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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088528
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】水栓取付装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
E03C1/042 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203762
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】592243553
【氏名又は名称】株式会社タカギ
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227983
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 久美子
(72)【発明者】
【氏名】芳川 敏康
【テーマコード(参考)】
2D060
【Fターム(参考)】
2D060BA03
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC00
2D060BD01
2D060BD03
2D060BF00
2D060BF03
(57)【要約】
【課題】金属の腐食による固着を防止することができ、固定強度に優れた水栓取付装置を提供すること。
【解決手段】水栓取付装置100は、水栓3が装着される台座102と、台座102とともに取付基体T1を挟持する固定具108と、台座102と固定具108との間隔を調整可能な台座固定雄ネジ104と、台座102に水栓3をネジ止めする水栓固定雄ネジ106とを有する。台座102の材質が樹脂である。台座102が、水栓3に供給される水が通る供給流路孔150と、台座固定雄ネジ104が貫通されるネジ貫通孔152と、水栓固定雄ネジ106が挿通されるネジ挿通孔156とを有する。ネジ挿通孔156が、水栓固定雄ネジ106が螺合する雌ネジ部156aを有する。水栓固定雄ネジ106と雌ネジ部156aとの螺合により、台座102の樹脂部分が圧縮されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水栓を取付基体に固定するための水栓取付装置であって、
前記水栓が装着される台座と、
前記台座とともに前記取付基体を挟持する固定具と、
前記台座と前記固定具とを連結するとともに回転によって前記台座と前記固定具との間隔を調整可能な台座固定雄ネジと、
前記台座に前記水栓をネジ止めする水栓固定雄ネジと、
を有しており、
前記台座の材質が樹脂であり、
前記台座が、前記水栓に供給される水が通る供給流路孔と、前記台座固定雄ネジが貫通されるネジ貫通孔と、前記水栓固定雄ネジが挿通されるネジ挿通孔とを有しており、
前記ネジ挿通孔が、前記水栓固定雄ネジが螺合する雌ネジ部を有しており、
前記水栓固定雄ネジと前記雌ネジ部との螺合により、前記台座の樹脂部分が圧縮されている水栓取付装置。
【請求項2】
前記台座が、前記雌ネジ部を備えた金属部材を有しており、
前記水栓固定雄ネジが、前記金属部材に螺合している請求項1に記載の水栓取付装置。
【請求項3】
前記台座固定雄ネジが、第1台座固定雄ネジと、第2台座固定雄ネジとで構成されており、
前記ネジ貫通孔が、前記第1台座固定雄ネジが挿通される第1ネジ貫通孔と、前記第2台座固定雄ネジが挿通される第2ネジ貫通孔とで構成されており、
前記雌ネジ部が、前記第1ネジ貫通孔と前記第2ネジ貫通孔との間に配置されている請求項1又は2に記載の水栓取付装置。
【請求項4】
前記供給流路孔が、給湯孔と給水孔とで構成されており、
前記ネジ挿通孔が、前記給湯孔と前記給水孔との間を通過して、前記第1ネジ貫通孔と前記第2ネジ貫通孔との間に達している請求項3に記載の水栓取付装置。
【請求項5】
前記台座が、吐水が通る吐水孔を有さない請求項1又は2に記載の水栓取付装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の水栓取付装置と、
前記水栓取付装置の前記台座に固定される水栓と、
を備える水栓装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水栓取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンや洗面台等に水栓を固定するのに、水栓取付装置が用いられている。この水栓取付装置は、天板等の取付基体を挟み込むことで、当該取付基体に固定される。この水栓取付装置に、水栓が固定される。
【0003】
特開2014-205950号公報は、天板を挟み込む第一雄ネジ部材及び第二雄ネジ部材に加えて、第一雄ネジ部材に隣接した位置から下方に延出し外周が多角形に形成されている棒状のガイド部材を有する水栓取付装置を開示する。この水栓取付装置では、天板の上側からの作業で天板に固定すること、すなわち、いわゆる上面施工が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-205950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2014-205950号公報の段落[0035]にも記載の通り、このような水栓取付装置は、金属で形成されている。また、水栓取付装置の台座に当接する水栓側の当接部も、金属で形成されている。金属同士の部材を接合することで、接合部位における割れ等は生じず、固定強度が高められている。しかし、この接合部位において金属の腐食が生ずると、金属同士の固着が生じ、水栓取付装置の台座から水栓を取り外すことが困難となる。この場合、例えば、長期間使用された水栓の交換が困難となる。
【0006】
また、天板等の取付基体も、通常は金属により形成されている。この取付基体と台座との接合部位において金属の腐食が生じると、金属同士の固着が生じ、取付基体から台座を取り外すことが困難となる。この場合、例えば、長期間使用された水栓の交換が困難となり、水栓を取り外すために切断が必要となる場合もある。
【0007】
本開示の目的の一つは、金属の腐食による固着を防止することができ、固定強度に優れた水栓取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの態様では、本発明は、水栓を取付基体に固定するための水栓取付装置である。この水栓取付装置は、前記水栓が装着される台座と、前記台座とともに前記取付基体を挟持する固定具と、前記台座と前記固定具とを連結するとともに回転によって前記台座と前記固定具との間隔を調整可能な台座固定雄ネジと、前記台座に前記水栓をネジ止めする水栓固定雄ネジと、を有している。前記台座の材質が樹脂である。前記台座が、前記水栓に供給される水が通る供給流路孔と、前記台座固定雄ネジが貫通されるネジ貫通孔と、前記水栓固定雄ネジが挿通されるネジ挿通孔とを有している。前記ネジ挿通孔が、前記水栓固定雄ネジが螺合する雌ネジ部を有している。前記水栓固定雄ネジと前記雌ネジ部との螺合により、前記台座の樹脂部分が圧縮されている。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面では、金属の腐食による固着を防止することができ、固定強度に優れた水栓取付装置が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る水栓装置の斜視図である。
図2図2は、図1の水栓装置の正面図である。
図3図3は、図2のA-A線に沿った断面図である。
図4図4は、図3のA-A線に沿った断面図である。
図5図5は、図4のA-A線に沿った位置における水栓装置の断面図である。
図6図6は、図4のB-B線に沿った位置における水栓装置の断面図である。
図7図7は、水栓取付装置の分解斜視図である。図7には、水栓本体のベース部材の斜視図が付記されている。
図8図8は、水栓取付装置の斜視図である。
図9図9は、第2実施形態の水栓装置の、図4に相当する断面図である。
図10図10(a)は、第3実施形態の水栓装置の、図3の拡大部に相当する断面図である。図10(b)は、図10(a)のb-b線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。なお本願では、下記実施形態で示される標準的な水栓の使用状態に基づき、「上」、「下」、「上側」、「上端」、「下側」、「下端」、「水平方向」、「正面」、「左側」、「右側」、「左右方向」、「前側」、「後側」、「前後方向」等の用語が用いられる。「正面」は、水栓が取り付けられるキッチンや洗面台等との相対関係において定まる方向であり、水栓の使用者に正対する方向である。この「正面」を基準として、使用者から見た方向に基づき、「左側」、「右側」及び「左右方向」が定まる。また、この使用者から見て手前側(使用者に近い側)が「前側」とされ、この使用者から見て奥側(使用者から遠い側)が「後側」とされる。なお、水栓の姿勢等は様々に設定することができ、上記各用語は当該姿勢等に応じて読み替えられて解釈される。
【0012】
図1は、第1実施形態に係る水栓装置2の斜視図であり、図2は水栓装置2の正面図であり、図3図2のA-A線に沿った断面図である。図2では、吐出部16(後述)が正面を向いている。水栓装置2は、水栓3と水栓取付装置100とを有する。水栓取付装置100は取付基体T1に固定される。取付基体T1は、水栓装置2が取り付けられる部分である。取付基体T1は取付孔H1を有しており、この取付孔H1に水栓装置2が取り付けられる。本実施形態では、取付基体T1はキッチンの天板である。図2及び図3では、天板T1が仮想線(2点鎖線)で示されている。天板T1に固定された水栓取付装置100に、水栓3が固定されることで、天板T1に水栓3が固定される。なお取付基体T1の材質として、ステンレス鋼、樹脂(人工大理石等)及びセラミックが例示される。本実施形態では、天板T1の材質はステンレス鋼である。水栓装置2は、例えば、キッチン、洗面台等で使用される。水栓装置2は、シングルレバー混合水栓である。
【0013】
水栓3は、水栓本体4と、水導入管6と、湯導入管8とを有する。水栓3は、水栓本体4の外部に延びる吐水管を有さない。また、水栓3は、前記吐水管に繋がって水栓本体4の外側に延び吐出部16へと水を送るホースを有さない。このホースは、一般にフレキホースと称されている。フレキホースは、フレキシブルホースの略である。フレキホースとしては、金属製のフレキシブルメタルホースが一般的である。なお、水栓3は、水栓本体4の外部に延びる吐水管を有していてもよいし、前記ホース(フレキホース)を有していてもよい。
【0014】
水栓本体4は、水栓基部12と、ハンドル14と、吐出部16とを有する。吐出部16は、ヘッド20を有する。ヘッド20は、切替操作部22と水形調整部24と吐出口26とを有する。吐出部16にはカートリッジ配置部23が設けられ、カートリッジ配置部23に浄水カートリッジ(図示されず)が配置されている。切替操作部22を操作することで、浄水カートリッジを透過する流路と、浄水カートリッジを透過しない流路とが切り換えられる。浄水カートリッジを透過する流路に切り換えられると、浄水が吐出される。浄水カートリッジを透過しない流路に切り換えられると、原水が吐出される。
【0015】
ハンドル14の上下回動により、吐出量が調整される。本実施形態では、ハンドル14を上側に動かすほど、吐出量が増加する。ハンドル14の左右回動により、湯と水との混合割合が変化し、吐水の温度が調整される。水栓基部12には、ハンドル14の操作により吐出量及び吐水温度を調整しうる弁機構28が内蔵されている。この弁機構28は、可動弁体30と固定弁体32とを含んでいる。固定弁体32は湯孔34、水孔36及び排出孔38を有している。可動弁体30に到達した水は、吐水となる。可動弁体30の混合部で混合された吐水は、排出孔38を通過して吐出口26へと流れる。図3の断面位置では、湯孔34及び水孔36は示されず、排出孔38が示されている。湯孔34及び水孔36は、後述の図6に図示されている。排出孔38を通過した水は、台座102(後述)を通過することなく、吐出部16に流れて、吐出口26から吐出される。
【0016】
図4は、図3のA-A線に沿った断面図である。図5は、図4のA-A線に沿った水栓装置2の断面図である。図6は、図4のB-B線に沿った水栓装置2の断面図である。図7は、水栓取付装置100の構成部材及び関連部材を示す分解斜視図である。図8は、使用状態における水栓取付装置100を示す斜視図である。なお図8では、水栓固定雄ネジ106(後述)の記載が省略されている。
【0017】
図7及び図8がよく示すように、水栓取付装置100は、台座102と、台座固定雄ネジ104と、水栓固定雄ネジ106と、固定具108とを有する。台座102に、水栓3が装着される。台座固定雄ネジ104は、台座102と固定具108とを連結するとともに、回転によって台座102と固定具108との間隔を調整しうる。水栓固定雄ネジ106は、台座102に水栓3をネジ止めする。水栓固定雄ネジ106は、1本である。水栓固定雄ネジ106の材質は、金属である。台座固定雄ネジ104は、2本である。台座固定雄ネジ104の材質は、金属である。固定具108は、台座102と共に取付基体T1を挟持する。
【0018】
台座固定雄ネジ104は、第1台座固定雄ネジ104aと、第2台座固定雄ネジ104bとを有する。水栓固定雄ネジ106は、頭部106aと軸部106bとを有する。台座102は、雌ネジ部110aを備えた金属部材110を有する。第1台座固定雄ネジ104aの先端部には、ストッパー112が取り付けられている。ストッパー112として、Eリング(E形止め輪)が採用されている。
【0019】
図7がよく示すように、水栓3の水栓本体4は、ベース部材120を有する。ベース部材120の材質は、金属である。ベース部材120は、水栓基部12の骨格部分を構成している。ベース部材120には、メッキ(ニッケルクロムメッキ)が施されている。ベース部材120は、下方に開放された円筒を形成している円筒下部122と、水栓固定雄ネジ106が挿通されつつ水栓固定雄ネジ106の頭部106aで押圧されるネジ係止部124を有する。ネジ係止部124は、ネジ係止孔126を有する。ネジ係止部124は、円筒下部122に設けられている。ベース部材120が台座102に固定されることで、水栓3が水栓取付装置100に固定される。このように、水栓本体4は円筒下部122を有しており、円筒下部122の材質は金属である。この円筒下部122が、台座102(水栓取付装置100)に固定される。本実施形態では、円筒下部122の材質は、黄銅である。
【0020】
固定の安定性の観点から、台座固定雄ネジ104は複数(2つ)であるのが好ましい。本実施形態では、第1台座固定雄ネジ104aと第2台座固定雄ネジ104bとは同じである。第1台座固定雄ネジ104a及び第2台座固定雄ネジ104bは、ボルトである。第1台座固定雄ネジ104aは、頭部130と軸部132とを有する。軸部132には雄ネジが形成されている。頭部130の外面は円筒面である。頭部130は六角レンチに対応した係合穴134を有する。第1台座固定雄ネジ104aは、六角穴付きボルト(キャップボルト)である。第2台座固定雄ネジ104bは、頭部136と軸部138とを有する。軸部138には雄ネジが形成されている。頭部136の外面は円筒面である。頭部136は六角レンチに対応した係合穴140を有する。第2台座固定雄ネジ104bは、六角穴付きボルト(キャップボルト)である。なお、第1台座固定雄ネジ104a及び第2台座固定雄ネジ104bは六角穴付きボルトでなくてもよく、あらゆる雄ネジが採用されうる。
【0021】
以下では、第1台座固定雄ネジ104aが第1雄ネジとも称され、第2台座固定雄ネジ104bが第2雄ネジとも称される。
【0022】
台座102は、上部142と、上部142の下側に設けられたフランジ部144とを有する。更に、台座102は、下方に突出する突出部146を有する(図5及び図6参照)。突出部146は、フランジ部144よりも下側に延びている。フランジ部144は、突出部146よりも径方向外側に延在している。この径方向とは、突出部146の径方向であり、フランジ部144の径方向でもある。
【0023】
上部142は、円筒面142aを有している。円筒面142aは、上部142の外面(側面)である。図3の拡大部が示すように、フランジ部144は、上側から天板T1を押圧している。なお、フランジ部144の天板T1との間に、シール部材145が配置されている。シール部材145は、天板T1の取付孔H1への水の浸入を抑制する。突出部146は、円筒面146aを有している(図5及び図6参照)。円筒面146aは、突出部146の外面である。突出部146の外径は、取付孔H1の直径に対応している。図3の拡大部が示すように、突出部146が取付孔H1に挿入されている。突出部146は、水栓取付装置100の位置決めに寄与する。
【0024】
台座102は、供給流路孔150と、ネジ貫通孔152とを有する。供給流路孔150は、台座102を貫通している。供給流路孔150は、上下方向に延びている。ネジ貫通孔152は、台座102を貫通している。ネジ貫通孔152は、上下方向に延びている。
【0025】
供給流路孔150は、2つである。供給流路孔150は、給湯孔150aと、給水孔150bとを有する。給湯孔150aと給水孔150bとは、左右に並列している。図4及び図6が示すように、給湯孔150aには湯導入管8が挿通されており、給水孔150bには水導入管6が挿通されている。給湯孔150a及び給水孔150b以外に、供給流路孔150は存在しない。なお、水栓3は単水栓でもよく、その場合、供給流路孔150は1つとされうる。また、供給流路孔150は3つとされてもよい。例えば、水栓3がアンダーシンク型の浄水器を備える場合、供給流路孔150は、給湯孔、給水孔及び浄水供給孔の3つとされうる。
【0026】
台座102は、吐水が通る吐水孔を有さない。台座102において、流体が通る孔は、給湯孔150a及び給水孔150bの2つのみである。
【0027】
ネジ貫通孔152の数は、台座固定雄ネジ104の数と同じである。本実施形態では、ネジ貫通孔152は2つである。ネジ貫通孔152は、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとを有する。第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとは、左右に並列している。
【0028】
給湯孔150a及び給水孔150bの位置は、固定弁体32における湯孔34及び水孔36の位置に対応している(図6参照)。給湯孔150aは、台座102の前側且つ左側に配置され、給水孔150bは、台座102の前側且つ右側に配置されている。このため、台座102の後側に、第1ネジ貫通孔152a及び第2ネジ貫通孔152bを配置する余地が生じている。
【0029】
第1ネジ貫通孔152aは給湯孔150aの後側に位置する。第2ネジ貫通孔152bは給水孔150bの後側に位置する。第1ネジ貫通孔152aには、第1雄ネジ104aが挿通される。第1ネジ貫通孔152aは、第1雄ネジ104aの締結時において頭部130が係合する係合面E1を有する(図5参照)。係合面E1は、上向きの円環面を構成している。係合面E1より下側で、第1ネジ貫通孔152aの内径は小さくなっている。この小径部分に、第1雄ネジ104aの軸部132が挿通される。第2ネジ貫通孔152bには、第2雄ネジ104bが挿通される。第2ネジ貫通孔152bは、第2雄ネジ104bの締結時において頭部136が係合する係合面E2を有する(図5参照)。係合面E2は、上向きの円環面を構成している。係合面E2より下側で、第2ネジ貫通孔152bの内径が小さくなっている。この小径部分に、第2雄ネジ104bの軸部138が挿通される。
【0030】
台座102を上下方向に貫通する孔は、給湯孔150a、給水孔150b、第1ネジ貫通孔152a及び第2ネジ貫通孔152bの4つのみである。台座102を上下方向に貫通する他の孔が設けられてもよい。
【0031】
台座102は、水栓固定雄ネジ106が挿通されるネジ挿通孔156を有する。ネジ挿通孔156は、水平方向に延びている。ネジ挿通孔156は、前後方向に延びている。図4がよく示すように、ネジ挿通孔156は、給湯孔150aと給水孔150bとの間を通過している。ネジ挿通孔156は、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間を通過している。ネジ挿通孔156は、台座102を貫通している。ネジ挿通孔156は、台座102を貫通していなくてもよい。ネジ挿通孔156は、水栓固定雄ネジ106の雄ネジ部が螺合する雌ネジ部156aを有する。本実施形態では、雌ネジ部156aは、金属部材110の雌ネジ部110aである。
【0032】
台座102は、金属部材110を有する。台座102の樹脂部分は、金属部材配置部158を有している。金属部材配置部158は、ネジ挿通孔156の一端部(後端部)に形成されている。金属部材配置部158以外の部分において、ネジ挿通孔156の内径は、水栓固定雄ネジ106の軸部106bに対応している。金属部材配置部158には、段差面160が形成されている。金属部材配置部158は、金属部材110が挿入される挿入孔を構成している。金属部材配置部158の内径は、金属部材110の外径に対応している。この金属部材配置部158に、金属部材110が配置されている。金属部材110の端面110bが、段差面160に当接している。この当接により、金属部材110は、水栓固定雄ネジ106の軸力によって頭部106a側に移動しない。このように、金属部材110は、水栓固定雄ネジ106の軸力によって台座102に対して移動しないように、台座102の樹脂部分に取り付けられている。締結された水栓固定雄ネジ106の頭部106aは、水栓3の正面に位置する(図2参照)。水栓固定雄ネジ106が正面に位置することで、水栓固定雄ネジ106の締結作業が容易となる。また、水栓固定雄ネジ106が正面位置の目印となり、水栓装置2を正しい向きで固定するのが容易となる。
【0033】
ネジ挿通孔156(水栓固定雄ネジ106)の中心線CL1と、円筒面142aの中心線CL2とは、直角に交差している(図8参照)。台座102の平面視において、台座102は、中心線CL1を対称軸として線対称である(図4参照)。台座102の平面視において、給湯孔150aと給水孔150bとは、中心線CL1を対称軸として互いに対称に配置されている。第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとは、中心線CL1を対称軸として互いに対称に配置されている。
【0034】
固定具108は、平面視で略半円形状である。固定具108は、平面視でC字形状でもある。固定具108は、板状の部材である。固定具108は、天板T1に設けられた取付孔H1(図3参照)を通過しうる外形及び寸法を有する。固定具108は、取付孔H1を通過しうる。固定具108は、取付孔H1を通過できる姿勢を有する。
【0035】
固定具108は、台座固定雄ネジ104に螺合する雌ネジ孔164を有する。雌ネジ孔164は、固定具108を貫通している。雌ネジ孔164の数は、台座固定雄ネジ104の数に等しい。2つの雌ネジ孔164が設けられている。雌ネジ孔164は、第1雌ネジ孔164aと、第2雌ネジ孔164bとを有する。第1雌ネジ孔164aは、第1雄ネジ104aに螺合する。第2雌ネジ孔164bは、第2雄ネジ104bに螺合する。
【0036】
固定具108の上面108aには、複数の突起166が設けられている。複数の突起166は、天板T1に対する固定具108の固定性を高めうる。突起166は、無くてもよい。
【0037】
なお、図2及び図3に示されるように、本実施形態では、取付基体(天板)T1と固定具108との間に、補強部材R1が配置されている。天板T1がステンレス鋼である場合、通常その厚みは薄く(4mm程度)、その剛性が十分でない場合がある。この剛性を補強するため、補強部材R1が用いられうる。本実施形態では、補強部材R1が用いられている。補強部材R1は平板である。好ましくは、補強部材R1の材質は、木又は樹脂である。補強部材R1の材質が木又は樹脂である場合、突起166は、台座固定雄ネジ104の軸力により、補強部材R1に食い込みうる(図3の拡大部参照)。このように、本実施形態では、固定具108は、台座102と共に、補強部材R1を介して取付基体T1を挟持している。もちろん、補強部材R1は無くてもよい。すなわち、固定具108は、台座102と共に、取付基体T1(天板)のみを挟持していてもよい。
【0038】
水栓取付装置100(水栓装置2)は、上面施工型である。すなわち、水栓取付装置100は、取付基体(天板)T1の上側から取付基体(天板)T1に取り付けることができる。
【0039】
上面施工型の水栓取付装置のいくつかの例は、前述の特開2014-205950号公報に、従来技術及び本発明として記載されている。本開示の水栓取付装置100でも、公知の上面施工の方法が採用されうる。
【0040】
本実施形態では、例えば以下のようにして上面施工が実施されうる。先ず、第1雄ネジ104aを第1ネジ貫通孔152aに通し且つ第1雌ネジ孔164aに螺合させて、第1雄ネジ104aのみで台座102と固定具108とを繋いだ状態とする。この状態のまま、固定具108を上側から取付孔H1に通す。この際、固定具108が取付孔H1を通過できるように、水栓取付装置100全体を倒して、固定具108を傾斜させる。次に、天板T1の下側にある固定具108が略水平になるように、水栓取付装置100全体を起こし、台座102を略水平にする。次に、第2雄ネジ104bを第2ネジ貫通孔152b及び取付孔H1に通しつつ、第2雌ネジ孔164bに螺合させる。この螺合において、第2雌ネジ孔164bの位置が、第2雄ネジ104bと螺合しうる位置からズレている場合、このズレを天板T1の上側から調整する。水栓取付装置100は、この調整を可能とする調整機構を備えていてもよい。この調整機構の一例は、第2ネジ貫通孔152b(又はその近傍)と第2雌ネジ孔164b(又はその近傍)との間に架け渡された紐(図示省略)である。この紐を引っ張ることで、第2雌ネジ孔164bの位置を天板T1の上側から調整することができる。この調整により、第2雄ネジ104bを第2雌ネジ孔164bに螺合させることができる。最後に、第1雄ネジ104a及び第2雄ネジ104bを締め付けて、台座102と固定具108とで天板T1を挟み込むことで、水栓取付装置100が天板T1に固定される。なお、第1雄ネジ104aの先端部に取り付けられたストッパー112は、この施工中に第1雄ネジ104aから固定具108が脱落することを防止しうる(図8参照)。
【0041】
なお、本開示の水栓装置2は、上面施工型でなくてもよい。台座102を有する水栓取付装置100を備えた水栓装置2は、上面施工に適している。この観点から、水栓装置2(水栓取付装置100)は、上面施工型であるのが好ましい。
【0042】
天板T1に固定された水栓取付装置100に、水栓3が固定される。先ず、台座102の給湯孔150a及び給水孔150bに、湯導入管8及び水導入管6がそれぞれ上側から挿通される。次いで、水栓本体4が、台座102の上部142に嵌め込まれる。より詳細には、ベース部材120の円筒下部122が、台座102の上部142に外嵌される(図3の拡大部、図5及び図6参照)。換言すれば、円筒下部122の内側に上部142が挿入される。円筒下部122の内面122aは上部142の円筒面142aに当接している。円筒下部122の下端は、フランジ部144に上側から当接している。そして、図3の拡大部がよく示すように、水栓固定雄ネジ106が、ネジ係止孔126及びネジ挿通孔156に挿通され、金属部材110と螺合している。水栓固定雄ネジ106を締め付けることで、水栓3が水栓取付装置100にネジ止めされている。水栓3が水栓取付装置100に固定されることで、水栓装置2が天板T1に固定される。
【0043】
台座102は、水栓固定雄ネジ106の軸力に起因する押圧力を水栓3側に付与する当接面142bを有する(図8参照)。当接面142bは、円筒面142aとともに、上部142の外面(側面)を構成している。当接面142bは、中心線CL1に垂直な平面を構成している。水栓3における台座102との接触面(円筒下部122の内面122a)は、水栓固定雄ネジ106の軸力を受圧する支持面122bを有する(図3の拡大部参照)。支持面122bは、ネジ係止部124の内面を含む。支持面122bも、中心線CL1に垂直な平面を構成している。水栓固定雄ネジ106の締結時において、支持面122bは当接面142bに圧接される。なお支持面122b及び当接面142bは、平面でなくてもよく、例えば円筒面であってもよい。
【0044】
図9は、第2実施形態の水栓装置2Aにおける、図4に相当する断面図である。第2実施形態では、金属部材110が設けられておらず、台座102の樹脂部分に雌ネジ部170が設けられている。本実施形態では、この雌ネジ部170は、ネジ挿通孔156の雌ネジ部156aである。この雌ネジ部170に、水栓固定雄ネジ106の雄ネジ部が螺合している。この点を除き、水栓装置2Aは、第1実施形態の水栓装置2と同じである。
【0045】
上記構成の水栓装置2、2Aは、以下の効果を奏する。
【0046】
台座102(金属の相手部分と接触する部分)が樹脂製であるため、台座102と水栓3との間で金属同士の腐食による固着が生じない。また、台座102と天板T1との間で金属同士の腐食による固着が生じない。
【0047】
水栓3において台座102と接触する金属部分(上記実施形態では、円筒下部122)には、メッキが施されている。このメッキは、ニッケルクロムメッキである。このニッケルクロムメッキでは、ニッケルメッキの上にクロムメッキが施される。円筒下部122の外面には、ニッケルメッキの上にクロムメッキが付着しニッケルクロムメッキが形成されている。一方、台座102に接触する接触面(円筒下部122の内面122a)には、ニッケルメッキが付着しているものの、クロムメッキは付着していない。このため、内面122aに接触する台座が金属製であり、その表面にニッケルクロムメッキが施されている場合、台座側のニッケルクロムメッキと、水栓側のニッケルメッキとが接触することになる。異種の金属メッキ層同士が接触すると、水の存在下で電池が構成され、異種金属接触腐食が生ずる。本実施形態では、台座102の材質が樹脂であり、この樹脂が台座102の表面を構成している。また、台座102にメッキは施されていない。台座102を樹脂で形成することで、異種金属接触腐食が防止される。
【0048】
水栓側(台座102に接触する部分)の材質が亜鉛とされる場合もある。この場合、台座の金属が黄銅である場合が多いため、異種金属接触腐食が生じやすい。この場合も、台座を樹脂製とすることで、異種金属接触腐食が防止される。
【0049】
台座102に対する水栓3のネジ止めにおいて、水栓固定雄ネジ106による軸力は、台座102の樹脂部分を圧縮している(図4及び図9の矢印参照)。水栓固定雄ネジ106と雌ネジ部156aとの螺合により、台座102の樹脂部分が圧縮されている。このため、台座102が樹脂製とされても、水栓固定雄ネジ106の締め込みに対する台座102の耐久性を高めることができる。
【0050】
水栓固定雄ネジ106の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部156aは、台座102の内部に位置する。この雌ネジ部156aと、水栓固定雄ネジ106の頭部106aとの間に、台座102の樹脂部分が存在している。水栓固定雄ネジ106による軸力は、頭部106a側から台座102を押す力F1と、頭部106aの反対側(水栓固定雄ネジ106の先端側)から台座102を押す力F2とを生じる(図4及び図9参照)。力F1は、支持面122bから台座102の樹脂部分に付与される。力F1と力F2とは、互いに逆向きである。力F1と力F2とで、台座102の樹脂部分は挟まれて圧縮されている。樹脂は、引張応力に対して割れやすいが、圧縮応力に対する耐久性は高い。台座102は、水栓固定雄ネジ106の軸力に対する耐久性に優れる。
【0051】
ネジ貫通孔152の周囲には、スペースがある。このスペースに、水栓固定雄ネジ106が配置されうる。このスペースにより、水栓固定雄ネジ106の仕様(太さ、長さ)の自由度が高まる。また、水栓固定雄ネジ106の周囲の樹脂肉厚が確保されうる。この結果、水栓固定雄ネジ106の締結力を高めることができる。
【0052】
上述の通り、水栓3は、水栓本体4の外部に延びる吐水管を有さない。台座102は、吐水管が通る孔(吐水孔)を有さない。吐水孔とは、吐水が通る孔である。台座102は、吐水が上から下に流れる吐水孔を有さない。このため、水栓固定雄ネジ106を配置できるスペースが大きくなり、水栓固定雄ネジ106の周囲の樹脂肉厚が確保される。この結果、水栓固定雄ネジ106の締結力を高めることができる。
【0053】
上述の通り、水栓3は、フレキホースを有さない。台座102は、フレキホースが通るホース孔を有さない。このホース孔も、吐水が通る孔であるから、吐水孔である。台座102は、吐水が下から上に流れる吐水孔を有さない。このため、水栓固定雄ネジ106を配置できるスペースが大きくなり、水栓固定雄ネジ106の周囲の樹脂肉厚が確保される。この結果、水栓固定雄ネジ106の締結力を高めることができる。
【0054】
フレキホースを有する水栓では、台座102に第1の吐水孔と第2の吐水孔とが設けられる。第1の吐水孔は、吐水が上から下に流れる吐水孔である。第2の吐水孔は、吐水が下から上に流れる吐水孔である。台座102には、これらの吐水孔が存在しない。このため、水栓固定雄ネジ106を配置できるスペースが大きくなり、水栓固定雄ネジ106の周囲の樹脂肉厚が確保される。この結果、水栓固定雄ネジ106の締結力を高めることができる。
【0055】
上記各実施形態では、台座固定雄ネジ104が第1台座固定雄ネジ104aと第2台座固定雄ネジ104bとで構成されている。また、ネジ貫通孔152は、第1台座固定雄ネジ104aが挿通される第1ネジ貫通孔152aと、第2台座固定雄ネジ104bが挿通される第2ネジ貫通孔152bとで構成されている。水栓固定雄ネジ106の雄ネジ部と螺合する雌ネジ部156aは、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間に配置されている。
【0056】
ネジ貫通孔152として第1ネジ貫通孔152a及び第2ネジ貫通孔152bが用いられている場合、雌ネジ部156aは、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間に設けられているのが好ましい。第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間は、台座固定雄ネジ104によって下方に押さえつけられている。この部位に雌ネジ部156aを配置することで、水栓固定雄ネジ106による水栓3のネジ止めが安定化しうる。また、雌ネジ部156aに下方への力が付加されることで、軸部106bの雄ネジ部に曲げ応力が作用し、ネジ結合の緩みが抑制される。
【0057】
第1ネジ貫通孔152a及び第2ネジ貫通孔152bの直径は、供給流路孔150の直径に比べて小さい。第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間のスペース(樹脂部分)は、広くされうる。この部分に雌ネジ部156aを配置することで、雌ネジ部156aの周囲における樹脂の肉厚を大きくすることができる。
【0058】
第1実施形態では、雌ネジ部110aを備えた金属部材110が用いられている。この金属部材110に、水栓固定雄ネジ106が螺合している。金属部材110は、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間に配置されている。第1ネジ貫通孔152a及び第2ネジ貫通孔152bの直径は、供給流路孔150の直径に比べて小さい。このため、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間のスペース(樹脂部分)は広くされうる。このスペースに、金属部材110を配置することで、金属部材110と第1雄ネジ104aとの間、及び、金属部材110と第2雄ネジ104bとの間に、樹脂肉厚が確保されうる。この樹脂肉厚により、水栓固定雄ネジ106の軸力に対する台座102の耐久性を高めることができる。
【0059】
上記各実施形態では、供給流路孔150が、給湯孔150aと給水孔150bとで構成されている。ネジ挿通孔156は、給湯孔150aと給水孔150bとの間を通過して、第1ネジ貫通孔152aと第2ネジ貫通孔152bとの間に達している。この構成により、水栓固定雄ネジ106の軸部106bを長くすることができる。このため、軸力による軸部106bの伸び量が大きくなり、水栓固定雄ネジ106の緩みが抑制される。よって、水栓固定雄ネジ106による水栓3のネジ止めが安定化される。また、水栓固定雄ネジ106の軸部106bが長くされることで、水栓固定雄ネジ106の軸力で挟み込まれる樹脂部分の厚みが大きくなり、軸力に対する台座102の耐久性を高めることができる。
【0060】
図3において両矢印D1で示されているのは、水栓固定雄ネジ106の中心線CL1に沿った断面における上部142の幅である。図3において両矢印D2で示されているのは、水栓固定雄ネジ106の有効挿入長である。この有効挿入長とは、ネジ挿通孔156の挿入側の開口から、水栓固定雄ネジ106のネジ結合部の先端までの長さである。この長さは、水栓固定雄ネジ106の中心線CL1に沿って測定される。図3において両矢印D3で示されているのは、水栓固定雄ネジ106のネジ結合部の長さである。この長さは、水栓固定雄ネジ106の中心線CL1に沿って測定される。
【0061】
ネジ止めの安定化の観点から、D2/D1は、0.6以上、0.7以上、更には0.8以上とされうる。D2/D1は、1.0以下とされうる。ネジ止めの安定化及び台座102の耐久性の観点から、有効挿入長D2は、20mm以上、更には24mm以上、更には28mm以上とされうる。水栓3の規格に起因して、台座102の上部142の最大幅(直径)は、通常、35mm~40mmである。この観点から、有効挿入長D2は、34mm以下が好ましい。ネジ止めの軸力を高め、ネジ止めを安定化する観点から、ネジ結合部の長さD3は、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、7mm以上がより好ましい。台座102におけるスペースを考慮すると、この長さD3は、10mm以下が好ましい。
【0062】
図4において両矢印D4で示されるのは、中心線CL1に沿った水平な断面における、金属部材110とネジ貫通孔152との距離である。軸力に対する台座102の耐久性の観点から、距離D4は、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。台座102の寸法及びネジ貫通孔152の配置を考慮すると、距離D4は4mm以下とされうる。図5が示すように、軸部106bの中心線CL1は、係合面E1及び係合面E2よりも下側に位置する。この配置は、距離D4を増やすのに寄与している。
【0063】
図6において両矢印D5で示されるのは、上部142の高さである。この高さD5は、フランジ部144よりも上側における台座102の高さである。この高さD5は、水栓3(円筒下部122)に内嵌される部分の高さである。この高さD5は、円筒面142aの高さでもある。高さD5は、中心線CL2に沿って測定される。台座102の樹脂部分を厚くすることで、台座固定雄ネジ104の軸力(下向き力)に対する耐久性が高まると共に、水栓固定雄ネジ106の配置の自由度が高まる。また、円筒下部122に内嵌する上部142を高くすることで、水栓3に対する台座102の支持力が高まる。これらの観点から、高さD5は、10mm以上が好ましく、20mm以上がより好ましい。水栓3の小型化の観点から、高さD5は30mm以下とされうる。
【0064】
金属部材110は、水栓固定雄ネジ106の締結により生ずる軸力によって、台座102に対して移動しない。金属部材110により、雌ネジ部156aを金属化することができる。水栓固定雄ネジ106のネジ結合が金属同士となることで、ネジ止めの強度が高まる。また、ネジ結合が金属同士となることで、ネジ結合の緩み止め手段が効果的に適用されうる。
【0065】
金属部材110と水栓固定雄ネジ106とのネジ結合の緩み止め手段として、緩み止め剤が用いられうる。金属同士のネジ結合とすることで、緩み止め剤の効果が高まる。この緩み止め剤は、ネジ結合部分に付与される。この緩み止め剤は、例えば、ネジ締結前に、水栓固定雄ネジ106の雄ネジ部に塗布される。この緩み止め剤として、接着剤及びナイロン樹脂が例示される。接着剤の一例として、嫌気性接着剤が挙げられる。この嫌気性接着剤は、空気(酸素)に触れている間は液状であるが、ネジ締結により空気が遮断されると重合反応が進行して硬化する。この嫌気性接着剤として、ヘンケル社製の商品名「ロックタイト」が挙げられる。他の接着剤として、メック加工で用いられる接着剤が挙げられる。メック(MEC)とは、micro-encapsulationの略である。この接着剤は、主剤及び硬化剤のいずれか一方又は両方が、マイクロカプセルに内包されている。ネジの締め付けによりマイクロカプセルが破壊されて反応が起こり、接着剤が硬化する。ナイロン樹脂は、例えば12ナイロン樹脂とされうる。ナイロン樹脂が塗布されたネジの一例として、ナイロック社製の商品名「ナイロック」が挙げられる。
【0066】
雌ネジ部110aを備えた金属部材110として、インサートナット、六角ナットなどのナットが例示される。インサートナットとして、ビットインサート、ダッチインサート及びウルトラサートが例示される。インサートナットは、その軸方向一方側にフランジが形成されていてもよいし、フランジがなくてもよい。上記金属部材110は、フランジがないタイプのインサートナットである。また、インサートナットの外周面に、ローレット、雄ネジ等の凹凸加工が形成されていてもよい。これらの凹凸加工は、樹脂製の台座102に対するインサートナットの固定性を高める。六角ナットの他、四角ナットなど、外面の断面形状が多角形(あるいは非円形)のナットが採用されてもよい。上記金属部材110は、インサートナットであり、ビットインサートである。
【0067】
雌ネジ部110aを備えた金属部材110の設置方法は限定されない。金属部材110は、台座102の樹脂部分に固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。この金属部材110は、水栓固定雄ネジ106との螺合において共回りせず、且つ、水栓固定雄ネジ106の軸力によって水栓固定雄ネジ106の頭部106a側に移動しないように係止されているだけでもよい。例えば、上記第1実施形態では、金属部材110は移動阻止部160(段差面)により、頭部106a側への移動が阻止されている。
【0068】
金属部材110は、樹脂成形後の台座102に設けられた挿入孔に挿入されていてもよい。上記第1実施形態では、金属部材110は、挿入孔である金属部材配置部158に挿入されている。この挿入は、圧入又は熱圧入により実施されてもよいし、圧力をかけずに挿入されてもよい。圧力をかけずに挿入された後、その外形が拡張するように金属部材110を変形させることで、金属部材110が挿入孔に固定されてもよい。この金属部材110は、台座102の樹脂成型時に台座102内に埋め込まれてもよい。
【0069】
六角ナットなど、外面が多角形(あるいは非円形)のナットを用いる場合、当該ナットの回転を阻止しうる隙間幅を有する金属部材配置部にナットが配置されてもよい。
【0070】
図10(a)は、第3実施形態の水栓装置2Bにおける、図3の拡大部に相当する断面図である。図10(b)は、図10(a)のb-b線に沿った断面図である。第3実施形態では、台座102の樹脂部分に、金属部材配置部180が形成されている。金属部材配置部180は、上部142の上面で開口する有底孔を構成している。金属部材配置部180に、六角ナット182が配置されている。六角ナット182の雌ネジ部182aが、水栓固定雄ネジ106とネジ結合している。雌ネジ部182aは、ネジ挿通孔156の雌ネジ部156aである。この点を除き、水栓装置2Bは、第1実施形態の水栓装置2と同じである。
【0071】
金属部材配置部180は、互いに対向する対向面180a、180bを有する。これら対向面間の距離は、六角ナット182の外面を構成する6つの平面にうち互いに平行な2つの平面間の距離に対応している。六角ナット182は、金属部材配置部180に落とし込まれているだけであり、固定されていない。金属部材配置部180に六角ナット182を配置することで、六角ナット182の回り止めが可能である。このように、金属部材ナットを固定しなくても、水栓固定雄ネジ106による締結は可能である。
【0072】
上述の通り、台座102の材質は樹脂とされる。ただし、第1実施形態では、金属部材110が金属により形成されており、金属部材110以外の部分が樹脂により形成されている。この台座102の樹脂は、繊維強化樹脂を含む。強度の観点から、好ましい樹脂として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)及びポリオキシメチレン(POM)が挙げられる。強度の観点から、台座102を形成する樹脂は、繊維強化樹脂であるのが好ましい。上述の好ましい樹脂が、繊維で強化されるのがより好ましい。繊維強化樹脂として、炭素繊維強化樹脂及びガラス繊維強化樹脂が例示される。強度及びコストの観点から、ガラス繊維強化樹脂が好ましい。このガラス繊維強化樹脂として、上述の好ましい樹脂がガラス繊維で強化されたものが好ましい。すなわち、ガラス繊維強化PPS、ガラス繊維強化PA及びガラス繊維強化POMが好ましい。給水による寸法の変化が少ないとの観点から、ガラス繊維強化PPS及びガラス繊維強化POMがより好ましい。成型収縮による寸法のばらつきが少ないとの観点から、ガラス繊維強化PPSがより好ましい。上記実施形態の台座には、ガラス繊維強化PPSが採用された。ガラス繊維強化PPSとして、PPS-GF30(ガラス繊維30%)、PPS-GF40(ガラス繊維40%)及びPPS-GF50(ガラス繊維50%)が例示される。
【0073】
台座102を形成する樹脂は、芳香族ポリアミド(アラミド)であってもよい。この樹脂が、ガラス繊維又は炭素繊維で強化されてもよい。後述の通り、この樹脂は固定具108にも好ましく用いられるが、台座102の材質としても用いられうる。
【0074】
固定具108の材質として、樹脂及び金属が挙げられる。好ましい樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド(PA)、ポリオキシメチレン(POM)及び芳香族ポリアミド(アラミド)が挙げられる。強度及び剛性の観点から、芳香族ポリアミド(アラミド)がより好ましい。このアラミドとして、メタ型アラミド及びパラ型アラミドが挙げられる。メタ型アラミドとして、ポリメタフェニレンイソフタルアミドが例示される。パラ型アラミドとして、ポリパラフェニレンテレフタルアミドが例示される。機械的強度の観点からは、パラ型アラミドがより好ましい。金属としては、ステンレス鋼、黄銅及び亜鉛が例示される。耐食性に優れるとの観点から、ステンレス鋼及び黄銅が好ましい。加工性に優れるとの観点から、黄銅がより好ましい。またステンレス鋼も、特に板金にして加工すると加工性に優れるため、好ましい。上記実施形態の固定具108には、黄銅が用いられた。
【0075】
水栓固定雄ネジ106の寸法及び材質は限定されない。上記実施形態では、M4×35(雄ネジ部の外径が4mm、軸部の長さが35mm)の雄ネジが水栓固定雄ネジ106として用いられた。台座102の形状、寸法、肉厚分布等に基づき、適切な雄ネジが採用されうる。軸部の長さに関する好ましい値は、上述の通りである。水栓固定雄ネジ106の強度の観点から、雄ネジ部の外径(呼び径)は3mm以上が好ましく、4mm以上がより好ましい。台座102におけるスペースを考慮すると、雄ネジ部の外径(呼び径)は、6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。圧縮応力を分散する観点から、水栓固定雄ネジ106の頭部は大きいのが好ましい。この観点から、トラス頭及びバインド頭が好ましい。上記実施形態の水栓固定雄ネジ106では、頭部106aはバインド頭とされた。締結による頭部106aの食い込みや摩擦熱等による台座102の樹脂の溶融を防ぐ観点から、頭部106aと樹脂(台座102)との間に配置されるワッシャーが更に設けられてもよい。
【0076】
上述した実施形態に関して、以下の付記を開示する。
[付記1]
水栓を取付基体に固定するための水栓取付装置であって、
前記水栓が装着される台座と、
前記台座とともに前記取付基体を挟持する固定具と、
前記台座と前記固定具とを連結するとともに回転によって前記台座と前記固定具との間隔を調整可能な台座固定雄ネジと、
前記台座に前記水栓をネジ止めする水栓固定雄ネジと、
を有しており、
前記台座の材質が樹脂であり、
前記台座が、前記水栓に供給される水が通る供給流路孔と、前記台座固定雄ネジが貫通されるネジ貫通孔と、前記水栓固定雄ネジが挿通されるネジ挿通孔とを有しており、
前記ネジ挿通孔が、前記水栓固定雄ネジが螺合する雌ネジ部を有しており、
前記水栓固定雄ネジと前記雌ネジ部との螺合により、前記台座の樹脂部分が圧縮されている水栓取付装置。
[付記2]
前記台座が、前記雌ネジ部を備えた金属部材を有しており、
前記水栓固定雄ネジが、前記金属部材に螺合している付記1に記載の水栓取付装置。
[付記3]
前記台座固定雄ネジが、第1台座固定雄ネジと、第2台座固定雄ネジとで構成されており、
前記ネジ貫通孔が、前記第1台座固定雄ネジが挿通される第1ネジ貫通孔と、前記第2台座固定雄ネジが挿通される第2ネジ貫通孔とで構成されており、
前記雌ネジ部が、前記第1ネジ貫通孔と前記第2ネジ貫通孔との間に配置されている付記1又は2に記載の水栓取付装置。
[付記4]
前記供給流路孔が、給湯孔と給水孔とで構成されており、
前記ネジ挿通孔が、前記給湯孔と前記給水孔との間を通過して、前記第1ネジ貫通孔と前記第2ネジ貫通孔との間に達している付記1から3のいずれか1項に記載の水栓取付装置。
[付記5]
前記台座が、吐水が通る吐水孔を有さない付記1から4のいずれか1項に記載の水栓取付装置。
[付記6]
付記1から5のいずれか1項に記載の水栓取付装置と、
前記水栓取付装置の前記台座に固定される水栓と、
を備える水栓装置。
【0077】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明に含まれない他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0078】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。
【符号の説明】
【0079】
2、2A、2B・・・水栓装置
3・・・水栓
4・・・水栓本体
6・・・水導入管
8・・・湯導入管
12・・・水栓基部
14・・・ハンドル
16・・・吐出部
30・・・可動弁体
32・・・固定弁体
34・・・湯孔
36・・・水孔
38・・・排出孔
100・・・水栓取付装置
102・・・台座
104・・・台座固定雄ネジ
104a・・・第1台座固定雄ネジ(第1雄ネジ)
104b・・・第2台座固定雄ネジ(第2雄ネジ)
106・・・水栓固定雄ネジ
106a・・・頭部
106b・・・軸部
108・・・固定具
110・・・雌ネジ部を備えた金属部材(インサートナット)
122・・・水栓(水栓本体)の円筒下部
124・・・ネジ係止部
126・・・ネジ係止孔
142・・・台座の上部
144・・・台座のフランジ部
146・・・台座の突出部
150・・・供給流路孔
150a・・・給湯孔
150b・・・給水孔
152・・・ネジ貫通孔
152a・・・第1ネジ貫通孔
152b・・・第2ネジ貫通孔
156・・・ネジ挿通孔
156a・・・水栓固定雄ネジが螺合する雌ネジ部
158・・・金属部材配置部
164・・・固定具の雌ネジ孔
164a・・・第1雌ネジ孔
164b・・・第2雌ネジ孔
170・・・台座の樹脂部分に直接形成された雌ネジ部
180・・・金属部材配置部
182・・・雌ネジ部を備えた金属部材(六角ナット)
T1・・・天板(取付基体)
R1・・・補強部材
図1
図2
図3
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図10