(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088486
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/70 20230101AFI20240625BHJP
【FI】
H04N25/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203690
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 恵一
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024GX02
5C024GX03
(57)【要約】
【課題】検出精度や撮像特性を向上させることができる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、検出領域に配置された複数の有機フォトダイオードと、複数の有機フォトダイオードにそれぞれ並列接続された複数の容量素子と、複数の容量素子にそれぞれ蓄積された電荷量を読み取り、複数の有機フォトダイオードごとの検出値を取得するAFE回路と、複数の有機フォトダイオードに一括して逆バイアスを印加するための電源電位を供給する電源回路と、電源電位を制御する制御回路と、を備える。有機フォトダイオードは、活性層と、活性層との間に上側バッファ層を挟んで設けられた上部電極と、活性層との間に下側バッファ層を挟んで設けられた下部電極と、を有する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に配置された複数の有機フォトダイオードと、
前記複数の有機フォトダイオードにそれぞれ並列接続された複数の容量素子と、
前記複数の容量素子にそれぞれ蓄積された電荷量を読み取り、前記複数の有機フォトダイオードごとの検出値を取得するAFE回路と、
前記複数の有機フォトダイオードに一括して逆バイアスを印加するための電源電位を供給する電源回路と、
前記電源電位を制御する制御回路と、
を備え、
前記有機フォトダイオードは、
活性層と、
前記活性層との間に上側バッファ層を挟んで設けられた上部電極と、
前記活性層との間に下側バッファ層を挟んで設けられた下部電極と、
を有する、
検出装置。
【請求項2】
前記電源電位は、第1時間における第1電源電位よりも、前記第1時間の後の第2時間における第2電源電位が大きい、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記複数の有機フォトダイオードごとに前記AFE回路から出力される複数の出力値に基づき、前記電源電位を上昇させるか否かを判定する、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記制御回路は、
前記複数の出力値のうち、所定の閾値以上である出力値の数が所定数以上である場合に、前記電源電位を上昇させる、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記複数の出力値のうち、上位の所定数の出力値と、下位の所定数の出力値との平均値が所定の閾値以上である場合に、前記電源電位を上昇させる、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記複数の出力値のうち、上位の所定数の出力値の平均値が所定の第1閾値以上、又は、下位の所定数の出力値の平均値が前記第1閾値よりも小さい所定の第2閾値以下である場合に、前記電源電位を上昇させる、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
前記複数の出力値のうち、上位の所定数の出力値の平均値と、下位の所定数の出力値の平均値との差分値が所定の差分閾値以上である場合に、前記電源電位を上昇させる、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項8】
前記検出領域に光を照射する光源を備え、
前記光源は、
前記制御回路が前記電源電位を上昇させるか否かを判定する際に、前記検出領域に略一定の光量を照射する、
請求項1から7の何れか一項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記制御回路は、
所定時間以上経過するごとに、前記電源電位を上昇させるか否かを判定する、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記制御回路は、
起動時において、前記電源電位を上昇させるか否かを判定する、
請求項9に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、個人認証等に用いられる生体センサとして、光学式の生体センサが知られている。生体センサとして、指紋センサ(例えば、特許文献1参照)や静脈センサが知られている。特許文献1に記載されている指紋センサは、フォトダイオード等の光電変換素子が半導体基板上に複数配列されている。光電変換素子は、照射される光量に応じて出力される信号が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0012069号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検出用の光電変換素子として、例えば有機受光素子(OPD:Organic Photo Diode)等の有機光検出器(Organic Photo Detector)が知られている。OPDを用いた検出装置では、異物や外傷により有機半導体層や導電層に欠陥が生じてスポット状のムラが生じ、検出精度や撮像特性が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、検出精度や撮像特性を向上させることができる検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る検出装置は、検出領域に配置された複数の有機フォトダイオードと、前記複数の有機フォトダイオードにそれぞれ並列接続された複数の容量素子と、前記複数の容量素子にそれぞれ蓄積された電荷量を読み取り、前記複数の有機フォトダイオードごとの検出値を取得するAFE回路と、前記複数の有機フォトダイオードに一括して逆バイアスを印加するための電源電位を供給する電源回路と、前記電源電位を制御する制御回路と、を備え、前記有機フォトダイオードは、活性層と、前記活性層との間に上側バッファ層を挟んで設けられた上部電極と、前記活性層との間に下側バッファ層を挟んで設けられた下部電極と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る検出装置を示す回路図である。
【
図4】
図4は、複数の部分検出領域を示す回路図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る光センサの模式的な部分断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図7】
図7は、
図6におけるリセット期間の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図8】
図8は、
図6における読み出し期間の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図9】
図9は、
図6における読み出し期間に含まれる1つのゲート線の駆動期間の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る検出装置のセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【
図11A】
図11Aは、検出領域に生じたスポットムラの経時変化を可視化した例を示す概略図である。
【
図11B】
図11Bは、検出領域に生じたスポットムラの経時変化を可視化した例を示す概略図である。
【
図11C】
図11Cは、検出領域に生じたスポットムラの経時変化を可視化した例を示す概略図である。
【
図12A】
図12Aは、スポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値の経時変化例を示すイメージ図である。
【
図12B】
図12Bは、スポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値の経時変化例を示すイメージ図である。
【
図12C】
図12Cは、スポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値の経時変化例を示すイメージ図である。
【
図13】
図13は、センサ電源電位の変化に伴うスポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値の変化を示すイメージ図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る検出装置における制御回路と電源回路との関係を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、実施形態1に係る検出装置の全体的な動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施形態1に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、実施形態1に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態1に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。
【
図21】
図21は、実施形態1に係る検出装置におけるセンサ電源電位の時間変化の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、実施形態2に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図23】
図23は、実施形態2に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図24】
図24は、実施形態2に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
【
図25】
図25は、実施形態2に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。
【
図26】
図26は、実施形態3に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図27】
図27は、実施形態3に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【
図28】
図28は、実施形態3に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
【
図29】
図29は、実施形態3に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。
【
図30】
図30は、実施形態4に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
【
図31】
図31は、実施形態4に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、実施形態に係る検出装置を示す平面図である。
図1に示すように、検出装置1は、センサ基材21と、センサ領域10と、ゲート線駆動回路15と、信号線選択回路16と、AFE(Analog Front End)回路48と、制御回路122と、電源回路123と、第1光源61及び第2光源62と、を有する。
図1では、第1光源基材51に複数の第1光源61が設けられ、第2光源基材52に複数の第2光源62が設けられる例を示したが、
図1に示す第1光源61及び第2光源62の配置は、あくまで一例であり適宜変更することができる。例えば、第1光源基材51及び第2光源基材52のそれぞれに、複数の第1光源61及び複数の第2光源62が配置されていてもよい。この場合、複数の第1光源61を含むグループと、複数の第2光源62を含むグループとが、第2方向Dyに並んで配置されていてもよいし、第1光源61と第2光源62とが交互に第2方向Dyに配置されていてもよい。また、第1光源61及び第2光源62が設けられる光源基材は1つ又は3つ以上であってもよい。
【0010】
センサ基材21には、フレキシブルプリント基板71を介して制御基板121が電気的に接続される。フレキシブルプリント基板71には、AFE回路48が設けられている。制御基板121には、制御回路122、及び電源回路123が設けられている。
【0011】
制御回路122は、例えばロジック制御信号を出力する制御IC(Control Integrated Circuit)である。制御回路122は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)であっても良い。
【0012】
制御回路122は、検出装置1における検出動作及び後述するセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション動作に関わる処理を実行する。具体的に、制御回路122は、センサ領域10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に制御信号を供給して、センサ領域10の検出動作を制御する。また、制御回路122は、第1光源61及び第2光源62に制御信号を供給して、第1光源61及び第2光源62の点灯又は非点灯を制御する。
【0013】
また、本開示において、制御回路122は、センサ電源制御信号VDDSNSCTRL(後述)を生成して、電源回路123に出力する。
【0014】
電源回路123は、センサ電源電位VDDSNS(
図4参照)等の電圧信号をセンサ領域10、ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16に供給する。また、電源回路123は、電源電圧を第1光源61及び第2光源62に供給する。
【0015】
センサ基材21は、検出領域AAと、周辺領域GAとを有する。検出領域AAは、センサ領域10が有する複数の光センサ(有機フォトダイオード)PD(
図4参照)が行列状に設けられた領域である。周辺領域GAは、検出領域AAの外周と、センサ基材21の端部との間の領域であり、光センサPDが設けられない領域である。
【0016】
ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16は、周辺領域GAに設けられる。具体的には、ゲート線駆動回路15は、周辺領域GAのうち第2方向Dyに沿って延在する領域に設けられる。信号線選択回路16は、周辺領域GAのうち第1方向Dxに沿って延在する領域に設けられ、センサ領域10とAFE回路48との間に設けられる。
【0017】
なお、第1方向Dxは、センサ基材21と平行な面内の一方向である。第2方向Dyは、センサ基材21と平行な面内の一方向であり、第1方向Dxと直交する方向である。なお、第2方向Dyは、第1方向Dxと直交しないで交差してもよい。また、第3方向Dzは、第1方向Dx及び第2方向Dyと直交する方向であり、センサ基材21の法線方向である。
【0018】
複数の第1光源61は、第1光源基材51に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。複数の第2光源62は、第2光源基材52に設けられ、第2方向Dyに沿って配列される。第1光源基材51及び第2光源基材52は、それぞれ、制御基板121に設けられた端子部124、125を介して、制御回路122及び電源回路123と電気的に接続される。
【0019】
複数の第1光源61及び複数の第2光源62は、例えば、無機LED(Light Emitting Diode)や、有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)等が用いられる。
【0020】
第1光源61及び第2光源から出射された光は、主に指Fg等の被検出体の表面や内部で反射されセンサ領域10に入射する。これにより、センサ領域10は、指Fg等の表面の凹凸の形状や、指Fg等の内部の生体に関する情報(以下、「生体情報」とも称する)を検出することができる。生体情報とは、例えば、指Fgや掌の脈波、脈拍、血管像等である。すなわち、検出装置1は、指紋を検出する指紋検出装置や、静脈などの血管パターンを検出する静脈検出装置として構成されてもよい。
【0021】
第1光源61から出射される光と、第2光源62から出射される光とは、それぞれ異なる波長を有する態様であっても良い。このように、検出装置1は、第1光源61から出射される光に基づいた検出と、第2光源62から出射される光に基づいた検出とを行うことで、種々の生体に関する情報を検出することができる。
【0022】
なお、
図1に示す第1光源61及び第2光源62の配置は、あくまで一例であり適宜変更することができる。検出装置1は、光源として複数種類の光源(第1光源61と第2光源62)が設けられている。ただし、これに限定されず、光源は1種類であってもよい。例えば、第1光源基材51及び第2光源基材52のそれぞれに、複数の第1光源61及び複数の第2光源62が配置されていてもよい。また、第1光源61及び第2光源62が設けられる光源基材は1つ又は3つ以上であってもよい。あるいは、光源は、少なくとも1つ以上配置されていればよい。また、光源は、例えば、検出領域AAの直下に設けられた、いわゆる直下型のバックライトであっても良い。
【0023】
図2は、実施形態に係る検出装置の構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、検出装置1は、さらに検出制御回路11と検出回路40と、を有する。
【0024】
センサ領域10は、複数の光センサPDを有する。本開示において、センサ領域10が有する光センサPDは有機フォトダイオード(OPD:Organic Photodiode)である。光センサPDは、照射される光に応じた電気信号を、検出信号Vdetとして信号線選択回路16に出力する。また、センサ領域10は、ゲート線駆動回路15から供給されるゲート駆動信号Vgclにしたがって検出を行う。
【0025】
検出制御回路11は、ゲート線駆動回路15、信号線選択回路16及び検出回路40にそれぞれ制御信号を供給し、これらの動作を制御する。検出制御回路11は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号をゲート線駆動回路15に供給する。また、検出制御回路11は、選択信号ASW等の各種制御信号を信号線選択回路16に供給する。また、検出制御回路11は、各種制御信号を第1光源61及び第2光源62に供給して、それぞれの点灯及び非点灯を制御する。
【0026】
ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて複数のゲート線GCL(
図3参照)を駆動する。ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを順次又は同時に選択し、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCLに接続された複数の光センサPDを選択する。
【0027】
信号線選択回路16は、複数の信号線SGL(
図3参照)を順次又は同時に選択するスイッチ回路を有する。信号線選択回路16は、例えばマルチプレクサである。信号線選択回路16は、検出制御回路11から供給される選択信号ASWに基づいて、選択された信号線SGLとAFE回路48とを電気的に接続する。これにより、信号線選択回路16は、光センサPDの検出信号Vdetを検出回路40に出力する。
【0028】
検出回路40は、AFE回路48と、信号処理回路44と、記憶回路46と、検出タイミング制御回路47と、を備える。検出タイミング制御回路47は、検出制御回路11から供給される制御信号に基づいて、AFE回路48と、信号処理回路44と、が同期して動作するように制御する。
【0029】
AFE回路48は、例えばアナログフロントエンドICである。AFE回路48は、少なくとも検出信号増幅回路42及びA/D変換回路43の機能を有する信号処理回路である。検出信号増幅回路42は、検出信号Vdetを増幅する。A/D変換回路43は、検出信号増幅回路42から出力されるアナログ信号を所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換し、AFE信号AFESIG(後述)を出力する。
【0030】
本開示において、信号処理回路44及び記憶回路46は、制御回路122に含まれる。
【0031】
信号処理回路44は、AFE回路48の出力信号に基づいて、センサ領域10に入力された所定の物理量を検出する。信号処理回路44は、論理回路である。信号処理回路44は、指Fgが検出面に接触又は近接した場合に、AFE回路48からの信号に基づいて指Fgや掌の表面の凹凸を検出できる。また、信号処理回路44は、AFE回路48からの信号に基づいて生体に関する情報を検出できる。生体に関する情報は、例えば、指Fgや掌の血管像、脈波、脈拍、血中酸素濃度等である。
【0032】
また、信号処理回路44は、複数の光センサPDにより同時に検出された検出信号Vdet(生体に関する情報)を取得し、これらを平均化する処理を実行してもよい。この場合、検出回路40は、ノイズや、指Fg等の被検出体とセンサ領域10との相対的な位置ずれに起因する測定誤差を抑制して、安定した検出が可能となる。
【0033】
記憶回路46は、信号処理回路44で処理された信号を一時的に保存する。また、本開示において、記憶回路46には、信号処理回路44において生体データの取得を行う際に、後述する生体データ取得領域設定処理フローにおいて設定される生体データ取得領域や、各種設定情報が格納される。記憶回路46は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を含む態様であっても良い。また、記憶回路46は、レジスタ回路等であっても良い。
【0034】
次に、検出装置1の回路構成例について説明する。
図3は、実施形態に係る検出装置を示す回路図である。
図3に示すように、センサ領域10は、行列状に配列された複数の部分検出領域PAAを有する。複数の部分検出領域PAAには、それぞれ光センサPDが設けられている。
【0035】
ゲート線GCLは、第1方向Dxに延在し、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAと接続される。また、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)は、第2方向Dyに配列され、それぞれゲート線駆動回路15に接続される。なお、以下の説明において、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を区別して説明する必要がない場合には、単にゲート線GCLと表す。また、
図3では説明を分かりやすくするために、8本のゲート線GCLを示しているが、あくまで一例であり、ゲート線GCLは、M本(Mは自然数、例えばM=256)配列されていてもよい。
【0036】
信号線SGLは、第2方向Dyに延在し、第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAの光センサPDに接続される。また、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)は、第1方向Dxに配列されて、それぞれ信号線選択回路16及びリセット回路17に接続される。なお、以下の説明において、複数の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(12)を区別して説明する必要がない場合には、単に信号線SGLと表す。
【0037】
また、
図3では、説明を分かりやすくするために、12本の信号線SGLを示しているが、あくまで一例であり、信号線SGLは、N本(Nは自然数、例えばN=252)配列されていても良い。具体的に、信号線SGLは、例えば126本が例示されるが、これより多くても良いし少なくても良い。
【0038】
また、
図3では、信号線選択回路16とリセット回路17との間にセンサ領域10が設けられている。これに限定されず、信号線選択回路16とリセット回路17とは、信号線SGLの同じ方向の端部にそれぞれ接続されていてもよい。
【0039】
ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK、リセット信号RST1等の各種制御信号を、制御回路122(
図1参照)から受け取る。ゲート線駆動回路15は、各種制御信号に基づいて、複数のゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)を時分割的に順次選択する。ゲート線駆動回路15は、選択されたゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、ゲート線GCLに接続された複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclが供給され、第1方向Dxに配列された複数の部分検出領域PAAが、検出対象として選択される。
【0040】
なお、ゲート線駆動回路15は、指紋の検出及び異なる複数の生体情報(脈波、脈拍、血管像、血中酸素濃度等)のそれぞれの検出モードごとに、異なる駆動を実行しても良い。例えば、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを束ねて駆動しても良い。
【0041】
具体的には、ゲート線駆動回路15は、制御信号に基づいて、ゲート線GCL(1)、GCL(2)、…、GCL(8)のうち、所定数のゲート線GCLを同時に選択する。例えば、ゲート線駆動回路15は、6本のゲート線GCL(1)からゲート線GCL(6)を同時に選択し、ゲート駆動信号Vgclを供給する。ゲート線駆動回路15は、選択された6本のゲート線GCLを介して、複数の第1スイッチング素子Trにゲート駆動信号Vgclを供給する。これにより、第1方向Dx及び第2方向Dyに配列された複数の部分検出領域PAAを含むブロック単位PAG1、PAG2が、それぞれ検出対象として選択される。ゲート線駆動回路15は、所定数のゲート線GCLを束ねて駆動し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給する。
【0042】
信号線選択回路16は、複数の選択信号線Lselと、複数の出力信号線Loutと、第3スイッチング素子TrSと、を有する。複数の第3スイッチング素子TrSは、それぞれ複数の信号線SGLに対応して設けられている。6本の信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)は、共通の出力信号線Lout1に接続される。6本の信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)は、共通の出力信号線Lout2に接続される。出力信号線Lout1、Lout2は、それぞれAFE回路48に接続される。
【0043】
ここで、信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)を第1信号線ブロックとし、信号線SGL(7)、SGL(8)、…、SGL(12)を第2信号線ブロックとする。複数の選択信号線Lselは、1つの信号線ブロックに含まれる第3スイッチング素子TrSのゲートにそれぞれ接続される。また、1本の選択信号線Lselは、複数の信号線ブロックの第3スイッチング素子TrSのゲートに接続される。
【0044】
具体的には、選択信号線Lsel1、Lsel2、…、Lsel6は、それぞれ信号線SGL(1)、SGL(2)、…、SGL(6)に対応する第3スイッチング素子TrSと接続される。また、選択信号線Lsel1は、信号線SGL(1)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(7)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。選択信号線Lsel2は、信号線SGL(2)に対応する第3スイッチング素子TrSと、信号線SGL(8)に対応する第3スイッチング素子TrSと、に接続される。
【0045】
制御回路122(
図1参照)は、選択信号ASWを順次選択信号線Lselに供給する。これにより、信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて信号線SGLを時分割的に順次選択する。また、信号線選択回路16は、複数の信号線ブロックでそれぞれ1本ずつ信号線SGLを選択する。このような構成により、検出装置1は、AFE回路48を含むIC(Integrated Circuit)の数、又はICの端子数を少なくすることができる。
【0046】
なお、信号線選択回路16は、複数の信号線SGLを束ねてAFE回路48に接続してもよい。具体的には、制御回路122(
図1参照)は、選択信号ASWを同時に複数の選択信号線Lselに供給する。信号線選択回路16は、第3スイッチング素子TrSの動作により、1つの信号線ブロックにおいて複数の信号線SGL(例えば6本の信号線SGL)を選択し、複数の信号線SGLとAFE回路48とを接続する。これにより、ブロック単位PAG1、PAG2で検出された信号がAFE回路48に出力される。この場合、ブロック単位PAG1、PAG2に含まれる複数の部分検出領域PAA(光センサPD)からの信号が統合されてAFE回路48に出力される。
【0047】
ゲート線駆動回路15及び信号線選択回路16の動作により、ブロック単位PAG1、PAG2ごとに検出を行うことで、1回の検出で得られる検出信号Vdetの強度が向上するのでセンサ感度を向上させることができる。
【0048】
図3に示すように、リセット回路17は、基準信号線Lvr、リセット信号線Lrst及び第4スイッチング素子TrRを有する。第4スイッチング素子TrRは、複数の信号線SGLに対応して設けられている。基準信号線Lvrは、複数の第4スイッチング素子TrRのソース又はドレインの一方に接続される。リセット信号線Lrstは、複数の第4スイッチング素子TrRのゲートに接続される。
【0049】
制御回路122は、リセット信号RST2をリセット信号線Lrstに供給する。これにより、複数の第4スイッチング素子TrRがオンになり、複数の信号線SGLは基準信号線Lvrと電気的に接続される。電源回路123は、基準信号COMを基準信号線Lvrに供給する。これにより、複数の部分検出領域PAAに含まれる容量素子Ca(
図4参照)に基準信号COMが供給される。本開示において、基準信号COMの電位は、例えば0.75[V]である。
【0050】
図4は、実施形態に係る検出装置の複数の部分検出領域を示す回路図である。なお、
図4では、AFE回路48の回路構成も併せて示している。
図4に示すように、部分検出領域PAAは、光センサPDと、容量素子Caと、第1スイッチング素子Trとを含む。容量素子Caは、光センサPDに形成される容量(センサ容量)であり、等価的に光センサPDと並列に接続される。
【0051】
図4では、複数のゲート線GCLのうち、第2方向Dyに並ぶ2つのゲート線GCL(m)、GCL(m+1)を示す。また、複数の信号線SGLのうち、第1方向Dxに並ぶ2つの信号線SGL(n)、SGL(n+1)を示す。部分検出領域PAAは、ゲート線GCLと信号線SGLとで囲まれた領域である。
【0052】
第1スイッチング素子Trは、光センサPDに対応して設けられる。第1スイッチング素子Trは、薄膜トランジスタにより構成されるものであり、この例では、nチャネルのMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のTFT(Thin Film Transistor)で構成されている。
【0053】
第1方向Dxに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのゲートは、ゲート線GCLに接続される。第2方向Dyに並ぶ複数の部分検出領域PAAに属する第1スイッチング素子Trのソースは、信号線SGLに接続される。第1スイッチング素子Trのドレインは、光センサPDのカソード及び容量素子Caに接続される。
【0054】
光センサPDのアノードには、電源回路123からセンサ電源電位VDDSNSが供給される。また、光センサPDのカソード及び容量素子Caには、電源回路123から、信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給される。
【0055】
本開示において、センサ電源電位VDDSNSは、例えば通常電位を2.75[V]とする可変電位である。また、本開示において、基準信号COMの電位は、上述したように、例えば0.75[V]である。すなわち、光センサPDは、基準信号COMの電位とセンサ電源電位VDDSNSとの電位差が印加される。これにより、光センサPDのアノード-カソード間に逆バイアスが印加される。
【0056】
部分検出領域PAAに光が照射されると、光センサPDには光量に応じた電流が流れ、これにより容量素子Caには光量に応じた電荷が蓄積される。第1スイッチング素子Trがオンになると、容量素子Caに蓄積された電荷に応じて、信号線SGLに電流が流れる。信号線SGLは、信号線選択回路16の第3スイッチング素子TrSを介してAFE回路48に接続される。これにより、検出装置1は、部分検出領域PAAごとに、又はブロック単位PAG1、PAG2ごとに光センサPDに照射される光の光量に応じた信号を検出できる。
【0057】
AFE回路48は、読み出し期間Pdet(
図6参照)にスイッチSSWがオンになり、信号線SGLと接続される。AFE回路48の検出信号増幅回路42は、信号線SGLから供給された電流を電圧に変換して増幅する。検出信号増幅回路42の非反転入力部(+)には、固定された電位を有する基準電位(Vref)が入力され、反転入力端子(-)には、信号線SGLが接続される。実施形態では、基準電位(Vref)電圧として基準信号COMと同じ信号が入力される。また、検出信号増幅回路42は、容量素子Cb及びリセットスイッチRSWを有する。リセット期間Prst(
図6参照)において、リセットスイッチRSWがオンになり、容量素子Cbの電荷がリセットされる。
【0058】
次に、光センサPDの構成について説明する。
図5は、実施形態に係る光センサの模式的な部分断面図である。検出装置1のセンサ領域10は、センサ基材21と、センサ構造体22と、保護膜23と、を備える。
【0059】
センサ構造体22は、TFT層221と、カソード電極(下部電極)222と、光センサPDと、アノード電極(上部電極)226と、を有する。光センサPDは、第2面FU側から照射される第1光LDを検出する。
【0060】
TFT層221には、ゲート線GCL、信号線SGL等の各種配線が設けられる。センサ基材21及びTFT層221は、センサを駆動する駆動回路であり、バックプレーンとも呼ばれる。
【0061】
光センサPDは、活性層224と、活性層224とカソード電極(下部電極)222との間に設けられた正孔輸送層(下側バッファ層)223と、活性層224とアノード電極(上部電極)226との間に設けられた電子輸送層(上側バッファ層)225と、を有する。言い換えると、光センサPDの正孔輸送層(下側バッファ層)223、活性層224、電子輸送層(上側バッファ層)225は、センサ基材21に垂直な方向で、この順で積層される。
【0062】
活性層224は、照射される光に応じて特性(例えば、電圧電流特性や抵抗値)が変化する。活性層224の材料として、有機材料が用いられる。具体的には、活性層224は、p型有機半導体と、n型有機半導体であるn型フラーレン誘導体(PCBM)とが混在するバルクヘテロ構造である。活性層224として、例えば、低分子有機材料であるC60(フラーレン)、PCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル:Phenyl C61-butyric acid methyl ester)、CuPc(銅フタロシアニン:Copper Phthalocyanine)、F16CuPc(フッ素化銅フタロシアニン)、rubrene(ルブレン:5,6,1S114-tetraphenyltetracene)、PDI(Perylene(ペリレン)の誘導体)等を用いることができる。
【0063】
活性層224は、これらの低分子有機材料を用いて蒸着型(Dry Process)で形成することができる。この場合、活性層224は、例えば、CuPcとF16CuPcとの積層膜、又はrubreneとC60との積層膜であってもよい。活性層224は、塗布型(Wet Process)で形成することもできる。この場合、活性層224は、上述した低分子有機材料と高分子有機材料とを組み合わせた材料が用いられる。高分子有機材料として、例えばP3HT(poly(3-hexylthiophene))、F8BT(F8-alt-benzothiadiazole)等を用いることができる。活性層224は、P3HTとPCBMとが混合した状態の膜、又はF8BTとPDIとが混合した状態の膜とすることができる。
【0064】
正孔輸送層(下側バッファ層)223及び電子輸送層(上側バッファ層)225は、活性層224で発生した電子及び正孔がカソード電極(下部電極)222又はアノード電極(上部電極)226に到達しやすくするために設けられる。正孔輸送層(下側バッファ層)223は、カソード電極(下部電極)222の上に直接、接する。活性層224は、正孔輸送層(下側バッファ層)223の上に直接、接する。
【0065】
電子輸送層(上側バッファ層)225は、活性層224の上に直接、接し、アノード電極(上部電極)226は、電子輸送層(上側バッファ層)225の上に直接、接する。
【0066】
カソード電極(下部電極)222と、アノード電極(上部電極)226とは、光センサPDを挟んで対向する。アノード電極(上部電極)226は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)等の透光性を有する導電性材料が用いられる。カソード電極(下部電極)222は、例えば、銀(Ag)やアルミニウム(Al)等の金属材料が用いられる。又は、カソード電極(下部電極)222は、これらの金属材料の少なくとも1以上を含む合金材料であってもよい。
【0067】
保護膜23は、アノード電極(上部電極)226を覆って第2面FUに設けられる。保護膜23は、パッシベーション膜であり、光センサPDを保護するために設けられている。
【0068】
なお、
図4では、光センサPDのアノードに電源回路123から信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給され、光センサPDのカソードに電源回路123からセンサ電源電位VDDSNSが供給される構成を例示したが、例えば、光センサPDのカソードに電源回路123から信号線SGL及び容量素子Caの初期電位となる基準信号COMが供給され、光センサPDのアノードに電源回路123からセンサ電源電位VDDSNSが供給される構成であっても良い。この場合、上述した構成とは異なり、光センサPDは、活性層224と、活性層224とアノード電極(下部電極)222との間に設けられた電子輸送層(下側バッファ層)223と、活性層224とカソード電極(上部電極)226との間に設けられた正孔輸送層(上側バッファ層)225と、を有する。言い換えると、光センサPDの電子輸送層(下側バッファ層)223、活性層224、正孔輸送層(上側バッファ層)225は、センサ基材21に垂直な方向で、この順で積層される。
【0069】
次に、検出装置1の動作例について説明する。
図6は、実施形態に係る検出装置の動作例を表すタイミング波形図である。
図7は、
図6におけるリセット期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図8は、
図6における読み出し期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図9は、
図6における行読み出し期間VRに含まれる1つのゲート線の駆動期間の動作例を表すタイミング波形図である。
図10は、実施形態に係る検出装置のセンサ領域の駆動と、光源の点灯動作との関係を説明するための説明図である。
【0070】
図6に示すように、検出装置1は、リセット期間Prst、露光期間Pex及び読み出し期間Pdetを有する。電源回路123は、リセット期間Prst、露光期間Pex及び読み出し期間Pdetに亘って、センサ電源電位VDDSNSを光センサPDのアノードに供給する。検出装置1は、
図6に示す検出動作を1フレームとして複数回繰り返し、検出領域AAにおける被検出体及び当該被検出体の生体情報の検出を行う。以下、検出装置1において被検出体及び当該被検出体の生体情報を検出する処理を、「検出処理」とも称する。
【0071】
センサ電源電位VDDSNSは光センサPDのアノード-カソード間に逆バイアスを印加する信号である。例えば、光センサPDのアノードには実質0.75Vの基準信号COMがされているが、例えば、光センサPDのカソードに実質2.75Vのセンサ電源電位VDDSNSを印加することにより、アノード-カソード間は実質2.0Vの逆バイアスが印加される。制御回路122は、リセット信号RST2を”H”とした後にゲート線駆動回路15にスタート信号STVおよびクロック信号CKを供給し、リセット期間Prstが開始する。リセット期間Prstにおいて、制御回路122は、基準信号COMをリセット回路17に供給し、リセット信号RST2によってリセット電圧を供給するための第4スイッチング素子TrRをオンさせる。これにより各信号線SGLにはリセット電圧として基準信号COMが供給される。
【0072】
リセット期間Prstにおいて、ゲート線駆動回路15は、スタート信号STV、クロック信号CK及びリセット信号RST1に基づいて、順次ゲート線GCLを選択する。ゲート線駆動回路15は、ゲート駆動信号Vgcl{Vgcl(1)~Vgcl(M)}をゲート線GCLに順次供給する。ゲート駆動信号Vgclは、高レベル電圧である電源電圧VDDと低レベル電圧である電源電圧VSSとを有するパルス状の波形を有する。
【0073】
図6では、M本(例えばM=256)のゲート線GCLが設けられている例を示している。リセット期間において、各ゲート線GCLには、ゲート駆動信号Vgcl(1)、…、Vgcl(M)が順次供給され、複数の第1スイッチング素子Trは各行毎に順次導通され、リセット電圧が供給される。リセット電圧として例えば、基準信号COMの電圧0.75Vが供給される。
【0074】
具体的に、ゲート線駆動回路15は、
図7に示すように、期間V(1)において、ゲート線GCL(1)に高レベル電圧(電源電圧VDD)のゲート駆動信号Vgcl(1)を供給する。制御回路122は、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)を維持している期間に、選択信号ASW1、…、ASW6の少なくとも1つ(
図7では選択信号ASW1)を信号線選択回路16に供給する。これにより、選択信号ASW1により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLがAFE回路48に接続される。この結果、第3スイッチング素子TrSとAFE回路48との間の接続配線にもリセット電圧(基準信号COM)が供給される。
【0075】
同様に、ゲート線駆動回路15は、期間V(2)、…、V(M-1)、V(M)において、ゲート線GCL(2)、…、GCL(M-1)、GCL(M)に、それぞれ高レベル電圧のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M-1)、Vgcl(M)を供給する。
【0076】
これにより、リセット期間Prstでは、全ての部分検出領域PAAの容量素子Caは、順次信号線SGLと電気的に接続されて、基準信号COMが供給される。この結果、容量素子Caの容量がリセットされる。なお、部分的にゲート線、および信号線SGLを選択することにより部分検出領域PAAのうち一部の容量素子Caの容量をリセットすることも可能である。
【0077】
露光するタイミングの例として、ゲート線非選択時露光制御方法と常時露光制御方法がある。
【0078】
ゲート線非選択時露光制御方法においては、検出対象の光センサPDに接続された全てのゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、検出対象の全ての光センサPDにリセット電圧が供給される。その後、検出対象の光センサPDに接続された全てのゲート線GCLが低電圧(第1スイッチング素子Trがオフ)になると露光が開始され、露光期間Pexの間に露光が行われる。露光が終了すると前述のように検出対象の光センサPDに接続されたゲート線GCLにゲート駆動信号{Vgcl(1)~(M)}が順次供給され、読み出し期間Pdetに読み出しが行われる。
【0079】
常時露光制御方法においては、リセット期間Prst、読み出し期間Pdetにおいても露光を行う制御(常時露光制御)をすることも可能である。この場合は、リセット期間Prstにゲート駆動信号Vgcl(1)がゲート線GCLに供給された後に、露光期間Pex(1)が開始する。ここで、露光期間Pex{(1)・・・(M)}とは実質的な露光期間であり光センサPDから容量素子Caへ充電される期間とされ、この期間外に光が照射されている期間は含まない。リセット期間Prstに容量素子Caにチャージされた電荷が光照射によって光センサPDに逆方向電流(カソードからアノードへ)として流れ、容量素子Caの両端の電位差は減少する。なお、各ゲート線GCLに対応する部分検出領域PAAにおける実質的な露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、開始のタイミング及び終了のタイミングが異なっている。各露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、リセット期間においてゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧の電源電圧VDDから低レベル電圧の電源電圧VSSに変化したタイミングで開始される。また、各露光期間Pex(1)、…、Pex(M)は、それぞれ、読み出し期間Pdetにおいてゲート駆動信号Vgclが電源電圧VSSから電源電圧VDDに変化したタイミングで終了する。これら各ゲート線GCLに対応する部分検出領域PAAでの実質的な各露光期間Pex(1)、…、Pex(M)の露光時間の長さは等しい。
【0080】
露光期間Pex{(1)・・・(M)}では、各部分検出領域PAAで、光センサPDに照射された光に応じて電流が流れる。この結果、各容量素子Caに電荷が蓄積される。
【0081】
読み出し期間Pdetが開始する前のタイミングで、制御回路122は、リセット信号RST2を低レベル電圧にする。これにより、リセット回路17の動作が停止する。なお、リセット信号はリセット期間Prstのみ高レベル電圧としても良い。読み出し期間Pdetにおいて、ゲート線駆動回路15は、リセット期間Prstと同様に、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを順次供給する。
【0082】
具体的に、ゲート線駆動回路15は、
図8に示す行読み出し期間VR(1)において、ゲート線GCL(1)に高レベル電圧(電源電圧VDD)のゲート駆動信号Vgcl(1)を供給する。制御回路122は、ゲート駆動信号Vgcl(1)が高レベル電圧(電源電圧VDD)を維持している期間に、選択信号ASW1、…、ASW6を信号線選択回路16に順次供給する。これにより、ゲート駆動信号Vgcl(1)により選択された部分検出領域PAAの信号線SGLが順次AFE回路48に接続される。この結果として、部分検出領域PAAごとに、AFE回路48に検出信号Vdetが供給される。なお、選択信号ASW1、…、ASW6のうちの所定の複数の信号を信号線選択回路16に同時に供給しても良い。この場合、ゲート駆動信号Vgcl(1)により選択された部分検出領域PAAの所定数の信号線SGLが同時にAFE回路48に接続される。
【0083】
同様に、ゲート線駆動回路15は、行読み出し期間VR(2)、…、VR(M-1)、VR(M)において、ゲート線GCL(2)、…、GCL(M-1)、GCL(M)にそれぞれ高レベル電圧のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M-1)、Vgcl(M)を供給する。すなわち、ゲート線駆動回路15は、行読み出し期間VR(1)、VR(2)、…、VR(M-1)、VR(M)ごとに、ゲート線GCLにゲート駆動信号Vgclを供給する。信号線選択回路16は、各ゲート駆動信号Vgclが高レベル電圧となる期間ごとに、選択信号ASWに基づいて、順次又は同時に信号線SGLを選択する。言い換えると、信号線選択回路16は、信号線SGLごとに順次、又は同時に、1つのAFE回路48に接続する。これにより、検出装置1は、読み出し期間Pdetにおいて、全ての部分検出領域PAAの検出信号VdetをAFE回路48に出力することができる。
【0084】
以下、
図9を参照して、
図6における1つのゲート駆動信号Vgcl(j)の供給期間である行読み出し期間VR中の動作例について説明する。
図6では、最初のゲート駆動信号Vgcl(1)に行読み出し期間VRの符号を付しているが、他のゲート駆動信号Vgcl(2)、…、Vgcl(M)についても同様である。jは、1からMのいずれかの自然数である。
【0085】
図9および
図4に示すように、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)は、予め基準電位(Vref)電圧にリセットされている。基準電位(Vref)電圧はリセット電圧とされ、例えば0.75Vとされる。次にゲート駆動信号Vgcl(j)がハイレベルとなり当該行の第1スイッチング素子Trがオンし、各行の信号線SGLは当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧になる。
【0086】
ゲート駆動信号Vgcl(j)の立ち上がりから期間t1の経過後、選択信号ASW(k)がハイになる期間t2が生じる。選択信号ASW(k)がハイになって第3スイッチング素子TrSがオンすると、当該第3スイッチング素子TrSを介して、AFE回路48と部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)が電気的に接続される。このため、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)(
図4参照)が当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧に変化する(期間t3)。
図9の例では期間t3のようにこの電圧はリセット電圧から下がっている。その後、スイッチSSWがオン(SSW信号のハイレベルの期間t4)すると当該部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷がAFE回路48の検出信号増幅回路42の容量(容量素子Cb)へ移動し、検出信号増幅回路42の出力電圧は容量素子Cbに蓄積された電荷に応じた電圧となる。
【0087】
このとき、検出信号増幅回路42の反転入力部は、オペアンプのイマジナリショート電位となるため、基準電位(Vref)となっている。検出信号増幅回路42の出力電圧は、A/D変換回路43で読み出される。
図9に示す例では、各列の信号線SGLに対応する選択信号ASW(k)、ASW(k+1)、…を順次ハイとして第3スイッチング素子TrSを順次オンさせ、同様の動作を順次行うことにより、各ゲート線GCLに接続された部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷を順次読み出している。なお、
図9に示すASW(k)、ASW(k+1)…は、例えば、
図8に示すASW1からASW6のいずれかである。
【0088】
具体的には、期間t4においてスイッチSSWがオンになると、部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)からAFE回路48の検出信号増幅回路42の容量(容量素子Cb)へ電荷が移動する。このとき、検出信号増幅回路42の非反転入力(+)は、基準電位(Vref)電圧(例えば、0.75[V])が印加されている。このため、第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)についても、検出信号増幅回路42の入力間のイマジナリショートにより基準電位(Vref)電圧となる。また、容量素子Cbの電圧は、選択信号ASW(k)に応じて、第3スイッチング素子TrSがオンした箇所の部分検出領域PAAの容量(容量素子Ca)に蓄積された電荷に応じた電圧となる。検出信号増幅回路42の出力は、イマジナリショートによって第3スイッチング素子TrSの出力(Vout)が基準電位(Vref)電圧になった後に、容量素子Cbの容量に応じた電圧になる。このときの検出信号増幅回路42の出力電圧がA/D変換回路43で読み取られる。なお、容量素子Cbの電圧とは、例えば、容量素子Cbを構成するコンデンサに設けられる2つの電極間の電圧である。
【0089】
図10に示す例では、期間t(1)、期間t(2)のそれぞれにおいて、検出装置1は、上述したリセット期間Prst、露光期間Pex{(1)・・・(M)}及び読み出し期間Pdetを実行する。リセット期間Prst及び読み出し期間Pdetにおいて、ゲート線駆動回路15は、ゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで順次走査する。以下の説明において、各期間tでの検出、すなわち、リセット期間Prst及び読み出し期間Pdetでゲート線GCL(1)からゲート線GCL(M)まで走査され、各列の信号線SGLから検出信号Vdetを取得する検出を、1フレームの検出と表す。
【0090】
期間t(1)及び期間t(2)に連続して、光源(第1光源61又は第2光源62)が点灯される。制御回路122は、検出対象に応じて光源の点灯、非点灯を制御することができる。たとえば、制御回路122は、期間ごとに第1光源61及び第2光源62の点灯、非点灯を切り換えても良いし、いずれか一方を連続して点灯しても良い。
【0091】
なお、
図6から
図10では、ゲート線駆動回路15がゲート線GCLを個別に選択する例を示したが、これに限定されない。ゲート線駆動回路15は、2以上の所定数のゲート線GCLを同時に選択し、所定数のゲート線GCLごとに順次ゲート駆動信号Vgclを供給してもよい。また、信号線選択回路16も、2以上の所定数の信号線SGLを同時に1つのAFE回路48に接続してもよい。また更には、ゲート線駆動回路15は、複数のゲート線GCLを間引いて走査してもよい。
【0092】
ここで、異物や外傷により光センサPDのセンサ構造体22に欠陥が生じた場合、水分の侵入等によって電荷トラップによる影響と考えられるスポット状のムラ(以下、「スポットムラ」とも称する)が生じる場合がある。このスポットムラは、時間の経過に伴って進行し、検出装置1としての検出精度や撮像特性が低下する可能性がある。
【0093】
【0094】
【0095】
光センサPDの欠陥に起因するスポットムラが生じた場合でも、検出装置1の生産後の初期状態では、
図11A及び
図12Aに示すように、光センサPDの異物や外傷に起因するスポットムラによる暗部領域DAAの範囲は小さく、また、スポットムラが発生していない正常領域BRAに対する暗部領域DAAの明度の差も小さいが、時間の経過と共に、
図11B及び
図12B、
図11C及び
図12Cに示すように、スポットムラによる暗部領域DAAの範囲は拡大し、また、正常領域BRAに対する暗部領域DAAの明度の差も拡大する。すなわち、時間の経過と共に、暗部領域DAA内の光センサPDによって取得されるAFE出力値が、
図12A、
図12B、
図12Cに破線で示す検出領域AAに光を照射していない場合のAFE出力値に近づく。このため、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラが生じた場合、時間の経過と共に、検出装置1において検出対象とする生体情報、具体的には、例えば脈波や脈拍等の検出精度や、例えば静脈などの血管パターンや指Fgの指紋等の撮像特性が低下していく。
【0096】
図13は、センサ電源電位の変化に伴うスポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値の変化を示すイメージ図である。
図13に示す破線は、センサ電源電位VDDSNSが通常電位(例えば、2.75[V])である場合のスポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値を示している。
図13に示す実線は、センサ電源電位VDDSNSが通常電位よりも高電位(例えば、3.75[V])である場合のスポットムラが生じた付近の領域におけるAFE出力値を示している。
【0097】
図13では、センサ電源電位VDDSNSを所定範囲内(例えば、通常電位(例えば、2.75[V])から4.75[V]までの範囲内)で上昇させることで、光センサPDに印加する逆バイアス電圧を所定範囲内(例えば、通常電位(例えば、2.00[V])から4.00[V]までの範囲内)で上昇させている。これにより、スポットムラが生じた付近の領域を含めた検出領域AAの全域におけるAFE出力値を、正常値(
図13に示す一点鎖線間の範囲内)とすることができる。
【0098】
本開示では、検出領域AAの全域に一定の光量(例えば1[μW])を照射した際の検出領域AAの全域の光センサPDに対応するAFE出力値の経時変化に応じて、センサ電源電位VDDSNSを上昇させ、検出領域AAの全域の光センサPDに印加する逆バイアス電圧を上昇させる。言い換えると、第1時間における第1センサ電源電位VDDSNS1よりも、第1時間の後の第2時間における第2センサ電源電位VDDSNS2が大きくなるように、センサ電源電位VDDSNSを制御する。これにより、本開示に係る検出装置1において、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラを抑制し、検出精度や撮像特性を向上することができる。
【0099】
図14は、実施形態に係る検出装置における制御回路と電源回路との関係を示す図である。本開示において、制御回路122は、電源回路123から検出領域AAの全域の光センサPDに供給するセンサ電源電位を制御するためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを生成して、電源回路123に出力する。以下、本開示に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理を実現するための動作について説明する。
【0100】
(実施形態1)
図15は、実施形態1に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
【0101】
図15に示すように、実施形態1に係るセンサ電源制御回路400は、例えば、検出回路40に含まれる制御回路122の内部回路により構成される。センサ電源制御回路400は、AFE出力値検出回路401と、閾値生成回路402と、比較判定回路403と、センサ電源制御信号出力回路404と、記憶回路405と、処理回路406と、を含む。
【0102】
AFE出力値検出回路401、閾値生成回路402、比較判定回路403、センサ電源制御信号出力回路404、及び処理回路406の機能は、例えば、信号処理回路44に統合されても良い。また、記憶回路405の機能は、例えば、記憶回路46に統合されても良い。
【0103】
センサ電源制御回路400は、後述するキャリブレーション処理において、検出領域AAの全域の光センサPDに供給するセンサ電源電位VDDSNSを変更するためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを電源回路123に出力する。
【0104】
図16は、実施形態1に係る検出装置の全体的な動作の一例を示すフローチャートである。本開示において、検出装置1の制御回路122は、
図16に示す全体的な動作の一環として、センサ電源電位のキャリブレーション処理を実行するためのタイマ処理を実行する。
【0105】
実施形態1において、本開示において、制御回路122は、初回通電時(例えば、検出装置1の製造ラインにおける検査工程)において、実施形態1に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理を実行するためのキャリブレーション処理実行タイマTを初期設定する。具体的に、制御回路122は、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)とする。
【0106】
検出装置1が起動すると(ステップS001)、制御回路122は、キャリブレーション処理実行タイマTの値が所定のキャリブレーション処理実行時間閾値Tth以上であるか否かを判定する(ステップS002)。キャリブレーション処理実行時間閾値Tthは、デバイスの特性に応じて適宜設定される。
【0107】
キャリブレーション処理実行タイマTの値が所定のキャリブレーション処理実行時間閾値Tth未満であれば(T<Tth、ステップS002;No)、制御回路122は、上述した検出処理を実行後(ステップS004)、所定の終了処理を実行して(ステップS005)、
図15に示す検出装置1における全体的な動作を終了する。
【0108】
キャリブレーション処理実行タイマTの値が所定のキャリブレーション処理実行時間閾値Tth以上である場合(T≧Tth、ステップS002;Yes)、制御回路122は、
図17に示す実施形態1に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理(
図16のステップS100に対応)を実行する。
図17は、実施形態1に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
【0109】
図17に示す実施形態1に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理において、制御回路122は、キャリブレーション用検出動作を実行する。具体的に、制御回路122は、第1光源61又は第2光源62を所定の光量(例えば1[μW])で点灯させ(ステップS101)、電源回路123は、制御回路122から出力されるセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLに基づくセンサ電源電位VDDSNSを、検出領域AAの全域の光センサPDに供給する(ステップS102)。
【0110】
AFE出力値検出回路401は、AFE回路48から出力されるAFE出力値AFESIG(n,m)(nは1~Nの自然数、mは1~Mの自然数、
図4参照)を検出し(ステップS103)、当該AFE出力値AFESIG(n,m)を記憶回路405に順次記憶する(ステップS104)。
【0111】
AFE出力値検出回路401は、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)が記憶されたか否かを判定する(ステップS105)。検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)が記憶されていない場合(ステップS105;No)、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)が記憶されるまで(ステップS105;Yes)、ステップS103からステップS104の処理を繰り返し実行する。
【0112】
検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)が記憶されると(ステップS105;Yes)、
図18に示すAFE出力値情報が生成される。
図18は、AFE出力値情報の一例を示す図である。
図18に示すAFE出力値情報は、記憶回路405(記憶回路46)の記憶領域に格納される。
【0113】
ステップS101からステップS105の処理によって
図18に示すAFE出力値情報を生成した後、センサ電源制御回路400は、取得した検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)の降順ソート処理を実行し(ステップS111~ステップS121)、
図19に示すAFE出力値降順ソート情報を生成する。
図19は、実施形態1に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
図19では、降順の順位pに対応するAFE出力値を「AFESIG(p)」としている。
【0114】
図19に示すAFE出力値降順ソート情報には、各順位におけるAFE出力値の初期値として、「Null値」が格納されている。以下に示す降順ソート処理を実行することにより、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)が降順に並ぶAFE出力値降順ソート情報が生成される。
【0115】
具体的に、処理回路406は、n=0、m=0、p=0(pは1~N×M(=P)の自然数)とし(ステップS111)、m=m+1とし(ステップS112)、n=n+1として(ステップS113)、記憶回路405からAFE出力信号レベルAFESIG(n,m)を読み出す(ステップS114)。
【0116】
処理回路406は、p=p+1として(ステップS115)、順位pに対応するAFE出力値AFESIG(p)を読み出し(ステップS116)、AFE出力値AFESIG(n,m)がAFE出力値AFESIG(p)以上であるか否かを判定する(AFESIG(n,m)≧AFESIG(p)、ステップS117)。
【0117】
AFE出力値AFESIG(n,m)がAFE出力値AFESIG(p)未満である場合(AFESIG(n,m)<AFESIG(p)、ステップS117;No)、ステップS115~ステップS117の処理を繰り返し実行する。
【0118】
AFE出力値AFESIG(n,m)がAFE出力値AFESIG(p)以上である場合(AFESIG(n,m)≧AFESIG(p)、ステップS117;Yes)、処理回路406は、現在の順位pのAFE出力値AFESIG(p)以降をインクリメントし(AFESIG(P-1)=AFESIG(P),・・・,AFESIG(p)=AFESIG(p+1))、AFE出力値AFESIG(n,m)を順位pのAFE出力値AFESIG(p)として格納する(ステップS118)。
【0119】
続いて、処理回路406は、n=Nであるか否かを判定する(ステップS119)。n=Nでなければ(ステップS119;No)、ステップS113からステップS119の処理を繰り返し実行する。n=Nであれば(ステップS119;Yes)、n=0とし(ステップS120)、m=Mであるか否かを判定する(ステップS121)。m=Mでなければ(ステップS121;No)、ステップS112からステップS121の処理を繰り返し実行する。
【0120】
上記した降順ソート処理(ステップS111~ステップS121)により、
図19に示すAFE出力値降順ソート情報が生成される。なお、
図19に示すAFE出力値AFESIG(q),AFESIG(q+1),・・・,AFESIG(q+r)は同一値である。
【0121】
m=Mとなると(ステップS121;Yes)、閾値生成回路402は、記憶回路405に格納されたAFE出力値降順ソート情報を読み出し、AFE出力値AFESIG(p)に対する閾値AFESIGthを抽出する(ステップS131)。ここで、閾値AFESIGthの具体例について、
図19及び
図20を参照して説明する。
図20は、実施形態1に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。
図20に示すヒストグラムは、
図19に示すAFE出力値降順ソート情報から導出することができる。
【0122】
本開示では、
図20に示すように、同一値のAFE出力値AFESIG(p)が最も多いAFE出力値AFESIG(p)を、閾値AFESIGthとする。
図19では、同一値であるAFE出力値AFESIG(q),AFESIG(q+1),・・・,AFESIG(q+r)を閾値AFESIGthとした例を示している(AFESIG(q)=AFESIG(q+1)=,・・・,=AFESIG(q+r)=AFESIGth)。なお、ここで例示した閾値AFESIGthの導出手法は一例であって、閾値AFESIGthの導出手法により本開示が限定されるものではない。
【0123】
閾値生成回路402は、抽出した閾値AFESIGthを記憶回路405に記憶する(ステップS132)。
【0124】
比較判定回路403は、記憶回路405に記憶された閾値AFESIGthを読み出し(ステップS133)、閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aを抽出し(ステップS134、
図19参照)、閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aが所定数Ath以上であるか否かを判定する(ステップS135)。閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aする閾値である所定数Athは、例えば10(Ath=10)とされる。ここで例示した所定数Ath=10は一例であって、所定数Athにより本開示が限定されるものではない。
【0125】
閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aが所定数Ath未満である場合(A<Ath、ステップS135;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。
【0126】
閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aが所定数Ath以上である場合(A≧Ath、ステップS135;Yes)、センサ電源制御信号出力回路404は、電源回路123がセンサ電源電位VDDSNSをΔVだけ上昇させるためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを生成し(ステップS191)、当該センサ電源制御信号VDDSNSCTRLを電源回路123に出力して、ステップS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0127】
閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aが所定数Ath未満となると(A<Ath、ステップS135;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。センサ電源電位VDDSNSの上昇値であるΔVの値は、例えば0.1[V](ΔV=0.1[V])とされる。ここで例示したセンサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値(=0.1[V])は一例であって、センサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値により本開示が限定されるものではない。
【0128】
実施形態1に係る検出装置1は、所定時間(キャリブレーション処理実行時間)が経過するごとに、上述したキャリブレーション処理を実行する。これにより、
図21に示すように、時間tの経過に伴い、センサ電源電位VDDSNSが上昇する。
図21は、実施形態1に係る検出装置におけるセンサ電源電位の時間変化の一例を示す図である。
【0129】
上述した実施形態1によれば、所定時間(キャリブレーション処理実行時間閾値Tth)以上経過するごとに、実施形態1に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理を実行する。具体的に、実施形態1に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理では、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)のうち、閾値AFESIGth以上であるAFE出力値AFESIG(p)の数Aが所定数Ath以上である場合に、センサ電源電位VDDSNSを上昇させる。
【0130】
これにより、検出領域AAの全域に一定の光量(例えば1[μW])を照射した際の検出領域AAの全域の光センサPDに対応するAFE出力値の経時変化に応じて、センサ電源電位VDDSNSを上昇させることが出来る。この結果として、検出領域AAの全域の光センサPDに印加する逆バイアス電圧を上昇させることができ、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラを抑制し、検出精度や撮像特性を向上することができる。
【0131】
(実施形態2)
図22は、実施形態2に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
図23は、実施形態2に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
図24は、実施形態2に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
図25は、実施形態2に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。なお、全体的な動作、AFE出力値情報、及び実施形態2に係る検出装置1におけるセンサ電源電位の時間変化については、実施形態1と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、実施形態2に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成及びセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理についても、実施形態1と同様の処理については、重複する説明を省略する場合がある。
【0132】
図22に示すように、実施形態2に係るセンサ電源制御回路400aは、実施形態1に係るセンサ電源制御回路400の構成に加えて、平均値算出回路407を含む。平均値算出回路407の機能は、AFE出力値検出回路401、閾値生成回路402、比較判定回路403a、センサ電源制御信号出力回路404、及び処理回路406の機能と同様に、例えば、信号処理回路44に統合されても良い。
【0133】
図23に示す実施形態2に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理において、降順ソート処理(ステップS111~ステップS121)により、
図24に示すAFE出力値降順ソート情報が生成された後、閾値生成回路402は、記憶回路405に格納されたAFE出力値降順ソート情報を読み出し、後述する平均値AFESIGaveに対する閾値AFESIGavethを抽出する(ステップS141、
図24及び
図25参照)。閾値AFESIGavethの抽出手法については、実施形態1の閾値AFESIGthと同様である。
【0134】
平均値算出回路407は、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の上位値を抽出する(ステップS142)。また、平均値算出回路407は、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の下位値を抽出する(ステップS143)。AFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数は、例えば、それぞれ10とされる。
図24では、降順の順位1から順位10のAFE出力値AFESIG(1)~AFESIG(10)を上位値として抽出し、昇順の順位Pから順位P-9のAFE出力値AFESIG(P)~AFESIG(P-9)を下位値として抽出する例を示しているが、ここで例示したAFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数=10は一例であって、AFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数により本開示が限定されるものではない。
【0135】
平均値算出回路407は、抽出した降順の順位1から順位10のAFE出力値AFESIG(1)~AFESIG(10)、及び、昇順の順位Pから順位P-9のAFE出力値AFESIG(P)~AFESIG(P-9)の平均値AFESIGaveを算出する(ステップS144)。
【0136】
平均値算出回路407は、算出した平均値AFESIGaveを記憶回路405に記憶する(ステップS145)。
【0137】
比較判定回路403aは、記憶回路405に記憶された閾値AFESIGaveth及び平均値AFESIGaveを読み出し(ステップS146)、平均値AFESIGaveが閾値AFESIGaveth以上である否かを判定する(ステップS147)。
【0138】
平均値AFESIGaveが閾値AFESIGaveth未満である場合(AFESIGave<AFESIGaveth、ステップS147;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。
【0139】
平均値AFESIGaveが閾値AFESIGaveth以上である場合(AFESIGave≧AFESIGaveth、ステップS147;Yes)、センサ電源制御信号出力回路404は、電源回路123がセンサ電源電位VDDSNSをΔVだけ上昇させるためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを生成し(ステップS191)、当該センサ電源制御信号VDDSNSCTRLを電源回路123に出力して、ステップS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0140】
平均値AFESIGaveが閾値AFESIGaveth未満となると(AFESIGave<AFESIGaveth、ステップS147;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。センサ電源電位VDDSNSの上昇値であるΔVの値は、例えば0.1[V](ΔV=0.1[V])とされる。ここで例示したセンサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値(=0.1[V])は一例であって、センサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値により本開示が限定されるものではない。
【0141】
上述した実施形態2によれば、所定時間(キャリブレーション処理実行時間閾値Tth)以上経過するごとに、実施形態2に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理を実行する。具体的に、実施形態2に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理では、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)のうち、上位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)と、下位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)との平均値AFESIGaveが閾値AFESIGaveth以上である場合に、センサ電源電位VDDSNSを上昇させる。
【0142】
これにより、実施形態1と同様に、検出領域AAの全域に一定の光量(例えば1[μW])を照射した際の検出領域AAの全域の光センサPDに対応するAFE出力値の経時変化に応じて、センサ電源電位VDDSNSを上昇させることが出来る。この結果として、検出領域AAの全域の光センサPDに印加する逆バイアス電圧を上昇させることができ、実施形態1と同様に、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラを抑制し、検出精度や撮像特性を向上することができる。
【0143】
(実施形態3)
図26は、実施形態3に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
図27は、実施形態3に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。
図28は、実施形態3に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理のベースとなるAFE出力値降順ソート情報の一例を示す図である。
図29は、実施形態3に係るAFE出力値の分布の一例を示すヒストグラムである。なお、全体的な動作、AFE出力値情報、及び実施形態3に係る検出装置1におけるセンサ電源電位の時間変化については、実施形態1及び実施形態2と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、実施形態3に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成及びセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理についても、実施形態1及び実施形態2と同様の処理については、重複する説明を省略する場合がある。
【0144】
図26に示す実施形態3に係るセンサ電源制御回路400bの記憶回路405aには、後述する上位平均値AFESIGaveU及び下位平均値AFESIGaveLの閾値範囲AFESIGthRが予め記憶されている。閾値範囲AFESIGthRは、デバイスの特性に応じて適宜設定される。
【0145】
図27に示す実施形態3に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理では、降順ソート処理(ステップS111~ステップS121)により、
図28に示すAFE出力値降順ソート情報が生成される。その後、閾値生成回路402aは、記憶回路405に格納されたAFE出力値降順ソート情報を読み出し、後述する上位平均値AFESIGaveUに対する上位閾値AFESIGthU(第1閾値)及び下位平均値AFESIGaveLに対する下位閾値AFESIGthL(第2閾値)の中央値AFESIGthCを抽出する(ステップS151、
図28及び
図29参照)。中央値AFESIGthCの抽出手法については、実施形態1の閾値AFESIGthと同様である。
【0146】
続いて、閾値生成回路402aは、上位平均値AFESIGaveUに対する上位閾値AFESIGthU(第1閾値)及び下位平均値AFESIGaveLに対する下位閾値AFESIGthL(第2閾値)を設定する(ステップS152、
図29参照)。具体的に、閾値生成回路402aは、例えば、ステップS151において抽出した中央値AFESIGthCに対し、閾値範囲AFESIGthRの半値を加算して、上位閾値AFESIGthUを算出する。また、閾値生成回路402aは、例えば、ステップS151において抽出した中央値AFESIGthCから、閾値範囲AFESIGthRの半値を減算して、下位閾値AFESIGthLを算出する。
【0147】
そして、閾値生成回路402aは、算出した上位閾値AFESIGthUを、上位平均値AFESIGaveUに対する閾値(第1閾値)として設定し、算出した下位閾値AFESIGthLを、下位平均値AFESIGaveLに対する閾値(第2閾値)として設定する。なお、ここで例示した上位閾値AFESIGthU及び下位閾値AFESIGthLの設定手法は一例であって、上位閾値AFESIGthU及び下位閾値AFESIGthLの設定手法により本開示が限定されるものではない。
【0148】
平均値算出回路407aは、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の上位値を抽出する(ステップS153)。AFE出力値AFESIG(p)の上位値を抽出する所定数は、例えば10とされる。この場合、平均値算出回路407aは、抽出した降順の順位1から順位10のAFE出力値AFESIG(1)~AFESIG(10)の上位平均値AFESIGaveUを算出し(ステップS154)、当該上位平均値AFESIGaveUを記憶回路405aに記憶する(ステップS155)。
【0149】
また、平均値算出回路407aは、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の下位値を抽出する(ステップS156)。AFE出力値AFESIG(p)の下位値を抽出する所定数は、例えば10とされる。この場合、平均値算出回路407aは、抽出した昇順の順位Pから順位P-9のAFE出力値AFESIG(P)~AFESIG(P-9)の下位平均値AFESIGaveLを算出し(ステップS157)、当該下位平均値AFESIGaveLを記憶回路405aに記憶する(ステップS158)。
【0150】
なお、
図28では、降順の順位1から順位10のAFE出力値AFESIG(1)~AFESIG(10)を上位値として抽出し、昇順の順位Pから順位P-9のAFE出力値AFESIG(P)~AFESIG(P-9)を下位値として抽出する例を示しているが、ここで例示したAFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数=10は一例であって、AFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数により本開示が限定されるものではない。
【0151】
比較判定回路403bは、記憶回路405aに記憶された上位閾値AFESIGthU及び上位平均値AFESIGaveUを読み出し(ステップS159)、上位平均値AFESIGaveUが上位閾値AFESIGthU以上である否かを判定する(ステップS160)。
【0152】
上位平均値AFESIGaveUが上位閾値AFESIGthU未満である場合(AFESIGaveU<AFESIGthU、ステップS160;No)、比較判定回路403bは、記憶回路405aに記憶された下位閾値AFESIGthL及び下位平均値AFESIGaveLを読み出し(ステップS161)、下位平均値AFESIGaveLが下位閾値AFESIGthL以下である否かを判定する(ステップS162)。
【0153】
下位平均値AFESIGaveLが下位閾値AFESIGthLよりも大きい場合(AFESIGaveL>AFESIGthL、ステップS162;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。
【0154】
上位平均値AFESIGaveUが上位閾値AFESIGthU以上である場合(AFESIGaveU≧AFESIGthU、ステップS160;Yes)、又は、下位平均値AFESIGaveLが下位閾値AFESIGthL以下である場合(AFESIGaveL≦AFESIGthL、ステップS162;Yes)、センサ電源制御信号出力回路404は、電源回路123がセンサ電源電位VDDSNSをΔVだけ上昇させるためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを生成する(ステップS191)。そして、生成したセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを電源回路123に出力して、ステップS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0155】
上位平均値AFESIGaveUが上位閾値AFESIGthU未満(AFESIGaveU<AFESIGthU、ステップS160;No)、且つ、下位平均値AFESIGaveLが下位閾値AFESIGthLよりも大きくなると(AFESIGaveL>AFESIGthL、ステップS162;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。センサ電源電位VDDSNSの上昇値であるΔVの値は、例えば0.1[V](ΔV=0.1[V])とされる。ここで例示したセンサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値(=0.1[V])は一例であって、センサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値により本開示が限定されるものではない。
【0156】
上述した実施形態3によれば、所定時間(キャリブレーション処理実行時間閾値Tth)以上経過するごとに、実施形態3に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理を実行する。具体的に、実施形態3に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理では、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)のうち、上位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)の平均値である上位平均値AFESIGaveUが上位閾値AFESIGthU(第1閾値)以上、又は、下位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)の平均値である下位平均値AFESIGaveLが下位閾値AFESIGthL(第2閾値)以下である場合に、センサ電源電位VDDSNSを上昇させる。
【0157】
これにより、実施形態1及び実施形態2と同様に、検出領域AAの全域に一定の光量(例えば1[μW])を照射した際の検出領域AAの全域の光センサPDに対応するAFE出力値の経時変化に応じて、センサ電源電位VDDSNSを上昇させることが出来る。この結果として、検出領域AAの全域の光センサPDに印加する逆バイアス電圧を上昇させることができ、実施形態1及び実施形態2と同様に、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラを抑制し、検出精度や撮像特性を向上することができる。
【0158】
(実施形態4)
図30は、実施形態4に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成の一例を示す図である。
図31は、実施形態4に係るセンサ電源電位のキャリブレーション処理の一例を示すフローチャートである。なお、全体的な動作、AFE出力値情報、AFE出力値降順ソート情報、AFE出力値の分布の一例を示すヒストグラム、及び実施形態3に係る検出装置1におけるセンサ電源電位の時間変化については、上述した各実施形態と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。また、実施形態4に係る検出装置のセンサ電源制御回路の回路構成及びセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理についても、上述した各実施形態と同様の処理については、重複する説明を省略する場合がある。
【0159】
図30に示すように、実施形態4に係るセンサ電源制御回路400cは、閾値生成回路に代えて、差分値算出回路408を含む。差分値算出回路408の機能は、AFE出力値検出回路401、比較判定回路403c、センサ電源制御信号出力回路404、処理回路406、及び平均値算出回路407aの機能と同様に、例えば、信号処理回路44に統合されても良い。
【0160】
図30に示す実施形態4に係るセンサ電源制御回路400cの記憶回路405bには、後述する上位平均値AFESIGaveUと下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrに対する差分閾値ΔAFESIGrthが予め記憶されている。差分閾値ΔAFESIGrthは、デバイスの特性に応じて適宜設定される。
【0161】
図31に示す実施形態4に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理において、降順ソート処理(ステップS111~ステップS121)により、上述した各実施形態と同様のAFE出力値降順ソート情報が生成される。その後、平均値算出回路407aは、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の上位値を抽出する(ステップS171)。AFE出力値AFESIG(p)の上位値を抽出する所定数は、例えば10とされる。この場合、平均値算出回路407aは、抽出した降順の順位1から順位10のAFE出力値AFESIG(1)~AFESIG(10)の上位平均値AFESIGaveUを算出し(ステップS172)、当該上位平均値AFESIGaveUを記憶回路405bに記憶する(ステップS173)。
【0162】
また、平均値算出回路407aは、AFE出力値降順ソート情報を参照して、AFE出力値AFESIG(p)の所定数の下位値を抽出する(ステップS174)。AFE出力値AFESIG(p)の下位値を抽出する所定数は、例えば10とされる。この場合、平均値算出回路407aは、抽出した昇順の順位Pから順位P-9のAFE出力値AFESIG(P)~AFESIG(P-9)の下位平均値AFESIGaveLを算出し(ステップS175)、当該下位平均値AFESIGaveLを記憶回路405bに記憶する(ステップS176)。
【0163】
なお、ここで例示したAFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数=10は一例であって、AFE出力値AFESIG(p)の上位値及び下位値を抽出する所定数により本開示が限定されるものではない。
【0164】
差分値算出回路408は、記憶回路405bに記憶された上位平均値AFESIGaveU及び下位平均値AFESIGaveLを読み出し(ステップS177)、上位平均値AFESIGaveUと下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrを算出し(ステップS178)、当該差分値ΔAFESIGrを記憶回路405bに記憶する(ステップS179)。
【0165】
比較判定回路403cは、記憶回路405bに記憶された差分値ΔAFESIGr及び差分閾値ΔAFESIGrthを読み出し(ステップS180)、上位平均値AFESIGaveUと下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrが差分閾値ΔAFESIGrth以上である否かを判定する(ステップS181)。
【0166】
上位平均値AFESIGaveUと下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrが差分閾値ΔAFESIGrth未満である場合(ΔAFESIGr<ΔAFESIGrth、ステップS181;No)、
図16に示す検出装置1の全体動作に戻り、キャリブレーション処理実行タイマTの値を「0」(T=0)として(ステップS003)、以降の検出処理(ステップS004)に移行する。
【0167】
上位平均値AFESIGaveUと下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrが差分閾値ΔAFESIGrth以上である場合(ΔAFESIGr≧ΔAFESIGrth、ステップS181;Yes)、センサ電源制御信号出力回路404は、電源回路123がセンサ電源電位VDDSNSをΔVだけ上昇させるためのセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを生成する(ステップS191)。そして、生成したセンサ電源制御信号VDDSNSCTRLを電源回路123に出力して、ステップS102以降の処理を繰り返し実行する。センサ電源電位VDDSNSの上昇値であるΔVの値は、例えば0.1[V](ΔV=0.1[V])とされる。ここで例示したセンサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値(=0.1[V])は一例であって、センサ電源電位VDDSNSの上昇値ΔVの値により本開示が限定されるものではない。
【0168】
上述した実施形態4によれば、所定時間(キャリブレーション処理実行時間閾値Tth)以上経過するごとに、実施形態4に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理を実行する。具体的に、実施形態4に係るセンサ電源電位VDDSNSのキャリブレーション処理では、検出領域AAの全域の光センサPDに対応する全てのAFE出力値AFESIG(n,m)のうち、上位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)の平均値である上位平均値AFESIGaveUと、下位の所定数のAFE出力値AFESIG(p)の平均値である下位平均値AFESIGaveLとの差分値ΔAFESIGrが差分閾値ΔAFESIGrth以上である場合に、センサ電源電位VDDSNSを上昇させる。
【0169】
これにより、上述した各実施形態と同様に、検出領域AAの全域に一定の光量(例えば1[μW])を照射した際の検出領域AAの全域の光センサPDに対応するAFE出力値の経時変化に応じて、センサ電源電位VDDSNSを上昇させることが出来る。この結果として、検出領域AAの全域の光センサPDに印加する逆バイアス電圧を上昇させることができ、上述した各実施形態と同様に、光センサPDの欠陥に起因するスポットムラを抑制し、検出精度や撮像特性を向上することができる。
【0170】
なお、上述した各実施形態では、キャリブレーション処理実行タイマTの値が所定のキャリブレーション処理実行時間閾値Tth以上となった場合に、センサ電源電位のキャリブレーション処理を実行する態様を例示したが、所定時間以上経過した場合に、あるいは、所定時間以上経過するごとに、センサ電源電位VDDSNSを上昇させる態様であっても良い。
【0171】
以上、本発明の好適な実施の形態を説明したが、本発明はこのような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した各実施形態及び各変形例の要旨を逸脱しない範囲で、構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。
【符号の説明】
【0172】
1 検出装置
10 センサ領域
11 検出制御回路
15 ゲート線駆動回路
16 信号線選択回路
21 センサ基材
22 センサ構造体
23 保護膜
40 検出回路
42 検出信号増幅回路
43 A/D変換回路
44 信号処理回路
46 記憶回路
47 検出タイミング制御回路
48 AFE回路
61 第1光源(光源)
62 第2光源(光源)
122 制御回路
123 電源回路
221 TFT層
222 カソード電極(下部電極)(又は、アノード電極(下部電極))
223 正孔輸送層(下側バッファ層)(又は、電子輸送層(下側バッファ層))
224 活性層
225 電子輸送層(上側バッファ層)(又は、正孔輸送層(上側バッファ層))
226 アノード電極(上部電極)(又は、カソード電極(上部電極))
400,400a センサ電源制御回路
401 AFE出力値検出回路
402,402a 閾値生成回路
403,403a,403b,403c 比較判定回路
404 センサ電源制御信号出力回路
405,405a,405b 記憶回路
406 処理回路
407,407a 平均値算出回路
408 差分値算出回路
AA 検出領域
GA 周辺領域
GCL ゲート線
PD 光センサ(有機フォトダイオード)
Pdet 読み出し期間
Pex 露光期間
RSW リセットスイッチ
SGL 信号線
SSW スイッチ