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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008852
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】金属製バット
(51)【国際特許分類】
   A63B 59/51 20150101AFI20240112BHJP
【FI】
A63B59/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099855
(22)【出願日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2022109611
(32)【優先日】2022-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年1月21日~2023年6月20日に納品先に納品
(71)【出願人】
【識別番号】000108258
【氏名又は名称】ゼット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】浅井 七洋
(72)【発明者】
【氏名】時枝 健一
(57)【要約】
【課題】金属製バットにおいて、最大肉厚の増加に伴う打球部の反発性能の低下を必要最小限とすることができる技術を提供する。
【解決手段】少なくともバレル部とテーパー部とを含むバット本体が金属製の中空筒状に構成されている金属製バットであって、バット本体における軸方向Xに沿った10mmピッチの平均肉厚ta10の減少率を10mmピッチ肉厚減少率r10とし、先端10aから軸方向に100mm~150mmの距離にある特定エリアA1が最大肉厚部分を含むと共に、当該特定エリアA1における10mmピッチ肉厚減少率r10が10%未満とされている。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に位置するバレル部と、当該バレル部よりも小径で基端側に位置するグリップ部と、前記バレル部と前記グリップ部とを連結するテーパー部とを備え、少なくとも前記バレル部と前記テーパー部とを含むバット本体が金属製の中空筒状に構成されている金属製バットであって、
前記バット本体における軸方向に沿った10mmピッチの平均肉厚の減少率を10mmピッチ肉厚減少率とし、
先端から軸方向に100mm~150mmの距離にある肉厚減少緩慢エリアが最大肉厚部分を含むと共に、当該肉厚減少緩慢エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が10%未満とされている金属製バット。
【請求項2】
前記肉厚減少緩慢エリアが、軸方向の中心位置を境界にして基端側に位置する打球部エリアと先端側に位置する打球部先端側エリアとからなり、
前記打球部エリアが前記最大肉厚部分を含むと共に、当該打球部エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が5%未満とされている請求項1に記載の金属製バット。
【請求項3】
先端から軸方向に150mm~180mmの距離にある打球部基端側エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が10%未満とされている請求項1又は2記載の金属製バット。
【請求項4】
先端から軸方向に150mm~180mmの距離にある打球部基端側エリアが、前記10mmピッチ肉厚減少率が10%以上の部位を含む請求項1又は2記載の金属製バット。
【請求項5】
前記バット本体の前記最大肉厚部分における最大肉厚が4mm未満である請求項1又は2記載の金属製バット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端側に位置するバレル部と、当該バレル部よりも小径で基端側に位置するグリップ部と、前記バレル部と前記グリップ部とを連結するテーパー部とを備え、少なくとも前記バレル部と前記テーパー部とを含むバット本体が金属製の中空筒状に構成されている金属製バットに関する。
【背景技術】
【0002】
硬式野球などの打球用バットとして利用される金属製バットは、アルミニウム合金などの金属製素管を、肉厚調整を行いながら加工することにより、少なくとも上記バレル部と上記テーパー部とを含むバット本体が単層構造で形成される。このような金属製バットの打球速度などの反発性能を向上させるには、バレル部やバレル部とテーパー部との境界付近に位置する打球部の薄肉化による反発力の向上が有効とされている(例えば特許文献1を参照。)。しかしながら、近年、公益財団法人日本高等学校野球連盟では、打球速度を低下させて安全性を向上するべく、打球部において最大径を細くし最大肉厚を従来よりも厚く(例えば4mm程度)して、当該打球部の剛性を高めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-267257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属製バットにおいて、打球部において最大径を細くし最大肉厚を増加させるには、それに伴う反発性能の低下やバット本体の総質量増加を最小限とするべく、肉厚増加の範囲を極力小さくしながら他の部位の肉厚を十分に減少させることが検討される。よって、通常は打球部における最大肉厚部分の先端側や基端側における軸方向での肉厚の減少が急激になることが想定されるが、安全性は確保しながら急激な肉厚の変化に伴う反発性能の低下を必要最小限とすることが望まれる。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、少なくともバレル部とテーパー部とを含むバット本体が金属製の中空筒状に構成されている金属製バットにおいて、打球部における最大肉厚の増加に伴う反発性能の低下を必要最小限とすることができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、先端側に位置するバレル部と、当該バレル部よりも小径で基端側に位置するグリップ部と、前記バレル部と前記グリップ部とを連結するテーパー部とを備え、少なくとも前記バレル部と前記テーパー部とを含むバット本体が金属製の中空筒状に構成されている金属製バットであって、
前記バット本体における軸方向に沿った10mmピッチの平均肉厚の減少率を10mmピッチ肉厚減少率とし、
先端から軸方向に100mm~150mmの距離にある肉厚減少緩慢エリアが最大肉厚部分を含むと共に、当該肉厚減少緩慢エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が10%未満とされている点にある。
【0006】
即ち、本発明者らは、鋭意研究の結果、近年肉厚増加が検討される打球部における上記最大肉厚部分を含む上記肉厚減少緩慢エリアをバット本体の先端から軸方向に100mm~150mmの距離にあるエリアとして規定した上で、その肉厚減少緩慢エリアにおける上記10mmピッチ肉厚減少率を10%未満に抑えて肉厚の減少度合を緩慢なものとすることにより、上記最大肉厚の増加に伴う打球部の反発性能の低下を必要最小限とすることができることを見出した。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記肉厚減少緩慢エリアが、軸方向の中心位置を境界にして基端側に位置する打球部エリアと先端側に位置する打球部先端側エリアとからなり、
前記打球部エリアが前記最大肉厚部分を含むと共に、当該打球部エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が5%未満とされている点にある。
【0008】
本構成によれば、上記肉厚減少緩慢エリアにおいて、中心位置よりも基端側に位置して最大肉厚部分を含む打球部エリアの上記10mmピッチ肉厚減少率を5%未満に抑えて肉厚の減少度合を非常に緩慢なものとすることで、当該打球部エリアにおける剛性を所望の程度に維持することができる。
そして、上記肉厚減少緩慢エリアにおいて、上述のように上記打球部エリアの上記10mmピッチ肉厚減少率を5%未満とした上で、中心位置よりも先端側に位置する打球部先端側エリアの上記10mmピッチ肉厚減少率を10%未満として肉厚の減少度合を比較的緩慢なものとすれば、その打球部先端側エリアの基端側に隣接する上記打球部エリアの反発性能の低下を必要最小限とすることができる。また、上記打球部先端側エリアの上記10mmピッチ肉厚減少率を、上記打球部エリアよりも大きくすれば、最大肉厚部分における肉厚増加や肉厚減少緩慢エリアにおける肉厚の減少度合の緩慢化に起因する総質量の増加をできるだけ抑制することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、先端から軸方向に150mm~180mmの距離にある打球部基端側エリアにおける前記10mmピッチ肉厚減少率が10%未満とされている点にある。
【0010】
本構成によれば、上記肉厚減少緩慢エリアの基端側に隣接する上記打球部基端側エリアにおける上記10mmピッチ肉厚減少率については、上記肉厚減少緩慢エリアと同様に10%未満として肉厚の減少度合を緩慢なものとすることで、その打球部基端側エリアの先端側に隣接する打球部の反発性能を一層向上することができる。
【0011】
本発明の第4特徴構成は、先端から軸方向に150mm~180mmの距離にある打球部基端側エリアが、前記10mmピッチ肉厚減少率が10%以上の部位を含む点にある。
【0012】
本構成によれば、上記肉厚減少緩慢エリアの基端側に隣接する上記打球部基端側エリアにおける上記10mmピッチ肉厚減少率については、上記肉厚減少緩慢エリアとは異なり10%以上として肉厚の減少度合を急激なものとすることで、最大肉厚部分における肉厚増加や肉厚減少緩慢エリアにおける肉厚の減少度合の緩慢化に起因する総質量の増加を抑制することができる。
【0013】
本発明の第5特徴構成は、前記バット本体の前記最大肉厚部分における最大肉厚が4mm未満である点にある。
【0014】
本構成によれば、肉厚減少緩慢エリアでは、10mmピッチ肉厚減少率が10%未満とされていることから剛性が比較的高いものに維持されている。このことで、肉厚減少緩慢エリアに含まれる最大肉厚部分における最大肉厚を4mm未満として、当該最大肉厚の増加に伴う反発性能の低下を抑制しながらも、当該最大肉厚部分を含む肉厚減少緩慢エリアの剛性を所望の程度に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】金属製バットの片側断面図
図2】実施例1,3,4の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図3】実施例1の金属製バットのバット本体の肉厚関連値や外径を示す表図
図4】比較例1の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図5】比較例1の金属製バットのバット本体の関連値や外径を示す表図
図6】実施例2,5,6の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図7】実施例2の金属製バットのバット本体の肉厚関連値及び外径を示す表図
図8】実施例3の金属製バットのバット本体の肉厚及び外径を示す表図
図9】実施例4の金属製バットのバット本体の肉厚及び外径を示す表図
図10】実施例5の金属製バットのバット本体の肉厚関連値や外径を示す表図
図11】実施例6の金属製バットのバット本体の肉厚関連値や外径を示す表図
図12】実施例7の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図13】実施例7の金属製バットのバット本体の肉厚関連値や外径を示す表図
図14】比較例2の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図15】比較例2の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す表図
図16】比較例3の金属製バットのバット本体の肉厚の変化状態を示す説明図
図17】比較例3の金属製バットのバット本体の関連値や外径を示す表図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の金属製バット10は、硬式野球などの打球用バットとして利用されるものであり、先端10a側に位置するバレル部2Aと、当該バレル部2Aよりも小径で基端10b側に位置するグリップ部2Cと、バレル部2Aとグリップ部2Cとを連結するテーパー部2Bとを備え、少なくともバレル部2Aとテーパー部2Bとを含むバット本体2がアルミニウム合金製で中空筒状に構成されている。
一般的に、バット本体2の先端10a側の開口部は樹脂製のヘッドキャップ3で塞がれている。一方、グリップ部2Cは、上記バット本体2と一体的にアルミニウム合金製で中空筒状に構成されており、その基端10b側の開口部はバット本体2と同じ材料からなるアルミニウム合金製のグリップエンド4が固着されている。尚、グリップ部2Cについては、バット本体2とは異なるFRPなどの材料で構成することもできる。
【0017】
バット本体2は、先端10a側に位置するバレル部2Aと当該バレル部2Aよりも小径で基端10b側に位置するグリップ部2Cとがテーパー部2Bで連結された構成を有する。即ち、アルミニウム合金製の素管を、肉厚tを調整しながら加工することにより、上記バレル部2A、上記テーパー部2B、及び上記グリップ部2Cが単層構造で形成されている。本実施形態において、バレル部2Aの外径は、バット本体2において最大となり、例えば63.5mmとされている。一方、グリップ部2Cの外径は、バット本体2において最小となり、例えば22.0mmとされている。
尚、図1では、図面の簡略化のために、バット本体2の肉厚tを軸方向Xに沿って同じものとして表しているが、実際の肉厚tは軸方向Xに沿って漸次変化するものとされている。
【0018】
金属製バット10では、バット本体2において、先端10aから軸方向Xに100mm~150mmの距離にあるエリアが打球部エリアA1bとされており、その打球部エリアA1bには、肉厚tが最大となる最大肉厚部分5が含まれている。そして、近年、安全性を向上するべく最大肉厚部分5の肉厚tを従来よりも厚いもの(例えば4mm程度)として当該打球部エリアA1bの剛性を高めることが検討されているが、このような最大肉厚部分5の肉厚tの増加に起因して必要以上の反発性能の低下が懸念される。
そこで、本実施形態の金属製バット10では、非木製バットのSG基準を順守しながら、最大肉厚部分5の肉厚tの増加に伴う打球部エリアA1bの反発性能の低下を必要最小限とするための特徴構成を有しており、その詳細について以下に説明を加える。
【0019】
本実施形態では、バット本体2における各エリアに関して以下のように定義している。
バット本体2における主にバレル部2Aにおいて、所定のエリアを、特定エリアA1、打球部先端側エリアA1a、打球部エリアA1b、及び打球部基端側エリアA2と呼ぶ。
特定エリアA1は、先端10aから軸方向Xに100mm~150mmの距離にあるエリアである。その特定エリアA1は、先端10a側に位置する打球部先端側エリアA1aと基端10b側に位置する打球部エリアA1bとからなる。
打球部先端側エリアA1aは、特定エリアA1において軸方向Xの中心位置(先端10aから軸方向Xに125mmの位置)を境界にして先端10a側に位置するエリアであり、先端10aから軸方向Xに100mm~125mmの距離にあるエリアである。
打球部エリアA1bは、特定エリアA1において軸方向Xの中心位置(先端10aから軸方向Xに125mmの位置)を境界にして基端10b側に位置するエリアであり、先端10aから軸方向Xに125mm~150mmの距離にあるエリアである。
打球部基端側エリアA2は、打球部エリアA1b(特定エリアA1)の基端10b側に隣接するエリアであり、先端10aから軸方向Xに150mm~180mmの距離にあるエリアである。
【0020】
また、本実施形態では、バット本体2の肉厚tに関して以下のように定義している。
バット本体2における軸方向Xに沿った10mm幅(10mmピッチ)の平均肉厚を、10mm幅平均肉厚ta10と呼ぶ。10mm幅平均肉厚ta10としては、バット本体2における軸方向Xに沿った10mm幅の範囲において肉厚tの最大値と最小値との平均値が用いられる。
バット本体2において軸方向Xに沿って10mm間隔で互いに隣接する2地点間において、10mm幅平均肉厚ta10の大きい側から小さい側への減少量を10mm幅肉厚減少量Δta10と呼び、その10mm幅肉厚減少量Δta10を大きい側の10mm幅平均肉厚ta10で除算した値を10mm幅肉厚減少率(10mmピッチ肉厚減少率)r10と呼ぶ。即ち、10mm幅肉厚減少率r10は、バット本体2における軸方向Xに沿った10mm幅平均肉厚ta10の減少率であって、バット本体2における軸方向Xに沿った10mm幅毎の肉厚tの減少度合を示すものとなる。
【0021】
そして、本実施形態の金属製バット10は、最大肉厚部分5を含む特定エリアA1が、上記10mm幅肉厚減少率r10を10%未満好ましくは5%以下となる肉厚減少緩慢エリアとなり、この肉厚減少緩慢エリアA1における肉厚tの減少度合が緩慢なものとされている。この構成により、最大肉厚部分5の肉厚tの増加に伴う打球部エリアA1bの反発性能の低下が必要最小限とされている。
更に、金属製バット10は、肉厚減少緩慢エリアA1において軸方向Xの中心位置を境界にして基端10b側に位置する打球部エリアA1bにおいて、10mm幅肉厚減少率r10が5%未満とされており、肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。
この構成により、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
以下、このような特徴構成を採用した実施例1の金属製バット10と、このような特徴構成を採用しない比較例1の金属製バット20との対比について、説明を加える。
【0022】
〔実施例1〕
実施例1の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図2に示しており、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図3に示している。
【0023】
本実施例1の金属製バット10では、打球部エリアA1b全体と打球部先端側エリアA1aの基端10b側の一部を含む先端10aから軸方向Xに120mm~150mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4.25mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0024】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満更には5%以下である2.38%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0025】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部5Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である21.88%となる部位(先端10aから160mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。このことで、最大肉厚部分5における肉厚t増加や肉厚減少緩慢エリアA1における肉厚の減少度合の緩慢化に起因する総質量の増加が抑制されている。
【0026】
〔比較例1〕
比較例1の金属製バット20について、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図4に示し、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や、外径等を図5に示す。
尚、比較例1の金属製バット20は、図示は省略するが、外径や肉厚関連値を除き、上述した本実施形態の金属製バット10(図1を参照)と同様の構成を有する。
【0027】
本比較例1の金属製バット20では、打球部エリアA1bの基端10b側の一部と打球部基端側エリアA2の先端10a側の一部を含む先端10aから軸方向Xに140mm~170mmの距離にある範囲が最大肉厚部分25とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4.25mmとされている。
【0028】
最大肉厚部分25の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部25Aが、打球部エリアA1bの先端10a側の一部に含まれている。そして、打球部エリアA1bにおける先端側肉厚減少部25Aには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である29.41%となる部位(先端10aから130mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部エリアA1b及びそれを基端10b側に含む特定エリアA1における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0029】
一方、最大肉厚部分25の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部25Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部25Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である21.88%となる部位(先端10aから180mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0030】
〔実施例1と比較例1との反発性能の比較〕
上記実施例1の金属製バット10と上記比較例1の金属製バット20の夫々について、打球部での打球速度を測定する試験を行った。当該試験では、金属製バットの打球部とボールとを所定の相対速度(時速220km)で衝突させた直後のボールの速度を打球速度として計測した。結果、上記実施例1の金属製バット10の打球速度は上記比較例1の金属製バット20と比べて、3%程度の向上が確認できた。このことは、上記実施例1の金属製バット10が、上記比較例1の金属製バット20との相違点として、特定エリア(肉厚減少緩慢エリア)A1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことによる効果であると推測することができる。
【0031】
〔実施例2〕
実施例2の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図6に示しており、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図7に示している。
【0032】
本実施例2の金属製バット10では、打球部エリアA1b全体の先端10aから軸方向Xに125mm~150mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0033】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満更には5%以下である4.05%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。
【0034】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である5.56%以下とされており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が、打球部先端側エリアA1aよりも急ではあるが、比較的緩慢なものとされている。
【0035】
そして、本実施例2の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球部基端側エリアA2の先端10a側に隣接する打球部エリアA1bの反発性能の一層の向上が図られる。
【0036】
〔実施例3〕
実施例3の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図8に示している。尚、本実施例3のバット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態については、上述した実施例1(図2)と同様のため図示を省略している。
【0037】
本実施例3の金属製バット10では、上記実施例1と同様に、打球部エリアA1b全体と打球部基端側エリアA2の先端10a側の一部を含む先端10aから軸方向Xに125mm~160mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0038】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満更には5%以下である2.63%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0039】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部5Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である17%となる部位(先端10aから170mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0040】
そして、本実施例5の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2に10mm幅肉厚減少率r10が10%以上となる部位を含ませることにより、総質量の増加を抑制できる。
【0041】
〔実施例4〕
実施例4の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図9に示している。尚、本実施例4のバット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態については、上述した実施例1,3(図2)と同様のため図示を省略している。
【0042】
本実施例4の金属製バット10では、上記実施例1,3と同様に、打球部エリアA1b全体の先端10aから軸方向Xに125mm~150mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0043】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である7.48%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0044】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部5Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である24.25%となる部位(先端10aから160mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0045】
そして、本実施例4の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2に10mm幅肉厚減少率r10が10%以上となる部位を含ませることにより、総質量の増加を抑制できる。
【0046】
〔実施例5〕
実施例5の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図10に示している。尚、本実施例5のバット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態については、上述した実施例2(図6)と同様のため図示を省略している。
【0047】
本実施例5の金属製バット10では、上記実施例2と同様に、打球部エリアA1b全体の先端10aから軸方向Xに125mm~150mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0048】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である7.48%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0049】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である5.00%以下とされており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0050】
そして、本実施例5の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球部基端側エリアA2の先端10a側に隣接する打球部エリアA1bの反発性能の一層の向上が図られる。
【0051】
〔実施例6〕
実施例6の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図11に示している。尚、本実施例6のバット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態については、上述した実施例2,5(図6)と同様のため図示を省略している。
【0052】
本実施例6の金属製バット10では、上記実施例2,5と同様に、打球部エリアA1b全体の先端10aから軸方向Xに125mm~150mmの距離にある範囲が最大肉厚部分5とされており、その10mm幅平均肉厚ta10は4mmとされている。即ち、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は、10%未満更には5%以下である0%とされており、その打球部エリアA1bにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。
【0053】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である7.48%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0054】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である5.56%以下とされており、その打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が比較的緩慢なものとされている。
【0055】
そして、本実施例6の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球部基端側エリアA2の先端10a側に隣接する打球部エリアA1bの反発性能の一層の向上が図られる。
【0056】
尚、上記の各実施例1~6では、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10を0%として打球部エリアA1bにおける剛性を所望の程度に維持したが、打球部エリアA1bにおける剛性を所望の程度に維持可能であれば、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10を10%未満の範囲内で適宜変更しても構わない。
【0057】
〔実施例7〕
実施例7の金属製バット10について、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図12に示しており、バット本体2の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や外径等を図13に示している。
【0058】
本実施例7の金属製バット10では、打球部先端側エリアA1aの基端10b側の一部と打球部エリアA1bの先端10a側の一部を含む先端10aから軸方向Xに120mm~140mmの距離にある範囲が、3.80mm以上の10mm幅平均肉厚ta10を有する最大肉厚部分5とされており、その中でも先端10aから軸方向Xに120mmの距離にある部分の10mm幅平均肉厚ta10が最大の3.88mmとされている。
【0059】
最大肉厚部分5の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部5Aが、打球部先端側エリアA1aに含まれている。そして、その打球部先端側エリアA1aにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満更には5%以下である2.90%以下とされており、その打球部先端側エリアA1aにおける肉厚tの減少度合が非常に緩慢なものとされている。
【0060】
一方、最大肉厚部分5の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部5Bが、打球部エリアA1b及び打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、打球部エリアA1bにおける10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である6.79%以下とされている。このことで、当該打球部エリアA1bにおける剛性が所望の程度に維持されている。更に、打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10は10%未満である5.44%以下とされている。即ち、打球部エリアA1b及び打球部基端側エリアA2における肉厚tの減少度合が、打球部先端側エリアA1aよりも急ではあるが、比較的緩慢なものとされている。
【0061】
そして、本実施例7の金属製バット10についても、肉厚減少緩慢エリアA1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球速度の向上が期待できる。更に、打球部基端側エリアA2における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことにより、打球部基端側エリアA2の先端10a側に隣接する打球部エリアA1bの反発性能の一層の向上が図られる。
更に、本実施例7の金属製バット10は、肉厚減少緩慢エリアA1に含まれる最大肉厚部分5における最大肉厚を4mm未満(3.88mm)とされているので、肉厚減少緩慢エリアA1において剛性を所望の剛性に維持しながらも、当該最大肉厚の増加に伴う反発性能の低下が抑制されている。
【0062】
〔比較例2〕
比較例2の金属製バット20について、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図14に示し、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や、外径等を図15に示す。
尚、比較例2の金属製バット20は、図示は省略するが、外径や肉厚関連値を除き、上述した本実施形態の金属製バット10(図1を参照)と同様の構成を有する。
【0063】
本比較例2の金属製バット20では、打球部エリアA1bに含まれる先端10aから軸方向Xに130mm~150mmの距離にある範囲が、4.25mm以上の10mm幅平均肉厚ta10を有する最大肉厚部分25とされており、その中でも先端10aから軸方向Xに140mmの距離にある部分の10mm幅平均肉厚ta10が最大の4.27mmとされている。
【0064】
最大肉厚部分25の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部25Aが、打球部先端側エリアA1aの先端10a側の一部に含まれている。そして、打球部先端側エリアA1aにおける先端側肉厚減少部25Aには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である20.80%,11.76%となる部位(先端10aから110mm,120mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部先端側エリアA1a及びそれを先端10a側に含む特定エリアA1における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0065】
一方、最大肉厚部分25の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部25Bが、打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部25Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%未満ではあるものの5%以上である8.85%,7.74%となる部位(先端10aから170mm,180mmの距離にある部位)が含まれている。
【0066】
〔比較例3〕
比較例3の金属製バット20について、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚tの変化状態を図16に示し、バット本体22の打球部エリアA1b周辺の肉厚関係値としての10mm幅平均肉厚ta10、10mm幅肉厚減少量Δta10、及び10mm幅肉厚減少率r10や、外径等を図17に示す。
尚、比較例3の金属製バット20は、図示は省略するが、外径や肉厚関連値を除き、上述した本実施形態の金属製バット10(図1を参照)と同様の構成を有する。
【0067】
本比較例3の金属製バット20では、打球部先端側エリアA1aの基端10b側の一部と打球部エリアA1bの先端10a側の一部を含む先端10aから軸方向Xに120mm~140mmの距離にある範囲が、3.90mm以上の10mm幅平均肉厚ta10を有する最大肉厚部分25とされており、その中でも先端10aから軸方向Xに120mmの距離にある部分の10mm幅平均肉厚ta10が最大の4.00mmとされている。
【0068】
最大肉厚部分25の先端10a側に続く部分であって軸方向Xに沿って先端10aに向けて肉厚tが漸次減少する先端側肉厚減少部25Aが、打球部先端側エリアA1aの先端10a側の一部に含まれている。そして、打球部先端側エリアA1aにおける先端側肉厚減少部25Aには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である12.33%,16.88%となる部位(先端10aから100mm,110mmの距離にある部位)が含まれており、その打球部先端側エリアA1a及びそれを先端10a側に含む特定エリアA1における肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0069】
一方、最大肉厚部分25の基端10b側に続く部分であって軸方向Xに沿って基端10bに向けて肉厚tが漸次減少する基端側肉厚減少部25Bが、打球部エリアA1bの基端10b側の一部と打球部基端側エリアA2に含まれている。そして、その打球部エリアA1b及び打球部基端側エリアA2における基端側肉厚減少部25Bには、10mm幅肉厚減少率r10が10%以上である10.20%となる部位(先端10aから180mmの距離にある部位)が含まれており、その基端側肉厚減少部25Bにおける肉厚tの減少度合が急激なものとされている。
【0070】
〔実施例7と比較例2,3との反発性能の比較〕
上記実施例7の金属製バット10と上記比較例2,3の金属製バット20の夫々について、BBCOR(バットボール反発係数:Bat-Ball Coefficient of Restitution)を測定するための衝突試験を行った。この衝突試験は、NCAA(全米大学体育協会)が定める規格(ASTM F2219)に準拠するものである。詳しくは、高温恒湿槽(オリオン機械株式会社製 PAP01B-KJ)にて温度22±0.1℃且つ湿度60±1%の環境下で48時間以上保管した硬式野球ボールを、一段式軽ガス銃式のボール発射装置(高圧システム株式会社製)により発射して、鉛直方向に設置した金属製バットにおけるバレル部先端から170mmの衝突位置に衝突させて、ボールの衝突速度及び反発速度を、高速度ビデオカメラ2台(株式会社フォトロン製 FASTCAM Nova)を使用して3次元測定した。そして、この試験を一つの金属製バットにつき3回実施して、BBCORを、ASTM F2219で定義される以下の式(1)を用いて算出することができる。尚、下記の式(1)にて、viはボールの衝突速度(m/s)であり、vrはボールの反発速度(m/s)であり、mは硬式野球ボールの質量(kg)であり、Meは回転運動を考慮した金属製バットの実効質量(kg)である。
BBCOR=〔(vi+vr)/vi〕×〔(m/Me)+1〕・・・(1)
【0071】
上記衝突試験の結果、実施例7の金属製バット10のBBCORが0.4984であり、比較例2の金属製バット20のBBCORが0.4950であり、比較例3の金属製バット20のBBCORが0.4951であった。即ち、実施例7の金属製バット10は、比較例2,3の金属製バット20と比べて、BBCORが高く、反発性能が優れていることが確認できた。
このことは、上記実施例7の金属製バット10が、比較例2,3の金属製バット20との相違点として、特定エリア(肉厚減少緩慢エリア)A1における10mm幅肉厚減少率r10を10%未満としたことによる効果であると推測することができる。
【符号の説明】
【0072】
2 バット本体
2A バレル部
2B テーパー部
2C グリップ部
5 最大肉厚部分
10 金属製バット
10a 先端
10b 基端
A1 特定エリア(肉厚減少緩慢エリア)
A1a 打球部先端側エリア
A1b 打球部エリア
A2 打球部基端側エリア
X 軸方向
10 10mm幅肉厚減少率
t 肉厚

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17