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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088562
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】荷役用具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/14 20060101AFI20240625BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20240625BHJP
   B64U 10/17 20230101ALI20240625BHJP
   B64D 9/00 20060101ALI20240625BHJP
   B66C 1/34 20060101ALI20240625BHJP
   B64U 101/64 20230101ALN20240625BHJP
【FI】
B66C1/14 C
B64U10/13
B64U10/17
B64D9/00
B66C1/34 H
B64U101:64
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022203806
(22)【出願日】2022-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】591235865
【氏名又は名称】大倉 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義憲
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004CA01
3F004CC01
3F004EA21
3F004LA05
3F004LB03
(57)【要約】
【課題】
飛行体と被搬送物との連結や切り離しを遠隔操作で行うことができ、しかも安価に導入することのできる荷役用具の提供。
【解決手段】
被搬送物51を飛行体61で吊り上げるための荷役用具は、受け具11と吊り索21と掛け具31で構成し、飛行体61から二本の吊り索21を垂れ下げる。また掛け具31は、吊り索21の下端から垂れ下がる垂下部33と、垂下部33の下端同士を山形状に結ぶ先端部34と、に区画する。そして受け具11は、被搬送物51に取り付けて上方に伸びる直立部13と、直立部13の上端同士を結ぶ頂上部14と、に区画することで、垂下部33と先端部34との境界で頂上部14を支持し、被搬送物51を吊り上げることができる。この荷役用具は極めて安価であり、しかも各部の形状を最適化することで、連結や切り離しの際の余裕が確保され、遠隔操作が可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体(61)で被搬送物(51)を吊り上げるための荷役用具であって、
被搬送物(51)に対して変位不能に取り付ける受け具(11)と、飛行体(61)から垂れ下げる二本の吊り索(21)と、吊り索(21)の下端に取り付ける掛け具(31)と、からなり、受け具(11)と掛け具(31)のいずれも棒状の素材を使用しており、
受け具(11)は、被搬送物(51)の対向側面を跨ぐように取り付け、且つ受け具(11)は、直立部(13)と頂上部(14)に区画してあり、直立部(13)は被搬送物(51)から上方に伸びており、また頂上部(14)は直立部(13)の上端同士を結んでおり、
吊り索(21)は自在に変形可能であり、しかも二本の吊り索(21)は水平面において離れて配置してあり、
掛け具(31)は、垂下部(33)と先端部(34)に区画してあり、垂下部(33)は個々の吊り索(21)の下端から下方に伸びており、また先端部(34)は垂下部(33)の下端同士を結んでおり、且つ先端部(34)はその中央に向かうに連れて垂下部(33)との間隔を増大させながら上方に突出する山形状であり、
垂下部(33)と先端部(34)との境界で頂上部(14)を支持することで、被搬送物(51)が吊り上げ可能になることを特徴とする荷役用具。
【請求項2】
受け具(11)の直立部(13)は、その中程の高さにおいて直立部(13)同士の間隔が増大するように屈曲させてあることを特徴とする請求項1記載の荷役用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上に置かれた各種の被搬送物を回転翼機などの飛行体で吊り上げて輸送する場合において、飛行体と被搬送物を連結する荷役用具に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチコプターやヘリコプターといった回転翼機は、水平移動を伴うことなく離着陸が可能であるため、発着場所を柔軟に選択できるほか、空中で静止状態を維持できるため、飛行中においても機体と地上との間で荷物や人員の受け渡しが可能であるなど、様々な利点を備えており、通常の交通手段では到達が難しい山岳地帯などで広く使用されている。そしてマルチコプターについては、性能の向上によって普及が進み、ドローンとの称呼で広く知られるようになった。ドローンは、従来のヘリコプターと比較して様々な費用を抑制できるほか、高度な制御装置を搭載することで遠隔操作が容易であり、土木工事や林業や農業など、様々な分野での活用が期待されている。
【0003】
ドローンの用途として小口の荷物輸送が挙げられ、その技術開発の具体例として後記の特許文献が挙げられる。そのうち特許文献1では、吊り下げた荷物を自動でリリースすることのできる荷下用フックが開示されている。この荷下用フックは、一対のアームで構成され、パンタグラフのような外観になっており、その最下部では、荷物から伸びる紐などを保持できるほか、アームの上部にはバネを組み込んであり、その反力により、アームの最下部が開放した状態を維持することができる。ただし、アームの最下部を閉じて紐などを保持した際は、そこから伝達する荷重により、アームの最下部が閉じた状態を維持するため、荷物の吊り下げが可能になる。そして荷物を着地させると、紐などから伝達する荷重が消滅するため、バネによってアームの最下部が開放され、荷物を自然に切り離すことができる。
【0004】
次の特許文献2では、自律飛行による物品移送用ドローンが開示されている。このドローンは、機体本体から複数のロータアームが突出しているほか、機体本体の底面には物品保持装置を備えており、さらに、高度センサーや測位システムからの情報に基づいて飛行を管理する移動制御部を備えており、あらかじめ入力された飛行経路に基づいて目的地に到達することができる。そして物品保持装置は、一対のアームで構成されており、双方のアームの先端には受部を形成してあり、この受部同士を接触させることで物品を保持することができ、しかも一対のアームを駆動モータで変位させることで、目的地に到達した際、自動で物品の保持を解除し、物品の移送を終えることができる。
【0005】
また特許文献3では、無人飛行体を用いた運搬システムが開示されており、ここでの無人飛行体は、荷役用パレットを運搬できるよう、二本のフォークを備えており、実際にこれを荷役用パレットに差し込んだ後、無人飛行体を離陸させることで、荷役用パレットに載せられた荷物も目的地まで運搬することができる。しかもこの荷役用パレットの内部には蓄電池を組み込んであり、その運搬時は、フォークを介して無人飛行体に電力を供給することができる。そのため無人飛行体の充電を考慮する必要がなく、その稼働効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3222160号公報
【特許文献2】実用新案登録第3223598号公報
【特許文献3】特開2020-186110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
農地での収穫作業など、不整地に点在する物品を特定の場所に輸送する際は、労力を削減するため、車輪やクローラを備えた装置を使用することが多い。ただし地質や高低差や障害物など、様々な要因でこれらの装置の使用が難しい場合、人力に依存した輸送になり様々な負担を伴うため、ドローンなどの飛行体の使用が期待される。例えば収穫された農作物を一箇所に集める際は、農作物をカゴに詰め込んだ後、飛行体でカゴを吊り上げ、目的地まで輸送することになる。これにより輸送時の負担は軽減するものの、カゴとの連結や切り離しのため、その近傍に人員を配置するならば、その分の負担が増えるほか、飛行体との接触などの危険も予想される。そこで飛行体とカゴとの連結や切り離しは、人員を配置することなく、遠隔操作で行うことが望ましい。
【0008】
飛行体とカゴとの連結や切り離しについては、前記の特許文献2のように、ドローンの下部にアームを取り付け、これを遠隔操作で開閉するなど、様々な方法が選択可能である。ただしこのような可動式のアームは、多数の部品が必要になるため、費用や重量が増大し、実用化の面で課題がある。そこでカゴなど、様々な被搬送物を飛行体で吊り上げるための手段は、安価に導入可能であり、しかも信頼性に優れていることが望ましい。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、飛行体と被搬送物との連結や切り離しを遠隔操作で行うことができ、しかも安価に導入することのできる荷役用具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、飛行体で被搬送物を吊り上げるための荷役用具であって、被搬送物に対して変位不能に取り付ける受け具と、飛行体から垂れ下げる二本の吊り索と、吊り索の下端に取り付ける掛け具と、からなり、受け具と掛け具のいずれも棒状の素材を使用しており、受け具は、被搬送物の対向側面を跨ぐように取り付け、且つ受け具は、直立部と頂上部に区画してあり、直立部は被搬送物から上方に伸びており、また頂上部は直立部の上端同士を結んでおり、吊り索は自在に変形可能であり、しかも二本の吊り索は水平面において離れて配置してあり、掛け具は、垂下部と先端部に区画してあり、垂下部は個々の吊り索の下端から下方に伸びており、また先端部は垂下部の下端同士を結んでおり、且つ先端部はその中央に向かうに連れて垂下部との間隔を増大させながら上方に突出する山形状であり、垂下部と先端部との境界で頂上部を支持することで、被搬送物が吊り上げ可能になることを特徴とする。
【0011】
本発明による荷役用具は、各種の被搬送物を飛行体で吊り上げるために使用され、大別して受け具と吊り索と掛け具で構成され、受け具は被搬送物に取り付け、吊り索は飛行体に取り付け、掛け具は吊り索に取り付ける。そして飛行体については、空中で静止状態を維持でき、しかもあらゆる方向に微速で移動できる必要があり、主にマルチコプターやヘリコプターといった回転翼機を想定している。また被搬送物については、空中に吊り上げた状態においても、形状が大きく変化することはないものとする。そのため被搬送物は、カゴなどの容器とすることが多く、その中に様々な物品を収納することになる。
【0012】
受け具は、被搬送物の荷重で塑性変形を生じることのない強度を有する棒状の素材を使用し、これに曲げ加工を行ってU字状に仕上げる。そしてこの受け具を上下反転させた後、被搬送物の上方に配置し、その一端は、被搬送物の一方の側面付近に取り付け、他端については、被搬送物の他方の側面付近に取り付けると、受け具は、被搬送物の上方に突出し、しかも被搬送物の対向側面を跨ぐような状態になる。なお受け具は、通常の荷重で大きな変位が生じないよう、被搬送物に対して緩みなく取り付ける必要がある。
【0013】
被搬送物に取り付けた受け具は、U字を上下反転させたような形状になるが、そのうち被搬送物から上方に伸びる区間は、直立部と称するものとする。当然ながら直立部は、被搬送物の個々の側面付近から伸びるため、二箇所に分散配置される。そして直立部の上端同士を結ぶ区間は、頂上部と称するものとする。したがって頂上部を何らかの手段で持ち上げると、被搬送物が吊り上げられることになるが、その際は、吊り上げの前後で被搬送物の姿勢が大きく変化しないよう、被搬送物の重心は、頂上部の直下に配置することが望ましい。
【0014】
吊り索は、ロープやクサリなど、自在に変形可能な素材で構成され、飛行体から垂れ下げるが、吊り索は一本ではなく二本であり、この二本は、飛行体の重心位置を基準として向かい合うように配置する。なお一般的な飛行体の下部には、着陸時に地面と接触する脚を備えている。そのため着陸時の安定性を損なわないよう、脚よりも下方には部品を配置できない。ただし吊り索は、極めて変形しやすいため、仮に吊り索が脚よりも長い場合でも、着陸時は緩みを生じながら地面に横たわり、脚の機能を損ねることはない。
【0015】
掛け具は、吊り索の下端に取り付け、受け具との連結を担う部品であり、被搬送物の荷重で塑性変形を生じることのない強度を有する棒状の素材を使用し、これに曲げ加工を行ってM字状に仕上げる。そしてこの掛け具の一端は、一方の吊り索に取り付け、他端については、他方の吊り索に取り付ける。したがって掛け具は、二本の吊り索で支持され、その際はM字を上下反転させたような形状になり、揺動は自在だが、垂直軸を中心とする回転は規制される。
【0016】
吊り索を介して飛行体に取り付けられた掛け具において、吊り索から下方に伸びる区間は、垂下部と称するものとする。当然ながら垂下部は、個々の吊り索から伸びているため、二箇所に分散配置される。そして垂下部の下端同士を結ぶ区間は、先端部と称するものとする。先端部は、受け具の落下を防ぐ重要な役割を担い、その中央が最も高くなり、且つ先端部の中央に向うに連れ、垂下部との距離が増大するよう、斜め上方向に突出する山形状としてある。したがって垂下部と先端部との境界は谷状になり、そこで受け具を支持することになるが、その際、受け具と掛け具との緩みを抑制できるよう、先端部の根元同士の間隔は、受け具の頂上部の長さに基づいて決めることになる。
【0017】
このように、飛行体で被搬送物を吊り上げるための荷役用具を受け具と吊り索と掛け具で構成し、被搬送物には受け具を取り付けるほか、飛行体には吊り索を介して掛け具を取り付け、その後、飛行体を遠隔操作で被搬送物に接近させ、掛け具の先端部を受け具の内部に差し入れ、さらに飛行体を上昇させることで、受け具が掛け具で支持された状態になり、被搬送物を吊り上げることができる。そして目的地に到着した際は、まず被搬送物を着地させ、その後に飛行体をわずかに下降させ、掛け具を受け具から遠ざけることで、飛行体から被搬送物が切り離される。
【0018】
請求項2記載の発明は、受け具の形状に関するものであり、受け具の直立部は、その中程の高さにおいて直立部同士の間隔が増大するように屈曲させてあることを特徴とする。飛行体で被搬送物を吊り上げる際は、掛け具の先端部を受け具の内部に差し入れる必要がある。そこでこの発明のように、直立部同士の間隔を増大させることで、掛け具の先端部を差し入れるための空間が増大し、遠隔操作が一段と容易になる。なお直立部の上端同士を結ぶ頂上部の長さは、先端部の根元同士の間隔と同等に揃えることで、受け具は緩みなく二点で支持された状態になり、吊り上げ時の安定性が向上する。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明のように、飛行体で被搬送物を吊り上げるための荷役用具を受け具と吊り索と掛け具で構成し、被搬送物には受け具を取り付けるほか、飛行体には吊り索を介して掛け具を取り付け、その後、飛行体を遠隔操作で被搬送物に接近させ、掛け具の先端部を受け具の内部に差し入れ、さらに飛行体を上昇させることで、受け具が掛け具で支持された状態になり、被搬送物を吊り上げることができる。そして目的地に到着した際は、まず被搬送物を着地させ、その後に飛行体をわずかに下降させ、掛け具を受け具から遠ざけることで、飛行体から被搬送物が切り離される。
【0020】
本発明は、単純な素材だけで構成され、バネや電動機などの可動部分が一切存在しないため、信頼性に優れるほか、費用や重量を抑制できるため、実用化が容易である。しかも受け具を大形化することで、掛け具との連結や切り離しの際、空間的な余裕が確保されるため、被搬送物の近傍に人員を配置することなく、飛行体の遠隔操作だけで対応可能であり、安全性に優れるほか、輸送を人力に依存しないため、様々な負担を軽減できる。
【0021】
加えて、吊り索を二本としているため、掛け具が垂直軸を中心として回転することを防ぎ、被搬送物の自由な挙動が抑制されるため、飛行中の安定性が向上する。また、被搬送物を切り離した後に飛行体を着陸させる際は、まず掛け具だけを地面に接触させ、次に飛行体を掛け具から離れた位置に移動させることで、掛け具の影響を受けることなく飛行体を着陸させることができる。したがって本発明は、飛行体の脚などの構造に依存することなく導入可能であり、汎用性に優れている。
【0022】
請求項2記載の発明のように、受け具の直立部は、その中程の高さにおいて間隔が増大するように屈曲させることで、被搬送物を吊り上げる際、掛け具の先端部を受け具の内部に差し入れるための空間が増大し、飛行体の遠隔操作が一段と容易になる。しかも直立部の上端同士を結ぶ頂上部の長さは、先端部の根元同士の間隔と同等に揃えることで、受け具は緩みなく二点で支持された状態になり、吊り上げ時の安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による荷役用具の具体例を示す斜視図であり、飛行体で被搬送物を吊り上げるために使用される。
図2】飛行体と吊り索と掛け具との関係を示す斜視図であり、図の上方は着陸時であり、図の下方は飛行中である。
図3】離陸後の飛行体が被搬送物を吊り上げる直前の状態を示す斜視図である。
図4】飛行体で被搬送物を吊り上げている状態を示す斜視図である。
図5】飛行体が目的地に到着して被搬送物を切り離す状態を示す斜視図である。
図6】飛行体の遠隔操作を考慮し、飛行体の胴体の下部にカメラを取り付けてあるほか、受け具の頂上部に二個のマーカを取り付けた場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による荷役用具の具体例を示しており、飛行体61で被搬送物51を吊り上げるために使用される。この荷役用具は、受け具11と吊り索21と掛け具31で構成され、そのうち受け具11は、被搬送物51に取り付け、また掛け具31は、吊り索21を介して飛行体61に取り付け、受け具11と掛け具31を連結させることで、被搬送物51を吊り上げることができる。なお被搬送物51は自在に選択可能だが、この図では直方体形状のカゴを被搬送物51としており、その中に様々な物品を収納することができる。
【0025】
被搬送物51に取り付ける受け具11は、金属棒を素材としており、通常の取り扱いでは塑性変形を生じることのない太さを確保してあり、曲げ加工によってU字状に仕上げてある。そして受け具11は、U字を上下反転させたような姿勢で被搬送物51の上方に配置し、その一方の下端部は、被搬送物51の一方の側面に取り付け、また他方の下端部は、被搬送物51の他方の側面に取り付けると、受け具11は被搬送物51の上方を跨ぐような状態になる。
【0026】
受け具11において、被搬送物51の側面から上方に伸びる区間は、直立部13と称しており、必然的に直立部13は、被搬送物51を挟んで二箇所に分散配置される。さらに直立部13の上端同士を結ぶ区間は、頂上部14と称しており、この頂上部14については、概ね水平方向に伸びており、直立部13と頂上部14との境界は、円弧状に屈曲させてある。なお直立部13は、厳密に垂直方向に伸びている必要はなく、通常はこの図のように、ちょうど中程の高さで直立部13同士の間隔が増大するよう、「く」の字状に屈曲させてある。
【0027】
受け具11は、被搬送物51に対して変位不能に取り付ける必要がある。その方法は自在に選択可能だが、ここでは直立部13の下方を折り返すように屈曲させ、そこから先の区間を被搬送物51の内面側に差し込んでいる。これにより被搬送物51が受け具11から落下することを防いでいる。さらに受け具11の変位を防ぐため、針金状の留め具19を使用しており、被搬送物51の側面の表裏を往復するように留め具19を巻き付け、直立部13を被搬送物51に密着させている。
【0028】
飛行体61については、マルチコプターやヘリコプターなど、空中で静止状態を維持できる機能を有するならば、自在に選択可能である。そしてこの図の飛行体61は、ドーム状の胴体63に四組のロータ65を配置したドローンを想定しており、胴体63の内部には蓄電池や制御装置や通信装置が搭載され、遠隔操作での飛行を前提としている。また胴体63の外縁からは、十字状に四本のアーム64が突出しており、個々のアーム64の先端にロータ65を配置してあり、ロータ65の回転によって揚力を得るほか、個々のロータ65の回転数を調整することで、空中静止や旋回など、様々な飛行を実現可能である。
【0029】
さらに胴体63の下部には、等間隔で四本の脚66が突出しており、着陸時はその先端が地面に接触する。加えて胴体63の下部には、J字状のフック67を二箇所に備えており、これを使用して胴体63の下部に様々な付属品を取り付けることができる。なおフック67については、様々な付属品を取り付け可能であれば、その具体的な構成は自在に選択可能であり、アーム64の根元付近を利用することも可能である。ただし、当初の飛行体61にフック67として機能可能な部位が全く存在しない場合、改造で対応することになる。そのほか二箇所のフック67は、飛行体61の重心位置を基準として向かい合うように配置する。
【0030】
吊り索21は、自在に変形可能な紐状であり、同じ長さのものを二本使用し、個々のフック67に一本の吊り索21を垂れ下げる。そしてこの図の吊り索21は、汎用のクサリを所定の長さに切り出したものだが、軽量化を考慮して合成樹脂を素材としているほか、相応の長さを確保してある。そのため飛行中、吊り索21の下端は、脚66よりも下方に到達する。ただし吊り索21は、極めて変形しやすいため、着陸時は緩みを生じながら地面に横たわり、脚66の機能を損ねることはない。
【0031】
掛け具31は、吊り索21の下端で支持され、実際に受け具11を吊り上げる役割を担い、ここでは金属棒を素材としており、通常の取り扱いでは塑性変形を生じることのない太さを確保してある。そして掛け具31は、曲げ加工によってM字状に仕上げてあり、これを上下反転させた後、吊り索21の下端同士を結ぶように配置することになるが、吊り索21の下端から下方に伸びる区間は、垂下部33と称しており、必然的に垂下部33は二箇所に分散配置され、さらに垂下部33の下端同士を結ぶ区間は、先端部34と称している。
【0032】
先端部34は、垂下部33の下端同士を結んでいるが、この垂下部33との境界が最も低い位置になり、そこから上方に突出しており、必然的に先端部34の中央が最も高くなり、全体でV字を上下反転させたような形状になる。したがって垂下部33と先端部34との境界は谷状になり、そこで受け具11を支持することができ、しかも先端部34により、受け具11の落下を防ぐことができる。
【0033】
掛け具31を受け具11に連結する際、空間的な余裕を確保するため、先端部34の中央は、吊り索21が垂れ下がる位置から遠ざけることが望ましい。そこで垂下部33は、一直線ではなく途中で緩やかに屈曲させ、また垂下部33と先端部34との境界は、緩やかな曲線としてある。そのほか先端部34を過度に大きくした場合、掛け具31を受け具11に連結する際や、掛け具31を受け具11から切り離す際、空間的な余裕が減ることになり、飛行体61の操作が難しくなる。そこで先端部34の中央は、尖鋭とすることなく緩やかに屈曲させ、その突出を抑制してある。
【0034】
飛行体61で被搬送物51を吊り上げる際は、まず飛行体61を離陸させ、掛け具31が空中に垂れ下がった状態にした後、飛行体61を被搬送物51に接近させ、掛け具31の先端部34を受け具11の内部に差し入れる。次に飛行体61を上昇させると、垂下部33と先端部34との境界で頂上部14が支持され、さらに上昇を続けると、受け具11を介して被搬送物51が吊り上げられる。
【0035】
図2は、飛行体61と吊り索21と掛け具31との関係を示しており、図の上方は着陸時であり、図の下方は飛行中である。安全性などの観点から、飛行体61と地面は、離着陸時を除き、ある程度の距離を確保することが望ましく、必然的に吊り索21が長くなる。その結果、飛行体61の着陸時は、図の上方のように、吊り索21の一部が地面に接触することになるが、吊り索21は自在に変形可能であるため、脚66の機能を損ねることはない。そして飛行中については、図の下方のように、吊り索21が胴体63の下方に垂れ下がり、さらに吊り索21の下端で掛け具31が支持され、掛け具31の先端部34が斜め上方に突出した状態になる。
【0036】
飛行体61を着陸させる際は、徐々に高度を下げていき、まず掛け具31だけを地面に接触させ、次に飛行体61を水平方向に移動させて掛け具31から遠ざけ、さらに高度を下げて脚66を地面に接触させることになるが、その途中で飛行体61と掛け具31が不用意に接触した場合、安全面で問題がある。したがってこの観点からも、吊り索21は、長くすることが望ましい。なお吊り索21としてクサリを使用することで、変形時の反力が全く生じない。そのため飛行体61を地面に接近させる際、吊り索21の挙動が安定する。仮に吊り索21がワイヤーロープであれば、屈曲時の反力によって思わぬ方向に変形し、飛行体61との接触などがあり得る。
【0037】
図3は、離陸後の飛行体61が被搬送物51を吊り上げる直前の状態を示している。飛行体61を離陸させると、胴体63の下方で掛け具31が垂れ下がり、その状態で飛行体61を被搬送物51に接近させ、掛け具31の先端部34を受け具11と対向させるほか、飛行体61の高度を調整し、先端部34を受け具11の頂上部14よりも下方に配置し、次に飛行体61を水平方向に移動させ、先端部34を受け具11の内部に差し入れる。その後、飛行体61を上昇させると、垂下部33と先端部34との境界で頂上部14が支持され、受け具11を介して被搬送物51を吊り上げることができる。
【0038】
このように被搬送物51を吊り上げる際は、簡単な操作で先端部34を受け具11の内部に差し入れられるよう、受け具11と掛け具31の形状を最適化することが望ましい。そこで受け具11の直立部13は、単純な直線状ではなく、その中央付近で緩やかに屈曲させてあり、受け具11において、中程の高さで直立部13同士の間隔が最大になっており、先端部34の差し入れが容易になっている。しかもその後に飛行体61を上昇させると、掛け具31は直立部13に誘導された状態で上昇するため、最終的には頂上部14が掛け具31で緩みなく支持されるほか、先端部34によって受け具11の落下を防ぐ。
【0039】
加えて掛け具31の先端部34は、上方に突出していると共に、吊り索21から遠ざかる方向に突出している。また垂下部33は一直線ではなく、途中で緩やかに屈曲させてある。そのため、先端部34の中央から吊り索21が垂れ下がる位置までの距離が増大し、先端部34を受け具11の内部に差し入れる際、空間的な余裕が増大することになる。このように、受け具11と掛け具31の双方の形状を最適化することで、先端部34を受け具11の内部に差し入れる際、水平面において直交する二方向のいずれも、十分な余裕を確保できるため、遠隔操作でも無理なく被搬送物51を吊り上げることができる。そのほか先端部34の中央は、緩やかに屈曲させて突出を抑制してあり、先端部34を受け具11の内部に差し入れる際などにおいて、空間的な余裕が減ることを防いでいる。
【0040】
図4は、飛行体61で被搬送物51を吊り上げている状態を示している。掛け具31は、二本の吊り索21で支持されているため、垂直軸を中心として回転することは不可能であり、しかも揺動についても、ブランコのようにその方向が限定される。加えて受け具11の頂上部14の長さは、先端部34の根元同士の間隔と同等に揃えてあるため、受け具11は二点で緩みなく支持された状態になり、安定性が向上する。したがって本発明では、飛行中、被搬送物51の揺動を管理しやすく、被搬送物51の揺動が抑制される方向に飛行体61を移動させることで、荷崩れなどを防ぐことができる。なお被搬送物51については、このように吊り上げられた状態でも安定した姿勢を維持できるならば、その形状や構成などは自在である。
【0041】
図5は、飛行体61が目的地に到着して被搬送物51を切り離す状態を示している。飛行体61が目的地に到着すると、高度を下げて被搬送物51を地面に接触させる。さらに受け具11と掛け具31を切り離すため、一段と高度を下げると、この図のように、先端部34の全体が頂上部14よりも下方に位置する状態になる。以降、飛行体61を水平方向に移動させ、掛け具31を受け具11から遠ざけると、被搬送物51の輸送を終えることができる。なお吊り索21を長くすることで、被搬送物51を切り離す際、飛行体61と地面との距離が増大するため、地上の人や物との接触を避けることができる。
【0042】
図6は、飛行体61の遠隔操作を考慮し、飛行体61の胴体63の下部にカメラ68を取り付けてあるほか、受け具11の頂上部14に二個のマーカ18を取り付けた場合を示している。本発明では、被搬送物51を吊り上げてから切り離すまでの間、一貫して遠隔操作を行うことを想定しており、飛行体61や被搬送物51の近傍に人員を配置する必要はない。ただし先の図3のように、飛行体61を被搬送物51に接近させる際は、一連の様子を目視で確認する必要があり、この目視が不可能な場所からの遠隔操作は困難である。
【0043】
そこでこの図のように、飛行体61にカメラ68を取り付け、その映像を常時送信することで、目視が不可能な場所からも遠隔操作が可能になる。しかもその際は、受け具11を確実に認識できるよう、その頂上部14にマーカ18を取り付けてある。マーカ18は正方形の板に過ぎないが、その表面には視認性に優れた色彩や模様を描いてある。なおこの図では、頂上部14の方向を認識できるよう、マーカ18は隙間を空けて二枚を並べてある。当然ながらマーカ18は、掛け具31との連結や切り離しに影響を与えないよう、その配置や大きさを調整する。
【0044】
カメラ68については、画像処理技術を導入することで、被搬送物51の吊り上げや切り離しを自動化することも不可能ではない。また、マーカ18に二次元バーコードなどを表示することで、被搬送物51を自動で識別し、多数の被搬送物51の中から特定のものを選択して輸送することも可能である。そしてこれらの技術を自律飛行と組み合わせることで、輸送を完全に無人化することも期待できる。
【符号の説明】
【0045】
11 受け具
13 直立部
14 頂上部
18 マーカ
19 留め具
21 吊り索
31 掛け具
33 垂下部
34 先端部
51 被搬送物(カゴ)
61 飛行体(ドローン)
63 胴体
64 アーム
65 ロータ
66 脚
67 フック
68 カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6