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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088457
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/22 20060101AFI20240625BHJP
   F28D 1/06 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F28F9/22
F28D1/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203643
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】赤石 龍士郎
(72)【発明者】
【氏名】本多(栗本) 侑依
(72)【発明者】
【氏名】木村 大輔
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA08
3L103AA37
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD10
3L103DD38
3L103DD61
3L103DD64
3L103DD82
3L103DD85
3L103DD98
(57)【要約】
【課題】第1流体の流れを均一化し、熱回収モード時に熱回収性能、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】軸方向に内周面11及び外周面12、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面13a及び流出端面13bを有する中空型の熱回収部材10と、第1流体の流入口21a及び流出口21bを有する内筒部材20であって、熱回収部材10の内周面11に嵌合される部分を有する領域Aと、領域Aの内側に折り返された領域Bとを含み、且つ領域Aと領域Bとの間に第1流体の流路となる空間部S1を有する折り返し2重筒構造を流入口21a側に有する内筒部材20とを備える熱交換器である。第1流体を熱回収部材10の流入端面13aに導入するための貫通孔22が内筒部材20の領域Aに設けられている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有する内筒部材であって、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される部分を有する領域Aと、前記領域Aの内側に折り返された領域Bとを含み、且つ前記領域Aと前記領域Bとの間に前記第1流体の流路となる空間部を有する折り返し2重筒構造を前記流入口側に有する内筒部材と
を備え、
前記第1流体を前記熱回収部材の前記流入端面に導入するための貫通孔が前記内筒部材の前記領域Aに設けられている熱交換器。
【請求項2】
前記内筒部材は、前記領域Bの内径が前記領域Aの内径の30~95%である、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記領域Bの流出口側端部が縮径している、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記領域Bの流出口側端部が拡径している、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記貫通孔がルーバー形状を有する、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記内筒部材は、前記熱回収部材の前記流出端面側に設けられたシール部材を介して前記熱回収部材の内周面に篏合されており、
前記内筒部材は、前記シール部材よりも前記流入口側の前記領域Aに前記貫通孔が設けられている、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記熱回収部材の前記内周面と前記内筒部材の領域Aとの間に空間領域を有し、前記空間領域に面する前記領域Aに前記貫通孔が設けられている、請求項6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記内筒部材の流出口側端部が多角形状又は楕円状である、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記熱回収部材が、内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、前記流入端面から前記流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体である、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材を更に備える、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項11】
前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記内筒部材の前記流入口側との間を接続するリング状部材を更に備える、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項12】
前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第1筒状部材を更に備える、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項13】
前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第1筒状部材と
を更に備える、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項14】
前記第1外筒部材の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記第1外筒部材との間を第2流体が流通可能な第2外筒部材を更に備える、請求項10に記載の熱交換器。
【請求項15】
前記内筒部材の前記流出口側に配置された開閉バルブを更に備える、請求項1又は2に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
上記のようなシステムとして、例えば、熱交換器がある。熱交換器は、内部に第1流体を流通させるとともに外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う装置である。このような熱交換器では、高温の流体(例えば、排ガスなど)から低温の流体(例えば、冷却水など)へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。
【0004】
熱交換器は、適切な熱マネジメントの観点から、熱を回収するモード(以下、「熱回収モード」という)と、熱を回収しないモード(以下、「非熱回収モード」という)とを切り替える機能を有していることが好ましい。なお、非熱回収モードは、一般に、暖気が終了した際に適用される。
熱回収モードと非熱回収モードとの切り替えが可能な熱交換器としては、排ガスと熱交換を行う熱交換部と、排ガスが熱交換部を迂回するバイパス経路とを備える熱交換器が知られている(例えば、特許文献1)。
また、熱交換器は、自動車の搭載スペースの観点から小さいことが望ましいため、筒状部材の外周に熱回収部を設けた構造を有する熱交換器も知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
筒状部材の外周に熱交換部を設けた構造を有する熱交換器では、第1流体の流路が複雑になるため、第1流体の流れが不均一になり易い。実際、熱回収モードにおいて、熱回収部に至るまでの第1流体の流れが不均一であると、第2流体との熱交換に偏りがでてしまうため、熱回収性能が低下してしまう。また、非熱回収モードにおいても、第1流体が熱回収部に局所的に流れて第2流体と熱交換し、熱遮断性能が低下してしまう。また場合によっては、第2流体が沸騰してしまい、熱交換器が破損する恐れがある。
そこで、本出願人は、特許文献3において、第1流体の流れを調整する整流部として、配管(筒状部材)の貫通孔が形成されている部位の内側に、内径の小さい配管(以下、「内管」という)を設けることを提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/140068号
【特許文献2】特開2020-84860号公報
【特許文献3】特許第6761424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第1流体の流れを均一化するためには、第1流体の流路断面積を均一化することが重要である。
しかしながら、特許文献3では、整流部としての内管を溶接によって所定の位置に取り付けているため、溶接時の熱ひずみにより、整流部としての内管と内管が取り付けられる配管との同軸度が低下し、第1流体の流路断面積が局所的に不均一になり易い。その結果、第1流体の流れも不均一になり、熱回収モード時の熱回収性能や、非熱回収モード時の熱遮断性能が低下することがある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、第1流体の流れを均一化し、熱回収モード時に熱回収性能、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、熱交換器の構造について鋭意研究を行った結果、熱回収部材の内周面に篏合される内筒部材を特定の2重筒構造とすることにより、内筒部材に整流部(内管)を溶接する作業を省略でき、しかも第1流体の流れを均一化させ得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0010】
(1) 軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有する内筒部材であって、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される部分を有する領域Aと、前記領域Aの内側に折り返された領域Bとを含み、且つ前記領域Aと前記領域Bとの間に前記第1流体の流路となる空間部を有する折り返し2重筒構造を前記流入口側に有する内筒部材と
を備え、
前記第1流体を前記熱回収部材の前記流入端面に導入するための貫通孔が前記内筒部材の前記領域Aに設けられている熱交換器。
【0011】
(2) 前記内筒部材は、前記領域Bの内径が前記領域Aの内径の30~95%である、(1)に記載の熱交換器。
【0012】
(3) 前記領域Bの流出口側端部が縮径している、(1)又は(2)に記載の熱交換器。
【0013】
(4) 前記領域Bの流出口側端部が拡径している、(1)又は(2)に記載の熱交換器。
【0014】
(5) 前記貫通孔がルーバー形状を有する、(1)~(4)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0015】
(6) 前記内筒部材は、前記熱回収部材の前記流出端面側に設けられたシール部材を介して前記熱回収部材の内周面に篏合されており、
前記内筒部材は、前記シール部材よりも前記流入口側の前記領域Aに前記貫通孔が設けられている、(1)~(5)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0016】
(7) 前記熱回収部材の前記内周面と前記内筒部材の領域Aとの間に空間領域を有し、前記空間領域に面する前記領域Aに前記貫通孔が設けられている、(6)に記載の熱交換器。
【0017】
(8) 前記内筒部材の流出口側端部が多角形状又は楕円状である、(1)~(7)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0018】
(9) 前記熱回収部材が、内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、前記流入端面から前記流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体である、(1)~(8)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0019】
(10) 前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材を更に備える(1)~(9)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0020】
(11) 前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記内筒部材の前記流入口側との間を接続するリング状部材を更に備える、(10)に記載の熱交換器。
【0021】
(12) 前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第1筒状部材を更に備える、(10)又は(11)に記載の熱交換器。
【0022】
(13) 前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される第2筒状部材と、
前記第2筒状部材の流出口側に接続され、前記内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第1筒状部材と
を更に備える、(10)又は(11)に記載の熱交換器。
【0023】
(14) 前記第1外筒部材の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記第1外筒部材との間を第2流体が流通可能な第2外筒部材を更に備える、(10)~(13)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0024】
(15) 前記内筒部材の前記流出口側に配置された開閉バルブを更に備える、請求項(1)~(14)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第1流体の流れを均一化し、熱回収モード時に熱回収性能、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】本発明の実施形態に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図1B図1Aの熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図2A】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図3A】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図3B】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図4】貫通孔が形成された内筒部材の領域Aの部分拡大側面図である。
図5】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図6A】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
図6B】本発明の実施形態に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の熱交換器は、軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、前記第1流体の流入口及び流出口を有する内筒部材であって、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される部分を有する領域Aと、前記領域Aの内側に折り返された領域Bとを含み、且つ前記領域Aと前記領域Bとの間に前記第1流体の流路となる空間部を有する折り返し2重筒構造を前記流入口側に有する内筒部材とを備え、前記第1流体を前記熱回収部材の前記流入端面に導入するための貫通孔が前記内筒部材の前記領域Aに設けられている。
本発明の熱交換器は、上記のような構成とすることにより、内筒部材に整流部(内管)を溶接する作業を省略でき、第1流体の流れを均一化させることができるため、熱回収モード時に熱回収性能、非熱回収モード時に熱遮断性能が向上する。また、内筒部材に整流部(内管)を溶接する場合、第1流体の流れを均一化するために各部材の寸法精度を高めることが必要であったが、本発明の熱交換器は、各部材の寸法精度を高めなくてもよいため、製造時間や製造コストを抑えることができる。
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0029】
図1Aは、本発明の実施形態1に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、図1Bは、図1Aの熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図1A及び1Bに示されるように、熱交換器100は、中空型の熱回収部材10、及び内筒部材20を備える。また、熱交換器100は、第1外筒部材30、リング状部材40、第1筒状部材50、第2外筒部材60、開閉バルブ70及び第2筒状部材80を更に備えることができる。
【0030】
(1.中空型の熱回収部材)
中空型の熱回収部材10(以下、「熱回収部材10」と略すことがある)は、軸方向に内周面11及び外周面12、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面13a及び流出端面13bを有する。なお、本明細書において「熱回収部材10」とは、熱を回収する機能を有する部材のことを意味する。
熱回収部材10としては、上記のような構造を有していれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0031】
熱回収部材10は、熱回収性能の観点から、図1Bに示されるように、内周壁15、外周壁16、及び内周壁15と外周壁16との間に配設され、流入端面13aから流出端面13bまで延びる第1流体の流路となる複数のセル17を区画形成する隔壁18を有する中空型の柱状ハニカム構造体であることが好ましい。
ここで、本明細書において「中空型の柱状ハニカム構造体」とは、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体の断面において、中心部に中空領域を有する柱状ハニカム構造体を意味する。
中空型の柱状ハニカム構造体の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
また、中空型の柱状ハニカム構造体における中空領域の形状についても、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
なお、中空型の柱状ハニカム構造体の形状と、中空領域の形状とは同一であっても異なっていてもよいが、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性の観点から、同一であることが好ましい。
【0032】
セル17の形状としては、特に限定されず、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形などとすることができる。また、セル17は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、放射状に設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、セル17を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体の外部に効率良く伝達することができる。
【0033】
隔壁18の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.6mmである。隔壁18の厚みを0.1mm以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁18の厚さを1mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりするなどの問題を抑制することができる。
【0034】
内周壁15及び外周壁16の厚みは、特に限定されないが、隔壁18の厚みよりも大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い内周壁15及び外周壁16の強度を高めることができる。
なお、内周壁15及び外周壁16の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、内周壁15及び外周壁16の厚みは、熱交換器100を一般的な熱交換用途に用いる場合は、好ましくは0.3mm以上10mm以下、より好ましくは0.5mm~5mm、更に好ましくは1mm~3mmである。また、熱交換器100を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁16の厚みを10mm以上として外周壁16の熱容量を増大させてもよい。
【0035】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16は、セラミックスを主成分とする。「セラミックスを主成分とする」とは、全成分の質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0036】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下である。また、隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率は0%であってもよい。隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0037】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。このような材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si34、及びSiCなどが挙げられる。これらの中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを用いることが好ましい。
【0038】
第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体の断面におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル17の数)は、特に限定されないが、好ましくは4~320セル/cm2である。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁18の強度、ひいては中空型の柱状ハニカム構造体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0039】
中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、特に限定されないが、好ましくは100MPa以上、より好ましくは150MPa以上、更に好ましくは200MPa以上である。中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度を100MPa以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体の耐久性を向上させることができる。中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、公益社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0040】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における外周壁16の直径(外径)は、特に限定されないが、好ましくは20~200mm、より好ましくは30~100mmである。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。外周壁16が円形でない場合には、外周壁16の断面形状に内接する最大内接円の直径を、外周壁16の直径とする。
また、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における内周壁15の直径は、特に限定されないが、好ましくは20~90mm、より好ましくは30~80mmである。内周壁15の断面形状が円形でない場合には、内周壁15の断面形状に内接する最大内接円の直径を、内周壁15の直径とする。
【0041】
中空型の柱状ハニカム構造体の熱伝導率は、特に限定されないが、25℃において、好ましくは50W/(m・K)以上、より好ましくは100~300W/(m・K)、更に好ましくは120~300W/(m・K)である。中空型の柱状ハニカム構造体の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、中空型の柱状ハニカム構造体内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値を意味する。
【0042】
中空型の柱状ハニカム構造体のセル17に、第1流体として排ガスを流す場合、中空型の柱状ハニカム構造体の隔壁18に触媒を担持させてもよい。隔壁18に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になると共に、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0043】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、特に限定されないが、好ましくは10~400g/Lである。また、貴金属を含む触媒を用いる場合、その担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~5g/Lである。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすることにより、触媒作用が発現し易くなる。また、触媒(触媒金属+担持体)の担持量400g/L以下とすることにより、圧力損失と共に製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものを用いることができる。
【0044】
(2.内筒部材)
内筒部材20は、第1流体の流入口21a及び流出口21bを有する筒状の部材である。内筒部材20の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、内筒部材20の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
内筒部材20は、熱回収部材10の内周面11に嵌合される部分を有する領域Aと、領域Aの内側に折り返された領域Bとを含み、且つ領域Aと領域Bとの間に第1流体の流路となる空間部S1を有する折り返し2重筒構造を流入口21a側に有する。また、内筒部材20の領域Aには、第1流体を熱回収部材10の流入端面13aに導入するための貫通孔22が設けられている。
内筒部材20を上記のような2重筒構造とすることにより、領域A及び領域Bの同軸度が向上する。その結果、領域Aと領域Bとの間の空間部S1、及び領域Bの内周側の空間部S2の流路断面積が均一化し、空間部S1及びS2における第1流体の流れも均一になるため、熱回収モード時の熱回収性能が向上する。また、非熱回収モード時においても、空間部S2の流路断面積が均一化するため、熱遮断性能が向上する。
【0045】
内筒部材20を折り返し2重筒構造とするための内筒部材20の曲げ回数は、特に限定されない。例えば、内筒部材20は、図1Aに示されるような2回の曲げ加工によって形成された折り返し2重筒構造以外にも、図2Aに示されるような1回の曲げ加工によって形成された折り返し2重筒構造や、図2Bに示されるような3回の曲げ加工によって形成された折り返し2重筒構造としてもよい。なお、図2A及び2Bは、図1Aと同様に、熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【0046】
内筒部材20は、領域Bの内径L1が領域Aの内径L2の30~95%であることが好ましい。このような構成とすることにより、熱回収モード時に、圧力損失の増加を抑えつつ熱回収性能を向上させることができる。この効果を安定して確保する観点から、領域Bの内径L1は、領域Aの内径L2の50~95%であることがより好ましく、60~90%であることが更に好ましい。
ここで、本明明細書における「領域Bの内径L1」及び「領域Aの内径L2」は、領域B及び領域Aの内径が位置によって変化する場合、領域Bの最小内径及び領域Aの最小内径をそれぞれ意味する。
【0047】
内筒部材20は、図3Aに示されるように、領域Bの流出口側端部21cが縮径していてもよい。このような構造とすることにより、熱回収モード時に空間部S1に入る第1流体の流路入口が広くなるため、圧力損失を低減することができる。
【0048】
内筒部材20は、図3Bに示されるように、領域Bの流出口側端部21cが拡径していてもよい。このような構造とすることにより、非熱回収モード時に空間部S1に第1流体が流入し難くなるため、熱遮断性能を向上させることができる。
【0049】
内筒部材20の流出口21b側は、領域Aと一様の径(外径及び内径)であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向の少なくとも一方の端部側など)が縮径又は拡径していてもよい。
【0050】
内筒部材20に設けられる貫通孔22の形状としては、特に限定されず、公知の各種形状を採用することができる。例えば、要求される特性に応じて、図1Aなどに示される四角形の他、図4に示されるような円形(左上図)、楕円形(右上図)、多角形(左下図)、ルーバー形状(右下図)などの各種形状とすることができる。なお、図4は、貫通孔22が形成された内筒部材20の領域Aの部分拡大側面図である。また、本明細書において「ルーバー形状」とは、羽板を平行に並べて隙間(貫通孔22)をあけた形状を意味する。ルーバー形状の貫通孔22は、内筒部材20の領域Aの所定の位置に切り込みを入れて貫通孔22が形成されるように加工することにより形成することができる。
また、貫通孔22の数も特に限定されず、内筒部材20の周方向に複数設けられていてもよいし、内筒部材20の軸方向に複数設けられていてもよい。
【0051】
内筒部材20は、熱回収部材10の内周面11に直接的に嵌合されていてもよいが、他の部材(例えば、シール部材25)を介して間接的に嵌合させてもよい。ここで、本明細書において「嵌合」とは、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、熱回収部材10と内筒部材20との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、熱回収部材10と内筒部材20とが相互に固定されている場合なども含まれる。
シール部材25は、熱回収部材10の流出端面13b側に設け、内筒部材20は、シール部材25よりも流入口21a側の領域Aに貫通孔22を設けることが好ましい。このような構成とすることにより、内筒部材20の軸方向に貫通孔22を多く設けることができるため、熱回収モード時に圧力損失を低減することができる。
【0052】
また、熱回収部材10の内周面11と内筒部材20の領域Aとの間に空間領域S3を有し、空間領域S3に面する領域Aに貫通孔22が設けられていることが好ましい。このような構造を有する熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図を図5に示す。このような構成とすることにより、内筒部材20の軸方向に貫通孔22を多く設けることができ、しかも熱回収モード時に熱回収部材10の内周面11からも熱回収ができるため、熱回収性能を高めることができる。
【0053】
内筒部材20は、流出口側端部21cが、三角形、四角形などの多角形状又は楕円状であることが好ましい。このような形状とすることにより、非熱回収モード時に空間部S1に第1流体が流入し難くなるため、熱遮断性能を向上させることができる。
【0054】
内筒部材20の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。内筒部材20の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0055】
内筒部材20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。内筒部材20の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、内筒部材20の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。内筒部材20の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0056】
(3.第1外筒部材)
第1外筒部材30は、第1流体の流入口31a及び流出口31bを有し、熱回収部材10の外周面12に嵌合される筒状の部材である。
第1外筒部材30の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第1外筒部材30の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
第1外筒部材30の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向の少なくとも一方の端部側など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、図6Aに示されるように、第1外筒部材30の軸方向の流入口31a側を縮径して内筒部材20と接続させることにより、リング状部材40を設ける必要がなくなる。また、図6Bに示されるように、第1外筒部材の軸方向の流出口31b側を縮径して第1筒状部材50と接続させることにより、第2筒状部材80を設ける必要がなくなる。なお、図6A及び6Bは、熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【0057】
第1外筒部材30は、熱回収部材10の外周面12に対応した内周面形状を有することが好ましい。第1外筒部材30の内周面が熱回収部材10の外周面12に直接接触することで、熱伝導性が良好となり、熱回収部材10内の熱を第1外筒部材30に効率良く伝達することができる。
【0058】
熱回収効率を高めるという観点からは、熱回収部材10の外周面12の全面積に対する、第1外筒部材30によって周回被覆される熱回収部材10の外周面12の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは100%(すなわち、熱回収部材10の外周面12の全部が第1外筒部材30によって周回被覆される。)である。
なお、ここでいう「外周面12」とは、熱回収部材10の第1流体の流路方向に平行な面を指し、熱回収部材10の第1流体の流路方向と垂直な面(流入端面13a及び流出端面13b)は含まれない。
【0059】
第1外筒部材30の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。また、第1外筒部材30が金属製であると、リング状部材40などの他の部材との溶接が容易に行える点でも優れている。第1外筒部材30の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0060】
第1外筒部材30の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。第1外筒部材30の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第1外筒部材30の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。第1外筒部材30の厚みを10mm以下とすることにより、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めることができる。
【0061】
(4.リング状部材)
リング状部材40は、第1流体の流路を構成するように第1外筒部材30の流入口31a側と内筒部材20の流入口21a側との間を接続するための筒状の部材である。
第1外筒部材30と内筒部材20との間の接続は、直接的又は間接的のいずれであってもよい。間接的な接続の場合、例えば、第1外筒部材30と内筒部材20との間に第2外筒部材60などが配置されていてもよい。
リング状部材40の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、リング状部材40の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
【0062】
リング状部材40の形状は、特に限定されないが、曲面構造を有していてもよい。このような構造とすることにより、熱回収モード時(開閉バルブ70を閉とした場合)に、熱回収部材10に流れる第1流体の流れをスムーズにすることができるため、圧力損失を低減することができる。
【0063】
リング状部材40の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から、金属であることが好ましい。リング状部材40の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0064】
リング状部材40の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。リング状部材40の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、リング状部材40の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。リング状部材40の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0065】
(5.第1筒状部材)
第1筒状部材50は、第1外筒部材30の流出口31b側に直接的又は間接的に接続される筒状部材である。第1筒状部材50が第1外筒部材30の流出口31b側に間接的に接続される場合、第1外筒部材30と第1筒状部材50との間に第2筒状部材80が配置される(図1A、2A、2B、3A、3B、5及び6A)。他方、第1筒状部材50が第1外筒部材30の流出口31b側に直接的に接続される場合、第1外筒部材30と第1筒状部材50との間に第2筒状部材80は配置されない(図6B)。また、第1筒状部材50は、内筒部材20の径方向外側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する。
【0066】
第1筒状部材50は、流入口51a及び流出口51bを有する。第1筒状部材50が第1外筒部材30の流出口31b側に間接的に接続される場合、第1外筒部材30の流出口31b側に第2筒状部材80の流入口81a側が接続され、第2筒状部材80の流出口81b側に第1筒状部材50の流入口51a側が接続される。また、第1筒状部材50が第1外筒部材30の流出口31b側に直接的に接続される場合、第1外筒部材30の流出口31b側に第1筒状部材50の流入口51a側が接続される。
第1筒状部材50の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第1筒状部材50の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。また、第1筒状部材50の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部が縮径又は拡径していてもよい。
【0067】
第1筒状部材50の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。第1筒状部材50の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0068】
第1筒状部材50の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。第1筒状部材50の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第1筒状部材50の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。第1筒状部材50の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0069】
(6.第2筒状部材)
第2筒状部材80は、第1筒状部材50が第1外筒部材30の流出口31b側に間接的に接続される場合に、第1外筒部材30と第1筒状部材50との間に配置される。
第2筒状部材80は、内筒部材20の径方向外側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される。
【0070】
第2筒状部材80は、流入口81a及び流出口81bを有する。第2筒状部材80の流入口81a側は第1外筒部材30の流出口31b側に接続され、第2筒状部材80の流出口81b側は第1筒状部材50の流入口51a側に接続される。
第2筒状部材80の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第2筒状部材80の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。また、第2筒状部材80の径(外径及び内径)は、流出口81b側に向かって縮径していることが好ましい。
【0071】
第2筒状部材80の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。第2筒状部材80の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0072】
第2筒状部材80の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。第2筒状部材80の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第2筒状部材80の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。第2筒状部材80の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0073】
(7.第2外筒部材)
第2外筒部材60は、第1外筒部材30の径方向外側に間隔をおいて配置される筒状の部材である。第2外筒部材60と第1外筒部材30との間は第2流体が流通可能である。
第2外筒部材60は、流入口61a及び流出口61bを有する。
第2外筒部材60の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第2外筒部材60の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。第2外筒部材60の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向中央部、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。
【0074】
第2外筒部材60は、第2流体を第2外筒部材60と第1外筒部材30との間の領域に供給するための供給管62、及び第2流体を第2外筒部材60と第1外筒部材30との間の領域から排出するための排出管63に接続されていることが好ましい。供給管62及び排出管63の位置は、特に限定されない。
【0075】
第2外筒部材60は、軸方向両端部の内周面が第1外筒部材30の外周面と直接的又は間接的に接するように配置されていることが好ましい。
第2外筒部材60の軸方向両端部の内周面を第1外筒部材30の外周面に固定する方法としては、特に限定されないが、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などを用いることができる。
【0076】
第2外筒部材60の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から、金属であることが好ましい。第2外筒部材60の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0077】
第2外筒部材60の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、更に好ましくは0.5mm以上である。第2外筒部材60の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第2外筒部材60の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。第2外筒部材60の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0078】
(8.開閉バルブ)
開閉バルブ70は、内筒部材20の流出口21b側に配置される。
開閉バルブ70は、第1筒状部材50の径方向外側に配置された軸受71に回転自在に支持され且つ第1筒状部材50及び内筒部材20を貫通するように配置されるシャフト72に固定されている。
開閉バルブ70の形状は、特に限定されず、開閉バルブ70が配置される内筒部材20の形状に応じて適切なものを選択すればよい。
【0079】
開閉バルブ70は、アクチュエータ(図示せず)によってシャフト72を駆動(回転)させることができる。シャフト72とともに開閉バルブ70が回転することで、開閉バルブ70の開閉を行うことができる。
開閉バルブ70は、内筒部材20の内側における第1流体の流れを調整可能に構成される。具体的には、開閉バルブ70は、熱回収モード時に閉とすることにより、熱回収部材10に第1流体を流通させることができる。また、開閉バルブ70は、非熱回収モード時に開とすることにより、内筒部材20の流出口21bから第1筒状部材50に第1流体を流通させて熱交換器100の外部に排出することができる。
【0080】
(9.第1流体及び第2流体)
熱交換器100に用いられる第1流体及び第2流体としては、特に限定されず、種々の液体及び気体を利用することができる。例えば、熱交換器100が自動車に搭載される場合、第1流体として排ガスを用いることができ、第2流体として水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)を用いることができる。また、第1流体は、第2流体よりも高温の流体とすることができる。
【0081】
(10.熱交換器の製造方法)
熱交換器100は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。例えば、熱交換器100は、熱回収部材10として中空型の柱状ハニカム構造体を用いる場合、以下に説明する方法に従って製造することができる。
【0082】
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル17の形状及び密度、隔壁18、内周壁15及び外周壁16の形状及び厚さなどを制御することができる。また、ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水及び/又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練して坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁18により区画形成されたセル17を有する中空型の柱状ハニカム構造体を得ることができる。金属Siの含浸焼成方法としては、金属Siを含む塊とハニカム成形体とが接触するように配置して焼成する方法が挙げられる。ハニカム成形体における金属Siを含む塊の接触箇所は、端面であっても外周壁面であっても内周壁面であってもよい。
【0083】
次に、中空型の柱状ハニカム構造体を第1外筒部材30内に挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体の外周壁16(外周面12)に第1外筒部材30を嵌合させる。次に、中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域に内筒部材20を挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体の内周壁15(内周面11)に内筒部材20を嵌合させる。次に、第1外筒部材30の径方向外側に第2外筒部材60を配置して固定する。なお、供給管62及び排出管63は、第2外筒部材60に予め固定しておいてもよいが、適切な段階で第2外筒部材60に固定してもよい。また、リング状部材40を設ける場合には、内筒部材20と第1外筒部材30又は第2外筒部材60との間にリング状部材40を配置して固定する。次に、第1外筒部材30の流出口31b側に第1筒状部材50を配置して接続する。また、第1外筒部材30と第1筒状部材50との間に第2筒状部材80を配置する場合には、第1外筒部材30の流出口31b側に第2筒状部材80を配置して接続した後、第2筒状部材80の流出口81b側に第1筒状部材50を配置して接続する。次に、内筒部材20の流出口21b側に開閉バルブ70を取り付ける。
なお、各部材の配置及び固定(嵌合)の順番は上記に限定されず、製造可能な範囲で適宜変更してもよい。また、固定(嵌合)方法は、上述した方法を用いればよい。
【符号の説明】
【0084】
10 熱回収部材
11 内周面
12 外周面
13a 流入端面
13b 流出端面
15 内周壁
16 外周壁
17 セル
18 隔壁
20 内筒部材
21a 流入口
21b 流出口
21c 領域Bの流出口側端部
22 貫通孔
25 シール部材
30 第1外筒部材
31a 流入口
31b 流出口
40 リング状部材
50 第1筒状部材
51a 流入口
51b 流出口
60 第2外筒部材
61a 流入口
61b 流出口
62 供給管
63 排出管
70 開閉バルブ
71 軸受
72 シャフト
80 第2筒状部材
81a 流入口
81b 流出口
100 熱交換器
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B