(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088526
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/473 20060101AFI20240625BHJP
F28F 3/12 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
F28F3/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203759
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 充
(72)【発明者】
【氏名】松平 範光
(72)【発明者】
【氏名】林 栄樹
(72)【発明者】
【氏名】狐塚 裕美
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA02
5F136CB07
5F136CB08
5F136DA27
5F136DA41
(57)【要約】
【課題】熱交換に寄与する熱交換面の面積を増加させることと、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることとを両立させる。
【解決手段】熱交換器1は、第一部材11と、第一部材11と対向して設けられて第一部材11との間に流体の流路20を形成する第二部材12と、を有し、被冷却デバイスに連結された本体部10を備え、本体部10は、第一部材11及び第二部材12の少なくとも一方に形成され、第一部材11と第二部材12とが対向する方向において流路20を狭める方向に突出し、流路20の延びる方向と交差する方向に延びる少なくとも一つの突起部30と、第一部材11及び第二部材12に連結されるとともに突起部30に連結された柱部41と、を有し、柱部41は、被冷却デバイスにおける発熱体に対応する位置に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱体を有する被冷却デバイスとの間で流体を介して熱交換を行う熱交換器であって、
第一部材と、前記第一部材と対向して設けられて前記第一部材との間に前記流体の流路を形成する第二部材と、を有し、前記被冷却デバイスに連結された本体部を備え、
前記本体部は、
前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方に形成され、前記第一部材と前記第二部材とが対向する方向において前記流路を狭める方向に突出し、前記流路の延びる方向と交差する方向に延びる少なくとも一つの突起部と、
前記第一部材及び前記第二部材に連結されるとともに前記突起部に連結された柱部と、
を有し、
前記柱部は、前記被冷却デバイスにおける前記発熱体に対応する位置に配置された、
熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記流路の延びる方向における前記柱部の長さは、前記流路の幅方向における前記柱部の幅よりも大きく、
前記突起部は、前記柱部の前記流路の延びる方向における少なくとも下流側の部位に連結された、
熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記柱部は、
前記流路の延びる方向において、上流側の部位における前記流路の幅方向の幅及び下流側の部位における前記流路の幅方向の幅よりも、前記上流側の部位と前記下流側の部位との間の中間部の前記流路の幅方向における幅の方が大きく、
前記柱部の前記流路の延びる方向における少なくとも前記下流側の部位に、前記突起部が連結された、
熱交換器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の熱交換器において、
複数の前記柱部を備え、
複数の前記柱部の各々は、前記流路の幅方向に離間して並んで配置された、
熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器において、
離間し隣り合う前記柱部は、互いに対向する各々の壁面に平面部を有し、
前記柱部は、前記平面部が互いに平行になるように配置されており、
前記対向する前記平面部が前記突起部により連結されている、
熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載の熱交換器において、
前記突起部は、前記流路の延びる方向に沿った仮想線に対して傾斜して配置された、
熱交換器。
【請求項7】
請求項1に記載の熱交換器において、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、前記流路の幅方向に隣接して配置され、
前記流路の幅方向に隣接する前記突起部は、前記流路の延びる方向に沿った仮想線に対して互いに線対称に配置された、
熱交換器。
【請求項8】
請求項1に記載の熱交換器において、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、前記流路の幅方向に隣接して配置され、
前記流路の幅方向に隣接する前記突起部は、前記流路の延びる方向に沿った仮想線に対して互いに線対称に配置されるとともに、前記流路の延びる方向に並んで配置された、
熱交換器。
【請求項9】
請求項1に記載の熱交換器において、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、
前記流路の延びる方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成された第一傾斜面と、
前記上流側から前記下流側に向けて下り傾斜に形成された第二傾斜面と、
を有し、
前記第一傾斜面及び前記第二傾斜面は、前記第一部材と前記第二部材とが対向する方向において、前記第一部材から前記第二部材に向けて凸状となる湾曲面である、
熱交換器。
【請求項10】
請求項1に記載の熱交換器において、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、
前記流路の延びる方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成された第一傾斜面と、
前記上流側から前記下流側に向けて下り傾斜に形成された第二傾斜面と、
を有し、
前記第一傾斜面及び前記第二傾斜面は、前記第一部材と前記第二部材とが対向する方向において、前記第二部材から前記第一部材に向けた凸状となる湾曲面である、
熱交換器。
【請求項11】
請求項1に記載の熱交換器において、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、
前記流路の延びる方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成された第一傾斜面と、
前記上流側から前記下流側に向けて下り傾斜に形成された第二傾斜面と、
を有し、
前記第一傾斜面と前記第二傾斜面とは平面である、
熱交換器。
【請求項12】
請求項1に記載の熱交換器であって、
複数の前記突起部を備え、
複数の前記突起部の各々は、
前記流路の延びる方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成された第一傾斜面と、
前記上流側から前記下流側に向けて下り傾斜に形成された第二傾斜面と、
を有し、前記流路の延びる方向に並んで配置されており、
前記第一傾斜面と当該第一傾斜面の前記下流側に連なる前記第二傾斜面との間の頂部の半径は、前記第二傾斜面と当該第二傾斜面の前記下流側に連なる前記第一傾斜面との間の頂部の半径よりも小さい、
熱交換器。
【請求項13】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記突起部は、前記第一部材及び前記第二部材のうち前記発熱体を有する前記被冷却デバイスと連結された部材に形成された、
熱交換器。
【請求項14】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記突起部は、前記第一部材及び前記第二部材の両方に形成された、
熱交換器。
【請求項15】
請求項1に記載の熱交換器であって、
複数の本体部を備え、
一の本体部において、前記第一部材及び前記第二部材のうち前記突起部が形成された部材が前記被冷却デバイスの一方の面と連結され、
他の本体部において、前記第一部材及び前記第二部材のうち前記突起部は形成された部材が前記被冷却デバイスの他方の面と連結された、
熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被冷却デバイスを冷却する熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却用の流体の流路に複数の柱状フィンを形成し、被冷却デバイスからの熱を柱状フィンによって流体に伝えるようにした熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102011118483号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された熱交換器では、柱状フィンの密度を高めることにより、被冷却デバイスと流体との熱交換効率を高めることができる。一方で、柱状フィンは、流路を遮蔽するため、柱状フィンの密度を高め過ぎると通水抵抗が上昇して、流路における流体の流速が低下し、流体の滞留が生じて、被冷却デバイスと流体との熱交換効率が低下するという問題があった。
【0005】
このため、例えば、特許文献1に記載された熱交換器では、流体が流通しやすい流路断面積を確保するために、柱状フィンを流路の厚み方向に長くして、流路を厚み方向に拡大する等の対策が考えられる。しかしながら、柱状フィンを長くすると、被冷却デバイスからの熱が柱状フィンの長手方向における先端まで伝わりにくくなるため、熱交換に寄与しない部分が増加して、熱変換効率は伸び悩む。
【0006】
このように、熱交換効率を高めるという観点において、熱交換に寄与する熱交換面の面積を増加させることと、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることとの間には、トレードオフの関係があった。
【0007】
本発明は、熱交換に寄与する熱交換面の面積を増加させることと、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることとを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、発熱体を有する被冷却デバイスとの間で流体を介して熱交換を行う熱交換器であって、第一部材と、前記第一部材と対向して設けられて前記第一部材との間に前記流体の流路を形成する第二部材と、を有し、前記被冷却デバイスに連結された本体部を備え、前記本体部は、前記第一部材及び前記第二部材の少なくとも一方に形成され、前記第一部材と前記第二部材とが対向する方向において前記流路を狭める方向に突出し、前記流路の延びる方向と交差する方向に延びる少なくとも一つの突起部と、前記第一部材及び前記第二部材に連結されるとともに前記突起部に連結された柱部と、を有し、前記柱部は、前記被冷却デバイスにおける前記発熱体に対応する位置に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、熱交換器は、流路を形成する第一部材及び第二部材の少なくとも一方に突起部を有する。また、被冷却デバイスの発熱体に対応する位置に配置され、第一部材及び第二部材に連結された柱部を有する。熱交換器は、流体の流路に突起部及び柱部を備えることにより、被冷却デバイスに連結された本体部の熱交換面を増加させることができる。
【0010】
また、上記態様によれば、突起部は、流路の延びる方向と交差する方向に延びて形成されている。このため、突起部に当たった流体は、突起部に妨げられることなく、突起部に沿って流路の延びる方向と交差する方向に流れる。また、突起部は、第一部材と第二部材とが対向する方向において流路を狭める方向に突出して形成されているため、流路が狭められた箇所において、突起部に当たった流体の流速が高められる。これにより、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることができる。
【0011】
したがって、上記態様によれば、熱交換に寄与する熱交換面の面積を増加させることと、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器を斜め上方から見た外観斜視図である。
【
図2】
図2は、熱交換器を下方から見た分解斜視図である。
【
図3】
図3は、流路を形成する第一部材の表面の要部拡大図である。
【
図4】
図4は、熱交換器を下方から見た分解斜視図において、流路を形成する第一部材の表面における要部の拡大図である。
【
図5】
図5は、第一部材の要部を拡大して示す平面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すV-V線における断面の一部を拡大して示す断面拡大図である。
【
図7】
図7は、従来の柱状フィンにおける流体の流れ方向を説明する模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る熱交換器において、突起部及び柱部における流体の流速のシミュレーション結果を表す説明図である。
【
図9】
図9は、突起部の第一変形例を説明する断面図である。
【
図10】
図10は、突起部の第二変形例を説明する断面図である。
【
図11】
図11は、別の実施態様に係る熱交換器を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る熱交換器1について説明する。
【0014】
図1は、熱交換器1を斜め上方から見た外観斜視図である。
図2は、熱交換器1を下方から見た分解斜視図である。
【0015】
本実施形態において、熱交換器1は、流体としての冷却水との熱交換によって、発熱体を有する被冷却デバイスとしてのインバータモジュール2を冷却する装置である。
【0016】
図1に示すように、熱交換器1は、第一部材11と、第二部材12と、流路20(
図2参照)とを有する本体部10を備える。
【0017】
第一部材11は、側壁11Sに囲まれた矩形状の平面部分11Pを有するトレイ形状に形成されている。また、第二部材12は、側壁12Sに囲まれた、平面部分11Pと略同寸法の平面部分12Pを有するトレイ形状に形成されている。
【0018】
上述した第一部材11の側壁11Sの縁と、第二部材12の側壁12Sの縁とを合わせることにより、第一部材11と第二部材12との間に、流路高さ分の空間が確保され、扁平状の流路20が形成される。
【0019】
図2に示すように、本体部10は、第一部材11の平面部分11Pに、複数の突起部30を有する。また、本体部10は、第一部材11の平面部分11Pに、第一部材11及び第二部材12に連結される柱部41,42,43を有する。
【0020】
第二部材12の各々の端部側の所定位置には、開口部12A及び開口部12Bが形成されている。開口部12Aには、流体が流通する流路20に流体を取り込む入口流路3が取り付けられている。また、開口部12Bには、流路20から流体が排出される出口流路4が取り付けられている。
【0021】
本実施形態において、入口流路3が接続される開口部から出口流路4が接続される開口部までの流路20の延びる方向(
図2における矢印F)を「流路方向」と称し、流路20の延びる方向と交差し、第一部材11及び第二部材12に平行な方向(
図2における矢印W)を「流路幅方向」と称し、第一部材11と第二部材12とが対向する方向(
図2における矢印H)を「流路高さ方向」と称する。
【0022】
なお、突起部30等の影響を受けて局所的に変化した冷却水の進行方向は、「流れ方向」と称し、流路方向とは区別する。
【0023】
本体部10は、インバータモジュール2に連結されている。本実施形態においては、第一部材11がインバータモジュール2と一体的に形成されている。すなわち、第一部材11がインバータモジュール2の底面を構成する。
【0024】
インバータモジュール2は、例えば、車両の駆動用モータ(図示省略)を制御するものである。
図2に示すように、本実施形態においては、インバータモジュール2は、本体部10の長手方向に沿って、3つのスイッチング回路5を有する。スイッチング回路5の各々は、熱伝導部材、はんだ、或いはその他の材料により、インバータモジュール2と一体的に形成された第一部材11に接続又は固定されている。
【0025】
スイッチング回路5は、交流電流を直流電流に変換する回路である。3つのスイッチング回路5は、インバータモジュール2のU相,V相,及びW相の各々に対応している。
【0026】
スイッチング回路5には、複数のスイッチング素子6が備えられている。本実施形態においては、一つのスイッチング回路5に、4つのスイッチング素子6a,6b,6c,6dが実装されている。スイッチング素子6への電流の入力のON/OFFが高速で切り換えられることにより、交流電流を直流電流に変換することができる。
【0027】
スイッチング素子6は、交直流変換によって発熱する。スイッチング素子6は、発熱により高温になると、変換効率が低下するため、冷却を要する。本実施形態においては、インバータモジュール2が、冷却水の流路20を有する本体部10に連結されている。このため、本体部10に形成された流路20を流れる冷却水によって、スイッチング素子6から発生した熱が本体部10に形成された流路20を流れる冷却水と熱交換することで、スイッチング素子6を冷却することができる。
【0028】
インバータモジュール2において、スイッチング回路5が配置される面には、スイッチング回路5を熱交換器1側に押圧する押さえ部材(図示せず)が設けられている。これにより、インバータモジュール2に配置されたスイッチング回路5から第一部材11への熱伝導性を高めることができる。
【0029】
図3は、流路20を形成する第一部材11の表面の要部拡大図である。また、
図4は、熱交換器1を下方から見た分解斜視図において、流路20を形成する第一部材11の表面における要部の拡大図である。
図5は、第一部材11の要部を拡大して示す平面図である。
【0030】
本実施形態において、突起部30は、第一部材11と第二部材12とが対向する方向において流路20を狭める方向に突出し、流路方向に沿った仮想線V1に対して所定の角度θで交差する仮想線V2に沿って延びる。
【0031】
第一部材11は、複数の突起部30を有し、突起部30の各々が流路幅方向に隣接して配置されている。本実施形態においては、流路幅方向に隣接する突起部30同士が流路方向に沿った仮想線V2に対して互いに線対称に配置されている。また、各突起部30は、流路方向にも並んで配置されている。
【0032】
また、仮想線V1に対して線対称に配置された一対の突起部30が流路方向及び流路幅方向に連続して配置されていることにより、第一部材11を平面部分11Pの法線方向から見た際に、突起部30は、杉綾織柄(ヘリンボーン柄)を呈する。
【0033】
図6は、
図5に示すV-V線における断面の一部を拡大して示す断面拡大図である。
【0034】
図5に示すように、突起部30は、第一傾斜面31と、第二傾斜面32と、第一傾斜面31と第二傾斜面32とを緩やかに連結する頂部33と、を有する。
【0035】
第一傾斜面31は、流路方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成されている。また、第二傾斜面32は、流路方向における上流側から下流側に向けて下り傾斜に形成されている。本実施形態においては、第一傾斜面31及び第二傾斜面32の各々は、流路高さ方向において、第一部材11から第二部材12に向けて凸状となる湾曲面である。
【0036】
柱部41,42,43は、第一部材11に連結されたインバータモジュール2に配置されたスイッチング回路5におけるスイッチング素子6に対応する位置に配置されている。
図3には、柱部41,42,43に対応する位置にあるスイッチング素子6a,6b,6c,6dが二点鎖線により示されている。柱部41,42,43は、第一部材11に形成された突起部30にも連結されている。
【0037】
本実施形態では、柱部41のサイズは、発熱するスイッチング素子6(6a,6b)の流路方向における上流側の端部から下流側の端部の範囲に対応する領域を含み、かつ、スイッチング素子6(6a,6b)の流路幅方向の両端を含む範囲に対応する領域を覆うサイズに形成されている。これにより、柱部41によるスイッチング素子6a,6bの放熱を、より確実に行うことができる。
【0038】
柱部41は、スイッチング素子6a,6bに対応する位置に配置され、柱部42は、スイッチング素子6dに対応する位置に配置され、柱部43は、スイッチング素子6cに対応する位置に配置されている。スイッチング素子6a,6bに対応する柱部41のように、スイッチング素子6が流路方向に互いに近接している箇所では、複数のスイッチング素子6a,6bに対して一つの柱部(柱部41)を対応付けて配置することができる。このように、複数の柱状フィンが互いに近接して設けられた従来の熱交換器に比べて、流路20における柱部41,42,43を少なくしたことで、通水抵抗を下げ、冷却水の流通を促進することができる。
【0039】
本実施形態において、柱部41は、第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414を有する。第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414の各々は、流路幅方向に互いに離間して並んで配置されている。
【0040】
柱部41は、スイッチング素子6a,6bの流路方向における上流側の端部から下流側の端部の範囲に対応する領域を含み、かつ、スイッチング素子6a,6bの流路幅方向の両端の範囲に対応する領域を覆うように配置されている。さらに、本実施形態においては、柱部41は、複数の各柱部(第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414)から構成されており、スイッチング素子6a,6bの流路幅方向における両端を含む範囲に対応する領域に、複数の各柱部(第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414)が互いに離間して並んで配置されている。このため、柱部41(第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414)は、スイッチング素子6a,6bの放熱を、より確実に行うことができる。
【0041】
また、柱部41を構成する複数の各柱部のうち離間し隣り合う柱部は、互いに対向する各々の壁面に平面部を有する。一例として、
図3に示すように、第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414のうち、第一柱部411は、平面部411pを有し、第二柱部412は、平面部412pを有し、これら平面部411pと平面部412pとは互いに対向している。
【0042】
本実施形態においては、柱部41を構成する第一柱部411と第二柱部412とは、平面部411pと412pとが互いに平行になるように配置されている。隣接する第一柱部411と第二柱部412とにおいて、平面部411pと412pとは、突起部30により連結されている。
【0043】
流路方向における第一柱部411の長さL1は、流路幅方向における第一柱部411の幅L2よりも大きく形成されている。第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414も同様に、流路方向における長さは、流路幅方向における幅よりも大きく形成されている。
【0044】
第三柱部413は、流路方向の上流側の部位における流路幅方向の幅及び流路方向の下流側の部位における流路幅方向の幅よりも、上流側の部位と下流側の部位との間の中間部の流路幅方向における幅の方が大きく形成されている。
【0045】
本実施形態においては、一例として、
図3及び
図4に示すように、第三柱部413は、流路方向の上流側端部413Uにおける流路幅方向の幅及び流路方向の下流側端部413Dにおける流路幅方向の幅よりも、上流側端部413Uと下流側端部413Dとの間の中間部413Mの流路幅方向における幅の方が大きく形成されている。
【0046】
第四柱部414は、流路方向に沿った仮想線に対して線対称の形状となっており、第三柱部413と同様に、上流側端部414Uと下流側端部414Dとの間の中間部414Mの流路幅方向における幅の方が大きく形成されている。
【0047】
本実施形態においては、柱部41は、換言すれば、外形が楕円柱である柱部41に、流路方向に沿った3つの間隙が形成されることにより、互いに所定間隔離間して配置された第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413及び第四柱部414に分割されたものである。
【0048】
柱部42は、半円柱部421,422を有し、柱部43は、半円柱部431,432を有する。半円柱部421は、流路方向の上流側端部421Uにおける流路幅方向の幅及び流路方向の下流側端部421Dにおける流路幅方向の幅よりも、上流側端部421Uと下流側端部421Dとの間の中間部421Mの流路幅方向における幅の方が大きく形成されている。
【0049】
本実施形態において、柱部42は、換言すれば、外形が楕円柱である柱部42に、流路方向に沿った間隙が形成されることにより、互いに所定間隔離間して配置された半円柱部421,422に分割されたものである。柱部43も同様である。
【0050】
図4から
図5に示すように、各柱部の側面の上流側から下流側に亘って、複数の突起部30の各々が連結されている。
【0051】
以上のように説明した突起部30の平面部分11Pからの凹凸サイズ及び柱部41,42,43の平面部分11Pからの高さは、ダイキャストにより形成可能なサイズである。
【0052】
[効果]
以下、本実施形態に係る熱交換器1の作用効果を説明するが、作用効果の説明に先立って、従来の柱状フィンについて説明する。
【0053】
図7は、従来の柱状フィンにおける冷却水の流れ方向を説明する模式図である。
【0054】
従来の柱状フィン300では、冷却水の流路方向(矢印F)において、柱状フィン300の下流側に位置するエリアでは、冷却水は、柱状フィン300に遮蔽されて滞留しやすくなる。このため、柱状フィン300における流路方向下流側の表面では、熱交換効率が低下することがあった。
【0055】
これに対して、本実施形態に係る熱交換器1は、発熱体を有する被冷却デバイスとしてのインバータモジュール2との間で流体(冷却水)を介して熱交換を行う熱交換器である。熱交換器1は、第一部材11と、第一部材11と対向して設けられて第一部材11との間に冷却水の流路20を形成する第二部材12と、を有し、インバータモジュール2に連結された本体部10を備える。本体部10は、第一部材11及び第二部材12の少なくとも一方に形成され、第一部材11と第二部材12とが対向する流路高さ方向において流路20を狭める方向に突出し、流路方向と交差する流路幅方向に延びる少なくとも一つの突起部30を有する。また、本体部10は、第一部材11及び第二部材12に連結されるとともに、突起部30に連結された柱部41,42,43を有する。柱部41,42,43は、インバータモジュール2における発熱体に対応する位置に配置されている。
【0056】
本実施形態に係る熱交換器1は、流路20を形成する第一部材11及び第二部材12の少なくとも一方に突起部30を有する。また、インバータモジュール2の発熱体に対応する位置に配置され、第一部材11及び第二部材12に連結された柱部41,42,43を有する。熱交換器1は、冷却水の流路20に突起部30及び柱部41,42,43を備えることにより、インバータモジュール2に連結された本体部10の熱交換面を増加させることができる。
【0057】
熱交換器1において、突起部30は、流路20の延びる方向(流路方向)に交差する方向(流路幅方向)に延びて形成されている。このため、突起部30に当たった冷却水は、突起部30に妨げられることなく、突起部30に沿って流路方向と交差する方向に流れる。
【0058】
また、突起部30は、第一部材11と第二部材12とが対向する方向(流路高さ方向)において、流路20を狭める方向に突出して形成されているため、突起部30に当たった冷却水の流速は、流路20が狭められた箇所において高められる。これにより、熱交換面に接触する冷却水の流通を促進させることができる。
【0059】
したがって、熱交換器1によれば、熱交換に寄与する熱交換面の面積を増加させることと、熱交換面に接触する流体の流通を促進させることとを両立させることができる。
【0060】
図5に示すように、熱交換器1において、流路方向における柱部41(第一柱部411)の長さL1は、流路幅方向における柱部41(第一柱部411)の幅L2よりも大きい。このため、特に、柱部41の流路方向下流側に位置するエリアにおける冷却水の流通が、柱部41によって妨げられることを防止できる。
【0061】
熱交換器1は、第一部材11に複数の突起部30を有し、複数の突起部30の各々が流路幅方向に隣接して配置されており、流路幅方向に隣接する突起部30が流路方向において互いに仮想線V1に対して線対称に配置されている。また、このように線対称に配置された一対の突起部30が流路方向及び流路幅方向に連続して配置されている。
【0062】
複数の突起部30が第一部材11の流路方向及び流路幅方向に亘って連続して配置されていることにより、冷却水が突起部のない経路からバイパスして、冷却に寄与しないまま流通することがなく、熱交換効率の低下を防止することができる。
【0063】
また、流路幅方向に隣接する突起部30が流路方向の上流側に開いた状態となる連結部分は、流路方向に流れる冷却水を連結部分に集約する機能を有する。一方、流路幅方向に隣接する突起部30が流路方向の下流側に開いた状態となる連結部分は、流路方向に流れる冷却水を突起部30に沿って分流する機能を有する。
【0064】
また、第一柱部411を例示して説明すると、流路方向における第一柱部411の長さL1が流路幅方向における第一柱部411の幅L2よりも大きく形成されていたとしても、第一柱部411の流路方向下流側に位置するエリアでは、冷却水の滞留が起こりやすい。
【0065】
このことから、突起部30は、第一柱部411の流路方向における少なくとも下流側端部411Bに連結されていることで、第一柱部411の流路方向下流側に位置するエリアにおいて、冷却水の流通を促進する効果を一層高めることができる。
【0066】
第三柱部413は、流路方向の上流側端部413Uにおける流路幅方向の幅及び流路方向の下流側端部413Dにおける流路幅方向の幅よりも、上流側端部413Uと下流側端部413Dとの間の中間部413Mの流路幅方向における幅の方が大きく形成されているため、第三柱部413の流路方向下流側に位置するエリアに、冷却水を引き込みやすくなっている。
【0067】
これにより、第三柱部413の流路方向下流側に位置するエリアにおいて、冷却水の流通を促進する効果を一層高めることができる。第三柱部413と線対称に形成された第四柱部414もまた、第三柱部413と同等の効果を奏する。
【0068】
本実施形態において、第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414の各々は、流路幅方向に互いに離間して並んで配置されている。
【0069】
第一柱部411と第二柱部412との間、また、第一柱部411と第三柱部413との間、また、第二柱部412と第四柱部414との間には、冷却水が流通できる。
【0070】
このため、第一柱部411と第二柱部412とが対向する面、第一柱部411と第三柱部413とが対向する面、第二柱部412と第四柱部414とが対向する面が熱交換面を形成することができる。
【0071】
さらに、第一柱部411と第二柱部412との間、また、第一柱部411と第三柱部413との間、また、第二柱部412と第四柱部414との間には、冷却水が流通することにより、第一柱部411、第二柱部412、第三柱部413、第四柱部414の流路方向下流側に位置するエリアにおいて、冷却水の流通を促進する効果が高められる。
【0072】
本実施形態において、柱部41を構成する複数の各柱部のうち離間し隣り合う柱部(一例として、第一柱部411と第二柱部412)は、互いに対向する各々の壁面に平面部(411p,412p)を有する。平面部411pと平面部412pとは互いに対向し、また、互いに平行になるように配置されており、平面部411pと412pとは、突起部30により連結されている。
【0073】
また、平面部411pと412pとを連結する突起部30は、流路方向に沿った仮想線V1に対して角度θ傾斜して配置されている。
【0074】
これにより、平面部411pと412pとが対向する離間部分において、冷却水が突起部30を乗り越えることによって、縦渦が発生しやすくなる。これにより、平面部411pと412pとが対向する離間部分近傍における流速が高められ、熱交換が促進される。
【0075】
熱交換器1において、第一傾斜面31は、流路方向における上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成されている。また、第二傾斜面32は、流路方向における上流側から下流側に向けて下り傾斜に形成されている。本実施形態においては、第一傾斜面31及び第二傾斜面32の各々は、流路高さ方向において、第一部材11から第二部材12に向けて凸状となる湾曲面である。
【0076】
図6に示すように、熱交換器1においては、突起部30の第一傾斜面31から流路方向下流側に隣接する第二傾斜面32に冷却水が流れる際に、突起部30(第一傾斜面31)が存在するところでは、流路20の流路高さ方向に流路20が狭められているため、冷却水が第一傾斜面31に当たって、冷却水の流速が高められる。第一傾斜面31に当たった冷却水は、第二部材12に向けた流れ方向と、隣接する第二傾斜面32に沿った流れ方向とに分流される。
【0077】
これにより、第一傾斜面31と第一傾斜面31に隣接する第二傾斜面32との間に形成される空間において、冷却水の縦渦が発生する。このため、冷却水と突起部30との間の熱交換が促進される。
【0078】
図8は、本発明の実施形態に係る熱交換器において、突起部及び柱部における流体の流れをシミュレーションした結果を説明する図である。
図8において、濃色であるほど、着色された部位に当たる冷却水の流速が高いことを示す。なお、
図8において、白色は、冷却水の流速がゼロであることを示すものではない。
【0079】
熱交換器1によれば、突起部30及び柱部41,42,43を備えることにより、
図8に示すように、流路20を流れる冷却水の流速に緩急の変化を生じさせることができ、特に、冷却水の流れに対向する突起部30における第一傾斜面31や、隣接する突起部30同士の連結部分や、突起部30と柱部41との連結部分において、冷却水の流通を促進する効果が高められる。
【0080】
[突起部の変形例]
本実施形態において、突起部30の形状は、冷却水の流速変化をもたらす構造であれば、種々の変更が可能である。
【0081】
<第一変形例>
図9は、突起部の第一変形例を説明する模式図である。
図9に示す突起部130の各々は、第一傾斜面131と、第二傾斜面132と、第一傾斜面131と第二傾斜面132とを連結する頂部133と、を有する。
【0082】
第一変形例では、流路方向(矢印F)において、上流側から下流側に向けて上り傾斜に形成された第一傾斜面131と、上流側から下流側に向けて下り傾斜に形成された第二傾斜面132とがともに、平面に形成されている。すなわち、断面視において、三角形になるように形成されている。
【0083】
これにより、第一変形例に係る突起部130によれば、第一傾斜面131と第一傾斜面131に隣接する第二傾斜面132との間に形成される空間において、冷却水の縦渦が発生する。このため、冷却水と突起部130との間の熱交換が促進される。
【0084】
<第二変形例>
図10は、突起部の第二変形例を説明する模式図である。
図10に示す突起部230の各々は、第一傾斜面231と、第二傾斜面232と、第一傾斜面231と第二傾斜面232とを連結する頂部233とを有する。
【0085】
第二変形例では、流路方向(矢印F)において、突起部230の各々は、流路方向に並んで配置されており、第一傾斜面231と第一傾斜面231の流路方向下流側に連なる第二傾斜面232との間の頂部233の半径は、第二傾斜面232と第二傾斜面232の流路方向下流側に連なる第一傾斜面231との間の底部234の半径よりも小さい。
【0086】
これにより、第二変形例に係る突起部230によれば、第一傾斜面231と第一傾斜面231に隣接する第二傾斜面232との間に形成される空間において、冷却水の縦渦が発生する。このため、冷却水と突起部230との間の熱交換が促進される。
【0087】
[インバータモジュールと熱交換器との連結形態]
図1に示す本実施形態では、本体部10の一方の面(第一部材11)にインバータモジュール2が一体的に形成された場合を説明した。これに対して、別の連結態様として、複数の本体部を備え、インバータモジュール2の両面に本体部を配置してもよい。
【0088】
図11は、別の実施態様に係る熱交換器100を説明する模式図である。
【0089】
図11に示す熱交換器100は、第一本体部101と、第二本体部102とを有し、インバータモジュール2の両面には、第一本体部101及び第二本体部102が各々連結されている。
【0090】
第一本体部101及び第二本体部102は、
図1から
図6に示す熱交換器1における本体部10を適用可能である。
【0091】
第一本体部101において、突起部30が形成された第一部材11がインバータモジュール2の一方の面(底面)と連結されている。また、第二本体部102において、突起部30が形成された第一部材11がインバータモジュール2の他方の面(インバータモジュール2のスイッチング回路5が配置された面)と連結されている。
【0092】
本形態においても、第一本体部101に形成された柱部41(柱部42,43も同様)と、第二本体部102に形成された柱部41(柱部42,43も同様)とが、インバータモジュール2のスイッチング回路5に実装されたスイッチング素子6に対応する位置に配置されている。
【0093】
したがって、熱交換器100によれば、インバータモジュール2のスイッチング回路5が配置された面からもスイッチング回路5との熱交換を行うことができ、熱変換効率を高めることができる。
【0094】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0095】
例えば、上記実施形態では、熱交換器1は、インバータモジュール2を冷却するものであるが、これらに代えて、他の被冷却デバイスを冷却するものであってもよい。
【0096】
柱部41,42,43は、外形が楕円形状であるほか、流路方向の下流側ほど流路幅方向の長さが短くなるような、いわゆる翼形状であってもよい。
【0097】
上記実施形態では、突起部30は、流路方向に沿った仮想線V1に対して線対称であって、ヘリンボーン柄を呈する場合を説明した。これに対して、隣接する突起部30には、対称性がなく、流路方向に沿った仮想線V1に対して、一の方向のみに交差する形状であってもよい。
【0098】
上記実施形態では、突起部30が第一部材11に形成されている場合を説明したが、突起部30は、第二部材12に形成されていてもよい。第二部材12に形成されている場合であっても流路20の厚み方向における流体の流れに渦流を発生させることができ、流体を滞留させることなく、流通を促す効果が得られる。また、突起部30は、第一部材11と第二部材12の両方に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 熱交換器
2 インバータモジュール
3 入口流路
4 出口流路
5 スイッチング回路
6(6a,6b,6c,6d) スイッチング素子
10 本体部
11 第一部材
12 第二部材
30 突起部
31 第一傾斜面
32 第二傾斜面
33 頂部
41,42,43 柱部