(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088460
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 7/10 20060101AFI20240625BHJP
F28F 9/22 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
F28D7/10 A
F28F9/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203648
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】赤石 龍士郎
(72)【発明者】
【氏名】川口 竜生
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 慎之介
【テーマコード(参考)】
3L065
3L103
【Fターム(参考)】
3L065DA08
3L103AA17
3L103BB39
3L103CC02
3L103CC27
3L103DD10
3L103DD38
3L103DD61
3L103DD82
3L103DD85
3L103DD98
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱回収モード時に圧力損失(流路抵抗)の増大を抑えつつ熱回収性能を向上させ、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供する。
【解決手段】軸方向に内周面11及び外周面12、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面13a及び流出端面13bを有する中空型の熱回収部材10と、熱回収部材10の外周面12に嵌合される第1外筒部材20と、熱回収部材10の内周面11に嵌合される第1内筒部材30とを備える熱交換器100である。第1流体の流れ方向D1を基準とした場合に、熱回収部材10の流入端面13aの上流側に形成される第1外筒部材20と第2内筒部材40との間の空間領域R1の流れ方向長さL1に対する、第2内筒部材40の流出口41bから空間領域R1の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL2の比率L2/L1が0.05~0.95である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面と前記流出端面との間に前記流入口が位置する第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に前記流出口が位置する第2内筒部材であって、前記第1外筒部材の径方向内側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第2内筒部材と
を備え、
前記第2内筒部材の前記流出口の内径が、前記第1内筒部材の前記流入口の内径よりも小さく、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第2内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL1に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL2の比率L2/L1が0.05~0.95である熱交換器。
【請求項2】
前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記第2内筒部材との間を接続するリング状部材を更に備える、請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に、前記熱回収部材の前記流入端面に前記第1流体を導入するための貫通孔が設けられた第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記流出口が、前記第1内筒部材の径方向内側であり、且つ前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に前記第1内筒部材の前記貫通孔の下流側端部よりも上流側に位置する第2内筒部材と
を備え、
前記第1内筒部材の前記流入口側の端部が、前記第1外筒部材及び/又は前記第2内筒部材に接合されており、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第1内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL3に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL4の比率L4/L3が0.05~0.95である熱交換器。
【請求項4】
前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記第1内筒部材の前記流入口側及び/又は前記第2内筒部材との間を接続するリング状部材を更に備える、請求項3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記第1内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する筒状部材を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第2内筒部材は、前記流出口に向かって徐々に縮径するような流線形構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記第2内筒部材の前記流出口が多角形状又は楕円状である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記熱回収部材が、内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、前記流入端面から前記流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記第1外筒部材の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記第1外筒部材との間を第2流体が流通可能な第2外筒部材を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記第1内筒部材の前記流出口側に配置された開閉バルブを更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
上記のようなシステムとして、例えば、熱交換器がある。熱交換器は、内部に第1流体を流通させるとともに外部に第2流体を流通させることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う装置である。このような熱交換器では、高温の流体(例えば、排ガスなど)から低温の流体(例えば、冷却水など)へ熱交換することにより、熱を有効利用することができる。
【0004】
熱交換器は、適切な熱マネジメントの観点から、熱を回収するモード(以下、「熱回収モード」という)と、熱を回収しないモード(以下、「非熱回収モード」という)とを切り替える機能を有していることが好ましい。なお、非熱回収モードは、一般に、暖気が終了した際に適用される。
熱回収モードと非熱回収モードとの切り替えが可能な熱交換器としては、排ガスと熱交換を行う熱交換部と、排ガスが熱交換部を迂回するバイパス経路とを備える熱交換器が知られている(例えば、特許文献1)。
また、熱交換器は、自動車の搭載スペースの観点から小さいことが望ましいため、筒状部材の外周に熱交換部を設けた構造を有する熱交換器も知られている(例えば、特許文献2及び3)。
【0005】
さらに、本出願人は、特許文献4において、熱回収モード時に圧力損失(流路抵抗)への影響を抑えつつ熱回収性能を向上させ、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器の構造を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/140068号
【特許文献2】特開2020-84860号公報
【特許文献3】特許第6761424号公報
【特許文献4】特開2020-159270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載の熱交換器は、中空型の柱状ハニカム構造体の軸方向において、第2内筒部材(第2内筒)の流出口が、中空型の柱状ハニカム構造体の流入端面よりも流出端面側に位置している。そのため、熱回収モード時に、第2内筒部材に流入した第1流体(排ガス)の流れが反対側に折り返されることになり、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制できなかった。圧力損失の増大は、熱交換器内に大きな負荷をもたらし、場合によっては熱交換器の破損や破裂に繋がる恐れもある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、熱回収モード時に圧力損失(流路抵抗)の増大を抑えつつ熱回収性能を向上させ、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特許文献4に記載の熱交換器の構造を踏まえつつ、その構造の更なる研究を行った結果、第2内筒部材の流出口を特定の位置に配置することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0010】
(1) 軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面と前記流出端面との間に前記流入口が位置する第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に前記流出口が位置する第2内筒部材であって、前記第1外筒部材の径方向内側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第2内筒部材と
を備え、
前記第2内筒部材の前記流出口の内径が、前記第1内筒部材の前記流入口の内径よりも小さく、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第2内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL1に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL2の比率L2/L1が0.05~0.95である熱交換器。
【0011】
(2) 前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記第2内筒部材との間を接続するリング状部材を更に備える、(1)に記載の熱交換器。
【0012】
(3) 軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に、前記熱回収部材の前記流入端面に前記第1流体を導入するための貫通孔が設けられた第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記流出口が、前記第1内筒部材の径方向内側であり、且つ前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に前記第1内筒部材の前記貫通孔の下流側端部よりも上流側に位置する第2内筒部材と
を備え、
前記第1内筒部材の前記流入口側の端部が、前記第1外筒部材及び/又は前記第2内筒部材に接合されており、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第1内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL3に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL4の比率L4/L3が0.05~0.95である熱交換器。
【0013】
(4) 前記第1流体の流路を構成するように前記第1外筒部材の前記流入口側と前記第1内筒部材の前記流入口側及び/又は前記第2内筒部材との間を接続するリング状部材を更に備える、(3)に記載の熱交換器。
【0014】
(5) 前記第1外筒部材の前記流出口側に接続され、前記第1内筒部材の径方向外側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する筒状部材を更に備える、(1)~(4)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0015】
(6) 前記第2内筒部材は、前記流出口に向かって徐々に縮径するような流線形構造を有する、(1)~(5)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0016】
(7) 前記第2内筒部材の前記流出口が多角形状又は楕円状である、(1)~(6)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0017】
(8) 前記熱回収部材が、内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、前記流入端面から前記流出端面まで延びる第1流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型の柱状ハニカム構造体である、(1)~(7)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0018】
(9) 前記第1外筒部材の径方向外側に間隔をおいて配置され、前記第1外筒部材との間を第2流体が流通可能な第2外筒部材を更に備える、(1)~(8)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【0019】
(10) 前記第1内筒部材の前記流出口側に配置された開閉バルブを更に備える、(1)~(9)のいずれか一つに記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱回収モード時に圧力損失(流路抵抗)の増大を抑えつつ熱回収性能を向上させ、非熱回収モード時に熱遮断性能を向上させることが可能な熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本発明の実施形態1に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【
図1B】
図1Aの熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【
図3A】本発明の実施形態2に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【
図3B】
図3Aの熱交換器におけるb-b’線の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る別の熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の熱交換器は、
軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面と前記流出端面との間に前記流入口が位置する第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に前記流出口が位置する第2内筒部材であって、前記第1外筒部材の径方向内側に前記第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する第2内筒部材と
を備え、
前記第2内筒部材の前記流出口の内径が、前記第1内筒部材の前記流入口の内径よりも小さく、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第2内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL1に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL2の比率L2/L1が0.05~0.95である。
【0023】
また、本発明の熱交換器は、
軸方向に内周面及び外周面、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面及び流出端面を有する中空型の熱回収部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記外周面に嵌合される第1外筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記熱回収部材の前記内周面に嵌合される第1内筒部材であって、前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面よりも上流側に、前記熱回収部材の前記流入端面に前記第1流体を導入するための貫通孔が設けられた第1内筒部材と、
前記第1流体の流入口及び流出口を有し、前記流出口が、前記第1内筒部材の径方向内側であり、且つ前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に前記第1内筒部材の前記貫通孔の下流側端部よりも上流側に位置する第2内筒部材と
を備え、
前記第1内筒部材の前記流入口側の端部が、前記第1外筒部材及び/又は前記第2内筒部材に接合されており、
前記第1流体の流れ方向を基準とした場合に、前記熱回収部材の前記流入端面の上流側に形成される前記第1外筒部材と前記第1内筒部材との間の空間領域の流れ方向長さL3に対する、前記第2内筒部材の前記流出口から前記空間領域の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL4の比率L4/L3が0.05~0.95である。
【0024】
本発明の熱交換器は、上記のような構成とすることにより、第2内筒部材の流出口が、中空型の熱回収部材の流入端面よりも上流側に位置することになるため、熱回収モード時に、第2内筒部材の流出口から流出した第1流体(排ガス)の流れが折り返されることを抑制できる。そのため、熱回収モード時に、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制でき、熱交換器の破損や破裂が起こり難くなる。また、第2内筒部材の長さを短くできるため、熱交換器の軽量化や製造コストの低減を図ることもできる。さらに、第2内筒部材の流出口の内径を、第1内筒部材の流入口の内径よりも小さくしているため、非熱回収モード時に、第2内筒部材の流出口から流出した第1流体が、第1内筒部材にスムーズに流入し易い。そのため、中空型の熱回収部材に熱が伝達され難くなり、熱遮断性能を向上させることができる。
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0026】
<実施形態1>
図1Aは、本発明の実施形態1に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、
図1Bは、
図1Aの熱交換器におけるa-a’線の断面図である。
図1A及び1Bに示されるように、熱交換器100は、中空型の熱回収部材10、第1外筒部材20、第1内筒部材30、及び第2内筒部材40を備える。また、熱交換器100は、筒状部材50、第2外筒部材60及び開閉バルブ70を更に備えることができる。
【0027】
(1.中空型の熱回収部材)
中空型の熱回収部材10(以下、「熱回収部材10」と略すことがある)は、軸方向に内周面11及び外周面12、軸方向に垂直な方向に第1流体の流入端面13a及び流出端面13bを有する。なお、本明細書において「熱回収部材10」とは、熱を回収する機能を有する部材のことを意味する。
熱回収部材10としては、上記のような構造を有していれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0028】
熱回収部材10は、熱回収性能の観点から、
図1Bに示されるように、内周壁15、外周壁16、及び内周壁15と外周壁16との間に配設され、流入端面13aから流出端面13bまで延びる第1流体の流路となる複数のセル17を区画形成する隔壁18を有する中空型の柱状ハニカム構造体であることが好ましい。
ここで、本明細書において「中空型の柱状ハニカム構造体」とは、第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体の断面において、中心部に中空領域を有する柱状ハニカム構造体を意味する。
中空型の柱状ハニカム構造体の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
また、中空型の柱状ハニカム構造体における中空領域の形状についても、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。
なお、中空型の柱状ハニカム構造体の形状と、中空領域の形状とは同一であっても異なっていてもよいが、外部からの衝撃、熱応力などに対する耐性の観点から、同一であることが好ましい。
【0029】
セル17の形状としては、特に限定されず、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、円形、楕円形、三角形、四角形、六角形、又はその他の多角形などとすることができる。また、セル17は、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面において、放射状に設けられていることが好ましい。このような構成とすることにより、セル17を流通する第1流体の熱を中空型の柱状ハニカム構造体の外部に効率良く伝達することができる。
【0030】
隔壁18の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.6mmである。隔壁18の厚みを0.1mm以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体の機械的強度を十分なものとすることができる。また、隔壁18の厚さを1mm以下とすることにより、開口面積の低下によって圧力損失が大きくなったり、第1流体との接触面積の低下によって熱回収効率が低下したりするなどの問題を抑制することができる。
【0031】
内周壁15及び外周壁16の厚みは、特に限定されないが、隔壁18の厚みよりも大きいことが好ましい。このような構成とすることにより、外部からの衝撃、第1流体と第2流体との間の温度差による熱応力などによって破壊(例えば、ひび、割れなど)が起こり易い内周壁15及び外周壁16の強度を高めることができる。
なお、内周壁15及び外周壁16の厚みは、特に限定されず、用途などに応じて適宜調整すればよい。例えば、内周壁15及び外周壁16の厚みは、熱交換器100を一般的な熱交換用途に用いる場合は、好ましくは0.1mm~10mm、より好ましくは0.5mm~5mm、さらに好ましくは1mm~3mmである。また、熱交換器100を蓄熱用途に用いる場合は、外周壁16の厚みを10mm以上として外周壁16の熱容量を増大させてもよい。
【0032】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16は、セラミックスを主成分とする。「セラミックスを主成分とする」とは、全成分の質量に占めるセラミックスの質量比率が50質量%以上であることをいう。
【0033】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。また、隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率は0%であってもよい。隔壁18、内周壁15及び外周壁16の気孔率を10%以下とすることにより、熱伝導率を向上させることができる。
【0034】
隔壁18、内周壁15及び外周壁16は、熱伝導性が高いSiC(炭化珪素)を主成分として含むことが好ましい。このような材料としては、Si含浸SiC、(Si+Al)含浸SiC、金属複合SiC、再結晶SiC、Si3N4、及びSiCなどが挙げられる。これらの中でも、安価に製造でき、高熱伝導であることからSi含浸SiC、(Si+Al)含浸SiCを用いることが好ましい。
【0035】
第1流体の流路方向に垂直な中空型の柱状ハニカム構造体の断面におけるセル密度(すなわち、単位面積当たりのセル17の数)は、特に限定されないが、好ましくは4~320セル/cm2である。セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁18の強度、ひいては中空型の柱状ハニカム構造体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、第1流体が流れる際の圧力損失の増大を抑制することができる。
【0036】
中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、特に限定されないが、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上、さらに好ましくは15MPa以上である。中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度を5MPa以上とすることにより、中空型の柱状ハニカム構造体の耐久性を向上させることができる。中空型の柱状ハニカム構造体のアイソスタティック強度は、公益社団法人自動車技術会発行の自動車規格であるJASO規格M505-87に規定されているアイソスタティック破壊強度の測定方法に準じて測定することができる。
【0037】
第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における外周壁16の直径(外径)は、特に限定されないが、好ましくは20~200mm、より好ましくは30~100mmである。このような直径とすることにより、熱回収効率を向上させることができる。また、熱交換器のサイズをコンパクトにすることもできる。外周壁16が円形でない場合には、外周壁16の断面形状に内接する最大内接円の直径を、外周壁16の直径とする。
また、第1流体の流路方向に垂直な方向の断面における内周壁15の直径は、特に限定されないが、好ましくは20~90mm、より好ましくは30~80mmである。内周壁15の断面形状が円形でない場合には、内周壁15の断面形状に内接する最大内接円の直径を、内周壁15の直径とする。
【0038】
中空型の柱状ハニカム構造体の熱伝導率は、特に限定されないが、25℃において、好ましくは50W/(m・K)以上、より好ましくは100~300W/(m・K)、さらに好ましくは120~300W/(m・K)である。中空型の柱状ハニカム構造体の熱伝導率を、このような範囲とすることにより、熱伝導性が良好となり、中空型の柱状ハニカム構造体内の熱を外部に効率良く伝達させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザフラッシュ法(JIS R1611-1997)により測定した値を意味する。
【0039】
中空型の柱状ハニカム構造体のセル17に、第1流体として排ガスを流す場合、中空型の柱状ハニカム構造体の隔壁18に触媒を担持させてもよい。隔壁18に触媒を担持させると、排ガス中のCO、NOx、HCなどを触媒反応によって無害な物質にすることが可能になると共に、触媒反応の際に生じる反応熱を熱交換に用いることも可能になる。触媒としては、貴金属(白金、ロジウム、パラジウム、ルテニウム、インジウム、銀、及び金)、アルミニウム、ニッケル、ジルコニウム、チタン、セリウム、コバルト、マンガン、亜鉛、銅、スズ、鉄、ニオブ、マグネシウム、ランタン、サマリウム、ビスマス、及びバリウムからなる群から選択された元素を少なくとも一種含有するものであることが好ましい。上記元素は、金属単体、金属酸化物、又はそれ以外の金属化合物として含有されていてもよい。
【0040】
触媒(触媒金属+担持体)の担持量としては、特に限定されないが、好ましくは10~400g/Lである。また、貴金属を含む触媒を用いる場合、その担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.1~5g/Lである。触媒(触媒金属+担持体)の担持量を10g/L以上とすることにより、触媒作用が発現し易くなる。また、触媒(触媒金属+担持体)の担持量400g/L以下とすることにより、圧力損失と共に製造コストの上昇を抑えることができる。担持体とは、触媒金属が担持される担体のことである。担持体としては、アルミナ、セリア、及びジルコニアからなる群より選択される少なくとも一種を含有するものを用いることができる。
【0041】
(2.第1外筒部材)
第1外筒部材20は、第1流体の流入口21a及び流出口21bを有し、熱回収部材10の外周面12に嵌合される筒状の部材である。
ここで、本明細書において「嵌合」とは、相互に嵌まり合った状態で固定されていることをいう。したがって、熱回収部材10と第1外筒部材20との嵌合においては、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などにより、熱回収部材10と第1外筒部材20とが相互に固定されている場合なども含まれる。
【0042】
第1外筒部材20の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第1外筒部材20の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
また、第1外筒部材20の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向の少なくとも一方の端部側など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、
図1Aに示されるように、第1外筒部材20の軸方向の上流側端部を縮径して第2内筒部材40と接続させることにより、熱回収部材10の流入端面13aの上流側に第1流体の流路を形成することができる。また、
図2に示されるように、第1外筒部材20の径が軸方向にわたって一様である場合、第1外筒部材20の流入口21a側と第2内筒部材40との間を接続するリング状部材80を設けることにより、熱回収部材10の流入端面13aの上流側に第1流体の流路を形成することができる。
【0043】
第1外筒部材20は、熱回収部材10の外周面12に対応した内周面形状を有することが好ましい。第1外筒部材20の内周面が熱回収部材10の外周面12に直接接触することで、熱伝導性が良好となり、熱回収部材10内の熱を第1外筒部材20に効率良く伝達することができる。
【0044】
熱回収効率を高めるという観点からは、熱回収部材10の外周面12の全面積に対する、第1外筒部材20によって周回被覆される熱回収部材10の外周面12の部分の面積の割合は高いほうが好ましい。具体的には、当該面積割合は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%(すなわち、熱回収部材10の外周面12の全部が第1外筒部材20によって周回被覆される。)である。
なお、ここでいう「外周面12」とは、熱回収部材10の第1流体の流路方向に平行な面を指し、熱回収部材10の第1流体の流路方向と垂直な面(流入端面13a及び流出端面13b)は含まれない。
【0045】
第1外筒部材20の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。また、第1外筒部材20が金属製であると、第2内筒部材40などの他の部材との溶接が容易に行える点でも優れている。第1外筒部材20の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0046】
第1外筒部材20の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。第1外筒部材20の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第1外筒部材20の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。第1外筒部材20の厚みを10mm以下とすることにより、熱抵抗を低減して熱伝導性を高めることができる。
【0047】
(3.第1内筒部材)
第1内筒部材30は、第1流体の流入口31a及び流出口31bを有し、熱回収部材10の内周面11に嵌合される筒状の部材である。ここで、第1内筒部材30は、熱回収部材10の内周面11に直接的に嵌合されていてもよく、シール部材などの他の部材を介して間接的に嵌合されていてもよい。
第1内筒部材30の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第1内筒部材30の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。また、第1内筒部材30の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが(例えば
図1A)、少なくとも一部(例えば、流出口31b側など)が縮径又は拡径していてもよい(例えば
図3A)。
【0048】
第1内筒部材30の流入口31aは、第1流体の流れ方向D1を基準とした場合に、熱回収部材10の流入端面13aと流出端面13bとの間に位置する。このような位置に第1内筒部材30の流入口31aを設けることにより、熱回収部材10の内周面11に第1内筒部材30を固定することができると共に、非熱回収モード時の第1流体の流路を確保することができる。また、熱回収モード時に第1流体の流路が狭くなることを抑制することができるため、圧力損失が増大し難くなる。
【0049】
第1内筒部材30の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。第1内筒部材30の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0050】
第1内筒部材30の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。第1内筒部材30の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第1内筒部材30の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。第1内筒部材30の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0051】
(4.第2内筒部材)
第2内筒部材40は、第1流体の流入口41a及び流出口41bを有する筒状の部材である。
第2内筒部材40の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第2内筒部材40の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。また、第2内筒部材40の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、流出口41b側など)が縮径又は拡径していてもよい。
【0052】
第2内筒部材40は、第1外筒部材20の径方向内側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する。すなわち、第2内筒部材40は、第1外筒部材20の内径よりも小さな外径を有する部分を有する。
また、第2内筒部材40の流出口41bは、第1流体の流れ方向D1を基準とした場合に、熱回収部材10の流入端面13aよりも上流側に位置する。このような位置に第2内筒部材40の流出口41bを設けることにより、熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体(排ガス)の流れが折り返されることを抑制できる。そのため、熱回収モード時に、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制でき、熱交換器100の破損や破裂が起こり難くなる。また、第2内筒部材40の長さを短くできるため、熱交換器100の軽量化や製造コストの低減を図ることもできる。
【0053】
第2内筒部材40の流出口41bの内径は、第1内筒部材30の流入口31aの内径よりも小さい。このように第2内筒部材40の流出口41bの内径を制御することにより、非熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体が、第1内筒部材30にスムーズに流入し易い。そのため、中空型の熱回収部材10に熱が伝達され難くなり、熱遮断性能を向上させることができる。
第2内筒部材40の流出口41bの内径と第1内筒部材30の流入口31aの内径との差は、特に限定されないが、好ましくは1~20mm、より好ましくは1~10mmである。このような範囲に径の差を制御することにより、上記の効果を安定して確保することができる。
【0054】
第1流体の流れ方向D1(第1外筒部材20及び第2内筒部材40の軸方向)における第2内筒部材40の流入口41aと第1外筒部材20の流入口21aとの距離は、好ましくは20mm以下、より好ましくは1~15mm、更に好ましくは5~10mmである。この距離を20mm以下とすることにより、熱交換器100の全長を小さくしてコンパクト化することができる。また、特に、ろう付け及び溶接によって第1外筒部材20及び第2内筒部材40を接続する場合、この距離を20mm以下とすることにより、溶接部の強度を高めることもできる。
【0055】
第2内筒部材40は、流出口41bに向かって徐々に縮径するような流線形構造(例えば、下記で説明される実施形態2の熱交換器200の第2内筒部材40の構造)を有することが好ましい。このような構造とすることにより、非熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体が、第1内筒部材30にスムーズに流入し易くなる効果を高めることができる。また、第2内筒部材40を流体が通過する際の圧力損失を低減することができる。
【0056】
第2内筒部材40の流出口41bの形状は、特に限定されないが、多角形状又は楕円状であることが好ましい。このような構造とすることにより、非熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体が、第1内筒部材30にスムーズに流入し易くなる効果を安定して高めることができる。
【0057】
第1流体の流れ方向D1を基準とした場合に、熱回収部材10の流入端面13aの上流側に形成される第1外筒部材20と第2内筒部材40との間の空間領域R1の流れ方向長さL1に対する、第2内筒部材40の流出口41bから空間領域R1の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL2の比率L2/L1が0.05~0.95である。このような範囲にL2/L1を制御することにより、熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体(排ガス)の流れが折り返されることを極力抑制し、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制できる。この効果を安定して確保する観点からは、L2/L1は0.1~0.9が好ましく、0.3~0.7がより好ましい。
なお、空間領域R1の流れ方向長さL1が、第1流体の流れ方向D1に垂直な方向の各位置によって変化する場合は、空間領域R1の中で流れ方向長さL1が最も長くなる部分の長さのことを意味する。
【0058】
第2内筒部材40の固定方法としては、特に限定されないが、例えば、
図1Aに示されるように、第1外筒部材20に固定すればよい。また、
図2に示されるように、リング状部材80に固定してもよい。固定方法としては、特に限定されないが、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などを用いることができる。
【0059】
第2内筒部材40の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。第2内筒部材40の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0060】
第2内筒部材40の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。第2内筒部材40の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第2内筒部材40の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。第2内筒部材40の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0061】
(5.筒状部材)
筒状部材50は、第1外筒部材20の流出口21b側に接続される部材である。また、筒状部材50は、第1内筒部材30の径方向外側に第1流体の流路を構成するように間隔をもって配置される部分を有する。
第1外筒部材20に対する筒状部材50の接続は、直接的又は間接的のいずれであってもよい。間接的な接続の場合、例えば、第1外筒部材20と筒状部材50との間に第2外筒部材60などが配置されていてもよい。
【0062】
筒状部材50は、流入口51a及び流出口51bを有する。
筒状部材50の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、筒状部材50の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。また、筒状部材50の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部が縮径又は拡径していてもよい。
【0063】
筒状部材50の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から金属であることが好ましい。筒状部材50の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0064】
筒状部材50の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。筒状部材50の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、筒状部材50の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。筒状部材50の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0065】
(6.第2外筒部材)
第2外筒部材60は、第1外筒部材20の径方向外側に間隔をおいて配置される筒状の部材である。第2外筒部材60と第1外筒部材20との間は第2流体が流通可能である。
第2外筒部材60は、流入口61a及び流出口61bを有する。
第2外筒部材60の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、第2外筒部材60の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
【0066】
第2外筒部材60は、第2流体を第2外筒部材60と第1外筒部材20との間の領域に供給するための供給管62、及び第2流体を第2外筒部材60と第1外筒部材20との間の領域から排出するための排出管63に接続されていることが好ましい。供給管62及び排出管63は、熱回収部材10の軸方向両端部に対応する位置に設けられていることが好ましい。
また、供給管62及び排出管63は、同じ方向に向けて延出されていても、異なる方向に向けて延出されていてもよい。
【0067】
第2外筒部材60は、軸方向両端部の内周面が第1外筒部材20の外周面と直接的又は間接的に接するように配置されていることが好ましい。
第2外筒部材60の軸方向両端部の内周面を第1外筒部材20の外周面に固定する方法としては、特に限定されないが、すきま嵌め、締まり嵌め、焼き嵌めなどの嵌め合いによる固定方法の他、ろう付け、溶接、拡散接合などを用いることができる。
【0068】
第2外筒部材60の径(外径及び内径)は、軸方向にわたって一様であってよいが、少なくとも一部(例えば、軸方向中央部、軸方向両端部など)が縮径又は拡径していてもよい。例えば、第2外筒部材60の軸方向中央部を縮径させることにより、供給管62及び排出管63側の第2外筒部材60内で第2流体を第1外筒部材20の外周方向全体に行き渡らせることができる。そのため、軸方向中央部で熱交換に寄与しない第2流体が低減するため、熱交換効率を向上させることができる。
【0069】
第2外筒部材60の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から、金属であることが好ましい。第2外筒部材60の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0070】
第2外筒部材60の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。第2外筒部材60の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、第2外筒部材60の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。第2外筒部材60の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0071】
(7.開閉バルブ)
開閉バルブ70は、第1内筒部材30の流出口31b側に配置される。
開閉バルブ70は、筒状部材50の径方向外側に配置された軸受71に回転自在に支持され且つ筒状部材50及び第1内筒部材30を貫通するように配置されるシャフト72に固定されている。
開閉バルブ70の形状は、特に限定されず、開閉バルブ70が配置される第1内筒部材30の形状に応じて適切なものを選択すればよい。
【0072】
開閉バルブ70は、アクチュエータ(図示せず)によってシャフト72を駆動(回転)させることができる。シャフト72とともに開閉バルブ70が回転することで、開閉バルブ70の開閉を行うことができる。
開閉バルブ70は、第1内筒部材30の内側における第1流体の流れを調整可能に構成される。具体的には、開閉バルブ70は、熱回収モード時に閉とすることにより、熱回収部材10に第1流体を流通させることができる。また、開閉バルブ70は、非熱回収モード時に開とすることにより、第1内筒部材30の流出口31b側から筒状部材50に第1流体を流通させて熱交換器100の外部に排出することができる。
【0073】
(8.リング状部材)
リング状部材80は、
図2に示されるように、第1流体の流路を構成するように第1外筒部材20の流入口21a側と第2内筒部材40との間を接続するための筒状の部材である。なお、リング状部材80が接続される第2内筒部材40の接続位置は、特に限定されず、第2内筒部材40の流入口41a側、流出口41b側、中心部付近のいずれであってもよいが、第1流体の流れ方向D1における第2内筒部材40の流入口41aと第1外筒部材20の流入口21aとの距離が、好ましくは20mm以下、より好ましくは1~15mm、更に好ましくは5~10mmとなるようにすることが望ましい。その理由は上述したとおりである。
第1外筒部材20と第2内筒部材40との間のリング状部材80による接続は、直接的又は間接的のいずれであってもよい。間接的な接続の場合、例えば、第1外筒部材20とリング状部材80との間に第2外筒部材60などが配置されていてもよい。
リング状部材80の軸方向は、熱回収部材10の軸方向と一致し、リング状部材80の中心軸は熱回収部材10の中心軸と一致することが好ましい。
【0074】
リング状部材80の形状は、特に限定されないが、曲面構造を有していてもよい。このような構造とすることにより、熱回収モード時(開閉バルブ70を閉とした場合)に、熱回収部材10に流れる第1流体の流れをスムーズにすることができるため、圧力損失を低減することができる。
【0075】
リング状部材80の材料は、特に限定されないが、製造性の観点から、金属であることが好ましい。リング状部材80の材料としては、例えば、ステンレス、チタン合金、銅合金、アルミ合金、真鍮などを用いることができる。その中でも、耐久信頼性が高く、安価という理由により、ステンレスが好ましい。
【0076】
リング状部材80の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上である。リング状部材80の厚みを0.1mm以上とすることにより、耐久信頼性を確保することができる。また、リング状部材80の厚みは、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、3mm以下が更により好ましい。リング状部材80の厚みを10mm以下とすることにより、熱交換器100を軽量化することができる。
【0077】
(9.第1流体及び第2流体)
熱交換器100に用いられる第1流体及び第2流体としては、特に限定されず、種々の液体及び気体を利用することができる。例えば、熱交換器100が自動車に搭載される場合、第1流体として排ガスを用いることができ、第2流体として水又は不凍液(JIS K2234:2006で規定されるLLC)を用いることができる。また、第1流体は、第2流体よりも高温の流体とすることができる。
【0078】
(10.熱交換器の製造方法)
熱交換器100は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。例えば、熱交換器100は、熱回収部材10として中空型の柱状ハニカム構造体を用いる場合、以下に説明する方法に従って製造することができる。
【0079】
まず、セラミックス粉末を含む坏土を所望の形状に押し出し、ハニカム成形体を作製する。このとき、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セル17の形状及び密度、隔壁18、内周壁15及び外周壁16の形状及び厚さなどを制御することができる。また、ハニカム成形体の材料としては、前述のセラミックスを用いることができる。例えば、Si含浸SiC複合材料を主成分とするハニカム成形体を製造する場合、所定量のSiC粉末に、バインダーと、水及び/又は有機溶媒とを加え、得られた混合物を混練して坏土とし、成形して所望形状のハニカム成形体を得ることができる。そして、得られたハニカム成形体を乾燥し、減圧の不活性ガス又は真空中で、ハニカム成形体中に金属Siを含浸焼成することによって、隔壁18により区画形成されたセル17を有する中空型の柱状ハニカム構造体を得ることができる。金属Siの含浸焼成方法としては、金属Siを含む塊とハニカム成形体とが接触するように配置して焼成する方法が挙げられる。ハニカム成形体における金属Siを含む塊の接触箇所は、端面であっても外周壁面であっても内周壁面であってもよい。
【0080】
次に、中空型の柱状ハニカム構造体を第1外筒部材20内に挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体の外周壁16(外周面12)に第1外筒部材20を嵌合させる。次に、中空型の柱状ハニカム構造体の中空領域に第1内筒部材30を挿入し、中空型の柱状ハニカム構造体の内周壁15(内周面11)に第1内筒部材30を嵌合させる。次に、第1外筒部材20の径方向外側に第2外筒部材60を配置して固定する。なお、供給管62及び排出管63は、第2外筒部材60に予め固定しておいてもよいが、適切な段階で第2外筒部材60に固定してもよい。次に、第2内筒部材40を所定の位置に配置し、第1外筒部材20に固定する。また、リング状部材80を設ける場合には、第2内筒部材40と第1外筒部材20又は第2外筒部材60との間にリング状部材80を配置して固定する。次に、第1外筒部材20の流出口21b側に筒状部材50を配置して接続する。次に、第1内筒部材30の流出口31b側に開閉バルブ70を取り付ける。
なお、各部材の配置及び固定(嵌合)の順番は上記に限定されず、製造可能な範囲で適宜変更してもよい。また、固定(嵌合)方法は、上述した方法を用いればよい。
【0081】
<実施形態2>
図3Aは、本発明の実施形態2に係る熱交換器の第1流体の流通方向に平行な断面図である。また、
図3Bは、
図3Aの熱交換器におけるb-b’線の断面図である。
図3A及び3Bに示されるように、熱交換器200は、中空型の熱回収部材10、第1外筒部材20、第1内筒部材30、及び第2内筒部材40を備える。また、熱交換器100は、筒状部材50、第2外筒部材60、開閉バルブ70及びリング状部材80を更に備えることができる。熱交換器200の基本的な構成は、熱交換器100と同じであるが、第1内筒部材30の流入口31a側の端部が、第2内筒部材40に接合されており、第1内筒部材30が貫通孔32を有する点で異なる。また、
図3Aでは、リング状部材80によって第1外筒部材20と第2内筒部材40との間を接続しているが、
図4に示されるように、第1外筒部材20の軸方向の上流側端部を縮径して第2内筒部材40と接続させてもよい。この場合、第1内筒部材30の流入口31a側の端部が第1外筒部材20及び第2内筒部材40に接合され、第1内筒部材30が貫通孔32を有する。なお、
図4では、第1内筒部材30の流入口31a側の端部は、第1外筒部材20及び第2内筒部材40の両方に接合されているが、第1外筒部材20又は第2内筒部材40の一方に接合されていてもよい。
熱交換器200は、当該技術分野において公知の方法に準じて製造することができる。例えば、熱交換器200は、上記の熱交換器100の製造方法に準じて製造することができる。
以下、本発明の実施形態1に係る熱交換器100の説明の中で登場した符号と同一の符号を有する構成要素は、本発明の実施形態2に係る熱交換器200の構成要素と同一であるので、その詳細な説明は省略する。
【0082】
熱交換器200では、第1内筒部材30の流入口31a側の端部が、第1外筒部材20及び/又は第2内筒部材40に接合されるため、熱回収部材10の流入端面13aよりも上流側に第1流体を導入するための貫通孔32が設けられる。
また、第2内筒部材40の流出口41bが、第1内筒部材30の径方向内側であり、且つ第1流体の流れ方向D1を基準とした場合に第1内筒部材30の貫通孔32の下流側端部33よりも上流側に位置する。
上記のような構造とすることにより、熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体(排ガス)の流れが折り返されることを抑制できる。そのため、熱回収モード時に、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制でき、熱交換器200の破損や破裂が起こり難くなる。また、第2内筒部材40の長さを短くできるため、熱交換器200の軽量化や製造コストの低減を図ることもできる。また、第2内筒部材40の流出口41bの径が、第1内筒部材30の径よりも小さいため、非熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体が、貫通孔32を通り難く、第1内筒部材30内をスムーズに流通し易い。そのため、中空型の熱回収部材10に熱が伝達され難くなり、熱遮断性能を向上させることができる。
【0083】
第1内筒部材30に設けられる貫通孔32の形状としては、特に限定されず、円形、楕円形、四角形などの各種形状とすることができる。また、貫通孔32の数も特に限定されず、第1内筒部材30の周方向に複数設けられていてもよいし、第1内筒部材30の軸方向に複数設けられていてもよい。なお、貫通孔32が複数設けられている場合、上記の「第1内筒部材30の貫通孔32の下流側端部33」とは、第1内筒部材30の最も下流側に位置する貫通孔32の下流側端部33のことを意味する。
【0084】
第1流体の流れ方向を基準とした場合に、熱回収部材10の流入端面13aの上流側に形成される第1外筒部材20と第1内筒部材30との間の空間領域R2の流れ方向長さL3に対する、第2内筒部材40の流出口41bから空間領域R2の上流側端部に対応する位置までの流れ方向長さL4の比率L4/L3が0.05~0.95である。このような範囲にL4/L3を制御することにより、熱回収モード時に、第2内筒部材40の流出口41bから流出した第1流体(排ガス)の流れが折り返されることを極力抑制し、圧力損失(流路抵抗)の増大を十分に抑制できる。この効果を安定して確保する観点からは、L4/L3は0.1~0.8が好ましく、0.3~0.7がより好ましい。
【0085】
図3A及び3Bに示す熱交換器200では、第1流体の流れ方向を基準とした場合に、中空型の熱回収部材10の軸方向長さの中心部が第1外筒部材20及び第2外筒部材60の軸方向長さの中心部よりも下流側に位置するように配置されている。また、中空型の熱回収部材10の流入端面13aを、第1内筒部材30に設けられる貫通孔32の下流側端部33と同じ位置、貫通孔32の上流側端部を、リング状部材80の下流側端部の位置と同じ位置にそれぞれ揃えている。そのため、貫通孔32を第1内筒部材30の軸方向に長く設けることができるため、熱回収モード時に圧力損失(流路抵抗)の増大を抑制する効果を高めることができる。また、高温の第1流体に対する第1外筒部材20の接触面積を大きくすることができるため、第2流体への熱伝導が増えて熱交換効率が向上する。
【0086】
また、
図3A及び3Bに示す熱交換器200では、第1流体の流れ方向を基準とした場合に、第1外筒部材20と第2外筒部材60との間に形成される第2流体の流路の下流側端部と、中空型の熱回収部材10の流入端面13aとの位置が揃っているため、熱回収モード時の熱交換性能が十分に確保される。
さらに、
図3A及び3Bに示す熱交換器200では、供給管62及び排出管63が、第2外筒部材60の軸方向に直交する周方向に配置されている。このように供給管62及び排出管63を設けることにより、熱回収モード時の熱交換性能を十分に確保しつつ、供給管62と排出管63との間に筒状部材50の表面上に開閉バルブ70用のアクチュエータなどの部品を搭載し易くなるため、熱交換器200のコンパクト化が可能となる。
【符号の説明】
【0087】
10 熱回収部材
11 内周面
12 外周面
13a 流入端面
13b 流出端面
15 内周壁
16 外周壁
17 セル
18 隔壁
20 第1外筒部材
21a 流入口
21b 流出口
30 第1内筒部材
31a 流入口
31b 流出口
32 貫通孔
33 下流側端部
40 第2内筒部材
41a 流入口
41b 流出口
50 筒状部材
51a 流入口
51b 流出口
60 第2外筒部材
61a 流入口
61b 流出口
62 供給管
63 排出管
70 開閉バルブ
71 軸受
72 シャフト
80 リング状部材
100,200 熱交換器