(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088484
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水質分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/49 20060101AFI20240625BHJP
G01N 21/05 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G01N21/49 A
G01N21/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203687
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュレスタ ソミ
(72)【発明者】
【氏名】田原 雅哉
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB03
2G057AB06
2G057AB07
2G057AC01
2G057BA05
2G057DB05
2G057DC07
2G057JA16
2G059AA05
2G059BB05
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE11
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH03
2G059NN01
2G059NN07
(57)【要約】
【課題】水質分析装置においては、接液容器内部の汚れによる散乱光の影響を防ぐとともに、メンテナンスが容易であることが好ましい。
【解決手段】測定対象水に含まれる測定対象物質の濃度を測定する水質分析装置であって、測定対象水が通流する内部空間を有し、照射光窓、検出光窓および透過光窓が設けられた接液容器と、照射光窓から接液容器の内部空間に向けて照射光を照射する位置に設けられた照射光学系と、検出光窓から射出する検出光を検出する位置に設けられた検出光検出光学系と、透過光窓から射出する透過光を検出する位置に設けられた透過光検出光学系と接液容器の内部において、照射光窓と検出光窓とを結ぶ直線および検出光窓と透過光窓とを結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられた遮光ブロックとを備え、遮光ブロックは、接液容器から着脱可能である水質分析装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象水に含まれる測定対象物質の濃度を測定する水質分析装置であって、
前記測定対象水が通流する内部空間を有し、照射光窓、検出光窓および透過光窓が設けられた接液容器と、
前記照射光窓から前記接液容器の前記内部空間に向けて照射光を照射する位置に設けられた照射光学系と、
前記検出光窓から射出する検出光を検出する位置に設けられた検出光検出光学系と、
前記透過光窓から射出する透過光を検出する位置に設けられた透過光検出光学系と
前記接液容器の内部において、前記照射光窓と前記検出光窓とを結ぶ直線および前記検出光窓と前記透過光窓とを結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられた遮光ブロックと
を備え、
前記遮光ブロックは、前記接液容器から着脱可能である
水質分析装置。
【請求項2】
前記遮光ブロックは、
前記照射光窓と前記透過光窓とを結ぶ透過光路を挟んで設けられた第1壁部および第2壁部と、
前記透過光路から分岐して前記検出光窓に向かう検出光路を挟んで設けられた第1壁面および第2壁面と
を有する請求項1に記載の水質分析装置。
【請求項3】
前記第2壁部は、前記透過光路と前記検出光路とを接続する開口を有し、
前記第1壁面および前記第2壁面は、前記第2壁部の前記開口から前記検出光窓に向かって突出して設けられている
請求項2に記載の水質分析装置。
【請求項4】
前記遮光ブロックは、前記接液容器の前記内部空間における前記測定対象水の通流方向と交差する主面を有する底板を有し、
前記第1壁部、前記第2壁部、前記第1壁面および前記第2壁面は、前記底板の前記主面に設けられている
請求項3に記載の水質分析装置。
【請求項5】
前記底板の前記主面には、貫通穴が設けられている
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項6】
前記第1壁部には、貫通穴が設けられていない
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項7】
前記底板の前記主面と直交する第1方向における前記第1壁部の高さは、前記第1方向における前記照射光の直径よりも大きい
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項8】
前記底板の前記主面と直交する第1方向における前記第2壁部の高さは、前記第1方向における前記第1壁部の高さよりも大きい
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項9】
前記照射光窓と前記透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、前記底板の前記主面と平行な第3方向において、前記第1壁部および前記第2壁部の少なくとも一方の幅は、前記透過光路の幅よりも大きい
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項10】
前記遮光ブロックは一体の部品である
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項11】
前記照射光窓と前記透過光窓とを結ぶ第2方向における前記底板の両端には切り欠きが設けられている
請求項4から10のいずれか一項に記載の水質分析装置。
【請求項12】
前記接液容器の壁部には、前記接液容器の内部から外側に向かう凹部が形成されており、
前記凹部に前記照射光窓、前記検出光窓または前記透過光窓のいずれかが配置されている
請求項1から10のいずれか一項に記載の水質分析装置。
【請求項13】
前記照射光窓と前記透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、前記底板の前記主面と平行な第3方向において、前記透過光路の幅は、前記照射光窓の幅よりも小さい
請求項4に記載の水質分析装置。
【請求項14】
前記照射光窓と前記透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、前記底板の前記主面と平行な第3方向において、前記透過光路の幅は、前記貫通穴の直径よりも小さい
請求項5に記載の水質分析装置。
【請求項15】
前記第1壁部および前記第2壁部の前記透過光路に面している部分の反射特性と、前記第1壁面および前記第2壁面の反射特性が異なる
請求項2に記載の水質分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料水の水質を分析する水質分析装置において迷光の影響を防ぐため、遮光板を設ける構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2010-60364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
水質分析装置においては、接液容器内部の汚れによる散乱光の影響を防ぐとともに、メンテナンスが容易であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、測定対象水に含まれる測定対象物質の濃度を測定する水質分析装置を提供する。水質分析装置は、接液容器を備えてよい。接液容器は、測定対象水が通流する内部空間を有してよい。上記いずれかの水質分析装置において、接液容器には、照射光窓、検出光窓および透過光窓が設けられてよい。上記いずれかの水質分析装置は、照射光学系を備えてよい。上記いずれかの水質分析装置において、照射光学系は、接液容器の内部空間に向けて照射光を照射する位置に設けられてよい。上記いずれかの水質分析装置は、検出光検出光学系を備えてよい。上記いずれかの水質分析装置において、検出光検出光学系は、検出光窓から射出する検出光を検出する位置に設けられてよい。上記いずれかの水質分析装置は、透過光検出光学系を備えてよい。上記いずれかの水質分析装置において、透過光検出光学系は、透過光窓から射出する透過光を検出する位置に設けられてよい。上記いずれかの水質分析装置は、遮光ブロックを備えてよい。上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは、接液容器の内部において、照射光窓と検出光窓とを結ぶ直線および検出光窓と透過光窓とを結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられてよい。上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは、接液容器から着脱可能であってよい。
【0005】
上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは、照射光窓と透過光窓とを結ぶ透過光路を挟んで設けられた第1壁部および第2壁部を有してよい。上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは、透過光路から分岐して検出光窓に向かう検出光路を挟んで設けられた第1壁面および第2壁面を有してよい。
【0006】
上記いずれかの水質分析装置において、第2壁部は、透過光路と検出光路とを接続する開口を有してよい。上記いずれかの水質分析装置において、第1壁面および第2壁面は、第2壁部の開口から検出光窓に向かって突出して設けられてよい。
【0007】
上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは、接液容器の内部空間における測定対象水の通流方向と交差する主面を有する底板を有してよい。上記いずれかの水質分析装置において、第1壁部、第2壁部、第1壁面および第2壁面は、底板の主面に設けられてよい。
【0008】
上記いずれかの水質分析装置において、底板の主面には、貫通穴が設けられてよい。
【0009】
上記いずれかの水質分析装置において、第1壁部には、貫通穴が設けられていなくてよい。
【0010】
上記いずれかの水質分析装置において、底板の主面と直交する第1方向における第1壁部の高さは、第1方向における照射光の直径よりも大きくてよい。
【0011】
上記いずれかの水質分析装置において、底板の主面と直交する第1方向における第2壁部の高さは、第1方向における第1壁部の高さよりも大きい。
【0012】
上記いずれかの水質分析装置の照射光窓と透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、底板の主面と平行な第3方向において、第1壁部および第2壁部の少なくとも一方の幅は、透過光路の幅よりも大きくてよい。
【0013】
上記いずれかの水質分析装置において、遮光ブロックは一体の部品であってよい。
【0014】
上記いずれかの水質分析装置において、照射光窓と透過光窓とを結ぶ第2方向における底板の両端には切り欠きが設けられていてよい。
【0015】
上記いずれかの水質分析装置において、接液容器の壁部には、接液容器の内部から外側に向かう凹部が形成されてよい。上記いずれかの水質分析装置において、凹部に照射光窓、検出光窓または透過光窓のいずれかが配置されていてよい。
【0016】
上記いずれかの水質分析装置の照射光窓と透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、底板の主面と平行な第3方向において、透過光路の幅は、照射光窓の幅よりも小さくてよい。
【0017】
上記いずれかの水質分析装置の照射光窓と透過光窓とを結ぶ第2方向と直交し、且つ、底板の主面と平行な第3方向において、透過光路の幅は、貫通穴の直径よりも小さくてよい。
【0018】
上記いずれかの水質分析装置において、第1壁部および第2壁部の透過光路に面している部分の反射特性と、第1壁面および第2壁面の反射特性が異なっていてよい。
【0019】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る水質分析装置100の一例を示す図である。
【
図2】遮光ブロック40の斜視図の一例を示す図である。
【
図3】遮光ブロック40の展開図の一例を示す図である。
【
図4】比較例における水質分析装置200を示す図である。
【
図5】水質分析装置100の遮光ブロック40による遮光効果を説明する図である。
【
図6】遮光ブロック40の側面図の一例を示す図である。
【
図11】他の実施例における水質分析装置300を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書では、各図における同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、説明の便宜上一部の構成を図示しない場合がある。
【0022】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標系を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標系は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えばZ軸方向は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0023】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る水質分析装置100の一例を示す図である。水質分析装置100は、測定対象水に含まれる測定対象物質の濃度を測定する。本例の水質分析装置100は、接液容器20、照射光学系24、検出光検出光学系28、透過光検出光学系32を備える。接液容器20は、測定対象水が通流する内部空間10を有する。内部空間10は、
図1のZ軸方向に延伸していてよい。本例の測定対象水は、Z軸方向に流れる。
図1では、Z軸と直交するXY断面を示している。
図1では、内部空間10が矩形の断面を有しているが、内部空間10の断面は矩形に限定されない。測定試料水は、例えば上水道水、下水道水、海水、工場等の排水であるが、これに限定されない。
【0024】
水質分析装置100は、測定試料水の流通箇所に接液容器20を直接配置する、または測定対象水を接液容器20に直接引き込み、連続的に測定を行う直接測定方式であってよい。測定試料水の監視や制御が必要とされる場合においては、直接測定方式が用いられることが多い。
【0025】
接液容器20には、照射光窓12、検出光窓14および透過光窓16が設けられている。本例の照射光窓12、検出光窓14および透過光窓16は、接液容器20の内部空間10と、外部との間で光が通過できるように設けられている。以下、照射光窓12、検出光窓14および透過光窓16をまとめて光学窓と称する場合がある。水質分析装置100は、接液容器20の内部に後述する遮光ブロック40を備える。
【0026】
照射光学系24は、接液容器20の外部から、内部空間10の測定試料水に向けて照射光22を照射する。照射光学系24は、光源としてランプまたはLEDなどを備えている。照射光22は例えば紫外光または赤外光である。照射光学系24は、照射光窓12から接液容器20の内部空間10に向けて照射光22を照射する位置に設けられる。測定試料水に照射光22を照射すると、照射光22の一部は、測定対象水に含まれる測定対象物質および懸濁物質にて散乱または吸収され、一部は散乱または吸収されずに透過する。また特定の化学物質が含まれる測定試料水に紫外光等の照射光22を照射すると、化学物質固有の蛍光が発光する。
【0027】
検出光検出光学系28は、測定試料水からの検出光26を検出する。検出光26は散乱光であってよく、蛍光であってよい。検出光検出光学系28は、検出光窓14から射出する検出光26を検出する位置に設けられる。透過光検出光学系32は、測定試料水からの透過光30を検出する。透過光30には蛍光が含まれていてもよい。透過光検出光学系32は、透過光窓16から射出する透過光30を検出する位置に設けられる。検出光検出光学系28および透過光検出光学系32は、フォトダイオードや光電子増倍管などの受光素子を備えており、検出光26および透過光30の強度を検出する。散乱光と蛍光の強度は各物質の濃度に正比例し、透過光は各物質の濃度に負比例するため、精度よく測定対象物質の濃度を算出することが可能となる。以下、検出光検出光学系28および透過光検出光学系32をまとめて検出光学系と称する場合がある。
【0028】
接液容器20の内部には、遮光ブロック40が設けられている。遮光ブロック40には、照射光窓12と透過光窓16とを結ぶ透過光路34が設けられている。透過光路34は、遮蔽物が設けられていない空間である。本例の透過光路34は、直線状の空間である。測定時には、透過光路34は測定対象水で満たされている。本例において照射光22は、透過光路34に照射される。透過光30は、透過光路34を通って透過光検出光学系32に検出される。遮光ブロック40は、透過光路34を挟んで設けられた第1壁部41および第2壁部42を有する。
【0029】
遮光ブロック40は、透過光路34から分岐して検出光窓14に向かう検出光路36を有する。本例の検出光路36は、遮蔽物が設けられていない空間である。本例の検出光路36は、直線状の空間である。測定時には、検出光路36は測定対象水で満たされている。検出光26は、検出光路36を通って検出光検出光学系28に検出される。本例の検出光26は、主に透過光路34および検出光路36が交差する領域で生じた散乱光または蛍光である。遮光ブロック40は、検出光路36を挟んで設けられた第1壁面51および第2壁面52を有してよい。本例の水質分析装置100において、第2壁部42は、透過光路34と検出光路36とを接続する開口38を有し、第1壁面51および第2壁面52は、第2壁部42の開口38から検出光窓14に向かって突出して設けられている。
【0030】
遮光ブロック40は、接液容器20の内部において、照射光窓12と検出光窓14とを結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられてよい。遮光ブロック40は、照射光窓12と検出光窓14とを結ぶことができるすべての直線を遮るように設けられてもよい。遮光ブロック40は、接液容器20の内部において、検出光窓14と透過光窓16を結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられてよい。遮光ブロック40は、検出光窓14と透過光窓16とを結ぶことができるすべての直線を遮るように設けられてもよい。遮光ブロック40は、接液容器20の内部において、照射光窓12と検出光窓14とを結ぶ直線および検出光窓14と透過光窓16を結ぶ直線の少なくとも一部を遮るように設けられてよい。遮光ブロック40は、照射光窓12と検出光窓14とを結ぶ直線および検出光窓14と透過光窓16を結ぶ直線の両方を遮るように設けられてよい。遮光ブロック40は、照射光窓12と検出光窓14とを結ぶことができるすべての直線および検出光窓14と透過光窓16とを結ぶことができるすべての直線を遮るように設けられてよい。本例においては、第2壁部42が照射光窓12と検出光窓14とを結ぶ直線および検出光窓14と透過光窓16とを結ぶ直線の両方を遮るように設けられている。これにより、遮光ブロック40は後述する遮光効果を発揮する。
【0031】
一方、本例の第1壁部41には開口が設けられておらず、第1壁部41と隣接する接液容器20の壁面には光学窓が設けられていない。言い換えると、接液容器20の光学窓が設けられていない壁面と向かい合う領域にも遮光ブロック40が設けられている。これによって、後述する遮光ブロック40の遮光効果をより高めることができる。なお、
図1においては遮光ブロック40と接液容器20の壁面には隙間があるが、遮光ブロック40は接液容器20の壁面に接して設けられてもよい。
【0032】
遮光ブロック40は、接液容器20から着脱可能であってよい。着脱可能であるとは、遮光ブロック40および接液容器20の一部を破壊することなく繰り返し取り付け及び取り外しが可能なことを指してよい。例えば、遮光ブロック40はねじ、接着剤等により接液容器20に固定される。接着剤は、遮光ブロック40および接液容器20の耐熱温度よりも低い温度で軟化するものを用いてよい。遮光ブロック40は、接液容器20の壁面と形状および寸法を一致させることで機械的に固定されてもよい。遮光ブロック40は、加熱、その他の方法によって接液容器20に固定されてもよい。
【0033】
連続的に測定を行う場合、接液容器20の内部および遮光ブロック40には汚れが蓄積する。特に測定試料水の種類によっては1週間ほどで測定に影響を及ぼすほどの汚れが蓄積するため、メンテナンスの頻度が高くなる。メンテナンスには、清掃、各部の点検、装置の校正などが含まれる。遮光ブロック40が着脱可能であれば、遮光ブロック40を接液容器20から取り外して接液容器20の内部を清掃することができるため、メンテナンスが容易になる。また遮光ブロック40自体を清掃することができる。さらに接液容器20の内部および遮光ブロック40の全体を隅々まで清掃することが可能となるため、特定部分に汚れが蓄積するという問題も起こりにくい。つまり、接液容器20および遮光ブロック40に付着した汚れによって測定試料水が汚れてしまうことを防ぐことができる。
【0034】
また、本例の水質分析装置100は、遮光ブロック40を取り外して清掃を行うため、別途清掃機構を設ける必要がない。そのため、水質分析装置100がシンプルな構造となる。さらに清掃機構に汚れが蓄積するという問題も起こらない。
【0035】
図2は、遮光ブロック40の斜視図の一例を示す図である。遮光ブロック40は、底板46を有する。底板46は、接液容器20の内部空間10における測定対象水の通流方向(本例ではZ軸方向)と交差する主面48を有してよい。本例の主面48は、測定対象水の通流方向と直交する面である。第1壁部41、第2壁部42、第1壁面51および第2壁面52は、底板46の主面48に設けられている。第1壁部41、第2壁部42、第1壁面51および第2壁面52は、底板46の主面48に対して垂直に設けられてよい。
【0036】
図3は、遮光ブロック40の展開図の一例を示す図である。遮光ブロック40の底板46の主面48には、貫通穴54が設けられてよい。貫通穴54は底板46を貫通しており、測定対象水は貫通穴54を通って通流する。貫通穴54は、透過光路34および検出光路36が交差する位置に設けられてよい。本例では、貫通穴54は主面48のほぼ中心に設けられているが、貫通穴54の設けられる位置は、主面48の中心から特定の方向に偏っていてもよい。貫通穴54の位置は、照射光窓12、検出光窓14または透過光窓16のいずれかに寄っていてよい。接液容器20に測定試料水を導入し、または、導出するための穴と、貫通穴54との相対位置によって測定試料水の流れの向きを調整できる。
【0037】
貫通穴54の形状は円形であってよく、楕円であってよく、矩形であってよく、スリット状であってもよい。貫通穴54は、接液容器20に設けられた測定試料水が通流する穴の形状に応じて設計されてよい。貫通穴54は複数設けられてもよい。複数の貫通穴54は、透過光路34に設けられた貫通穴54、および、検出光路36に設けられた貫通穴54を含んでよい。
【0038】
第1壁部41には、貫通穴54が設けられていない。これによって、後述する遮光ブロック40の遮光効果をより高めることができる。同様に、第2壁部42にも貫通穴54が設けられなくてよい。
【0039】
遮光ブロック40は一体の部品であってよい。説明の便宜上、
図2および
図3において、第1壁部41、第2壁部42および底板46を区別し、線で区切っているが、これらは一体の部品であってよい。一体の部品であるとは、遮光ブロック40の各部が分離できないことを指してよく、同一の材料からなることを指してもよい。遮光ブロック40は、同一の材料で形成された芯材と、芯材の表面を覆うコーティング剤を有してよい。コーティング剤は、位置によって異なる材料を用いてもよい。一体の部品であるとは、使用時および着脱時に各部の相対位置がずれない程度に固定されていることであってもよい。これにより、後述する遮光ブロック40の遮光効果を発揮させる際の位置決めが容易になり、遮光ブロック40の着脱が容易になる。接液容器20は一体の部品である遮光ブロック40が着脱可能である程度に大きくてよい。ただし、遮光ブロック40の各部は分離可能であってもよい。
【0040】
続いて遮光ブロック40の遮光効果について説明する。上述のように、水質分析においては、散乱光、透過光、蛍光などを用いて測定対象物質の濃度を算出する。そのため、測定対象水に含まれる物質や接液容器20の内部環境によって測定精度が悪化する場合がある。測定対象水に懸濁物質が含まれる場合には、懸濁物質により生じる光散乱や光吸収の影響によって、照射光22や検出光26が減少することがある。この現象はインナーフィルター効果と呼ばれ、多くの場合には実際の測定対象物質の濃度に比べて低い濃度が算出される。また、測定部の内部が測定対象水によって汚れた場合には、汚れ起因の散乱光が生じそれが検出光学系にて受光されると、多くの場合には実際の測定対象物質の濃度に比べて高い濃度が出力される。
【0041】
図4は、比較例における水質分析装置200を示す図である。本例の水質分析装置200には遮光ブロック40が設けられていない。水質分析装置200を使用していると、接液容器20の内部に汚れ62が蓄積する。
図4においては、照射光窓12、検出光窓14または透過光窓16に付着した汚れ62を示している。汚れ62は照射光22、検出光26または透過光30を散乱する。水質分析装置200には遮光ブロック40が設けられていないため、いずれかの光学窓に付着した汚れ62によって散乱された散乱光の一部(図中の点線矢印)は、直接にまたは接液容器20の壁面を介して間接に他の光学窓に到達し、検出光学系に受光され、実際の測定対象物質の濃度に比べて高い濃度が出力されてしまう。
【0042】
図5は、水質分析装置100の遮光ブロック40による遮光効果を説明する図である。遮光ブロック40の第2壁部42が照射光窓12と検出光窓14とを結ぶ直線および検出光窓14と透過光窓16とを結ぶ直線の両方を遮るように設けられているため、汚れ62起因の散乱光を吸収し、他の光学窓に直接到達することを防いでいる。また遮光ブロック40の第1壁部41が接液容器20の光学窓が設けられていない壁面と向かい合う領域にも設けられているため、汚れ62起因の散乱光が接液容器20の壁面で反射して他の光学窓に到達することも防いでいる。そのため汚れ62起因の散乱光が他の光学窓に到達する割合は大幅に減少する。また迷光の影響も低減される。これによって検出光学系におけるS/N比が向上し、測定精度が向上する。
【0043】
遮光ブロック40による反射を抑えるため、遮光ブロック40は反射率の低い材料で形成されてよく、反射を抑える表面構造を有してよい。遮光ブロック40は、照射光22、検出光26および透過光30に含まれる波長の少なくとも一部の波長に対する反射率が、当該材料における全波長の平均反射率よりも低くなる反射特性を有してよい。これにより、透過光路34の側壁で反射しながら進む光が、いずれかの光学窓に到達することを抑制できる。一例として、照射光窓12から入射し、透過光路34を進み、透過光窓16に到達する透過光30について説明する。透過光路34の側壁で反射しながら進む光と、透過光路34の側壁で反射せずに透過光路34を直線的に進む透過光30とでは、測定対象水の内部を進む光路長に差異が生じる。光路長に差異が生じると、同一の測定対象水を測定した場合でも、光の減衰に差異が生じてしまう。このため、透過光窓16に到達する光に、遮光ブロック40の側面で反射しながら進む光が混在していると、測定結果にばらつきが生じてしまう。本例では、遮光ブロック40の表面に低反射率の材料を設けることで、透過光窓16に到達する光の光路長のばらつきを低減して、測定結果のばらつきを低減できる。
【0044】
第1壁部41および第2壁部42の透過光路34に面している部分の反射特性と、第1壁面51および第2壁面52の反射特性が異なってよい。例えば検出光26の強度がピークとなる波長を第1波長とし、透過光30の強度がピークとなる波長を第2波長とする。透過光路34に面している部分は、第2波長における反射率が、第1波長における反射率よりも低くてよい。第1壁面51および第2壁面52は、第1波長における反射率が、第2波長における反射率よりも低くてよい。つまり、透過光路34に面している部分は、透過光30の反射を抑制して、直線的に進む透過光30を透過光窓16に導く。透過光30以外の波長成分は、透過光検出光学系32においてフィルタリングされる。また、検出光路36に面している部分は、検出光26の反射を抑制して、直線的に進む検出光26を検出光窓14に導く。検出光26以外の波長成分は、検出光検出光学系28においてフィルタリングされる。これにより、透過光30および検出光26の光路長のばらつきを抑制して、測定結果のばらつきを低減できる。遮光ブロック40は、芯材および芯材よりも反射率の低いコーティング剤を有してよい。コーティング剤は、第1壁面51および第2壁面52をコーティングしてよい。コーティング剤は遮光ブロック40の全体にコーティングされていてもよい。芯材は、樹脂または金属等で形成されてよい。
【0045】
図6は、遮光ブロック40の側面図の一例を示す図である。
図6において、底板46の主面48と直交する方向を第1方向とする。
図6において第1方向はZ軸方向である。
図6には照射光学系24から照射される照射光22も示している。第1方向における第1壁部41の高さt1は、第1方向における照射光22の直径d1よりも大きくてよい。これにより遮光ブロック40が汚れ62に起因する散乱光をより多く吸収するため、測定精度がさらに向上する。照射光22の直径d1は、照射光学系24の射出面における直径であってよく、照射光窓12の入射面または出射面における直径であってもよい。同様に、第1方向における第2壁部42の高さt2は、第1方向における照射光22の直径d1よりも大きくてよい。
【0046】
第1方向における第2壁部42の高さt2は、第1方向における第1壁部41の高さt1よりも大きくてよい。これにより、遮光ブロック40のサイズを抑えつつ、検出光窓14に入射する汚れ62起因の散乱光を低減できる。
図1から
図3で説明したいずれかの構成において、遮光ブロック40は
図6に示す上述の関係を有してよい。
【0047】
図7は接液容器20の一例を示す図である。
図7において、照射光窓12と透過光窓16を結ぶ方向を第2方向とする。
図7において、第2方向はX軸方向である。
図7において、第2方向と直交し、且つ、底板46の主面48と平行な方向を第3方向とする。
図7において、第3方向はY軸方向である。第3方向において、第1壁部41の幅W1および第2壁部42の幅W2の少なくとも一方は、透過光路34の幅W3より大きくてよい。
【0048】
第3方向において、透過光路34の幅W3は、照射光窓12の幅W4よりも小さくてよい。光路を限定することで迷光の影響をより低減することができる。同様に、第3方向において、透過光路34の幅W3は、透過光窓16の幅W6よりも小さくてよい。第2方向において検出光路36の幅W7は、検出光窓14の幅W5よりも小さくてよい。
【0049】
第3方向において、透過光路34の幅W3は、貫通穴54の直径d2よりも小さくてよい。第3方向において、検出光路36の幅W7が、貫通穴54の直径d2より小さくてもよい。
図1から
図3または
図6で説明したいずれかの構成において、遮光ブロック40は
図7に示す上述の関係を有してよい。
【0050】
図8は、遮光ブロック40の一例を示す図である。本例の遮光ブロック40において、照射光窓12と透過光窓16とを結ぶ第2方向における底板46の両端には切り欠き60が設けられている。
図1から
図3、
図6または
図7で説明したいずれかの構成に加えて遮光ブロック40には切り欠き60が設けられてよい。本例の遮光ブロック40は、内部空間10に沿ってZ軸方向に移動することで、接液容器20から取り付けられ、または、取り外される。接液容器20の内部に光学窓が出っ張っている場合、切り欠き60を設けることによって遮光ブロック40の着脱の際に、遮光ブロック40と光学窓が干渉することを防げる。これにより、遮光ブロック40の着脱を容易にし、また、光学窓を傷つける可能性が低くなり、よりメンテナンスが容易になる。また遮光ブロック40の広い面積を接液容器20と接触させることができるため、遮光ブロック40を固定しやすくなる。第2方向と直交し、且つ、底板46の主面48と平行な第3方向における切り欠き60の幅は、第3方向における照射光窓12の幅よりも大きくてよく、第3方向における検出光窓14の幅よりも大きくてよく、第3方向における透過光窓16の幅よりも大きくてよい。また、切り欠き60は第2壁部42にも設けられていてよい。
【0051】
第2方向における切り欠き60の幅W8は、第3方向における照射光窓12の厚さよりも大きくてよく、第3方向における検出光窓14の厚さよりも大きくてよく、第3方向における透過光窓16の厚さよりも大きくてよい。これにより、遮光ブロック40の着脱の際の遮光ブロック40と光学窓の接触をより低減できる。
【0052】
図9は、接液容器20の一例を示す図である。
図9においては、接液容器20の壁部64を示している。本例においては、切り欠き60が設けられた遮光ブロック40が、ねじ70によって接液容器20に固定されている。本例は、着脱可能な遮光ブロック40の一例である。遮光ブロック40は、遮光ブロック40よりも反射率の低いねじ70で固定されてよく、遮光ブロック40の芯材よりも反射率の低いねじ70で固定されてよい。
【0053】
図10は、
図1における領域Aの一例である。
図10に示す第1壁部41および第2壁部42にはハッチングを付している。本例において、接液容器20の壁部64には、接液容器20の内部から外側に向かう凹部66が形成されている。凹部66には照射光窓12、検出光窓14または透過光窓16のいずれかが配置されてよい。
図10においては凹部66に照射光窓12が配置されている。これにより、遮光ブロック40の着脱の際の遮光ブロック40と光学窓の接触をより低減できる。凹部66の第2方向における深さは、光学窓の厚みよりも厚くてよい。凹部66が複数設けられ、照射光窓12、検出光窓14および透過光窓16のすべてがそれぞれの凹部66に配置されてもよい。
【0054】
図11は、他の実施例における水質分析装置300を示す図である。本例の遮光ブロック40は、第1壁部41および第2壁部42に加えて第3壁部43および第4壁部44を有する。第3壁部43および第4壁部44は第2壁部42と接続している。本例の第2壁部42の第3方向における幅W9は、水質分析装置100の第3方向における第2壁部42の幅W2並びに第1壁部41の幅W1よりも小さい。本例の第2方向における第3壁部43幅W10および第4壁部44の幅W11は、水質分析装置100の第3方向における第2壁部42の幅W2並びに第1壁部41の幅W1よりも小さい。第2壁部42は透過光路34に沿って設けられており、第3壁部43および第4壁部44は、検出光路36に沿って設けられている。幅W9、幅W10および幅W11は同一であってよい。このような構成によっても水質分析装置100と同様な効果が得られ、さらに遮光ブロック40を小型・軽量化することができる。
図1から
図3または
図6から
図8で説明したいずれかの構成に加えて、遮光ブロック40は第3壁部43および第4壁部44を有してよい。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10・・・内部空間、12・・・照射光窓、14・・・検出光窓、16・・・透過光窓、20・・・接液容器、22・・・照射光、24・・・照射光学系、26・・・検出光、28・・・検出光検出光学系、30・・・透過光、32・・・透過光検出光学系、34・・・透過光路、36・・・検出光路、38・・・開口、40・・・遮光ブロック、41・・・第1壁部、42・・・第2壁部、43・・・第3壁部、44・・・第4壁部、46・・・底板、48・・・主面、51・・・第1壁面、52・・・第2壁面、54・・・貫通穴、60・・・切り欠き、64・・・壁部、66・・・凹部、70・・・ねじ
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
第3方向において、透過光路34の幅W3は、貫通穴54の直径d2よりも小さくてよい。第
2方向において、検出光路36の幅W7が、貫通穴54の直径d2より小さくてもよい。
図1から
図3または
図6で説明したいずれかの構成において、遮光ブロック40は
図7に示す上述の関係を有してよい。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
図11は、他の実施例における水質分析装置300を示す図である。本例の遮光ブロック40は、第1壁部41および第2壁部42に加えて第3壁部43および第4壁部44を有する。第3壁部43および第4壁部44は第2壁部42と接続している。本例の第2壁部42の第3方向における幅W9は、水質分析装置100の第3方向における第2壁部42の幅W2並びに第1壁部41の幅W1よりも小さい。本例の第2方向における第3壁部43
の幅W10および第4壁部44の幅W11は、水質分析装置100の第3方向における第2壁部42の幅W2並びに第1壁部41の幅W1よりも小さい。第2壁部42は透過光路34に沿って設けられており、第3壁部43および第4壁部44は、検出光路36に沿って設けられている。幅W9、幅W10および幅W11は同一であってよい。このような構成によっても水質分析装置100と同様な効果が得られ、さらに遮光ブロック40を小型・軽量化することができる。
図1から
図3または
図6から
図8で説明したいずれかの構成に加えて、遮光ブロック40は第3壁部43および第4壁部44を有してよい。