(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088544
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】排気システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/027 20060101AFI20240625BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240625BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240625BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240625BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20240625BHJP
H05H 1/24 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
F01N3/027 A ZAB
F02D45/00 368F
B01D53/92 280
B01D53/04
B01D53/92 310
B01D53/92 352
B01D46/00 301
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203784
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 一哉
(72)【発明者】
【氏名】島村 遼一
(72)【発明者】
【氏名】玉木 竜太郎
【テーマコード(参考)】
2G084
3G190
3G384
4D002
4D012
4D058
【Fターム(参考)】
2G084AA18
2G084BB36
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD01
2G084DD15
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3G190AA13
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4D012CH10
4D058JA02
4D058SA08
(57)【要約】
【課題】ガソリン・パーティキュレート・フィルタで捕集した粒子状物質を効率よく分解できる排気システムを提供する。
【解決手段】
エンジン101から排気するための排気システム1において、排気ガスの流れ方向においてプラズマリアクター4の下流側に、GPF7を配置する。制御装置6は、空燃比がリーンである場合、プラズマリアクター4に放電させる。そして、プラズマリアクター4で発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素を利用して、GPF7で捕集した粒子状物質を分解する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排気するための排気システムであって、
プラズマリアクターと、
排気ガスの流れ方向において前記プラズマリアクターの上流側に配置され、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な吸着部材と、
排気ガスの流れ方向において前記プラズマリアクターの下流側に配置されるガソリン・パーティキュレート・フィルタと、
制御装置と
を備え、
空燃比がリーンである場合、前記制御装置は、前記プラズマリアクターに放電させる、排気システム。
【請求項2】
空燃比がリッチであり、かつ、粒子状物質の発生が想定される条件で前記エンジンが作動している場合、前記制御装置は、前記プラズマリアクターに放電させ、
空燃比がリッチであり、かつ、粒子状物質の発生が想定されない条件で前記エンジンが作動している場合、前記制御装置は、前記プラズマリアクターの放電を停止させる、請求項1に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三元触媒と、三元触媒の下流側に配置されるガソリン・パーティキュレート・フィルタとを備える排気ガス処理装置が知られている。ガソリン・パーティキュレート・フィルタは、三元触媒を通過した排気ガス中の粒子状物質を除去する(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような排気ガス処理装置では、捕集した粒子状物質がガソリン・パーティキュレート・フィルタに過度に堆積してしまう可能性がある。
【0005】
その場合、捕集した粒子状物質を燃焼させてガソリン・パーティキュレート・フィルタを再生させるために、例えば、所定のタイミングで、ガソリンを消費して、粒子状物質を燃焼可能な温度までガソリン・パーティキュレート・フィルタを加熱する処理が必要になる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ガソリン・パーティキュレート・フィルタで捕集した粒子状物質を効率よく分解できる排気システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、エンジンから排気するための排気システムであって、プラズマリアクターと、排気ガスの流れ方向において前記プラズマリアクターの上流側に配置され、排気ガス中の炭化水素を吸着可能な吸着部材と、排気ガスの流れ方向において前記プラズマリアクターの下流側に配置されるガソリン・パーティキュレート・フィルタと、制御装置とを備え、空燃比がリーンである場合、前記制御装置が、前記プラズマリアクターに放電させる、排気システムを含む。
【0008】
このような構成によれば、ガソリン・パーティキュレート・フィルタがプラズマリアクターの下流側に配置された構成において、空燃比がリーンである場合に、プラズマリアクターが放電する。
【0009】
これにより、プラズマリアクターにおいて、排気ガス中の酸素および窒素から、窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素が発生する。プラズマリアクターで発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素は、排気ガスとともに、ガソリン・パーティキュレート・フィルタに流れる。
【0010】
そのため、ガソリン・パーティキュレート・フィルタに捕集された粒子状物質を、プラズマリアクターで発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素を利用して、酸化分解できる。
【0011】
その結果、ガソリン・パーティキュレート・フィルタで捕集した粒子状物質を効率よく分解できる。
【0012】
本発明[2]は、空燃比がリッチであり、かつ、粒子状物質の発生が想定される条件で前記エンジンが作動している場合、前記制御装置が、前記プラズマリアクターに放電させ、空燃比がリッチであり、かつ、粒子状物質の発生が想定されない条件で前記エンジンが作動している場合、前記制御装置が、前記プラズマリアクターの放電を停止させる、上記[1]の排気システム。
【0013】
このような構成によれば、粒子状物質の発生が想定されない条件でエンジンが作動している場合に、プラズマリアクターによる電力の消費を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排気システムによれば、ガソリン・パーティキュレート・フィルタで捕集した粒子状物質を効率よく分解できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の排気システムの一実施形態を備える車両の概略構成図である。
【
図3】
図3は、排気システムの制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.排気システムの構成
図1に示すように、排気システム1は、例えば、車両100に搭載される。
【0017】
車両100は、エンジン101と、バッテリー102を含む電気システムと、エンジン101に吸気するための図示しない吸気システムと、エンジン101に燃料を供給するための図示しない燃料噴射システムと、エンジン101から排気するための排気システム1とを備える。エンジンは、ガソリンエンジンである。
【0018】
排気システム1は、排気管2と、吸着部材3と、プラズマリアクター4と、電源装置5と、制御装置6と、ガソリン・パーティキュレート・フィルタ(GPF)7とを備える。
【0019】
(1)排気管
排気管2は、排気マニホールドを介してエンジン101と接続される。エンジン101から排出された排気ガスは、排気管2を通過して車外に排出される。排気ガスは、排気管2が延びる方向に流れる。
【0020】
(2)吸着部材
吸着部材3は、排気管2内に配置される。吸着部材3は、好ましくは、排気ガスの流れ方向における排気管2の上流端部内に位置する。吸着部材3は、排気ガスの流れ方向において、プラズマリアクター4の上流側に配置される。吸着部材3は、排気ガス中の炭化水素を吸着可能である。
【0021】
詳しくは、吸着部材3は、円筒形状を有する。吸着部材3は、排気ガスの流れ方向に延びる。吸着部材3は、内部に、担体と吸着層とを有する。担体は、排気ガスの流れ方向に延びる。担体は、吸着層を担持する。担体は、網目状またはハニカム状であり、排気ガスが通過する複数の通路を有する。吸着層は、担体の通路の内面を覆う。吸着層は、例えば、BEA型ゼオライトなどから作られる。排気ガスが担体の通路を通過するときに、吸着層は、排気ガス中の炭化水素を吸着する。
【0022】
(3)プラズマリアクター
プラズマリアクター4は、排気管2内に配置される。プラズマリアクター4は、排気ガスの流れ方向において、吸着部材4の下流側に配置される。プラズマリアクター4は、吸着部材3を通過した排気ガスに含まれる粒子状物質、炭化水素および窒素酸化物を分解可能である。プラズマリアクター4は、誘電体バリア放電型のプラズマリアクターである。
【0023】
詳しくは、プラズマリアクター4は、複数の電極パネル41を有する。複数の電極パネル41は、排気ガスの流れ方向と直交する方向において、互いに間隔を隔てて並ぶ。各電極パネル41は、排気ガスの流れ方向に延びる。各電極パネル41は、平板形状を有する。排気ガスは、各電極パネル41の間を通過する。
【0024】
各電極パネル41は、導体層と、導体層を覆う誘電体層とを有する。導体層は、例えば、タングステンなどの金属(導体)から作られる。誘電体層は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックス(誘電体)から作られる。
【0025】
各電極パネル41に電力が供給されると、各電極パネル41の間で放電(誘電体バリア放電)が生じる。これにより、各電極パネル41の間の気体が、プラズマ状態となる。すなわち、プラズマリアクター4内にプラズマが発生する。
【0026】
(4)電源装置
電源装置5は、バッテリー102からの電力をプラズマリアクター4の各電極パネル41に供給可能である。電源装置5は、バッテリー102と電気的に接続される。また、電源装置5は、各電極パネル41と電気的に接続される。電源装置5は、オン状態またはオフ状態に切り替え可能である。電源装置5がオン状態である場合、電源装置5は、電極パネル41に電力を供給可能である。また、電源装置5がオフ状態である場合、電源装置5は、電極パネル41に電力を供給しない。
【0027】
(5)制御装置
制御装置6は、車両100における電気的な制御を実行するECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを備える。制御装置6は、バッテリー102と電気的に接続される。制御装置6は、車両100のイグニッションスイッチがオンされたときに、バッテリー102から電力が供給されることにより、起動する。
【0028】
制御装置6は、電源装置5に電気的に接続される。制御装置6は、電源装置5に所定の電気信号を送ることにより、電源装置5をオン状態またはオフ状態に切り替える。すなわち、制御装置6は、電源装置5を制御する。言い換えると、制御装置6は、電源装置5を介して、プラズマリアクター4を制御する。
【0029】
(6)ガソリン・パーティキュレート・フィルタ(GPF)
GPF7は、排気ガスの流れ方向において、プラズマリアクター4の下流側に配置される。GPF7は、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕集可能である。
【0030】
詳しくは、GPF7は、円筒形状を有する。GPF7は、排気ガスの流れ方向に延びる。
図2Aに示すように、GPF7は、通路71A,71Bを有する。
【0031】
通路71Aは、排気ガスの流れ方向に延びる。排気ガスの流れ方向における通路71Aの上流端は、開放されている。排気ガスの流れ方向における通路71Aの下流端は、閉鎖されている。
【0032】
通路71Bは、排気ガスの流れ方向と直交する方向において、通路71Aと並ぶ。通路71Bは、排気ガスの流れ方向に延びる。排気ガスの流れ方向における通路71Bの上流端は、閉鎖されている。排気ガスの流れ方向における通路71Bの下流端は、開放されている。
【0033】
なお、GPF7は、複数の通路71Aおよび複数の通路71Bを有する。複数の通路71Aおよび複数の通路71Bは、排気ガスの流れ方向と直交する方向において、交互に並ぶ。
【0034】
GPF7は、通路71Aと通路71Bとを仕切る多孔質壁72を有する。排気ガスは、通路71Aを通ってGPF内に入り、多孔質壁72を通過して、通路71B内を通ってGPF外に出る。つまり、排気ガスは、通路71A,71Bを通る。排気ガスが多孔質壁72を通過するときに、粒子状物質が、多孔質壁72に捕集され、排気ガスから除去される。
【0035】
図2Bに示すように、多孔質壁72は、多孔質担体721と、第1吸着層722Aと、第2吸着層722Bと、三元触媒層722Cとを有する。言い換えると、GPF7は、多孔質担体721と、第1吸着層722Aと、第2吸着層722Bと、三元触媒層722Cとを有する。
【0036】
多孔質担体721は、例えば、セラミックスからなる。多孔質担体721は、排気ガスの流れ方向に延びる。多孔質担体721は、排気ガスの流れ方向と直交する方向において、所定の厚みを有する。
【0037】
第1吸着層722A、第2吸着層722Bおよび三元触媒層722Cは、多孔質担体721の表面上に配置される。言い換えると、第1吸着層722A、第2吸着層722Bおよび三元触媒層722Cは、通路71Aまたは通路71Bの内面上に配置される。
【0038】
詳しくは、第1吸着層722Aは、多孔質担体721の上に配置される。第1吸着層722Aは、排気ガス中の窒素酸化物を吸着可能である。第1吸着層722Aは、窒素酸化物を吸着可能な吸着剤からなる。窒素酸化物を吸着可能な吸着剤として、例えば、CHA型ゼオライト、および、アルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ土類金属として、例えば、バリウム、カルシウムが挙げられる。
【0039】
第2吸着層722Bは、第1吸着層722Aの上に配置される。言い換えると、第1吸着層722Aは、第2吸着層722Bは、排気ガス中の炭化水素を吸着可能である。第2吸着層722Bは、炭化水素を吸着可能な吸着剤からなる。炭化水素を吸着可能な吸着剤として、例えば、BEA型ゼオライトが挙げられる。
【0040】
三元触媒層722Cは、第2吸着層722Bの上に配置される。三元触媒層722Cは、三元触媒からなる。三元触媒層722Cは、炭化水素および窒素酸化物を分解可能である。第2吸着層722Bが第1吸着層722Aの上に配置され、かつ、三元触媒層722Cが第2吸着層722Bの上に配置されていると、第1吸着層722Aから脱離した炭化水素、および、第2吸着層722Bから脱離した窒素酸化物を、三元触媒層722Cで浄化することができる。
【0041】
2.排気システムにおける排気ガスの浄化
次に、排気システムにおける排気ガスの浄化について説明する。
【0042】
車両100のイグニッションスイッチがオンされると、制御装置6が起動する。さらに、セルモーターが回ると、エンジン101が始動する。
【0043】
図3に示すように、エンジン101が始動すると、制御装置6は、電源装置5をオフ状態からオン状態に切り替える(S1)。これにより、プラズマリアクター4内でプラズマが発生する(放電ON)。
【0044】
図1に示すように、エンジン101が始動すると、エンジン101からの排気ガスは、排気管2に流入する。エンジン101からの排気ガスは、粒子状物質および炭化水素を含有する。
【0045】
エンジン101からの排気ガスは、まず、吸着部材3を通る。このとき、排気ガス中の炭化水素は、吸着部材3に吸着する。これにより、エンジン101が始動した直後において、炭化水素の排出を抑制できる。
【0046】
吸着部材3を通過した排気ガスは、プラズマリアクター4を通る。このとき、排気ガス中の粒子状物質は、プラズマによって分解される。また、吸着部材3に吸着されなかった炭化水素も、プラズマによって分解される。これにより、エンジン101が始動した直後において、粒子状物質および炭化水素の排出を抑制できる。
【0047】
プラズマリアクター4を通過した排気ガスは、GPF7を通る。このとき、
図2Aに示すように、プラズマリアクター4で分解されなった粒子状物質は、GPF7の多孔質壁72によって捕集される。
【0048】
次に、
図3に示すように、制御装置6は、吸着部材3の温度Tが、吸着部材3に吸着された炭化水素が吸着部材3から脱離する温度T1未満である場合(S2:NO)、空燃比、エンジン101の冷却水の温度、および、アクセル開度に基づいて、プラズマリアクター4を制御する。
【0049】
なお、制御装置6は、図示しない空燃比センサからの出力値に基づいて、空燃比を認識し、図示しない水温センサからの出力値に基づいて、エンジン101の冷却水の温度を認識し、図示しないアクセルポジションセンサからの出力値に基づいて、アクセル開度を認識する。
【0050】
詳しくは、空燃比がリーンである場合(S3:YES)、制御装置6は、電源装置5をオン状態のまま維持する(S4)。つまり、空燃比がリーンである場合(S3:YES)、制御装置6は、プラズマリアクター4に放電させる。
【0051】
空燃比がリーンである場合、排気ガス中には、ガソリンの燃焼に使用されなかった酸素が含まれている。そのため、プラズマリアクター4内で排気ガスにプラズマが作用することにより、排気ガス中の酸素および窒素から、窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素が発生する。
【0052】
ここで、GPF7は、排気ガスの流れ方向において、プラズマリアクター4の下流側に配置されている。そのため、プラズマリアクター4で発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素は、排気ガスとともにGPF7に流れる。多孔質壁72に捕集された粒子状物質は、プラズマリアクター4からの窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素により、酸化分解される。これにより、燃料を消費してGPF7を加熱することなく、効率よくGPF7を再生させることができる。なお、余剰の窒素酸化物は、GPF7の第1吸着層722Aによって吸着される。
【0053】
一方、空燃比がストイキオメトリまたはリッチである場合(S3:NO)には、粒子状物質が発生する条件である場合に(S5:YES)、制御装置6は、電源装置5をオン状態のまま維持する(S4)。
【0054】
粒子状物質が発生する条件であるか否かは、例えば、エンジン101の冷却水の温度、または、アクセル開度に基づいて判定できる。
【0055】
詳しくは、エンジン101が始動した直後では、エンジンの温度が低く、粒子状物質が発生する。そこで、エンジン101の冷却水の温度が第1閾値よりも低く、粒子状物質が発生する条件である場合(S5:YES)、制御装置6は、電源装置5をオン状態のまま維持する(S4)。第1閾値は、エンジン101が始動した後、粒子状物質の発生が認められなくなる時点でのエンジン101の冷却水の温度であり、実験により求めることができる。つまり、空燃比がリッチであり(S3:NO)、かつ、粒子状物質の発生が想定される条件でエンジン101が作動している場合(S5:YES)、制御装置6は、プラズマリアクター4に放電させる(S4)。
【0056】
また、車両を加速させるときにも、粒子状物質が発生する。そこで、アクセル開度が第2閾値よりも大きく、粒子状物質が発生する条件である場合(S5:YES)、制御装置6は、電源装置5をオン状態のまま維持する(S4)。第2閾値は、粒子状物質の発生が認められるアクセル開度であり、実験により求めることができる。
【0057】
そして、空燃比がストイキオメトリまたはリッチであり(S3:NO)、かつ、粒子状物質が発生しない条件である場合に(S5:NO)、制御装置6は、電源装置5をオン状態からオフ状態に切り替える(S6)。粒子状物質が発生しない条件とは、例えば、エンジン101の冷却水の温度が第1閾値以上であり、かつ、アクセル開度が第2閾値以下である場合である。つまり、空燃比がリッチであり(S3:NO)、かつ、粒子状物質の発生が想定されない条件でエンジン101が作動している場合(S5:YES)、粒子状物質を処理する必要が無いので、制御装置6は、プラズマリアクター4の放電を停止させる(S6)。
【0058】
これにより、プラズマリアクター4による電力の消費を抑制し、省エネルギー化を図ることができる。
【0059】
そして、吸着部材3の温度Tが、吸着部材3に吸着された炭化水素が吸着部材3から脱離する温度T1(例えば、100℃)以上であり、かつ、吸着部材3からの炭化水素の脱離が完了する温度T2(例えば、300℃)未満になった場合、(S2:YES)、制御装置6は、電源装置5をオフ状態からオン状態に切り替える(S4)。これにより、吸着部材3から脱離した炭化水素を、プラズマリアクター4で分解できる。吸着部材3から脱離し、プラズマリアクター4で分解されなかった炭化水素は、GPF7の第2吸着層722B(
図2B参照)によって吸着される。
【0060】
その後、吸着部材3の温度Tが温度T2以上になった場合、(S2:NO)、エンジン101が作動している間(S7:NO)、制御装置6は、引き続き、上記したように、空燃比(S3)、エンジン101の冷却水の温度(S5)、および、アクセル開度(S5)に基づいて、電源装置5をオン状態(S4)とオフ状態(S6)との間で切り替える。
【0061】
これにより、空燃比がリッチであるとき(S3:NO)に発生し、プラズマリアクター4で分解されなった粒子状物質は、上記したように、GPF7の多孔質壁72によって捕集され、空燃比がリーンになったときに(S3:YES)、プラズマリアクター4で発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素により、酸化分解される。
【0062】
さらに、GPF7の温度が、三元触媒が活性化する温度(例えば、300℃)以上になると、第2吸着層722Bから脱離した炭化水素と、第1吸着層722Aから脱離した窒素酸化物とが、三元触媒層722Cで浄化される。詳しくは、炭化水素が酸化されるとともに、窒素酸化物が還元されて、炭化水素および窒素酸化物が、水と、二酸化炭素と、窒素とに変換される。
【0063】
そして、エンジン101が停止すると(S7:YES)、制御装置6は、電源装置5をオフ状態にする(S8)。
【0064】
3.作用効果
(1)排気システム1によれば、
図1に示すように、GPF7がプラズマリアクター4の下流側に配置された構成において、
図3に示すように、空燃比がリーンである場合に(S3:YES)、プラズマリアクター4が放電する(S4)。
【0065】
これにより、プラズマリアクター4において、排気ガス中の酸素および窒素から、窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素が発生する。プラズマリアクター4で発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素は、排気ガスとともに、GPF7に流れる。
【0066】
そのため、GPF7に捕集された粒子状物質を、プラズマリアクター4で発生した窒素酸化物、オゾン、および、活性酸素を利用して、酸化分解できる。
【0067】
その結果、GPF7で捕集した粒子状物質を効率よく分解できる。
【0068】
(2)排気システム1によれば、
図3に示すように、粒子状物質の発生が想定されない条件でエンジン101が作動している場合(
図5:NO)、プラズマリアクター4が放電を停止する。
【0069】
そのため、粒子状物質の発生が想定されない条件でエンジン101が作動している場合に、プラズマリアクター4による電力の消費を抑制できる。
【符号の説明】
【0070】
1 排気システム
3 吸着部材
4 プラズマリアクター
6 制御装置
7 ガソリン・パーティキュレート・フィルタ
101 エンジン