(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088548
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】溶鋼湯面レベル制御方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/16 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
B22D11/16 104F
B22D11/16 104L
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203788
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
(72)【発明者】
【氏名】千田 未顕
(72)【発明者】
【氏名】郡山 大河
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004MB15
4E004MB17
4E004NA01
4E004NC01
4E004PA04
4E004SC08
(57)【要約】
【課題】スプラッシュが付着することによるレベル計の異常を自動検知して監視を継続できる溶鋼湯面レベル制御方法が提供される。
【解決手段】溶鋼湯面レベル制御方法は、計測された溶鋼湯面レベルに基づいて、溶鋼湯面レベルが目標値であるように制御する溶鋼湯面レベル制御方法であって、2台以上設置された複数のレベル計のうちの1台である第1レベル計によって溶鋼湯面レベルを計測すること(S1)と、第1レベル計によって計測された溶鋼湯面レベルの状態に基づいて、第1レベル計が異常であるかを判定すること(S2)と、第1レベル計が異常であると判定する場合に、複数のレベル計のうちの第1レベル計を除く1台である第2レベル計に切り替えて溶鋼湯面レベルを計測すること(S3)と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測された溶鋼湯面レベルに基づいて、前記溶鋼湯面レベルが目標値であるように制御する溶鋼湯面レベル制御方法であって、
2台以上設置された複数のレベル計のうちの1台である第1レベル計によって前記溶鋼湯面レベルを計測することと、
前記第1レベル計によって計測された前記溶鋼湯面レベルの状態に基づいて、前記第1レベル計が異常であるかを判定することと、
前記第1レベル計が異常であると判定する場合に、前記複数のレベル計のうちの前記第1レベル計を除く1台である第2レベル計に切り替えて前記溶鋼湯面レベルを計測することと、を含む、溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項2】
前記第1レベル計によって計測された前記溶鋼湯面レベルが変動せずに一定時間が経過した場合に、前記第1レベル計が異常であると判定する、請求項1に記載の溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項3】
前記第1レベル計から切り替えられた前記第2レベル計によって前記溶鋼湯面レベルが計測された場合に、前記溶鋼湯面レベルが段階的に前記目標値に近づくように設定レベルを調整すること、をさらに含む、請求項1又は2に記載の溶鋼湯面レベル制御方法。
【請求項4】
前記複数のレベル計のそれぞれは渦流センサである、請求項1又は2に記載の溶鋼湯面レベル制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶鋼湯面レベル制御方法に関する。本開示は、特に、鉄鋼業における鋳型内溶鋼の湯面レベルを制御する溶鋼湯面レベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造において、鋳型内の溶鋼湯面レベルを一定に制御することは、安全化、安定生産、品質向上のため重要な技術である。鋳型内の溶鋼湯面レベルの測定には一般に渦流式レベル計が用いられる。
【0003】
鋼の連続鋳造の鋳型内ではスプラッシュと呼ばれる溶鋼飛散が発生することがある。渦流式レベル計はその測定原理から、レベル計の外筒に溶鋼が付着すると、ある一定のレベル指示を示す。そのため、鋳型内の溶鋼湯面レベルを監視し一定に制御することが不可能になる。
【0004】
この問題に対する従来の対策として、例えば特許文献1は、監視カメラを取り付けてスプラッシュを検知したタイミングでレベル指示を無視する方法を開示する。また、例えば特許文献2は、鋳型内にレベル計へのスプラッシュ付着防止のための防止板を取り付ける方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-351469号公報
【特許文献2】実開平01-135327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、スプラッシュが起きたタイミングでの影響を軽減できる方法を提案するが、レベル計に溶鋼が付着し続けるような場合に、その影響を軽減する方法まで示すものでない。
【0007】
また、特許文献2の方法では、防止板が劣化した場合に、スプラッシュを完全に防止しきれない。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、スプラッシュが付着することによるレベル計の異常を自動検知して監視を継続できる溶鋼湯面レベル制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本開示の一実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法は、
計測された溶鋼湯面レベルに基づいて、前記溶鋼湯面レベルが目標値であるように制御する溶鋼湯面レベル制御方法であって、
2台以上設置された複数のレベル計のうちの1台である第1レベル計によって前記溶鋼湯面レベルを計測することと、
前記第1レベル計によって計測された前記溶鋼湯面レベルの状態に基づいて、前記第1レベル計が異常であるかを判定することと、
前記第1レベル計が異常であると判定する場合に、前記複数のレベル計のうちの前記第1レベル計を除く1台である第2レベル計に切り替えて前記溶鋼湯面レベルを計測することと、を含む。
【0010】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記第1レベル計によって計測された前記溶鋼湯面レベルが変動せずに一定時間が経過した場合に、前記第1レベル計が異常であると判定する。
【0011】
(3)本開示の一実施形態として、(1)又は(2)において、
前記第1レベル計から切り替えられた前記第2レベル計によって前記溶鋼湯面レベルが計測された場合に、前記溶鋼湯面レベルが段階的に前記目標値に近づくように設定レベルを調整すること、をさらに含む。
【0012】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記複数のレベル計のそれぞれは渦流センサである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、スプラッシュが付着することによるレベル計の異常を自動検知して監視を継続できる溶鋼湯面レベル制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法を実行する溶鋼湯面レベル制御装置を備えるシステムの構成を示す模式図である。
【
図2A】
図2Aは、溶鋼湯面レベルの測定値の変化を例示する図である。
【
図2B】
図2Bは、溶鋼湯面レベルの設定値の変化を例示する図である。
【
図3】
図3は、実施例における複数のレベル計による溶鋼湯面レベルの測定値の変化を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法が説明される。ここで、溶鋼湯面レベルは、モールドに注ぎ入れられた溶鋼の湯面のレベルを意味する。
【0016】
図1は、溶鋼湯面レベル制御装置を備えるシステムの構成を示す模式図である。溶鋼湯面レベル制御装置は、複数のレベル計5と、判定部7と、レベル制御部9と、を備え、本開示の一実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法を実行する。判定部7は、溶鋼湯面レベルを演算する演算部8と、レベル制御部9へ出力する溶鋼湯面レベルを切り替えるためのスイッチと、を備える。溶鋼湯面レベル制御装置は、計測された溶鋼湯面レベルに基づいて、溶鋼湯面レベルが目標値であるように制御する。レベル計5、判定部7、演算部8及びレベル制御部9の詳細については後述する。
【0017】
本実施形態において、溶鋼湯面レベル制御装置は、鋼の連続鋳造を行うシステムの一部であって、鋳型6(モールド)内の溶鋼湯面レベルを目標値に制御する。鋼の連続鋳造においては、タンディッシュ1から鋳型6に溶鋼を供給し、鋳型6の底部から凝固途中の鋳片を引き抜くことによって、連続的な鋳片が製造される。タンディッシュ1の下部にはスライディングノズル2及び浸漬ノズル4が設けられており、スライディングノズル2の開度に応じた量の溶鋼が鋳型6に供給される。ここで、溶鋼湯面レベル及び目標値は、鋳型6の基準位置(例えば鋳型6の底部)からの高さ方向の距離で示される。溶鋼湯面レベル及び目標値は、例えば基準位置からの高さ[mm]で示されてよいし、基準位置から上限位置までを100%とする場合の相対的な高さ[%]で示されてよい。
【0018】
鋳型6内の溶鋼湯面レベルを測定するレベル計5は、非接触で溶鋼湯面レベルを測定する。レベル計5は公知の装置が用いられてよい。レベル計5としては、種々の装置が提案されているが、本実施形態において渦流センサである。渦流センサは、応答性及び検出精度に優れ、取り扱いが簡便である。本実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法が行われるシステムでは、2台以上のレベル計5、すなわち複数のレベル計5が設置される。以下、複数のレベル計5のうちの1台が第1レベル計5Aであるとする。また、複数のレベル計5のうちの第1レベル計5Aを除く1台が第2レベル計5Bであるとする。複数のレベル計5は、第1レベル計5A及び第2レベル計5Bの2台で構成されてよいし、さらに他のレベル計5を含む3台以上で構成されてよい。本実施形態において、複数のレベル計5のそれぞれが溶鋼湯面レベルを計測する。
【0019】
溶鋼湯面レベル制御装置は、ハードウェア構成として、例えばコンピュータを含んでよい。また、溶鋼湯面レベル制御装置は、少なくとも1つ以上のプロセッサを含んで構成されてよい。プロセッサは、例えばコンピュータのCPU(Central Processing Unit)であってよいが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。溶鋼湯面レベル制御装置は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。溶鋼湯面レベル制御装置の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶装置(例えばコンピュータのメモリ)に記憶される。記憶装置に記憶されたプログラムは、プロセッサによって読み込まれると、プロセッサを判定部7、演算部8及びレベル制御部9として機能させる。
【0020】
演算部8は、複数のレベル計5のそれぞれによって計測されたデータを取得して、溶鋼湯面レベルを演算する。演算部8は、レベル計5からの信号を例えばアンプを介して取得し、必要に応じて増幅処理を行ってよい。演算部8は、例えば目標値と比較可能であるように、溶鋼湯面レベルを演算する。例えば目標値が鋳型6の基準位置からの相対的な高さ[%]で設定されている場合に、演算部8は、レベル計5によって計測された数値を相対的な高さ[%]で表される溶鋼湯面レベルに換算してよい。
【0021】
判定部7は、演算部8によって演算された溶鋼湯面レベルのうちの1つがレベル制御部9に出力されるように、スイッチを設定する。ここで、複数のレベル計5のうちの1つが制御用に割り当てられ、その他がバックアップ用に割り当てられる。判定部7は、制御用のレベル計5によって計測されたデータに基づく溶鋼湯面レベルがレベル制御部9に出力されるようにスイッチを設定する。判定部7は、制御用のレベル計5が異常であると判定する場合に、バックアップ用のレベル計5のうちの1つを、新たな制御用のレベル計5に割り当てる。この場合に、判定部7は、新たな制御用のレベル計5によって計測されたデータに基づく溶鋼湯面レベルがレベル制御部9に出力されるようにスイッチを切り替える。ここで、バックアップ用のレベル計5を新たな制御用のレベル計5とする順番は、予め定められている優先順位に従ってよいし、ランダムに決定されてよい。
【0022】
レベル制御部9は、取得した溶鋼湯面レベルに基づいて、溶鋼湯面レベルが目標値となるようにスライディングノズル2の開度を調整する。本実施形態において、レベル制御部9は、シリンダ3を介してスライディングノズル2の開度を調整する。例えばスライディングノズル2の開度が大きくなると、より多くの溶鋼が鋳型6に供給されて、溶鋼湯面レベルが上昇する。
【0023】
ここで、鋼の連続鋳造において、鋳型6内でスプラッシュ(溶鋼飛散)が生じることがある。スプラッシュによって溶鋼がレベル計5に付着すると、レベル計5が付着した溶鋼を検出してしまうため、正確な計測ができなくなる。例えば渦流センサは磁性体に反応するため、渦流センサであるレベル計5の外筒に磁性体である溶鋼が付着すると、正しい測定対象である鋳型6内の溶鋼湯面レベルを測定できず、一定値を出力し続ける。従来、スプラッシュによる溶鋼付着があった場合に、溶鋼湯面レベルの監視を停止する必要があり、鋼の連続鋳造の操業を中断させることが問題であった。本実施形態では、溶鋼湯面レベル制御装置が以下に説明する制御方法を実行することによって、スプラッシュが付着することによるレベル計5の異常を自動検知して監視を継続できる。
【0024】
溶鋼湯面レベル制御装置は、以下の(処理a)から(処理f)を行ってよい。ここで、第1レベル計5Aが制御用であって、第2レベル計5Bがバックアップ用であるとする。
【0025】
(処理a)として、演算部8は、ある制御周期で測定している複数のレベル計5の溶鋼湯面レベルを示すデータ(計測数値)の前回値と今回値の差分を計算する。演算部8は少なくとも第1レベル計5A(制御用のレベル計5)について差分を計算する。演算部8は複数のレベル計5のそれぞれについて差分を計算してよい。
【0026】
(処理b)として、演算部8は第1レベル計5Aの前回値と今回値の差分が閾値を超過したかを判定する。閾値は例えば過去の溶鋼付着時のレベル計5の計測数値の変化などに基づいて決定されてよい。演算部8は、閾値との比較を行う場合に、予め記憶装置に格納されている閾値を記憶装置から読み出してよい。
【0027】
(処理c)として、演算部8は、(処理b)で差分が閾値を超過した後で、前回値と今回値の差分が変化しない状態が一定時間継続しているかを判定する。一定時間は、例えば数秒であってよいが、過去の溶鋼付着時のレベル計5の計測数値の変化などに基づいて決定されてよい。
【0028】
(処理d)として、判定部7は、(処理c)で前回値と今回値の差分が変化しない状態が一定時間継続していれば、第1レベル計5Aに溶鋼が付着した状態、すなわち第1レベル計5Aが異常であると判定する。ここで、判定部7は、(処理b)で差分が閾値を超過しない場合又は(処理c)で差分が変化しない状態が一定時間継続していない場合に、第1レベル計5Aが正常であると判定する。正常な第1レベル計5Aは、引き続き制御用のレベル計5として用いられる。
【0029】
(処理e)として、判定部7は、第2レベル計5Bが異常でないことを判定する。つまり、判定部7及び演算部8は、対象を第2レベル計5Bとして(処理b)~(処理d)と同様の演算及び判定を実行する。ここで、(処理e)は省略可能である。
【0030】
(処理f)として、判定部7は、第2レベル計5Bを新たな制御用のレベル計5に設定する。したがって、レベル制御部9に出力される溶鋼湯面レベルは、第1レベル計5Aの計測数値から第2レベル計5Bの計測数値に基づくものに切り替わる。このとき、鋼の連続鋳造の操業は中断することなく、継続して実行される。
【0031】
溶鋼湯面レベル制御装置は、第2レベル計5Bが新たな制御用のレベル計5に設定された場合に、第1レベル計5Aを第2レベル計5Bに置き換えた上で、再び(処理a)~(処理f)を行ってよい。
【0032】
溶鋼湯面レベル制御装置は、上記の(処理f)によって制御用のレベル計5が切り替えられる場合に、溶鋼湯面レベルの急変を防ぐために、下記のシーケンス(設定レベルを用いる制御)を実施して、操業への影響を軽減する。
【0033】
上記のように、レベル制御部9は、取得した溶鋼湯面レベルに基づいて、溶鋼湯面レベルが目標値となるようにスライディングノズル2の開度を調整する。ここで、複数のレベル計5の個体差によって、各レベル計5からの溶鋼湯面レベルを示すデータ(計測数値)は異なっていることがある。
図2Aは、レベル制御部9が取得する溶鋼湯面レベルの測定値(測定レベル)の変化を例示する図である。
図2Aにおいて、縦軸が測定レベルであって、横軸が時間である。制御用のレベル計5が切り替えられたタイミング(Tc)で、測定レベルが大きく変化している。
図2Aの例では、第1レベル計5Aの計測数値に基づく測定レベルが40%であったところ、第2レベル計5Bの計測数値に基づく測定レベルが35%である。また、
図2Aの例では、目標値は40%に予め設定されている。
【0034】
レベル制御部9が、制御用のレベル計5の切り替え後に、溶鋼湯面レベルを目標値に合わせるようにスライディングノズル2の開度を大きく変化させると、溶鋼湯面レベルも短時間で大きく変化する。溶鋼湯面レベルの急激な変化は、鋼の連続鋳造の操業において好ましくない。そのため、レベル制御部9は、溶鋼湯面レベルを目標値でなく設定レベルに合わせるように、スライディングノズル2の開度を変化させる。設定レベルは、溶鋼湯面レベルの設定値であって、一時的な目標として機能する。
図2Bに示すように、設定レベルは、制御用のレベル計5が切り替えられたタイミング(Tc)の溶鋼湯面レベルから目標値まで、段階的に(階段状に)変化するように設定される。
図2Bにおいて、縦軸が設定レベルであって、横軸が時間である。
図2Bの例では、Tcにおいて設定レベルが35%であって、その後、ある時間が経過すると目標値である40%に近づくように、設定レベルが少しずつ上昇する。レベル制御部9は、スライディングノズル2の開度について、制御用のレベル計5が切り替えられたタイミング(Tc)で設定レベルを用いる制御を開始する。レベル制御部9は、溶鋼湯面レベルが設定レベルになるように、スライディングノズル2の開度を調整する。そして、設定レベルが目標値と一致すると、レベル制御部9は、設定レベルを用いる制御を終了する。
【0035】
図2Cは、スライディングノズル2の開度の変化を例示する図である。
図2Cにおいて、縦軸がスライディングノズル2の開度(ノズル開度)であって、横軸が時間である。レベル制御部9が、
図2Bに示される設定レベルを用いる制御を実行することによって、Tcにおいても開度が急激に変化することがない。
図2Cの例では、スライディングノズル2の開度が70%~90%の範囲内でなだらかに変化している。そして、
図2Aに示すように、測定レベルは目標値である40%に緩やかに近づいている。
【0036】
図3は、1つの実施例における2台の過流式センサであるレベル計5による溶鋼湯面レベルの測定値の変化を示す。2台のレベル計5は、上記と同様に、第1レベル計5Aと第2レベル計5Bである。最初に、第1レベル計5Aが制御用に割り当てられ、第2レベル計5Bがバックアップ用に割り当てられている。
図3の例では、時間が2[秒]となったときに、第1レベル計5Aが一定の値となり、異常を示している。溶鋼湯面レベル制御装置は、一定時間(C)継続して溶鋼湯面レベルが一定の値となっているため、Tcにおいて第2レベル計5Bを制御用に割り当てる。このように、溶鋼湯面レベル制御装置が制御用のレベル計5の自動切り替えを行うことによって、鋼の連続鋳造の操業を中断させることがない。本実施形態において、操業の中断は、複数のレベル計5の全てについて溶鋼湯面レベルが一定の値となった場合に限られ、少なくとも1台のレベル計5が正常でれば操業が継続される。
【0037】
図4は、本実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法の処理を示すフローチャートである。本実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法では、少なくとも
図4のステップS1~S3の処理が実行される。
【0038】
まず、第1レベル計5Aによって溶鋼湯面レベルを計測することが行われる(ステップS1)。つまり、演算部8は、第1レベル計5Aによって計測されたデータを取得して、溶鋼湯面レベルを演算する。
【0039】
そして、第1レベル計5Aによって計測された溶鋼湯面レベルの状態に基づいて、第1レベル計5Aが異常であるかを判定することが行われる。本実施形態において、第1レベル計5Aによって計測された溶鋼湯面レベルが変動せずに一定時間が経過した場合に(ステップS2のYes)、第1レベル計5Aが異常であると判定される。溶鋼湯面レベルについて、変動せずに一定時間が経過することがない場合(ステップS2のNo)、第1レベル計5Aに異常はないと判定され、ステップS1の処理に戻る。
【0040】
第1レベル計5Aが異常であると判定する場合に、第2レベル計5Bによって溶鋼湯面レベルを計測する。つまり、判定部7は、制御用のレベル計5を、第1レベル計5Aから第2レベル計5Bに変更する(ステップS3)。そして、ステップS1の処理に戻り、第2レベル計5Bによる計測が行われる。つまり、演算部8は、第2レベル計5Bによって計測されたデータを取得して、溶鋼湯面レベルを演算する。
【0041】
ここで、制御用のレベル計5が切り替えられた場合に、レベル制御部9は設定レベルを用いる制御を実施する。つまり、レベル制御部9は、第1レベル計5Aから切り替えられた第2レベル計2Bによって溶鋼湯面レベルが計測された場合に、溶鋼湯面レベルが段階的に目標値に近づくように設定レベルを調整する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る溶鋼湯面レベル制御方法は、上記の構成によって、スプラッシュが付着することによるレベル計5の異常を自動検知して、溶鋼湯面レベルの監視を継続できる。第1レベル計5Aが異常である場合に第2レベル計5Bによって溶鋼湯面レベルの計測が継続されるため、連続鋳造などにおける安定操業が可能になる。また、複数のレベル計5の数は2台より多くてよく、この場合に2台以上のバックアップ用のレベル計5が用意されるため、さらなる鋳造の操業安定化を図ることが可能である。
【0043】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり又は分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0044】
1 タンディッシュ
2 スライディングノズル
3 シリンダ
4 浸漬ノズル
5 レベル計
5A 第1レベル計
5B 第2レベル計
6 鋳型
7 判定部
8 演算部
9 レベル制御部