(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088482
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/879 20180101AFI20240625BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240625BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B60N2/879
A47C7/38
A47C7/74 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203682
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高月 涼太
(72)【発明者】
【氏名】ド・ヴァン・コン
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 まり乃
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA01
3B084JF02
3B087AA02
3B087DC10
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑制し、効果的に乗員の体感温度を調整することが可能となるヘッドレスト及び車両用シートを得る。
【解決手段】サポート部材24には、面状ヒータ48が設けられており、面状ヒータ48は、サポート部材24が展開された状態で通電によって加熱される。このため、サポート部材24が展開された状態で面状ヒータ48が加熱されるため、サポート部材24が展開されていないにも拘わらず、面状ヒータ48を加熱させる場合と比較して、消費電力を削減することが可能となる。また、着座乗員Pの頸部P2を支持するサポート部材24に面状ヒータ48を設けることによって、着座乗員Pの体感温度を効果的に変化させることが可能となり、結果的に消費電力を削減することが可能となる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレスト本体と、
前記ヘッドレスト本体に対して格納及び展開可能とされ、格納された状態で当該ヘッドレスト本体の下部を構成し、展開された状態でシート前後方向の前方側へ向かって突出して前記着座乗員の頸部に当接可能とされ、前記頸部をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する頸部支持部と、
前記頸部支持部に設けられ、前記頸部支持部が展開された状態で手動又は自動による通電によって加熱又は冷却、或いは加熱と冷却の選択が可能な温感部材と、
を備えたヘッドレスト。
【請求項2】
前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置がさらに設けられ、
前記制御装置は、前記頸部支持部が展開されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
前記温感部材は、通電により加熱される面状ヒータとされている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項4】
前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、
前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部が展開された状態が検知可能なリミットスイッチと、
を備え、
前記制御装置は、前記リミットスイッチにより前記頸部支持部が展開されたことが検知されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項5】
前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、
前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部に対して前記着座乗員の頸部が当接している状態が検知可能な静電容量式センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記静電容量式センサにより前記頸部支持部に前記着座乗員の頸部が当接していることが検知されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項6】
前記頸部支持部を格納及び展開可能な駆動モータをさらに備えている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項7】
前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、
前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部を格納及び展開可能な駆動モータと、
を備え、
前記制御装置は、前記駆動モータに予め設定された所定値以上の負荷が作用すると、当該駆動モータの駆動を停止させると共に、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている請求項6に記載のヘッドレスト。
【請求項8】
請求項1~請求項7の何れか1項に記載のヘッドレストと、
着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、
前記着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、乗員の着座姿勢を考慮し、乗員に対して、より快適な室内環境を提供する乗物用のシートに関する技術が開示されている。この先行技術では、シート本体部の表面を冷却若しくは加熱又は換気する温感調節装置と、乗員がシート本体部に着座することで当該シート本体部に加わる圧力の分布である座圧分布を計測可能な着座センサと、温感調節装置を制御する制御装置と、を備え、乗員の体格に応じた空調制御を行うことで乗員により快適な空間を提供するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術におけるヘッドレストでは、後頭部による接触の有無を含め後頭部との位置関係により温感調節装置による強弱が設定され、後頭部がヘッドレストから離れている状態では、一例として温感調節装置による風量が強に設定され、この場合、消費電力が増加してしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、消費電力を抑制し、効果的に乗員の体感温度を調整することが可能となるヘッドレスト及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係るヘッドレストは、着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレスト本体と、前記ヘッドレスト本体に対して格納及び展開可能とされ、格納された状態で当該ヘッドレスト本体の下部を構成し、展開された状態でシート前後方向の前方側へ向かって突出して前記着座乗員の頸部に当接可能とされ、前記頸部をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する頸部支持部と、前記頸部支持部に設けられ、前記頸部支持部が展開された状態で手動又は自動による通電によって加熱又は冷却、或いは加熱と冷却の選択が可能な温感部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係るヘッドレストでは、ヘッドレスト本体、頸部支持部及び温感部材が備わっている。頸部支持部は、着座乗員の頭部をシート後方側から支持するヘッドレスト本体に対して格納及び展開可能とされており、格納された状態で当該ヘッドレスト本体の下部を構成している。
【0008】
また、頸部支持部は、展開された状態でシート前後方向の前方側へ向かって突出して着座乗員の頸部に当接可能とされており、着座乗員の頸部に当接した状態で、着座乗員の頸部をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する。
【0009】
さらに、頸部支持部には、温感部材が設けられており、当該温感部材は、頸部支持部が展開された状態で、手動又は自動による通電によって加熱又は冷却、或いは加熱と冷却の選択が可能とされている。
【0010】
すなわち、本態様では、頸部支持部が展開されると、当該頸部支持部はシート前後方向の前方側へ向かって突出して着座乗員の頸部に当接し、当該頸部をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する。
【0011】
このように、頸部支持部が展開された状態で温感部材が加熱又は冷却可能とされる。このため、例えば、頸部支持部が展開されていないにも拘わらず、温感部材が加熱又は冷却される場合と比較して、本態様では、消費電力を削減することが可能となる。
【0012】
ここで、頸部の近傍には頸動脈が設けられており、頸動脈は他の血管よりも太い血管である。このため、頸動脈を加熱又は冷却することで、細い血管が集まる他の部位を加熱又は冷却する場合よりも体感温度を上げる又は下げることが可能となる。
【0013】
つまり、本態様では、着座乗員の頸部を支持する頸部支持部に温感部材を設けることによって、着座乗員の体感温度を効果的に変化させることが可能となり、結果的に消費電力を削減することが可能となる。
【0014】
また、本態様では、頸部支持部が展開された状態で、温感部材は、手動又は自動による通電によって加熱又は冷却可能とされている。したがって、温感部材において、自動による通電の場合、頸部支持部が展開されると温感部材は加熱又は冷却されるが、手動による通電の場合は、頸部支持部が展開されただけでは温感部材は通電されないため、頸部支持部が展開された状態でスイッチ等により別途温感部材を通電させる必要がある。
【0015】
なお、本態様における「温感部材」は、熱、温、冷、寒等に対する感覚を得ることが可能な部材のことを称する。
【0016】
第2の態様に係るヘッドレストは、第1の態様に係るヘッドレストにおいて、前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置がさらに設けられ、前記制御装置は、前記頸部支持部が展開されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている。
【0017】
第2の態様に係るヘッドレストでは、温感部材を通電状態に切り替える制御装置が温感部材と電気的に接続されており、頸部支持部が展開されると、当該制御装置によって、温感部材が自動的に通電状態に切り替えられる。つまり、頸部支持部が展開されると、温感部材は加熱又は冷却される。
【0018】
第3の態様に係るヘッドレストは、第1の態様又は第2の態様に係るヘッドレストにおいて、前記温感部材は、通電により加熱される面状ヒータとされている。
【0019】
第3の態様に係るヘッドレストでは、温感部材は、通電により加熱される面状ヒータとされ、頸部支持部が展開された状態で、手動又は自動による通電によって面状ヒータが加熱可能とされる。
【0020】
第4の態様に係るヘッドレストは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係るヘッドレストにおいて、前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部が展開された状態が検知可能なリミットスイッチと、を備え、前記制御装置は、前記リミットスイッチにより前記頸部支持部が展開されたことが検知されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている。
【0021】
第4の態様に係るヘッドレストでは、制御装置及びリミットスイッチを備えており、制御装置とリミットスイッチは電気的に接続されている。そして、リミットスイッチによって、頸部支持部が展開された状態が検知可能としており、当該リミットスイッチにより頸部支持部が展開されたことが検知されると、制御装置により温感部材が通電状態に切り替えられる。つまり、頸部支持部が展開されると、制御装置により温感部材が加熱又は冷却される。
【0022】
第5の態様に係るヘッドレストは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係るヘッドレストにおいて、前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部に対して前記着座乗員の頸部が当接している状態が検知可能な静電容量式センサと、を備え、前記制御装置は、前記静電容量式センサにより前記頸部支持部に前記着座乗員の頸部が当接していることが検知されると、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている。
【0023】
第5の態様に係るヘッドレストでは、制御装置及び静電容量式センサを備えており、制御装置と静電容量式センサは電気的に接続されている。そして、静電容量式センサにより頸部支持部に対して着座乗員の頸部が当接している状態が検知可能としており、当該静電容量式センサにより頸部支持部に着座乗員の頸部が当接していることが検知されると、制御装置により温感部材が通電状態に切り替えられる。つまり、頸部支持部が着座乗員の頸部に当接すると、制御装置により温感部材は加熱又は冷却される。
【0024】
第6の態様に係るヘッドレストは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係るヘッドレストにおいて、前記頸部支持部を格納及び展開可能な駆動モータをさらに備えている。
【0025】
第6の態様に係るヘッドレストでは、駆動モータにより頸部支持部を自動で格納及び展開させるように設定されている。例えば、操作スイッチを操作すると、駆動モータが駆動し、頸部支持部が格納及び展開される。
【0026】
第7の態様に係るヘッドレストは、第1の態様~第6の態様の何れか1の態様に係るヘッドレストにおいて、前記温感部材と電気的に接続され、当該温感部材を通電状態に切り替える制御装置と、前記制御装置と電気的に接続され、前記頸部支持部を格納及び展開可能な駆動モータと、を備え、前記制御装置は、前記駆動モータに予め設定された所定値以上の負荷が作用すると、当該駆動モータの駆動を停止させると共に、前記温感部材を通電状態に切り替えるように設定されている。
【0027】
第7の態様に係るヘッドレストでは、制御装置及び駆動モータを備えており、制御装置と駆動モータは電気的に接続されている。そして、駆動モータに予め設定された所定値以上の負荷が作用すると、制御装置によって、当該駆動モータの駆動が停止されると共に、温感部材が通電状態に切り替えられる。
【0028】
すなわち、駆動モータが駆動し、頸部支持部が着座乗員の頸部に当接し、駆動モータに所定値以上の負荷が作用すると、制御装置により、駆動モータの駆動が停止すると共に、温感部材が加熱又は冷却される。
【0029】
第8の態様に係る車両用シートは、請求項1~請求項7の何れか1項に記載のヘッドレストと、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッションと、前記着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバックと、を備えている。
【0030】
請求項8に記載の車両用シートでは、請求項1~請求項7の何れか1項に記載のヘッドレストを用いたことによって得られる効果を享受することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートは、消費電力を抑制し、効果的に乗員の体感温度を調整することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部が格納された状態を示す車両用シートの上部を示す左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部が展開された状態を示す車両用シートの上部を示す左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図3】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の移動機構を示す頸部支持部が格納された状態の断面図である。
【
図4】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の移動機構を示す頸部支持部が展開された状態の断面図である。
【
図5】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の移動機構を示す頸部支持部が格納及び展開された状態の断面図である。
【
図6】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部が格納された状態を示す断面図である。
【
図7】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部が展開された状態を示す断面図である。
【
図8】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の構成を示す断面図である。
【
図9】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図10】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の変形例を示す
図2に対応する斜視図である。
【
図11】本実施形態に係るヘッドレストの頸部支持部の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るヘッドレストを備えた車両用シートについて説明する。なお、以下の説明において前後左右上下の方向を示して説明するときは、車両用シートに着座した乗員から見た前後左右上下の方向を示すものとし、また各図に適宜示す矢印FRは前方向、矢印UPは上方向、矢印RHは右方向をそれぞれ示すものとする。また、左右の方向は、シート幅方向と一致している。
【0034】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、図示はしないが、着座乗員の臀部をシート下方側から支持するシートクッション(図示省略)と、着座乗員の背部をシート後方側から支持するシートバック12と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト(ヘッドレスト本体)14と、を備えている。
【0035】
(ヘッドレストの構成)
ここで、本実施形態に係るヘッドレスト14の構成について説明する。
【0036】
図3に示されるように、ヘッドレスト14は、骨格部材とされたヘッドレストステー16と、ウレタンフォーム等の発泡剤によって形成され弾性変形可能なヘッドレストパッド18と、ヘッドレストパッド18の表面を被覆し意匠面を構成しファブリック、レザー等によって形成されたヘッドレスト表皮20と、を含んで構成されている。
【0037】
本実施形態では、
図1、
図2に示されるように、ヘッドレスト14は、シート正面視で略台形状を成しており、ヘッドレスト本体部22とサポート部材(頸部支持部)24とを含んで構成されている。ヘッドレスト本体部22は、シート幅方向の両端部を残しその内側ではシート後方側へ向かって凹む凹部23が形成されている。
【0038】
凹部23は、シート幅方向に沿って切断したときの断面形状において、シート幅方向の中央部がシート幅方向沿って略直線状に形成されると共に、シート幅方向の両端部がシート幅方向の外側へ向かうにつれてシート前方側へ向かって円弧状に突出して形成されている。
【0039】
また、凹部23は、シート上下方向に沿って切断したときの断面形状において、シート上下方向の下部側へ向かうにつれてシート前後方向の前方側へ向かって傾斜している。当該凹部23によって、着座乗員Pの頭部P1がシート後方側から支持されると共に、シート左右方向からも支持可能とされる。
【0040】
一方、サポート部材24は、ヘッドレスト本体部22の下部に設けられており、ヘッドレスト本体部22よりも硬質なパッドを用いて形成されている。ヘッドレスト本体部22にはシート幅方向を長手方向として略直方体状を成す格納凹部26が形成されており、当該格納凹部26に対してサポート部材24が格納及び展開可能とされている。
【0041】
サポート部材24は、シート幅方向を長手方向として略直方体状を成しており、サポート部材24の角部は角丸めされている。そして、サポート部材24が格納凹部26に対して格納された格納状態で、サポート部材24は、ヘッドレスト14における下部を構成している。
【0042】
ここで、当該サポート部材24を格納及び展開させるサポート部材24の移動機構25の一例について簡単に説明する。
【0043】
図3に示されるように、ヘッドレスト本体部22内に設けられたヘッドレストステー16には、ブラケット28が固定されており、ブラケット28には正逆回転可能な駆動モータ27(
図9参照)が配設されている。
図9に示されるように、駆動モータ27は、制御装置52と電気的に接続されており、図示しないアームレスト、ドアトリム等に設けられた操作スイッチ29を操作すると、制御装置52を介して、駆動又は駆動停止するように設定されている。
【0044】
当該駆動モータ27には、シート幅方向に沿って配置された軸部30(
図3参照)が連結されており、
図3に示されるように、軸部30には、回動アーム32が固定され、駆動モータ27の駆動により回動アーム32が回動可能とされる。
【0045】
また、ヘッドレスト本体部22内には、軸部34が設けられており、軸部34にはセクタギア36が固定されている。このセクタギア36の歯部は、シート前方側へ向かうにつれてシート下方側へ向かって形成されている。
【0046】
また、軸部34には、回動アーム38が回動可能に支持されており、当該回動アーム38は回動アーム32と一体に回動可能とされている。回動アーム32には、セクタギア36と噛合する異形状のギア40が設けられており、回動アーム32の自由端部にはピン42が設けられている。
【0047】
ところで、サポート部材24の背面24Aには、シート幅方向に並ぶ一対の支持アーム44が設けられている。この支持アーム44は、シート後方側へ向かって延出されており、支持アーム44の後端部には当該ピン42が挿通されている。このピン42を中心に支持アーム44は回動アーム32に対して回動可能とされている。
【0048】
以上のような構成により、
図4、
図5に示されるように、例えば、駆動モータ27(
図9参照)が正回転すると、軸部30は回転し、これに伴って、回動アーム32が回動して、回動アーム32と一体に回動アーム38が回動する。これにより、回動アーム32に設けられたギア40がセクタギア36に沿って公転移動する。
【0049】
一方、回動アーム32には、支持アーム44が回動可能に設けられている。ギア40の公転移動に伴い、支持アーム44がピン42を中心に回動アーム32に対して回動し、サポート部材24はシート前後方向の前方側へ向かって突出する。つまり、サポート部材24は、2つの軸部30、34によって移動軌跡が形成されている。これにより、ヘッドレスト本体部22との干渉が回避されるようになっている。
【0050】
ここで、
図1に示されるように、サポート部材24は、格納された状態で、シート幅方向に沿って切断した断面で見たとき、シート幅方向の両端部が迫り上がるようにして形成されている。つまり、サポート部材24の表面は、シート幅方向の中央部がシート幅方向の両端部よりもシート後方側となるように凹設された凹曲面46とされている。
【0051】
また、サポート部材24は、シート上下方向に沿って切断した断面で見たとき、シート上下方向の下部側の方が上部側よりも肉厚に形成され、シート上下方向の下部側へ向かうにつれてシート前後方向の前方側へ向かって突出している。つまり、当該凹曲面46は、シート上下方向の下部側へ向かうにつれてシート前後方向の前方側へ向かって傾斜している。
【0052】
以上のような形状を成すサポート部材24が展開されると、
図2、
図7に示されるように、サポート部材24の凹曲面46が着座乗員Pの頸部P2に当接し、当該頸部P2をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する。
【0053】
ここで、本実施形態では、
図8に示されるように、サポート部材24の凹曲面46に沿って面状ヒータ(温感部材)48が配設されている。面状ヒータ48は、通電により発熱するように設定されており、サポート部材24が展開された状態で通電可能とされる。
【0054】
例えば、本実施形態では、ヘッドレスト本体部22側にリミットスイッチ50及び制御装置52が配設されている。リミットスイッチ50と制御装置52は電気的に接続されており、リミットスイッチ50によりサポート部材24が展開又は格納されたことが検知されると、制御装置52によって、自動的に面状ヒータ48が通電状態(以下、「通電がオン状態」等と称する)か非通電状態「以下、「通電がオフ状態」等と称する)に切り替えられるように設定されている。
【0055】
簡単に説明すると、サポート部材24がヘッドレスト本体部22の格納凹部26内に格納された状態では、サポート部材24の背面24Aが当該格納凹部26の前面26Aに当接する。これにより、リミットスイッチ50では、サポート部材24が格納された状態が検知され、制御装置52によって、面状ヒータ48の通電がオフ状態となるように設定される。
【0056】
一方、図示はしないが、サポート部材24が展開された状態では、サポート部材24の背面24Aはヘッドレスト本体部22の格納凹部26の前面26Aから離間する。これにより、リミットスイッチ50では、サポート部材24が展開された状態が検知され、制御装置52によって、面状ヒータ48の通電はオン状態とされる。つまり、面状ヒータ48が加熱されることになる。
【0057】
(ヘッドレストの作用及び効果)
次に、本実施形態に係るヘッドレスト14の作用及び効果について説明する。
【0058】
本実施形態では、
図6~
図8に示されるように、ヘッドレスト14は、ヘッドレスト本体部22、サポート部材24を備えており、サポート部材24には面状ヒータ48が設けられている。サポート部材24は、着座乗員Pの頭部P1をシート後方側から支持するヘッドレスト本体部22に対して格納及び展開可能とされており、格納された状態でヘッドレスト14における下部を構成している。
【0059】
そして、
図2、
図7に示されるように、サポート部材24は、展開された状態でシート前後方向の前方側へ向かって突出して着座乗員Pの頸部P2に当接可能とされ、着座乗員Pの頸部P2をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持する。
【0060】
このように、着座乗員Pの頭部P1をシート後方側から支持し、かつ着座乗員Pの頸部P2をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持することによって、着座乗員Pはリラックスできると共に、着座乗員Pの頭部P1の揺動が効果的に抑制され、当該着座乗員Pの乗り物酔いが抑制される。
【0061】
また、サポート部材24には、面状ヒータ48が設けられており、面状ヒータ48は、サポート部材24が展開された状態で通電によって加熱される。
【0062】
このように、本実施形態では、サポート部材24が展開された状態で面状ヒータ48が加熱されるため、サポート部材24が展開されていないにも拘わらず、面状ヒータ48を加熱させる場合と比較して、消費電力を削減することが可能となる。
【0063】
ここで、頸部P2の近傍には、頸動脈が設けられており、頸動脈は他の血管よりも太い血管である。このため、この頸動脈を加熱することで、細い血管が集まる他の部位を加熱する場合よりも体感温度を効果的に上げることが可能となる。つまり、本実施形態では、着座乗員Pの頸部P2を支持するサポート部材24に面状ヒータ48を設けることによって、着座乗員Pの体感温度を効果的に変化させることが可能となり、結果的に消費電力を削減することが可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、ヘッドレスト本体部22側にリミットスイッチ50及び制御装置52が配設されており、リミットスイッチ50と制御装置52は電気的に接続されている。そして、リミットスイッチ50によりサポート部材24が展開されたことが検知されると、制御装置52によって自動的に面状ヒータ48の通電がオン状態に切り替えられる。また、サポート部材24が格納されたことが検知されると、制御装置52によって自動的に面状ヒータ48の通電がオフ状態に切り替えられるように設定されている。
【0065】
このように、本実施形態では、サポート部材24の展開/格納に応じて自動的に面状ヒータ48がオン/オフされるため、サポート部材24を使用するユーザにとっては便利である。
【0066】
なお、本実施形態では、サポート部材24の展開/格納に応じて制御装置52により自動的に面状ヒータ48がオン/オフされるように設定されているが、これに限るものではない。
【0067】
例えば、面状ヒータ48をオフ状態にする際は、手動で行われるように設定されてもよい。これにより、サポート部材24が展開された状態であり、かつ面状ヒータ48がオフ状態であるという選択が可能となる。
【0068】
また、本実施形態では、リミットスイッチ50によって、サポート部材24が展開された状態が検知されると、制御装置52によって、面状ヒータ48の通電はオン状態とされるように設定されているが、これに限るものではない。
【0069】
例えば、駆動モータ27(
図9参照)に予め設定された所定値以上の負荷が作用すると、制御装置52によって、当該駆動モータ27の駆動が停止されると共に、面状ヒータ48の通電がオン状態とされるように設定されてもよい。つまり、サポート部材24が着座乗員Pの頸部P2に当接し、駆動モータ27に所定値以上の負荷が作用すると、駆動モータ27の駆動が停止すると共に、面状ヒータ48が加熱されるように設定されてもよい。
【0070】
また、本実施形態では、サポート部材24の展開及び格納の検知方法において、リミットスイッチ50が用いられているが、これに限るものではない。例えば、
図9に示されるように、静電容量式センサ54等が用いられてもよい。
【0071】
さらに、本実施形態では、面状ヒータ48の通電において、制御装置52により制御されるように設定されているが、手動により、面状ヒータ48の通電のオン/オフが行われるように設定されてもよいのは勿論のことである。
【0072】
なお、
図7に示されるように、サポート部材24は、シート前後方向の前方側へ向かって突出して着座乗員Pの頸部P2に当接可能とされればよいため、サポート部材24の移動機構25についてはこれに限るものではない。本実施形態では、サポート部材24は駆動モータ27(
図9参照)により移動可能としているが、手動による移動であってもよいのは勿論のことである。
【0073】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、サポート部材24は、展開するときシート前方かつ斜め下方側に移動している。サポート部材24の凹曲面46が着座乗員Pの頸部P2に当接し、当該頸部P2をシート左右方向から支持すると共にシート後方からシート前方かつシート斜め上方向に向けて支持することができればよいため、サポート部材24の移動軌跡はこれに限るものではない。
【0074】
例えば、変形例として、
図10、
図11に示されるように、サポート部材100がヘッドレスト本体部102の下端部に設けられた軸部104を中心に回動可能となるように構成されてもよい。なお、この場合、サポート部材100は、着座乗員Pの頸部P2に当接する凹曲面46以外の部位については、ヘッドレスト本体部102との干渉が回避されるように形成される。上記実施形態における部材と同じ部材については同じ符号を付している。
【0075】
さらに、本実施形態では、
図8に示されるように、サポート部材24には面状ヒータ48が設けられ、サポート部材24を加熱可能としているが、これに限るものではない。例えば、クーラを用いて冷却可能としてもよいし、ペルチェ素子等を用いてヒータ又はクーラの切り替えが可能となるようにしてもよい。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
10 車両用シート
12 シートバック
14 ヘッドレスト(ヘッドレスト本体)
22 ヘッドレスト本体部
24 サポート部材(頸部支持部)
25 移動機構
27 駆動モータ
48 面状ヒータ(温感部材)
50 リミットスイッチ
52 制御装置
54 静電容量式センサ
100 サポート部材(頸部支持部)
102 ヘッドレスト本体部
P 着座乗員
P1 頭部
P2 頸部