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特開2024-88463コンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088463
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】コンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/18 20060101AFI20240625BHJP
   E01C 23/09 20060101ALI20240625BHJP
   E01C 23/12 20060101ALI20240625BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B28D1/18
E01C23/09 A
E01C23/12 B
E04G23/08 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203653
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391059414
【氏名又は名称】コンクリートコーリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100198214
【弁理士】
【氏名又は名称】眞榮城 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】笹川 透
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 浩行
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康彦
【テーマコード(参考)】
2D053
2E176
3C069
【Fターム(参考)】
2D053AA05
2D053AA26
2D053AB05
2D053AD01
2D053DA03
2E176AA01
2E176DD22
3C069AA01
3C069BA04
3C069BB01
3C069BB02
3C069BB03
3C069BB04
3C069BC02
3C069BC07
3C069CA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】つぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく短時間で効率よく施工することが可能なコンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法を提供する。
【解決手段】レコード盤状の基盤54の外周に、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれたチップ55が取り付けられたダイヤモンドカッターからなるコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、チップ55の側面同士が当接する状態で複数枚のダイヤモンドカッター50をフランジ(52,53)間に装着し、且つ、ダイヤモンドカッター50をチップ55及び基盤54の外周にセグメント56が設けられたセグメント型のダイヤモンドカッターとし、複数枚のダイヤモンドカッター50をセグメント56の位置が各ダイヤモンドカッターで異なるようにフランジ(52,53)に装着する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レコード盤状の基盤の外周に、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれたチップが取り付けられたダイヤモンドカッターからなるコンクリート掘削用ブレードセットであって、
前記チップの側面同士が当接する状態で複数枚の前記ダイヤモンドカッターがフランジ間に装着されており、
且つ、前記ダイヤモンドカッターは、前記チップ及び前記基盤の外周にセグメントが設けられたセグメント型のダイヤモンドカッターであり、
複数枚の前記ダイヤモンドカッターは、前記セグメントの位置が各ダイヤモンドカッターで異なるように前記フランジに装着されていること
を特徴とするコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項2】
複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、前記チップの一部のブロックの厚さが異なる厚さに形成されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項3】
複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、隣接するダイヤモンドカッター同士の外径が異なること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項4】
複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、隣接するダイヤモンドカッター同士の前記チップの幅が異なること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項5】
複数枚の前記ダイヤモンドカッターが前記フランジ間に装着された全体の刃厚が40mmであり、前記基盤の離間距離が6.5mmであること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項6】
前記フランジ間に装着された前記ダイヤモンドカッターの枚数が4枚であること
を特徴とする請求項5に記載のコンクリート掘削用ブレードセット。
【請求項7】
回転駆動手段を有する装置本体と、前記装置本体の走行をガイドする直交する上下2段の走行レールセットを備え、コンクリート部材を掘削するコンクリート掘削装置であって、
前記回転駆動手段のスピンドルには、請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセットが装着されていること
を特徴とするコンクリート掘削装置。
【請求項8】
回転駆動手段を有する装置本体と、前記装置本体の走行をガイドする直交する上下2段の走行レールセットを備えたコンクリート掘削装置を用いて、ホームドアを設置するためにプラットホームの既設のコンクリート床版に掘削をするコンクリート掘削方法であって、
直交する上下2段の前記走行レールセットを組み立て設置して固定する走行レール設置工程と、
前記走行レール設置工程で組み立て設置した前記走行レールセットの任意の位置に前記装置本体を取り付け設置する装置本体設置工程と、
チップの側面同士が当接する状態で複数枚のセグメント型のダイヤモンドカッターがセグメントの位置が各ダイヤモンドカッターで異なるようにフランジ間に装着されているブレードセットを、前記装置本体のスピンドルに装着するブレードセット装着工程と、
前記ブレードセットを前記回転駆動手段で回転駆動させて前記コンクリート床版を掘削する掘削工程と、を備え、
前記掘削工程では、前記装置本体を前記走行レールセット上で走行させることにより前記ブレードセットで前記コンクリート床版を掘削して溝掘りを行うこと
を特徴とするコンクリート掘削方法。
【請求項9】
前記掘削工程では、直交する上下2段の前記走行レールセット上を線路平行方向に沿って前記装置本体を走行させることにより前記ブレードセットで前記コンクリート床版を掘削して溝掘りを行った後、前記ブレードセットの刃厚分の線路直角方向へ前記走行レールセットの上段を移動させて、線路直角方向へ移動した前記走行レールセット上を線路平行方向に沿って前記装置本体を走行させることを繰り返してつぼ掘りを行うこと
を特徴とする請求項8に記載のコンクリート掘削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法に関し、詳しくは、ホームドアを設置するためにプラットホームのコンクリート床版をつぼ掘り及び溝掘りを一台の掘削装置で実行可能なコンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びそれを用いたコンクリート掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RC床版やPCa床版等のコンクリート床版からなる駅の既存のプラットホームにホームドアを設置することが増えている。しかし、昔からあるプラットホームでは、ホームドアを設置することが予定されていないため、ホームドアに作用する風荷重等に対抗するにはコンクリート床版の強度が不足しており、ホームドアの設置工事の前に補強工事が必要となっている。
【0003】
従来のコンクリート床版の補強方法としては、コンクリート床版の上面に鋼板を設け、下面に鉄筋及びモルタル等を用いて増厚してサンドイッチ形式の補強構造でコンクリート床版を挟み込んで補強する補強鋼板工法が一般的である。
【0004】
また、駅のプラットホームは、一定規格の電車に昇降するため、一般に軌道上からプラットホームの上面までの高さが1100mmと定められている。このため、コンクリート床版の上面に鋼板を設置するには、既存のコンクリート床版をコンクリートブレーカー等で作業員が手斫りで斫り取った後、様々な作業を行う必要があった。具体的には、手斫りでは余掘りが必要なため、斫った後にモルタル等を打設して左官で不陸調整を行い、その後、硬化するまで養生し、貫通ボルト用の孔を削孔する。そして、その孔の位置を計測して補強鋼板を作成して設置するなど、複数職の多くの人員が必要な非常に手間と労力がかかる作業であった。
【0005】
その上、これらの工事は、列車が運行しない夜間のうちに開始して完了する必要があり、特に、コンクリートブレーカー等での手斫りの工事は、騒音の苦情が多く問題となっていた。また、列車が運行しない夜間に作業を終えるには、短時間で工事が完了できる効率のよい方法の開発が切望されていた。
【0006】
また、コンクリート床版を大きく斫るのは、コンクリート床版の強度を損傷するおそれがあるため、補強鋼板工法より斫り厚さを低減できる格子状の格子鋼板に複数のリブが形成された格子鋼板筋を用いた格子鋼板工法も開発されるに至った。しかし、格子鋼板工法では、補強鋼板工法と比べて斫り厚さを低減できるものの、水平力せん断力に対抗するためせん断キーとしてコンクリート床版を溝掘りすることや、後述のように、舗装厚によっては、つぼ掘りすることが新たに必要となってきた。
【0007】
しかし、このような複雑な斫りを手斫りで行うことは困難である上、不陸調整のためにモルタル等を打設したのでは、硬化までの養生期間が必要となり、工期が嵩むだけでなく、列車が運行しない夜間内で完了させることが困難になるという問題が発生する。そこで、既存のコンクリート床版を機械や装置で正確に一定厚さの溝掘りやつぼ掘りを行うことが切望されるに至った。
【0008】
例えば、特許文献1には、複数の穿孔機本体2を左右方向に移動可能に装着した水平ガイドプレート1をベースプレート10上に立設した支持枠に昇降駆動手段14により昇降可能となるように設置し、前記ベースプレートが、コンクリート製床版の上面に固定する平面視矩形状のベースフレーム18にあって前記水平ガイドプレートと直交する前後方向に伸びる左右一対の平行なリニアガイドレール21上を移動可能となるように構成したコンクリート製床版の穿孔装置が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0027]~[0052]、図面の図1図7等参照)。
【0009】
特許文献1に記載のコンクリート製床版の穿孔装置は、補強鋼板を止め付ける貫通ボルト用の孔をコンクリート製の版材に直線芯上に横一列に任意のピッチ間隔で同時に複数個穿設することができる。しかし、特許文献1に記載のコンクリート製床版の穿孔装置は、前述のコンクリート床版に一定厚さの溝掘りやつぼ掘りを行うことができるものではなかった。
【0010】
また、特許文献2には、本願出願人らが提案した、コンクリート構造物の掘削作業において発生する騒音や振動を抑え、掘削作業を迅速化及び効率化できるコンクリート掘削用の切削機及びコンクリート掘削方法が開示されている。この特許文献2に記載のコンクリート掘削用の切削機1は、機体の外枠を構成する機体フレーム部10と、コンクリート構造物の床面を切削する切削部20と、切削部20を移動可能に支持する可動支持部30とを備え、可動支持部30は、切削部20を前後進移動可能とする前後進手段31と、垂直方向に昇降可能とする昇降手段32とを備え、切削部20は、回転軸上に所定間隔で並列して配設された複数の回転刃204を備え、回転軸の両端に配設された外側回転刃の左右外側面が平坦面となるように構成されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0017]~[0045]、図面の図1図17等参照)。
【0011】
特許文献2に記載のコンクリート掘削用の切削機1は、コンクリート構造物の床面に掘削用の複数条の切削溝を形成し、この切削溝に圧力破砕機を挿入して加圧することでコンクリート構造物を破砕する掘削作業を行うことにより、コンクリート掘削時の騒音や振動を抑え、さらに、掘削作業を迅速化及び効率化できる。しかし、特許文献2に記載のコンクリート掘削用の切削機及びコンクリート掘削方法では、複数条の切削溝を形成した後、切削溝に圧力破砕機を挿入して加圧することで溝掘りを行っており、切削機での切削作業時間に加え、圧力破砕機での作業時間とその仕上げ作業が必要であり、列車が運行しない夜間のうちに作業を開始して完了することが困難であるという問題があった。つまり、掘削作業の迅速化としては不十分であった。
【0012】
また、特許文献2に記載のコンクリート掘削用の切削機1は、格子鋼板工法において必要な一定の範囲の面積のコンクリート表面を周囲の高さより所定厚さだけ掘り下げるつぼ掘りには対応することができず、格子鋼板工法に対応するつぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく施工することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010-228308号公報
【特許文献2】特開2020-176451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、つぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく短時間で効率よく施工することが可能なコンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、レコード盤状の基盤の外周に、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれたチップが取り付けられたダイヤモンドカッターからなるコンクリート掘削用ブレードセットであって、前記チップの側面同士が当接する状態で複数枚の前記ダイヤモンドカッターがフランジ間に装着されており、且つ、前記ダイヤモンドカッターは、前記チップ及び前記基盤の外周にセグメントが設けられたセグメント型のダイヤモンドカッターであり、複数枚の前記ダイヤモンドカッターは、前記セグメントの位置が各ダイヤモンドカッターで異なるように前記フランジに装着されていることを特徴とする。
【0016】
請求項2に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、請求項1に係るコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、前記チップの一部のブロックの厚さが異なる厚さに形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、請求項1に係るコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、隣接するダイヤモンドカッター同士の外径が異なることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、請求項1に係るコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、複数枚の前記ダイヤモンドカッターの各ダイヤモンドカッターは、隣接するダイヤモンドカッター同士の前記チップの幅が異なることを特徴とする。
【0019】
請求項5に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、請求項1に係るコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、複数枚の前記ダイヤモンドカッターが前記フランジ間に装着された全体の刃厚が40mmであり、前記基盤の離間距離が6.5mmであることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係るコンクリート掘削用ブレードセットは、請求項5に係るコンクリート掘削用ブレードセットにおいて、前記フランジ間に装着された前記ダイヤモンドカッターの枚数が4枚であることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係るコンクリート掘削装置は、回転駆動手段を有する装置本体と、前記装置本体の走行をガイドする直交する上下2段の走行レールセットを備え、コンクリート部材を掘削するコンクリート掘削装置であって、前記回転駆動手段のスピンドルには、請求項1に記載のコンクリート掘削用ブレードセットが装着されていることを特徴とする。
【0022】
請求項8に係るコンクリート掘削方法は、回転駆動手段を有する装置本体と、前記装置本体の走行をガイドする直交する上下2段の走行レールセットを備えたコンクリート掘削装置を用いて、ホームドアを設置するためにプラットホームの既設のコンクリート床版に掘削をするコンクリート掘削方法であって、直交する上下2段の前記走行レールセットを組み立て設置して固定する走行レール設置工程と、前記走行レール設置工程で組み立て設置した前記走行レールセットの任意の位置に前記装置本体を取り付け設置する装置本体設置工程と、チップの側面同士が当接する状態で複数枚のセグメント型のダイヤモンドカッターがセグメントの位置が各ダイヤモンドカッターで異なるようにフランジ間に装着されているブレードセットを、前記装置本体のスピンドルに装着するブレードセット装着工程と、前記ブレードセットを前記回転駆動手段で回転駆動させて前記コンクリート床版を掘削する掘削工程と、を備え、前記掘削工程では、前記装置本体を前記走行レールセット上で走行させることにより前記ブレードセットで前記コンクリート床版を掘削して溝掘りを行うことを特徴とする。
【0023】
請求項9に係るコンクリート掘削方法は、請求項8に係るコンクリート掘削方法において、前記掘削工程では、直交する上下2段の前記走行レールセット上を線路平行方向に沿って前記装置本体を走行させることにより前記ブレードセットで前記コンクリート床版を掘削して溝掘りを行った後、前記ブレードセットの刃厚分の線路直角方向へ前記走行レールセットの上段を移動させて、線路直角方向へ移動した前記走行レールセット上を線路平行方向に沿って前記装置本体を走行させることを繰り返してつぼ掘りを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
請求項1~9に係る発明によれば、つぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく施工することができる。また、請求項1~8に係る発明によれば、所定長さで、所定深さの溝掘りを走行レール上の1回の走行により自動で掘削することができ、極めて短時間で溝掘りを完了させることができる。このため、熟練工でなくても誰でも簡単に短時間でコンクリート床版の掘削ができ、列車が運行しない夜間のうちに完了することができる。その上、機械で正確に掘削深さを管理して掘削できるので、モルタル等を打設して不陸調整を行う必要がなく、モルタルが硬化するまでの養生期間が不要となり、直ぐに次工程を行うことができる。さらに、請求項1~8に係る発明によれば、セグメントの位置が各ダイヤモンドカッターで異なるように装着されているので、通常の市販のウォールソーマシンシステムのブレードを切削対象であるコンクリートに押し付ける押圧力でセグメントが切削対象と接触する接触面積あたりの押圧力を瞬間的に上げることができる。このため、チップに埋設されている新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度が上昇し、掘削時間を短縮することができる。
【0025】
特に、請求項2に係る発明によれば、ダイヤモンドカッターのチップの一部のブロックの厚さが異なる厚さに形成されているので、切削抵抗に変化をつけることによりチップの摩耗を促進させ、チップ内のバインダー金属からダイヤモンドチップが露出する率を高めて切削効率を向上させるとともに、切削面に粗面を形成することができる。
【0026】
特に、請求項3に係る発明によれば、隣接するダイヤモンドカッター同士の外径が異なるので、せん断キーとして溝掘りした底面に凹凸が形成され、せん断キーとしての効果が向上する。
【0027】
特に、請求項4に係る発明によれば、隣接するダイヤモンドカッター同士のチップの幅が異なるので、同じ押圧力でもチップと接触する切削対象の幅及び面積がことなり、結果として、新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度が異なり、せん断キーとして溝掘りした底面に凹凸が形成され、せん断キーとしての効果が向上する。
【0028】
特に、請求項5に係る発明によれば、ブレードセットの全体の刃厚が40mmであるので、格子鋼板工法に必要な幅40mmのせん断キーの溝掘りの掘削が、装置本体の走行レール上の1回の走行により施工することができ、極めて短時間で溝掘りを完了させることができる。
【0029】
特に、請求項6に係る発明によれば、装着されたダイヤモンドカッターの枚数が4枚であるので、ブレードセット全体の刃厚を40mmとすることができるとともに、基盤の数を低減して軽量化を図ることができる。このため、既存のウォールソーマシンシステムでのブレードセットの回転速度を向上して、掘削時間を低減できるとともに、ブレード費用も低減することができる。
【0030】
特に、請求項9に係る発明によれば、つぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削装置を示す平面図である。
図2図2は、同上のコンクリート掘削装置を示す正面図である。
図3図3は、同上のコンクリート掘削装置を示す右側面図である。
図4図4は、同上のコンクリート掘削装置の装置本体を示す斜視図である。
図5図5は、同上のコンクリート掘削装置の走行レールセットのレール材同士の接続部分を拡大して示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るブレードセットをスピンドル軸に沿って切断した状態を示す断面図である。
図7図7は、同上のブレードセットを示すスピンドル軸に沿って見た正面図である。
図8図8は、同上のブレードセットを示す斜視図である。
図9図9は、変形例1に係るブレードセットを示す斜視図である。
図10図10は、同上のブレードセットのチップと切削対象との接触面の時系列変化を示す図であり、(a)が、セグメントの位置が揃っている場合、(b)が、セグメントの位置がずれている実施形態に係るブレードセットの場合、(c)が変形例1に係るブレードセット場合を示す。
図11図11は、ブレードセットの変形例を示す図であり、(a)が変形例1に係るブレードセットのチップ部分を拡大して示す断面図であり、(b)が変形例2に係るブレードセットのチップ部分を拡大して示す断面図であり、(c)が変形例3に係るブレードセットのチップ部分を拡大して示す断面図である。
図12図12は、同上のコンクリート掘削装置で掘削する溝掘りの範囲を示す図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
図13図13は、同上のコンクリート掘削装置で掘削する範囲を示す図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。
図14図14は、図13の掘削する範囲を掘削する順番に分けて示す平面図であり、(a)が第1ステップの深さ29mmのつぼ掘り範囲、(b)が第2ステップの幅40mm深さ10mmの溝掘り範囲、(c)が第3ステップの深さ21mmのつぼ掘り範囲を示している。
図15図15は、幅40mm、深さ(t=29mm)、長さ(W=890mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出した計測結果である。
図16図16は、幅40mm、深さ(t=10mm)の長さ(W=890mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出した計測結果である。
図17図17は、幅40mm、深さ(t=21mm)、長さ(W=620mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出した計測結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るコンクリート掘削用ブレードセット、コンクリート掘削装置、及びコンクリート掘削方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
[コンクリート掘削装置]
図1図10を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削装置1について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削装置1を示す平面図であり、図2は、コンクリート掘削装置1を示す正面図であり、図3は、コンクリート掘削装置1を示す右側面図である。
【0034】
図1図3に示すように、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1は、コンクリート部材を切削する一般的な乾式のウォールソーマシンシステムをベースに改良したものであり、後述のブレードセット5を回転駆動する回転駆動手段を有する装置本体2と、この装置本体2にホース30で接続された集塵機3と、装置本体2の走行をガイドする直交する上下2段の走行レールセット4など、から構成されている。なお、ウォールソーのブレードの冷却を空冷とした乾式のウォールソーマシンシステムではなく、ブレードの冷却を水冷とした湿式のウォールソーマシンシステムとすることもできる。但し、湿式のウォールソーマシンシステムは、装置が大型化して排水処理等が面倒なので、ホームドアを設置するためにプラットホームのコンクリート床版を切削、掘削するためには、乾式のウォールソーマシンシステムが適している。
【0035】
(装置本体)
図4は、コンクリート掘削装置1の装置本体2を示す斜視図である。図4に示すように、本実施形態に係る装置本体2は、回転駆動手段である電動モータ20と、この電動モータ20で回転駆動される本発明の特徴部分であるウォールソー用のブレードセット5など、から構成された一般的な乾式のウォールソーマシンシである。このブレードセット5は、後述するように、複数枚のダイヤモンドカッター50がスペーサー51(外フランジスペーサー51’)を介して一体化して装着されたものである。このブレードセット5は、ブレードカバー21内に挿置されている。なお、電動モータ20には、図示しない操作ボックスやトランスが接続されている。
【0036】
また、図4に示すように、装置本体2を自動で走行レール上を走行するための自動送り装置22も設けられている。なお、符号23は、装置本体2を走行レールに対して上下ししてブレードセット5の被切削物であるコンクリート床版への下降深さを規定する昇降ハンドル23である。装置本体2は、この昇降ハンドル23で上下させて所定の掘削深さを規定し、ノブボルト等を締め込んで固定した後、装置本体2を駆動させ、掘削(切削)・走行を開始する。
【0037】
なお、コンクリート掘削装置1として、電動モータ20を有する電動ウォールソーマシンシを例示したが、ブレードセット5を回転駆動する駆動手段(モータ)は、電動に限られず、油圧モータを有する油圧ウォールソーマシンシとしてもよいことは云うまでもない。
【0038】
(走行レールセット)
走行レールセット4は、図1図3に示すように、下段の走行レールである左右一対の縦走行レール40,41と、これらの縦走行レール40,41上に架け渡された上段の走行レールである横走行レール42など、から構成されている。図5に示すように、これらの縦走行レール40,41、横走行レール42は、いずれもレール材43が組み合されたものであり、このレール材43は、金属拡張アンカーなどのあと施工アンカーでコンクリート床版に固定される。図5は、走行レールセット4のレール材43同士の接続部分を拡大して示す斜視図である。また、レール材43には、コンクリート床版に固定された後、ラックギア44が嵌め込まれ、六角ボルト45と座金46で装着される。
【0039】
(ブレードセット)
次に、図6図10を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削用ブレードセットであるブレードセット5について説明する。図6は、本実施形態に係るブレードセット5をスピンドル軸に沿って切断した状態を示す断面図であり、図7は、ブレードセット5を示す装置本体2の電動モータ20のスピンドル軸に沿って見た正面図である。また、図8は、ブレードセット5を示す斜視図であり、図10は、ブレードセット5のチップ55と切削対象との接触面の時系列変化を模式的に示す図であり、(a)が、セグメントの位置が揃っている場合、(b)が、セグメントの位置がずれている本実施形態に係るブレードセットの場合、(c)が後述の変形例1に係るブレードセットの場合を示す。
【0040】
図6図7に示すように、ブレードセット5は、乾式のダイヤモンドカッター50からなり、このダイヤモンドカッター50が厚さ6.5mmのスペーサー51及び厚さ3.5mmの外フランジスペーサー51’を介して外側フランジ52と内側フランジ53との間に複数枚積層されて電動モータ20のスピンドルに装着されている。
【0041】
また、本実施形態に係るダイヤモンドカッター50は、レコード盤状の基盤54の外周に、ダイヤモンドの砥粒が埋め込まれたチップ55が取り付けられた外径18インチのダイヤモンドカッターである。
【0042】
また、図7図8に示すように、本実施形態に係るダイヤモンドカッター50は、チップ55及び基盤54の外周にセグメント56(切り欠き)を設けることで、粉じんの排出性や放熱性を高めたセグメント型(タイプ)のダイヤモンドカッターである。
【0043】
そして、図6に示すように、このダイヤモンドカッター50が一般的な市販のダイヤモンドカッターと相違する点は、ダイヤモンドの砥粒を埋め込んだチップ55(セグメントともいう)が、刃厚(セグメント厚)=10mm×チップ高さ=8mm(セグメント高)の極厚タイプの特殊なチップ55となっている点である。これに対して、市販のウォールソー用ブレード(ダイヤモンドカッター)は、下記表1,表2に示すように、刃厚(セグメント厚)が3.8mm~5.0mm程度となっている。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
また、本実施形態に係るダイヤモンドカッター50の基盤54の厚さは、3.5mmとなっている。このため、刃厚10mmのチップ55の側面同士が当接する状態で複数枚(図示形態では4枚)のダイヤモンドカッター50を重ねて外側フランジ52及び内側フランジ53間に装着すると、ブレードセット5全体の刃厚を40mmとすることができるとともに、基盤54の離間距離をスペーサー51の厚さ6.5mmとすることができ、軽量化及び放熱の観点から有利となる。
【0047】
なお、チップの刃厚(セグメント厚)=8mm×チップ高さ=8mm(セグメント高)、且つ、基盤の厚さ4mmとして、5枚のダイヤモンドカッターを重ねて装着して、ブレードセット全体の刃厚を40mmとする試作品も作成したが、切削長さに対するチップの損耗率やブレードセット全体の重量やコストを勘案すると、4枚重ねの本実施形態に係るブレードセット5の方が有利と判断した。基盤54の数を低減してブレードセット5全体の軽量化を図ることができ、既存のウォールソーマシンシでのブレードセット5の回転速度を向上して、掘削時間を低減できるからである。また、ランニングコストであるブレード費用も低減することができるからである。
【0048】
このように、ブレードセット全体の刃厚を40mm以上とするとともに、基盤54の離間距離を所定6mm以上確保してブレードセット5全体の軽量化を図ることにより、後述のように、コンクリート掘削装置1でつぼ掘りと溝掘りが混在するような複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく効率よく短時間に行うことができる。
【0049】
なお、ブレードセット全体の刃厚の上限は、特に無いが、特注でない市販のウォールソーマシンで回転掘削する場合は、ウォールソーマシンシのモーターの能力や後述の押圧力及び現実的な切削スピードから50mm以内が限界と推測される。また、後述のように、コンクリート掘削装置1を格子鋼板工法の補強の際のコンクリート床版の掘削に使用する場合は、幅40mmの掘削が必要となるため、つぼ掘りと溝掘り兼用とするためには、ブレードセット全体の刃厚は、40mmが最適である。
【0050】
また、図8に示すように、ブレードセット5では、複数枚のダイヤモンドカッター50は、セグメント56の位置が各ダイヤモンドカッター50で異なるようにずらして外側フランジ52及び内側フランジ53間に装着されている。
【0051】
セグメント56の位置をずらす理由は、前述のように、極厚タイプの特殊なチップ55を使用しているため、刃厚(セグメント厚)が3.8mm~5.0mm程度の通常のチップを使用している場合と比べて、切削対象であるコンクリートに押し付ける面積あたりの押圧力が低下する傾向にあるからである。このため、極厚タイプのチップ55を使用すると通常のチップを使用している場合と比べて、新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度が低下し、掘削(切削)効率が低下するおそれがある。
【0052】
しかし、セグメント56の位置を各ダイヤモンドカッター50で異なるようにずらすことにより、図10(b)に示すように、セグメント56が切削対象の位置に来ると、図10(a)と比べて、チップ55が切削対象と接触する面積が図示形態では一時的に低下する。このため、通常の市販のウォールソーマシンシステムのブレードを切削対象であるコンクリートに押し付ける押圧力でセグメントが切削対象と接触する接触面積あたりの押圧力を瞬間的に一定程度上げることができる。よって、チップ55に埋設されている新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度が上昇し、掘削(切削)時間を短縮することができる。
【0053】
(ブレードセットの変形例)
次に、図9図11を用いて、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削用ブレードセットの変形例について説明する。図9は、変形例1に係るブレードセットを示す斜視図である。また、図11は、ブレードセットの変形例を示す図であり、(a)が変形例1に係るブレードセット5’のチップ部分を拡大して示す断面図であり、(b)が変形例2に係るブレードセット5”のチップ部分を拡大して示す断面図であり、(c)が変形例3に係るブレードセット5#のチップ部分を拡大して示す断面図である。
【0054】
(変形例1に係るブレードセット)
先ず、図9図11(a)を用いて、変形例1に係るブレードセット5’について説明する。変形例1に係るブレードセット5’が、前述のブレードセット5と相違する点は、チップ55のブロックが、同一のダイヤモンドカッター50’においても所定の率(一定の頻度)で刃厚が異なるものが形成されている点だけである。このため、同一構成は、同一符号を付し、詳細な説明は省略する(以下、同じ)。
【0055】
具体的には、図8に示したように、前述のブレードセット5では、セグメント56の位置がすれて異なるように装着されているものの、各ダイヤモンドカッター50の刃厚は、全てのチップ55のブロック(セグメント56と他のセグメント56との間のチップの塊)が同一の8mmとなっている。
【0056】
これに対して、変形例1に係るブレードセット5’では、セグメント56の位置がずれて異なるように装着された上、一定の頻度で刃厚が異なるチップのブロックが出現するように、同一のダイヤモンドカッター50内でも、一部のチップのブロックが薄型チップブロック55’となっている点である。変形例1に係るブレードセット5’では、所定の頻度、例えば、チップ55のブロック5個に1個の割合で刃厚が異なる刃厚5mmの薄型チップブロック55’が出現するように配列されている。このため、変形例1に係るブレードセット5’によれば、切削抵抗に変化をつけることによりチップの摩耗を促進させ、チップ55内のバインダー金属からダイヤモンドチップが露出する率を高めて切削効率を向上させるとともに、切削面に粗面を形成することができる。
【0057】
(変形例2に係るブレードセット)
次に、図11(b)を用いて、変形例2に係るブレードセット5”について説明する。変形例2に係るブレードセット5”が、前述のブレードセット5と相違する点は、図11(b)に示すように、前述のブレードセット5のチップ55より厚さが薄くなっているチップ57としている点である。具体的には、チップ57が、刃厚(セグメント厚)=10mm×チップ高さ=6mm(セグメント高)となっている。但し、チップの寸法は、例示であり、記載した数値に限定されるものではない。また、チップの厚さを変えるのでなく、基盤54の径を変えても構わない。要するに、隣接するダイヤモンドカッター同士の外径が異なるようにすればよい。
【0058】
後述のように、コンクリート掘削装置1のブレードセット5は、格子鋼板工法の溝掘り、つぼ掘りに好適に適用できる。格子鋼板工法では、溝掘りは、ホームドア筐体の直下に風荷重等の作用する水平力に対抗するためのせん断キーとして掘削する。このため、せん断キーとして溝掘りした底面に凹凸が形成された場合、せん断キーとしての効果が向上する。
【0059】
そこで、隣接するダイヤモンドカッター同士の外径が異なる変形例2に係るブレードセット5”で溝掘りを行うことで、溝掘りした底面に凹凸を形成する。つまり、変形例2に係るブレードセット5”で溝掘りを行うことにより、短時間で簡単に溝掘りした底面に凹凸を形成し、せん断キーとしての効果を向上させることができる。
【0060】
(変形例3に係るブレードセット)
次に、図11(c)を用いて、変形例3に係るブレードセット5#について説明する。
変形例3に係るブレードセット5#が、前述のブレードセット5と相違する点は、図11(c)に示すように、前述のブレードセット5のチップ55より幅が広いチップ“58と、幅が狭いチップ59を併設して取り付けている点である。具体的には、チップ58が、刃厚(セグメント厚)=12mm×チップ高さ=8mm(セグメント高)となっており、チップ59が、刃厚(セグメント厚)=8mm×チップ高さ=8mm(セグメント高)となっている。勿論、チップの寸法は、例示であり、記載した数値に限定されるものではない。
【0061】
要するに、隣接するダイヤモンドカッター同士のチップの幅が異なるようにすることにより、前述の押圧力を異ならせて、せん断キーとして溝掘りした底面に凹凸が形成する。つまり、変形例3に係るブレードセット5#で溝掘りを行うことにより、短時間で簡単に溝掘りした底面に凹凸を形成し、せん断キーとしての効果を向上させることができる。
【0062】
[コンクリート掘削方法]
次に、前述のコンクリート掘削装置1を用いて、コンクリート部材を掘削する本発明の実施形態に係るコンクリート掘削方法について説明する。コンクリート床版からなる駅の既存のプラットホームにホームドアを設置するために格子鋼板工法で補強する際に、コンクリート床版に必要な掘削をする場合を例示して説明する。
【0063】
[第1実施形態]
<タイプ1:舗装厚が50mm以上>
先ず、本発明の第1実施形態に係るコンクリート掘削方法として、コンクリート床版の舗装厚が50mm以上である場合について説明する。格子鋼板工法の詳細は割愛するが、コンクリート床版の舗装厚が50mm以上である場合、舗装を撤去すれば格子鋼板筋を設置する厚さを確保することができるので、後述のタイプ2のようなつぼ掘りは不要である。しかし、ホームドア筐体の直下に風荷重等の作用する水平力に対抗するためのせん断キーとして、図12に示すように、幅40mmで深さ10mmの溝掘りが必要となる。図12は、コンクリート掘削装置1で掘削する溝掘りの範囲を示す図であり、(a)が平面図、(b)が断面図である。なお、図中の破線は、格子鋼板筋を設置するのに必要な範囲を示している。
【0064】
(走行レール設置工程)
そこで、本発明の第1実施形態に係るコンクリート掘削方法では、先ず、前述の走行レールセット4を設置して固定する走行レール設置工程を行う。具体的には、図12の破線で囲われた長方形状の格子鋼板筋の施工範囲の外側に、縦走行レール40,41を線路直角方向に沿って設置し、これらの縦走行レール40,41上に横走行レール42を線路平行方向に沿って架け渡して走行レールセット4を組み立て設置する。
【0065】
このとき、図12(a)に斜線で示す溝掘り予定位置からレール位置を計算し、その位置にハンマードリル等の削孔機で削孔して金属拡張式アンカー等のあと施工アンカーを打ち込み、縦走行レール40,41を所望の位置に固定する。その後、各走行レール各部の高さ調整ボルトを、六角棒スパナを使用して軽く締め付け、走行レールセット4のレベル調整を行う。
【0066】
(装置本体設置工程)
次に、第1実施形態に係るコンクリート掘削方法では、前工程で組み立て設置した走行レールセット4の横走行レール42上の任意の位置に、クランプレバーを開閉してウォールソーマシンシである装置本体2を取り付け設置する装置本体設置工程を行う。
【0067】
(ブレードセット装着工程)
次に、第1実施形態に係るコンクリート掘削方法では、前工程で取り付けた装置本体2の電動モータ20のスピンドルに前述のブレードセット5を装着するブレードセット装着工程を行う。具体的には、前述の刃厚10mmの極厚タイプのチップ55と厚さ3.5mmの基盤54を有するダイヤモンドカッター504枚を、厚さ6.5mmのスペーサー51を3枚及び厚さ3.5mmの外フランジスペーサー51’を1枚介装して外側フランジ52と内側フランジ53との間に装着する。
【0068】
このとき、前述のように、刃厚10mmのチップ55の側面同士が当接する状態で4数枚のダイヤモンドカッター50を重ねてブレードセット5全体の刃厚を40mmとするとともに、基盤54の離間距離を6.5mm(少なくも6mm以上)確保する。
【0069】
また、前述のように、ブレードセット5として、複数枚のダイヤモンドカッター50をセグメント56の位置が各ダイヤモンドカッター50で異なるようにずらして外側フランジ52及び内側フランジ53間に装着する。
【0070】
(掘削工程)
次に、第1実施形態に係るコンクリート掘削方法では、前工程で装着したブレードセット5を回転駆動手段である電動モータ20で回転駆動させてコンクリート床版を所望形状に掘削する掘削工程を行う。具体的には、図12(a)に斜線で示す幅40mmで深さ10mmの溝掘りを150mmピッチで6条分6回行う。
【0071】
このとき、前述のように、装置本体2には、自動で走行レール上を走行するための自動送り装置22が設けられているとともに、コンクリート床版への下降深さを規定する昇降ハンドル23が設けられている。このため、所定長さ(図示形態では長さ770mm)で、所定深さ(図示形態では深さ10mm)の溝掘りを走行レール上の1回の走行により自動で掘削することができ、極めて短時間で溝掘りを完了させることができる。
【0072】
これに対して、特許文献2に記載のコンクリート掘削用の切削機では、1回の走行で2条切りができるものの、切削溝に圧力破砕機を挿入して加圧することで溝掘りを行っており、切削機での切削作業時間に加え、圧力破砕機での作業時間とその仕上げ作業が必要であり、列車が運行しない夜間のうちに作業を開始して完了することが困難であった。
【0073】
一方、前述のように、コンクリート掘削装置1では、極厚タイプの特殊なチップ55を使用しているため、刃厚が通常のチップを使用している場合と比べて、切削対象であるコンクリートに押し付ける面積あたりの押圧力が低下する傾向にある。そこで、コンクリート掘削装置1では、セグメント56の位置を各ダイヤモンドカッター50で異なるようにずらすことにより、接触面積あたりの押圧力を瞬間的に上昇させて、チップ55に埋設されている新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度を上昇させ、掘削(切削)時間を短縮するようにしている。
【0074】
[第2実施形態]
<タイプ2:舗装厚が50mm未満>
次に、本発明の第2実施形態に係るコンクリート掘削方法として、コンクリート床版の舗装厚が50mm未満である場合について説明する。コンクリート床版の舗装厚が50mm未満である場合、第1実施形態に係るコンクリート掘削方法と同様のせん断キーの溝掘りに加え、図13図14に示すように、格子鋼板筋を設置する範囲に深さ29mmの溝掘りが必要となる。それに加え、ホームドアの筐体直下の一定範囲には、さらに深さ21mmのつぼ掘りも必要となる。図13は、コンクリート掘削装置1で掘削する範囲を示す図であり、(a)が平面図、(b)が断面図であり、図14は、掘削する範囲を掘削する順番に分けて示す平面図であり、(a)が第1ステップの深さ29mmのつぼ掘り範囲、(b)が第2ステップの幅40mm深さ10mmの溝掘り範囲、(c)が第3ステップの深さ21mmのつぼ掘り範囲を示している。
【0075】
第2実施形態に係るコンクリート掘削方法が、第1実施形態に係るコンクリート掘削方法と相違する点は、掘削工程で掘削する範囲等が違う点だけであるので、掘削工程のみを説明し、その他の工程の説明は省略する。
【0076】
(掘削工程)
第2実施形態に係るコンクリート掘削方法の掘削工程には、3つのステップがある。先ず、第1のステップでは、図13図14のA部として示す格子鋼板筋を設置する範囲の深さ29mmのつぼ掘りを行う。
【0077】
具体的には、ブレードセット5を電動モータ20で回転駆動させつつ横走行レール42を線路平行方向に沿って装置本体2を走行させることにより、コンクリート掘削装置1のブレードセット5でコンクリート床版を図13(a),図14(a)に示す幅890mm×奥行1150mmの長方形状の範囲で切削して深さ29mmのつぼ掘りを行う。
【0078】
このとき、第2実施形態に係るコンクリート掘削方法でも、全体の刃厚が40mmのブレードセット5を用いて掘削するので、線路平行方向に沿って所定の長さ分、装置本体2を横走行レール42上を走行させて掘削する。その後、刃厚の40mm分、横走行レール42を縦走行レール40,41に沿って線路直角方向に移動させ、再度、横走行レール42上を線路平行方向に沿って所定の長さ分だけ装置本体2を走行させて掘削する。このように、装置本体2の線路平行方向へ移動掘削と、横走行レール42の刃厚分の線路直角方向への移動を繰り返すことで、幅890mm×奥行1150mmの長方形状の範囲の深さ29mmのつぼ掘りを行う。つまり、奥行1150mmであるので、横走行レール42の刃厚分の移動を29回行い、横走行レール42上の装置本体2の走行を繰り返すことで、幅890mm×奥行1150mmの長方形状の範囲の深さ29mmのつぼ掘りを行う。
【0079】
そして、次の掘削工程の第2のステップでは、図13図14のB部として示すせん断キーとなる幅40mmで深さ10mmの溝掘りを行う。このとき、第3のステップでつぼ掘りする範囲は、A部のつぼ掘り深さからさらに21mm掘り下げるので、B部の深さ10mmのせん断キーとして掘削しても消失してしまう。このため、掘削工程の第2のステップでは、線路側となる4条の溝掘りは、C部のつぼ掘り範囲を避けた外側に分割した範囲で行う。
【0080】
さらに、次の掘削工程の第3のステップでは、図13図14のC部として示すホームドアの筐体直下の矩形状の一定範囲において深さ21mmのつぼ掘りを行う。具体的には、幅620mm×奥行445mmの範囲の長方形状に深さ21mmのつぼ掘りを行う。このとき、第1のステップと同様に、全体の刃厚が40mmのブレードセット5を用いて、620mm×40mmの溝掘りを12回繰り返すことで、幅620mm×奥行445mmの長方形状の範囲の深さ21mmのつぼ掘りを行う。
【0081】
以上説明した本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及びそのコンクリート掘削装置1を用いた第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、つぼ掘りと溝掘りが混在するようなコンクリート床版の複雑な掘削を一台の装置で盛り替えることなく施工することができる。なお、ここで盛り替えるとは、走行レールの固定をアンカーからやり直すことを指している。
【0082】
また、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、所定長さで、所定深さの溝掘りを走行レールセット4上の装置本体2の1回の走行により自動で掘削することができ、極めて短時間で溝掘りを完了させることができる。このため、熟練工でなくても誰でも簡単に短時間でコンクリート床版の掘削ができ、列車が運行しない夜間のうちに完了することができる。
【0083】
それに加え、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、セグメント56の位置を各ダイヤモンドカッター50で異なるようにずらすことにより、接触面積あたりの押圧力を瞬間的に上昇させて、チップ55に埋設されている新たなダイヤモンドが表面に現れる頻度を上昇させ、掘削(切削)時間を短縮することができる。
【0084】
その上、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、機械で正確に掘削深さを管理して掘削できるので、モルタル等を打設して不陸調整を行う必要がなく、モルタルが硬化するまでの養生期間が不要となり、直ぐに次工程を行うことができる。
【0085】
さらに、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、ブレードセット5の全体の刃厚が40mmであるので、格子鋼板工法に必要な幅40mmのせん断キーの溝掘りの掘削が、装置本体2の走行レールセット4上の1回の走行により施工することができ、極めて短時間で溝掘りを完了させることができる。
【0086】
また、本実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法によれば、装着されたダイヤモンドカッターの枚数が4枚であるので、ブレードセット全体の刃厚を40mmとすることができるとともに、基盤の離間距離を6.5mm確保することができ、軽量化や費用の観点から有利となり、最適化されている。
【0087】
以上、本発明の実施形態に係るコンクリート掘削装置1及び第1,第2実施形態に係るコンクリート掘削方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【0088】
[コンクリート掘削工実証試験]
次に、本発明の効果を検証するために行ったコンクリート掘削工実証試験について説明する。本コンクリート掘削工実証試験は、施工時間の短縮効果を検証するために、第2実施形態に係るコンクリート掘削方法の掘削工程の3つのステップに対応した溝掘り線路平行方向1回分の掘削時間を計測したものである。第1のステップが、図13図14に示したA部として示す格子鋼板筋を設置する範囲の深さ29mmのつぼ掘りを行う場合であり、深さ(t=29mm)の長さ(W=890mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出したものである。計測結果を図15に示す。
【0089】
図15に示すように、深さ29mmの長さ890mmの溝掘りは、概ね5分程度かかっていることが分かる。このため、コンクリート掘削装置1を用いたA部全体のつぼ掘りも、溝掘り5分×29回=145分で完了できることが分かった。
【0090】
また、第2のステップが、図13図14に示したB部として示すせん断キーとなる幅40mmで深さ10mmの溝掘りを行う場合であり、深さ(t=10mm)の長さ(W=890mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出したものである。計測結果を図16に示す。
【0091】
図16に示すように、深さ10mmの長さ890mmの溝掘りは、概ね2分30秒程度かかっていることが分かる。このため、コンクリート掘削装置1を用いたB部全体の溝掘りも、2.5秒×6回=15分の極めて短時間で完了できることが分かった。
【0092】
そして、図13図14に示したC部として示すホームドアの筐体直下の矩形状の一定範囲において深さ21mmのつぼ掘りを行う場合であり、深さ(t=21mm)の長さ(W=620mm)の溝掘りの1回分の掘削(切削)時間を3回計測して平均時間を出したものである。計測結果を図16に示す。
【0093】
図16に示すように、深さ21mmの長さ620mmの溝掘りは、概ね3分程度かかっていることが分かる。このため、コンクリート掘削装置1を用いたC部全体のつぼ掘りも、溝掘り3分×12回=36分で完了できることが分かった。
【符号の説明】
【0094】
1:コンクリート掘削装置
2:装置本体
20:電動モータ(回転駆動手段)
21:ブレードカバー
22:自動送り装置
23:昇降ハンドル
3:集塵機
30:ホース
4:走行レールセット
40,41:縦走行レール
42:横走行レール
43:レール材
44:ラックギア
45:六角ボルト
46:座金
5,5’,5”,5#:ブレードセット(コンクリート掘削用ブレードセット)
50:ダイヤモンドカッター
51:スペーサー
51’:外フランジスペーサー
52:外側フランジ
53:内側フランジ
54:基盤
55:チップ
55’:薄型チップブロック
56:セグメント
57,58,59:チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17