(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008845
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ガス拡散電極用の炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
C01B 32/05 20170101AFI20240112BHJP
C25B 1/23 20210101ALI20240112BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240112BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20240112BHJP
C25B 3/05 20210101ALI20240112BHJP
C25B 3/07 20210101ALI20240112BHJP
C25B 11/054 20210101ALI20240112BHJP
C25B 11/065 20210101ALI20240112BHJP
C25B 11/081 20210101ALI20240112BHJP
C25B 11/085 20210101ALI20240112BHJP
【FI】
C01B32/05
C25B1/23
C25B9/00 G
C25B9/00 A
C25B3/26
C25B3/05
C25B3/07
C25B11/054
C25B11/065
C25B11/081
C25B11/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023091531
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】17/810,953
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ユージエ、ジュー
(72)【発明者】
【氏名】ユーリン、ワン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、クラリッジ
(72)【発明者】
【氏名】クルト、アイ.、ハーフヤード
【テーマコード(参考)】
4G146
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA16
4G146AB01
4G146AD23
4G146BA01
4G146CB17
4G146CB19
4G146CB24
4G146CB34
4K011AA23
4K011AA31
4K011AA69
4K011BA07
4K011DA01
4K011DA10
4K021AB25
4K021BA02
4K021DB18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組成物、ガス拡散電極、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一例では、組成物は、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を含む。ガス拡散電極104は、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を用いて製造することができ、様々な用途のために膜電極アセンブリ100内に配備することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を含む、組成物。
【請求項2】
前記炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子が、窒素分子と銀分子との非共有結合を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記窒素分子が、アミン、アミド、イミド、又は窒素含有芳香族化合物のうちの少なくとも1つによって提供される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミンが、第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記第一級アミンが、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、又はドデシルアミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記第二級アミンが、ピペリジン、ピロリジン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、又はジイソプロピルアミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記第三級アミンが、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミントリウンデシルアミン、又はトリドデシルアミンのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミドが、プロパノアミド、ブタノアミド、ペンタノアミド、ヘキサノアミド、ベンズアミド、N-メチルブタンアミド、N-エチルブタンアミド、グルタミン、又はアスパラギンのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記イミドが、スクシンイミド、マレイミド、グルタルイミド、又はフタルイミドのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記窒素含有芳香族化合物が、ピリジン、4-メチルピリジン、4-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、ピロール、イミダゾール、又は4-メチルイミダゾールのうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項11】
炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を含むインクを調製することと、
前記インクを導電性表面上に堆積させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子が、酸処理された炭素構造を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
微孔性炭素構造に、前記微孔性炭素構造から離隔して形成された窒素表面官能化銀ナノ粒子を含浸させて、前記炭素担持窒素表面官能化銀粒子を形成することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記微孔性炭素構造に前記窒素表面官能化銀ナノ粒子を含浸させることが、
前記微孔性炭素構造をヘキサン中に分散させることと、
トルエン中に分散された前記窒素表面官能化銀ナノ粒子を、前記ヘキサン中に分散された前記微孔性炭素構造と混合することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記インクを調製することが、
前記炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子をトルエンと混合することと、
前記炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子と前記トルエンとの混合物に超音波処理を適用することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積させることが、
可動プリントヘッドを用いて前記導電性表面上に前記インクを噴霧することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
導電性表面と、
前記導電性表面上に炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子と、を備える、電極。
【請求項18】
前記電極が目標触媒性能を有し、銀負荷量が、同じ目標触媒性能を有しかつ炭素担持されていない表面官能化銀ナノ粒子を含む別の電極と比較して2倍以上低い、請求項17に記載の電極。
【請求項19】
前記炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子が、窒素表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を含む、請求項17に記載の電極。
【請求項20】
前記窒素表面官能化銀ナノ粒子が、アミン、アミド、イミド、又は窒素含有芳香族化合物のうちの少なくとも1つで官能化された銀ナノ粒子を含む、請求項19に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には、膜電極アセンブリに関し、より具体的には、様々な変換システムにおいて使用される炭素表面官能化銀ナノ粒子を有するガス拡散電極に関する。
【背景技術】
【0002】
CO2のような温室効果ガス(greenhouse gas、GHG)の排出は、地球のオゾン層の破壊及び地球温暖化を引き起こし、人間の健康、農業、及び水資源に対する悪影響をもたらしている。地球規模の気候変動を緩和するために、世界的な関心が、CO2捕捉及び利用(CO2 capture and utilization、CCU)の分野に集中しており、CO2の付加価値の高い化学物質及び合成燃料への電気触媒変換は、魅力的な手法のうちの1つである。適切な電気触媒、並びに過電圧、反応温度、及び電解質などを含む反応条件を用いて、CO2は、一酸化炭素(CO)、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)、ギ酸(HCOOH)、メタノール(CH3OH)、及びエタノール(C2H5OH)などの様々な生成物に電気化学的に変換され得る。
【0003】
現在の段階では、CO2のCOへの電気化学的変換は、その高い技術的及び経済的実現可能性に起因して、最も有望な反応のうちの1つである。この反応において、合成ガス(CO及びH2)は、エネルギー効率の高い方法で生成され得、次いで、フィッシャー・トロプシュ合成プロセスを介して合成炭化水素を生成するための供給原料として使用され得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に例示する態様によれば、組成物、膜電極アセンブリ、及び膜電極アセンブリ用のガス拡散電極を製造するための方法が提供される。実施形態の1つの開示される特徴は、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を含む組成物である。
【0005】
実施形態の別の開示される特徴は、炭素担持銀ナノ粒子を含むインクを調製することと、導電性表面上にインクを堆積させることと、を含む方法である。
【0006】
実施形態の別の開示された特徴は、電極である。電極は、導電性表面と、導電性表面上の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の教示は、以下の添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態を考慮することによって容易に理解することができる。
【0008】
【
図1】本開示のガス拡散電極を有する例示的な膜電極アセンブリの分解ブロック図を示す。
【
図2】表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子を炭素基材上に噴霧して、本開示のガス拡散電極を製造するために使用される例示的なプリンタのブロック図を示す。
【
図3】本開示のガス拡散電極を製造するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【
図4】本開示のガス拡散電極を製造するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【
図5】有機官能化銀ナノ粒子を含浸させた官能化微孔性炭素構造及び非官能化微孔性炭素構造の両方のSEM及びTEM画像を示す。
【
図6】様々な微孔性炭素構造についてのファラデー効率対セル電位のグラフを示す。
【
図7】種々の微孔性炭素構造についてのエネルギー効率対セル電位を示す。
【
図8】種々の微孔性炭素構造についての電流密度対セル電位を示す。
【
図9】様々な微孔性炭素構造についてのシングルパス変換率対セル電位を示す。
【
図10】種々の微孔性炭素構造についての一酸化炭素反応選択性対セル電位を示す。
【0009】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照番号は、図面に共通している同一の要素を示すために使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、ex-situプロセスを介して有機官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を有する例示的なガス拡散電極及びその製造方法を広く開示する。上述のように、付加価値化学物質及び合成燃料へのCO2の電気触媒変換を使用するCCUに世界的な関心がある。
【0011】
電気化学変換プロセスの鍵は、高い効率及び選択性、並びに長期安定性を有する電気触媒である。近年、Au、Ag、Zn、Pd、及びGaなどを含む、CO2をCOに選択的に還元することができる電気触媒の開発において著しい進歩が見られている。全ての候補の中で、銀は、中程度のコストとCO生成に対する高い触媒選択性を有するために、大規模用途で最も高い可能性を示している。Ag系電気触媒に関する広範な研究にもかかわらず、単純で拡張可能かつ費用効率の高い方法で、低減された過電圧での触媒選択性が向上した材料を開発することに課題が残っている。
【0012】
本開示は、炭素担持体又は構造の表面上にex-situで形成された窒素表面官能化銀ナノ粒子を堆積させることによって形成される炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を使用する。例えば、銀ナノ粒子は、炭素構造の表面上に添加される前に、炭素構造から離隔して表面官能化してもよい。換言すれば、完全に合成された銀ナノ粒子は、表面官能化銀ナノ粒子が形成された液体含有組成物から除去され、次いで炭素構造に添加される。いくつかの実施形態では、炭素構造は、微孔性又は非多孔性であってもよい。微孔性炭素構造は、CO2の電気触媒変換のためのガス拡散電極における電気触媒としてex-situで形成される表面官能化銀ナノ粒子で含浸されてもよい。炭素担持表面官能化銀ナノ粒子は、含浸法によってex-situで形成されてもよい。
【0013】
「炭素担持」は、炭素構造の表面上にある表面官能化銀ナノ粒子として定義することができる。炭素構造は、表面官能化銀ナノ粒子よりも大きくてもよい。例えば、炭素構造は、直径約50ナノメートル(nm)~約100nmであり得るのに対して、表面官能化銀ナノ粒子は、直径約5nm~約20nmであり得る。したがって、より小さい銀ナノ粒子を炭素構造の表面上に形成することができる。
【0014】
ナノ構造化銀触媒は、物質輸送の利点、並びにナノ材料のエッジ及びコーナー上のより高度に活性な部位を提供するので、それらのバルク対応物と比較して改善された性能を示す。ナノ材料の組成、サイズ、形態、多孔性、及び表面修飾を調整することによって、ナノ構造化触媒の挙動を特定の用途に合わせて調整することができる。
【0015】
表面改質は、触媒性能を改善するための有効なアプローチのうちの1つである。研究は、機能性分子が過電圧を減少させ得るか、又はCO選択性を改善し得ることを示唆しており、例えば、アミンでキャップされたAgナノ粒子は、COOH*中間体を安定させることによって、より良好な触媒性能を示す。
【0016】
そのような電気触媒の膜電極アセンブリ(Membrane Electrode Assembly、MEA)への統合は、望ましい製品を得るための別の重要な工程である。典型的なMEAは、2つのガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)と、界面に分散された触媒粒子を有するイオン交換膜と、を含み、その製造は、印刷において利用される様々なロールツーロール製造方法と同様である。CO2変換システムのためのMEAの開発における多大な努力にもかかわらず、低コスト、高標準性能、及び調整可能な特性を有するMEAを製造することは依然として困難である。
【0017】
本開示は、新規な炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子、及び効率的かつ選択的な電気触媒として炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を使用して電気化学的還元のためのMEAを調製するための拡張可能なアプローチを提供する。炭素構造は非多孔性であり得るが、微孔性炭素構造は、MEAの性能を改善する。表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を合成し、連続印刷/コーティング法によってGDL上に堆積される触媒インクに配合する。表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子は、担持されていない銀ナノ粒子の銀負荷量と比較して、銀負荷量を最大20倍低減することができる。高いファラデー効率及びCOに対する選択性を有するMEAの製造は、比較的低い過電圧下で実証される。
【0018】
図1は、本開示のガス拡散電極104を含む例示的な膜電極アセンブリ100を示す。膜電極アセンブリ100は、化合物を異なる望ましい化合物に変換するために使用されるフローセル電気触媒コンバータの一部であってもよい。本開示のガス拡散電極104は、より低いセル電位で非常に効率的である(例えば、変換を実行するためにより少ない電力を使用する)拡張可能な電極を提供し得る。
【0019】
膜電極アセンブリ100によって実行され得る1つの例示的な変換は、二酸化炭素(CO2)の一酸化炭素(CO)及び水素ガス(H2)への変換である。しかしながら、ガス拡散電極104は、フローセル電気触媒コンバータの文脈内で、他の種類の化合物の電気触媒変換のために使用され得ることに留意されたい。
【0020】
一実施形態では、膜電極アセンブリ100は、ガス拡散電極104を有するカソード102と、アニオン交換膜106と、酸化イリジウム電極110を有するアノード108と、を含む。一実施形態では、入口112は、カソード104を通してCO2を供給することができ、出口114は、カソード104からCO及びH2を運び去ることができる。入口116は、アノード110を通して水を供給することができ、出口は、アノード108から水及び酸素を運び去ることができる。
【0021】
一実施形態では、CO2のCO及びH2への変換を支援するために、基準電圧114を印加してもよい。例えば、セル電位は、電気触媒変換を実行するために、基準電圧を介して膜電極アセンブリ100に印加してもよい。本明細書で検討される実施例では、2.80ボルト(V)~3.80(V)のセル電位又は過電圧が印加された。
【0022】
一実施形態では、ガス拡散電極104は、本明細書に記載されているように、表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を用いて製造してもよい。ガス拡散電極104を製造する方法の詳細は、以下で更に詳細に検討される。ガス拡散電極104は、表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子を配合した触媒インクで炭素基材をコーティングし、次いで触媒インクを乾燥させることによって製造してもよい。
【0023】
一実施形態では、本開示のガス拡散電極104は、過電圧又は3.50V未満のセル電位において、98%を超える選択性で60%を超えるファラデー効率を有し得る。ガス拡散電極104は、3.50V未満のセル電位で25%を超えるCO
2のCOへのシングルパス変換率を有し得る。ガス拡散電極104は、3.00V~3.50Vのセル電位で75ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm
2)を超える電流密度を有し得る。ガス拡散電極104は、3.00Vのセル電位で25%を超えるエネルギー効率を有し得る。含浸微孔性炭素構造を有するガス拡散電極104と含浸微孔性炭素構造を有しないガス拡散電極104の様々な性能パラメータの比較を
図5~
図10に示し、本明細書で提供される実施例を参照して以下で更に詳細に検討する。
【0024】
一実施形態では、イオン交換部材106は、Dioxide MaterialsのSustainion X37-50-RTであってもよく、水酸化カリウム(KOH)で活性化され、純水で洗浄されてもよい。アノード110は、酸化イリジウム(IrO2)でコーティングされた炭素基材であってもよく、触媒は、上向きであるか、又はイオン交換部材106の方を向いている。
【0025】
一実施形態では、アノード液は、炭酸水素カリウム(KHCO3)であってもよい。カソード液フローチャンバは、二酸化炭素フローチャンバ102によって提供されるCO2から変換されたCO及びH2を捕捉し得る。上述のように、膜電極アセンブリは、フローセル電気触媒コンバータシステムにおいて使用されてもよい。アノード液、アノード110、及びイオン交換膜106について様々な例が提供されたが、他の材料が配備されてもよいことに留意されたい。
【0026】
図2は、ガス拡散電極104の製造のために調製される炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を噴霧するために使用することができる例示的なプリンタ200のブロック図を示す。
【0027】
一実施形態では、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208は、酢酸銀を窒素含有部分と混合することによって調製してもよい。例えば、窒素分子を有する化合物は、銀粒子の表面に付着することができる。
【0028】
一実施形態では、窒素含有部分は、アミン、アミド、イミド、又は窒素含有芳香族化合物を含んでもよい。アミンは、第一級アミン、第二級アミン、又は第三級アミンであってもよい。第一級アミンの例としては、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミンなどを挙げることができる。第二級アミンの例としては、ピペリジン、ピロリジン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジイソプロピルアミンなどを挙げることができる。第三級アミンの例としては、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミントリウンデシルアミン、トリドデシルアミンなどを挙げることができる。
【0029】
例示的なアミドとしては、プロパノアミド、ブタノアミド、ペンタノアミド、ヘキサノアミド、ベンズアミド、N-メチルブタンアミド、N-エチルブタンアミド、グルタミン、アスパラギンなどを挙げることができる。例示的なイミドとしては、スクシンイミド、マレイミド、グルタルイミド、フタルイミドなどを挙げることができる。例示的な窒素含有芳香族化合物としては、ピリジン、4-メチルピリジン、4-エチルピリジン、4-プロピルピリジン、ピロール、イミダゾール、4-メチルイミダゾールなどを挙げることができる。
【0030】
一実施形態では、銀ナノ粒子を官能化することは、ナノ材料特性を変化させて、水素結合、静電気力、ファンデルワールス力などの共有結合又は非共有結合を介して異なる窒素含有材料を組み立てることによって特定の官能性を付加することを指すことができる。
【0031】
一実施形態では、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208は、ドデシルアミンを用いて調製してもよい。したがって、銀ナノ粒子は、非共有結合を介してドデシルアミンを銀ナノ粒子に付着させることによって、炭素基材と結合するように官能化することができる。例えば、窒素分子を銀分子に配位させて非共有結合を形成することができる。以下の実施例1は、ドデシルアミンを有する炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208の例を記載している。
【0032】
実施例1:
【0033】
溶融ドデシルアミン(222.39グラム(g)、1.1997mol)を、オーバーヘッド撹拌システムと、温度計と、アルゴン(Ar)ラインと、を装備した1リットル(L)の3つ口丸底フラスコに添加した。反応フラスコを35℃の水浴中に浸漬し、撹拌を300回転/分(rotations per minute、RPM)に設定した。15ミリリットル(mL)のメタノールをフラスコに添加し、続いて75mLのデカリンを添加した。次いで、フェニルヒドラジン(16.2g、0.1498mol)を撹拌しながら添加し、温度を35℃で安定させた。反応温度を35~37℃に維持しながら、酢酸銀粉末(50g、0.2996mol)を混合物にゆっくり添加した。酢酸銀の添加にわたって撹拌を500RPMまでゆっくりと上昇させた。酢酸銀全体を添加したら、反応物を40℃にし、1時間撹拌した。
【0034】
1時間後、375mLのメタノールを添加し、10分間撹拌した。沈殿物を、2つの濾過媒体(底部にWhatman 934AHガラス繊維紙、上部にWhatman#54濾紙)を添加したブフナー漏斗で濾過した。濾過により青色のウェットケーキを得、これを125mLのメタノール中で10分間再スラリー化し、濾過した。洗浄を更に1回繰り返し、真空下で10分間乾燥させて、青灰色の銀ナノ粒子(AgNP)ウェットケーキ(33.75g)を得た。
【0035】
AgNPウェットケーキを、真空を-30水銀柱インチ(In Hg)に設定した室温の真空オーブンに入れた。全てのメタノールが除去されたら材料を除去して、29gの青灰色のAgNP粉末を得た。電気泳動光散乱(Electrophoretic Light Scattering、ELS)による粒径を測定したところ、より大きく、Zave:48.3ナノメートル(nm)、Zave(一次分布):12.2nm、D(1,0):9.1nmであった。
【0036】
次いで、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子を使用して、以下の実施例2によって記載されるように、微孔性炭素構造に含浸させた。
【0037】
実施例2:
【0038】
105ミリグラム(mg)のVulcan XC-72Rカーボンブラック(Cabot)を、音波処理によってヘキサン中に分散させ、次いで、カーボンブラックに、トルエン中に分散させた70mgのAgNP-DDA粒子(AC1538)を一晩含浸させた。濾過、洗浄及び一晩の真空乾燥の後、40重量%AgNP-DDA/C触媒としてマークされた生成物を得た。
【0039】
別の実施例では、表面官能化銀ナノ粒子を使用して、酸処理された微孔性炭素構造に含浸させた。微孔性炭素構造を酸処理する例は、以下の実施例3に記載されている。
【0040】
実施例3:
【0041】
300mgのカーボンブラックVulcan XC-72R(Cabot)を、120℃で20%硝酸(HNO3)を用いて官能化し、2時間還流させた。その後、官能化炭素を濾過し、濾液が中和されるまで脱イオン(DI)水で洗浄し、続いて110℃で一晩乾燥させた。
【0042】
105mgの官能化Vulcan XC-72Rカーボンブラックを、音波処理によってヘキサン中に分散させ、次いで、カーボンブラックに、トルエン中に分散させた70mgのAg-DDA粒子(AC1538)を一晩含浸させた。濾過、洗浄及び一晩の真空乾燥の後、40重量%Ag-DDA/C触媒としてマークされた生成物を得た。
【0043】
次いで、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208(酸処理あり又はなし)を、中央処理装置(central processing unit、CPU)206(プロセッサ又はコントローラとも呼ばれる)の制御下にあるスプレーノズル204を有するプリントヘッド202によって分注することができるインク形態に調製することができる。in-situ合成された炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208は、インクを調製するために、極性又は非極性溶媒と混合してもよい。極性溶媒の例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、水などを挙げることができる。非極性溶媒としては、例えば、トルエン、デカリン、ベンゼン、ヘキサンなどを挙げることができる。一実施形態では、インクを調製するために、いくつかの極性溶媒、いくつかの非極性溶媒、又は極性溶媒と非極性溶媒の両方の組合せを使用してもよい。例えば、溶媒は、90:10~10:90の比を有する水及びイソプロピルアルコールであってもよい。別の例では、溶媒は、純粋なイソプロピルアルコールであってもよい。表面官能化銀ナノ粒子208の固形分濃度は、0.1重量%~5重量%の範囲であってもよい。
【0044】
プリントヘッド202は、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を基材210の表面にわたって分布させるために、x-y座標系214に沿って移動し得る。実施例4は、炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208(酸処理あり又はなし)がインク形態に調製される方法の例を記載している。
【0045】
実施例4:
【0046】
150mgの上記40重量%AgNP-DDA/C粉末を18.07mLのトルエン、1.29gの2.5重量%Sustainion XA-9/トルエン分散液と混合することによって、カソード触媒用インクを調製した。インクを60分間超音波処理して完全に混合した。
【0047】
次いで、インク形態の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を基材210上に印刷してもよい。基材210は、炭素基材であってもよい。炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208は、インク形態の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を基材210に噴霧することによって印刷してもよい。
【0048】
一実施例では、インク形態の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を、超音波スプレーコーターを用いて、音波ヘッドガス拡散層基材から30ミリメートル(mm)のスタンドオフ距離で、0.17立方メートル(m3)/時間の送達で34キロパスカル(kPa)の窒素流ガスでスプレーコーティングした。音波処理電力は1.5ワット(W)であり、シリンジポンプを介して0.3ミリリットル/分(mL/min)のインク送達を伴う円錐渦送達パターンであった。固定超音波(例えば、Sonotek-Vortex)プリントヘッドを有するX-Yボールスクリューステージを介して印刷を行った。プリントヘッドは、25mm/秒(mm/sec)の線速度で、間に5mmの間隔ギャップを有する12本の線の蛇行経路からなる60mm×60mmのゾーンであった。シリンジ内のストリングバーを用いてインクを撹拌した。
【0049】
炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208をインク形態で調製し、基材210上に印刷した後、基材210上の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を、室温で24時間乾燥してもよい。
【0050】
一例では、2つの異なるガス拡散電極104を調製した。第1の電極は、酸処理された炭素を含まない炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を15回通過させた。第2の電極は、酸処理された炭素を含む炭素担持表面官能化銀ナノ粒子208を15回通過させた。
図5~
図10は、上述の炭素含浸を使用せずに表面官能化銀ナノ粒子を用いて製造されたガス拡散電極と比較した、製造された異なる電極の画像比較及び各電極の比較性能を示す。
【0051】
図5は、異なる種類の電極の走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope、SEM)及び透過型電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)画像を示す。例えば、SEM画像502は、酸処理されておらず、かつ表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を有するガス拡散電極を示す。SEM画像504は、酸で処理され、かつ表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造を有するガス拡散電極を示す。SEM画像502及び504は、微孔性炭素担持体構造上の表面官能化銀ナノ粒子の均一な分布を示すように見える。しかしながら、表面官能化銀ナノ粒子は、酸処理を受けていない微孔性炭素担持体構造(例えば、SEM画像502)と比較して、酸処理を受けた微孔性炭素担持体構造(例えば、SEM画像504)をより多く凝集させるように見える。これらの観察は、酸処理されておらず、かつ表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造のTEM画像506、及び酸で処理され、かつ表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造のTEM画像508によって更に確認される。
【0052】
図6は、上述した2つの例示的な電極についてのファラデー効率対セル電位のグラフ600を、微孔性炭素担持体構造を有しない電極と比較して示す。上述したように、微孔性炭素担持体構造を有しない電極の銀負荷量は、微孔性炭素担持体構造を有する2つの電極(例えば、0.1mg/cm
2未満又は約0.08mg/cm
2)と比較してはるかに高い(例えば、約1.6mg/cm
2)。
【0053】
ファラデー効率は、所望の電気化学反応に関与する特定の電子効率の尺度である。グラフ600に示されるように、2.8V~3.8Vの電圧領域での試験を通して、微孔性炭素構造(処理済み及び未処理)を有する電極についての一酸化炭素に対するファラデー選択性は、微孔性炭素構造を有しない電極と同様であるがわずかに下回ることが分かった。酸処理された微孔性炭素構造を有する電極は、2.8V~3.8Vの電圧領域にわたって、微孔性炭素構造を有しない電極と同様の傾向線を示した。しかしながら、全ての電極が60%を超えるファラデー効率を示した。
【0054】
図7は、異なる焼結条件における上述の4つの例示的な電極についてのエネルギー効率対セル電位のグラフ700を示す。エネルギー効率は、電気化学変換プロセスの真のエネルギー効率の尺度である。これは、ファラデー効率をセル過電圧と乗算することによって行われ、これにより実際のエネルギー入力が得られる。
【0055】
グラフ700は、2.8V~3.8Vの電圧領域における試験を通して、微孔性炭素構造(処理済み及び未処理)を有する電極のエネルギー効率が、微孔性炭素構造を有しない電極と同様であるが、わずかに下回ることが見出されたことを示す。酸処理された微孔性炭素構造を有する電極は、2.8V~3.8Vの電圧領域にわたって、微孔性炭素構造を有しない電極と同様の傾向線を示した。全ての電極は、2.8Vのセル電位で25%を超えるエネルギー効率を示した。
【0056】
図8は、異なる焼結条件における上述した4つの例示的な電極についての電流密度(単位:mA/cm
2)対セル電位のグラフ800を示す。電流密度は、セルに印加することができる電荷量の尺度であり、最大スループット又は変換率に直接関連する。これにより、電流密度は、CO
2電気分解のスケールアップ経済性を考慮するときの重要な因子となる。
【0057】
グラフ800は、3.00Vにおいて、微孔性炭素構造を有しない電極が最も高い電流密度を有し、酸処理された微孔性炭素構造を有する電極が次に高い電流密度を有し、未処理の微孔性炭素構造を有する電極が最も低い電流密度を有することを示した。グラフ800は、酸処理された微孔性炭素構造を有する電極について、電圧が増加するにつれて電流密度が改善することを示す。未処理の微孔性炭素構造を有する電極は、酸処理された微孔性炭素構造を有する電極ほど良好な性能を示さなかった。全ての電極は、2.80Vのセル電位で60mA/cm2を超える電流密度を示した。
【0058】
図9は、異なる焼結条件における上述の4つの例示的な電極についてのシングルパス変換率対セル電位のグラフ900を示す。シングルパス変換率は、変換システムのスケールアップ経済性にしばしば関連する性能測定基準である。この場合、出口CO流量が測定され、入力CO
2のモル変換率を計算するために使用される。
【0059】
グラフ900は、未処理の微孔性炭素構造を有する電極が最も高いシングルパス変換率を有し、微孔性炭素構造を有しない電極が次に高いシングルパス変換率を有し、酸処理された微孔性炭素構造を有する電極が最も低いシングルパス変換率を有することを示す。グラフ900は、電圧が増加するにつれて、全ての電極についてシングルパス変換率が増加することを示す。全ての電極は、2.8V~3.8Vのセル電位で20%を超えるシングルパス変換率を示した。
【0060】
図10は、異なる焼結条件における上述の4つの実施例の電極についてのCO反応選択性対セル電位のグラフ1000を示す。CO反応選択性は、セル動作中に生成されるH
2に対するCOのモル比によって定量される。グラフ1000によって示されるように、CO選択性は、概して、約2.8Vのより低い電位で非常に高く、4つ全てのデバイスについて98%超に達する。印加電圧の増加とともに、全ての電極について選択性が減少する傾向があるが、全ての電極は、より低い電圧(例えば、3.0V及び3.2V)で非常に高く一貫したCO反応選択性を示した。
【0061】
種々の電極の触媒性能特性の評価に基づいて、微孔性炭素構造を有する電極(酸処理あり又はなし)は、含浸させた微孔性炭素構造を有しない電極に匹敵する目標触媒性能を提供し得ることが見出された。例えば、本開示の炭素担持表面官能化銀ナノ粒子を有する電極は、炭素担持されていない表面官能化銀ナノ粒子を有する別の電極と比較して、同じ目標触媒性能レベルを提供することができる。加えて、電極の銀負荷量は、炭素担持されていない表面官能化銀ナノ粒子を有する別の電極と比較して2倍以上低い。酸前処理は、ファラデー効率、エネルギー効率、及び電流密度を更に改善し、触媒系をCO2還元用途にとって非常に魅力的なものにする。
【0062】
より望ましい触媒挙動は、銀と炭素担持体との間の相互作用の強化によって説明することができる。より具体的には、HNO3などの強酸は、炭素表面を活性化させて、おそらく炭素表面に-COOH基を形成することが報告されている。炭素表面を活性化させて、銀と炭素担持体との間の相互作用を増大させるために他の方法を用いてもよい。例えば、他の処理としては、プラズマ処理、塩基、又は他の種類の化学処理を挙げることができる。銀ナノ粒子は、活性炭表面上に存在するカルボン酸基及びカルボニル基と強い相互作用を有し、より良好な電子移動特性、したがってより良好な触媒性能をもたらす。
【0063】
図3及び
図4は、それぞれ、本開示のガス拡散電極を製造するための例示的な方法300及び400のフローチャートを示す。一実施形態では、方法300及び400の1つ以上のブロックは、中央制御装置又はプロセッサ(例えば、プリンタ200)の制御下で、又は手動で実行する工程と組み合わせて、様々なツール又は機械によって実行されて、本明細書に記載される様々な化合物を調製し得る。
【0064】
図3の方法300を参照すると、ブロック302において、方法300が開始する。ブロック304において、方法300は、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を含むインクを調製する。例えば、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子は、合成中に炭素構造から単離されて表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子を形成する表面官能化銀ナノ粒子を微孔性炭素構造に含浸させることによって調製することができる。
【0065】
一実施形態では、銀ナノ粒子は、窒素表面官能化銀ナノ粒子であってもよい。一実施形態では、窒素表面官能化銀ナノ粒子は、酢酸銀を窒素含有部分と混合することによって調製してもよい。いくつかの実施形態では、窒素含有部分は、アミン、アミド、イミド、又は窒素含有芳香族化合物を含んでいてもよく、これらは全て、上記の本開示内に記載されている。
【0066】
一実施形態では、窒素表面官能化銀ナノ粒子は、実施例1で上述したように、酢酸銀をドデシルアミンと混合することによって調製してもよい。
【0067】
一実施形態では、窒素表面官能化ナノ粒子を炭素構造上に堆積させてもよい。炭素構造は、多孔性又は非多孔性の炭素構造であってもよい。微孔性炭素構造の場合、微孔性炭素構造は、実施例2に記載されるように、窒素表面官能化ナノ粒子を含浸させてもよい。一実施形態では、実施例3に記載されるように、窒素表面官能化銀ナノ粒子を含浸させる前に、微孔性炭素構造を酸で官能化してもよい。微孔性炭素構造としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを挙げることができる。
【0068】
次いで、炭素担持窒素表面官能化銀ナノ粒子を用いてインクを調製することができる。一実施形態では、窒素表面官能化銀ナノ粒子を含浸させた微孔性炭素構造は、プリントヘッドによって制御されるスプレーノズルを介して印刷することができる触媒インクとして調製してもよい。例えば、触媒インクは、可動プリントヘッドを用いて炭素基材上に噴霧することができる。触媒インクには、実施例4で上述したように、トルエンを配合することができる。
【0069】
ブロック306において、方法300は、導電性表面上にインクを堆積させる。例えば、インクは触媒インクであってもよい。触媒インクは、炭素基材上に噴霧又は印刷することができる。触媒インクは、基材を均一にコーティングするために、蛇行パターンで印刷することができる。
【0070】
触媒インクを乾燥させて、ガス拡散電極を形成することができる。一実施形態では、触媒インクを室温で24時間乾燥させて、ガス拡散電極を形成することができる。ガス拡散電極は、フローセル電気触媒コンバータ内に配備される膜アセンブリ電極の一部として組み立てられてもよい。ガス拡散電極は、上述のように、CO2のCO及びH2への変換を実行することができる。ブロック308において、方法300が終了する。
【0071】
図4の方法400を参照すると、ブロック402において、方法400が開始する。ブロック404において、方法400は、表面官能化銀ナノ粒子を調製する。一実施形態では、表面官能化銀ナノ粒子は、酢酸銀を、フェニルヒドラジン(hdrazine)、メタノール、デカリン、及びドデシルアミンの混合物と混合することによって調製してもよい。酢酸銀粉末、フェニルヒドラジン(hdrazine)、メタノール、デカリン、及びドデシルアミンの混合物を加熱してもよい。次いで、メタノールを添加して、表面官能化銀ナノ粒子を沈殿させてもよい。調製の詳細は、上記実施例1に記載されている。
【0072】
ブロック406において、方法400は、微孔性炭素構造を官能化する。例えば、微孔性炭素構造は、硝酸などの強酸で微孔性炭素構造を処理することによって官能化してもよい。微孔性炭素構造を官能化する例は、上記実施例3に記載されている。
【0073】
ブロック408において、方法400は、官能化された微孔性炭素構造を表面官能化銀ナノ粒子と混合して、表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子を形成する。上述の実施例3は、官能化微孔性炭素構造が表面官能化銀ナノ粒子とどのように混合されるかの例を提供する。
【0074】
ブロック410において、方法400は、表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子を触媒インクに調製する。例えば、表面官能化銀ナノ粒子炭素粒子は、一定流量のアルゴン下で撹拌しながらトルエンと混合してもよい。トルエンを用いて触媒インクを調製する詳細は、上の実施例4に記載されている。
【0075】
ブロック412において、方法400は、触媒インクを炭素基材上に印刷する。例えば、触媒インクは、プリントヘッドによって制御されるスプレーノズルを介して蛇行経路内の窒素流ガスを用いて炭素基材上に印刷又は噴霧することができる。
【0076】
ブロック414において、方法400は、触媒インクを乾燥させる。例えば、触媒インクを室温で24時間乾燥させて、ガス拡散電極の製造を完成させることができる。一実施形態では、ガス拡散電極は、フローセル電気触媒コンバータ内に配備される膜アセンブリ電極の一部として組み立てられてもよい。ガス拡散電極は、上述のように、CO2のCO及びH2への変換を実行することができる。ブロック416において、方法400が終了する。
【0077】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされてもよく、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。
【外国語明細書】