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特開2024-88530切羽前方探査システムおよび切羽前方探査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088530
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】切羽前方探査システムおよび切羽前方探査方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/00 20240101AFI20240625BHJP
【FI】
G01V1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203765
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037224
【氏名又は名称】日本工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 隼太郎
(72)【発明者】
【氏名】山上 順民
(72)【発明者】
【氏名】村田 健司
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB01
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105FF13
2G105LL04
2G105LL05
2G105LL08
(57)【要約】
【課題】点火電流を原因とするノイズの発生を回避することができる切羽前方探査システムおよび切羽前方探査方法を提供する。
【解決手段】切羽前方の地山状況を探査する切羽前方探査システム100であって、掘削用爆薬に接続された発破母線5に点火電流を流す発破器10と、発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成および発信するトリガーユニット20と、前記発破に起因して発生した弾性波を受振する受振器50を有し、前記弾性波を記録する記録ユニット30とを備える。トリガーユニット20は、前記点火電流が流れてから所定時間を経過した後に前記トリガー信号を記録ユニット30に送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽前方の地山状況を探査する切羽前方探査システムであって、
掘削用爆薬に接続された発破母線に点火電流を流す発破器と、
発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成および発信するトリガーユニットと、
前記発破に起因して発生した弾性波を受振する受振器を有し、前記弾性波を記録する記録ユニットと、を備え、
前記トリガーユニットは、前記点火電流が流れてから所定時間を経過した後に前記トリガー信号を前記記録ユニットに送信する、
ことを特徴とする切羽前方探査システム。
【請求項2】
前記トリガーユニットおよび前記記録ユニットは、無線による通信機能を備えており、
前記トリガーユニットは、前記トリガー信号を前記記録ユニットに対して無線で送信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の切羽前方探査システム。
【請求項3】
前記トリガーユニットおよび前記記録ユニットの少なくとも何れか一方を、遠隔から起動可能なリモートコントローラを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の切羽前方探査システム。
【請求項4】
切羽前方の地山状況を探査する切羽前方探査方法であって、
掘削用爆薬に接続された発破母線に点火電流を流す発破工程と、
発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成および発信するトリガー信号発信工程と、
前記発破に起因して発生した弾性波を受振器によって受振し、前記弾性波を記録する記録工程と、を有し、
前記トリガー信号発信工程では、前記点火電流が流れてから所定時間を経過した後に前記トリガー信号を発信する、
ことを特徴とする切羽前方探査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切羽前方探査システムおよび切羽前方探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの工事において、施工上問題となる可能性のある破砕帯、湧水帯などの地山情報を事前に把握することは重要である。地山情報を事前に把握するために、反射法地震探査の原理を用いた切羽前方探査が行われてきた。切羽前方探査の従来方法として、TSP(Tunnel Seismic Prediction)法とTFT(Tunnel Face Tester)法が知られている。TSP法は、トンネル周壁面に穿設した複数の発破孔で順次発破し振動を発生させ、破砕帯等で反射した反射波を複数の受振孔内の受振器で受振し解析することで、切羽前方の地山状況を予測する技術である。TSP法の詳細は、例えば、非特許文献1に開示されている。また、TFT法は、トンネル切羽を発破し振動を発生させ、破砕帯等で反射した反射波を、トンネル周壁面のロックボルト頭部に配置した受振器で受振し解析することで、切羽前方の地山状況を予測する技術である。TFT法の詳細は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】四塚勝久・篠原茂,トンネル切羽前方探査システム TSP303 切羽前方の断層破砕帯や地質境界面及び湧水の有無を弾性波反射法の3次元解析で予測,建設機械施工,Vol.68,No.5,May 2016
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-166881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
TSP法では、探査用発破を震源とする。このため、切羽前方探査の際、掘削作業を中断する必要がある。また、探査用発破と掘削用発破とは、手順も安全対策も異なるため、火薬類取締法における消費の許可を別に取得するか、または掘削用発破の消費許可を一旦終了し、探査用発破の消費許可を得て、探査終了後に消費許可を終了し、再び掘削用発破の消費許可を取り直さなければならない。その結果、工期が長期化するという問題がある。
一方、TFT法では、掘削用発破を震源とするため、掘削作業を中断しなくてもよい利点がある。TFT法では、発破母線に配置した電流センサーによって点火用の電流(点火電流)が発破母線に流れたことを検知し、例えば電流センサーに有線接続されたトリガー信号発信器から地震計に対して無線で信号を発信する。地震計は、無線による信号を受け取ると、波形記録を開始する。ここで、点火電流は高電圧(例えば、1500V~2000V)なので、当該点火電流を原因とするノイズが発生し、切羽前方探査に悪い影響を与える恐れがあった。また、トリガー信号発信器の位置が、発破母線に電流を流す発破器とトンネル切羽の間となり安全上の問題も懸念される。
このような観点から、本発明は、点火電流を原因とするノイズの発生を回避することができる切羽前方探査システムおよび切羽前方探査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る切羽前方探査システムは、切羽前方の地山状況を探査する切羽前方探査システムである。この切羽前方探査システムは、発破器と、トリガーユニットと、記録ユニットとを備える。発破器は、掘削用爆薬に接続された発破母線に点火電流を流す。トリガーユニットは、発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成および発信する。記録ユニットは、前記発破に起因して発生した弾性波を受振する受振器を有し、前記弾性波を記録する。前記トリガーユニットは、前記点火電流が流れてから所定時間を経過した後に前記トリガー信号を前記記録ユニットに送信する。
本発明に係る切羽前方探査システムにおいては、高電圧な点火電流を原因とするノイズ発生期間を過ぎた後にトリガー信号を送信することが可能なので、点火電流が通信のノイズになることを回避することができる。そのため、弾性波の記録や分析を正確に行うことができる。
【0007】
前記トリガーユニットおよび前記記録ユニットは、無線による通信機能を備えており、前記トリガーユニットは、前記トリガー信号を前記記録ユニットに対して無線で送信することも可能である。
このようにすると、掘削作業の進行状況に応じて記録ユニットの設置場所が変更された場合であっても、トリガーユニットと記録ユニットとの位置関係の調整が容易である。例えば、有線接続する場合に比べてケーブルの敷設が不要なので、発破掘削の都度進行していく切羽に追随して再配置する際の手間を少なくできる。
【0008】
前記切羽前方探査システムは、前記トリガーユニットおよび前記記録ユニットの少なくとも何れか一方を、遠隔から起動可能なリモートコントローラを備えてもよい。このようにすると、弾性波を記録するための動作が容易になる。
【0009】
本発明に係る切羽前方探査方法は、切羽前方の地山状況を探査する切羽前方探査方法である。この切羽前方探査方法は、発破工程と、トリガー信号発信工程と、記録工程とを有する。発破工程は、掘削用爆薬に接続された発破母線に点火電流を流す。トリガー信号発信工程は、発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成および発信する。記録工程は、前記発破に起因して発生した弾性波を受振器によって受振し、前記弾性波を記録する。前記トリガー信号発信工程では、前記点火電流が流れてから所定時間を経過した後に前記トリガー信号を発信する。
本発明に係る切羽前方探査方法においては、高電圧な点火電流を原因とするノイズ発生期間を過ぎた後にトリガー信号を送信することが可能なので、点火電流が通信のノイズになることを回避することができる。そのため、弾性波の記録や分析を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、点火電流を原因とするノイズの発生を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る切羽前方探査システムの全体構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る切羽前方探査システムのシステム構成図である。
図3】発破器の正面図である。
図4A】発破器のブロック図(発破前の状態)である。
図4B】発破器のブロック図(安全スイッチをON状態のまま点火スイッチを点火にひねった状態)である。
図5】受振器の側方視内部断面図である。
図6】(a)が押し込み部の側方視内部断面図であり、(b)が受振器の根元部の側方視内部断面図である。
図7】掘削用発破における段発発破の説明図である。
図8】発破による地盤振動の波形を時系列で示した図であり、(a)は切羽側での波形を示し、(b)は受振器側での波形を示している。
図9】本発明の実施形態に係る切羽前方探査方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0013】
[構成]
図1および図2を参照して、実施形態に係る切羽前方探査システム100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る切羽前方探査システム100の全体構成図であり、トンネル坑内の平面図である。トンネルの掘進方向を前方とし、その反対方向を後方と表現する場合がある。図2は、実施形態に係る切羽前方探査システム100のシステム構成図である。
【0014】
図1に示す切羽前方探査システム100は、切羽前方の地山状況を探査するためのシステムである。切羽前方探査システム100は、トンネルの内部に設置され、TFT法による探査を実現する。切羽前方探査システム100は、発破器10と、トリガーユニット20と、記録ユニット30と、リモートコントローラ60と、を備えている。また、記録ユニット30は、データロガー40と、受振器50とを備える。
図1に示す発破器10は、掘削用発破を開始する機器である。掘削用発破は、トンネル切羽に配置された爆薬(図示略)を爆破させ、地山を破砕することである。発破器10は、発破母線5によって爆薬と連結されている。また、発破器10は、トリガーユニット20と有線接続されており、掘削用発破を開始したこと(発破母線5に点火電流を流したこと)を示す時間ゼロ信号をトリガーユニット20に対して送信する。発破器10は、トンネル周壁面を削孔した受振孔6よりも坑口側に配置されている(例えば、受振孔6から「70m」後方に配置されている)。
【0015】
図1に示すトリガーユニット20は、掘削用発破の開始タイミングを示す時間ゼロ信号を受信し、記録ユニット30のデータロガー40に対して記録の開始を指示する機器である。トリガーユニット20は、データロガー40と通信可能に無線接続されている。トリガーユニット20のトリガー信号出力部20A(図2参照)は、発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成し、生成したトリガー信号を記録ユニット30に送信する。トリガー信号出力部20Aは、例えば、プログラムの実行処理によって実現される。トリガー信号出力部20Aは、発破器10から時間ゼロ信号を受信した時点から所定時間を経過した後にトリガー信号を発信する。つまり、トリガー信号を発信するタイミングを掘削用発破の開始タイミングから遅らせている。トリガー信号を発信するタイミングは予め決められており、トリガー信号から発破のタイミングを推定することが可能である。トリガーユニット20は、発破器10よりも坑口側に配置されている(例えば、発破器10から後方に安全な距離だけ離れた位置(例えば「6m」)に配置されている)。トリガーユニット20の電源の「ON/OFF」は、リモートコントローラ60によって行うことができる。
【0016】
図1に示す記録ユニット30は、受振器50で受振した弾性波8をデータロガー40によって記録する機器群である。本実施形態では、データロガー40と受振器50とは独立した機器であり、これらの独立した機器がケーブル7によって接続されているが、記録ユニット30は、データロガー40および受振器50の機能を備えた単一の装置であってもよい。
図1に示すデータロガー40は、各種データを記録する機器である。例えば、データロガー40は、SDカードスロット等を備え、SDカードなどの取り外し可能なデータを保存できる記録媒体40A(図2参照)が収納されている。データロガー40は、ケーブル7によって受振器50と通信可能に接続しており、受振器50が検出した弾性波8のデータを受信できる。
図1に示す受振器50は、掘削用発破に起因して発生した弾性波8を検出する。受振器50は、受振孔6内に配置されている。弾性波8は、トンネル切羽前方にある破砕帯9などで反射した後、地山を介して受振器50に到達する反射波と破砕帯9などを介さずに掘削発破の弾性波8が受振器50に到達する直接波である。
【0017】
図1に示すリモートコントローラ60は、トリガーユニット20および記録ユニット30を操作するための機器である。図2に示すように、リモートコントローラ60は、携帯可能なサイズになっており、例えば作業員によって操作される。リモートコントローラ60は、トリガーユニット20および記録ユニット30を起動可能であり、電源の「ON/OFF」を切り替える電源スイッチを有する。リモートコントローラ60の当該スイッチを「ON」にすることで、トリガーユニット20および記録ユニット30は「発破待ち状態」になる。また、リモートコントローラ60を操作することで、図5に示す保持部54を遠隔で稼働することができる。
【0018】
図2を参照して、切羽前方探査システム100におけるデータの流れを説明する。発破器10は、電気雷管4に対して点火電流を送る。また、発破器10は、トリガーユニット20に対して時間ゼロ信号を送る。トリガーユニット20は、時間ゼロ信号を受け取ったあとで、データロガー40に対してトリガー信号を送る。受振器50は、発破により弾性波8を検出し、検出した弾性波8のデータをデータロガー40に送る。
【0019】
図3は、発破器10の正面図である。図3に示す発破器10は、箱形の筐体10Dを有し、筐体10Dの前面には、点火スイッチ10Eと、安全スイッチ10Fと、接続端子10Gと、出力部10Hと、第1発光部10Iと、第2発光部10Jとが設けられる。また、筐体10Dの内部には、制御部10Cが収納される。
発破器10は、点火スイッチ10Eに操作キー10Eaを差し込み、操作キー10Eaをひねると充電開始となり、充電完了後に安全スイッチ10Fを押しながら点火スイッチ10Eを点火位置に戻すと発破母線5に通電する。
【0020】
図3に示す点火スイッチ10Eは、電気雷管4を爆発させるために使用させる操作部(切替操作手段)である。本実施形態での点火スイッチ10Eは、キースイッチであり、操作キー10Eaを挿入した状態で操作可能である。点火スイッチ10Eは、接点ユニットを有し、少なくとも複数の接点を有する。
安全スイッチ10Fは、点火スイッチ10Eの誤操作を防ぐために点火スイッチ10Eと共に操作する操作部(切替操作手段)である。本実施形態での安全スイッチ10Fは、プッシュスイッチであり、押圧力を解除することで初期状態に自動で戻るようになっている。安全スイッチ10Fは、点火スイッチ3と同様に接点ユニットを有し、少なくとも複数の接点を有する。
【0021】
図3に示す接続端子10Gには、発破母線5を介して電気雷管4が接続される。
出力部10Hは、発破の開始を示す時間ゼロ信号が出力される。出力部10Hには、ケーブル10Haを介してトリガーユニット20(図1参照)が接続される。
第1発光部10Iおよび第2発光部10Jは、例えばLEDである。第1発光部10Iは、発破を行うための充電が完了した場合に点灯する。第2発光部10Jは、時間ゼロ信号を出力する準備が完了した場合に点灯する。
【0022】
図3に示すように、制御部10Cは、点火電流出力回路10Aと、ゼロ信号出力回路10Bとを備える。点火電流出力回路10Aとゼロ信号出力回路10Bとは、電気的に独立した回路であり、点火スイッチ10Eおよび安全スイッチ10Fによって連動している。
図4Aおよび図4Bを参照して、制御部10Cの構成を説明する。図4Aは、実施形態に係る発破器10のブロック図(発破前の状態)である。図4Bは、実施形態に係る発破器10のブロック図(安全スイッチ10FをON状態のまま点火スイッチ10Eを点火にひねった状態)である。
【0023】
図4Aに示すように、点火電流出力回路10Aは、電流出力側電源11と、インバータ式の昇圧回路12と、整流装置13と、コンデンサ14と、放電抵抗15と、電圧監視回路16と、接続端子10Gと、第1発光部10Iとを主に備える。また、点火電流出力回路10Aは、点火スイッチ10Eの操作によって通電状態と非通電状態とが切り替わる二つの接点S1,S2と、安全スイッチ10Fの操作によって通電状態と非通電状態とが切り替わる二つの接点T1,T2とを有する。
【0024】
接点S1は、電流出力側電源11と昇圧回路12との間に設けられており、スイッチを操作すると開いていた回路が閉じる「a接点」を構成する。a接点は、スイッチの非操作時に非通電状態となる常時開型接点である。
接点S2は、コンデンサ14と放電抵抗15および接続端子10Gとの間に設けられており、スイッチを操作すると閉じていた回路が開く「b接点」を構成する。b接点は、スイッチの非操作時に通電状態となる常時閉型接点である。
接点T1は、コンデンサ14と放電抵抗15との間に設けられており、スイッチを操作すると閉じていた回路が開く「b接点」(ノーマリークローズ:常時閉型)を構成する。
接点T2は、コンデンサ14と接続端子10Gとの間に設けられており、スイッチを操作すると開いていた回路が閉じる「a接点」(ノーマリーオープン:常時開型)を構成する。
【0025】
図4Aに示すように、ゼロ信号出力回路10Bは、信号出力側電源18と、オープンコレクタ信号回路17と、出力部10Hと、第2発光部10Jとを主に備える。また、ゼロ信号出力回路10Bは、点火スイッチ10Eの操作によって通電状態と非通電状態とが切り替わる一つ接点S3と、安全スイッチ10Fの操作によって通電状態と非通電状態とが切り替わる一つの接点T3とを有する。
接点S3は、オープンコレクタ信号回路17に接続されており、スイッチを操作すると閉じていた回路が開く「b接点」(ノーマリークローズ:常時閉型)を構成する。
接点T3は、信号出力側電源18とオープンコレクタ信号回路17との間に設けられており、スイッチを操作すると開いていた回路が閉じる「a接点」(ノーマリーオープン:常時開型)を構成する。
【0026】
図4Aに示す状態で点火スイッチ10Eを「充電」の位置までひねることで、接点S1,S2,S3の接続が同時に切り替わり、コンデンサ14への充電が開始される。コンデンサ14の充電が完了した場合に、第1発光部10Iが発光する。
次に、安全スイッチ10Fを押下したスイッチ操作状態(ON状態)とすることで、接点T1,T2,T3の接続が同時に切り替わり、信号出力側電源18からオープンコレクタ信号回路17への電力の供給が開始される。これにより、第2発光部10Jが発光する。
次に、安全スイッチ10Fを押下した状態(ON状態)のまま、点火スイッチ10Eをひねって「点火/切」の位置に戻す。これにより、点火スイッチ10Eがスイッチ非操作状態に戻り、接点S1,S2,S3の接続が同時に切り替わり、図4Bに示す状態となる。その結果、点火電流が発破母線5を介して電気雷管4に流れて発破が行われる。また、オープンコレクタ信号回路17が作動し、オープンコレクタ信号回路17から時間ゼロ信号が出力される。つまり、点火電流出力回路10Aおよびゼロ信号出力回路10Bが、点火スイッチ10Eおよび安全スイッチ10Fにより連動し、点火電流と時間ゼロ信号とが同時に出力される。
【0027】
図5は、受振器50の側方視内部断面図である。受振器50は、受振孔6(図1参照)の孔径よりも小さな径を有する略棒状体を呈している。受振器50は、筐体51と、キャップ52と、ジオフォン53と、保持部54と、モータ55とを備えている。
筐体51は、略筒状体である。筐体51の中空部には、閉状態(図5において二点鎖線で示した状態)にある保持部54とモータ55が配置されている。なお、筐体51の一部側面が開口しており、筐体51内に収容されていた保持部54を、前記開口を通じて径方向外側に展開することができる。
キャップ52は、受振器50の頭部であり、筐体51の先端部に連結されている。
ジオフォン53は、掘削用発破による弾性波8を検出するセンサ(地震計)である。なお、ジオフォン53は、水平2成分と垂直1成分を検出する3成分ジオフォンである。ジオフォン53は、キャップ52に受容されている。
【0028】
保持部54は、受振器50を受振孔6の孔壁に固定する部材である。保持部54は、ブロック541と、一対の第1アーム542,542と、第2アーム543と、アクチュエータ544とを備えている。ブロック541、一対の第1アーム542,542およびアクチュエータ544により平行リンク機構が形成されている。
ブロック541は、保持部54が開状態になったときに受振孔6の孔壁に当接する部位である。
一対の第1アーム542,542は、ブロック541とアクチュエータ544を連結する。
第2アーム543は、ブロック541と筐体51の根元部側面を連結する。
アクチュエータ544は、モータ55の駆動により、軸方向に移動する。
【0029】
モータ55は、正回転するとアクチュエータ544を軸方向正側(筐体51の根元部からキャップ52に向かう方向)に移動させ、逆回転するとアクチュエータ544を軸方向逆側(キャップ52から筐体51の根元部に向かう方向)に移動させる。アクチュエータ544を軸方向正側に移動させると、平行リンク機構が展開して保持部54が開状態となり(図5の実線で示した状態)、アクチュエータ544を軸方向逆側に移動させると、平行リンク機構が折り畳まれて保持部54が閉状態となる(図5の二点鎖線で示した状態)。
なお、図5では、筐体51の根元部を覆うエンドキャップ57が図示されているが、受振器50の使用時にはエンドキャップ57が外され、ケーブル7(図1参照)が受振器50に接続される。
【0030】
[受振器の動作]
保持部54が閉状態(図5の二点鎖線で示した状態)である受振器50が、受振孔6内の所定位置に配置されたとする。例えば、作業員はリモートコントローラ60を用いてデータロガー40を介して制御信号を受振器50に送信できる。制御信号を送信すると、受振器50、制御信号に従い、モータ55を正転させて、アクチュエータ544を軸方向正側に移動させる。すると、一対の第1アーム542,542、第2アーム543を介して、ブロック541が、筐体51の係方向外側に移動し、受振孔6の孔壁に当接する。よって、受振器50が受振孔6の孔壁に固定され、ジオフォン53を地山に実質的に密着させることができる。その結果、ジオフォン53が検出する弾性波8のノイズを小さくできる。
また、受振器50の配置位置に不良地山が分布していたため、弾性波8の検出が良好にならない等の理由により、受振器50の配置位置を変更したい場合がある。この場合、例えば、作業員がリモートコントローラ60を用いてデータロガー40を介して制御信号を受振器50に送信する。受振器50は、制御信号に従い、モータ55を逆転させて、アクチュエータ544を軸方向逆側に移動させる。すると、第1アーム542,542、第2アーム543を介して、ブロック541と受振孔6の孔壁との当接が解除され、ブロック541が筐体51内に収納される。その結果、受振器50を移動させ、所望の配置位置に変更できる。
【0031】
[押し込み部]
図6は、(a)が、押し込み部600の側方視内部断面図であり、(b)が、受振器50の根元部の側方視内部断面図である。押し込み部600は、受振器50を受振孔6の奥に押し込む筒状体である。押し込み部600は、複数のロッド部601と、複数の継手部602と、ガイド受容部603,603とを備えている。また、受振器50は、根元部にガイド部56,56を備えている。
ロッド部601は、押し込み部600の本体部分を構成する筒状体である。ロッド部601の中空部にケーブル7を挿通できる。
継手部602は、隣り合うロッド部601を連結する。継手部602を用いてロッド部601を継ぎ足すことにより、押し込み部600の全長を調整できる。
ガイド受容部603,603は、受振器50のガイド部56,56を受容する。ガイド受容部603,603は、先頭のロッド部601の先端部に連結されているとともに、先頭のロッド部601の先端部から押し込み部600の軸方向に、かつ、受振器50に対向するように延在している。
受振器50のガイド部56,56は、受振器50の根元部から受振器50の軸方向に、かつ、押し込み部600に対向するように延在する針状体である。ガイド部56,56は、ガイド受容部603,603に受容されることで、押し込み部600の軸回り回転位置と受振器50の軸回り回転位置とを位置合わせできる。
【0032】
図6(b)に示すように、受振器50の根元部にケーブル7が接続された状態で、受振器50が受振孔6内の所定位置(作業員の手の届かない位置)に配置されていたとする。受振器50を受振孔6の奥に押し込みたい場合、作業員は、押し込み部600の中空部にケーブル7を挿通させ、ガイド受容部603,603にガイド部56,56を受容させる。その後、作業員が押し込み部600を受振孔6の奥に押し込むことで、受振器50を受振孔6の奥に押し込むことができ、受振器50を所望の位置に配置できる。
【0033】
図1に示すように、データロガー40は、受振孔6の入口に配置されている。データロガー40は、受振孔6の孔径と略一致するまたは孔径よりも小さい直径を有する円柱状体を呈している。また、データロガー40は、データロガー40の本体部よりも大きな直径を有する円板状体のフランジ部40aを有している。一方、受振孔6の入口には、受振孔6の孔径よりも大きい径を有する凹部(拡径部)が形成されている。作業員が受振孔6の入口にデータロガー40を配置すると、データロガー40のフランジ部40aが受振孔6の入口の凹部に受容されるとともに、凹部の平面に係止される。作業員がビス止め等でフランジ部40aを凹部に固定することで、データロガー40を受振孔6の入口に固定できる。また、凹部の深さをフランジ部40aの板厚よりも大きくすることでデータロガー40全体をトンネル周壁面よりもトンネル周壁内部に配置することができる。その結果、掘削用発破による飛石がデータロガー40に衝突する可能性を極めて小さくできる。
【0034】
[掘削用発破]
本実施形態の掘削用発破は、電気雷管4(爆薬)を用いて順次起爆する。例えば、所定の発破予定タイミングで3段階発破する段発発破とすることができる。段飛発破は、電気雷管4(爆薬)に遅延薬を充填しておくことで、起爆までの時間差を持たせることができる。なお、3段階に限らず、4段階以上にしてもよい。
図7は、掘削用発破における段発発破の説明図である。図7に示すトンネル切羽面上に仮想的な点P、円Q1~Q3を用意する。円Q1~Q3は、点Pを中心とする同心円である。円Q2の半径は、円Q1の2倍である。円Q3の半径は、円Q1の3倍である。点Pに爆薬を配置する。点Pは、探査震源となる。また、円Q1~Q3の各々の周上には、1または複数の爆薬が配置されている。ただし、点Pに配置された爆薬および円Q1~円Q3の各々の周上に配置された爆薬は、一直線上に並んでいる。よって、点Pに配置された爆薬および円Q1~円Q3の各々に配置された爆薬は、等間隔に並んでいる。
【0035】
発破器10を作動させ、掘削用発破を開始した場合、発破母線5に繋がっている点Pの爆薬が発破し、その後、円Q1の爆薬、円Q2の爆薬、円Q3の爆薬が順次発破する。点Pに配置された爆薬および円Q1~円Q3の各々に配置された爆薬は、等間隔に並んでいるため、各爆薬の発破間隔が同じになる。点Pの爆薬の発破タイミングをJISに規定する瞬発電気雷管0msとした場合、例えば、JISに規定されるDS段発電気雷管を順番に用いると、円Q1の爆薬の発破タイミングは250ms(DS#2)後、円Q2の爆薬の発破タイミングは500ms(DS#3)後、円Q3の爆薬の発破タイミングは750ms(DS#4)後となる。受振器50は、発破タイミング0ms、250ms後、500ms後、および750ms後の弾性波8を検出する。
【0036】
上記は通常の段発発破の説明であったが、本実施形態では、段飛ばしの段発発破を導入する。図7の例の場合、段飛ばしの段発発破は、円Q1の周上においては点Pの発破から500ms後の発破、円Q2の周上においては750ms後の発破、円Q3の周上においては1000ms後の発破となる。よって、点Pの発破から250ms後の発破は存在せず、受振器50は、発破タイミング0ms、500ms後、および750ms後の弾性波8を検出する。段飛ばしにより、点Pの爆薬の発破に起因した弾性波8(反射波)の計測時間(500ms)を稼ぐことができる。切羽前方の破砕帯9や湧水帯までの距離が大きくなるにつれて、反射波が観測されるまでの時間が長くなるが、円Q1の爆薬の発破を省略し、500msの計測時間(無音区間)を確保することで、点Pの爆薬の発破による弾性波8は、円Q2の爆薬の発破の影響を受けることなく受振器50に検出される。このため、点Pの爆薬の発破による弾性波8のノイズは小さくなる。その結果、切羽前方探査の探査距離を増大させることができる。具体的には、通常の段発発破の場合は、探査距離が100~150m程度であったが、段飛ばしの段発発破の場合は、探査距離を400m程度に伸ばせることが確認された。
【0037】
より一般的な段飛ばしの段発発破は、1発目の発破から2発目の発破までの時間間隔を2発目の発破から3発目の発破までの時間間隔よりも大きくするものである。段飛発破は、電気雷管4(爆薬)に遅延薬を充填しておくことで、起爆までの時間差を持たせることができる。かかる構成によれば、1発目の発破に起因した弾性波8(反射波)の計測時間を稼ぐことができる。切羽前方の破砕帯や湧水帯までの距離が大きくなるにつれて、反射波が観測されるまでの時間が長くなるが、1発目の発破から2発目の発破までの時間間隔を2発目の発破から3発目の発破までの時間間隔よりも大きくすれば、2発目の発破の影響を受けることなく受振器50に検出される。このため、1発目の発破による反射波のノイズは小さくなる。その結果、切羽前方探査の探査距離を増大させることができる。なお、瞬発電気雷管と段発電気雷管を組み合わせて使用しても良い。
【0038】
[弾性波の計測]
図8を参照して(適宜、図1ないし図7を参照)、切羽前方探査システム100による弾性波8の計測について説明する。図8は、発破による地盤振動の波形を時系列で示した図であり、(a)は切羽側での波形を示し、(b)は記録ユニット30側での波形を示している。
まず、図8(a)を参照して、切羽側の状況を説明する。図8(a)に示すように、作業員によって発破器10の発破操作が時刻s0に行われ、点火電流が流れ始めて起爆遅れ時間Ta(例えば、300±100μs程度)を経過した時刻t1に芯抜き発破(点Pの爆薬の爆発)が発生して地盤振動が発生する。ここで、点火電流が時刻s0から流れ始めてから、点火電流継続時間Tb(例えば、10ms~15ms)の間だけ点火電流が継続する。そのため、点火電流継続時間Tbの間は、点火電流によるノイズが発生し、当該ノイズの影響を受けることになる。そして、時刻t2で点火電流が終了し、この時刻t2で点火電流を原因とするノイズの影響も終了する。続いて、払い発破(芯抜き以外の発破)が時刻t3から開始し、円Q1の爆薬、円Q2の爆薬、円Q3の爆薬が順次爆発する。
【0039】
次に、図8(b)を参照して、記録ユニット30側の状況を説明する。図8(b)に示すように、作業員によって発破器10の発破操作が時刻s0に行われ、トリガー信号待ち時間Ua(例えば、23ms)を経過した時刻u1にデータロガー40はトリガー信号をトリガーユニット20から受信する。つまり、データロガー40は、発破器10の発破操作が行われてから所定時間だけトリガー信号の到着を待つことになる。データロガー40は、トリガー信号を受信した時刻u1から弾性波8の記録を開始する。リモートコントローラ60の操作によって弾性波8の記録を可能な状態とし、弾性波8が到着した時点から記録を開始してもよい(その場合、トリガー信号の到着を待たずに弾性波8の記録を開始してもよい)。トリガー信号待ち時間Uaは、点火電流によるノイズの影響を受ける点火電流継続時間Tb(例えば、10ms~15ms)よりも長く、芯抜き発破の弾性波8が到達するまでの到達時間Ub(例えば、15ms~30ms)よりも短い時間であるのが望ましい。この条件にすると、データロガー40は、点火電流によるノイズの影響を受けずにトリガー信号を受信できる。芯抜き発破の直接波の到達時間Ubは、岩盤の弾性波速度(例えば、1000m/s~2000m/s)によって変化する。
【0040】
このようにして、データロガー40は、トリガー信号を受信した時刻u1から記録を開始し、記録を開始した後の時刻u2に芯抜き発破の直接波の振動が到達する。また、時刻u3,u4に芯抜き発破の反射波の振動が到達する。これらの振動を記録できるように、データロガー40の記録を継続する有効観測時間Uc(例えば、500ms~700ms)を設定する。なお、段発発破にした場合、払い発破(芯抜き以外の発破)の直接波が到達する時刻u5よりも前に芯抜き発破の反射波の振動が到達することになる。
なお、トリガー信号の発信を所定時間だけ遅らせたとしても、トリガー信号から岩盤の弾性波速度を求めることが可能である。例えば、芯抜き発破の発生時刻t1からΔt(=Ua-Ta+(u2-u1))秒後に直接波がジオフォン53に到達する。点Pからジオフォン53までの距離Lは既知なので、岩盤の弾性波速度Vは、「L/Δt」で求まる。弾性波8が到着した時点から記録を開始する場合は、「u2-u1」がマイナスの値となるが、Δtは算出できる。弾性波速度Vが分かると、地盤の良し悪しが分かる。
【0041】
[動作]
図9を参照して(適宜、図1ないし図8を参照)、切羽前方探査システム100が行う切羽前方探査方法について説明する。図9は、本実施形態の切羽前方探査方法の手順を示すフローチャートである。
まず、受振器50を受振孔6に配置する(ステップW1)。受振器50は、データロガー40とケーブル7で連結されている。
次に、受振器50を受振孔6に固定する(ステップW2)。例えば、リモートコントローラ60がデータロガー40を介して受振器50に制御信号を送信する。制御信号を受信した受振器50は、保持部54のブロック541を受振孔6の孔壁に当接させる。地山不良等により受振器50の位置を変更したい場合には、作業員がリモートコントローラ60を操作して、保持部54の固定を解除する。そして、所望の位置に移動させた後、再度、保持部54のブロック541を受振孔6の孔壁に当接させ、受振器50を受振孔6に固定する。
次に、データロガー40を受振孔6に配置する(ステップW3)。
【0042】
次に、発破器10を操作して掘削用発破を開始する(ステップW4)。発破器10は、掘削用爆薬に接続された発破母線5に点火電流を流し、また、掘削用発破を開始したことを示す時間ゼロ信号をトリガーユニット20に対して送信する。
次に、トリガーユニット20は、発破のタイミングに対応したトリガー信号を生成し、生成したトリガー信号をデータロガー40に送信する(ステップW5)。トリガー信号を送信するタイミングは、点火電流のノイズが発生しているノイズ発生期間を過ぎた後である。データロガー40は、トリガー信号を受信することによって掘削用発破の開始タイミングを知得でき、受振器50による弾性波8の検出タイミングを特定できる。また、点火電流によってトンネル切羽に配置された爆薬が爆破し、弾性波8が発生する。弾性波8は、破砕帯9で反射した後、地山を介して受振孔6に到達する。
【0043】
次に、受振器50が破砕帯9で反射した弾性波8を検出する(ステップW6)。具体的には、保持部54による受振器50の固定によって、地山に実質的に密着したジオフォン53が弾性波8を検出できる。受振器50は、検出した弾性波8のデータを、ケーブル7を介してデータロガー40に送信する。
次に、データロガー40が受振器50から受信した弾性波8のデータを記録する(ステップW7)。例えば、データロガー40は、検出された弾性波8のデータの各々に、掘削用発破の開始タイミングから特定された弾性波8の検出タイミングを関連付けることができる。なお、例えば、データロガー40は、内蔵している記録媒体40Aに弾性波8のデータを記録することができる。作業員は、データロガー40から記録媒体40Aを取り出して、解析装置に記録媒体40Aを接続することで、解析装置が、弾性波8のデータを取得し、所定の解析を行うことができる。
以上で切羽前方探査方法が完了する。
【0044】
切羽前方探査終了後、作業員は、データロガー40を受振孔6から取り出す。また、作業員は、データロガー40に繋がっているケーブル7を手繰り寄せることで受振器50を容易に取り出すことができる。
以上のように、実施形態に係る切羽前方探査システム100によれば、高電圧な点火電流を原因とするノイズ発生期間を過ぎた後にトリガー信号を送信することが可能なので、点火電流が通信のノイズになることを回避することができる。そのため、弾性波8の記録や分析を正確に行うことができる。
【0045】
[変形例]
(a):トリガーユニット20とデータロガー40は、無線でなく、有線で通信可能に接続してもよい。
(b):ケーブル7を用いる代わりに、データロガー40と受振器50とは無線で通信可能に接続してもよく、データロガー40は、受振器50から弾性波8のデータを無線で受振してもよい。
(c):受振孔6は、複数用意することができ、受振孔6の各々に受振器50とデータロガー40を配置できる。また、受振孔6に配置する受振器50は、複数であってもよい。また、受振孔6の削孔方向は、トンネルの延在方向と垂直でなくてもよい。
(d):段飛ばしの段発発破の際、飛ばそうとする段の番号、回数は適宜設定できる。
(e):データロガー40は、取り出し可能な記録媒体40Aを内蔵せず、埋め込み型の記憶部を備える構成であってもよい。この場合、解析装置とデータロガー40が有線または無線で通信可能に接続しており、データロガー40は、弾性波8のデータを解析装置に送信できる。
【0046】
(f):本実施形態で説明した種々の技術を適宜組み合わせた技術を実現することもできる。
(g):本実施形態で説明したソフトウェアをハードウェアとして実現することもでき、ハードウェアをソフトウェアとして実現することもできる。
(h):その他、ハードウェア、ソフトウェア、フローチャートなどについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
5 発破母線
6 受振孔
7 ケーブル
8 弾性波
10 発破器
20 トリガーユニット
30 記録ユニット
40 データロガー
50 受振器
60 リモートコントローラ
100 切羽前方探査システム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9