、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0326】
(d)界面活性剤が、カプリン酸PG-4(HLB:14.0)、イソステアリン酸PG-2(HLB:5.5)、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい場合がある。
【0327】
本発明による組成物が、少なくとも2種のポリグリセリル脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0328】
(d)界面活性剤が、
4.0~8.0、好ましくは4.5~8.0、より好ましくは5.0~8.0のHLB値を有する少なくとも1種の第1のポリグリセリル脂肪酸エステル、
12.0~16.0、好ましくは12.0~15.5、より好ましくは12.0~15.0のHLB値を有する少なくとも1種の第2のポリグリセリル脂肪酸エステル、及び
これらの混合物
から選択されることが好ましい。
【0329】
本発明による組成物中の(d)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であってよい。
【0330】
本発明による組成物中の(d)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってよい。
【0331】
本発明による組成物中の(d)界面活性剤の量は、組成物の総質量に対して、0.001質量%~20質量%、好ましくは0.01質量%~15質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%であってよい。
【0332】
[pH]
本発明による組成物のpHは、2.0~9.0、好ましくは2.5~8.5、より好ましくは3.0~8.0であってよい。
【0333】
2.0~9.0のpHにおいて、(a)ポリイオンコンプレックスは非常に安定であることができる。
【0334】
本発明による組成物のpHは、(a)ポリイオンコンプレックス中に組み入れられることになる、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩以外に、少なくとも1種のアルカリ剤及び/又は少なくとも1種の酸を添加することによって調整することができる。本発明による組成物のpHはまた、少なくとも1種の緩衝剤を添加することによっても調整することができる。
【0335】
(アルカリ剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種のアルカリ剤を含んでよい。2種以上のアルカリ剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプのアルカリ剤、又は異なるタイプのアルカリ剤の組み合わせを使用することができる。
【0336】
アルカリ剤は、無機アルカリ剤であってもよい。無機アルカリ剤が、アンモニア、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩及びリン酸一水素塩、例えばリン酸ナトリウム又はリン酸一水素ナトリウムからなる群から選択されることが好ましい。
【0337】
無機アルカリ金属水酸化物の例として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを挙げることができる。アルカリ土類金属水酸化物の例として、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウムを挙げることができる。無機アルカリ剤として、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0338】
アルカリ剤は、有機アルカリ剤であってもよい。有機アルカリ剤が、モノアミン及びその誘導体、ジアミン及びその誘導体、ポリアミン及びその誘導体、塩基性アミノ酸及びその誘導体、塩基性アミノ酸のオリゴマー及びその誘導体、塩基性アミノ酸のポリマー及びその誘導体、尿素及びその誘導体、並びにグアニジン及びその誘導体からなる群から選択されることが好ましい。
【0339】
有機アルカリ剤の例として、アルカノールアミン、例えばモノ-、ジ-及びトリ-エタノールアミン、並びにイソプロパノールアミン;尿素、グアニジン及びそれらの誘導体;塩基性アミノ酸、例えばリジン、オルニチン又はアルギニン;並びにジアミン、例えば以下の構造:
【0340】
【化23】
【0341】
[式中、Rは、ヒドロキシル基又はC1~C4アルキル基で任意選択で置換されているプロピレン等のアルキレンを示し、R1、R2、R3及びR4は、独立に、水素原子、アルキル基又はC1~C4ヒドロキシアルキル基を示し、これは、1,3-プロパンジアミン及びその誘導体によって例示することができる]
において説明されているものを挙げることができる。アルギニン、尿素及びモノエタノールアミンが好ましい。
【0342】
アルカリ剤は、それらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0343】
(酸)
本発明による組成物は、少なくとも1種の酸を含んでよい。2種以上の酸を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの酸、又は異なるタイプの酸の組み合わせを使用することができる。
【0344】
酸として、化粧料中で一般に使用される任意の無機酸又は有機酸、好ましくは無機酸を挙げることができる。一価の酸及び/又は多価酸を使用してよい。クエン酸、乳酸、硫酸、リン酸及び塩酸(HCl)等の一価の酸を使用してよい。HClが好ましい。
【0345】
酸は、それらの溶解度に応じて、組成物の総質量に対して、0.01質量%~15質量%、好ましくは0.02質量%~10質量%、より好ましくは0.03質量%~5質量%の総量で使用することができる。
【0346】
(緩衝剤)
本発明による組成物は、少なくとも1種の緩衝剤を含んでよい。2種以上の緩衝剤を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの緩衝剤、又は異なるタイプの緩衝剤の組み合わせを使用することができる。
【0347】
緩衝剤として、酢酸緩衝液(例えば、酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(例えば、リン酸二水素ナトリウム+リン酸水素二ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液(例えば、ホウ酸+ホウ酸ナトリウム)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸+酒石酸ナトリウム二水和物)、トリス緩衝液(例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びHepes緩衝液(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を挙げることができる。
【0348】
[任意選択の添加剤]
本発明による組成物は、前述の成分に加えて、化粧品において典型的に用いられる成分、具体的には、油、例えばエステル油及び炭化水素油、親水性又は親油性UV遮蔽剤、親水性又は親油性増粘剤、有機の揮発性又は不揮発性溶媒、例えばグリセリン、グリコール、及びエタノール、シリコーン及びシリコーン誘導体、動物又は植物に由来する天然抽出物、ワックス等を、本発明の効果を損なわない範囲内で含んでよい。
【0349】
本発明による組成物は、上記の任意選択の添加剤を、組成物の総質量に対して、0.01質量%~50質量%、好ましくは0.05質量%~30質量%、より好ましくは0.1質量%~10質量%の量で含んでよい。
【0350】
[組成物]
本発明による組成物は、化粧用組成物として使用されることが意図されてよい。そのため、本発明による化粧用組成物は、ケラチン物質上への塗布が意図されてよい。ケラチン物質は、本明細書では、ケラチンを主な構成要素として含有する物質を意味し、その例には、皮膚、頭皮、爪、唇、毛髪等が挙げられる。そのため、本発明による化粧用組成物が、ケラチン物質、特に皮膚のための美容方法に使用されることが好ましい。
【0351】
そのため、本発明による化粧用組成物は、皮膚化粧用組成物、好ましくはスキンケア組成物又は皮膚メイクアップ組成物、より好ましくはスキンケア組成物であってよい。
【0352】
本発明による組成物は、当業者に周知である方法のいずれかに従って、上記の必須成分と任意選択の成分とを混合することによって調製することができる。
【0353】
本発明による組成物は、撹拌機等の従来の混合手段を用いて、単純に又は容易に混合することによって調製することができる。そのため、例えばホモジナイザによる強力な剪断は必要ない。また、加熱は必要ない。
【0354】
[皮膜]
本発明による組成物は、皮膜を容易に調製するのに使用することができる。
【0355】
そのため、本発明はまた、好ましくは0.1μm超、より好ましくは0.5μm以上、更により好ましくは1μm以上の厚さを任意選択で有する、皮膜、好ましくは化粧皮膜を調製する方法であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む、方法にも関する。
【0356】
本発明による皮膜の厚さの上限は、限定されない。そのため、例えば、本発明による皮膜の厚さは、1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは300μm以下、更により好ましくは100μm以下であってよい。
【0357】
本発明による皮膜を調製するための方法が、本発明による組成物を、基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚に塗布する工程と、組成物を乾燥させる工程とを含むことから、本発明による方法は、スピンコーティング又はスプレーすることを一切必要とせず、したがって、比較的厚い皮膜でさえ容易に調製することが可能である。そのため、本発明による皮膜を調製する方法は、スピンコーター及びスプレー機等の特殊な装置を一切用いずに、比較的厚い皮膜を調製することができる。
【0358】
本特許請求の範囲による皮膜は、それがヒアルロン酸系ポリマーを含んではいるものの、べとつきが少ない場合がある。
【0359】
本特許請求の範囲による皮膜は、透明であっても半透明であってもよく、且つ長く持続することができる抗酸化効果をもたらすことができる。
【0360】
本発明による皮膜が比較的厚い場合であってさえ、皮膜は、依然として薄く、透明であることができ、したがって、容易に知覚されない場合がある。そのため、本発明による皮膜は、好ましくは化粧皮膜として使用することができる。
【0361】
基質が皮膚等のケラチン物質ではない場合、本発明による組成物は、ケラチン以外の任意の材料から作製された基質上に塗布することができる。非ケラチン基質の材料は、限定されない。2種以上の材料を組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの材料、又は異なるタイプの材料の組み合わせを使用することができる。いずれの場合でも、基質が可撓性又は弾性であることが好ましい。
【0362】
基質がケラチン物質ではない場合、基質が水溶性であることが好ましく、その理由は、基質を水で洗浄することによって本発明による皮膜を残すことが可能であるからである。水溶性材料の例として、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、デンプン、酢酸セルロース等を挙げることができる。PVAが好ましい。
【0363】
非ケラチン基質がシートの形態にある場合、基質は、基質シートに付着された皮膜の取り扱いを容易にするために、本発明による皮膜の厚さを超える厚さを有してもよい。非ケラチン基質シートの厚さは限定されないが、1μm~5mm、好ましくは10μm~1mm、より好ましくは50~500μmであってよい。
【0364】
本発明による皮膜が、非ケラチン基質から取り外し可能であることがより好ましい。取り外しの方式は限定されない。したがって、本発明による皮膜は、非ケラチン基質から剥がしてもよく、又は基質シートを水等の溶媒中に溶解することによって取り外されてもよい。
【0365】
本発明はまた、
(1)好ましくは0.1μm超、より好ましくは0.5μm以上、更により好ましくは1μm以上の厚さを任意選択で有する、皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
基質、好ましくはケラチン物質、より好ましくは皮膚上に、本発明による組成物を塗布する工程と、
組成物を乾燥させる工程と
を含む方法によって調製される、皮膜、好ましくは化粧皮膜
並びに
(2)好ましくは0.1μm超、より好ましくは0.5μm以上、更により好ましくは1μm以上の厚さを任意選択で有する、皮膜、好ましくは化粧皮膜であって、
(a)少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種のアニオン性ポリマー、
少なくとも1種のカチオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種のアニオン性ポリマー及び少なくとも1種の両性ポリマー、又は
少なくとも1種の両性ポリマー、
少なくとも1種の、2つ以上のpKa値を有する非ポリマー酸若しくはその塩、又は
少なくとも1種の、2つ以上のpKb値を有する非ポリマー塩基若しくはその塩
を含む、少なくとも1種のポリイオンコンプレックスと、
(b)少なくとも1種の親油性抗酸化剤と、
任意選択で、(d)好ましくは非イオン性界面活性剤から選択される、より好ましくはポリグリセリル脂肪酸エステルから選択される、少なくとも1種の界面活性剤と
を含み、
アニオン性ポリマーが、ヒアルロン酸及びその塩から選択され、且つ
両性ポリマーが、カチオン化ヒアルロン酸及びその塩から選択される、
皮膜、好ましくは化粧皮膜にも関する。
【0366】
カチオン性、アニオン性及び両性ポリマー、並びに上記の親油性抗酸化剤及び界面活性剤に関する上記の説明は、上記の皮膜(1)及び(2)における説明に当てはめることができる。
【0367】
このようにして得られた皮膜は、自立性であることができる。用語「自立性」は、本明細書では、皮膜がシートの形態にあることができ、基質又は支持体の補助なしに独立したシートとして取り扱うことができることを意味する。そのため、用語「自立性」は、「自己支持性」と同じ意味を有することができる。
【0368】
本発明による皮膜が疎水性であることが好ましい。
【0369】
本明細書における用語「疎水性」は、20~40℃、好ましくは25~40℃、より好ましくは30~40℃でのポリマーの(好ましくは1リットルの体積の)水中溶解度が、ポリマーの総質量に対して、10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、更により好ましくは0.1質量%未満であることを意味する。ポリマーが水に可溶性でないことが最も好ましい。
【0370】
本発明による皮膜が疎水性である場合、皮膜は耐水特性を有することができ、したがって、皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗又は雨により濡れている場合であってさえ、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。そのため、本発明による皮膜が任意の美容効果をもたらす場合、美容効果は長時間持続することができる。
【0371】
他方、本発明による皮膜は、8~12、好ましくは9~11のpH等のアルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、その一方で、皮膜は、このようなアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0372】
本発明による皮膜は、少なくとも1種の生体適合性及び/又は生分解性ポリマー層を含んでもよい。2種以上の生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを組み合わせて使用してもよい。そのため、単一のタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマー、又は異なるタイプの生体適合性及び/若しくは生分解性ポリマーの組み合わせを使用することができる。
【0373】
本明細書における用語「生体適合性」ポリマーは、ポリマーと、皮膚を含む生体内の細胞との間でポリマーが過度な相互作用を有さず、且つポリマーが生体によって異物として認識されないことを意味する。
【0374】
本明細書における用語「生分解性」ポリマーは、例えば生体自体の代謝、又は生体内に存在しうる微生物の代謝により、ポリマーが生体内で分解されうる又は分割されうることを意味する。また、生分解性ポリマーは、加水分解によって分解されうる。
【0375】
本発明による皮膜が生体適合性及び/又は生分解性ポリマーを含む場合、それは、皮膚への刺激が少ないか又は刺激がなく、発疹を一切起こさない。加えて、生体適合性及び/又は生分解性ポリマーの使用により、本発明による化粧シートは、皮膚によく粘着することができる。
【0376】
本発明による皮膜は、ケラチン物質、好ましくは皮膚、特定すると顔の、美容トリートメントのために使用することができる。本発明による皮膜は、任意の形状又は形態にあることができる。例えば、皮膜は、フルフェイスマスクシート、又は頬、鼻、及び目の周り等の顔の一部用のパッチとして使用することができる。
【0377】
本発明による皮膜が、少なくとも1種の親水性又は水溶性UV遮蔽剤を含む場合、皮膜は、親水性又は水溶性UV遮蔽剤に由来するUV遮蔽効果をもたらすことができる。通常、親水性又は水溶性UV遮蔽剤は、汗及び雨等の水によって皮膚等のケラチン基質の表面から除去されうる。しかしながら、親水性又は水溶性UV遮蔽剤が本発明による皮膜中に含まれることから、親水性又は水溶性UV遮蔽剤は水によって除去されにくく、それにより、長く持続するUV遮蔽効果がもたらされる。
【0378】
[美容方法及び使用]
本発明はまた、
ケラチン物質に、皮膚等のケラチン物質のための美容方法であって、本発明による組成物を塗布する工程と、組成物を乾燥させて、ケラチン物質上に化粧皮膜を形成する工程とを含む、美容方法、及び
皮膚等のケラチン物質上に化粧皮膜を調製するための、本発明による組成物の使用
にも関する。
【0379】
美容方法は、本明細書では、皮膚等のケラチン物質の表面をケアする及び/又はメイクアップするための非治療的美容方法を意味する。
【0380】
上記の方法と使用との両方において、上記の化粧皮膜は、7以下のpHを有する水に耐性があり、7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上のpHを有する水で除去可能である。
【0381】
換言すると、上記の化粧皮膜は、7以下、好ましくは6以上で7以下の範囲、より好ましくは5以上で7以下の範囲のpH等の中性又は酸性条件下で耐水性であることができ、その一方で、上記化粧皮膜は、7超、好ましくは8以上、より好ましくは9以上のpH等のアルカリ性条件下で除去することができる。pHの上限は、好ましくは13、より好ましくは12、更により好ましくは11である。
【0382】
これに応じて、上記の化粧皮膜は耐水性であることができ、したがって、化粧皮膜は、ケラチン物質の表面が例えば汗又は雨に起因して濡れている場合であってさえ、皮膚等のケラチン物質上に残存することができる。他方、上記の化粧皮膜は、アルカリ性条件下で、皮膚等のケラチン物質から容易に除去することができる。したがって、本発明による皮膜は、水で除去することは困難であるが、皮膜はアルカリ性条件をもたらすことができる石けんで容易に除去することができる。
【0383】
上記の化粧皮膜が、本発明による組成物中に存在しうるUV遮蔽剤を含む場合、上記の化粧皮膜は、UV線から皮膚等のケラチン物質を保護し、それにより、皮膚の黒ずみを抑え、肌の色及び均一性を改善し、並びに/又は皮膚の老化を処置することができる。
【0384】
更に、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であってさえ、化粧皮膜中のポリイオンコンプレックスの特性に起因して、皮脂を捕獲する、皮膚等のケラチン基質の外観にマット感を付与する、悪臭を吸収する若しくは吸着する、且つ/又は例えば汚れ若しくは汚染物質からケラチン物質を保護する等の美容効果を有することができる。
【0385】
加えて、上記の化粧皮膜は、化粧皮膜が美容有効成分を一切含まない場合であってさえ、皮膚上の光反射を変化させること等によって皮膚の外観を即座に変化させる又は修正することができる。したがって、上記の化粧皮膜が毛穴又はしわ等の皮膚の欠陥を隠すことが可能でありうる。更に、上記の化粧皮膜は、皮膚上の表面粗さ等を変化させることによって、皮膚の触感を即座に変化させる又は修正することができる。更に、上記の化粧皮膜は、環境ストレス、例えば汚染物質、夾雑物等から、バリアーとして皮膚の表面を覆い、皮膚を遮蔽することによって、皮膚を即座に保護することができる。
【0386】
上記の美容効果は、上記の化粧皮膜の化学組成、厚さ及び/又は表面粗さを変化させることによって調整することができる又は制御することができる。
【0387】
上記の化粧皮膜が、油等の少なくとも1種の追加の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、その追加の美容有効成分によってもたらされる美容効果を有することができる。例えば、化粧皮膜が、(b)親油性抗酸化剤以外の抗老化剤、皮脂抑制剤、デオドラント剤、発汗抑制剤、白色剤、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の美容有効成分を含む場合、化粧皮膜は、皮膚の老化を処置し、皮膚上の皮脂を吸収し、皮膚上の匂いを制御し、皮膚上の発汗を制御し、及び/又は皮膚を白色化することができる。
【0388】
化粧皮膜又はシートが皮膚上に適用された後に、本発明によるメイクアップ化粧用組成物を塗布することもまた可能である。
【実施例0389】
本発明は、実施例によって、より詳細に記載されることになる。しかしながら、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0390】
(実施例1~2及び比較例1~2)
[調製]
実施例1~2及び比較例1~2による組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合することによって調製した。表1中の成分の量についての数値は全て、活性材料の「質量%」に基づく。
【0391】
【表1】
【0392】
[評価]
(べとつき)
3人のパネリストが、実施例1~2及び比較例1~2による組成物のそれぞれの、組成物の塗布中と塗布後とのタイミングにおけるべとつきの点で、テクスチャを評価した。詳細には、各パネリストが各組成物を自身の手の上に塗布し、それを延ばして保湿感覚を評価し、それを1(低)~5(高)に格付けした。次いで、それを、格付けの平均に基づいて以下の4つのカテゴリーに分類した:
非常に良好:4~5(べとつきがない)
良好:3~4未満(わずかにべとつきがある)
不良:2超で3未満(べとつきがある)
非常に不良:1~2(非常にべとつきがある)
【0393】
結果を表1に示す。
【0394】
(抗酸化効果の持続)
0.05質量%の濃度を有するβ-カロテン溶液(溶媒:カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)0.6gと、実施例1~2及び比較例1~2による組成物のそれぞれ0.2gとを混合して、混合物を得た。
【0395】
上記の混合物のうちの0.4gを、フィルター(ガラスマイクロファイバーフィルター)上に塗布した。
【0396】
フィルターを水道水でリンスオフした(300mL、23~27℃)。
【0397】
上記フィルターを、365nmの波長を有するUV線に30分間曝露して、β-カロテンを酸化した。
【0398】
β-カロテンが酸化された場合、β-カロテンに由来する当初の黄色が退色する。
【0399】
フィルターのUV暴露の前及び後のL*a*b*(CIE1976)スペースにおけるb*値(それぞれb*(T=0)及びb*(T=30分))を、分光比色計(コニカミノルタ株式会社製のCM-700d)によって測定し、b*(T=0)値とb*(T=30分)値との差をΔb*として決定した。リンスオフする前のフィルターのb*(T=0)値が45から65の間であったことに留意されたい。
【0400】
Δb*値及びb*(T=30分)値を以下の判定基準に従って評価した。
非常に良好:Δb*<10、且つb*(T=30分)>30
良好:Δb*<10、且つ30>b*(T=30分)>20
不良:Δb*<10、且つ20>b*(T=30分)
非常に不良:Δb*>10
【0401】
結果を表1に示す。
【0402】
(概要)
実施例1及び2による組成物は、べとつきの点で良好であり又は非常に良好であり、且つ良好な又は非常に良好な長く持続する抗酸化効果をもたらすことができる。
【0403】
実施例1と比較例2との間の比較から、ポリイオンコンプレックスの使用がべとつきを低減させ且つ抗酸化効果を延長できることが明らかである。
【0404】
実施例2と比較例1との間の比較から、トコフェロールの使用が抗酸化効果を増強できるだけでなくべとつきの改善もできることが明らかである。
【0405】
実施例1と実施例2との間の比較から、ポリグリセリル脂肪酸エステル等の界面活性剤の使用が、リンスオフの条件下であってさえ、抗酸化効果を更に延長できることが明らかである。
【外国語明細書】