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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088575
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/085 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
F16K11/085 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125572
(22)【出願日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022203747
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023073753
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】松平 範光
(72)【発明者】
【氏名】川俣 達
(72)【発明者】
【氏名】廣野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA23
3H067CC02
3H067CC45
3H067DD03
3H067DD12
3H067EA02
3H067EA12
3H067FF11
(57)【要約】
【課題】シール性を損なうことなく、回転軸への負荷を増加させない流路切換弁を提供する。
【解決手段】流路切換弁1は、円筒状の内壁部11aを有し周方向に複数のポート40が開口する本体部11と、本体部11の中心軸A方向の一端を覆う底部12と、本体部11の中心軸A方向の他端を覆う蓋部13と、を有するハウジング10と、ハウジング10の内部に中心軸Aまわりに回動可能に収容され、中心軸Aを中心として配置される一組の第1弁体21及び第2弁体22を有し、内壁部11aに摺接して複数のポート40の連通状態を切り換える弁体20と、中心軸A方向に延設し、第1弁体21と第2弁体22とをそれぞれ径方向に移動可能に接続すると共に、その回転により第1弁体21及び第2弁体22の回動位置を切り換える回転軸30と、第1弁体21と第2弁体22とを内壁部11aに向かって付勢するコイルばね25と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路切換弁であって、
円筒状の内壁部を有し周方向に複数のポートが開口する本体部と、前記本体部の中心軸方向の一端を覆う底部と、前記本体部の前記中心軸方向の他端を覆う蓋部と、を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に前記中心軸まわりに回動可能に収容され、前記中心軸を中心として配置される一組の第1弁体及び第2弁体を有し、前記内壁部に摺接して前記複数のポートの連通状態を切り換える弁体と、
前記中心軸方向に延設し、前記第1弁体と前記第2弁体とをそれぞれ径方向に移動可能に接続すると共に、その回転により前記第1弁体及び前記第2弁体の回動位置を切り換える回転軸と、
前記第1弁体と前記第2弁体とを前記内壁部に向かって付勢する付勢部材と、
を備える、
流路切換弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流路切換弁であって、
前記第1弁体と前記第2弁体とは、前記中心軸を中心として対向する位置に配置されて前記対向する方向に移動可能であり、
前記付勢部材は、前記第1弁体と前記第2弁体との間に配置されて前記第1弁体と前記第2弁体とを互いに前記内壁部に向かって付勢する、
流路切換弁。
【請求項3】
請求項2に記載の流路切換弁であって、
前記第1弁体及び前記第2弁体は、前記回転軸が挿入される挿入孔を各々有し、
前記回転軸が前記挿入孔に挿入された状態で、前記回転軸の先端部と前記挿入孔との間には、前記対向する方向に隙間を有し、
前記第1弁体と前記第2弁体とが対向する方向とは直交する方向においては、前記回転軸の先端部と前記挿入孔とは隙間なく当接する、
流路切換弁。
【請求項4】
請求項2に記載の流路切換弁であって、
前記ハウジングの内部は、
前記第1弁体と前記内壁部に囲繞された第1空間と、前記第2弁体と前記内壁部に囲繞された第2空間と、前記第1弁体と前記第2弁体と前記内壁部とに囲繞された第3空間と、に分割される、
流路切換弁。
【請求項5】
請求項4に記載の流路切換弁であって、
前記第1弁体は第1シール部を有し、前記第1空間が、前記第1シール部と前記内壁部とに囲繞されて流体が流通する空間である第1流路を構成し、
前記ポートは、前記回転軸を中心として互いに所定の角度をもって配置される第1ポート及び第2ポートを有し、
前記第1弁体は、前記回転軸の回転により、前記第1ポートと前記第2ポートとを前記第1流路により連通させる第1状態と、前記第1ポートと前記第2ポートとが連通しない第2状態と、を切り換える、
流路切換弁。
【請求項6】
請求項5に記載の流路切換弁であって、
前記第2弁体は第2シール部を有し、前記第2空間が、前記第2シール部と前記内壁部とに囲繞されて流体が流通する空間である第2流路を構成し、
前記ポートは、前記第1ポート及び前記第2ポートと前記中心軸に対称となる位置に配置され、前記回転軸を中心として互いに所定の角度をもって配置される第3ポート及び第4ポートを更に有し、
前記第1状態において、前記第2弁体が前記第3ポートと前記第4ポートとを前記第2流路により連通させ、前記第2状態において、前記第2弁体が、前記第3ポートと前記第4ポートとを連通させない、
流路切換弁。
【請求項7】
請求項6に記載の流路切換弁であって、
前記第3空間が、前記第1弁体と前記第2弁体と前記内壁部との間に流体が流通する第3流路を構成し、
前記ポートは、前記第1ポートと前記第3ポートとの間に配置される第5ポートと、前記第2ポートと前記第4ポートとの間に配置される第6ポートと、を更に有し、
前記第3流路は、前記第5ポートと前記第6ポートとを連通させる、
流路切換弁。
【請求項8】
請求項4に記載の流路切換弁であって、
前記第1空間と前記第2空間との少なくとも一方は、前記複数のポートのうち前記中心軸方向の異なる位置に配置される各々の前記ポートに連通するように設けられ、
前記付勢部材は、複数設けられて前記中心軸方向に離間した二か所に配置される、
流路切換弁。
【請求項9】
請求項8に記載の流路切換弁であって、
複数の前記付勢部材の中心軸は、前記ポートの中心軸と前記中心軸方向の位置が一致するように配置される、
流路切換弁。
【請求項10】
請求項9に記載の流路切換弁であって、
複数の前記付勢部材のうち、前記弁体が流体の圧力を受ける受圧面積が大きい前記中心軸方向の位置に設けられる一方は、前記受圧面積が小さい前記中心軸方向の位置に設けられる他方よりも付勢力が大きい、
流路切換弁。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一つに記載の流路切換弁であって、
前記弁体は、前記内壁部と対峙する縁部のうち、厚さ方向における内周側の一部のみが、前記内壁部と当接してシール面を構成する、
流路切換弁。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一つに記載の流路切換弁であって、
前記ハウジングは、前記ポートが形成される前記内壁部と前記回転軸を挟んで対向する他の位置における前記内壁部における前記弁体との摺動抵抗を小さくする摺動抵抗低減部を有する、
流路切換弁。
【請求項13】
請求項12に記載の流路切換弁であって、
前記摺動抵抗低減部は、前記ハウジングの前記内壁部に前記中心軸方向に延設されるスリットである、
流路切換弁。
【請求項14】
請求項4に記載の流路切換弁であって、
前記第1空間と前記第2空間との少なくとも一方は、前記複数のポートのうち前記中心軸方向の異なる位置に配置される各々の前記ポートに連通するように設けられ、
前記第1弁体と前記第2弁体との少なくとも一方は、前記第1空間及び前記第2空間との外部に、前記第1空間及び前記第2空間との一部と前記中心軸方向に並ぶように設けられ、前記内壁部に対して摺動する摺動部を有する、
流路切換弁。
【請求項15】
請求項1に記載の流路切換弁であって、
前記弁体は、前記回転軸に対して径方向に変位可能である、
流路切換弁。
【請求項16】
請求項15に記載の流路切換弁であって、
前記回転軸は、当該回転軸から外側に向かって延びて前記弁体に回転力を伝達する腕部を有する、
流路切換弁。
【請求項17】
請求項16に記載の流路切換弁であって、
前記腕部は、前記回転軸から当該回転軸の接線方向に延びる第1腕部及び第2腕部を有し、
前記第1腕部は、前記第1弁体と当接する第1当接面と、前記付勢部材を介して前記第2弁体と接続される第1接続面と、を有し、
前記第2腕部は、前記第2弁体と当接する第2当接面と、前記付勢部材を介して前記第1弁体と接続される第2接続面と、を有する、
流路切換弁。
【請求項18】
請求項16に記載の流路切換弁であって、
前記腕部は、前記回転軸から当該回転軸の径方向に延びるように一対設けられ、
一対の前記腕部は、前記付勢部材を介して前記第1弁体及び前記第2弁体と各々接続される、
流路切換弁。
【請求項19】
請求項1に記載の流路切換弁であって、
前記第1弁体及び前記第2弁体は、前記本体部よりも軟らかい、
流路切換弁。
【請求項20】
請求項1に記載の流路切換弁であって、
前記第1弁体及び前記第2弁体は、前記回転軸よりも軟らかい、
流路切換弁。
【請求項21】
請求項16に記載の流路切換弁であって、
前記弁体は、前記第1弁体及び前記第2弁体を含んで前記回転軸まわりに並ぶように3つ以上設けられ、
前記腕部は、回転方向に隣り合う前記弁体の間にそれぞれ延び、
前記腕部の前記回転方向の一方側は、前記付勢部材を介して前記回転方向の一方にて隣り合う前記弁体と連結され、前記回転方向の他方側は、前記弁体と当接若しくは前記付勢部材を介して前記回転方向の他方にて隣り合う前記弁体と連結されている、
流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流路を切り換える流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒形状の弁本体と、回転軸線を中心として弁本体に対して回転するように弁本体内に配置された弁プラグと、を備え、弁本体内の側壁に当接するシールが弁プラグに備えられる流路切換弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-535565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の流路切換弁では、弁本体の壁部に内側からシール部が当接する構造であるので、シール性を高めるためにシール部と壁部との付勢力を高めると、回転軸に直交する方向に力が加わり、回転軸に対する負荷が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、シール性を損なうことなく、回転軸への負荷を増加させない流路切換弁を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、流路切換弁は、円筒状の内壁部を有し周方向に複数のポートが開口する本体部と、前記本体部の中心軸方向の一端を覆う底部と、前記本体部の前記中心軸方向の他端を覆う蓋部と、を有するハウジングと、前記ハウジングの内部に前記中心軸まわりに回動可能に収容され、前記中心軸を中心として配置される一組の第1弁体及び第2弁体を有し、前記内壁部に摺接して前記複数のポートの連通状態を切り換える弁体と、前記中心軸方向に延設し、前記第1弁体と前記第2弁体とをそれぞれ径方向に移動可能に接続すると共に、その回転により前記第1弁体及び前記第2弁体の回動位置を切り換える回転軸と、前記第1弁体と前記第2弁体とを前記内壁部に向かって付勢する付勢部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、弁体を構成する第1弁体と第2弁体とが中心軸を中心として配置され、付勢部材によって内壁部に向かって付勢されるので、回転軸に対して曲げ方向の負荷が発生しないようにすることができ、付勢力により、第1弁体と第2弁体とのシール性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る流路切換弁の斜視図である。
図2図2は、流路切換弁の透視斜視図である。
図3図3は、弁体及び回転軸の斜視図である。
図4図4は、弁体の分解斜視図である。
図5図5は、流路切換弁の横方向断面図である。
図6図6は、流路切換弁の縦方向断面図である。
図7図7は、流路切換弁の横方向断面図である。
図8図8は、流路切換弁の横方向断面図である。
図9図9は、第1の実施形態の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図10図10は、変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図11図11は、第1の実施形態の別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図12図12は、別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図13図13は、第1の実施形態の更に別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図14図14は、更に別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図15図15は、更に別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図16図16は、更に別の変形例の流路切換弁の横方向断面図である。
図17図17は、本発明の第2の実施形態に係る流路切換弁の斜視図である。
図18図18は、図17における分解斜視図である。
図19図19は、図17におけるXIX-XIX断面図である。
図20図20は、流路切換弁の平面図であり、ハウジングから蓋部を取り外した状態を示す図である。
図21図21は、弁体と回転軸と付勢部材とを組み立てた状態の斜視図である。
図22図22は、図21における分解斜視図である。
図23A図23Aは、第1弁体の平面図である。
図23B図23Bは、第1弁体の正面図である。
図24図24は、図23BにおけるXXIV-XXIV断面図である。
図25A図25Aは、第2弁体の平面図である。
図25B図25Bは、第2弁体の正面図である。
図26図26は、本発明の第2の実施形態の変形例の流路切換弁において、弁体と回転軸と付勢部材とを組み合わせた状態の斜視図である。
図27図27は、図26における分解斜視図である。
図28図28は、図26における平面図である。
図29図29は、本発明の第2の実施形態の別の変形例の流路切換弁の平面図である。
図30図30は、図29における回転軸の斜視図である。
図31図31は、本発明の第2の実施形態の更に別の変形例の流路切換弁の平面図であり、ハウジングから蓋部を取り外した状態を示す図である。
図32図32は、流路切換弁が適用される流体回路の例について説明する構成図である。
図33図33は、流路切換弁の第1~第3連通状態について説明する構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の各実施形態について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
以下、図1から図16を参照して、本発明の第1の実施形態に係る流路切換弁1について説明する。
【0011】
まず、図1から図4を参照して、流路切換弁1の全体構成について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の流路切換弁1の斜視図であり、図2は、流路切換弁1の斜視透視図である。図3は弁体20の斜視図であり、図4は弁体20の分解斜視図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、流路切換弁1は、ハウジング10と、ハウジング10の内部に収容されて、流路を切り換える弁体20と、を備えて構成される。
【0014】
以下では、ハウジング10の中心軸A(弁体20の回転中心軸)に沿った方向を「中心軸方向(中心軸A方向)」と称し、ハウジング10の中心軸Aから外径に向かう方向を「径方向」と称し、ハウジング10内で弁体20が回転する方向を「回転方向」と称する。
【0015】
ハウジング10は、円筒状の内壁部11aを有する本体部11と、本体部11の周方向に突出し、内壁部11aと連通する6つのポート40(第1ポート41~第6ポート46)と、本体部11の中心軸A方向の一端を覆う底部12と、本体部11の中心軸A方向の他端部を覆う蓋部13と、を有する。
【0016】
ハウジング10の内部には、中心軸Aまわりに回動可能に収容される弁体20(第1弁体21、第2弁体22)が配置される。弁体20は、回転軸30に対して径方向に変位可能である。図3及び図4に示すように、弁体20は、中心軸Aを中心として対向する位置に配置される一組の第1弁体21及び第2弁体22により構成される。
【0017】
第1弁体21及び第2弁体22には、蓋部13からハウジング10の中心軸A方向に延設し、その回転により第1弁体21及び第2弁体22の回動位置を切り換える回転軸30が備えられる。回転軸30には、弁体20を中心軸Aまわりに回動可能に固定する断面四角形状の先端部31が備えられる。第1弁体21及び第2弁体22は、それぞれ本体部11の内壁部11aに摺接し、回転軸30の回転により、その回動位置が切り換えられることで、複数のポート40の連通状態を切り換える。
【0018】
図1及び図2に示すように、本体部11の周囲には、時計回り方向に複数のポート40(第1ポート41、第2ポート42、第5ポート45、第3ポート43、第4ポート44及び第6ポート46)が配置される。これらポート40は、本体部11の周囲に突出すると共に内壁部11a側に貫通する円筒形状を有する。第1ポート41と第2ポート42とは、周方向に90度の間隔で配置される。
【0019】
第3ポート43及び第4ポート44は、第1ポート41及び第2ポート42に対して中心軸Aを中心として対称となる位置に、互いに周方向に90度の間隔で配置される。すなわち、第3ポート43は、第2ポート42に対して時計回り方向に90度の間隔で配置され、第4ポート44は、第1ポート41に対して反時計回り方向に90度の間隔で配置される。
【0020】
第5ポート45は、第2ポート42と第3ポート43との間に、第2ポート42に対して時計回り方向に45度の間隔で配置される。第6ポート46は、第1ポート41に対して反時計回り方向に45度の間隔で配置される。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して、弁体20の構成を説明する。
【0022】
図3及び図4に示すように、弁体20は、概ね半円形状の第1弁体21と第2弁体22と付勢部材としてのコイルばね25とから構成される。
【0023】
第1弁体21は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸30よりも軟らかい。第1弁体21は、ハウジング10の内壁部11aに当接する第1シール部21aと、第1シール部21aと内壁部11aとに囲繞されて流体が流通する第1空間を形成する第1流路21bと、回転軸30の先端部31が嵌装される支持部21cと、コイルばね25の中心を位置決めするための一組の突起部21dとを有する。支持部21cは、回転軸30の先端部31が挿入される四角孔形状の第1挿入孔211を有する。
【0024】
支持部21cは、図4に示すように、軸方向の断面が略Uの字状に形成され、コの字形状状(Uの字形状)の上側部と下側部それぞれに第1挿入孔211が形成される。支持部21cは、コの字形状(Uの字形状)の開放側から第2弁体22の支持部22cが組み合わさるように構成される。
【0025】
第1挿入孔211の外側には、櫛状部21eを有する。櫛状部21eは、第1挿入孔211の外側から内側に向かって突出する二つの凸部を有して構成され、この凸部は、第1挿入孔211に回転軸30の先端部31を挿入する際の位置決めとなる
【0026】
第2弁体22は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸30よりも軟らかい。第2弁体22は、第1弁体21と同様の形状を有する、すなわち、第2弁体22は、ハウジング10の内壁部11aに当接する第2シール部22aと、第2シール部22aと内壁部11aとに囲繞されて流体が流通する第2空間を形成する第2流路22bと、回転軸30の先端の四角部分が嵌装されて回転軸30を支持する支持部22cと、コイルばね25の中心を位置決めための一組の突起部22dとを有する。支持部22cは、回転軸30の先端部24が挿入される四角孔径状の第2挿入孔221を有する。
【0027】
第1弁体21及び第2弁体22は柔軟性を有するので、内壁部11aへの第1弁体21及び第2弁体22の密着度を高めることができる。
【0028】
支持部22cは、第1弁体21の支持部21cのコの字形状(Uの字形状)部分に挟まれるような形状に形成され、第1弁体21と第2弁体22とが上下方向に相対移動不可能に構成される。第1弁体21と第2弁体22とを組み合わせたときに、第2弁体22の支持部22cが第1弁体21の支持部21cに挾まれ、第1弁体21の第1挿入孔211と第2弁体22の第2挿入孔221とが1つの挿入孔23として構成される。この挿入孔23に回転軸30の先端部31が挿入される。回転軸30の先端部31と挿入孔23は、第1弁体21と第2弁体22とが対向する方向で先端部31の二つの外壁と挿入孔23の二つの内壁とが隙間を有するように構成される。これにより、回転軸30の先端部31に対して、第1弁体21の支持部21cと第2弁体22の支持部22cとが相対移動可能に構成される。なお、第1弁体21と第2弁体22とが対向する方向とは直交する方向においては、挿入孔23の二つの内壁が平行かつ中心軸A方向に面一に構成されており、先端部31の二つの外壁と挿入孔23の二つの外壁とが隙間なく当接する。
【0029】
第1弁体21の突起部21dと第2弁体22の突起部22dとは、巻きばねにより形成されるコイルばね25が挿通される。コイルばね25は、第1弁体21と第2弁体22とをハウジング10の内壁部11aに押し付ける方向に付勢する。これにより、第1弁体21の第1シール部21aと第2弁体22の第2シール部22aとが、ハウジング10の内壁部11aに密着する。
【0030】
前述のように、回転軸30の先端部31に対して、第1弁体21の支持部21cと第2弁体22の支持部22cとが相対移動可能に構成されているので、回転軸30に直交する方向の負荷を抑えつつ、第1弁体21と第2弁体22との付勢方向への相対移動が許容され、コイルばね25の付勢力により、第1弁体21の第1シール部21aと第2弁体22の第2シール部22aとが、ハウジング10の内壁部11aに対して密着される。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、流路切換弁1の切り換え動作について説明する。
【0032】
図5は、本実施形態の流路切換弁1の横方向断面図であり、図1のV-V断面図を示す。図6は、本実施形態の流路切換弁1の縦方向断面図であり、図1のVI-VI断面図を示す。
【0033】
弁体20が図5に示すような位置にある場合は、第1弁体21の第1シール部21aとハウジング10の内壁部11aとで囲まれる第1流路21bが、第1ポート41と第2ポート42とを連通させる。また、第2弁体22の第2シール部22aとハウジング10の内壁部11aとで囲まれる第2流路22bが、第3ポート43と第4ポート44とを連通させる。
【0034】
図6に示すように、第1弁体21の支持部21c及び第2弁体22の支持部22cの周囲は、ハウジング10の内壁部11a及び蓋部13から離間しており、この箇所に第5ポート45と第6ポート46とに連通する第3空間が形成される。第3空間は、第1シール部21a及び第2シール部22aにより、他のポート40に対してシールされる。この第3空間により、第5ポート45と第6ポート46とを連通させる流路である第3流路28が形成される。
【0035】
このようにして、弁体20により第1ポート41~第6ポート46の間の流路が設定され、図5に示すように、第1ポート41と第2ポート42との間、第3ポート43と第4ポート44との間、及び、第5ポート45と第6ポート46との間、が、それぞれ、第1流路21b、第2流路22b、及び、第3流路28により連通する。すなわち、第1弁体21の第1流路21bにより第1ポート41と第2ポート42とが連通し、第2弁体22の第2流路22bにより第3ポート43と第4ポート44とが連通する第1状態が構成される。
【0036】
図7は、本実施形態の流路切換弁1の横方向断面図であり、図5に対して弁体20が時計回り方向に45度回転した状態を示す。
【0037】
弁体20が図7に示すような位置となった場合は、第1流路21bが、第2ポート42と第5ポート45とを連通させる。また、第2流路22bが、第4ポート44と第6ポート46とを連通させる。また、第3流路28が、第3ポート43と第1ポート41とを連通させる。
【0038】
このように、弁体20が図7に示す位置に回動した場合は、第2ポート42と第5ポート45との間、第4ポート44と第6ポート46との間、及び、第3ポート43と第1ポート41との間が、それぞれ、第1流路21b、第2流路22b、及び、第3流路28により連通する。
【0039】
図8は、本実施形態の流路切換弁1の横方向断面図であり、図5に対して弁体20が時計回り方向に90度回転した状態を示す。
【0040】
弁体20が図8に示す位置となった場合は、第1流路21bが、第2ポート42と第5ポート45と第3ポート43とを連通させる。また、第2流路22bが、第4ポート44と第6ポート46と第1ポート41とを連通させる。この場合、第3流路28に対応する位置にはいずれのポート40も開口していない。
【0041】
このように、弁体20が図8に示す位置に回動した場合は、第3ポート43と第5ポート45と第2ポート42との間、及び、第4ポート44と第6ポート46と第1ポート41との間が、それぞれ、第1流路21b、及び、第2流路22bにより連通する。すなわち、第1弁体21の第1流路21bにより第1ポート41と第2ポート42とが連通せず、第2弁体22の第2流路22bにより第3ポート43と第4ポート44とが連通しない第2状態が構成される。
【0042】
このようにして、回転軸30の回転により弁体20がハウジング10の中心軸Aを軸として回動させられることで、ハウジング10に備えられる第1ポート41~第6ポート46の間の流路を切り換えることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ハウジング10の中心軸Aを中心として対称に配置される一組の第1弁体21及び第2弁体22が、それぞれ、第1流路21b及び第2流路22bを備える構成を説明したが、これに限られず、例えば一方の弁体20が対向する内壁部11aに位置するポート40の全てを閉鎖するように構成されていてもよい。すなわち、第2弁体22が第2流路22bを有さず、第2シール部22aで囲まれる箇所全体がハウジング10の内壁部11aに接する構造であって、この部分がポート40を閉鎖するように構成されていてもよい。
【0044】
このように構成した場合は、例えば図5において、第1弁体21が第1流路21bにより第1ポート41と第2ポート42とを連通させる場合に、第2弁体22は、第3ポート43と第4ポート44とをそれぞれ閉鎖させる状態となる。このような構成であっても、コイルばね25の付勢力により、第1弁体21の第1シール部21aと第2弁体22の内壁部11aに対向する箇所とが、ハウジング10の内壁部11aに密着する。
【0045】
次に、図9及び図10を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
【0046】
図9及び図10は、本実施形態の変形例の流路切換弁1の横方向断面図を示す。
【0047】
図9及び図10に示す変形例では、図5で前述した実施形態に対して、ポート40が、第7ポート47及び第8ポート48を更に備えた例を示す。
【0048】
第7ポート47は、第1ポート41と第2ポート42との間に配置され、第1ポート41に対して時計回り方向に45度の位置に配置される。第8ポート48は、第3ポート43と第4ポート44との間に配置され、第3ポート43に対して時計回り方向に45度の位置に配置される。したがって、図9に示す構成では、第1ポート41~第8ポート48の8つのポート40が、等間隔に45度の間隔で配置されている。その他の構成は前述した図5の構成と同様である。
【0049】
このような構成においても同様に、回転軸30の回転により弁体20がハウジング10の中心軸Aを軸として回動させられることで、各ポート40の連通状態が切り換えられる。
【0050】
弁体20が図9に示すような位置にある場合は、第1流路21bが、第1ポート41と第7ポート47と第2ポート42とを連通させる。また、第2流路22bが、第3ポート43と第8ポート48と第4ポート44とを連通させる。また、第3流路28が、第5ポート45と第6ポート46とを連通させる。
【0051】
図10は、図9に対して弁体20が時計回り方向に45度回転した状態を示す。
【0052】
弁体20が図10に示すような位置となった場合は、第1流路21bが、第7ポート47と第2ポート42と第5ポート45とを連通させる。また、第2流路22bが、第8ポート48と第4ポート44と第6ポート46とを連通させる。また、第3流路28が、第3ポート43と第1ポート41とを連通させる。
【0053】
次に、図11及び図12を参照して、本実施形態の別の変形例について説明する。
【0054】
図11及び図12は、本実施形態の別の変形例の流路切換弁1の横方向断面図を示す。
【0055】
図11及び図12に示す変形例では、図5で前述した実施形態に対して、3つのポート40のみを備える例を示す。
【0056】
図11に示すように、本体部11の周囲には、時計回り方向に第6ポート46、第7ポート47及び第5ポート45が配置される。第5ポート45と第6ポート46とは、中心軸Aを中心として180度(一直線)となるように配置される。第7ポート47は、中心軸Aを中心として第6ポート46に対して時計回り方向に45度となる位置に、第5ポート45に対して反時計回り方向に45度となる位置に配置される。
【0057】
このような構成においても同様に、回転軸30の回転により弁体20がハウジング10の中心軸Aを軸として回動させられることで、各ポート40の連通状態が切り換えられる。
【0058】
弁体20が図11に示す位置にある場合は、第3流路28が、第5ポート45と第6ポート46とを連通する。第1流路21bに対応する位置には第7ポート47のみが存在し、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。第2流路22bに対応する位置には、ポート40は存在しない。
【0059】
図12は、図11に対して弁体20が時計回り方向に45度回転した状態を示す。
【0060】
弁体20が図12に示すような位置となった場合は、第1流路21bが、第5ポート45と第7ポート47とを連通させる。また、第2流路22bが、第6ポート46に連通するが、他のポート40には連通しないため、第6ポート46は閉鎖された状態である。第3流路28に対応する位置には、ポート40は存在しないため、ポート40を連通する流路を形成しない。
【0061】
このように、ハウジング10の周囲に設けるポート40の位置及び箇所を変更した場合にも、弁体20の回動位置によって、ポート40の連通状態(又は閉鎖状態)を変更することができる。
【0062】
次に、図13から図16を参照して、本実施形態の更に別の変形例について説明する。
【0063】
図13図14図15及び図16は、本実施形態の更に別の変形例の流路切換弁1の横方向断面図を示す。
【0064】
図13から図16に示す変形例では、図11で前述した実施形態に対して、第2弁体22の構成が異なる場合について説明する。
【0065】
図13に示すように、第2弁体22は、ハウジング10の内壁部11aとの間に形成される第2流路22bと、第1弁体21と第2弁体22と内壁部11aとの間に形成される第3流路28とを互いに連通する連通孔35を有する。連通孔35は、第2流路22bと第3流路28とを常に連通した状態とする。すなわち、第2弁体22は、複数のポートの連通状態を切り換える弁としての機能を有さない。
【0066】
このように構成された変形例において、弁体20が図13に示す位置にある場合は、第3流路28が、第5ポート45と第6ポート46とを連通する。第1流路21bに対応する位置には第7ポート47のみが存在し、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。第2流路22bに対応する位置には、ポート40は存在しないので、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。
【0067】
図14は、図13に対して弁体20が時計回り方向に90度回転した状態を示す。
【0068】
弁体20が図14に示すような位置となった場合は、第3流路28と第2流路22bとが連通孔35により連通しているため、これら流路に対応する位置に存在する第7ポート47と第6ポート46とが連通する。第1流路21bに対応する位置には第5ポート45のみが存在し、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。
【0069】
図15は、図14に対して更に弁体20が時計回り方向に90度回転した状態を示す。
【0070】
弁体20が図15に示すような位置となった場合は、第3流路28と第2流路22bとが連通孔35により連通しているため、これら流路に対応する位置に存在する第5ポート45と第7ポート47と第6ポート46とが互いに連通する。第1流路21bに対応する位置にはポート40が存在しないので、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。
【0071】
図16は、図15に対して更に弁体20が時計回り方向に90度回転した状態を示す。
【0072】
弁体20が図16に示すような位置となった場合は、第3流路28と第2流路22bとが連通孔35により連通しているため、これら流路に対応する位置に存在する第7ポート47と第5ポート45とが連通する。第1流路21bに対応する位置には第6ポート46のみが存在し、複数のポート40間を連通する流路を形成しない。
【0073】
このように、第1弁体21又は第2弁体22のうちのいずれか一方が複数のポートの連通状態を切り換える弁としての機能を有さないように構成することもできる。このような構成であった場合にも、コイルばね25の付勢力により、第1弁体21と第2弁体22とが、互いにハウジング10の内壁部11aに対して密着されるように構成することができる。
【0074】
以上の第1の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0075】
本実施形態では、流路切換弁1は、円筒状の内壁部11aを有し周方向に複数のポート40が開口する本体部11と、本体部11の中心軸A方向の一端を覆う底部12と、本体部11の中心軸A方向の他端を覆う蓋部13と、を有するハウジング10と、ハウジング10の内部に中心軸Aまわりに回動可能に収容され、中心軸Aを中心として配置される一組の第1弁体21及び第2弁体22を有し、内壁部11aに摺接して複数のポート40の連通状態を切り換える弁体20と、中心軸A方向に延設し、第1弁体21と第2弁体22とをそれぞれ径方向に移動可能に接続すると共に、その回転により第1弁体21及び第2弁体22の回動位置を切り換える回転軸30と、第1弁体21と第2弁体22とを内壁部11aに向かって付勢するコイルばね25と、を備える。
【0076】
この構成によると、弁体20を構成する第1弁体21と第2弁体22とが中心軸Aを中心として配置され、コイルばね25によって内壁部11aに向かって付勢されるので、回転軸30に対して曲げ方向の負荷が発生しないようにすることができ、付勢力により、第1弁体21と第2弁体22とのシール性を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1弁体21と第2弁体22とは、中心軸Aを中心として対向する位置に配置されて対向する方向に移動可能であり、コイルばね25は、第1弁体21と第2弁体22との間に配置されて第1弁体21と第2弁体22とを互いに内壁部11aに向かって付勢する。
【0078】
この構成によると、弁体20を構成する第1弁体21と第2弁体22とが中心軸Aに対称に配置され、コイルばね25により互いに内壁部11aに向かって付勢されるので、回転軸30に対して曲げ方向の負荷が発生しないようにすることができ、付勢力により、第1弁体21と第2弁体22とのシール性を高めることができる。
【0079】
また、本実施形態では、第1弁体21体及び第2弁体22は、それぞれ、回転軸30が挿入される挿入孔23を有し、回転軸30が挿入孔23に挿入された状態で、回転軸30の先端部31と挿入孔23との間には、対向する方向に隙間を有し、第1弁体21と第2弁体22とが対向する方向とは直交する方向においては、回転軸30の先端部31と挿入孔23とは隙間なく当接するので、回転軸30に直交する方向の負荷を抑えつつ、第1弁体21と第2弁体22との付勢方向への相対移動が許容され、コイルばね25の付勢力により、第1弁体21と第2弁体22とが、ハウジング10の内壁部11aに対して密着される。
【0080】
また、本実施形態では、ハウジング10の内部は、第1弁体21と内壁部11aに囲繞された第1空間と、第2弁体22と内壁部11aに囲繞された第2空間と、第1弁体21と第2弁体22と内壁部11aとに囲繞された第3空間と、に分割される、ので、弁体20の回動位置によって、ハウジング10に開口する複数のポート40と、これら第1空間、第2空間及び第3空間とを連通させることによって、複数のポート40の連通状態(又は閉鎖状態)を変更することができる。
【0081】
また、本実施形態では、第1弁体21は第1シール部21aを有し、第1空間が、第1シール部21aと内壁部11aとに囲繞されて流体が流通する空間である第1流路21bを構成し、回転軸30が挿入される第1挿入孔211と、を有し、ポート40は、中心軸Aを中心として互いに所定の角度をもって配置される第1ポート41及び第2ポート42を有し、第1弁体21は、回転軸30の回転により、第1ポート41と第2ポート42とを第1流路21bにより連通させる第1状態と、第1ポート41と第2ポート42とが連通しない第2状態と、が切り換えられる。
【0082】
この構成によると、回転軸30の回転により弁体20が回動することによって、第1ポート41と第2ポート42との連通状態が切り換えられる流路切換弁1が構成される。
【0083】
また、本実施形態では、第2弁体22は第2シール部22aを有し、第2空間が、第2シール部22aと内壁部11aとに囲繞されて流体が流通する空間である第2流路22bを構成し、回転軸30が挿通する第2挿入孔221と、を有し、ポート40は、第1ポート41及び第2ポート42と中心軸Aに対して対称となる配置され、中心軸Aを中心として互いに所定の角度をもって配置される第3ポート43及び第4ポート44を更に有し、第1の状態において、第2弁体22が第3ポート43と第4ポート44とを第2流路22bにより連通させ、第2状態において、第2弁体22により第3ポート43と第4ポート44とが連通しない。
【0084】
この構成によると、回転軸30の回転により弁体20が回動することによって、第3ポート43と第4ポート44との連通状態が切り換えられる流路切換弁1が構成される。
【0085】
また、本実施形態では、第3空間が、第1弁体21と第2弁体22との間に流体が流通する第3流路28を構成し、ポート40は、第1ポート41と第3ポート43との間に配置される第5ポート45と、第2ポート42と第4ポート44との間に配置される第6ポート46とを更に有し、第3流路28は、第5ポート45と第6ポート46とを連通させる。
【0086】
この構成によると、回転軸30の回転により弁体20が回動することによって、更に、第5ポート45と第6ポート46との連通状態が切り換えられる流路切換弁1が構成される。
【0087】
(第2の実施形態)
以下、図17から図33を参照して、本発明の第2の実施形態に係る流路切換弁101について説明する。以下に示す各実施形態では、上述した流路切換弁1と異なる点を中心に説明し、同様の機能を有する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
まず、図17から図20を参照して、流路切換弁101の全体構成について説明する。
【0089】
図17は、流路切換弁101の斜視図である。図18は、図17における分解斜視図である。図19は、図17におけるXIX-XIX断面図である。図20は、流路切換弁101の平面図であり、ハウジング110の本体部111から蓋部120を取り外した状態を示す図である。
【0090】
以下では、ハウジング110の中心軸A(弁体130の回転中心軸)に沿った方向を「中心軸方向(中心軸A方向)」と称し、ハウジング110の中心軸Aから外径に向かう方向を「径方向」と称し、ハウジング110内で弁体130が回転する方向を「回転方向」と称する。
【0091】
図17から図19に示すように、流路切換弁101は、ハウジング110と、弁体130と、アクチュエータ180と、を備える。
【0092】
ハウジング110は、本体部111と、蓋部120と、を有する。
【0093】
図18に示すように、本体部111は、略有底円筒形状に形成される。本体部111は、底部111aと、内壁部112と、複数のポート113と、第3流路としての連通部115と、を有する。
【0094】
底部111aは、本体部111の中心軸A方向の一端を覆う。
【0095】
内壁部112は、略有底円筒形状の内周面である。内壁部112は、弁体130が接触した状態で摺動するように滑らかな曲面に形成される。内壁部112には、複数のポート113が形成される。
【0096】
図17及び図18に示すように、ポート113は、本体部111の内周と外周とを連通させる。ポート113は、ハウジング110の中心軸A方向及び周方向に並んで複数設けられる。ポート113は、第1ポート113aと、第2ポート113bと、第3ポート113cと、第4ポート113dと、第5ポート113eと、を有する。
【0097】
第1ポート113aと第2ポート113bと第3ポート113cとは、中心軸A方向の同じ位置にて周方向に順に並んで設けられる。第1ポート113aと第2ポート113bと第3ポート113cとは、第1段としての第1レイヤL1を構成する(図19参照)。第1ポート113aと第2ポート113bと第3ポート113cとは、周方向に所定角度間隔に並んで放射状に設けられる。
【0098】
第4ポート113dと第5ポート113eとは、中心軸A方向の同じ位置にて周方向に順に並んで設けられる。第4ポート113dと第5ポート113eとは、第1レイヤL1よりも底部111aに近い中心軸A方向の位置に設けられる。第4ポート113dと第5ポート113eとは、第2段としての第2レイヤL2を構成する(図19参照)。
【0099】
即ち、複数のポート113は、中心軸A方向に第1レイヤL1と第2レイヤL2との2段に並べて配置される。これに加えて、第3レイヤ(図示省略)や第4レイヤ(図示省略)等を更に並べて配置してもよい。即ち、ポート113は、ハウジング110の中心軸A方向に2段以上並べて配置される。
【0100】
なお、図20に示すように、平面視では、第1ポート113aと第2ポート113bと第3ポート113cと第4ポート113dと第5ポート113eとは、周方向(時計回り方向)に等間隔(ここでは45°間隔)になるように設けられる。
【0101】
図19に示すように、連通部115は、中心軸A方向に並んで形成される後述する各々の第1弁体141と第2弁体142との間の空間を中心軸A方向に連通させる。連通部115は、弁体130によって囲まれていないポート113から流入する流体を、ハウジング110内部における回転軸160やコイルばね170等の隙間を通過させて、他のポート113に導くものである。
【0102】
図20に示すように、ハウジング10は、摺動抵抗低減部としての複数のスリット116を有する。
【0103】
スリット116は、ハウジング110の内壁部112に中心軸A方向に延設される。スリット116は、ポート113が形成される内壁部112と回転軸160を挟んで対向する位置であり、ポート113が形成されない他の位置における内壁部112における弁体130の後述するシール部との接触面積を小さくして、摺動抵抗を小さくする。これにより、アクチュエータ180による駆動トルクを小さくできるので、小型のアクチュエータ180を用いることができる。よって、流路切換弁101全体の小型化が可能である。
【0104】
スリット116は、周方向に隣り合うスリット116どうしを連続する滑らかな曲面で連結するように形成される。隣り合うスリット116の間には、当接面116aが形成される。
【0105】
当接面116aは、内壁部112と同じ曲率で形成される曲面であって、内壁部112の一部を構成する。当接面116aが設けられることにより、弁体130のシール部と当接面116aとが線接触ではなく面接触するので、弁体130のシール部が内壁部112に押し付けられたときに弁体130に作用する力を分散させることができる。
【0106】
なお、スリット116は、第1の実施形態のハウジング10における本体部11の内壁部11aに設けられてもよい。
【0107】
図17から図19に示すように、蓋部120は、本体部111の中心軸A方向の他端を閉塞する。蓋部120は、端板部121と、円筒部122と、を有する。
【0108】
端板部121は、平板状に形成され、本体部111の中心軸A方向の他端を閉塞する。
【0109】
図18に示すように、円筒部122は、端板部121に一端が固定される円筒形状に形成される。円筒部122の外周には、封止部材としての円形のシール部材125が設けられる。円筒部122は、本体部111との間でシール部材125を挟んで固定することで、ハウジング110の内外をシールする。円筒部122の内周には、弁体130の側面との間に環状の環状流路123が形成される。
【0110】
環状流路123は、回転軸160の外周をシールする軸シール165が設けられる部分の外周に設けられる。即ち、軸シール165を設けるために必要な空間を利用しているので、環状流路123が設けられることでハウジング110が大型化することはない。
【0111】
環状流路123は、例えば第1レイヤL1のあるポート113から連通部115に流入した流体が第2レイヤL2の他のポート113から流出する場合に、流体が流入するポート113に近い位置における連通部115だけでなく、流体が流入するポート113から離れた位置における連通部115にも流体を導く。これにより、環状流路123が設けられることで、回転軸160やコイルばね170等によって流体の流通抵抗が高く、流体が導かれにくい部分にも流体を導くことができる。よって、ハウジング110内のあらゆる隙間を流体が流通するように、流体の流れを分散させることができる。したがって、流体の流通抵抗を低減させることができる。
【0112】
図18から図20に示すように、弁体130は、ハウジング110の内部に回転軸160まわりに回転可能に収容される。弁体130は、回転軸160に対して径方向に変位可能である。弁体130は、回転軸160と、複数の付勢部材としてのコイルばね170と、を有する。
【0113】
弁体130は、複数のポート113の連通状態を切り換える。弁体130は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがって設けられる。弁体130は、第1弁体141と、第2弁体142と、を有する。第1弁体141及び第2弁体142は、ハウジング110の中心軸Aに対して径方向に移動可能であって、後述するコイルばね170によってハウジング110の内周面に向けて付勢される。
【0114】
第1弁体141は、概ね半円形状に形成される。第1弁体141は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸160よりも軟らかい。第1弁体141は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがるように中心軸A方向に大きく形成される。第1弁体141は、中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される。
【0115】
第2弁体142は、概ね半円形状に形成される。第2弁体142は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸160よりも軟らかい。第2弁体142は、第1弁体141とハウジング110の中心軸Aを挟んで対向するように設けられる。第2弁体142は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがるように中心軸A方向に大きく形成される。第2弁体142は、中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される。
【0116】
このように、弁体130は、回転軸160を中心として対向する位置に配置される第1弁体141と第2弁体142とを有する。第1弁体141と第2弁体142との少なくとも一方は、複数のポート113のうち中心軸A方向の異なる位置(異なるレイヤ)に配置される各々のポート113に連通するように設けられる。
【0117】
図18及び図19に示すように、回転軸160は、ハウジング110の中心軸A方向に延設される。回転軸160は、第1弁体141と第2弁体142とをそれぞれ対向する方向に移動可能に接続する。回転軸160は、その回転により第1弁体141及び第2弁体142の回動位置を切り換える。
【0118】
図18及び図20に示すように、コイルばね170は、第1弁体141と第2弁体142との間に配置される。コイルばね170は、第1弁体141と第2弁体142とを互いにポート113が形成される内壁部112に向かって付勢する。
【0119】
第1弁体141と第2弁体142との間に設けられる複数のコイルばね170は、中心軸A方向に離間した二か所に配置される。複数のコイルばね170の中心軸は、ポート113の中心軸と中心軸A方向の位置が一致するように配置される。
【0120】
アクチュエータ180は、コントローラ(図示省略)からの指令信号を受けて作動する。アクチュエータ180は、回転軸160に連結され、回転軸160を回転駆動する。
【0121】
次に、図21から図25Bを参照して、弁体130の第1弁体141及び第2弁体142の具体的な構成について説明する。
【0122】
図21は、弁体130と回転軸160とコイルばね170とを組み立てた状態の斜視図である。図22は、図21における分解斜視図である。図23Aは、第1弁体141の平面図である。図23Bは、第1弁体141の正面図である。図24は、図23BにおけるXXIV-XXIV断面図である。図25Aは、第2弁体142の平面図である。図25Bは、第2弁体142の正面図である。
【0123】
図21から図23Bに示すように、第1弁体141は、第1シール部141aと、第1流路141bと、第1封止部141cと、支持部141dと、複数(ここでは4つ)の突起部141eと、摺動部141gと、を有する。
【0124】
第1シール部141aは、ハウジング110の内壁部112に当接する。第1シール部141aは、内壁部112と同じ曲率を有する曲面として形成される。
【0125】
図24に示すように、第1シール部141aは、ポート113が形成される内壁部112と対峙する縁部のうち、厚さ方向における内周側の一部のみが、ハウジング110の内壁部112と当接してシール面を構成する。具体的には、第1シール部141aは、内壁部112と対峙する縁部の厚さの1/2以下になるように形成される。
【0126】
これにより、第1シール部141aと内壁部112との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が小さくなる。よって、アクチュエータ180による駆動トルクを小さくすることができる。また、第1流路141bに流体が流入して圧力が上昇した場合に、第1シール部141aの自由端部が外周に向かって変形しても、第1シール部141aと内壁部112との接触状態を維持できる。よって、第1シール部141aのシール性能を維持することができる。
【0127】
なお、図24に示す第1シール部141aの構造は、弁体130の第2弁体142や、第1の実施形態の弁体20にも適用される。これにより、アクチュエータ180による駆動トルクを小さくできるので、小型のアクチュエータ180を用いることができる。よって、流路切換弁101全体の小型化が可能である。なお、本実施形態では、シール面は弁体130と一体に形成されているが、別材料・別部材により変形自在に形成されてもよい。
【0128】
図21から図23Bに示すように、第1流路141bは、第1シール部141aと内壁部112とに囲繞されて流体が流通する第1空間を形成する。第1流路141bは、第1レイヤL1と第2レイヤL2とにまたがって形成される。第1流路141bは、第1レイヤL1に設けられる2つのポート113と第2レイヤL2に設けられる1つのポート113とを連通させることが可能なように、略L字状に形成される。
【0129】
第1封止部141cは、第1シール部141aと内壁部112とに囲繞されて流体の流れを止める。第1封止部141cは、第1レイヤL1に設けられるポート113のうち、第1流路141bが連通させるポート113の隣の1つのポート113の流体の流れを止めることが可能である。
【0130】
支持部141dには、回転軸160の矩形部160aが嵌装される。支持部141dは、回転軸160の矩形部160aが挿入される四角孔形状の第1挿入孔141fを有する。
【0131】
支持部141dは、第2弁体142の後述する支持部142dのコの字形状(Uの字形状)部分に挟まれるような形状に形成され、第1弁体141と第2弁体142とが上下方向に相対移動不可能に構成される。第1弁体141と第2弁体142とを組み合わせたときに、第2弁体142の支持部142dが第1弁体141の支持部141dに挟まれ、第1弁体141の第1挿入孔141fと第2弁体142の第2挿入孔142fとが1つの挿入孔として構成される。この挿入孔に回転軸160の矩形部160aが挿入される。
【0132】
突起部141eは、第2弁体142の突起部142eと間隔をあけて対向する。突起部141eは、コイルばね170の中心を位置決めするものである。突起部141eには、コイルばね170が取り付けられる。
【0133】
摺動部141gは、第1流路141bの外部に、第1流路141bの一部と中心軸A方向に並ぶように設けられ、内壁部112に対して摺動する。摺動部141gは、周方向に沿って延設され、それ自体は流路を形成しない突起である。これにより、第1弁体141が中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される場合に、摺動部141gが内壁部112に対して摺動することで、第1弁体141の位置がずれたり傾斜したりすることを防止できる。
【0134】
図21から図22及び図25Aから図25Bに示すように、第2弁体142は、第2シール部142aと、第2流路142bと、第2封止部142cと、支持部142dと、複数(ここでは4つ)の突起部142eと、摺動部142gと、を有する。
【0135】
第2シール部142aは、ハウジング110の内壁部112に当接する。第2シール部142aは、内壁部112と同じ曲率を有する曲面として形成される。
【0136】
第2流路142bは、第2シール部142aと内壁部112とに囲繞されて流体が流通する第2空間を形成する。第2流路142bは、第1レイヤL1に形成される。第2流路142bは、第1レイヤL1に設けられる3つのポート113を連通させることが可能なように、略直線状に形成される。
【0137】
第2封止部142cは、第2シール部142aと内壁部112とに囲繞されて流体の流れを止める。第2封止部142cは、第2レイヤL2に設けられるポート113のうち、第2流路142bが連通させる複数のポート113のうち一端のポート113と中心軸A方向に隣り合うポート113の流体の流れを止めることが可能である。
【0138】
支持部142dには、回転軸160の矩形部160aが嵌装される。支持部142dは、回転軸160の矩形部160aが挿入される四角孔形状の第2挿入孔142fを有する。
【0139】
回転軸160の矩形部160aと挿入孔は、第1弁体141と第2弁体142とが対向する方向で矩形部160aの二つの外壁と挿入孔の二つの内壁とが隙間を有するように構成される。これにより、回転軸160の矩形部160aに対して、第1弁体141の支持部141dと第2弁体142の支持部142dとが相対移動可能に構成される。なお、第1弁体141と第2弁体142とが対向する方向と直交する方向においては、挿入孔の二つの内壁が平行かつ中心軸A方向に面一に構成されており、矩形部160aの二つの外壁と挿入孔の二つの外壁とが隙間なく当接する。
【0140】
支持部142dは、軸方向の断面が略Uの字状に形成され、コの字形状状(Uの字形状)の上側部と下側部それぞれに第2挿入孔142fが形成される。支持部142dは、コの字形状(Uの字形状)の開放側から第2弁体142の支持部142dが組み合わさるように構成される。
【0141】
突起部142eは、第1弁体141の突起部141eと間隔をあけて対向する。突起部142eは、コイルばね170の中心を位置決めするものである。突起部142eには、コイルばね170が取り付けられる。
【0142】
第1弁体141の突起部141eと第2弁体142の突起部142eとは、コイルばね170が挿通される。コイルばね170は、第1弁体141と第2弁体142とをハウジング110の内壁部112に押し付ける方向に付勢する。これにより、第1弁体141の第1シール部141aと第2弁体142の第2シール部142aとが、ハウジング110の内壁部112に密着する。
【0143】
上述したように、回転軸160の矩形部160aに対して、第1弁体141の支持部141dと第2弁体142の支持部142dとが相対移動可能に構成されているので、回転軸160に直交する方向の負荷を抑えつつ、第1弁体141と第2弁体142との付勢方向への相対移動が許容され、コイルばね170の付勢力により、第1弁体141の第1シール部141aと第2弁体142の第2シール部142aとが、ハウジング110の内壁部112に対して密着する。
【0144】
複数のコイルばね170のうち、流体の流路が大きく形成されるレイヤ(ここでは第1レイヤL1)に設けられる一対のコイルばね170は、流体の流路が小さく形成されるレイヤ(ここでは第2レイヤL2)に設けられるコイルばね170よりも付勢力が大きく設定される。即ち、複数のコイルばね170のうち、弁体130が流体の圧力を受ける受圧面積が大きい位置に設けられる一方は、受圧面積が小さい位置に設けられる他方よりも付勢力が大きい。
【0145】
即ち、第2流路142b及び第2封止部142cに流体が流入して、圧力が上昇した場合に、圧力が大きい方のコイルばね170の付勢力が大きく、圧力が小さい方のコイルばね170の付勢力が小さい。これにより、流体の圧力が作用した場合に、第2シール部142aを内壁部112に安定して押し付けることができると共に、必要以上に押し付け力を大きくする必要がないので、第2シール部142aの耐久性を向上させることが可能である。
【0146】
摺動部142gは、第2流路142bの外部に、第2流路142bの一部と中心軸A方向に並ぶように設けられ、内壁部112に対して摺動する。摺動部142gは、周方向に沿って延設され、それ自体は流路を形成しない突起である。これにより、第2弁体142が中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される場合に、摺動部142gが内壁部112に対して摺動することで、第2弁体142の位置がずれたり傾斜したりすることを防止できる。
【0147】
次に、図26から図28を参照して、本実施形態の変形例について説明する。
【0148】
図26は、本発明の第2の実施形態の変形例の流路切換弁101において、弁体230と回転軸260とコイルばね170,271とを組み合わせた状態の斜視図である。図27は、図26における分解斜視図である。図28は、図26における平面図である。
【0149】
図26から図28に示すように、流路切換弁101は、ハウジング110(図17から図19参照)と、弁体230と、回転軸260と、アクチュエータ180(図17から図19参照)と、を備える。
【0150】
ハウジング110及びアクチュエータ180の構成は、第2の実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0151】
図26及び図27に示すように、弁体230は、ハウジング110の内部に回転軸260まわりに回転可能に収容される。弁体230は、回転軸260に対して径方向に変位可能である。弁体230は、回転軸260と、複数の付勢部材としてのコイルばね170と、単一の付勢部材としてのコイルばね271と、を有する。
【0152】
弁体230は、複数のポート113(図17から図20参照)の連通状態を切り換える。弁体230は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがって設けられる。弁体230は、第1弁体241と、第2弁体242と、を有する。第1弁体241及び第2弁体242は、ハウジング110の中心軸Aに対して径方向に移動可能であって、コイルばね170及びコイルばね271によってハウジング110の内周面に向けて付勢される。
【0153】
図28に示すように、第1弁体241は、概ね半円形状に形成される。第1弁体241は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸260よりも軟らかい。第1弁体241は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがるように中心軸A方向に大きく形成される。第1弁体241は、中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される。
【0154】
第2弁体242は、概ね半円形状に形成される。第2弁体242は、本体部11よりも軟らかく、かつ回転軸260よりも軟らかい。第2弁体242は、第1弁体241とハウジング110の中心軸Aを挟んで対向するように設けられる。第2弁体242は、第1レイヤL1及び第2レイヤL2にまたがるように中心軸A方向に大きく形成される。第2弁体242は、中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される。
【0155】
このように、弁体230は、回転軸260を中心として対向する位置に配置される第1弁体241と第2弁体242とを有する。第1弁体241と第2弁体242との少なくとも一方は、複数のポート113のうち中心軸A方向の異なる位置(異なるレイヤ)に配置される各々のポート113に連通するように設けられる。
【0156】
続いて、弁体230の第1弁体241及び第2弁体242の具体的な構成について説明する。
【0157】
第1弁体241は、第1シール部141aと、第1流路141bと、第1封止部141cと、複数(ここでは4つ)の突起部141eと、単一の突起部241fと、摺動部141gと、突起部241hと、曲面部241jと、を有する。
【0158】
第1シール部141a,第1流路141b,第1封止部141c,突起部141e,及び摺動部141gについては、上述した第2の実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0159】
突起部241fは、第1弁体241の略中央に設けられる。具体的には、突起部241fは、周方向に隣り合う一対の突起部141eの略中央、かつ軸方向に隣り合う一対の突起部141eの略中央に設けられる。突起部241fは、曲面部241jから径方向内周に向かって突出する。
【0160】
突起部241fは、第2弁体242の突起部242fと間隔をあけて対向する。突起部241fは、コイルばね271の中心を位置決めするものである。突起部241fには、コイルばね271が取り付けられる。
【0161】
突起部241hは、第1弁体241の中心軸A方向の両端面から外部に向かって中心軸A方向に突出する。突起部241hは、第1弁体241の第1シール部141aに沿うように円弧状に形成される。蓋部120側に設けられる一方の突起部241hは、蓋部120の円筒部122の内側の端面に設けられる凹部(図示省略)に進入する。本体部111の底部111a側に設けられる他方の突起部241hは、底部111aに設けられる凹部(図示省略)に進入する。突起部241hは、第1弁体241の外周に向かうほど突起部241hの高さが大きくなるような摺接部241iを有する。
【0162】
摺接部241iは、凹部に設けられる傾斜部(図示省略)と当接する。これにより、第1流路141bを流通する流体の圧力によって第1弁体241が中心軸A方向の外側に向かって変形すると、凹部の傾斜部に沿って摺接部241iが摺動することで、第1シール部141aをハウジング110の内壁部112に押し付ける力が作用する。これにより、流体の圧力を利用して、第1シール部141aを内壁部112に対すて密着させることができる。
【0163】
曲面部241jは、第1弁体241の内周面に設けられる。曲面部241jは、第1弁体241の外周面と同心円状の曲面である。曲面部241jが設けられることで、第1弁体241が変形しやすくなるので、内壁部112と第1弁体241との公差を吸収して、密着度を向上させることができる。
【0164】
第2弁体242は、第2シール部142aと、第2流路142bと、第2封止部142cと、複数(ここでは4つ)の突起部142eと、単一の突起部242fと、摺動部142gと、突起部242hと、曲面部242jと、を有する。
【0165】
第2シール部142a,第2流路142b,第2封止部142c,突起部142e,及び摺動部142gについては、上述した第2の実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0166】
突起部242fは、第2弁体242の略中央に設けられる。具体的には、突起部242fは、周方向に隣り合う一対の突起部142eの略中央、かつ軸方向に隣り合う一対の突起部142eの略中央に設けられる。突起部242fは、曲面部242jから径方向内周に向かって突出する。
【0167】
突起部242fは、第1弁体241の突起部241fと間隔をあけて対向する。突起部242fは、コイルばね271の中心を位置決めするものである。突起部242fには、コイルばね271が取り付けられる。
【0168】
第1弁体241の突起部241fと第2弁体242の突起部242fとは、コイルばね271が挿通される。このコイルばね271は、回転軸260の後述する貫通孔265を挿通する。コイルばね271は、コイルばね170と共に、第1弁体241と第2弁体242とをハウジング110の内壁部112に押し付ける方向に付勢する。これにより、第1弁体241の第1シール部141aと第2弁体242の第2シール部142aとが、ハウジング110の内壁部112に密着する。
【0169】
突起部242hは、第2弁体242の中心軸A方向の両端面から外部に向かって中心軸A方向に突出する。突起部242hは、第2弁体242の第2シール部142aに沿うように円弧状に形成される。蓋部120側に設けられる一方の突起部242hは、蓋部120の円筒部122の内側の端面に設けられる凹部(図示省略)に進入する。本体部111の底部111a側に設けられる他方の突起部242hは、底部111aに設けられる凹部(図示省略)に進入する。突起部242hは、第2弁体242の外周に向かうほど突起部242hの高さが大きくなるような摺接部242iを有する。
【0170】
摺接部242iは、凹部に設けられる傾斜部(図示省略)と当接する。これにより、第2流路142bを流通する流体の圧力によって第2弁体242が中心軸A方向の外側に向かって変形すると、凹部の傾斜部に沿って摺接部242iが摺動することで、第2シール部142aをハウジング110の内壁部112に押し付ける力が作用する。これにより、流体の圧力を利用して、第2シール部142aを内壁部112に対すて密着させることができる。
【0171】
曲面部242jは、第2弁体242の内周面に設けられる。曲面部242jは、第2弁体242の外周面と同心円状の曲面である。曲面部242jが設けられることで、第2弁体242が変形しやすくなるので、内壁部112と第2弁体242との公差を吸収して、密着度を向上させることができる。
【0172】
図26から図28に示すように、回転軸260は、ハウジング110の中心軸A方向に延設される。回転軸260は、第1弁体241と第2弁体242とをそれぞれ対向する方向に移動可能に接続する。回転軸260は、その回転により第1弁体241及び第2弁体242の回動位置を切り換える。
【0173】
回転軸260は、複数の腕部261と、貫通孔265と、を有する。
【0174】
腕部261は、回転軸260から外側に向かって延びる。腕部261は、弁体230に回転力を伝達する。腕部261は、回転軸260から当該回転軸260の接線方向に延びる第1腕部262及び第2腕部263を有する。
【0175】
第1腕部262は、中心軸A方向に離間して一対設けられる。第1腕部262は、第1当接面262aと、第1接続面262bと、貫通孔262cと、を有する。
【0176】
第1当接面262aは、第1弁体241と当接する平面である。第1当接面262aは、回転軸260が一方向(図28では時計回り方向)に回転するときに、第1弁体241を一方向に回転させる力を伝達する。
【0177】
第1接続面262bは、コイルばね170を介して第2弁体242と接続される平面である。第1接続面262bは、回転軸260が他方向(図28では反時計回り方向)に回転するときに、第2弁体242を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0178】
貫通孔262cは、第1当接面262aと第1接続面262bとを貫通する。貫通孔262cには、第1弁体241の突起部141eが挿通する。なお、貫通孔262cを挿通する突起部141eは、貫通孔262cを挿通しない突起部141eよりも第1腕部262の厚さの分だけ長く形成されている。
【0179】
第2腕部263は、第1腕部262に対して180度の位相差の位置に設けられる。即ち、第2腕部263は、第1腕部262に対して回転対称の位置に設けられる。第2腕部263は、中心軸A方向に離間して一対設けられる。第2腕部263は、第2当接面263aと、第2接続面263bと、貫通孔263cと、を有する。
【0180】
第2当接面263aは、第2弁体242と当接する平面である。第2当接面263aは、回転軸260が一方向(図28では時計回り方向)に回転するときに、第2弁体242を一方向に回転させる力を伝達する。
【0181】
第2接続面263bは、コイルばね170を介して第1弁体241と接続される平面である。第2接続面263bは、回転軸260が他方向(図28では反時計回り方向)に回転するときに、第1弁体241を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0182】
貫通孔263cは、第2当接面263aと第2接続面263bとを貫通する。貫通孔263cには、第2弁体242の突起部142eが挿通する。なお、貫通孔263cを挿通する突起部142eは、貫通孔263cを挿通しない突起部142eよりも第2腕部263の厚さの分だけ長く形成されている。
【0183】
貫通孔265は、第1腕部262と第2腕部263との略中央に形成される。貫通孔265は、コイルばね170及びコイルばね271の中心軸方向に貫通する。貫通孔265は、略矩形状に設けられる。貫通孔265には、コイルばね271が挿通する。
【0184】
コイルばね271は、第1弁体241と第2弁体242との間に配置される。コイルばね271は、第1弁体241と第2弁体242とを互いにポート113が形成される内壁部112に向かって付勢する。コイルばね271が設けられることで、第1弁体241と第2弁体242との周方向の略中央を内壁部112に向かって付勢することができる。これにより、第1弁体241と第2弁体242とは、コイルばね170の付勢力によって周方向両端部近傍が内壁部112に押し付けられると共に、コイルばね271の付勢力によって周方向中央部近傍が内壁部112に押し付けられる。したがって、第1弁体241と第2弁体242とを、周方向の全域にわたって内壁部112に押し付けることができる。
【0185】
以上のように、腕部261が設けられることで、腕部261から第1弁体241及び第2弁体242に回転力を付与することができるので、弁体230の構造を簡素化することができる。また、第1弁体241及び第2弁体242を成形するための樹脂材料の使用量を低減させることができる。
【0186】
また、コイルばね170とコイルばね271とが設けられることで、付勢部材の個数を増加させて付勢される箇所を多くできるので、個々のコイルばね170,271の付勢力を低減させることができる。
【0187】
更に、本変形例に係る弁体230を他方向(図28では半時計回り方向)に回転させる場合には、腕部261は、コイルばね170を押すことで縮みながら弁体230の回転方向後端側を押して駆動する一方で、弁体230の回転方向前端側への付勢力が作用しなくなる。これにより、弁体230の回転時の摺動抵抗が減少し、作動トルクが低減する効果が得られる。
【0188】
また、第1弁体241及び第2弁体242は柔軟性を有するので、内壁部112への第1弁体241及び第2弁体242の密着度を高めることができる。
【0189】
次に、図29及び図30を参照して、本実施形態の別の変形例について説明する。
【0190】
図29は、本発明の第2の実施形態の別の変形例の流路切換弁101の平面図である。図30は、図29における回転軸360の斜視図である。
【0191】
この変形例は、図26から図28に示す変形例とは、回転軸360に設けられる腕部361の位置が相違する。
【0192】
回転軸360は、複数の腕部361と、貫通孔265と、を有する。
【0193】
腕部361は、回転軸360から外側に向かって延びる。腕部361は、弁体230に回転力を伝達する。腕部361は、回転軸360から当該回転軸360の径方向に延びる第1腕部362及び第2腕部363を有する。
【0194】
第1腕部362は、中心軸A方向に離間して一対設けられる。第1腕部362は、第1接続面362aと、第2接続面362bと、座繰り部362cと、を有する。
【0195】
第1接続面362aは、コイルばね170を介して第1弁体241と接続される平面である。第1接続面362aは、回転軸260が一方向(図29では時計回り方向)に回転するときに、第1弁体241を一方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0196】
第2接続面362bは、コイルばね170を介して第2弁体242と接続される平面である。第2接続面362bは、回転軸360が他方向(図29では反時計回り方向)に回転するときに、第2弁体242を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0197】
座繰り部362cは、第1接続面362aと第2接続面362bとに各々凹状に形成される。座繰り部362cには、コイルばね170の端部が当接する。なお、この変形例では貫通孔は設けられないので、すべての突起部141eは同じ長さに形成されている。
【0198】
第2腕部363は、第1腕部362に対して180度の位相差の位置に設けられる。即ち、第2腕部363は、第1腕部362に対して回転対称の位置に設けられる。第2腕部363は、中心軸A方向に離間して一対設けられる。第2腕部363は、第3接続面363aと、第4接続面363bと、座繰り部363cと、を有する。
【0199】
第3接続面363aは、コイルばね170を介して第2弁体242と接続される平面である。第3接続面363aは、回転軸360が一方向(図29では時計回り方向)に回転するときに、第2弁体242を一方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0200】
第4接続面363bは、コイルばね170を介して第1弁体241と接続される平面である。第4接続面363bは、回転軸360が他方向(図29では反時計回り方向)に回転するときに、第1弁体241を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0201】
座繰り部363cは、第3接続面363aと第4接続面363bとに各々凹状に形成される。座繰り部363cには、コイルばね170の端部が当接する。なお、この変形例では貫通孔は設けられないので、すべての突起部142eは同じ長さに形成されている。
【0202】
貫通孔265及びコイルばね271については、図26から図28に示す変形例と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0203】
以上のように、腕部361が設けられることで、腕部361から第1弁体241及び第2弁体242に回転力を付与することができるので、弁体230の構造を簡素化することができる。また、第1弁体241及び第2弁体242を成形するための樹脂材料の使用量を低減させることができる。
【0204】
また、本変形例においては、一対の腕部361は、第1弁体241と第2弁体242とにそれぞれコイルばね170を介して接続されている。そのため、弁体230を回転させる際には、腕部361がコイルばね170を押すことで縮みながら弁体230の回転方向後端側を押して駆動する一方で、弁体230の回転方向前端側のコイルばね170は伸びることにより付勢力が低下する。これにより、弁体230の回転時の摺動抵抗が減少し、作動トルクが低減する効果が得られる。なお、本変形例の場合、腕部361の両面と弁体230との間にそれぞれコイルばね170が設けられているので、回転方向によらず作動トルクの低減効果が得られる。
【0205】
次に、図31を参照して、本実施形態の更に別の変形例について説明する。
【0206】
図31は、本発明の第2の実施形態の更に別の変形例の流路切換弁401の平面図であり、ハウジング410から蓋部(図示省略)を取り外した状態を示す図である。
【0207】
この変形例は、弁体430が第1弁体441及び第2弁体442に加えて第3弁体443及び第4弁体444を有する点で、図29及び図30に示す変形例とは相違する。
【0208】
弁体430は、ハウジング410の内部に回転軸460まわりに回転可能に収容される。弁体430は、回転軸460に対して径方向に変位可能である。弁体430は、回転軸460と、複数の付勢部材としてのコイルばね170と、を有する。
【0209】
弁体430は、複数のポート(図示省略)の連通状態を切り換える。弁体430は、第1弁体441と、第2弁体442と、第3弁体443と、第4弁体444と、を有する。第1弁体441,第2弁体442,第3弁体443,及び第4弁体444は、ハウジング110の中心軸Aに対して径方向に移動可能であって、後述するコイルばね170によってハウジング410の内周面(内壁部412)に向けて付勢される。
【0210】
第1弁体441は、中心軸Aを中心とした角度が概ね90°になるような円弧形状に形成される。第1弁体441は、ハウジング410の本体部411よりも軟らかく、かつ回転軸460よりも軟らかい。第1弁体441は、周方向の大きさを除き第1弁体241と同様の構成であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0211】
第2弁体442は、中心軸Aを中心とした角度が概ね90°になるような円弧形状に形成される。第2弁体442は、ハウジング410の本体部411よりも軟らかく、かつ回転軸460よりも軟らかい。第2弁体442は、第1弁体441とハウジング410の中心軸Aを挟んで対向するように設けられる。第2弁体442は、周方向の大きさを除き第2弁体242と同様の構成であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0212】
第3弁体443は、中心軸Aを中心とした角度が90°未満(ここでは概ね60°)になるような円弧形状に形成される。第3弁体443は、ハウジング410の本体部411よりも軟らかく、かつ回転軸460よりも軟らかい。
【0213】
第3弁体443は、第3シール部443aと、複数の突起部443eと、突起部443hと、突起部443hと、摺接部443iと、を有する。第3シール部443a,突起部443e,突起部443h,及び摺接部443iは、第1シール部141a,突起部141e,突起部241h,及び摺接部241iと同様の構成であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0214】
第4弁体444は、中心軸Aを中心とした角度が90°未満(ここでは概ね60°)になるような円弧形状に形成される。第4弁体444は、ハウジング410の本体部411よりも軟らかく、かつ回転軸460よりも軟らかい。第4弁体444は、第3弁体443とハウジング410の中心軸Aを挟んで対向するように設けられる。
【0215】
第4弁体444は、第4シール部444aと、複数の突起部444eと、突起部444hと、摺接部444iと、を有する。第4シール部444a,突起部444e,突起部444h,及び摺接部444iは、第2シール部142a,突起部142e,突起部242h,及び摺接部242iと同様の構成であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0216】
第1弁体441と第2弁体442とが対向する方向は、第3弁体443及び第4弁体444が対向する方向と直交している。即ち、第1弁体441,第4弁体444,第2弁体442,及び第3弁体443は、回転方向に順に90°位相差で設けられる。
【0217】
回転軸460は、ハウジング410の中心軸A方向に延設される。回転軸460は、第1弁体441と第2弁体442とをそれぞれ対向する方向に移動可能に接続し、第3弁体443と第4弁体444とをそれぞれ対向する方向に移動可能に接続する。回転軸460は、その回転により第1弁体441,第2弁体442,第3弁体443,及び第4弁体444の回動位置を切り換える。
【0218】
回転軸460は、複数の腕部461を有する。
【0219】
腕部461は、回転軸460から外側に向かって延びる。腕部461は、弁体430に回転力を伝達する。腕部461は、回転軸460から当該回転軸460の径方向に延びる第1腕部462及び第2腕部463を有する。
【0220】
第1腕部462は、中心軸A方向に離間して一対設けられる(図示省略)。第1腕部462は、第1接続面462aと、第2接続面462bと、第3接続面462cと、を有する。
【0221】
第1接続面462aは、コイルばね170を介して第1弁体441と接続される平面である。第1接続面462aは、回転軸460が一方向(図31では時計回り方向)に回転するときに、第1弁体441を一方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0222】
第2接続面462bは、コイルばね170を介して第2弁体442と接続される平面である。第2接続面462bは、回転軸460が他方向(図31では反時計回り方向)に回転するときに、第2弁体442を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0223】
第3接続面462cは、第1接続面462aと第2接続面462bとの間に設けられる。第3接続面462cは、第1接続面462a及び第2接続面462bに対して直交する平面である。第3接続面462cは、第1腕部462の端面から凹状に形成される。第3接続面462cには、複数のコイルばね170が当接する。第3接続面462cは、回転軸460が回転するときに、第3弁体443を回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0224】
第2腕部463は、第1腕部462に対して180度の位相差の位置に設けられる。即ち、第2腕部463は、第1腕部462に対して回転対称の位置に設けられる。第2腕部463は、中心軸A方向に離間して一対設けられる(図示省略)。第2腕部463は、第4接続面463aと、第5接続面463bと、第6接続面463cと、を有する。
【0225】
第4接続面463aは、コイルばね170を介して第2弁体442と接続される平面である。第4接続面463aは、回転軸460が一方向(図31では時計回り方向)に回転するときに、第2弁体442を一方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0226】
第5接続面463bは、コイルばね170を介して第1弁体441と接続される平面である。第5接続面463bは、回転軸460が他方向(図31では反時計回り方向)に回転するときに、第1弁体441を他方向に回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0227】
第6接続面463cは、第4接続面463aと第5接続面463bとの間に設けられる。第6接続面463cは、第4接続面463a及び第5接続面463bに対して直交する平面である。第6接続面463cは、第2腕部463の端面から凹状に形成される。第6接続面463cには、複数のコイルばね170が当接する。第6接続面463cは、回転軸460が回転するときに、第4弁体444を回転させる力を、コイルばね170を介して伝達する。
【0228】
以上のように、腕部461が設けられることで、腕部461から第1弁体441,第2弁体442,第3弁体443,及び第4弁体444に回転力を付与することができるので、弁体430の構造を簡素化することができる。また、第1弁体441,第2弁体442,第3弁体443,及び第4弁体444を成形するための樹脂材料の使用量を低減させることができる。
【0229】
また、腕部461のように、中心軸Aを中心として所定の厚さ(所定の幅)を有するようにしてもよい。換言すると、腕部461のように、周方向(中心軸Aの回転方向)に所定角度の厚さ(幅)を有するようにしてもよい。即ち、腕部461は、弁体430を回転させるために少なくとも二点が関与する(直接当接するか、又はコイルばね170を介して間接的に接続される)ものであればよい。
【0230】
また、腕部461のように、第1接続面462a(第4接続面463a)と第2接続面462b(第5接続面463b)との間に第3接続面462c(第6接続面463c)を設けて、第3接続面462c(第6接続面463c)に更にコイルばね170を設けて他の弁体430(第3弁体443及び第4弁体444)を付勢するようにしてもよい。
【0231】
また、本変形例においては、腕部461が、弁体430のそれぞれにコイルばね170を介して接続されている。そのため、弁体430を回転させる際には、腕部461がコイルばね170を押すことで縮みながら弁体430の回転方向後端側を押して駆動する一方で、弁体430の回転方向前端側のコイルばね170は伸びることにより付勢力が低下する。これにより、弁体430の回転時の摺動抵抗が減少し、作動トルクが低減する効果が得られる。なお、本変形例の場合、腕部461と弁体430との間にそれぞれコイルばね170が設けられているので、回転方向によらず作動トルクの低減効果が得られる。
【0232】
なお、上記実施形態及び各変形例では、回転軸160,260,360,460のまわりに一対若しくは4つの弁体130,230,430を有するものを例示している。しかしながら、偶数個に限らず、回転方向に奇数個(3つ,5つ,等)の弁体130,230,430を配置してもよい。弁体130,230,430を奇数個設けた場合にも、弁体130,230,430の回転方向前端側及び後端側にそれぞれコイルばね170を配置することで、上記実施形態及び各変形例と同様に、密着度を高めつつ作動トルクの低減効果を得られる。
【0233】
次に、図32及び図33を参照して、流路切換弁101が適用される流体回路300について説明する。
【0234】
図32は、流路切換弁101が適用される流体回路300の例について説明する構成図である。図33は、流路切換弁101の第1~第3連通状態について説明する構成図である。
【0235】
図32に示すように、流体回路300は、第1回路としてのパワートレイン回路310と、第2回路としてのバッテリ回路320と、第3回路としてのラジエータ回路330と、分岐部340と、を備える。流体回路300は、車両(図示省略)に搭載されるシステムであって、駆動系発熱体としての電動モータ312を冷却して、蓄電池としてのバッテリ322の温度を調整するものである。流体回路300には、流体としての冷却水が循環する。
【0236】
パワートレイン回路310には、電動ポンプ311と、電動モータ312と、が設けられる。パワートレイン回路310には、流路切換弁101の第2ポート113bから流出した冷却水がラジエータ331及び分岐部340を介して流入する。パワートレイン回路310では、電動ポンプ311が冷却水を流通させ、電動モータ312を通過させる。パワートレイン回路310から流出する冷却水は、第3ポート113cから再び流路切換弁101に流入する。
【0237】
バッテリ回路320には、電動ポンプ321と、バッテリ322と、冷却水-冷媒熱交換器としてのチラー323と、が設けられる。バッテリ回路320には、流路切換弁101の第5ポート113eから流出した冷却水が流入する。バッテリ回路320では、電動ポンプ321が冷却水を流通させ、バッテリ322及びチラー323を通過させる。チラー323は、車室(図示省略)内の空調を行う空調装置の冷凍サイクル回路(図示省略)内を流通する冷媒と冷却水との間で熱交換を行う。チラー323は、冷却水の熱によって冷媒を加熱すること、及び冷媒の熱によって冷却水を加熱することが可能である。バッテリ回路320から流出する冷却水は、第1ポート113aから再び流路切換弁101に流入する。
【0238】
ラジエータ回路330には、ラジエータ331が設けられる。ラジエータ回路330には、流路切換弁101の第2ポート113bから流出した冷却水が流入する。ラジエータ回路330には、電動ポンプは設けられない。ラジエータ回路330内の冷却水は、流路切換弁101の連通状態に基づき、電動ポンプ311,321のいずれか又は両方の組み合わせによってラジエータ331を流通する。ラジエータ回路330から流出する冷却水は、分岐部340によって分岐し、一部がパワートレイン回路310に導かれ、残りが第4ポート113dから再び流路切換弁101に流入する。
【0239】
図33に示すように、流体回路300では、弁体130を回転させ、流路切換弁101における複数のポート113の連通状態を、第1連通状態,第2連通状態,又は第3連通状態に切り換える。これにより、流体回路300内の冷却水の流れを制御している。
【0240】
第1連通状態において、弁体130では、第2弁体142の第2流路142bが第1ポート113aと第2ポート113bと第3ポート113cとを連通させる。また、第1弁体141と第2弁体142とは、第4ポート113dと第5ポート113eとを連通部115に連通させる。即ち、第4ポート113dと第5ポート113eとは、連通部115を介して連通する。
【0241】
これにより、パワートレイン回路310とバッテリ回路320とラジエータ回路330とをすべて連結することができる。このとき、ラジエータ回路330内の冷却水は、電動ポンプ311,321の両方の組み合わせによって流通する。
【0242】
第2連通状態において、弁体130では、第1弁体141の第1流路141bが第3ポート113cと第4ポート113dとを連通させ、第1封止部141cが第2ポート113bを封止する。また、第1弁体141と第2弁体142とは、第1ポート113aと第5ポート113eとを連通部115に連通させる。即ち、第1ポート113aと第5ポート113eとは、連通部115を介して連通する。
【0243】
これにより、パワートレイン回路310とバッテリ回路320とラジエータ回路330とをすべて独立させることができる。このとき、ラジエータ回路330には電動ポンプは設けられないので、ラジエータ回路330内の冷却水は流通しない。
【0244】
第3連通状態において、弁体130では、第2弁体142の第2流路142bが第2ポート113bと第3ポート113cとを連通させ、第2封止部142cが第4ポート113dを封止する。また、第1弁体141と第2弁体142とは、第1ポート113aと第5ポート113eとを連通部115に連通させる。即ち、第1ポート113aと第5ポート113eとは、連通部115を介して連通する。
【0245】
これにより、パワートレイン回路310とラジエータ回路330とを連結し、バッテリ回路320を独立させることができる。
【0246】
以上のように、流体回路300では、流路切換弁101における複数のポート113の連通状態が切り換えられることで、第1~第3連通状態に切り換えることが可能である。また、各連通状態において、電動モータ312の冷却と、バッテリ322の温度の調整と、チラー323を介した車室内の空調に用いられる冷媒の加熱及び冷却と、が可能である。
【0247】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏すると共に、以下に示す効果を奏する。
【0248】
第1流路141bと第2流路142bとの少なくとも一方は、複数のポート113のうち中心軸A方向の異なる位置に配置される各々のポート113に連通するように設けられ、コイルばね170は、複数設けられて中心軸A方向に離間した二か所に配置される。
【0249】
また、複数のコイルばね170の中心軸は、ポート113の中心軸と中心軸A方向の位置が一致するように配置される。
【0250】
また、複数のコイルばね170のうち、弁体130が流体の圧力を受ける受圧面積が大きい中心軸A方向の位置に設けられる一方は、受圧面積が小さい中心軸A方向の位置に設けられる他方よりも付勢力が大きい。
【0251】
これらの構成によれば、流体の圧力が作用した場合に、第1シール部141a及び第2シール部142aを内壁部112に安定して押し付けることができると共に、必要以上に押し付け力を大きくする必要がないので、第1シール部141a及び第2シール部142aの耐久性を向上させることが可能である。
【0252】
また、弁体130は、内壁部112と対峙する縁部のうち、厚さ方向における内周側の一部のみが、内壁部112と当接してシール面を構成する。
【0253】
この構成によれば、第1シール部141a(第2シール部142a)と内壁部112との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が小さくなる。よって、アクチュエータ180による駆動トルクを小さくすることができる。また、第1流路141b(第2流路142b)に流体が流入して圧力が上昇した場合に、第1シール部141a(第2シール部142a)の自由端部が外周に向かって変形しても、第1シール部141a(第2シール部142a)と内壁部112との接触状態を維持できる。よって、第1シール部141a(第2シール部142a)のシール性能を維持することができる。
【0254】
また、ハウジング110は、ポート113が形成される内壁部112と回転軸160を挟んで対向する他の位置における内壁部112における弁体130との摺動抵抗を小さくする摺動抵抗低減部を有する。この摺動抵抗低減部は、ハウジング110の内壁部112に中心軸A方向に延設されるスリット116である。
【0255】
この構成によれば、アクチュエータ180による駆動トルクを小さくできるので、小型のアクチュエータ180を用いることができる。よって、流路切換弁101全体の小型化が可能である。
【0256】
第1流路141bと第2流路142bとの少なくとも一方は、複数のポート113のうち中心軸A方向の異なる位置に配置される各々のポート113に連通するように設けられ、第1弁体141と第2弁体142との少なくとも一方は、第1流路141b及び第2流路142bとの外部に、第1流路141b及び第2流路142bとの一部と中心軸A方向に並ぶように設けられ、内壁部112に対して摺動する摺動部141g(摺動部142g)を有する。
【0257】
この構成によれば、第1弁体141と第2弁体142との少なくとも一方が中心軸A方向と周方向との少なくとも一方に非対称に形成される場合に、摺動部141g(摺動部142g)が内壁部112に対して摺動することで、第1弁体141(第2弁体142)の位置がずれたり傾斜したりすることを防止できる。
【0258】
また、回転軸260は、当該回転軸260から外側に向かって延びて弁体230に回転力を伝達する腕部261を有する。
【0259】
また、腕部261は、回転軸260から当該回転軸260の接線方向に延びる第1腕部262及び第2腕部263を有し、第1腕部262は、第1弁体241と当接する第1当接面262aと、コイルばね170を介して第2弁体242と接続される第1接続面262bと、を有し、第2腕部263は、第2弁体242と当接する第2当接面263aと、コイルばね170を介して第1弁体241と接続される第2接続面263bと、を有する。
【0260】
また、腕部361は、回転軸360から当該回転軸360の径方向に延びるように一対設けられ、一対の腕部361は、コイルばね170を介して第1弁体241及び第2弁体242と各々接続される。
【0261】
これらの構成によれば、腕部261,361が設けられることで、腕部261,361から第1弁体241及び第2弁体242に回転力を付与することができるので、弁体230の構造を簡素化することができる。また、第1弁体241及び第2弁体242を成形するための樹脂材料の使用量を低減させることができる。
【0262】
第1弁体241及び第2弁体242は、本体部111よりも軟らかい。第1弁体241及び第2弁体242は、回転軸260よりも軟らかい。
【0263】
これらの構成によれば、第1弁体241及び第2弁体242は柔軟性を有するので、内壁部112への第1弁体241及び第2弁体242の密着度を高めることができる。
【0264】
また、弁体130,230,430は、第1弁体141,241,441及び第2弁体142,242,442を含んで回転軸160,260,360,460まわりに並ぶように3つ以上設けられ、腕部261,361,461は、回転方向に隣り合う弁体130,230,430の間にそれぞれ延び、腕部261,361,461の回転方向の一方側は、コイルばね170を介して回転方向の一方にて隣り合う弁体130,230,430と連結され、回転方向の他方側は、弁体130,230,430と当接若しくはコイルばね170を介して回転方向の他方にて隣り合う弁体130,230,430と連結されている。
【0265】
この構成によれば、弁体130,230,430を奇数個設けた場合にも、弁体130,230,430の回転方向前端側及び後端側にそれぞれコイルばね170を配置することで、上記実施形態及び各変形例と同様に、密着度を高めつつ作動トルクの低減効果を得られる。
【0266】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0267】
第1の実施形態の第1弁体21の第1流路21b及び第2弁体22の第2流路22bは、いずれも90度の角度の範囲内にある複数のポート40を連通させるように構成したが、これに限られず、例えば45度の範囲内にある複数のポート40を連通させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0268】
1,101 流路切換弁
10,110 ハウジング
11,111 本体部
11a 内壁部
12,111a 底部
13,120 蓋部
20,130,230,430 弁体
21,141,241,441 第1弁体
21a,141a 第1シール部
21b,141b 第1流路
22,142,242,442 第2弁体
22a,142a 第2シール部
22b、142b 第2流路
23 挿入孔
25,170 コイルばね(付勢部材)
28 第3流路
30,160,260,360,460 回転軸
31 先端部
40,113 ポート
41,113a 第1ポート
42,113b 第2ポート
43,113c 第3ポート
44,113d 第4ポート
45,113e 第5ポート
46 第6ポート
116 スリット
141g,142g 摺動部
211 第1挿入孔
221 第2挿入孔
261,361,461 腕部
262,362,462 第1腕部
263,363,463 第2腕部
262a 第1当接面
262b,462a 第1接続面
263a 第2当接面
263b,462b 第2接続面
A 中心軸
図1
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