(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008848
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】鉄道車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240112BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240112BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20240112BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G08B25/04 C
G08B25/00 510M
G08B25/08 A
G08B25/00 510J
B61L25/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098045
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022109075
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592066860
【氏名又は名称】八幡電気産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 充男
(72)【発明者】
【氏名】山本 聡
(72)【発明者】
【氏名】家口 孝一
(72)【発明者】
【氏名】平塚 友久
【テーマコード(参考)】
5C087
5H161
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA03
5C087AA37
5C087AA46
5C087BB74
5C087DD03
5C087DD15
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG66
5C087GG70
5C087GG83
5C087GG85
5H161AA01
5H161BB02
5H161DD20
5H161DD23
5H161FF07
5H161GG04
5H161GG12
5H161GG13
5H161GG22
(57)【要約】
【課題】鉄道車両における複数の通信機能を、モニタ装置とは独立して一元的に管理することができる通信システムを提供する。
【解決手段】通信システム10は、一の車両に設けられた管理装置100と、各車両に設けられる複数の端末装置200とを有する。管理装置100は、端末装置200へ音声制御信号および映像制御信号を送信する送信部111と、端末装置から非常通報情報を受信する受信部112と、受信した非常通報情報を、車両内の設備または外部装置へ出力する出力制御部130とを有する。各端末装置200は、管理装置から送出された制御信号を他車両の端末装置に送信する一方、自車両に設けられた非常通報装置から供給された非常通報情報および他の端末装置から受信した非常通報情報を管理装置へ送信する中継部220と、管理装置からの制御信号に基づいて、音声通信装置および映像表示装置を制御する制御部210とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両から編成される鉄道に搭載される通信システムであって、
一の車両に設けられた管理装置と、各車両に設けられる複数の端末装置とを有し、
前記管理装置は、
少なくとも一の端末装置へ音声制御信号および映像制御信号を送信する送信手段と、
少なくとも一の端末装置から非常通報情報を受信する受信手段と、
該受信した非常通報情報を、前記一の車両内に設けられた設備および前記鉄道の外部に設置された装置のうち少なくともいずれかへ出力する出力手段と
を有し、
各端末装置は、
前記管理装置から送出された音声制御信号および映像制御信号を他の端末装置に送信する一方、自車両に設けられた非常通報装置から供給された非常通報情報および他の端末装置から受信した非常通報情報を、前記管理装置へ送信する中継手段と、
前記管理装置から供給された制御信号に基づいて、自車両に設けられた、音声通信装置および表示装置を制御する制御手段と
を有する
鉄道車両用通信システム。
【請求項2】
前記設備には、乗務員によって操作され前記鉄道の運行を行うための装置が含まれる
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項3】
各車両には音声通信装置が設けられ、
前記中継手段は、さらに、自車両に設けられた音声通信装置にて収音された音声情報を前記管理装置へ送信する
請求項2に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項4】
各車両にはカメラが設けられ、
前記中継手段は、自車両に設けられたカメラにて撮影された映像データを前記管理装置に送信する
請求項3に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項5】
前記設備は、前記複数の車両に設けられたセンサからの情報に基づいて、前記複数の車両内の環境に関する環境情報を生成し、
前記管理装置は、前記設備から取得した環境情報に基づいて前記制御信号を生成する
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記鉄道の位置に関する情報を取得する位置取得手段を更に有する
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項7】
前記中継手段は、前記制御信号を無線通信する
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記設備から鉄道の運行状況を示す運行情報を取得し、
前記出力手段は、該受信した非常通報情報、音声情報、および映像データのうち少なくともいずれか一つについての出力先を、該取得した運行情報に基づいて決定する
請求項4に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項9】
前記管理装置は、
前記設備から鉄道の運行状況を示す運行情報を取得し、
前記出力手段は、該受信した非常通報情報、音声情報、および映像データのうち少なくともいずれか一つについての出力先を、それぞれ、(i)非常通報情報、音声情報、および映像データの内容、(ii)非常通報情報、音声情報、および映像データを取得したタイミング、および(iii)非常通報情報、音声情報、および映像データを送信した車両のうち少なくともいずれか一つに基づいて、決定する
請求項4または8に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項10】
前記管理装置は、前記鉄道の運転士によってなされた操作を示す操作情報を前記設備から取得し、
前記出力手段は、該取得した操作情報に基づいて、通知を行うタイミング、通知の内容、および通知先のうち少なくともいずれか一つを決定する、
請求項1に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項11】
前記操作情報には、前記鉄道から発せられた警報の発報状況を示す発報情報が含まれる、
請求項10に記載の鉄道車両用通信システム。
【請求項12】
複数の車両から編成される鉄道の一の車両に設けられ、
前記鉄道の各車両に設けられた複数の端末装置のうち少なくとも一の端末装置へ、音声制御信号および映像制御信号を送信する送信手段と、
前記複数の端末装置のうち少なくとも一の端末装置から非常通報情報を受信する受信手段と、
該受信した非常通報情報を、前記一の車両内に設けられた設備および前記鉄道の外部に設置された装置のうち少なくともいずれかへ出力する出力手段と
を有する管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両内に設けられる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両には、法令によりまたは顧客サービスの向上のため、非常通報装置、車内放送用のスピーカ、運行状態や広告その他の情報を乗客に提示すための表示装置といった、乗務員と乗客との間で各種情報の授受を行うための設備が設けられている。例えば、特許文献1には、車両の運行を制御する機能を有するいわゆるモニタ装置とは別に表示制御装置を設け、モニタ装置の機能の一部である案内表示機能を制御装置に担わせることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、鉄道車両に設けられた通信設備は、乗務員によって操作され運行に必要な設備(いわゆるモニタ装置とよばれる列車情報管理装置)の一つの機能として一体不可分に実装されていた。また、一般的に、モニタ装置の仕様は鉄道会社によって異なるため、ある鉄道会社向けに製造された通信設備を他の鉄道会社向けに転用することが難しかった。また、近年の防犯や顧客へのサービス向上といった観点において、通信回線を増強するあるいは防犯カメラを追加するなどの改良工事が必要になった場合、通信の制御は基本的にモニタ装置と一体化されておりモニタ装置のソフトウェア書き換え等がともなうため、そのような改良工事は、一般的に容易でない。
本発明は、鉄道車両における複数の通信機能を、モニタ装置とは独立して一元的に管理することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、一の態様において、複数の車両から編成される鉄道に搭載される通信システムであって、一の車両に設けられた管理装置と、各車両に設けられる複数の端末装置とを有し、前記管理装置は、少なくとも一の端末装置へ音声制御信号および映像制御信号を送信する送信手段と、少なくとも一の端末装置から非常通報情報を受信する受信手段と、該受信した非常通報情報を、前記一の車両内に設けられた設備、および前記鉄道の外部に設置された装置のうち少なくともいずれかへ出力する出力手段と、を有し、各端末装置は、前記管理装置から送出された音声制御信号および映像制御信号を他の端末装置に送信する一方、自車両に設けられた非常通報装置から供給された非常通報情報および他の端末装置から受信した非常通報情報を、前記管理装置へ送信する中継手段と、前記管理装置から供給される制御信号に基づいて、自車両に設けられた、音声通信装置および表示装置を制御する制御手段とを有する、鉄道車両用通信システムを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、鉄道車両における複数の通信機能を一元的に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】先頭車両に搭載される管理装置100および端末装置200の機能ブロック図。
【
図3】中間車両に搭載される端末装置200の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施例>
図1は通信システム10の概要を示す。通信システム10は、複数の車両(C1~Cn)から編成されるn両編成の鉄道車両900に搭載される、鉄道車両用の通信システムである(nは1以上の整数)。通信システム10は、鉄道車両900の一つ以上の車両に設けられた管理装置100(100-1、100-2)と、鉄道車両900の各車両(客車;中間車両)に設けられた複数の端末装置200(200-1、200-2、・・・・)とを有する。
【0009】
車両C1、Cnは、それぞれいわゆる先頭車両(最後尾車両)で、乗務員(運転手、車掌その他)が乗車する。車両C1、Cnは、管理装置100と、端末装置200と含む。車両Ck(k=2、3、・・・n-1)は、いわゆる中間車両であって、基本的には乗務員は乗車しない。各車両Ckには端末装置200が設けられる。各管理装置100および端末装置200の機能は同一である。以下、個別の管理装置100や端末装置200を特に区別する必要がない場合は、それぞれ、単に、管理装置100および端末装置200と称する。
【0010】
なお、同図の例では、先頭車両C1および最後尾車両Cnにおいて乗務員室(運転室および車掌室)が存在し、これに応じてそれぞれ管理装置100-1および100-2が設けられているが、通信システム10が有する管理装置100の数は1であってもよいし、3以上であってもよい。
【0011】
通信システム10に複数の管理装置100が含まれる場合、例えば、列車の運行前に、
複数の管理装置100から選択される一つの管理装置100(典型的には運転手が乗車する車両)の機能を有効化するとともに、選択されなかった他の管理装置100の機能を無効化する処理を行えばよい。
また、一の車両が乗務員室のみで構成されている場合は、この車両には管理装置100のみを設け、端末装置200を設ける必要はない。管理装置100が設けられる場所は、
必ずしも乗務員室に対応している必要はない。例えば、乗務員が存在しない無人運転の場合、鉄道車両900のいずれか一つ以上の車両に管理装置100が設けられていればよい。
【0012】
指令所サーバ910は、鉄道車両900の運行を管理する鉄道会社のいわゆる指令室に設けられ、鉄道車両900の乗務員と通信を行うとともに、鉄道車両900に対して制御信号を送信して鉄道車両900の運行を制御するとともに、鉄道車両900からの各種情報を取得して運行状況を監視する。
関係機関の管理センタ920は、警察、消防、警備会社など、鉄道車両900において有事が発生した場合などにおいて鉄道会社と連携して対応することが想定される機関が、鉄道車両900あるいは指令所サーバ910と連絡をおこなうための端末、サーバ、その他の通信装置である。
鉄道車両900は、通信網930を介して指令所サーバ910や関係機関の管理センタ920と通信する。通信網930は、鉄道車両900の運行会社が線路や駅などに設けた地上基地局などを含む専用の通信網、および鉄道運行会社以外によって運営される4G、5G等の移動通信網やインターネット等の一般通信網を含む。
【0013】
図2および
図3を参照して、管理装置100および端末装置200の機能を説明する。
図2は先頭車両C1に設けられる管理装置100および端末装置200の機能ブロック図である。
図3は、各中間車両Ckに設けられる端末装置200の機能ブロック図である。
なお、この例では、運転手と車掌とが鉄道車両900に搭乗する場合について説明しているが、運転手のみが搭乗してもよいし、無人運転(遠隔制御)であってもよい。
【0014】
まず、通信システム10と連携する、車両Ckが有する各種設備について説明する。なお図示した各種設備は一例であって、法令等によって設置が義務付けられていないもの以外は一部を省略してもよいし、逆に図示されていない説明をさらに備えていてもよい。
【0015】
図2に示すように、車両C1には、モニタ装置810と、音響装置820と、非常通報装置830と、スピーカシステム840と、車内ディスプレイ850と、カメラシステム860とが設けられている。モニタ装置810と音響装置820とは、例えば乗務室にのみ設置され、乗務員が使用するための設備である。非常通報装置830と、スピーカシステム840と、車内ディスプレイ850と、カメラシステム860とは、乗客(および乗務員)が使用する設備である。なお、無人運転である場合は、モニタ装置810および音響装置820は省略されてもよい。すなわち、本発明において、モニタ装置810は必須ではない。
【0016】
モニタ装置810は、コンピュータ、センサ、乗務員が操作するスイッチや乗務員が使用する計器類やモニタ等を含み、車両の加減速、ドアの開閉、車内の空調制御、自動音声アナウンスその他の乗客への情報提供、指令所などの鉄道車両900外部と通信を行うための通信設備、警笛の発報その他視覚的または聴覚的に車両内外の人へ注意を促すための装置(図示省略)など、鉄道の運行に必要な各種制御を行うためあるいはこのようなシステムに接続して各種情報の授受を行うためのシステムである。なお、モニタ装置810は、乗客と乗務員(あるいはその他の鉄道職員)との間の通信(音声通信、映像通信、通報など)を行う機能を有している必要はない。乗客と乗務員等との通信については、通信システム10が担う。なお、モニタ装置810は、図示せぬ信号線によって、非常通報装置830など、各車両に設けられた通信設備と接続し、通信システム10が有する機能の一部(例えば、管理装置100および端末装置200を用いることなく、非常通報装置が押下されたか否かを乗務が使用する画面に表示するなどの機能)を備えていても構わない。このように、通信システムとモニタ装置810とで機能が一部重複する場合は、モニタ装置810側のソフトウェアを設定することで、当該機能を作動させないようにしてもよいし、通信システム10と併存して動作させてもよい。以下の例では、説明の便宜上、モニタ装置が有する通信に関する機能はすべて通信システム10が担う者とする。
【0017】
音響装置820は、乗務員が必要に応じて使用するものであって、不特定多数の乗客に向けてアナウンスするため、指令所、他の乗務員、あるいは特定の乗客と会話するため(非常通報装置830に通話機能が設けられている場合)の音響設備である。
【0018】
なお、通信システム10は、鉄道車両900の車両製造時(つまり新造車両)に設置されてもよいし、既存の車両に事後的に取り付けられもよい。既存の車両に事後的に設置する場合、後述する通信システム10が有する通信機能の全部または一部を有する場合も想定される。この場合は、例えば、モニタ装置810に管理装置100を接続する際に、モニタ装置810が有する通信機能の一部または全部を通信システム10が担うように、モニタ装置810側の設定や配線等を変更すればよい。同様に、各端末装置200が有する非常通報装置830~カメラシステム860の通信設備を端末装置200に接続する際に、モニタ装置810との電気的接続を変更する作業を行えばよい。このように、通信システム10は、従来モニタ装置810が担っていた通信機能の一切を担う。
【0019】
非常通報装置830と、スピーカシステム840と、車内ディスプレイ850と、カメラシステム860は、各客車内の壁面等に1つまたは複数設置される。
非常通報装置830は、ボタン等の装置であって、乗客によって押下されると、少なくとも押されたことを示す非常通報情報が制御部210に出力される。典型的には、日本の法令上設置が義務付けられていつ、乗務員への通報機能およびブザー音を報音して周囲に警告する機能を有する装置が該当する。さらに、非常通報装置830はマイクおよびスピーカを備え、ボタン押下時に通報者その他の乗客が乗務員と通話する機能を有していてもよい。この場合、モニタ装置810を介して入力された乗務員の発話内容を示す音声データが制御部210を介して非常通報装置830へ供給されるとともに、通報者の声ないし車内の環境音を収音し、その音声データを制御部210を介して管理装置100に供給する。
【0020】
スピーカシステム840は、乗客等に対して音声による情報提供を行う装置であって、車内放送用スピーカ841と車外放送用スピーカ842とを含む。
車内放送用スピーカ841は、車両内の天井等に設けられ、管理装置100にて生成され制御部210を介して供給される音声制御信号CAに基づいて放音を行う。音声制御信号CAには、音響装置820用いて収音された乗務員のアナウンス音声や、予め再生タイミングや再生内容が定められ管理装置100から供給される自動アナウンス音声を示す音声データが含まれる。
車外放送用スピーカ842は、車両の外部に設けられ、制御部210から供給された音声制御信号に従って、音響装置820を介して入力された乗務員の発話内容を駅員や駅にいる乗客等に向けて放音する。
【0021】
カメラシステム860は、状況の把握、防犯、安全確保などの観点から、車両内外の様子を撮影して乗務員等に提供するものであって、車内撮影用カメラ861と車外撮影用カメラ862とを含む。
車内撮影用カメラ861は、車両内に設置されたカメラであって、例えば、連続的に撮影を行い録画した画像データを制御部210へ逐次出力する。あるいは、非常通報装置830は制御部210を介して制御指示を受信し、オン・オフ、パン、ズーム等の制御を遠隔から行ってもよい。
車外撮影用カメラ862は、駅のホームの様子等を撮影することを目的として車両に設置されたカメラであって、例えば、運行中は常に録画を継続し、録画データを逐次制御部210に供給する。なお、先頭車両または最後尾車両においては、進行の前方または後方を撮影してもよい。
【0022】
車内ディスプレイ850は、車両ドアの上部の内壁面等に設けられる液晶ディスプレイ等の表示装置であって、管理装置100にて生成され、制御部210を介して供給される映像制御信号CVに基づいて、鉄道車両900の運行に関する情報(現在位置、停車駅その他の運行スケジュール情報)や運行とは関係ない広告コンテンツ、その他の画像やテキスト情報を乗客に提示する。すなわち、映像制御信号CVには少なくとも映像コンテンツのデータが含まれる。
【0023】
続いて管理装置100および端末装置200の機能を説明する。
管理装置100は、複数の端末装置200を管理するとともに、必要に応じて、モニタ装置810、指令所サーバ910に関係機関の管理センタ920と通信するための装置である。管理装置100は、通信部110と、情報処理部120と、出力制御部130と、測位部140、取得部150とを含む。
【0024】
測位部140は、LTE等の基地局から受信した電波あるいは人工衛星から受信した電波に基づいて鉄道車両900の位置を特定するためのなどのモジュールである。
【0025】
取得部150は、管理装置100をモニタ装置810に接続するためのインタフェースである。情報処理部120は、取得部150を介して、モニタ装置810から運行や車両の状態に関する種々の情報を取得することができる。モニタ装置810から供給される情報は、例えば、鉄道の運行状況(現在位置、速度、加速度など)に関する情報や、車内環境(温度、湿度、二酸化酸素の濃度、込み具合(推定乗車率))に関する情報が含まれる。これらの情報は、例えば各車両に設けられたセンサによって取得されモニタ装置810に提供される。また、運行スケジュールなどの、指令室などの鉄道車両900の外部からモニタ装置810に提供された情報などに関する情報が含まれていてもよい。
【0026】
通信部110は、少なくとも一つの端末装置200(この例では端末装置200-1)と、IEE802.11等の通信方式に従った無線通信またはIEEE802.3(Ethernet)に従った有線通信を行うための通信インタフェースであって、送信部111と受信部112とを含む。送信部111は、少なくとも一つの端末装置200に対し、音声制御信号CAは車内ディスプレイ850を制御するためのスピーカシステム840を制御するための映像制御信号CVを送信する。非常通報装置830が音声通信機能を有する場合、乗務員の発話内容を示す発話音声データTAを当該少なくとも一つの端末装置200へ送信する。
受信部112は、ある車両にて乗客や乗務員によって非常通報装置830が操作されると、少なくとも一つの端末装置200から当該操作があったことを少なくとも示す非常通報情報REを受信する。非常通報装置830が音声通信機能を有する場合、音声データRAには非常通報装置830によって収音された通報者の発話音声や環境音を示す非常通報情報REが含まれる。
【0027】
情報処理部120は、各種プロセッサおよびメモリによって実現され、機能的には、音声処理部121と、映像処理部122と、非常通報処理部123とを含む。
音声処理部121は、音響装置820から供給された音声信号に対して符号化処理等を行って音声データTAを生成して通信部110に出力する。また、音声処理部121は、通信部110を介して端末装置200から音声データRAを内包する非常通報情報REを通信部110から取得すると、復号化処理を行って音響装置820へ音響信号を供給するとともに、必要な処理(通報が行われた車両の識別子の抽出、音声認識処理に基づく特徴量の抽出など)を行って、処理結果を出力制御部130に供給する。特徴量とは、例えば、「助けて」、「火事」といった発話内容を示すものであってもよいし、器物が破壊される音、悲鳴、怒号といった、話者の状況や音の発生原因に関する情報を含んでいてもよい。
【0028】
映像処理部122は、映像広告コンテンツや取得部150から供給される運行情報に基づく案内コンテンツなど、車内ディスプレイ850に表示するためコンテンツデータと、車内ディスプレイ850を制御するための映像制御信号CVを生成して、通信部110に供給する。なお、車両ごとに異なるコンテンツを提供する場合は、各車両向けに、車両の識別子に対応付けられた映像制御信号の集合(CV(1)、CV(2)・・・・)を画像データ生成する。また、映像処理部122は、通信部110を介して端末装置200から画像データRVを受信すると、復号化処理や画像認識処理を行い、撮影された画像に関する特徴量を生成する。特徴量とは、例えば、映っている物や人の特徴(炎や煙が発生しているのか、倒れていた人がいるのか、人が逃げまどっているのか、暴れているのかなど)や、撮影場所の状況を表すものであれば、任意である。生成された情報は出力制御部130へ供給される。
【0029】
非常通報処理部123は、音響装置820から供給された音声データに対して符号化処理等を行って通信部110に出力する。また、モニタ装置810から受信した自動アナウンス情報に基づいて音声制御信号CAを再生して通信部110へ供給する。なお、車両ごとに異なる音声コンテンツを提供する場合は、車両の識別子が内包された音声制御信号CAを生成する。
【0030】
映像処理部122および/または非常通報処理部123は、取得部150を介してモニタ装置810から取得される情報を適宜反映して制御信号(映像制御信号CVおよび/または音声制御信号CA)を生成してもよい。例えば、車両内の環境に関する環境情報を取得した場合、当該環境情報に基づくテキスト情報を含む映像コンテンツを映像制御信号CVに内包させる。また、映像処理部122および/または非常通報処理部123は、モニタ装置810からの運行に基づいてあるいは測位部140から供給される鉄道車両900の位置情報を取得した場合、当該位置情報に基づいて次の停車駅を案内するための表示や自動音声ガイダンスの放音を指示する制御信号(映像制御信号CVおよび音声制御信号CA)を生成してもよい。
【0031】
出力制御部130は、取得部150とともに、モニタ装置810へ接続インタフェースの一部として機能する。加えて、出力制御部130は、プロセッサおよびメモリとして実現され、情報処理部120から情報を受信すると、モニタ装置810、音響装置820、指令所サーバ910、関係機関の管理センタ920のうち少なくともいずれかへ、該受信した情報に基づく情報を出力する。受信した情報に基づく情報とは、情報処理部120から供給された情報そのものであってもよいし、情報処理部120から供給された情報を加工した情報であってもよい。例えば関係機関の管理センタ920が警察署であって音声による通報のみを受け付けている場合、出力制御部130は、情報処理部120から供給された音声や画像の特徴量に基づいて、所定のアルゴリズムに従ってメッセージ文を生成し、生成したメッセージ文を合成音声よって読み上げる。送信先に対して通報の内容や送信のプロトコル予め定められている場合は、それに従う。
出力先の決定は、メモリに予め出力先の決定のためのアルゴリズムを記述したプログラムを記憶しておき、プロセッサがこのプログラムを実行することで、行われる。
【0032】
例えば、出力制御部130は、情報処理部120から受信した非常通報情報RE、音声データRA、および画像データのうち少なくともいずれか一つについての出力先を、モニタ装置810から取得した運行情報に基づいて決定する。
あるいは、出力制御部130は、情報処理部120から受信した非常通報情報、音声情報、および映像データのうち少なくともいずれか一つについての出力先を、それぞれ、(ア)非常通報情報RE、音声データRA、および画像データRVの内容、(イ)非常通報情報RE、音声データRA、および画像データRVを取得したタイミング、および(ウ)非常通報情報RE、音声データRA、画像データRVの送信元の車両のうち少なくともいずれか一つに基づいて、決定してもよい。
あるいは、出力制御部130は、非常通報情報REに含まれる音声データRA、および画像データRVの内容の少なくともいずれかに基づいて、所定のアルゴリズムに従って、
発生したインシデントの重要度あるいは対処の必要性を決定し、決定した結果に基づいて出力先および出力内容の少なくともいずれか一つを決定してもよい。
【0033】
出力先の決定方法の一例としては、通信部110が受信した、非常通報情報REおよび画像データRVを含むすべての情報を常にモニタ装置810に供給することが挙げられる。すなわち、客車からのあらゆる情報が、モニタ装置810と接続された図示せぬ乗務員用のディスプレイに表示されまたは音響装置820から音声出力されることで、乗務員に伝達される。
あるいは、受信した情報が一定の条件を満たす場合、モニタ装置810への出力に加えてまたはモニタ装置810への供給に替えて、関係機関の管理センタ920または指令所サーバ910へ送信してもよい。この条件とは、例えば列車の運行状況に関する条件、乗務員の状況に関する条件(例えば、乗務員として運転手が一名であり、その運転手は運行操作中であるために運転室から離れることができない状況なのか、停車中等であるため乗務員室から客車へ移動して非常通報に対して対処することができる状況なのか、走行中であっても車掌が非常通報に対する対処が可能か否かなど)を含む。
【0034】
この条件には、非常通報が行われたタイミングに関する条件(複数の非常通報が同時期に複数の車両にて行われたのか、一つの車両において同時に複数の非常通報ボタンが押下されたかなどを含む)が含まれていてもよい。
あるいは、音声データRAの解析の結果、怒号や悲鳴の発生が検出された場合、「助けて」、「火事だ」といった重大な事態の発生が推定される語が発話あされたことを示す情報、あるいは押下された時点の直近および/または直後(例えば、押下された時点の30秒前から30秒後まで)おいて取得した画像データから重大なインシデントの発生が推定されることを示す解析結果が情報処理部120から供給された場合、出力制御部130は、モニタ装置810に加えて、指令所サーバ910および/または関係機関の管理センタ920を送信先として選定してもよい。
【0035】
図4に出力制御部130の動作の一例を示す。出力制御部130は、情報処理部120から供給された情報が非常通報情報REか否かを判定する(S501)。非常通報情報REである場合(S501:YES)、情報処理部120から供給された画像データの解析結果やデータや音声データRA解析結果に基づいて、インシデントの発生の有無(誤報である場合も含む)およびその重大性を判定する(S502)。重大であると判定された場合(S502:YES)、関係機関との連携が必要か否かを決定する(S504)。関係機関との連携が必要と判定した場合(S504:YES)、乗務員室、指令室、および関係機関と決定する(S507)。関係機関との連携が不要と判定した場合(S504:NO)、乗務員室、指令室を通知先として選定する。S502においてインシデントが重大でない判定された場合(S502:NO)、モニタ装置810から取得した運行状況に基づいて、乗務員がそのインシデントに対処することが可能な状況か否かを判定する(S503)。乗務員が対処可能な場合は、乗務員室のみへ通知(S505)し、乗務員が対処不可能な場合は、乗務員室および指令室へ通知(S506)する。
【0036】
従来、乗務員は、非常通報装置からの通報を受信すると、まずは乗務員が自ら事態を確認し、乗務員の判断で指令所サーバ910や関係機関の管理センタ920に通報するという運用となっているケースが多い。本実施例においては、乗務員による確認を経ることなく、出力制御部130において発生した事象において適切な通知先を選定して送信することができる。この結果、仮に乗務員の状況によらず、事態に応じて適切な通知先に迅速に通知することができる。
【0037】
端末装置200は、管理装置100からの制御信号を受信して自車両の非常通報装置830~カメラシステム860に供給するとともに、当該制御信号を他の車両の端末装置200に転送し、自車両の非常通報装置830およびカメラシステム860から制御部210介して供給された情報を管理装置100へ直接または他の端末装置200を介して送信するとともに、他の車両の端末装置200から管理装置100宛の情報を受信した場合、管理装置100へ直接または他の端末装置200を介して転送するアクセスポイントして機能する。このように、各車両の端末装置200が直列的に通信接続されることで、管理装置100と複数の端末装置200との間で情報の授受を行うことができるようになっている。
【0038】
端末装置200は、制御部210と、中継部220とを含む。制御部210は、中継部220から供給された信号に基づいて車内ディスプレイ850およびスピーカシステム840を制御するとともに、非常通報装置830から供給された非常通報情報REおよびカメラシステム860から供給された画像データを、必要に応じて中継部220に供給する。具体的には、制御部210は、管理装置100にて生成された音声制御信号CAに基づいて、自車両に設けられた、スピーカシステム840、車内ディスプレイ850に供給する。そして、自車両の非常通報装置830からあるいは他の車両の非常通報装置830から、中継部220を介して非常通報情報を受信した場合、非常通報情報REを受信したタイミングの前および/または後の所定時間の画像データを抽出して、中継部220に供給する。非常通報情報REに、通報者の声ないし車内で収音された音声を示す音声データが含まれる場合、その音声データも合わせて中継部220に供給する。
【0039】
中継部220は、自車両の制御部210に接続され、他の車両の中継部220と、IEE802.11等の通信方式に従った無線通信またはIEEE802.3(Ethernet)に従った有線通信を行うための通信モジュールとして実装される。中継部220は、受信部221と送信部222とを含む。中継部220は、管理装置100または他の端末装置200から受信した情報のうち、宛先が明示されていないもの、または明示された宛先がC1の装置(
図2の例では端末装置200-1)となっているものについては、C1のスピーカシステム840および車内ディスプレイ850へ出力する。一方、通信部110または他の端末装置200からから受信した情報のうち、宛先が明示されていないものおよび宛先が他の端末装置(端末装置200-2、200-3、・・・)となっているものについては、端末装置200-1と接続された他の装置(
図2、3の場合は端末装置200-2)へ転送する。
また、端末装置200は、制御部210から供給された情報(非常通報情報REや画像データ)を受信すると、当該情報に、情報の送信元であることを示す自車両の識別子と、管理装置100を送信の宛先とする情報を付加して、管理装置100へ直接または他の端末装置200を介して、管理装置100に送信する。端末装置200-1については、管理装置100と直接接続しているため通信部110へ送信し、端末装置200-2については、管理装置100と直接接続していないため、端末装置200-1の中継部220へ送信することになる。
【0040】
上記実施例においては、通信機能をモニタ装置810から切り離して通信システム10に担わせるようにした。よって、例えば、処理負荷が大きい映像配信をモニタ装置810への負荷を増やすことなく実現することできる。あるいは、カメラを増設するなど、新たな通信機器や通信経路に対する変更や改良を行う場合、通信システム10の機能を変更すればよいので、モニタ装置810の制御ソフトウェアの書き換えなど、運行に支障をきたす可能性を懸念することなく、実現することができる。また、仮に通信機能に不具合が生じたとしても、運行に関する様々な機能を担っているモニタ装置810の全体を点検するといった必要性がない。このように、上記実施例は、通信機能の構築、改良、メンテナンス性において、従来のモニタ装置810と一体不可分のシステムに比べて、優れている。
【0041】
加えて、非常通報の取得、音声放送(放送)、映像配信複数種類の通信経路を一元的に管理することがで、通信経路相互の連携がしやすくなる。例えば、非常通報を受信した場合、必要に応じて関連するタイミングの録画データや収音した音声データを分析し、適切な場所へ適切な態様で通知することができる。
また、車両ごとに端末装置200を設けているので、放送や映像配信の制御内容を変えることができる。また、数珠つなぎ方式なので無線通信モジュールとして実装しても、安定した通信が実現できる。
【0042】
また、既存の車両に通信システム10を事後的に設ける場合、中継部220を無線通信モジュールとして実装して隣接車両とのアクセスポイントとして機能させることで、編成車両数が多くても、通信の安定性を実現しつつ、いわゆる車間渡りにともなう配線工事等の艤装変更を最小限にすることできる。
【0043】
上記実施例においては、端末装置200同士で情報の中継を行っていたが、管理装置100からすべての端末装置200に対して同報送信してもよいし、端末装置200は管理装置100に対して直接通信を行ってもよい。
また、端末装置200から取得した音声データRAおよび/または画像データRVに基づく解析や特徴量の抽出は、管理装置でなく、その端末装置200が行ってもよい。
あるいは、管理装置100に、通信網930を介して車両900の外部に設けられた、音声や映像を解析するための情報処理サーバと通信を行う通信手段を設け、当該通信手段を用いて情報処理サーバへ音声や映像の特徴情報を送信し、情報処理サーバから解析結果を受信してもよい。
【0044】
<他の実施例>
本発明においては、モニタ装置810から取得した種々の情報に基づいて、音声や映像その他の情報の通信を制御することができる。例えば、モニタ装置810から運転士が行った操作の内容を取得して、取得した操作内容に応じて、各種の情報を、乗客および/または指令室や駅員など鉄道の外部にいる人に対して送信してもよい。この操作内容には、加速、減速、ドア開閉といった通常の操作のほか、警笛の発報など乗客の安全にかかわる操作も含まれる。
【0045】
図5に示す管理装置100Aは、車両C1に設けられる、本発明の他の実施例に係る管理装置である。以下、
図2に示す管理装置100と異なる部分を中心に説明する。また、同図においては端末装置200等、
図2と同一の構成については捨象している。
取得部150は、鉄道車両900の乗務員(運転士、車掌など)によってなされた操作を示す操作情報を、モニタ装置810から取得する。前記操作情報には、前記鉄道から発せられた警報の発報状況を示す発報情報が含まれてもよい。好ましい態様において、乗客や他の交通に対する安全に関係する情報が操作情報に含まれる。例えば、いつどのような場所でどのような状況で、急制動が行われたのか、警笛その他の周囲に対する警告が発せられたのか、乗客に対する危険回避のための案内が通知されたのかといった情報である。取得した操作情報は記憶部160に記憶される。
【0046】
なお、記憶部160に記憶される情報は、すべてモニタ装置810から取得してもよいしし、当該情報の一部または全部を他の経路から取得してもよい。例えば、あるタイミングで警笛を鳴らすという操作が行われたという情報の場合、警笛が発報された事実および発報の日時、当該発報がなされた場所を示す情報をモニタ装置810から取得してもよいし、警笛が発報された事実および発報タイミングの情報をニタ装置810から取得する一方、当該発報タイミングにおける鉄道車両900の位置を示す情報を測位部140から取得し、これらを対応付けて記憶してもよい。あるいは、例えば音響装置820が警笛を行う機能を備えている場合、警笛が発報された事実、その発報タイミングを音響装置820から取得し、発報が行われた場所についての情報は測位部140から取得する。このようにモニタ装置810を介さずに操作情報を取得する場合、モニタ装置810の有無やその仕様に関係なく、本発明に係るシステムをモニタ装置810と独立して構築することができる。
【0047】
記憶部160には、後述するテーブルTBL1、TBL2、TBL3、データベースDB1が記憶され、出力制御部130によって適宜参照される。
【0048】
出力制御部130は、該取得した操作情報に基づいて、通知を行うタイミング、通知の内容ないし態様、通知先、のうち少なくともいずれか一つを決定する。
具体的には、出力制御部130は、
図6に示すテーブルTBL1を参照して、モニタ装置810から取得した操作内容に対応して実行すべき通知制御を決定する。
図6は、操作内容と実行すべき通知制御の内容とを対応付けて定義したものである。
【0049】
同図の例では、危険度1の急制動(比較的軽い急制動とする)が行われた警笛の発報が行われていないという操作情報をモニタ装置810から取得すると、出力制御部130は、車内のすべての乗客に対し、予め用意された「急ブレーキに注意してください」という音声アナウンスを通常の音量レベルで放音するという制御を行うことを決定し、この決定に基づいて情報処理部120を制御する。この結果、車内放送用スピーカ841から上記音声アナウンスが流れるので、急ブレーキによって乗客が転倒その他のケガをする可能性が減少する。
一方、レベル2(比較的強い急制動)が行われたという情報を取得した場合は、出力制御部130は、「急ブレーキを掛けます。しっかりとつかまってください」という音声アナウンスが大きな音量で車内放送用スピーカ841から流れるとともに、同一内容のテキスト情報が車内ディスプレイ850にて表示されるように、情報処理部120を制御する。
一方、乗客の安全に直結するようなインシデントではないが、例えば線路脇に作業員がいたことにより急制動は行う必要はなかったものの、作業員に注意を促すために運転士が警笛を発報したような場合、乗客に対しては特に通知は行わない一方、運航管理等の観点から、指令室に対しては警笛が発報されたという情報が送信される。
また急制動の実施と警笛の発砲の両方が行われた場合は、深刻なインシデントが発生したと推定できるから、乗客ないし車両900の周囲にいる者への安全を図るべく、乗客に対してアナウンスを行うとともに、そのインシデントの発生を指令室に通知する。
【0050】
このように、乗務員自らが状況を判断してアナウンスを行うのではなく、自動的に、操作状況に応じて適切な通知を必要な相手に迅速に行うことができるので、乗務員の負担を軽減しつつ乗客の安全性が向上する。
なお、急制動の有無や警笛発報の有無は、取得される操作内容の一例であり、例えば制動が行われた場合における(加速度の大きさやその時間変化)や、具体的な警報の内容(警笛の長さや回数)といった、より細かい情報が含まれていてもよい。
【0051】
あるいは、取得した操作情報に基づいて通知を出すタイミングをさらに制御してもよい。例えば、安全に関係する操作が発生したら即座に通知制御を行うのではなく、所定の条件が満たされるまで一定期間通知を保留してもよい。あるいは、急制動その他の操作が行われる可能性を、過去に行われた乗務員の操作から予測し、そのような事態が発生する蓋然性が一定以上ある場合に、当該操作が実際に行われる前に(換言すると、そのようなインシデントが実際に発生する前)に、通知を行ってもよい。
以下、
図7~
図10を用いて、当該通知を行うため具体的な仕組みについて説明する。
【0052】
記憶部160は、
図7のデータベースDB1に示すように、急制動や警報等の予め規定した操作内容を検知した場合に、そのインシデントとの発生日時、発生場所、その他の不随情報(天候、混雑率、その他、発生と因果関係がありそうな情報)を対応付けておく。
一方、
図8に示すテーブルTBL3のように、操作内容とその危険度とを定義しておく。
そして、データベースDB1とテーブルTBL3の情報に基づいて、テーブルTBL4に示すように、インシデントの発生条件(場所、日時その他)を定義するとともに、発生条件ごとに、発生した場合の危険度を定義しておく。なお、危険度とインシデントの発生条件とは必ずしも1対1に対応している必要はない。
【0053】
出力制御部130は、所定のアルゴリズムに基づいて、モニタ装置810や140等から取得した操作情報または運行情報が、
図9に示すテーブルTBL4にて規定されているインシデント発生条件に該当するか否かを判定し、該当する場合にはテーブルTBL4を参照してその危険度(現在の危険度ないし将来の危険度)を決定する。そして、出力制御部130は、
図10に示すテーブルTBL2を参照し、特定した危険度に対応する通知制御を実行する。
【0054】
同図の例では、例えば今から1分後に危険度1の状態になると出力制御部130が判定した場合、まずは待機し、この状態が予め設定された期間継続した場合に車内音声アナウンス「念のため急ブレーキに注意してください」という音声アナウンスを実行すると決定する。
あるいは、急制動が行われる可能性が高いと推定される地点にあと1分で到達すると予測される場合(実際に急ブレーキが行われた場合は危険度2に該当すると予測したとする;つまり1分後に危険度2のインシデント発生条件が満たされると予測される場合)、当該地点到達の10秒前に、乗客に対して「念のため急ブレーキに注意してください」といった音声アナウンスを流すことを決定する。
また、出力制御部130が現在または将来において危険レベル3または4(重大なインシデント発生が懸念される)と判定した場合、「急ブレーキを掛けます。しっかりとつかまって下さい」という車内音声アナウンスを流すとともに同内容のテキスト情報を表示する制御を即座に実行すると決定する。
【0055】
このように、乗務員の過去の操作内容からインシデントの発生予測し、予測に基づいて通知を行うことで、乗客や指令室等の情報の受け手に余裕をもって対応する余裕を与えることができ、この結果、安全性がさらに向上する。
【0056】
現在または過去の取得した操作内容に基づいて、実行すべき通知制御の内容を決定するに際し、予め用意されたテーブル形式のデータを参照する以外の任意のアルゴリズムを採用することができる。例えば、過去の操作内容(および運行に関連する状況)と発生する危険度(あるいは行うべき通知制御内容)を学習した学習モデルを生成し、モニタ装置810や測位部140等から取得した操作情報および/または運行状況をこの学習モデルに入力して実行すべき通知制御内容を決定してもよい。要するに、過去に行われた操作情報に基づいて、現在または将来の危険性を判定し、判定結果に応じた通知制御を行えばよい。
【0057】
要するに、本発明に係る鉄道車両用通信システムは、複数の車両から編成される鉄道に搭載され、一の車両に設けられた管理装置と、各車両に設けられる複数の端末装置とを有し、前記管理装置は、少なくとも一の端末装置へ音声制御信号および映像制御信号を送信する送信手段と、少なくとも一の端末装置から非常通報情報REを受信する受信手段と、該受信した非常通報情報を、前記一の車両内に設けられた設備、および前記鉄道の外部に設置された装置のうち少なくともいずれかへ出力する出力手段とを有し、各端末装置は、前記管理装置から送出された制御信号を他の端末装置に送信する一方、自車両に設けられた非常通報装置から供給された非常通報情報および他の端末装置から受信した非常通報情報を、前記管理装置へ送信する中継手段と、前記管理装置から供給される制御信号に基づいて、自車両に設けられた、音声通信装置および映像表示装置を制御する制御手段とを有していればよい。
【符号の説明】
【0058】
10・・・通信システム、100・・・管理装置、110・・・通信部、111・・・送信部、112・・・受信部、120・・・情報処理部、121・・・音声処理部、122・・・映像処理部、123・・・非常通報処理部、130・・・出力制御部、140・・・測位部、150・・・取得部、160・・・記憶部、200・・・端末装置、210・・・制御部、220・・・中継部、221・・・受信部、222・・・送信部、810・・・モニタ装置、820・・・音響装置、830・・・非常通報装置、840・・・スピーカシステム、841・・・車内放送用スピーカ、842・・・車外放送用スピーカ、850・・・車内ディスプレイ、860・・・カメラシステム、861・・・車内撮影用カメラ、862・・・車外撮影用カメラ、910・・・指令所サーバ、920・・・関係機関の管理センタ、930・・・通信網