(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088450
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】診断方法、診断プログラム、及び診断装置
(51)【国際特許分類】
H02G 1/10 20060101AFI20240625BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20240625BHJP
H02G 9/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H02G1/10
G01K1/14 L
H02G9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203631
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】湊山 海咲
(72)【発明者】
【氏名】中津 友里
(72)【発明者】
【氏名】小灘 聰一郎
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【テーマコード(参考)】
2F056
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2F056CL04
5G352EA05
5G369AA16
5G369BA02
5G369EA04
(57)【要約】
【課題】ケーブルの状態の診断精度を向上できる診断方法、診断プログラム、及び診断装置を提供する。
【解決手段】ケーブル40の状態を診断する診断方法は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の測定値を取得することと、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量がケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たし、かつ、診断対象部分の温度がケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たす場合にケーブル40の診断対象部分の状態が異常であると判定することとを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断対象部分と前記診断対象部分以外の部分とを含むケーブルの状態を診断する診断方法であって、
前記診断対象部分は、前記ケーブルの温度の測定対象部分の一部に対応し、
前記診断対象部分以外の部分は、前記診断対象部分に対応する測定対象部分と異なる測定対象部分に対応し、
前記ケーブルの診断対象部分に対応する測定対象部分における温度の測定値を前記ケーブルの診断対象部分の温度として取得することと、
前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する測定対象部分における温度の測定値を前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度として取得することと、
前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たし、かつ、前記ケーブルの診断対象部分の温度が前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たす場合に、前記診断対象部分の状態が異常であると判定することと
を含む、診断方法。
【請求項2】
前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすと判定した後で、前記ケーブルの診断対象部分の温度が前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定することを含む、請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすように、前記診断対象部分以外の部分を前記ケーブルの異なる部分に変更することを含む、請求項2に記載の診断方法。
【請求項4】
前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、前記ケーブルの診断対象部分の温度及び前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度のそれぞれの変化量に基づいて算出される前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値に基づく条件を含み、
前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件は、前記診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく条件を含む、
請求項1に記載の診断方法。
【請求項5】
前記診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく条件は、前記ケーブルの診断対象部分の温度が判定範囲から外れることを含み、
前記判定範囲は、前記ケーブルに流れる電流の大きさと前記ケーブルの前記診断対象部分の周囲の環境とに基づいて設定される、請求項4に記載の診断方法。
【請求項6】
前記前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値は、前記ケーブルの診断対象部分の温度の変化量に前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数を乗じた値と、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度の変化量に前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数を乗じた値との差の絶対値として算出され、
前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数は、前記ケーブルの診断対象部分の周囲の環境に基づいて設定され、
前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数は、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の周囲の環境に基づいて設定され、
前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値に基づく条件は、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値が判定値以上であることを含み、
前記判定値は、前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数及び前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数に基づいて設定される、
請求項4に記載の診断方法。
【請求項7】
前記前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値は、前記ケーブルの診断対象部分の温度が変化し始める時間と、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度が変化し始める時間との差に基づいて補正される、請求項4に記載の診断方法。
【請求項8】
コンピュータに、請求項1から7までのいずれか一項に記載の診断方法を実行させる診断プログラム。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の診断方法を実行する制御部を備える、診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、海底ケーブルの状態の診断方法、診断プログラム、及び診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海底ケーブルの温度と電流との経時的推移から海底ケーブルを取り囲む地面の熱抵抗を計算し、地面の熱抵抗から海底ケーブルの被覆高さを推定することによって海底ケーブルを監視する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルの状態は、ケーブルが海底に埋設されているときにケーブルを覆っている地面の土砂等の被覆高さだけでなく、ケーブルの外部被覆の損傷又はケーブルの断線等の他の種々の要因で特定される。ケーブルの状態の診断において、種々の要因を考慮することが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、ケーブルの状態の診断精度を向上できる診断方法、診断プログラム、及び診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)幾つかの実施形態に係る診断方法は、診断対象部分と前記診断対象部分以外の部分とを含むケーブルの状態を診断する診断方法である。前記診断対象部分は、前記ケーブルの温度の測定対象部分の一部に対応する。前記診断対象部分以外の部分は、前記診断対象部分に対応する測定対象部分と異なる測定対象部分に対応する。前記診断方法は、前記ケーブルの診断対象部分に対応する測定測定対象部分における温度の測定値を前記ケーブルの診断対象部分の温度として取得することと、前記ケーブルの診断対象部分に対応する測定対象部分における温度の測定値を前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度として取得することと、前記ケーブルの診断対象部分及び前記診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たし、かつ、前記診断対象部分の温度が前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たす場合に、前記診断対象部分の状態が異常であると判定することとを含む。このようにすることで、ケーブルの各部の状態が継続的に診断される。また、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0007】
(2)一実施形態に係る診断方法は、上記(1)において、診断対象部分と、前記診断対象部分以外の部分とのそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすと判定した後で、前記診断対象部分の温度が前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定することを含んでよい。このようにすることで、ケーブルの各部の状態が継続的に診断される。また、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0008】
(3)一実施形態に係る診断方法は、上記(2)において、診断対象部分と、前記診断対象部分以外の部分とのそれぞれの温度の変化量が前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすように、前記診断対象部分以外の部分を前記ケーブルの異なる部分に変更することを含んでよい。このようにすることで、地質のデータが無くても地質が異なると想定してケーブル40の状態が診断される。その結果、ケーブル40の状態の診断精度が向上する。
【0009】
(4)一実施形態として、上記(1)から(3)までのいずれか1つにおいて、前記ケーブルの診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、前記診断対象部分の温度及び前記診断対象部分以外の部分の温度のそれぞれの変化量に基づいて算出される前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値に基づく条件を含んでよい。前記ケーブルの診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件は、前記診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく条件を含んでよい。このようにすることで、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0010】
(5)一実施形態として、上記(4)において、前記診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく条件は、前記ケーブルの診断対象部分の温度が判定範囲から外れることを含んでよい。前記判定範囲は、前記ケーブルに流れる電流の大きさと前記ケーブルの前記診断対象部分の周囲の環境とに基づいて設定されてよい。このようにすることで、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0011】
(6)一実施形態として、上記(4)又は(5)において、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値は、前記診断対象部分の温度の変化量に前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数を乗じた値と、前記診断対象部分以外の部分の温度の変化量に前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数を乗じた値との差の絶対値として算出されてよい。前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数は、前記ケーブルの診断対象部分の周囲の環境に基づいて設定されてよい。前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数は、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の周囲の環境に基づいて設定されてよい。前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値に基づく条件は、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値が判定値以上であることを含んでよい。前記判定値は、前記ケーブルの診断対象部分に対応する係数及び前記ケーブルの診断対象部分以外の部分に対応する係数に基づいて設定されてよい。このようにすることで、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0012】
(7)一実施形態として、上記(4)から(6)までのいずれか1つにおいて、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値は、前記ケーブルの診断対象部分の温度が変化し始める時間と、前記ケーブルの診断対象部分以外の部分の温度が変化し始める時間との差に基づいて補正されてよい。このようにすることで、ケーブル40の発熱を考慮してケーブルの各部の状態が診断される。その結果、ケーブルの状態の診断精度が向上する。
【0013】
(8)幾つかの実施形態に係る診断プログラムは、コンピュータに、上記(1)から(7)までのいずれか1つの診断方法を実行させる。このようにすることで、ケーブルの各部の状態が継続的に診断される。また、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【0014】
(9)幾つかの実施形態に係る診断装置は、上記(1)から(7)までのいずれか1つの診断方法を実行する制御部を備える。このようにすることで、ケーブルの各部の状態が継続的に診断される。また、ケーブルの各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブルの各部の状態の診断精度が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る診断方法、診断プログラム、及び診断装置によれば、ケーブルの状態の診断精度が向上される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る診断システムの構成例を示す模式図である。
【
図2】一実施形態に係る診断システムの構成例を示すブロック図である。
【
図4A】地中に埋設されているケーブルの例を示す断面図である。
【
図4B】海底にほぼ露呈しているケーブルの例を示す断面図である。
【
図5】一実施形態に係る診断方法の手順例を示すフローチャートである。
【
図6】複数の異なる地質を通るケーブルの構成例を示す模式図である。
【
図7】ケーブルの埋設状態と温度分布との関係の一例を示す図である。
【
図8A】ケーブルの発熱温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図8B】ケーブルのX地点の温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図8C】ケーブルのY地点の温度の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の一実施形態に係る診断システム1(
図1参照)は、洋上風力発電装置等に接続される海底ケーブルの状態を診断する。以下、診断システム1の実施形態が、比較例と対比しながら説明される。
【0018】
(比較例)
比較例として、ダイバーによる目視確認、又は、ソナー若しくはROV(Remotely operated vehicle)等の装置による確認によって海底ケーブルを診断する手法が考えられる。比較例に係る診断手法は、常時実行できる手法ではなく、例えば1年に1回又は数年に1回等のタイミングでしか実行されない。海底ケーブルの状態は、海流又は台風等による洗掘若しくは地震による堆積を含む自然現象、又は、錨若しくは漁具の接触を含む人的活動等を原因として突発的に変化することがある。比較例に係る診断手法は、海底ケーブルの突発的な状態変化をすぐに検知できない。海底ケーブルの状態変化をすぐに検知できないことによって、状態変化の原因の特定が困難になる。また、海底ケーブルが屈曲等によって発熱する状態になった場合に、状態変化が発見されていないことによって送電できる電力量が制限されたり、海底ケーブルそのものが劣化したりする。また、発熱によって電力損失が増大する。
【0019】
比較例に係る診断手法の他の問題点として、診断を実行するためのコスト又は時間がかかる。また、比較例に係る診断手法は、悪天候等に起因して海洋の状態が荒れている場合に実行できなくなる。また、第1の比較例に係る診断手法において、海底ケーブルが埋設されている部分における堆積物又は海洋生物の付着によって目視確認による診断精度が低下する。
【0020】
そこで、本開示は、海底ケーブルの状態として、海底ケーブルが海底に埋設されているときに海底ケーブルを覆っている地面の土砂等の被覆高さ、又は、海底ケーブルの外部被覆の損傷若しくは海底ケーブルの断線等の種々の状態を継続的に、簡便に、又は目視する必要なく診断できる診断システム1(
図1参照)を説明する。
【0021】
(本開示の実施形態)
図1に示されるように、一実施形態に係る診断システム1は、診断装置10と、温度測定装置20と、表示装置30とを備える。診断システム1は、ケーブル40の状態を診断する。
【0022】
本実施形態において、ケーブル40は、洋上風力発電装置70で発電した電力の陸上82への輸送、若しくは、洋上風力発電装置70と陸上82の診断装置10等の設備との間での通信、又は、他の種々の用途で用いられるために、海底81を通るように地中80に埋設されている海底ケーブルであるとする。ケーブル40が電力を輸送する先、又は、ケーブル40が通信で接続される先は陸上82の設備に限られず海上又は海中等の設備であってもよい。
【0023】
ケーブル40は、海底81の凹凸によって、地中80に埋設されている部分と、海底81が掘れていることによって地中80から海中84に露呈している部分とを含む。地中80に埋設されている部分は、埋設部分51及び埋設部分53として例示されている。地中80から海中84に露呈している部分は、露呈部分52として例示されている。ケーブル40は、海中84に露呈していないものの地中80への埋設深さが浅くなっている部分を含む。地中80への埋設深さが浅くなっている部分は、浅埋設部分54として例示されている。
【0024】
露呈部分52又は浅埋設部分54は、海底81が海流で削られる洗掘という現象で海底81の形状が凹部になることによって生じることがある。露呈部分52又は浅埋設部分54は、地震等による海底81の変動によってケーブル40が浮き上がることによって生じることもある。
【0025】
ケーブル40は、洋上風力発電装置70に接続するために地中80から海中84に引き出される部分を含む。地中80から海中84に引き出される部分は、境界部分55として例示されている。
【0026】
海底ケーブルは、露呈部分52又は浅埋設部分54に対する漁具又は錨等の衝突によって屈曲したり破損したりしやすくなる。診断システム1は、海底ケーブルが海中84に露呈している状態又は露呈に近い状態になっているか診断してよい。
【0027】
海底ケーブルの温度は、地中80に埋設されている場合と、海中84に露呈している場合又は海中84にほぼ露呈している場合とで異なる。そこで、本実施形態に係る診断システム1において、温度測定装置20は、ケーブル40の少なくとも一部の温度を測定する。診断装置10は、ケーブル40の少なくとも一部の温度に基づいて、ケーブル40の状態として、ケーブル40が地中80に埋設されているか海中84に露呈しているかを診断する。診断装置10は、ケーブル40の埋設状態だけでなく、ケーブル40における発熱の状態を診断してもよい。表示装置30は、ケーブル40の状態の診断結果を表示する。
【0028】
(診断システム1の構成例)
以下、
図2に例示される診断システム1の構成例が説明される。
【0029】
<診断装置10>
診断装置10は、後述するように、温度測定装置20によって測定したケーブル40の各部の温度に基づいてケーブル40の状態を診断し、診断結果を表示装置30に表示する。後述するように、ケーブル40の各部の温度の測定は、ケーブル40に接続したファイバ(センサ)ありきである。ケーブル40の各部の温度をケーブル40の長手方向に沿って測定する場合において、温度測定装置20に接続される、ケーブル40に沿ったファイバがセンサとして機能する。ケーブル40が海底ケーブルである場合、後述するようにケーブル40の中に内在しているファイバのうち空きファイバとなっているファイバがセンサとして利用されてよい。
【0030】
診断装置10は、制御部12と、記憶部14と、インタフェース16とを備える。
【0031】
制御部12は、診断装置10の各構成部を制御する。制御部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。制御部12は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。
【0032】
記憶部14は、制御部12の動作に用いられる各種情報、又は、制御部12の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部14は、制御部12のワークメモリとして機能してよい。記憶部14は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部14は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含んで構成されてよい。記憶部14は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として構成されてもよい。記憶部14は、制御部12に含まれてもよい。
【0033】
記憶部14は、ケーブル40の埋設時の情報を格納してよい。ケーブル40の埋設時の情報は、ケーブル40が正常に埋設された際のケーブル40の埋設位置又は埋設深さを含んでよい。ケーブル40の埋設時の情報は、ケーブル40が正常に埋設された直後、又は、ケーブル40のメンテナンスが正常に行われた直後において、ケーブル40に電流が流れていないときのケーブル40の各部の温度の測定値を含んでよい。ケーブル40の埋設時の情報は、ケーブル40を埋設した場所の地質に関する情報を含んでよい。地質に関する情報は、地中種別又は地中熱伝導率を含んでよい。記憶部14は、ケーブル40の埋設後の情報を格納してよい。ケーブル40の埋設後の情報は、ケーブル40に電流が流れているときのケーブル40の各部の温度の測定値を含んでよい。ケーブル40の埋設後の情報は、ケーブル40に流れる電流の大きさと、ケーブル40に印加される電圧の大きさと、ケーブル40の各部の温度とを関連づけたデータを含んでよい。記憶部14は、ケーブル40における温度測定の特性を含んでもよい。
【0034】
インタフェース16は、診断装置10を、温度測定装置20又は表示装置30等と通信可能に接続する通信デバイスを含んで構成される。通信デバイスは、例えば4G(4th Generation)若しくはLTE(Long Term Evolution)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に基づいて通信可能に構成されてよい。通信デバイスは、例えばLAN(Local Area Network)の通信規格に基づいて通信可能に構成されてよい。通信デバイスは、有線又は無線で通信可能に構成されてよい。
【0035】
インタフェース16は、表示デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。インタフェース16は、スピーカ等の音声出力デバイスを含んで構成されてよい。インタフェース16は、これらに限られず、他の種々の出力デバイスを含んで構成されてよい。
【0036】
インタフェース16は、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでよい。インタフェース16は他の計算機又は診断装置10を含んで構成されてもよい。入力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、診断装置10でケーブル40の状態を診断するためのパラメータ等を入力可能に構成されてよい。
【0037】
診断装置10は、PC(Personal Computer)として構成されてよいし、少なくとも1台のサーバ装置として構成されてよい。診断装置10は、クラウドコンピューティングのシステムで実現されてもよい。
【0038】
<温度測定装置20>
温度測定装置20は、ケーブル40の少なくとも一部の温度を測定する。ケーブル40の中で温度測定装置20が温度を測定する対象とする部分は、測定対象部分とも称される。診断システム1によって長大なケーブル40の全体の埋設状況又は断線状況等を診断するために、ケーブル40の中の数百点又は数千点以上の多数の部分の温度が測定される必要がある。測定対象部分は、ケーブル40の長手方向に沿って、例えば1m間隔等の所定の間隔で設定されてよいし、不定間隔で設定されてもよい。本実施形態において、ケーブル40は、
図3に例示されるように、電力線41と光ファイバ42と被覆43とを備えるとする。電力線41及び光ファイバ42は、被覆43の内部で保護されている。本実施形態において、温度測定装置20は、光ファイバ42を利用してケーブル40の長手方向の各部の温度を測定する。温度測定に用いられる光ファイバ42は、DTS(Distributed Temperature Sensor)とも称される。
【0039】
具体的に、温度測定装置20は、光ファイバ42にパルス光を送信する。光ファイバ42に入射したパルス光は、光ファイバ42の種々の位置においてラマン散乱によって散乱される。ラマン散乱によって散乱されて生じる光は、ラマン散乱光とも称される。ラマン散乱光の少なくとも一部は、光ファイバ42の入射側に戻る。温度測定装置20は、ファイバの入射側に戻ってくるラマン散乱光に基づく信号を取得する。
【0040】
ラマン散乱光は、入射したパルス光の波長から長波長側にシフトしたストークス光と、入射したパルス光の波長から短波長側にシフトしたアンチストークス光とを含む。ラマン散乱光の各成分の強度は、ラマン散乱が起こった位置における光ファイバ42の温度に依存する。温度測定装置20は、反射によって戻ってきたラマン散乱光を解析することによってその光信号が散乱された位置における光ファイバ42の温度を算出できる。また、温度測定装置20は、光信号を送信してから反射によって光信号が戻ってくるまでの時間に基づいて、受信した光信号が反射された位置を算出できる。したがって、温度測定装置20は、光ファイバ42の各位置における光ファイバ42の温度を算出できる。
【0041】
光ファイバ42の各部の温度は、光ファイバ42の各部に対応するケーブル40の各部の温度と略一致するとみなされる。温度測定装置20は、光ファイバ42の各部の温度を測定することによって、ケーブル40の各部の温度を測定できる。本実施形態において、1m間隔でケーブル40の各部の温度が測定されるとする。温度を測定する間隔は、1mに限られず、種々の長さに設定されてよい。
【0042】
温度測定装置20は、ケーブル40の温度の測定対象部分に設置された光ファイバ42と異なる温度センサによってケーブル40の測定対象部分の温度を測定するように構成されてよい。温度センサは、ケーブル40の被覆43の外側に取り付けられてもよいし、被覆43の内部に埋め込まれてもよい。温度センサは、ケーブル40の接続部に取り付けられてもよい。
【0043】
温度測定装置20は、光ファイバ42を利用した測定方式、又は、温度センサを利用した測定方式に限られず、他の種々の方式でケーブル40の測定対象部分の温度を測定するように構成されてよい。
【0044】
<表示装置30>
表示装置30は、診断装置10によるケーブル40の状態の診断結果を表示する。表示装置30は、ケーブル40の少なくとも一部の温度の測定結果、又は、温度の測定結果の時間変化等を含む種々のデータを表示してよい。表示装置30は、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。表示装置30は、診断装置10のインタフェース16の表示デバイスとして診断装置10に含まれてもよい。診断装置10と、温度測定装置20と、表示装置30とは、一体に構成されてよい。診断装置10と、温度測定装置20と、表示装置30との一部の組み合わせが一体に構成されてもよい。診断装置10と、温度測定装置20と、表示装置30とのそれぞれは、別体として構成されてもよい。
【0045】
診断システム1は、ケーブル40の状態の診断結果を音声で出力するスピーカを備えてもよいし、他の種々の出力デバイスを備えてよい。診断システム1は、ケーブル40の状態の診断結果を出力するデバイスとして、表示装置30に加えて他の出力デバイスを備えてよいし、表示装置30の代わりに他の出力デバイスを備えてもよい。
【0046】
(診断システム1の動作例)
上述したように、本実施形態に係る診断システム1において、診断装置10は、ケーブル40の測定対象部分の温度の測定値に基づいてケーブル40の診断対象部分の状態を診断できる。
【0047】
例えば
図4A及び
図4Bに示されるように、ケーブル40の地中80の埋設深さに応じてケーブル40から海中84に伝わる熱量が異なる。
図4Aに例示されるように、ケーブル40が地中80の深くに埋設されている場合、海中84の海流85によってケーブル40から奪われる熱量は少なくなる。一方で、
図4Bに例示されるように、ケーブル40が地中80から海中84に露呈しそうになっている場合、又は、ケーブル40が海中84に露呈している場合、海中84の海流85のうちケーブル40に近い一部の海流86によってケーブル40から奪われる熱量が多くなる。ケーブル40の埋設異常によってケーブル40上の土砂が低減することによってケーブル40が海水に近くなったり海水に触れたりする。ケーブル40が海水に近くなったり海水に触れたりすることによってケーブル40は海水に熱を奪われる。ケーブル40が海水に熱を奪われることによって、ケーブル40のうち海水に近くなったり海水に触れたりしている部分の温度は、ケーブル40が正常に埋設されている部分の温度よりも相対的に低くなる。したがって、ケーブル40の診断対象部分の温度が低くなっている部分は、海水に熱を奪われており、ケーブル40上の土砂量が低減している埋設異常の状態になっていると判断される。
図4Aと
図4Bとの比較において、ケーブル40の診断対象部分の埋設位置が海中84に近いほど、ケーブル40の診断対象部分の温度が低くなる。したがって、診断装置10は、ケーブル40の各部の温度に基づいて、ケーブル40の各部の埋設位置を診断できる。
【0048】
また、ケーブル40が屈曲したり破損したりしている場合、ケーブル40の電力線41の抵抗値が増大し得る。電力線41の抵抗値の増大によって屈曲部又は破損部の発熱量が増大する。ケーブル40の中で発熱量が増大した部分の温度は高くなる。診断装置10は、ケーブル40の各部の温度に基づいて、ケーブル40の各部で生じている屈曲又は破損等の異常を診断できる。
【0049】
診断装置10は、ケーブル40の埋設位置の異常、又は、ケーブル40の屈曲若しくは破損等の異常に限られず、ケーブル40の他の種々の状態を診断できる。以下、診断システム1の動作例が説明される。
【0050】
<ケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断>
診断装置10の制御部12は、ケーブル40の診断対象の部分の温度の測定値を温度測定装置20から取得する。診断対象の部分は、診断対象部分とも称される。
【0051】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度が所定の温度範囲に含まれる場合に、ケーブル40の診断対象部分の状態が正常であると判定する。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度が所定の温度範囲に含まれない場合に、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常であると判定する。ケーブル40の診断対象部分の温度と比較する所定の温度範囲は、判定範囲とも称される。ケーブル40の埋設位置が浅くなるほどケーブル40の温度が低くなる場合、制御部12は、判定範囲の下限のみを設定して判定範囲の上限を設定しなくてもよい。逆に、ケーブル40の埋設位置が浅くなるほどケーブル40の温度が高くなる場合、制御部12は、判定範囲の上限のみを設定して判定範囲の下限を設定しなくてもよい。
【0052】
制御部12は、判定範囲を、ケーブル40に流れる電流の大きさに基づいて設定してよい。例えば、制御部12は、ケーブル40に流れる電流が大きいほど、判定範囲の中央値が高くなるように判定範囲を設定してよい。
【0053】
制御部12は、判定範囲を、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置における地中80の環境状態又はケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置の近傍の海中84の環境に基づいて設定してよい。例えば、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置の地質に基づいて判定範囲を設定してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地質の熱伝導率が高いほど判定範囲の中央値が低くなるように判定範囲を設定してよい。例えば、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置の近傍の海水温に基づいて判定範囲を設定してよい。制御部12は、海水温が低いほど判定範囲の中央値が低くなるように判定範囲を設定してよい。例えば、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置の深さに基づいて判定範囲を設定してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置が深いほど、ケーブル40の診断対象部分の温度が変化しにくいとみなして判定範囲の温度幅が狭くなるように判定範囲を設定してよい。言い換えれば、制御部12は、判定範囲を、ケーブル40に流れる電流の大きさとケーブル40の診断対象部分の周囲の環境とに基づいて設定してよい。
【0054】
制御部12は、判定範囲を、ケーブル40の診断対象部分が埋設された当初におけるケーブル40の診断対象部分の温度の測定値に基づいて設定してもよい。制御部12は、判定範囲を、ケーブル40の診断対象部分の状態が正常であることが直近で確認されたときのケーブル40の診断対象部分の温度の測定値に基づいて設定してもよい。制御部12は、判定範囲を、ケーブル40が地中80から海中84に引き出される境界部分55の温度の測定値に基づいて設定してもよい。制御部12は、判定範囲を、ケーブル40の診断対象部分の温度を所定期間にわたって測定した値の平均値等の統計値に基づいて設定してもよい。判定範囲は、これらの例に限られず他の種々の情報に基づいて設定されてよい。
【0055】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度に基づいて、ケーブル40の診断対象部分においてケーブル40の埋設状況に異常が発生している等のケーブル40の診断対象部分の状態を表す値を算出してよい。埋設異常の発生によって海底から露呈したケーブル40の一部が錨等に引っ掛かって破損する等、設備の運用、又は、設備周辺での活動における事故若しくは危険事象の発生の原因となる可能性もある。そのため、ケーブル40の診断対象部分の状態を表す値は、危険度とも称される。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常に近いほど危険度の値を大きい値で算出する。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の状態が正常に近いほど危険度の値を小さい値で算出する。制御部12は、危険度が所定の閾値以上である場合に、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常であると診断してよい。危険度の判定に用いられる所定の閾値は、危険度閾値とも称される。
【0056】
危険度の値は、0以上かつ1以下の範囲で正規化した値として算出されてよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分が十分に地中80の深い位置に埋設されている正常な状態である場合にケーブル40の診断対象部分の状態を表す危険度の値を1として算出し、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置が浅くなるほど危険度の値が1よりも大きい値になるように危険度を算出してもよい。危険度の値の表現は、これらの例に限られない。ケーブル40の状態の危険の程度が把握されるのであれば、危険度の値は、パーセンテージ等を含め、自由に表現されてよい。以下の説明において、危険度の値は、0以上かつ1以下の範囲で正規化した値、かつ、ケーブル40診断対象部分の状態が正常に近いほど0に近く、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常に近いほど1に近い値として表されるとする。
【0057】
制御部12は、例えば、危険度が0.5以上である場合にケーブル40の診断対象部分がまだ埋設されているものの埋設位置が浅くなって海中84への露呈に近づいていることを表す警告を出力してよい。制御部12は、例えば、危険度が0.95以上である場合にケーブル40の診断対象部分が海中84に露呈していると判定し、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常になったことを表す情報を出力してよい。制御部12は、例えば、ケーブル40の診断対象部分の埋設深さが50cm程度になったときに危険度が0.5になるように危険度を算出してよい。制御部12は、異常レベルに応じた複数の段階でケーブル40の診断対象部分の状態を診断できるように、複数の段階のそれぞれに対応した危険度閾値を設定してよい。制御部12がケーブル40の異常等の状態に応じた危険度の値として算出した0.5又は0.95等の数値は、これらの数値に限られない。制御部12は、ケーブル40の異常等の状態に応じた危険度の値を適宜設定してよい。
【0058】
制御部12は、ケーブル40の複数の部分の状態を診断するために、ケーブル40の複数の診断対象部分を設定し、ケーブル40の複数の診断対象部分のそれぞれの状態を診断してよい。制御部12は、ケーブル40の複数の診断対象部分のうちの少なくとも一部の診断対象部分について異なる判定範囲を設定してよい。制御部12は、ケーブル40の複数の診断対象部分のうちの少なくとも一部の診断対象部分について同じ判定範囲を設定してもよい。
【0059】
以上述べてきたように、ケーブル40の診断対象部分の温度の測定値に基づいて、ケーブル40の診断対象部分の状態が診断される。このようにすることで、ケーブル40の各部の状態が継続的に診断される。
【0060】
制御部12は、ケーブル40が海中84に露呈している状態を診断するための判定範囲又は危険度閾値と、ケーブル40が屈曲したり破損したりしている状態を診断するための判定範囲又は危険度閾値とをそれぞれ別に設定してもよい。このようにすることで、制御部12は、ケーブル40の状態が海中84に露呈する異常であるか屈曲又は破損等の異常であるかを分けて診断できる。
【0061】
<ケーブル40の複数の部分の温度の経時変化に基づく診断>
本実施形態に係る診断システム1において、診断装置10は、ケーブル40の複数の部分の温度の経時変化に基づいて診断してよい。ケーブル40の敷設直後等において、ケーブル40は、全域にわたって埋まっていると考えられる。その状態で異常値と判定される温度が測定された場合であっても、その温度が正しい値としてケーブル40状態が診断されてよい。
【0062】
診断装置10の制御部12は、ケーブル40の複数の部分の温度の測定値を温度測定装置20から取得する。制御部12は、ケーブル40の複数の部分の温度として、状態を診断する対象とする診断対象部分の温度の測定値と、診断対象部分以外の部分の温度の測定値とを取得する。ケーブル40の診断対象部分は、ケーブル40の温度の測定対象部分の一部に対応する。ケーブル40の診断対象部分以外の部分は、ケーブル40の診断対象部分に対応する測定対象部分と異なる測定対象部分に対応する。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分に対応する測定対象部分における温度の測定値を、ケーブル40の診断対象部分の温度として取得する。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分に対応する測定対象部分における温度の測定値をケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度として取得する。ケーブル40の診断対象部分以外の部分は、ケーブル40の診断対象部分からケーブル40に沿って所定距離だけ離れた部分であってよい。ある時期においてケーブル40の診断対象部分以外の部分であった部分が他の時期においてケーブル40の診断対象部分になってもよい。ある時期においてケーブル40の診断対象部分であった部分が他の時期においてケーブル40の診断対象部分以外の部分になってもよい。ケーブル40が埋設されている環境が全体として変化した場合、ケーブル40の複数の部分のそれぞれの温度が環境変化の影響を受けて変化すると想定される。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量と、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度の変化量とを比較することによって、ケーブル40の診断対象部分の状態を診断できる。
【0063】
制御部12は、例えば、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度が変化せず、ケーブル40の診断対象部分の温度が変化している場合、ケーブル40の診断対象部分の状態が変化したと診断してよい。制御部12は、例えば、所定時間の経過前後におけるケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度の変化量よりも、ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量が大きい場合、ケーブル40の診断対象部分の状態が変化したと診断してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量が所定の閾値以上である場合に、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常になったと診断してよい。ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量と比較する所定の閾値は、変化量閾値とも称される。
【0064】
制御部12は、例えば、ケーブル40の診断対象部分の温度及び診断対象部分以外の部分の温度のそれぞれの変化量に基づいて、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値を算出してよい。ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値は、診断対象部分の温度の測定値と基準値との関係によって危険度を判断する際に、診断対象部分以外の部分の温度の測定値と基準値との関係を考慮した値である。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値に基づいてケーブル40の診断対象部分の状態が異常になったか診断してよい。制御部12は、例えば、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値が判定値以上である場合にケーブル40の診断対象部分の状態が異常になったと診断してよい。
【0065】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値を、例えば、診断対象部分の温度の変化量及び診断対象部分以外の部分の温度の変化量のそれぞれに重みづけした値に基づいて算出してよい。制御部12は、診断対象部分の温度の変化量に診断対象部分に対応する係数を乗じることによって重みづけしてよい。制御部12は、診断対象部分に対応する係数を、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている位置の周囲の環境に基づいて設定してよい。制御部12は、診断対象部分以外の部分の温度の変化量に診断対象部分以外の部分に対応する係数を乗じることによって重みづけしてよい。制御部12は、診断対象部分以外の部分に対応する係数を、ケーブル40の診断対象部分以外の部分が埋設されている位置の周囲の環境に基づいて設定してよい。つまり、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値を、診断対象部分の温度の変化量に診断対象部分に対応する係数を乗じた値と、診断対象部分以外の部分の温度の変化量に診断対象部分以外の部分に対応する係数を乗じた値との差の絶対値として算出してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値の判定値を、診断対象部分に対応する係数及び診断対象部分以外の部分に対応する係数に基づいて設定してよい。
【0066】
以上述べてきたように、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づいて、ケーブル40の診断対象部分の状態を診断できる。このようにすることで、ケーブル40の各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。
【0067】
制御部12は、ケーブル40が海中84に露呈している状態を診断するための変化量閾値又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値の判定値と、ケーブル40が屈曲したり破損したりしている状態を診断するための変化量閾値又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値の判定値とをそれぞれ別に設定してもよい。このようにすることで、制御部12は、ケーブル40の状態が海中84に露呈する異常であるか屈曲又は破損等の異常であるかを分けて診断できる。
【0068】
制御部12が診断対象部分の温度の経時変化を比較する対象とする診断対象部分以外の部分の数は1つに限られない。制御部12は、診断対象部分以外の2つ以上の部分の温度の経時変化と1つの診断対象部分の温度の経時変化とを比較してケーブル40の診断対象部分の状態を診断してよい。
【0069】
<診断手法の組み合わせ>
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断によってケーブル40の診断対象部分の状態が異常である可能性があると診断してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常である可能性があると診断した後で、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づいてケーブル40の診断対象部分の状態が異常であるかを診断してよい。
【0070】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づいてケーブル40の診断対象部分の状態が異常である可能性があると診断してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常である可能性があると診断した後で、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断によってケーブル40の診断対象部分の状態が異常であるかを診断してよい。
【0071】
比較例として、制御部12は、ケーブル40のある1つの診断対象部分における温度の測定値の経時変化のみを監視し、その診断対象部分における温度が上がった場合にその診断対象部分に異常があるかもしれないと判断すると仮定する。しかしながら、ケーブル40のある1つの診断対象部分における温度が上昇しただけで、その診断対象部分に異常があると断定できないことがある。例えばケーブル40の送電等によってケーブル40全体の温度が上がっている場合、ケーブル40のある1つの診断対象部分の温度が上がったとしても、その隣の診断対象部分、又は、その他の診断対象部分の温度も上昇する。制御部12は、ケーブル40の全体の温度が上昇していれば、ケーブル40のある1つの診断対象部分における温度の上昇に基づいて、その診断対象部分に異常があると判断しない。
【0072】
したがって、本開示に係る診断システム1において、制御部12は、ケーブル40のある1つの診断対象部分における温度が上がっていたとしても、すぐにその診断対象部分が異常であると判定せず、診断対象部分以外の部分の温度を確認する。制御部12は、例えば、診断対象部分以外の部分の温度として、診断対象部分に対応する温度の測定対象部分の隣の測定対象部分の温度、又は、診断対象部分から所定距離内に位置する他の測定対象部分の温度を確認してよい。制御部12は、診断対象部分の温度が上昇したときに、診断対象部分以外の部分の温度が上昇していなければ、診断対象部分のみで温度が変化しており、診断対象部分に異常があると判定してよい。制御部12は、診断対象部分の温度が上昇したときに、診断対象部分以外の部分の温度が上昇していれば、診断対象部分と同様に温度が上昇している範囲を確認する。制御部12は、診断対象部分と同様に温度が上昇している範囲を特定できた場合、その範囲内でケーブル40に異常があると判定してよい。
【0073】
以上述べてきたように、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度だけでなく診断対象部分以外の部分の温度を確認することによって、ケーブル40診断対象部分の温度だけを確認する場合と比べて、ケーブル40の診断対象部分の異常が誤って診断されにくくなる。言い換えれば、ケーブル40の診断対象部分の異常の診断精度が高められる。
【0074】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断を実施した後で、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断を実施することによってケーブル40の診断対象部分の状態が異常であるか診断してよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断を実施した後で、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断を実施することによってケーブル40の診断対象部分の状態が異常であるか診断してよい。つまり、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断とケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断とを組み合わせた診断を実施することによってケーブル40の診断対象部分の状態が異常であるか診断してよい。このようにすることで、ケーブル40の各部の状態の診断精度が向上する。
【0075】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断において診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化がケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定してよい。ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分の温度及びケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度のそれぞれの変化量に基づいて算出されるケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮して診断対象部分の状態を表す値に基づく条件を含んでよい。ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度が変化せず、ケーブル40の診断対象部分の温度が変化していることを含んでよい。ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、所定時間の経過前後におけるケーブル40の診断対象部分以外の部分の温度の変化量よりも、ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量が大きいことを含んでよい。ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分の温度の変化量が変化量閾値以上であることを含んでよい。ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値が判定値以上であることを含んでよい。
【0076】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断において診断対象部分の温度がケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定してよい。ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分の温度に基づく条件を含んでよい。ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化のみに基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分の温度が判定範囲から外れることを含んでよい。ケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件は、ケーブル40の診断対象部分の温度に基づいて算出された危険度が危険度閾値以上であることを含んでよい。
【0077】
<診断結果の出力>
制御部12は、診断結果を表示装置30に表示してよい。制御部12は、診断結果を音声等の他の態様で出力してもよい。制御部12は、ケーブル40の一部の状態が異常であると診断した場合に異常を報知するように診断結果を出力してよい。制御部12は、ケーブル40の状態が正常であると診断した場合でも診断結果を出力してよい。
【0078】
制御部12は、診断に用いたケーブル40の各部の温度の測定値を表示装置30に表示してもよい。制御部12は、ケーブル40の各部の温度の経時変化を表示装置30に表示してもよい。制御部12は、診断において算出した危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を表示装置30に表示してもよい。制御部12は、ケーブル40の各部の温度の測定値等と、診断結果とを対応づけて表示してもよい。ケーブル40を管理する作業員、監視員又は診断装置10のオペレータ等の人間がケーブル40の各部の温度の測定値と診断結果とを合わせて確認することによって、人間の診断スキル又は知見が高められる。
【0079】
<診断方法の手順例>
診断装置10の制御部12は、ケーブル40の状態を診断するために、
図5に例示されるフローチャートの手順を含む診断方法を実行してよい。診断方法は、制御部12を構成するプロセッサ又はコンピュータに実行させる診断プログラムとして実現されてもよい。診断プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0080】
制御部12は、温度測定装置20から、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の測定値を取得する(ステップS1)。
【0081】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化がケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定する(ステップS2)。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化が診断条件を満たさない場合(ステップS2:NO)、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常ではないと診断して
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0082】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化がケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たす場合(ステップS2:YES)、ケーブル40の診断対象部分の温度がケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断において診断対象部分の温度がケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断に適用される診断条件を満たすか判定する(ステップS3)。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度が診断条件を満たさない場合(ステップS3:NO)、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常ではないと診断して
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0083】
制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度が診断条件を満たす場合(ステップS3:YES)、ケーブル40の診断対象部分の状態が異常であると判定し、ケーブル40の診断対象部分の異常を通知する(ステップS4)。制御部12は、ステップS4の手順の実行後、
図5のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0084】
図5に例示されるフローチャートの手順において、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断より先にケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断を実行している。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断より先にケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断を実行してもよい。制御部12は、ケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断又はケーブル40の診断対象部分の温度に基づく診断の一方だけを実行してもよい。
【0085】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係る診断システム1において、診断装置10は、ケーブル40の各部の温度に基づいてケーブル40の各部の状態を診断できる。このようにすることで、ケーブル40の各部の状態が継続的に診断される。また、診断装置10は、ケーブル40の複数の部分の温度の経時変化に基づいてケーブル40の各部の状態を診断できる。このようにすることで、ケーブル40の各部の状態の診断において環境変化の影響が低減される。その結果、ケーブル40の各部の状態の診断精度が向上する。
【0086】
また、診断装置10は、ケーブル40の状態が海中84に露呈する異常であるか屈曲又は破損等の異常であるかを分けて診断できる。このようにすることで、種々の状態が互いに区別して診断される。その結果、ケーブル40の種々の状態の診断精度が向上する。
【0087】
診断システム1によって、ケーブル40を管理する主体(例えば作業員、監視員又は診断装置10のオペレータ等の人間)が現地にいなくてもケーブル40の状態が診断される。その結果、ケーブル40が埋設されている現場を人間が訪問する頻度及び訪問コストが低減される。また、常時診断が実現されることによってケーブル40の信頼性が向上する。
【0088】
診断システム1によって、ケーブル40の各部の状態の診断基準が明確になる。その結果、ケーブル40の信頼性が向上する。
【0089】
診断システム1は、数百又は数千メートルにわたって延びている長大なケーブル40の中に、監視の漏れが少なくなるように、例えば1メートル間隔で温度の測定対象部分を設定し、ケーブル40の各部の状態を監視する。このようにケーブル40の全体にわたって温度を測定するために、ケーブル40と同じ長さのセンサが必要とされるものの、光ファイバ42がセンサの役割を果たすことによって、ケーブル40に沿わせて設置することで容易に実現される。さらに、海底ケーブル中にそもそも複数本の光ファイバ42が内在している。複数本の光ファイバ42のうち他の機能に用いられていない空きファイバがそのまま温度センサとして利用される。診断システム1は、そのケーブル40に沿って存在する数百、数千又は数万の測定対象部分の中で、温度が上がっている部分があるか監視する。診断システム1は、温度が上がっている測定対象部分を見つけた時に、その測定対象部分に隣接している測定対象部分又は近隣に位置する測定対象部分の温度を確認し、診断精度を向上できる。
【0090】
上述してきた実施形態に係る診断システム1において、診断装置10の制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化に基づいてケーブル40の診断対象部分が異常であるか診断した。海水温の変化等の全体の環境の変化が無いと仮定した場合、ケーブル40の診断対象部分が正常であるならば、ケーブル40の診断対象部分の温度の測定値は、基準値(ケーブル40の診断対象部分が正常に埋設され、かつ、ケーブル40そのものが正常であるときの温度の測定値)から変化していないはずである。ケーブル40の診断対象部分の温度の経時変化(ある時間の温度とその時間から所定時間だけ過去にさかのぼった時間の温度との差)は、正常時に測定した温度の基準値から、現在の温度の測定値が逸脱している度合を表している。したがって、制御部12は、ケーブル40の診断対象部分の温度を基準値と比較することによってケーブル40の診断対象部分が異常であるか診断してもよい。
【0091】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
【0092】
<地質を想定した診断>
ケーブル40が埋設されている海底81の地質は、一様になっていないことがある。例えば、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地質と、ケーブル40の診断対象部分以外の部分が埋設されている地質とが異なることがある。診断装置10の制御部12は、ケーブル40のある部分(例えば診断対象部分)が埋設されている地質がケーブル40の他の部分(例えば診断対象部分以外の部分)が埋設されている地質と異なっていることを想定してケーブル40の各部の状態を診断してよい。
【0093】
ケーブル40に流れる電流によって、ケーブル40全体の温度が上昇することがある。一方で、ケーブル40の部分毎に温度の上昇幅が異なることがある。ケーブル40の診断対象部分の温度の上昇幅は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている環境、又は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地中80を構成する土砂の質等によって定まることがある。例えば、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地中80を構成する土砂の種類毎にケーブル40の診断対象部分の温度の測定値が異なることがある。
【0094】
温度の経時変化は、ある時間の温度の測定値が27℃であり、その1分前の温度の測定値が25℃であった場合に、1分間で2℃上昇したという1分間当たりの温度変化量として表されてよい。制御部12は、ある診断対象部分に対応する温度の測定対象部分(N)の温度の測定値が1分間で2℃上昇した場合に、短絡的にその診断対象部分が異常であると判定せずに、その診断対象部分以外の部分として、例えば診断対象部分に対応する温度の測定対象部分(N)の隣の測定対象部分(N+1)の温度、又は、さらに隣の測定対象部分(N+2)の温度を確認する。制御部12は、測定対象部分(N)、(N+1)及び(N+2)のいずれにおいても温度が上昇している場合に、さらに隣の測定対象部分(N+3)及び逆方向の隣の測定対象部分(N-1)の温度が上昇していない場合、ケーブル40の温度の測定対象部分(N)、(N+1)及び(N+2)においてケーブル40が異常になっていると判定してよい。
【0095】
ここで、ケーブル40が埋設されている環境、又は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地中80を構成する土砂の質等によって、温度の経時変化がケーブル40の異常を表しているかを判定する基準が異なる。つまり、制御部12は、各測定対象部分における温度が上昇したかを判定する際に、ケーブル40が埋設されている環境、又は、ケーブル40の診断対象部分が埋設されている地中80を構成する土砂の質等が異なっていることを想定してよい。
【0096】
制御部12は、ケーブル40の温度の測定対象部分のうち、隣接する2点の温度の経時変化の比較によって、地質の変化を推定してよい。制御部12は、例えば、ある地点の温度の変化量とその隣の地点の温度の変化量とが異なる場合に、その2点が互いに違う地質に含まれると推定してよい。
【0097】
例えば、正常に埋設されているケーブル40の温度の測定対象部分(N)における温度の測定値が25℃であり、その隣の測定対象部分(N+1)~(N+5)における温度の測定値が25℃であり、さらに隣の測定対象部分(N+6)における温度の測定値が27℃であるとする。この場合、制御部12は、測定対象部分(N+5)と(N+6)との間でケーブル40が埋設されている地質が変化していると推定してよい。制御部12は、地質の変化に限られず、他の環境が変化していると推定してもよい。
【0098】
例えば、測定対象部分(N)~(N+5)における温度の基準値は25℃であるとする。測定対象部分(N)~(N+5)における温度の測定値が27℃であるとする。この場合、測定対象部分(N)~(N+5)において温度が2℃上昇している。一方で、測定対象部分(N+6)~(N+100)における温度の基準値及び測定値が27℃であるとする。この場合、測定対象部分(N+6)~(N+100)において温度が上昇していない。制御部12は、これらの温度の測定結果に基づいて、測定対象部分(N)~(N+5)において異常が発生していると判定してよい。
【0099】
地質データは、広大で水面下深くにあり、取得が困難である。上述したように、制御部12は、地質データそのものを利用せず、また、地質を顕在的に意識することなく、地質を想定してケーブル40の診断対象部分の状態を判定できる。なお、制御部12は、地質データを取得できる場合、地質データに基づいてケーブル40の各診断対象部分の温度の経時変化が異常に該当するか判定してよい。制御部12は、ファイバ経由でケーブル40の各測定対象部分の温度を測定し、ある1つの測定対象部分を診断対象部分としたときに、診断対象部分の温度と周囲の測定対象部分である診断対象部分以外の部分の温度とを比較し、その関係性により、環境(地質)の変化点を推定し、エリアごとの温度の差異条件を踏まえて判定してよい。
【0100】
地質データが部分的にしか取得されない場合、地質データの精度に懸念がある場合、又は、地質データを全く取得できない場合等においても、制御部12は、ケーブル40が正常に埋設されているとき(運用開始前又は整備直後等)のケーブル40の各測定対象部分の温度に基づいて各測定対象部分を診断対象部分とするときの基準温度を設定する。制御部12は、ケーブル40が正常に埋設されているときに温度の測定値が同じ値になっている測定対象部分を含む範囲を、環境条件が一致している範囲、又は、地質が同じ範囲であると推定してよい。上述した例において、測定対象部分(N)~(N+5)を含む範囲は、温度の基準値が25℃に設定されるある1つの地質であると推定される。測定対象部分(N+6)~(N+100)を含む範囲は、温度の基準値が27℃に設定される他の地質である。制御部12は、ケーブル40の運用を開始して、ケーブル40が正常に埋設されている状態から時間が経ち、ケーブル40が埋設されている状態又はケーブル40そのものの状態に変化が発生し得る状況において、各測定対象部分に設定した温度の基準値に基づいて、各測定対象部分を診断対象部分として診断対象部分が異常になっているか判定する。
【0101】
温度の基準値が25℃である測定対象部分を含む範囲の中で、温度の測定値が27℃になった測定対象部分が存在する場合、制御部12は、その測定対象部分を診断対象部分としたときに診断対象部分の温度が上昇していると判定し、診断対象部分が異常になっていると判定する。一方で、温度の基準値が27℃である測定対象部分を含む範囲の中で、温度の測定値が27℃になった測定対象部分が存在する場合、制御部12は、その測定対象部分を診断対象部分としたときに診断対象部分の温度が変化していないと判定し、診断対象部分が異常になっていないと判定する。
【0102】
制御部12は、複数の測定対象部分における温度の測定値の比較(例えば、診断対象部分の温度と診断対象部分以外の部分の温度との比較)に際して、隣接する測定対象部分の地質及び環境が同じである可能性が高いことを考慮して、隣接する測定対象部分のそれぞれにおける温度の測定値を比較してよい。一方で、制御部12は、必ずしも隣接していなくても、正常時の温度の測定値が25℃であった測定対象部分のアドレス(N+x)を記録しておき、正常時の温度の測定値が同じであった測定対象部分同士で温度の測定値を比較してもよい。つまり、制御部12は、状態が正常であれば温度の測定値が25℃であるべき測定対象部分の中で、温度の測定値が逸脱している測定対象部分を異常になっている部分として見つけてよい。
【0103】
図6に例示されるように、ケーブル40は、地質αの部分と、地質βの部分と、地質γの部分とを通るように埋設されているとする。制御部12は、ケーブル40が埋設されている地質の違いのデータを把握できていなくてもよい。地質αに埋設されているケーブル40の正常時の温度は25℃であるとする。地質βに埋設されているケーブル40の正常時の温度は27℃であるとする。地質γに埋設されているケーブル40の正常時の温度は23℃であるとする。制御部12は、ケーブル40の各部の正常時の温度を、ケーブル40が埋設された当初の温度の測定値として取得してよい。制御部12は、ケーブル40の各部の正常時の温度の違いを、ケーブル40が埋設されている地質の違いとみなしてもよいし、地質以外の環境の違いとみなしてもよいし、何の要因とも関連づけなくてもよい。
【0104】
制御部12は、A1、A2及びA3が地質βに含まれると推定したとする。制御部12は、地質βに含まれると推定したA1、A2及びA3のそれぞれの部分の温度を取得してよい。A2における温度は、地質βの正常時の温度27℃より低い25℃であるとする。A1及びA3における温度は、正常時の温度27℃であるとする。この場合、制御部12は、ケーブル40のA2に対応する部分の状態が異常であると診断してよい。A1における温度が正常時の温度より低い26度である場合、制御部12は、A2から見てA1よりも遠い部分の温度を正常時の温度と比較することによって、ケーブル40のA2に対応する部分の状態の異常がA1に対応する部分までしか及んでいないか、A2から更に遠い部分にまで及んでいるか診断してよい。
【0105】
制御部12は、C、C-1及びC-2が地質γに含まれると推定したとする。制御部12は、C+1及びC+2が地質αに含まれると推定したとする。制御部12は、地質γに含まれると推定したC、C-1及びC-2のそれぞれの部分の温度を取得してよい。また、制御部12は、地質γに隣接する地質αに含まれると推定したC+1及びC+2のそれぞれの部分の温度を取得してよい。Cにおける温度は、地質γの正常時の温度23℃より低い20℃であるとする。C-1及びC-2における温度は、正常時の温度23℃であるとする。また、C+1及びC+2における温度は、地質αの正常時の温度25℃であるとする。この場合、制御部12は、ケーブル40のCに対応する部分の状態が異常であると診断してよい。制御部12は、C-1における温度とC-2における温度とが同じであることに基づいてケーブル40のC-1に対応する部分の状態が正常であると診断してよい。また、制御部12は、C+1における温度とC+2における温度とが同じであることに基づいてケーブル40のC+1に対応する部分の状態が正常であると診断してよい。Cに関する診断について言い換えれば、制御部12は、診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の変化量がケーブル40の診断対象部分及び診断対象部分以外の部分のそれぞれの温度の経時変化に基づく診断に適用される診断条件を満たすように、診断対象部分以外の部分をケーブル40の異なる部分に変更してもよい。このようにすることで、地質を想定してケーブル40の状態が診断される。その結果、ケーブル40の状態の診断精度が向上する。
【0106】
制御部12は、地質αに含まれると推定したDの部分の温度を取得してよい。Dの部分の温度は地質αの正常時の温度25℃であるとする。この場合、制御部12は、ケーブル40のDに対応する部分の状態が正常であると診断してよい。制御部12は、地質γに含まれるBの部分の温度を取得してよい。Bの部分の温度は地質γの正常時の温度23℃であるとする。この場合、制御部12は、ケーブル40のBに対応する部分の状態が正常であると診断してよい。
【0107】
制御部12は、地質αに含まれると推定し、かつ、ケーブル40が陸上82に上げられる部分に近いE1、E2及びE3のそれぞれの部分の温度を取得してよい。埋設開始地点であるE1における温度は、海水の温度に近い温度になる。E2及びE3のそれぞれにおける温度は、地質αの正常時の温度25℃であるとする。この場合、制御部12は、ケーブル40のE2及びE3のそれぞれに対応する部分の状態が正常であると診断してよい。また、ケーブル40が陸上82に上げられる部分は、漁具又は錨等による影響を受けにくい。制御部12は、E2又はE3の少なくとも1つの部分の温度の経時変化に基づいてケーブル40が埋設されている地域の環境の変化を診断してもよい。制御部12は、E1、E2又はE3の少なくとも1つの部分の温度の経時変化に基づいてケーブル40に流れる電流の変化を診断してもよい。
【0108】
<ケーブル40の発熱を考慮した診断>
図7に例示されるように、ケーブル40に電流が流れることによってケーブル40の全体の温度が上昇する場合、ケーブル40の表面温度は、ケーブル40の各部における熱損失の大きさに応じて定まる。
図7のグラフにおいて、横軸はケーブル40の長手方向の位置を示す。縦軸は温度を示す。ケーブル発熱温度のグラフは、熱損失が無い場合のケーブル40の診断対象部分の温度を表す。ケーブル表面温度のグラフは、熱損失によって低下した温度を表し、ケーブル40が海中84に露呈し始める露呈開始部分45を境界として変化する。グラフの露呈開始部分45よりも左側の地中80に埋まっている部分において、ケーブル表面温度は、ケーブル40が埋まっている深さに応じて定まる熱伝導損失の分だけ低くなる。グラフの露呈開始部分45よりも右側の海中84に露呈している部分において、ケーブル表面温度は、ケーブル40の表面が海中84に露呈している面積に応じて定まる対流熱損失の分だけ低くなる。
【0109】
制御部12は、ケーブル40の長手方向の温度変化に基づいてケーブル40の露呈開始部分45を特定してよい。制御部12は、ケーブル40の長手方向の温度変化に基づいてケーブル40が埋設されている深さを算出してよい。制御部12は、ケーブル40の長手方向の温度変化に基づいてケーブル40の表面の海中84に露呈している面積の割合を算出してもよい。
【0110】
ケーブル40は、地中80に埋設されず海底81に海中84に露呈した状態で、ケーブル40の上に置かれた消波ブロック又は砂利等で保護されるように敷設されてよい。この場合、ケーブル40は、消波ブロック又は砂利等の隙間から進入した海水による対流熱損失で冷却されることがある。制御部12は、ケーブル40に流れる電流の変化による発熱の変化を考慮してケーブル40の状態を診断してよい。
【0111】
制御部12は、
図8Aに例示されるように、ケーブル40の電流の経時変化に基づいてケーブル40の、熱損失が無い場合の発熱温度を算出する。
図8Aのグラフにおいて、横軸は時間を示す。縦軸は温度を示す。時間T11からケーブル40を流れる電流が減り始めることによって発熱温度が下がり始めるとする。時間T12からケーブル40を流れる電流が増え始めることによって発熱温度が上がり始めるとする。
【0112】
制御部12は、
図8Bに例示されるように、ケーブル40のX地点の温度の測定値の経時変化を取得する。また、制御部12は、
図8Cに例示されるように、ケーブル40のY地点の温度の測定値の経時変化を取得する。
図8B及び
図8Cのグラフにおいて、横軸は時間を示す。縦軸は温度を示す。ケーブル40のX地点の温度は、時間T21から下がり始め、時間T22から上がり始めている。ケーブル40のY地点の温度は、時間T31から下がり始め、時間T32から上がり始めている。時間T31及びT32は、時間T21及びT22よりも遅れているとする。
【0113】
X地点における温度変化のタイミングとY地点における温度変化のタイミングとの違いは、各地点の放熱量又は地質の熱容量等の放熱特性の違いに起因する。制御部12は、各地点の放熱特性の違いに基づいて、各地点の地中熱伝導率を算出してよい。地中熱伝導率は、地質を構成する物質の性質、又は、地質の構造若しくは密度等に基づいて定まる。制御部12は、地中熱伝導率に基づいてケーブル40の各部の危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等の値を補正してよい。制御部12は、温度変化のタイミングとして、温度変化が開始する時間を取得してもよいし、温度変化率が極大値になる時間(温度変化のグラフの傾きが最も急峻になる時間)を取得してもよい。制御部12は、例えばX地点を診断対象部分に設定し、Y地点を診断対象部分以外の部分に設定する場合、診断対象部分としてのX地点の温度が変化するタイミングと、診断対象部分以外の部分としてのY地点の温度が変化するタイミングとの差に基づいてケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値を補正してよい。
【0114】
以上述べてきたようにケーブル40の発熱を考慮することによって、ケーブル40の状態の診断精度が向上する。
【0115】
<ケーブル40に電流が流れていない場合の診断>
上述したように制御部12は、ケーブル40の発熱を考慮して危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を補正できる。ケーブル40に電流が流れていない場合、ケーブル40の発熱が無い。ケーブル40の発熱が無い場合においても、制御部12は、他の情報を考慮して危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を補正できる。
【0116】
海水の温度は、1日周期で変化する。制御部12は、海水の温度の変化とケーブル40の各部の温度の変化との違いに基づいてケーブル40の各部の危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を補正してよい。制御部12は、ケーブル40の各部の危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を、建設時などの長期にわたって電気が流れない場合において、1日のデータだけではなく、長期のデータに基づいて補正してよい。
【0117】
ケーブル40が地中80に深く埋設されている場合、ケーブル40の各部の温度は、1日周期の海水の温度の変化の影響を受けにくい。一方で、海水の温度は、例えば季節の移り変わり、又は、海流の蛇行等の影響によって、1年周期でも変化することがある。制御部12は、海水の温度の移動平均と、ケーブル40の各部の温度の移動平均との違いに基づいてケーブル40の各部の危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等を補正してよい。具体的に、制御部12は、海水の温度の移動平均の傾きが逆転したタイミングを基準として、ケーブル40の各部の温度の移動平均の傾きが逆転したタイミングとの差を算出してよい。制御部12は、ケーブル40の各部の温度の移動平均の傾きが逆転したタイミングの差を、地中熱伝導率と反比例するパラメータとして用い、ケーブル40の各部の危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等の値を補正してよい。
【0118】
<地中熱伝導率を用いた補正の具体例>
制御部12は、ケーブル40の各部が埋設されている部分の地中熱伝導率に基づいて、ケーブル40の各部の診断で用いる危険度又はケーブル40の診断対象部分以外の部分の状態を考慮してケーブル40の診断対象部分の状態を表す値等のパラメータを補正してよい。制御部12は、ケーブル40を細かく領域毎に分割したセルのそれぞれに地中熱伝導率のパラメータを設定してよい。パラメータ群はプロファイルとも称される。制御部12は、ケーブル40の位置情報(例えば温度測定装置20からの距離)に、特性データとして、ケーブル40の埋設深度等の埋設情報及び時間を関連づけてよい。制御部12は、ケーブル40の位置情報に、ヒストリカルデータとして、時間、ケーブル40のその位置における温度、ケーブル40に印加される電圧、及び、ケーブル40に流れる電流を関連づけてよい。制御部12は、ケーブル40の位置情報に、ヒストリカルデータとして、地中種別及び地中熱伝導率を関連づけてよい。制御部12は、ケーブル40の位置情報に、ヒストリカルデータとして、想定埋設深度、長期変化率、短期変化率、及び異常度を関連づけてよい。
【0119】
温度測定装置20は、温度の測定値と、その測定値を得た地点までの距離とを出力する。ここで、電圧及び電流、並びに、ケーブル40の発熱量は、電圧降下を誤差と考えればケーブル40の各セルで同じである。したがって、同一又は類似のプロファイルのケーブル40の各セルの放熱量及び温度の測定値は同じである。同一又は類似のプロファイルは、同一又は類似の深度、かつ、同一又は類似の熱伝導率で特定されるとする。ケーブル40による送電電力が変化した場合であっても、ケーブル40の発熱量と放熱量とが追従するので、同一又は類似のプロファイルのセル同士は、同一又は類似の発熱パターンとなる。
【0120】
一方で、ケーブル40の埋設深度があまり変化しない埋設初期の状態において、電流の追従による温度変化の差が生じることがある。ある程度の深度で埋設される場合、温度変化の差は、地中熱伝導率に起因する。そうすると、温度変化の差から逆算することによって、各セルの地中熱伝導率が補正される。埋設深度が十分深い場合、熱対流分が考慮されなくてもよい。地中熱伝導率の補正値は、比率データとして算出されてよいし、バイアスとして算出されてもよい。地中熱伝導率の補正値は、地中種別毎に格納されてよい。
【0121】
<露呈されている部分の判定>
海底ケーブルは、計画的に地中80から海底81に露呈されている部分を有する。地中80の内部において放熱量は、主に地中80の熱伝導率によって定まる。一方で海底81に露呈されている部分に近づくまでに急激に放熱量が大きくなるポイントが存在する。このポイントは露呈部分52の近くに位置する。ケーブル40の露呈されている部分を知るための手段の一つとして、海底81に露呈している場所を敷設工事の情報等から位置情報に照らし合わせ、その位置の温度変化を比較する手段がある。
【0122】
また、露呈されている部分は計算によって特定されてもよい。浅い位置に埋設されている場所において、熱伝導、放射及び対流による熱放射が支配的となる。一方で露呈した場所において、放熱量の小さい熱伝導部分が無くなることによって放熱量が急激に増える。これを利用すると、ある一定の深度より浅く埋設されているセルの温度は、深く埋設され、かつ、同一又は類似のプロファイルのセルの温度に比較して徐々に低下する。さらに、海底81に露呈する等によって熱伝導の代わりに対流が支配的になった場合に温度がさらに低下する。したがって、温度が低下する部分が露呈されている部分と判定されてよい。
【0123】
<診断対象の他の例>
診断システム1は、上述してきた洋上風力発電装置70の海底ケーブルに限られず他の種々のケーブル40の状態の診断に適用されてよい。診断システム1は、例えば、離島等に電力又は通信を提供するための海底ケーブルの状態の診断に適用されてよい。診断システム1は、陸上に敷設されているケーブル40の状態の診断に適用されてもよい。例えば陸上であっても地面に埋設されているケーブル40、又は、山間部等の人間の進入が困難な地域に敷設されているケーブル40の状態の診断に適用されてもよい。診断システム1は、ケーブル40の劣化の状態の診断に適用されてもよい。診断システム1は、ケーブル40の浸水の状態の診断に適用されてもよい。
【0124】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 診断システム
10 診断装置(12:制御部、14:記憶部、16:インタフェース)
20 温度測定装置
30 表示装置
40 ケーブル(41:電力線、42:光ファイバ、43:被覆、51:埋設部分、52:露呈部分、53:埋設部分、54:浅埋設部分、55:境界部分)
70 洋上風力発電装置
80 地中
81 海底
84 海中