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特開2024-8846絶縁型電源装置及び電源制御用半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008846
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】絶縁型電源装置及び電源制御用半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H02M3/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023092251
(22)【出願日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022109659
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】今出 大佑
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】日向寺 拓未
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸雄
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD41
5H730EE02
5H730EE07
5H730EE59
5H730FD01
5H730FF19
(57)【要約】
【課題】中負荷~軽負荷の領域においても効率の低下を抑制し、平均効率の高い絶縁型電源装置及び電源制御用半導体装置を提供する。
【解決手段】トランスの一次側巻線と直列に接続されたスイッチング素子と、一次側巻線の端子間に接続されたアクティブクランプ回路と、電源制御用半導体装置とを備えた絶縁型電源装置において、前記電源制御用半導体装置は、スイッチング素子と直列に接続された電流-電圧変換素子により変換された電圧と所定のしきい値レベルとに基づきスイッチング素子をオフさせるタイミングを生成する回路と、重負荷時には連続モードでオン・オフ制御を行い中負荷~軽負荷時にはバーストモードでオン・オフ制御を行う回路と、バーストモードにおいては1バースト周期におけるスイッチング回数を固定した上で、負荷電流が小さいほどバースト周波数が低くなるようにする回路を備えるようにした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側巻線と直列に接続されたスイッチング素子と、前記トランスの一次側巻線の端子間に接続されたアクティブクランプ回路と、前記スイッチング素子および前記アクティブクランプ回路を制御する電源制御用半導体装置と、を備えた絶縁型電源装置であって、
前記スイッチング素子と直列に電流-電圧変換素子が接続されており、
前記電源制御用半導体装置は、
前記電流-電圧変換素子により変換された電圧と所定のターンオフしきい値レベルとに基づき前記スイッチング素子をオフさせるタイミングを生成する回路と、
所定の負荷以下ではバーストモードで前記スイッチング素子のオン・オフ制御を行う回路と、
前記バーストモードにおいては、1バースト周期における前記スイッチング素子のスイッチング回数を固定し、負荷電流が小さいほどバースト周波数が低くなるように変化させる回路と、
を備えていることを特徴とする絶縁型電源装置。
【請求項2】
前記所定の負荷よりも大きな負荷の領域においては連続動作モードで前記スイッチング素子のオン・オフ制御が行われ、
前記バーストモードにおいては、前記連続動作モードに近い一部の範囲では、バースト周波数の変化率が大きくなるような制御が行われ、前記一部の範囲を除く範囲では、バースト周波数の変化率が小さくなるような制御が行われるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁型電源装置。
【請求項3】
前記バーストモードにおいては、前記負荷電流が大きくなるにつれて前記ターンオフしきい値レベルが高くなるように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の絶縁型電源装置。
【請求項4】
前記所定の負荷以下となったときに連続モードから前記バーストモードへ切り換わる際の負荷電流値に対応するバースト周波数は、前記連続モードから前記バーストモードへ切り換わる直前の周波数を、1バースト周期における前記スイッチング回数で割った周波数に設定されることを特徴とする請求項1に記載の絶縁型電源装置。
【請求項5】
前記電源制御用半導体装置は、
前記バーストモードにおいては、前記1バースト周期の間にそれぞれ前記スイッチング素子を前記スイッチング回数だけ連続してオン・オフ制御することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の絶縁型電源装置。
【請求項6】
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側巻線と直列に接続されたスイッチング素子と、前記トランスの一次側巻線の端子間に接続されたアクティブクランプ回路と、を備えた絶縁型電源装置を構成し前記スイッチング素子および前記アクティブクランプ回路を制御する電源制御用半導体装置であって、
前記電源制御用半導体装置は、
前記スイッチング素子と直列に接続された電流-電圧変換素子により変換された電圧と所定のターンオフしきい値レベルとに基づき前記スイッチング素子をオフさせるタイミングを生成するオフタイミング生成回路と、
所定の負荷以下ではバーストモードで前記スイッチング素子のオン・オフ制御を行い、前記バーストモードにおいては、1バースト周期における前記スイッチング素子のスイッチング回数を固定し、負荷電流が小さいほどバースト周波数が低くなるように変化させる制御回路と、
を備えていることを特徴とする電源制御用半導体装置。
【請求項7】
前記トランスの二次側から供給される出力電圧に応じたフィードバックが入力される外部端子と、
前記外部端子の電圧に基づいて前記ターンオフしきい値レベルを生成するしきい値レベル生成回路と、をさらに備え、
前記制御回路は、前記所定の負荷よりも大きな負荷の領域においては連続動作モードで前記スイッチング素子のオン・オフ制御を行い、
前記しきい値レベル生成回路は、前記バーストモードのための第1特性線を生成する回路と、前記連続動作モードのための第2特性線を生成する回路と、前記バーストモードと前記連続動作モードの切替え点に応じて前記第1特性線より抽出された特性と前記第2特性線より抽出された特性とを合成する回路と、合成された特性線の最小値を制限する回路と、を備えていることを特徴とする請求項6に記載の電源制御用半導体装置。
【請求項8】
前記第2特性線を生成する回路は、前記外部端子の電圧値から所定の設定値を減算する減算回路と、該減算回路の出力を分圧する分圧回路と、から構成されており、
出力電圧値に応じて前記切替え点および前記所定の設定値を変更可能な設定値調整回路を備えていることを特徴とする請求項7に記載の電源制御用半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧変換用トランスの一次側巻線と直列に接続されたスイッチング素子を制御する電源制御用半導体装置に関し、特にアクティブクランプ回路を備えた絶縁型電源装置及びこれを構成する電源制御用半導体装置に利用して有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置の1つとして、トランスの一次側巻線に間欠的に電流を流すためのスイッチング素子としてのトランジスタ(シリコン基板の他、GaNやSiCの基板上のトランジスタを含む)および該スイッチング素子をオン、オフ制御する制御回路(IC)を備え、一次側巻線に電流を流すことで二次側巻線に誘起された電流をダイオードにより整流し、コンデンサで平滑して出力するスイッチング電源装置(絶縁型DC-DCコンバータ)がある。
【0003】
また、直流電源装置には、交流電源を整流するダイオード・ブリッジ回路と、該回路で整流された直流電圧を、上記スイッチング電源装置(絶縁型DC-DCコンバータ)で降圧して所望の電位の直流電圧に変換する絶縁型AC-DCコンバータがある。
絶縁型AC-DCコンバータには、高周波共振現象を利用しスイッチング素子の印加電圧が0Vあるいは導通電流が0Aになってから、スイッチング素子のオン/オフを行うソフトスイッチングと呼ばれるスイッチング方式があり、電圧がゼロのタイミングでスイッチングを行う方式はゼロ電圧スイッチングと呼ばれている。
【0004】
従来、トランスを有する絶縁型AC-DCコンバータや絶縁型DC-DCコンバータ(絶縁型電源装置と記す)には、効率を向上させるため、トランスの一次側巻線の端子間にエネルギー回生機能を有するアクティブクランプ回路を設けるように構成したものがある。
アクティブクランプ回路を設けたスイッチング電源装置(絶縁型電源装置)に関する発明は、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
また、絶縁型電源装置には、例えば重負荷の領域では一次側のスイッチ素子(主スイッチ素子)を連続モードでオン/オフ駆動し、中負荷~軽負荷の領域ではスイッチングのオン/オフ駆動を休止する期間をさらに設けたバーストモードを備えているものがある。特許文献1には、負荷電流が所定レベルを下回ったときに可変スイッチング周波数を有する不連続導通モードでフライバックコンバータを動作させるように、主スイッチ素子およびクランプ用のスイッチ素子を制御するようにした絶縁型電源装置に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第9991800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
昨今の絶縁型電源装置特にACアダプタは小型化の要求がある。小型化のためには、高出力高電力密度が必要であり、そのためには一次側の主スイッチ素子のスイッチング周波数を高くすることでトランスサイズを低減することが有効である。しかるに、PWM制御/擬似共振制御で主スイッチ素子をオン/オフ駆動する一次側制御ICを用いたACアダプタ(絶縁型電源装置)にあっては、スイッチング周波数を高くすると、電力損失が増加し効率が低下してしまうという課題がある。さらに、アクティブクランプ回路には、中負荷~軽負荷の領域においてスイッチング周波数が上昇し、効率が著しく低下するという課題があることが分かった。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、中負荷~軽負荷の領域においても効率の低下を抑制し、平均効率の高い絶縁型電源装置及びこれを構成する電源制御用半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、
電圧変換用のトランスと、該トランスの一次側巻線と直列に接続されたスイッチング素子と、前記トランスの一次側巻線の端子間に接続されたアクティブクランプ回路と、前記スイッチング素子および前記アクティブクランプ回路を制御する電源制御用半導体装置と、を備えた絶縁型電源装置であって、
前記スイッチング素子と直列に電流-電圧変換素子が接続されており、
前記電源制御用半導体装置は、
前記電流-電圧変換素子により変換された電圧と所定のターンオフしきい値レベルとに基づき前記スイッチング素子をオフさせるタイミングを生成する回路と、
所定の負荷以下ではバーストモードで前記スイッチング素子のオン・オフ制御を行う回路と、
前記バーストモードにおいては、1バースト周期における前記スイッチング素子のスイッチング回数を固定し、負荷電流が小さいほどバースト周波数が低くなるように変化させる回路と、
を備えるようにしたものである。
【0010】
上記のような構成によれば、バーストモードにおける中負荷~軽負荷時においては、1バースト周期におけるスイッチング素子(主スイッチ素子)のスイッチング回数が多い状態で固定しつつ、バースト周波数が低くなるように変化される。そのため、単位時間当りのハードスイッチング回数を減らすことができ、バーストモードによるスイッチング制御が実行される中負荷~軽負荷時における効率を向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る絶縁型電源装置及び電源制御用半導体装置によれば、中負荷~軽負荷の領域においても電力損失が増加して効率が低下しないようにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る絶縁型電源装置としてのAC-DCコンバータの一実施形態を示す回路構成図である。
図2図1のAC-DCコンバータのバーストモードにおける負荷電流-バースト周波数特性の一例を示す特性図である。
図3図1のAC-DCコンバータにおけるフィードバック電圧-バースト周波数特性の一例を示す特性図である。
図4図1のAC-DCコンバータにおけるフィードバック電圧-ターンオフしきい値レベル特性の一例を示す特性図である。
図5図1のAC-DCコンバータにおける負荷電流-スイッチング周波数特性の一例を示す特性図である。
図6図1のAC-DCコンバータのバーストモードにおける主スイッチ素子のオンパルスのタイミング例を示すタイミングチャートである。
図7】(A)は図1のAC-DCコンバータにおける負荷電流-効率特性を示す特性図、(B)は(A)の一部を拡大して示す特性図である。
図8】(A)、(B)は図1のAC-DCコンバータの1バースト周期における主スイッチ素子のオンパルスのタイミング例を示すタイミングチャートである。
図9】(A)、(B)、(C)は図1の実施形態のAC-DCコンバータと変形例のAC-DCコンバータにおける負荷電流-ターンオフしきい値レベル特性の違いを示す図である。
図10】本発明の第2実施例のAC-DCコンバータにおける負荷電流に対するバースト周波数およびスイッチング周波数の特性を示す特性図である。
図11】第2実施例における負荷電流に対するターンオフしきい値レベルVCSTの特性の一例を示す特性図である。
図12】第1実施例のAC-DCコンバータにおける負荷電流-効率特性と第2実施例のAC-DCコンバータにおける負荷電流-効率特性との差異を示す特性図である。
図13】第2実施例におけるフィードバック電圧に対するターンオフしきい値レベルVCSTの特性を示す特性図である。
図14】本発明に係るAC-DCコンバータを構成する電源制御用ICの機能構成例を示すブロック構成図である。
図15図14に示す電源制御用ICに設けられているしきい値レベル生成回路の機能構成例を示すブロック構成図である。
図16】実施例のAC-DCコンバータにおいて、軽~重領域でBMモードによる制御を行った場合と軽~重領域でTMモードによる制御を行った場合における負荷電流-効率特性を示す特性図である。
図17】(A)は第2実施例における出力電圧に応じて負荷電流-ターンオフしきい値レベル特性を変化させた場合の特性図、(B)はフィードバック電圧に対するバースト周波数の特性を示す特性図である。
図18】第2実施例において出力電圧に応じて負荷電流-ターンオフしきい値レベル特性を変化させる場合のTM特性線の切片および切替えポイントと出力電圧との関係を示す図である。
図19】第2実施例において入力電圧に応じて負荷電流ターンオフしきい値レベル特性を変化させる場合の出力電圧と設定値との関係を示すもので、(A)はTM特性線の切片の値の調整例を示す図、(B)は切替えポイントの電圧値の調整例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る絶縁型電源装置としてのAC-DCコンバータの一実施形態を示す回路構成図である。
【0014】
本実施形態のAC-DCコンバータは、フライバック方式のコンバータであり、AC電源11からの交流電圧を整流するダイオード・ブリッジ回路12および平滑コンデンサC1と、一次側巻線Npと二次側巻線Nsおよび補助巻線Nbとを有し電圧入力端子INに接続された電圧変換用のトランス13と、このトランス13の一次側巻線Npと直列に接続されたスイッチングトランジスタ(以下、主スイッチと称する)SW1と、該主スイッチSW1をオン、オフ駆動する電源制御用半導体装置(以下、電源制御用ICと称する)14を備える。
【0015】
上記トランス13の二次側には、二次側巻線Nsと直列に接続された整流用ダイオードD2と、このダイオードD2のカソード端子と二次側巻線Nsの他方の端子との間に接続された平滑用コンデンサC2とが設けられ、一次側巻線Npに間欠的に電流を流すことで二次側巻線Nsに誘起される交流電圧を整流し平滑することによって直流出力電圧Voutを生成し出力端子OUT1,OUT2より出力する。
【0016】
また、上記トランス13の二次側には、誤差アンプを備えたシャントレギュレータなどから構成され出力電圧Voutを検出する出力電圧検出回路15と、検出された電圧に応じた出力電圧検出信号をトランス13の一次側へ伝達するためのフォトカプラを構成する発光ダイオードPDが設けられている。
【0017】
一方、上記トランス13の一次側には、上記発光ダイオードPDと共にフォトカプラを構成するフォトトランジスタPTが設けられ、電源制御用IC14にはフォトトランジスタPTが接続される外部端子FBが設けられている。つまり、発光ダイオードPDには、出力電圧検出回路15によって検出された電圧に応じた電流が流され、検出電圧に応じた強度を有する光信号として一次側へ伝達(フィードバック)されることで、光強度に応じた電流がフォトトランジスタPTに流れ、その電流が電源制御用IC14内部のプルアップ抵抗等で電圧VFBに変換されて内部回路へ供給される。
【0018】
本実施形態のAC-DCコンバータでは、二次側の出力電圧Voutが高いほど発光ダイオードPDに流れる電流およびフォトトランジスタPTに流れる電流が多くなり、電源制御用IC14の外部端子FBの電圧VFBが低くなるように構成されている。
また、電源制御用IC14には、電流検出端子としての外部端子CSが設けられている。この外部端子CSには、主スイッチSW1のソース端子と接地点との間に接続された電流検出用の抵抗Rsによって、主スイッチSW1のドレイン電流を電流-電圧変換した電圧Vcsが入力される。尚、ここでは外部端子FBは電圧をフィードバックする様に構成されているが、電流をフィードバックする様に構成されても良い。
【0019】
さらに、本実施形態では、上記トランス13の一次側巻線Npのロー側端子と電圧入力端子INとの間に直列形態に接続されたトランジスタMACおよびコンデンサCACからなるアクティブクランプ回路16が設けられている。そして、電源制御用IC14には、アクティブクランプ回路16のトランジスタMACを制御するアクティブクランプ制御回路が内蔵されている。また、特に限定されるものではないが、コンデンサCACにはこれと並列に該コンデンサCACの電荷を放電するための放電用抵抗Rdcが接続されている。
【0020】
また、本実施形態のDC-DCコンバータでは、トランス13の補助巻線Nbと直列に接続された整流用ダイオードD0と、このダイオードD0のカソード端子と接地点との間に接続された平滑用コンデンサC0とからなる整流平滑回路が設けられている。この整流平滑回路によって整流、平滑された電圧が、電源制御用IC14の電源電圧端子VDDに印加され、ICの内部回路の電源電圧となる。
【0021】
なお、本実施形態では、上記主スイッチSW1とアクティブクランプ用のトランジスタMACは、NチャネルMOSFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)により、ディスクリートの部品として構成されている。上記MOSFETはGaN系が適しているが、これに限らない。
また、電源制御用IC14には、主スイッチSW1のゲート端子を駆動する信号を出力する外部端子GATE1と、トランジスタMACのゲート端子を駆動する信号を出力する外部端子GATE2と、主スイッチSW1のドレイン電圧が入力される外部端子VDとが設けられている。上記外部端子VDには、主スイッチSW1のドレイン電圧を外付けの直列抵抗で分圧した電圧として入力するようにしても良い。
【0022】
本実施形態における電源制御用IC14は、主スイッチSW1のドレイン電圧が入力される外部端子VDの電圧VDを監視して主スイッチSW1のターンオン信号を生成する機能と共に、電流検出端子CSの電圧Vcsと所定の参照電圧(例えばフィードバック端子FBの電圧VFB)とを比較して主スイッチSW1のターンオフ信号を生成する機能(コンパレータ)を備えている。
また、電源制御用IC14は、主スイッチSW1のドレイン電圧VDの共振のボトムを検出する機能、VDが所定の閾値以下になったことを検出して主スイッチSW1をターンオンするZVS(ゼロ電圧スイッチング)制御機能を備えている。
【0023】
図示しないが、電源制御用IC14のアクティブクランプ制御回路には、例えば外部端子CSの入力電圧に基づいて、主スイッチSW1のドレイン側の電圧がゼロ電圧となったことを判定し、ゼロ電圧スイッチング制御が行われているか否か判定するZVS判定回路が設けられる。また、電源制御用IC14はアクティブクランプ回路を制御する制御信号を生成する信号生成回路を備え、信号生成回路は、上記ZVS判定回路によってゼロ電圧スイッチング制御が行われていないと判定した場合に、アクティブクランプ回路16を構成する上記トランジスタMACのオン時間を所定量だけ延ばす機能を有するように構成される。なお、上記構成は一例であり、これに限定されるものではない。上記のような構成は、特願2021-207662や特願2021-207666に記載されている。
【0024】
さらに、本実施形態の電源制御用IC14は、重負荷の領域ではPWM制御/擬似共振制御で主スイッチSW1をオン/オフ制御する連続動作モードと、中負荷~軽負荷の領域では主スイッチSW1をオン/オフ制御し、さらにスイッチングの休止期間を設けたバーストモードを備えている。(アクティブクランプフライバックにおいては、重負荷の領域ではアクティブクランプフライバック制御で主スイッチSW1とアクティブクランプ用のトランジスタMACのオン/オフを制御する連続動作モードと、中負荷~軽負荷の領域では主スイッチSW1とアクティブクランプ用のトランジスタMACをオン/オフ制御し、さらにスイッチングの休止期間を設けたバーストモードを備えている。)なお、ここでは便宜上、擬似共振型やアクティブクランプフライバックにおけるトランジションモードや臨界モードも連続動作モードに含まれることとする。
【0025】
上記バーストモードの動作(スイッチング制御)が、本実施形態の電源制御用IC14が有する最も特徴的な動作であり従来のICにはない独創的な動作である。以下、このバーストモードの動作について詳細に説明する。
本実施形態の電源制御用IC14は、負荷電流Ioが予め設定された所定値以下になると、PWM制御を行う連続動作モードからバーストモードへ移行する。
【0026】
連続動作モードからバーストモードへの切替え点においては、バースト周波数はスイッチング周波数よりも低い所定の周波数(例えば、ft/4)で動作する。そして、バーストモードにおいては、図2に示すように、負荷電流Ioが少なくなるほどバースト周波数fbを下げるとともに、バースト1周期の間に主スイッチSW1(及びアクティブクランプ用のトランジスタMAC)をオンさせる回数を、所定回数例えば4回(及びトランジスタMACを3回)に固定する。
【0027】
また、本実施形態の電源制御用IC14においては、図2に示すように、バーストモードBMを実施する領域よりも負荷電流Ioの少ない低電力モードの領域MMではバースト周波数fbをバーストモードBMの切替え点の周波数に固定し、負荷電流Ioがさらに少ないウェイティングモードの領域WMでは負荷電流Ioが小さいほどバースト周波数を下げるようにしている。
さらに、電流検出端子CSの電圧Vcsとフィードバック端子FBの電圧VFBとを比較して主スイッチSW1のターンオフ信号を生成する回路構成の場合、上述したようなバースト動作を可能にするため、フィードバック電圧VFBに対するバースト周波数fbの変化が図3に示すような特性に設定される。また、フィードバック電圧VFBに対する主スイッチSW1のターンオフしきい値レベルVCSTの変化が、図4に示すような特性に設定される。
【0028】
主スイッチSW1のターンオフしきい値レベルVCSTの変化が、図4に示すような特性に設定されることによって、主スイッチSW1のスイッチング周波数fswは、図5に示すような変化となる。なお、図4には、バーストモードBMの他、連続動作モードTMにおけるターンオフしきい値レベルVCSTの設定例が、また図5にはこのようなVCSTの設定による連続動作モードTMにおけるスイッチング周波数fswの変化の例も示されている。ただし、連続動作モードTMにおけるスイッチング周波数fswの特性は、図5に示すものに限定されるものでない。
【0029】
さらに、本実施形態の電源制御用IC14においては、上記バーストモード中にバースト1周期当り主スイッチSW1を例えば4回オンさせるに際して、4個のオンパルス(及びアクティブクランプ用のトランジスタMACのオンパルスを3個)を連続して生成、つまり主スイッチSW1を4回連続してオンさせるようにしている。
このように主スイッチSW1を4回連続してオンさせることで、4回のうち2回目~4回目の主スイッチSW1のオン/オフの際に、ZVS(ゼロボルトスイッチング)を行え、それによって主スイッチSW1における損失を低減することができる。
【0030】
図6には、上記のように、4個のオンパルスを連続して生成するようにした場合のオンパルスのタイミングが示されている。図6において、Aは連続動作モードからバーストモードへ移行する直前のPWM制御のパルスの生成タイミングを、B~Lは図2に矢印B~Lで示した負荷電流値におけるオンパルスの生成タイミングをそれぞれ表しており、BからLに向かうほど負荷電流値が小さくなりバースト周波数が低くなる。
【0031】
本発明者らは、上記のような機能を有する電源制御用IC14を、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)を用いて試作し、各部の電流値および電圧値を測定して、図1の電源装置の効率を算出した。その結果を図7(A)に示す。図7(A)より、重負荷領域から軽負荷領域まで、90%に近い高い効率を達成でき、損失が少ないことが分かる。
【0032】
なお、図2から分かるように、上記実施形態の電源制御用ICにおいては、負荷電流Ioの小さな領域でバースト周波数fbが可聴域(20kHz以下)に入ってしまう。そこで、可聴域に近づく軽負荷領域(例えば0.2A近傍)では、バースト周波数fbを高くすることが考えられる。具体的には、例えばバースト周波数fbを上記実施形態における周波数の2倍(周期は1/2)にしかつ1周期における主スイッチSW1のオン回数を、上記実施形態における4回の1/2の回数である2回にする。このようにしても、バースト周期よりも充分に長い同一期間内におけるトータルのオン回数は同一に保たれる。
【0033】
図8に、バースト周波数fbを2倍にする前と2倍にした後のそれぞれの主スイッチSW1のドレイン・ソース間電圧Vds、SW1のゲート駆動パルスおよび一次側巻線電流の変化を示す。(A)がfbを2倍にする前の波形、(B)がfbを2倍にした場合の波形である。図8(A)、(B)より、同一期間におけるパルスの数は同一であることが分かる。
【0034】
また、図7(B)に、(A)における負荷電流が0~0.5Aの領域の効率を拡大して示す。図7(B)において、E1はfbを2倍にする前の効率、E2はfbを2倍にした場合の効率である。同図より、fbを2倍にする前の効率E1の方が、0.15~0.4Aの範囲で高いことが分かる。
一方、図8(A)、(B)において、楕円で囲まれた部分は、ZVS(ゼロボルトスイッチング)が行われている箇所である。図8より、(A)の方が(B)よりもZVSの回数が多いことが分かる。これが、負荷電流が0.15~0.4Aの範囲では、fbを2倍にする前の効率E1の方が、fbを2倍にした場合の効率E2よりも高い理由である。
【0035】
上述したように、本実施形態の電源制御用IC14を使用した絶縁型電源装置によれば、バーストモードにおいては、1バースト周期におけるスイッチング素子(主スイッチ素子)のスイッチング回数が固定され、負荷電流が小さいほどバースト周波数が低くなるように変化される。そのため、バーストモードによるスイッチング制御が実行される中負荷~軽負荷時における効率を向上させることが可能となる。また、1バースト周期中、主スイッチ素子が所定回数連続してオンされ、かつ主スイッチ素子のオン/オフの際にZVS(ゼロボルトスイッチング)が行われることで、さらに効率を向上させることができる。
【0036】
(変形例)
次に、図9を用いて、上記実施形態の変形例について説明する。
上述したように、バーストモードにおける主スイッチSW1のオン回数を固定すると、軽負荷領域でバースト周波数fbが可聴域に入ってしまう。そこで、これを回避するため、本変形例においては、図9(B)に示すように、バーストモードの軽負荷側で、主スイッチSW1のターンオフしきい値VCSTを低下させる軽負荷時ピーク電流変調モードへ移行して、バースト周波数fbが可聴域に入らないようにしたものである。なお、図9(A)は、上述した実施形態の電源制御用IC14における主スイッチSW1のターンオフしきい値VCSTの設定例(図4に相当)を、比較のために示したものである。
また、図9(C)に示すように、バーストモード動作領域において、主スイッチSW1のターンオフしきい値VCSTを任意に変化させるピーク電流変調モードへ移行しても良い。例えば図9(C)では、モードTMからBMに切替わる付近の負荷領域では、負荷電流(若しくはFB端子電圧)対CS端子電圧の特性に逆スロープを付けている。これにより、この領域でのバースト周波数を強制的に引き下げ、時間当たりのハードスイッチングの回数を減らして効率低下を抑制できる。
【0037】
なお、前記実施形態では、バーストモードでは、バースト1周期の間に主スイッチSW1をオンさせる回数を4回に固定しているが、バースト1周期におけるオン回数は4回に限定されるものでなく、5回、6回等であっても良い、ただし、オン回数をNとした場合、バーストモードへ移行する際における周波数は、連続動作モードからバーストモードへの切替え点におけるスイッチング周波数ftの1/Nに相当するft/Nに設定するのが良い。
【0038】
(第2実施例)
次に、本発明の第2の実施例について説明する。
上記実施例(第1実施例)においては、図2に示すように、バーストモードBMでバースト周波数が負荷電流Ioに対してほぼリニアに変化されていた。これに対し、第2の実施例は、図10に破線で示すように、バーストモードBMの連続動作モードTMに近い範囲を除く広い範囲BMaにおいて、第1実施例に比べて全体的にバースト周波数fburstの変化率(特性線の傾き)が小さくなるような制御が行われる。そして、連続動作モードTMに近い比較的狭い範囲BMbでは、バースト周波数fburstを急変させる、つまり負荷電流Ioの変化量に対する周波数変化率が大きくなるような制御が行われる。なお、バースト周波数fburstの小さい変化率から大きい変化率に移行するポイントPtを、周波数の切替え点と称する。
【0039】
また、本実施例のバーストモードBMにおいては、主スイッチSW1のスイッチング周波数fswは、図10に実線で示すように、負荷電流Ioの増加に従いゆっくりと下がるような制御が行われる。なお、スイッチング周波数fswは、負荷電流の増加に従い上昇し、fsw<ftとなっても問題ない。
上記のような制御が行われることにより、バーストモードBMの大部分の領域においてバースト周波数を第1実施例に比べて低く保つことができ、単位時間当たりの主スイッチSW1のハードスイッチング回数を抑制することが可能となる。その結果、主スイッチSW1におけるスイッチング損失とゲート容量の充放電に伴うドライブ損失を軽減することができ、電源装置の電力効率を向上させることができる。
【0040】
なお、本実施例においては、ロジックにより誤動作が防止されている、つまりバーストモードBMで動作している際に負荷電流が増加してバースト周波数が高くなって、図6のAに示すように4個のパルス(パケット)が連続するようになり、さらに負荷電流が増加した場合にも、パケットが重複するのを防止してパケット同士が正しく結合されるように構成されている。具体的には、バーストモードBMで負荷電流が増加してパケットが連続するようになった場合、自動的に連続動作モードTMによる制御が実行されるように構成されている。これにより、本実施例においては、バーストモードBMから連続動作モードTMへ切替わるポイント(切替え周波数)を明確に定める必要がないようになっている。
【0041】
さらに、上記のように、比較的広い範囲BMaにおいて、バースト周波数の変化率(特性線の傾き)が小さくなるようなスイッチング制御が行われるようにした場合、傾きを小さくした分だけ、単位時間当たりのトランス13へのエネルギー供給量が不足することとなる。そこで、その不足分を補うため、本実施例においては、図11に示すように、バーストモードBMで、負荷電流Ioが増加するほど、図10に示されているバースト周波数の変化に対して、ターンオフしきい値レベルVCSTが高くなるように設定されている。なお、前記第1実施例においては、図9(A)に示されているように、バーストモードBMにおけるターンオフしきい値レベルVCSTは平坦になるように設定されている。連続動作モードTMにおけるターンオフしきい値レベルVCSTは、第2実施例においても第1実施例と同じで良い。
【0042】
バーストモードBMで上記のような制御を行うことにより、第2の実施例の電源装置(AC-DCコンバータ)は、負荷電流の小さな軽負荷の領域において第1実施例の電源装置に比べて効率を向上させることができる。
本発明者らは、上記のような制御機能を有する電源装置の効率を、FPGAを用いた実機検証によって算出した。その結果を図12に示す。図12において、実線は第2実施例の電源装置の効率を、破線は第1実施例の電源装置の効率を表わしている。図12より、0.2~0.9A(アンペア)の負荷電流の範囲すなわち中負荷~軽負荷の領域において。第2実施例の電源装置は第1実施例の電源装置よりも高い効率を達成できることが分かる。
【0043】
ところで、第2実施例の電源装置においては、電流検出端子CSの電圧Vcsに基づいて主スイッチSW1のターンオフ信号を生成するように回路が構成されており、バーストモードにおける上述したような動作を可能にするため、主スイッチSW1のターンオフしきい値レベルVCSTが、フィードバック電圧VFBに対して図13に示すような特性に従って変化するように設定される。
【0044】
図14には、第2実施例の電源装置(AC-DCコンバータ)を構成する電源制御用IC14の構成例が示されている。なお、前述の第1実施例では図示を省略したが、第1実施例の電源装置を構成する電源制御用IC14も図14と同様な構成を採り得る。
図14に示すように、本実施例における電源制御用IC14は、主スイッチSW1のドレイン電圧が入力される外部端子VDの電圧VDを監視して主スイッチSW1のターンオン信号を生成するターンオントリガ生成回路41と、電流検出端子CSの電圧Vcsに基づいて主スイッチSW1のターンオフ信号を生成するコンパレータなどからなるターンオフトリガ生成回路42を備えている。
【0045】
また、電源制御用IC14は、上記ターンオントリガ生成回路41の出力とターンオフトリガ生成回路42の出力を入力とする主スイッチ制御回路43と、主スイッチ制御回路43の出力に応じて前記主スイッチSW1を駆動するゲート駆動信号VG_MAINを生成して外部端子GATE1より出力するドライバ回路44、タイマ回路45およびアクティブクランプ用のトランジスタMACのゲート端子を駆動する信号VG_ACを生成して外部端子GATE2より出力するアクティブクランプ制御回路46を備えている。なお、図示しないが、アクティブクランプ制御回路46にも、上記ドライバ回路44と同様なドライバ回路が設けられる。
【0046】
上記ターンオントリガ生成回路41は、「外部端子VDに入力されるSW1のドレイン電圧VDが所定の閾値以下になったこと」または「オンとならない所定期間を経過したこと(バースト時等のゼロ電圧に到達しない場合)」を検出するコンパレータなどからなるターンオンタイミング検出回路41Aと、上記ドレイン電圧VDの共振のボトムを検出する共振ボトム検出回路41Bと、これらの検出回路41A,41Bの検出信号の論理和をとるORゲートなどからなるロジック回路41Cを備えている。
また、ドレイン電圧VDの共振のボトムを検出する回路41Bの代わりに、トランス13の補助巻線Nbの誘起電圧のボトムを検出する回路を設けても良い。
【0047】
一方、上記ターンオフトリガ生成回路42は、フィードバック端子FBの電圧VFBに基づいて図13に示すような特性を有するターンオフしきい値レベルVCSTを生成するしきい値レベル生成回路42Aおよび生成されたVCSTと電流検出端子CSの電圧Vcsとを比較するコンパレータ42Bなどから構成されている。また、ターンオフトリガ生成回路42の後段には、タイマ回路45からの信号MSKによって、主スイッチSW1のターンオンから所定時間(最小オン時間)だけ、主スイッチ制御回路43へのターンオフ信号の伝達を遮断するため、ANDゲートなどの論理ゲートからなるマスク回路47が設けられている。主スイッチ制御回路43は、バーストモードにおける連続パルスの生成や連続動作モードにおけるPWM制御/擬似共振制御を実行する機能を有している。
【0048】
さらに、本実施例においては、上記ターンオフトリガ生成回路42内のコンパレータ42Bの出力がアクティブクランプ制御回路46に供給される。そして、アクティブクランプ制御回路46は、主スイッチSW1のターンオンから所定時間内に前記ターンオフトリガ生成回路42からのパルス状の信号SPDがあった場合に、ドレイン電圧がゼロ電圧まで低下しておらずゼロ電圧スイッチング制御が行われていないと判定し、上記所定時間内に前記パルス状の信号SPDがなかった場合にゼロ電圧スイッチング制御が行われていると判定する機能を有するように構成されてもよい。
【0049】
また、アクティブクランプ制御回路46は、ターンオフトリガ生成回路42からの出力に基づいてゼロ電圧スイッチング制御が行われていないと判定した場合に、トランジスタMACのゲート駆動信号VG_ACのオン時間を所定時間Δtだけ延長可能に構成されてもよい。
上記の機能を実現するため、タイマ回路45には、最小オン時間MOTを計時するタイマや、MACオンの延長時間を計時するタイマなど複数のタイマが設けられ、タイマ回路45からアクティブクランプ制御回路46へタイミングに関する信号が供給される。
なお、図14におけるタイマ回路45は、本実施例を説明するために便宜的に記載したもので、他の回路ブロック内にタイマがあっても良い。
【0050】
図15には、図14に示す電源制御用IC14に設けられているターンオフしきい値レベルVCSTを生成するしきい値レベル生成回路42Aの回路構成例が示されている。
このしきい値レベル生成回路42Aは、BM特性線(延長部分を含む)を生成するBM特性線生成部21と、TM特性線(延長部分を含む)を生成するTM特性線生成部22と、上記特性線生成部21及び22の出力に基づいて図13のWM~TM範囲に亘るVCST線を生成する合成部23と、合成部23の出力レベルを制限することで図13のWM~MMの範囲の平坦部を生成するレベル制限部24を備えている。
【0051】
また、しきい値レベル生成回路42Aは、BM特性線の切片BMsを与える定電圧源25A、切替えポイントPtを与える定電圧源25B、TM特性線の切片TMsを与える定電圧源25C、上記定電圧源25Bからの電圧と抵抗Rpにより電流-電圧変換されたフィードバック端子FBの電圧VFBと切替えポイントPtとを比較するコンパレータ26A,26B、上記切替えポイントPtとTM特性線の切片TMsの値を調整するための設定値調整回路27を備えている。設定値調整回路27を設けた理由と回路の機能については、後に詳しく説明する。
【0052】
上記BM特性線生成部21は、フィードバック端子FBの電圧VFBを所定の抵抗比で分圧することにより図13のBM特性線の傾きBMtを決定し延長部分を含むBM特性線を生成する分圧回路21Aと、分圧回路21Aの出力に定電圧源25Aからの電圧を加算することで切片BMsに応じてBM特性線をシフトする加算回路21Bを備える。
上記TM特性線生成部22は、フィードバック端子FBの電圧VFBから定電圧源25Cの電圧を減算することでTM特性線の開始点すなわち切片TMsを決定する加算回路22Aと、加算回路22Aの出力を所定の抵抗比で分圧することによりTM特性線の傾きTMtを決定し延長部分を含むTM特性線を生成する分圧回路22Bを備える。
【0053】
上記VCST合成部23は、BM特性線生成部21の出力と上記コンパレータ26Aの出力に基づき、延長部分を含むBM特性線から切替えポイントPtよりも負荷電流の大きな領域に延びる範囲を取捨して切替えポイントPtよりも負荷電流の小さな領域のBM特性線を抽出する取捨回路23Aと、延長部分を含むTM特性線から切替えポイントPtよりも負荷電流の小さな領域に延びる範囲を取捨して切替えポイントPtよりも負荷電流の大きな領域のTM特性線を抽出する取捨回路23Bと、抽出されたBM特性線とTM特性線を合成する合算回路23Cを備える。なお、合成を行う際に、BM特性線の終端とTM特性線の始端は一致しない。その場合、例えば上記BM終端とTM始端を結ぶ線を補間することで、連続したVCST線とすることができる。
【0054】
上記レベル制限部24は、合算回路23Cの出力を2倍に増幅する2倍回路24Aと、2倍回路24Aの出力を1/2に圧縮する1/2倍回路24Bと、BM特性線とTM特性線を合成した特性線の最小値を所定のレベルLmに制限することで図13のモードWMからMMの範囲の平坦部を生成する最小クランプ回路24Cを備えている。
2倍回路24Aで増幅した後に1/2倍回路24Bで1/2に圧縮して元に戻しているのは、最小クランプ回路24Cによるクランプレベルの精度を高めるためであり、省略することも可能である。
【0055】
次に、設定値調整回路27を設けた理由と回路の機能について説明する。
図16には、軽負荷から重負荷の領域に亘ってバーストモードによるスイッチング制御を行った場合における電力効率と、軽負荷から重負荷の領域に亘って連続動作モードによるスイッチング制御を行った場合における電力効率が示されている。なお、実線がバーストモードによるのもの、破線が連続動作モードによるものである。また、(A)は出力電圧を20Vとした場合、(B)は出力電圧を15Vとした場合、(C)は出力電圧を12Vとした場合である。
【0056】
図16(A)~(C)より、いずれの場合も負荷電流の変化の途中で効率が逆転している。そして、効率が逆転する負荷電流のポイントは出力電圧の大きさによって異なることが分かる。また、USB-PD対応の電源装置においては、出力電圧が切り替わることがあり、出力電圧が切り替わると、最高効率を実現するためのモード切替えポイントが変わることとなる。
上記のことから、本発明者らは、効率が逆転するポイントでバーストモードと連続動作モードを切り替えるのが良いこと、出力電圧が変わった場合、出力電圧に応じてモードを切り替えるポイントを変えるのが良いことを見出した。
【0057】
そこで、図17(A)に示すように、VFB-VCST特性線を出力電圧Voutに応じて変化させることとし、図17(A)の特性におけるバースト周波数の対フィードバック電圧特性を図17(B)に示すような特性とした。具体的には、切替えポイントPtおよびTM特性線の切片TMsの値を、出力電圧Voutが低いほど小さな値にすることとした。また、これを可能にするため、図15に示されている設定値調整回路27を設けることとした。なお、図17(A)においては、出力電圧Voutが異なっても、TM特性線の傾きは同一である。
図18には、出力電圧Voutに対する切替えポイントPtおよびTM特性線の切片TMsの値の調整例が示されている。図18に示すように、本実施例においては、切替えポイントPtおよびTM特性線の切片TMsの値は、出力電圧Voutの変化に対してリニアに変化される。
【0058】
さらに、本発明者らは、出力電圧Voutに対する切替えポイントPtおよびTM特性線の切片TMsの値は、AC入力の電圧値VACが異なる場合にも調整するのが望ましいことを、FPGAを用いた実機検証による測定結果から見出した。図19に、AC入力の電圧値VACが115Vである場合と、VACが230Vである場合におけるTM特性線の切片TMsの値および切替えポイントPtの電圧値の設定例を示す。このうち、(A)はAC入力の電圧値VACが異なる場合におけるFB電圧に換算したTM特性線の切片TMsの値の設定例を、 (B)はFB電圧に換算した切替えポイントPtの電圧値の設定例を示す。
【0059】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、主スイッチSW1を、電源制御用IC14とは別個の素子としているが、主スイッチSW1を電源制御用IC14に取り込んで1つの半導体集積回路として構成してもよい。また、二次側回路としてダイオード整流方式の回路を使用したものを示したが、同期整流方式の回路を使用するようにしても良い。
さらに、前記実施形態では、本発明をAC-DCコンバータに適用した場合について説明したが、本発明はダイオード・ブリッジ回路12を省略したDC-DCコンバータに適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
11…交流電源、12…ダイオード・ブリッジ回路、13トランス、14…スイッチング電源用半導体装置(電源制御用IC)、15…出力電圧検出回路、16…アクティブクランプ回路、41…ターンオントリガ生成回路、42…ターンオフトリガ生成回路、43…主スイッチ制御回路、44…ドライバ回路、45…タイマ回路、46…アクティブクランプ制御回路、47…マスク回路、SW1…スイッチングトランジスタ(主スイッチ)、VD…外部端子(第1外部端子)、CS…電流検出端子(第2外部端子)
図1
図2
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図5
図6
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