(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088495
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】吸着グリッパ、被把持物品の搬送装置及び被把持物品の搬送方法
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203706
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曳地 豊
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707DS01
3C707EV12
3C707EV14
(57)【要約】
【課題】被把持物品を被把持部の形状にかかわらず確実に把持すること。
【解決手段】可撓性及び気密性を有する中空バッグ21の内部に粒状体22を収容してなる把持部2と、中空バッグ21内と連通し、且つ中空バッグ21内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路3とを備え、把持部2における粒状体22が収容された粒状体収容部分23が、中空バッグ21内が減圧された状態で固形化するようになされている吸着グリッパ1であって、開口41を有し、把持部2の少なくとも一部を覆う笠部4を備え、把持部2における粒状体収容部分23の容積V1が、笠部4の内側の容積よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性及び気密性を有する中空バッグの内部に粒状体が収容されてなる把持部と、前記中空バッグ内と連通し、且つ該中空バッグ内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路とを備え、前記把持部における前記粒状体が収容された粒状体収容部分が、前記中空バッグ内が減圧された状態で固形化するようになされている吸着グリッパであって、
開口を有し、前記把持部の少なくとも一部を覆う笠部を備え、
前記把持部における前記粒状体収容部分の容積が、前記笠部の内側の容積よりも小さい吸着グリッパ。
【請求項2】
前記笠部は、前記開口側に筒状部を有する、請求項1に記載の吸着グリッパ。
【請求項3】
前記笠部は、前記最奥部側に、前記開口側に向かって断面積が漸次拡大するテーパー部を有する、請求項1又は2に記載の吸着グリッパ。
【請求項4】
大気解放自然状態において、前記把持部における前記粒状体収容部分は、前記笠部の内側に存する部分の容積Vaの、前記粒状体収容部分の容積V1に対する割合が、0%以上70%以下である、請求項2又は3に記載の吸着グリッパ。
【請求項5】
可撓性及び気密性を有する中空バッグの内部に粒状体が収容されてなる把持部と、前記中空バッグ内と連通し、且つ該中空バッグ内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路とを備え、前記把持部における前記粒状体が収容された粒状体収容部分が、前記中空バッグ内が減圧された状態で固形化するようになされている吸着グリッパを用いた被把持物品の搬送方法であって、
前記吸着グリッパは、開口を有し、前記把持部の少なくとも一部を覆う笠部を備えており、
前記被把持物品の搬送方法は、
前記吸着グリッパを移動させて、内部が大気解放状態又は所定の圧力に調整された状態の前記中空バッグを前記被把持物品に接触させ、さらに該吸着グリッパを、該被把持物品の一部が該把持部に囲まれた状態で前記笠部の内側に位置するまで、又は前記粒状体収容部分の全ての部分が笠部の内側に入り込んだ状態となるまで移動させた後、該中空バッグ内を減圧して前記粒状体収容部分を固形化させる、把持ステップと、
前記吸着グリッパで把持した前記被把持物品を搬送先の場所に搬送させる、搬送ステップと、
前記中空バッグ内の減圧状態を解除し、該被把持物品の把持を解除する、把持解除ステップとを有する、被把持物品の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着グリッパ、被把持物品の搬送装置及び被把持物品の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器入り製品の製造ラインでは、容器のライン投入、抜出検査、完成品の箱詰め等を行う際に、ロボットアームによって、容器を把持し、持ち上げる作業(ピッキング作業)が行われることがある。
【0003】
ロボットアームによって物品を把持する手段として、吸着グリッパが知られている。
例えば特許文献1には、一端に受圧面を有する固定部材に密着して取り付けられ、内部に粒体を充填させた可撓性かつ気密性の中空バッグを有する把持部と、中空バッグ内の圧力を所定負圧に減圧しかつ大気圧に戻すことができる減圧装置とを有する吸着グリッパが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ハンド本体のワーク対向側に取り付けられ、柔軟性かつ気密性を有する中空の把持バッグと、ハンド本体を通して把持バッグ内に粉粒体を供給し排出可能な粉粒体給排装置と、ハンド本体を通して把持バッグ内の気体圧力を減圧及び加圧可能な圧力制御装置と、ハンド本体の外周部に設けられ把持バッグの外縁部分をハンド本体より内側に付勢する付勢装置とを備えた汎用ロボットハンドが記載されている。
【0005】
特許文献3には、流体の出入口と連結した開口部を有する変形可能な膜と、該膜内に配置された粒状材料とを含む装置が記載されている。また、特許文献3には、前記開口部から前記膜の周りの一部まで延設されたカラーをさらに備えた前記装置が記載されている。
【0006】
特許文献4には、可撓性を有し粉粒物を収容する袋体と、前記袋体を把持対象物に押し付ける押し付け手段と、前記袋体内の気体を吸引する吸引手段とを備える物体把持装置が記載されている。当該物体把持装置は、前記吸引手段が前記袋体内の気体を吸引することにより、前記袋体と前記把持対象物との接触面に摩擦力を生じさせ、該摩擦力により前記袋体と前記把持対象物との間に密閉された負圧空間を生じさせるようになっている。また、特許文献4には、浅いボウル容器を逆さにした様な形状であって、前記袋体の一部を覆うようにして袋体を保持しているハンドカバーを備えた物体把持装置について記載されている。
【0007】
特許文献1~4に記載された吸着グリッパ等は、いずれも、把持部における粒状体が収容された部分が、被把持物品に押し付けられてから減圧されることで、前記被把持物品に応じた形状に変形した状態で固形化する。そして、固形化した把持部で被把持物品を把持し、持ち上げられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-236239号公報
【特許文献2】特開2013-220508号公報
【特許文献3】特表2013-523478号公報
【特許文献4】特開2015-202543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1~4に記載された吸着グリッパ等は、被把持物品の形状や配列状態によっては、被把持物品の把持が不十分となる場合があることが判った。
例えば、被把持物品の被把持部の形状が複雑になっている場合、粒状体を有する把持部が被把持物品の形状的に入り組んだ部位(例えば押込式のポンプ容器のノズル部等)に侵入しにくくなるため、把持部が被把持物品に応じた形状に変形し辛くなり、被把持物品を確実に把持して持ち上げることが困難になる恐れがある。また複数の被把持物品が比較的近い間隔で並んでいるような場合、把持すべき被把持物品に隣接する被把持物品が、把持部による把持の障害となることも考えられる。
【0010】
本発明の課題は、従来技術が有する課題を解決可能な吸着グリッパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、可撓性及び気密性を有する中空バッグの内部に粒状体が収容されてなる把持部と、前記中空バッグ内と連通し、且つ該中空バッグ内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路とを備えた吸着グリッパに関する。
前記吸着グリッパは、前記把持部における前記粒状体が収容された粒状体収容部分が、前記中空バッグ内が減圧された状態で固形化するようになされていることが好ましい。
前記吸着グリッパは、開口を有し、前記把持部の少なくとも一部を覆う笠部を備えることが好ましい。前記把持部は、前記粒状体の占める容積が、前記笠部の内側の容積よりも小さいことが好ましい。
また本発明は、前記の吸着グリッパと、前記吸引手段と、前記吸着グリッパを保持しつつ変位させる変位装置を備える、被把持物品の搬送装置に関する。
【0012】
本発明は、可撓性及び気密性を有する中空バッグの内部に粒状体が収容されてなる把持部と、前記中空バッグ内と連通し、且つ該中空バッグ内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路とを備えた吸着グリッパを用いた被把持物品の搬送方法に関する。
前記吸着グリッパは、前記把持部における前記粒状体が収容された粒状体収容部分が、前記中空バッグ内が減圧された状態で固形化するようになされていることが好ましい。
前記吸着グリッパは、開口を有し、前記把持部の少なくとも一部を覆う笠部を備えていることが好ましい。
前記被把持物品の搬送方法は、前記吸着グリッパを移動させて、内部が大気解放状態又は所定の圧力に調整された状態の前記中空バッグを前記被把持物品に接触させ、さらに該吸着グリッパを、被把持物品の一部が該把持部に囲まれた状態で前記笠部の内側に位置するまで又は前記粒状体収容部分の全ての部分が笠部の内側に入り込んだ状態となるまで移動させた後、該中空バッグ内を減圧して前記粒状体収容部分を固形化させる、把持ステップを備えることが好ましい。前記被把持物品の搬送方法は、前記吸着グリッパで把持した前記被把持物品を搬送先の場所に搬送させる、搬送ステップを備えることが好ましい。前記被把持物品の搬送方法は、前記中空バッグ内の減圧状態を解除し、該被把持物品の把持を解除する、把持解除ステップとを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の吸着グリッパによれば、被把持部の形状にかかわらず被把持物品を確実に把持することが可能になる。
本発明の被把持物品の搬送装置及び搬送方法によれば、被把持部の形状にかかわらず被把持物品を確実に把持して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る吸着グリッパの好ましい一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る吸着グリッパの好ましい一実施形態における縦断面図である。
【
図3】
図3(a)及び(b)は、本発明に係る吸着グリッパの効果に関する説明図である。
【
図4】
図4は、本発明に係る吸着グリッパの使用例に関する説明図である。
【
図5】
図5(a)~(c)は、本発明に係る吸着グリッパの使用手順に関する説明図である。
【
図6】
図6(a)及び(b)は、本発明に係る吸着グリッパの使用手順に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の吸着グリッパを、その好ましい実施形態に基づき説明する。
図1には、本発明の一実施形態が示されている。
本実施形態の吸着グリッパ1は、
図1及び
図2に示すように、中空バッグ21の内部に粒状体22が収容されてなる把持部2と、中空バッグ21内と連通し、且つ該中空バッグ21の内部を減圧及び加圧できる吸引手段(図示せず)に接続される気体流路3と、把持部2の上部を覆う笠部4とを備えている。
【0016】
吸着グリッパ1は、笠部4が鉛直方向の上方、把持部2が鉛直方向の下方に位置する向きとして使用することが好ましい。例えば、笠部4が鉛直方向の上方、把持部2が鉛直方向の下方に位置する状態として、被把持物品5の真上にセットした状態(以下セット状態ともいう)とした後、その吸着グリッパ1で、被把持物品5を真上から把持することが好ましい(
図5(a)~(c)参照)。本実施形態の吸着グリッパ1は、前記セット状態において、吸着グリッパ1の高さ方向Zが、鉛直方向と略一致する。より具体的には、被把持物品を把持する前の状態(以下「非把持状態」ともいう)において、把持部2が笠部4から突出している側を鉛直方向の下側、把持部2の笠部4に覆われている側を鉛直方向の上側とした状態において、該鉛直方向に沿う方向が、吸着グリッパ1の高さ方向Zである。以下、特に断らない限り、本実施形態の吸着グリッパ1の説明は、前記セット状態を基本にして説明する。本発明において吸着グリッパは、その高さ方向Zを鉛直方向と非平行とした状態、例えば高さ方向Zを水平方向と平行とした状態、又は高さ方向Zを鉛直方向及び水平方向に対して角度を有する状態として使用してもよい。
【0017】
把持部2は、
図1及び
図2に示すように、中空バッグ21の内部に、粒状体22を収容したものである。把持部2は、
図2に示すように、被把持物品5を把持する前の非把持状態においては、粒状体22が収容された粒状体収容部分23を有すると共に、中空バッグ21の内部に、粒状体22が収容されていない粒状体非収容部分24を有する。被把持物品5を把持する前の非把持状態の中空バッグ21内は、粒状体非収容部分24を含めて、気体流路3等を介して外部空気を流入させた大気解放状態とされていることが好ましい。中空バッグ21の内部は、被把持物品5を把持する際には、減圧されて負圧とされるが、被把持物品5の把持を解除する際には、大気解放状態とすることが好ましい。把持部2に、以前に把持した被把持物品5の形状を残さない観点から、被把持物品5の把持を解除する際又は解除した後に、中空バッグ21内の圧力を一旦陽圧とした後、大気解放状態等の、次の被把持物品5を把持する準備状態とすることも好ましい。中空バッグ21内を大気解放状態とするには、例えば中空バッグ21と吸引手段(図示せず)とをつなぐ気体流路の途中又は該吸引手段に、気体流路と外部との連通状態を電磁弁等でオンオフ可能な外気導入路を設ける方法等、多様な方法を採用することができる。
被把持物品5を把持する前の非把持状態の中空バッグ21は、所定の圧力(好ましくは陽圧)に調整した気体を内部に含む状態であってもよく、被把持物品5に当接させる際の状態も、大気解放状態又は所定の圧力(好ましくは陽圧)に調整された状態が挙げられる。
中空バッグ21内の空気等の気体は、粒状体非収容部分24に加えて、粒状体収容部分23における粒状体22どうし間にも存在している。
本実施形態の気体は空気であるが、これに限られず、窒素ガス等であってもよく、2種以上のガスを任意の割合で混合した空気以外の混合ガス等であってもよい。把持部2は、後述する吸引手段によって前記気体を吸引され、内部が減圧されるようになっている。
【0018】
非把持状態の把持部2は、中空バッグ21が粒状体22及び気体を内部に含んでいることによって、側面視が楕円形状であって平面視が円形状である長球体状となっているが、これに限られず、球体状、楕円体状、扁球体状等であっても良い。
非把持状態の把持部2は、高さ方向Zに沿う回転中心とする回転体形状であることが好ましい。
【0019】
中空バッグ21は、内部に粒状体22を収容可能な収容空間を有する袋体である。中空バッグ21は、
図2に示すように、前記収容空間から外方に突出する吸排気口21aを有している。吸排気口21aが気体流路3の下端部に接続していることで、中空バッグ21と気体流路3とが連通している。
【0020】
中空バッグ21は、可撓性及び気密性を有するシート材によって袋状に形成されたものである。把持部2は、中空バッグ21が可撓性を備えていることにより、自在に変形可能になっている。また、把持部2は、中空バッグ21が気密性を有することによって、前記収容空間内の気体が吸引された際に減圧可能となる。中空バッグ21を形成するシート材としては、例えば、天然ゴムやラテックスゴム等のゴム製のエラストマーシート、等を用いることが良好な可撓性及び気密性を具備する観点から好ましい。
【0021】
粒状体22は、
図1及び
図2に示すように、中空バッグ21の前記収容空間内に収容されている。粒状体22は、中空バッグ21の前記収容空間内において自在に流動する。粒状体22は、中空バッグ21が前記収容空間内の気体を吸引されて減圧された際に、縮退した中空バッグ21によって締め固められて固形化する。本実施形態の粒状体22は、一例を示すとプラスチック製の粒状体であるが、これに限られず、例えば金属製、セラミックス製又は発泡スチロールの粒状体、天然砂、炒った豆、乾燥した木片等であっても良い。
粒状体22は、中空バッグ21を被把持物品5に応じた形状に変形させ易くする必要性から良好な流動性を有することが好ましい一方で、中空バッグ21が前記収容空間内の気体を吸引されて減圧した際には固形化する必要性があることから、適度な表面摩擦を有していることが好ましい。このような観点から、粒状体は、角部や凸部を有することが好ましい。本実施形態の粒状体22には、長尺円柱形状のプラスチックを短尺円柱状に切断したものが用いられているが、これに限られず、例えば角部や凸部を有する粒状体として、角部や凸部を有するように成形した合成材料(樹脂等)の粒状体、天然砂、炒った豆、乾燥した木片等であっても良い。
【0022】
把持部2は、可撓性を有する中空バッグ21の内部に流動性を有する粒状体22を収容したものであるため、被把持物品5に当接した際に、当接した部分の形状に沿って自在に変形する。そして、把持部2は、中空バッグ21が気密性を有していることから、当該変形した状態において内部の気体が後述する吸引手段によって吸引されて減圧された際に、粒状体収容部分23が変形した状態で固形化する。
【0023】
粒状体22の外形寸法は、粒状体収容部分23を被把持物品5の形状的に入り組んだ部位に侵入させ易くする観点から、好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。
粒状体22の外形寸法は、粒状体22が円柱形状である場合、軸方向に沿う長さと直径のうちの大きい方であり、粒状体22が、球状体の場合は、直径である。形状が、それ以外の形状や不定形の場合は、外表面の任意の2点間の距離のうち、長さが最大となる2点間の距離である。
円柱状の粒状体22の長さ(軸方向の長さ)は、好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。円柱状の粒状体22の直径は、同様の観点から、好ましくは1.0mm以上2.0mm以下である。円柱状の粒状体22の場合、直径に対する長さの比は、好ましくは0.5倍以上1.5倍以下である。
また、上述の通り、粒状体22は、円柱形状に限られず、角部や凸部を有する粒状体でも良い。
粒状体22の形態は、角部や凸部を有する粒状体、円柱状体等に限られず、吸着グリッパに従来使用されている各種公知の形態のものを使用することもできる。
粒状体22の外形寸法、円柱状の粒状体の長さ、直径及びそれらの比は、例えば、無作為に取り出した10個の粒状体22についての計測値の平均値を採用する。
【0024】
粒状体22の嵩比重は、良好な流動性を確保する観点から、好ましくは0.2g/cm3以上、より好ましくは0.5g/cm3以上であり、また好ましくは1.4g/cm3以下、より好ましくは1.1g/cm3以下であり、また好ましくは0.2g/cm3以上1.4g/cm3以下、より好ましくは0.4g/cm3以上1.1g/cm3以下である。
【0025】
中空バッグ21に対する粒状体22の充填率は、把持部2を被把持物品5の被把持部の形状に応じて変形させ易くする観点から、好ましくは50%以上70%以下である。
ここでいう、充填率は、中空バッグ21を、内部を大気解放状態とし、笠部4と分離しない状態で、且つ
図2に示すように鉛直方向に吊るした状態(以下「大気解放自然状態」ともいう」において測定される、中空バッグ21内の全容積に対する粒状体22が収容されている空間の容積の割合である。粒状体22が収容されている空間には、粒状体22どうし間の隙間も含まれる。
図2に、中空バッグ21の全容積に含める部分と含めない部分との境界を符号2eで示す。符号2eで示す境界より上側は、本実施形態において気体流路3である。
【0026】
笠部4は、
図1及び
図2に示すように、下方の端部に開口41を有する。笠部4は、高さ方向Zにおける開口41側に、筒状部43を有する。筒状部43の内面42の横断面形状は、円形状又は多角形状である。前記多角形状には、長方形、正方形といった矩形状や、三角形、五角形等といったその他の多角形状が含まれる。本実施形態では、笠部4に係る内面42の断面形状は、正方形状となっている。本実施形態において、高さ方向Zは、笠部4の中心軸に沿う方向に一致する。
筒状部43は、笠部4の上端に位置する基端部44から、下方に延設されている。基端部44には、気体流路3を形成するための挿通口45が設けられている。気体流路3は、基端部44を貫通して中空バッグ21内と連通している。本実施形態では、挿通口45に、気体流路3の一部を形成する端部固定部材32が挿通されて固定されており、該端部固定部材32の下端部に、中空バッグ21が、その吸排気口21aを介して取り付けられている。これにより、笠部4は、把持部2の上方部を覆った状態になされている。
筒状部43には、基端部44から開口41に向かって収容空間の横断面の面積が変化するものも含まれる。例えば、基端部44から開口41に向かって前記横断面の面積が漸増するもの、漸減するもの、漸増した後漸減するもの、漸減した後漸増するもの等も含まれる。
笠部4が、中空バッグ21の周囲を囲む筒状部43を有することで、個々の被把持物品5を把持する際に、隣接する被把持物品5が吸着グリッパ1に接触して把持の障害となることを抑制できたり、被把持物品5の被把持部が複雑な形状を有する場合、例えばノズル部等の、高さ方向Zに対して横方向に延びる部分を有する場合等であっても、把持部2を該形状に応じた形状に変化させ易くなり、被把持部の把持が確実になる等の利点がある。
筒状部43は、大気解放自然状態において、中空バッグ21の高さ方向Zの長さの半分以上の部分を取り囲んでいることが、被把持部の確実な把持の観点から好ましい。
【0027】
本実施形態の笠部4は、把持する直前の準備状態において、開口41の高さ位置が、把持部2の下端部の高さ位置よりも高くなっており、把持部2の下端部が、笠部4の開口41から下方に露出している。これにより、把持部2が被把持物品の適切な位置に当接したことの確認が容易である等の効果が奏される。
【0028】
笠部4は、開口41側に、内面の形状及び寸法が高さ方向において一定であるストレート部46を有する。ストレート部46は、典型的には、内径、円相当径又は相対向する内面どうし間の距離dが一定である。例えば、笠部の横断面形状が円形である場合は、内径dが高さ方向Zにおいて一定であることが好ましく、笠部の横断面形状が矩形状又は正六角形状等である場合は、内径又は相対向する内面42どうし間の距離dが高さ方向Zにおいて一定であることが好ましく、笠部の横断面形状が三角形状、五角形状等の場合は円相当径が高さ方向Zにおいて一定であることが好ましい。円相当径は、高さ方向Zと直交する平面において、笠部の内面で囲まれた領域の面積と同一面積の円の直径である。
ここで、相対向する内面42どうし間の距離の値が複数存在する場合は、当該距離の値が最小となる値を、相対向する内面42どうし間の距離dとする。また、内径、円相当径又は相対向する内面42どうし間の距離dが一定であるとは、製造上必要な抜き勾配や、内面42に機能上影響のない凹凸等を許容することを意味している。本実施形態のストレート部46は、横断面形状が矩形状、より具体的には正方形状であり、相対向する内面が二組存在しており、少なくとも内面どうし間の距離が短い方の一組について相対向する内面どうし間の距離dが一定であり、より具体的には、その二組とも相対向する内面どうし間の距離が一定である。ストレート部46の内径は、典型的には、ストレート部46の内面の横断面形状が円形状の場合であるが、円形状には、長軸の長さが短軸の長さの1.0以上1.1倍以内の真円状の他、長軸の長さが短軸の長さの1.1超で好ましくは3倍以内の楕円状も含まれる。この場合、短軸の長さを内径とし、該内径がストレート部46の全域において一定であることが好ましく、短軸及び長軸の両方がストレート部46の全域において一定であることが好ましい。
本実施形態のストレート部46は、相対向する内面42どうし間の距離dが一定である。笠部4がストレート部46を有すると、被把持物品5を把持する際に、隣接する被把持物品5が吸着グリッパ1に接触して把持の障害となることが一層生じにくくなったり、被把持物品5の被把持部が複雑な形状を有する場合であっても、把持部2を該形状に応じた形状に一層変化し易くなり、被把持部の把持が一層確実になる。
なお、本実施形態におけるストレート部46は、その下端が笠部4の下端と一致している。
【0029】
同様の観点から、ストレート部46の高さ方向Zにおける距離hは、開口41から最奥部までの距離Hに対して、好ましくは30%以上80%以下である。
また、同様の観点から、ストレート部46の高さ方向Zにおける距離hは、ストレート部46の内径、円相当径又は相対向する内面42どうし間の距離dに対して、好ましくは50%以上250%以下である。
【0030】
ストレート部46又は筒状部43は、前記内径、円相当径又は相対向する内面42どうし間の距離d(本実施形態では、相対向する内面42どうし間の距離d)が、被把持物品5における被把持部の最大差し渡し長さに対して、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、また好ましくは1.5倍以下、より好ましくは1.4倍以下であり、また好ましくは1.1倍以上1.5倍以下、より好ましくは1.2倍以上1.4倍以下である。これにより、被把持物品5の被把持部を笠部4の内側に挿入し易くすることが可能になる。また、把持部2が被把持物品5に密着し易くなるため、把持部2を被把持物品5の被把持部の形状に応じて変形させ易くすることが可能になる。なお、筒状部43についての前記距離dは、笠部4の下端の開口において測定する。
【0031】
笠部4は、開口41から最奥部47までの距離Hが、ストレート部46における前記内径、円相当径又は相対向する内面42どうし間の距離d(本実施形態では、相対向する内面42どうし間の距離d)に対して、好ましくは1倍以上3倍以下である。
【0032】
笠部4は、最奥部47側に、開口41側に向かって断面積が漸次拡大するテーパー部48を有する。これにより、例えば被把持物品5の上方部分の形状が下方部分の形状よりも細くなっていたり、被把持物品5の上端部分に取り付けられた横向きのノズルが、上面視において被把持物品5の外郭よりも内側に収まっていたりする場合でも、該上方部分や該ノズルに把持部2を密着させ易くすることができるため、把持部2が被把持物品5の被把持部の形状に応じて変形し易くなる。
【0033】
本発明の吸着グリッパ1に係る把持部2は、粒状体収容部分23の容積V1が、笠部4の内側の空間部分の容積V2よりも小さいことが好ましい。
粒状体収容部分23の容積V1は、大気解放自然状態において、中空バッグ21内における、粒状体22が収容されている部分(粒状体22どうし間の空間も含む)の容積と、中空バッグ21を形成するシート材のうち、吸排気口21aを形成している部分を除いた部分(
図2中、境界2eより下の部分)の体積との合計である。シート材の体積は、シートの面積に厚みを乗じて求めることができる。
笠部4の内側の空間部分の容積V2は、筒状部43と、基端部44と、開口面とによって囲まれた空間の容積である。
これにより、被把持物品5の被把持部が笠部4の内側に挿入された場合に、粒状体22の流動範囲を概ね笠部4の内側に規制することができるため、把持部2が被把持物品5に密着し易くなることで、把持部2が被把持物品5の被把持部の形状に応じて変形し易くなる。例えば、被把持部が、ノズル部のような側方に突出する側方突出部を有する形状であっても、把持部2は、その一部が側方突出部の下側にも回り込んだ状態に変形しやすくなり、その状態で固形化する。
笠部4の内側の空間部分における容積V2に対する粒状体収容部分23の容積V1の割合は、被把持物品5の被把持部が笠部4の内側に挿入された際に、粒状体22を笠部4の内側において流動させ易くする観点から、好ましくは30%以上70%以下である。
なお、把持部2によって把持される被把持部は、側方突出部を有しないものであってもよい。
【0034】
気体流路3は、中空バッグ21内の減圧又は加圧を行う際に、中空バッグ21内から気体を吸引したり、中空バッグ21内に気体を送り込んだりするために用いられる該気体の流路である。気体流路3は、中空バッグ21内と連通し、且つ中空バッグ21内の気体を吸引する吸引手段(図示せず)に接続されている。具体的には、
図2に示すように、一端部に、融着、接着、固定具による結合等の公知の結合方法で中空バッグ21の吸排気口21aに結合させた中空状の端部固定部材32が、笠部4の挿通口45に下方側から挿通されている。端部固定部材32は、径方向の外方に突出したフランジ部分を笠部4の基端部44の下面(最奥部47)に当接するまで挿通されており、基端部44の上方に突出した他端部が、継ぎ手部材33と、例えば螺合、融着、嵌め込み等の公知の接続方法で接続されている。継ぎ手部材33は、端部固定部材32と接続された側とは反対側の端部が、端部固定部材32よりも気体流路3の上流側(吸引手段側)に位置する上流側継ぎ手34と、例えば螺合、融着、嵌め込み等の公知の接続方法で接続されている。上流側継ぎ手34は、継ぎ手部材33と接続する側とは反対側の端部に、流路管35が、例えば嵌合、融着、接着、嵌め込み等の公知の接続方法で接続されている。流路管35は、上流側で前記吸引手段(図示せず)と接続される。このように、端部固定部材32、継ぎ手部材33、上流側継ぎ手34、及び流路管35によって形成された気体流路3は、中空バッグ21内と連通し、且つ中空バッグ21内の気体を吸引する吸引手段(図示せず)に接続している。
本発明の吸着グリッパ1が備える気体流路3は、笠部4の内外を連通する部分のみ、例えば、端部固定部材32内に形成される流路のみであってもよい。その場合、上述した気体流路の他の部分は、吸引手段が備えるといえる。
【0035】
また、気体流路3は、中空バッグ21と連通する側と反対側の端部(上端部)が、吸引手段(図示せず)に接続されるようになっている。前記吸引手段は、公知の圧力制御装置が用いられており、例えば真空ポンプ、加圧ポンプ、流路切替弁、圧力検出器、制御ユニット等で構成されている。前記吸引手段は、気体流路3を介して中空バッグ21の前記収容空間内の気体を吸引することで、当該収容空間を減圧し、粒状体収容部分23を固形化する。また、前記吸引手段は、気体流路3を介して中空バッグ21の前記収容空間内に前記気体を導入することで、当該収容空間を、例えば大気圧以上の圧力まで短時間のうちに加圧してから、大気圧又は前記所定の圧力に戻すことで、固形化した粒状体収容部分23を元の状態に戻す。
【0036】
気体流路3は、
図1及び
図2に示すように、好ましくは気体流路3の経路上にフィルター31を備えている。フィルター31は、前記気体を通過させる一方で、粒状体22を遮断する機能を有している。フィルター31は、例えば、軸中心部に気体流路3を備えた管状の2つのパーツ31a、31bを嵌合、螺合、接着等で結合させる際に、周縁部31cが2つパーツ31a、31bに挟まれるようにして固定されている。本実施形態のフィルター31は、流路管35の途中に設けられているが、機能を損なわない限り他の場所に設けられていても良く、例えば挿通口45の直下や、挿通口45と重なる部分に設けられていてもよい。被把持物品5の被把持部の形状に応じて変形し易くなる。例えば、被把持部が、ノズル部のような側方に突出する側方突出部を有する形状であっても、把持部2は、その一部が側方突出部の下側にも回り込んだ状態に変形しやすくなり、その状態で固形化する。
【0037】
吸着グリッパ1の中空バッグ21は、気体流路3を介して吸引手段と接続されている。さらに、粒状体収容部分23は、中空バッグ21内の気体が吸引されて前記収容空間が減圧された際に固形化する。
また吸着グリッパ1は、把持部2の一部が笠部4に覆われており、把持部2は、粒状体22が収容された粒状体収容部分23の容積V1が、笠部4の内側の空間部分における容積V2よりも小さいため、被把持物品5の被把持部を、把持部2に囲まれた状態として笠部4の内側に位置させることができる。
また、吸着グリッパ1の把持部2は、粒状体収容部分23が被把持物品5の被把持部の形状的に入り組んだ部位に侵入した状態で固形化するため、被把持物品5の被把持部の形状に対応した形状に変形した上で、剛性を得て被把持物品を強固に支持することが可能になる。したがって、本発明に係る吸着グリッパ1によれば、被把持物品を被把持部の形状にかかわらず確実に把持することが可能になる(
図3(a)参照)。
【0038】
また、吸着グリッパ1は、把持部2の一部が笠部4に覆われている。また、把持部2は、粒状体収容部分23の容積V1が、笠部4の内側の容積V2よりも小さい。これらにより、被把持物品5の被把持部を笠部4の内側に挿入した際に、把持部2の変形が笠部4の内側に規制される。したがって、吸着グリッパ1は、被把持物品5の隣の物品に干渉することなく被把持物品5を把持できるようになる為、安定したピッキング作業を行うことが可能になる(
図3(b)参照)。
【0039】
被把持物品との当接確認が容易の観点から、大気解放自然状態において、把持部2における粒状体収容部分23は、一部が突出していることが好ましい。より具体的には、笠部4の内側に存する部分の容積Vaの、粒状体収容部分23の容積V1に対する割合(
図6参照)が、好ましくは0%以上70%以下であり、より好ましくは10%以上30%以下である。
図6は、模式図であり、中空バッグ21と気体流路3とを連通する気体流路3等の図示を省略してある。
ここで、容積V1は、前述した定義通りであり、容積Vaは、中空バッグ21内における、粒状体22が収容されている部分(粒状体22どうし間の空間も含む)の容積のうち、笠部4の内側に存する部分の容積である。
【0040】
図4には、上述の吸着グリッパ1と、前記吸引手段と、吸着グリッパ1を保持しつつ変位させる変位装置6を備える、被把持物品の搬送装置10が示されている。
【0041】
変位装置6は、例えば公知の産業用ロボットアームである。変位装置6のアーム部分の先端には、吸着グリッパ1が取り付けられている。変位装置6は、吸着グリッパ1を上下前後左右の任意の方向に移動させるようになっていることが好ましく、これに加えて吸着グリッパ1を任意の角度に傾けられるようになっていることがさらに好ましい。
【0042】
被把持物品の搬送装置10は、例えば液体化粧品、液体洗剤、シャンプー等の製造ラインに投入される。被把持物品の搬送装置10は、これらの製造ラインにおいて、例えば容器内洗浄工程、液体充填工程、検査工程、箱詰め工程、等で行われるピッキング作業に用いられる。そして、被把持物品の搬送装置10は、各々の工程の作業要領に基づいたプログラムによって制御されて、自動的にピッキング作業を行う。なお、吸着グリッパは、ロボットアーム等に取り付けることなく、人手で取り扱ってもよい。
【0043】
本発明に係る吸着グリッパ1及び被把持物品の搬送装置10の使用方法の一例を、
図5を用いて説明する。
アームの先端部に吸着グリッパ1が取り付けられた変位装置6によって、吸着グリッパ1を被把持物品5の真上に移動させる(
図5(a)参照)。
次に、被把持物品5の被把持部が笠部4の内側に挿入されるまで、吸着グリッパ1を下ろす(
図5(b)参照)。このとき、中空バッグ21内の気体は、笠部4の内側に挿入される前記被把持部の体積に応じ、気体流路3を通じて外部に排出される。
被把持物品5の被把持部が笠部4の内側に挿入されたら、中空バッグ21内の気体を吸引することにより中空バッグ21内を減圧していき、把持部2が被把持物品5を支持するのに十分な剛性を具備するよう粒状体収容部分23を固形化させる(
図5(c)参照)。前記減圧は、把持部2が被把持物品5を支持するのに十分な剛性を得られるようにする観点から、中空バッグ21内の圧力が、好ましくは0.85Pa以下、より好ましくは0.8Pa以下である。
中空バッグ21内を減圧させたら、把持部2に被把持物品5を把持させたまま吸着グリッパ1を真上に引き上げる。そして、吸着グリッパ1に被把持物品5を把持させたまま、被把持物品5を目的の場所に搬送させたら、前記吸引装置から中空バッグ21内に気体を送り込み、中空バッグ21内が大気圧又は前記所定の圧力となるまで加圧して、粒状体収容部分23を固形化した状態から解放し、把持状態を解除する。その後把持部2を移動させる。把持部2で次の被把持物品5を把持させる前に、中空バッグ21の内部を再加圧するのも好ましい。該再加圧を行う際には、好ましくは一度大気圧以上の圧力にしてから、大気圧又は前記所定の圧力となるようにする。再加圧を行う際に、一度大気圧以上の圧力にすることにより、中空バッグ21の前記収容空間内の気体が元の状態に比べて膨張するため、把持部2を元の状態に戻し易くすることが可能になる。把持状態を解除したら、吸着グリッパ1を真上に引き上げ、次の被把持物品5の真上に移動させる(図示せず)。
上述の一連の作業は、各工程における作業要領に基づいたプログラムによって被把持物品の搬送装置10を制御することにより、自動的に行えるようにしておくことが好ましい。
【0044】
本発明の被把持物品の搬送方法の一実施態様においては、可撓性及び気密性を有する中空バッグ21の内部に粒状体22が収容されてなる把持部2と、中空バッグ21内と連通し、且つ該中空バッグ21内の気体を吸引する吸引手段に接続される気体流路3とを備えた吸着グリッパ1を用いて被把持物品5の搬送を行う。吸着グリッパ1は、例えば、
図1及び
図2等に示す吸着グリッパ1であり、把持部2における粒状体22が収容された粒状体収容部分23が、中空バッグ21内が減圧された状態で固形化するようになされており、また吸着グリッパ1は、開口41を有し、把持部2の少なくとも一部を覆う笠部4を備えている。本発明の被把持物品の搬送方法の一実施態様は、把持ステップ、搬送ステップ及び把持解除ステップを備える。
把持ステップにおいては、ロボットアーム等の変位装置又は人手等により、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、吸着グリッパ1を移動させて、内部が大気解放状態又は所定の圧力に調整された状態の中空バッグ21を被把持物品5に接触させ、さらに、
図5(c)に示すように、吸着グリッパ1を被把持物品5の一部が把持部2に囲まれた状態で笠部4の内側に位置するまで、又は前記粒状体収容部分23の全ての部分が笠部4の内側に入り込んだ状態となるまで移動させた後、該中空バッグ21内を減圧して粒状体収容部分23を固形化させる。把持部2に囲まれた状態は、被把持物品5の被把持部が、ノズル部のような側方突出部を有する場合、把持部2の一部が側方突出部の下側の少なくとも一部に存在する状態であることが好ましい。
搬送ステップにおいては、吸着グリッパ1で把持した被把持物品5を、任意の搬送先の場所に搬送させる。把持解除ステップにおいては、搬送先の場所において、中空バッグ内の減圧状態を解除し、該被把持物品の把持を解除する。
本発明の被把持物品の搬送方法の一実施態様においては、上述した吸着グリッパ1の機能が発現され、被把持部の形状にかかわらず被把持物品を確実に把持して所望の場所に搬送することができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、笠部4が把持部2の上部を覆っているが、これに限られず、真横や斜め上部を覆うようにすることで、被把持物品5を横方向や斜め方向から把持できるようにしてもよい。
また、上記実施形態では、吸着グリッパ1が一つであったが、これに限られず、複数を連結したり、笠部の内側を複数の空間に仕切ったうえで仕切られた各々の空間に把持部を設けてもよい。これにより、一度に複数の被把持物品を把持できるようになり、ピッキング作業の効率化を図ることが可能になる。
さらに、上記実施形態では、笠部は、開口側に、相対向する内面どうし間の距離が一定であるストレート部を有していたが、これに限られず、内径、円相当径又は相対向する内面どうし間の距離が前記開口側に向かって漸次拡大するストレート部を有することで、笠部の内側に被把持物品の被把持部を挿入し易くしてもよいし、内径、円相当径又は相対向する内面どうし間の距離が前記開口側に向かって漸次縮小するストレート部を有することで、把持部を被把持物品に密着させ易くし、被把持部の形状がより複雑であっても当該形状に沿って把持部を容易に変形できるようにし、被把持部が複雑な形状の被把持物品をより確実に把持できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 吸着グリッパ
2 把持部
21 中空バッグ
22 粒状体
23 粒状体収容部分
3 気体流路
31 フィルター
4 笠部
41 開口
42 内面
43 筒状部
46 ストレート部
5 被把持物品
6 変位装置
10 被把持物品の搬送装置