(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008858
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240112BHJP
B29C 41/28 20060101ALI20240112BHJP
B29C 41/36 20060101ALI20240112BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240112BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240112BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20240112BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240112BHJP
G02B 5/30 20060101ALN20240112BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
B29C41/28
B29C41/36
C08K3/013
C08L77/00
C08L79/08 A
C08G73/10
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103441
(22)【出願日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0084551
(32)【優先日】2022-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ハクス
(72)【発明者】
【氏名】チェ、サンフン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
【テーマコード(参考)】
2H149
4F071
4F205
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
2H149FA15Y
2H149FA51Y
2H149FD12
2H149FD43
2H149FD44
2H149FD48
4F071AA60X
4F071AB24
4F071AB26
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4J043XA16
4J043ZB11
4J043ZB47
4J043ZB51
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐溶剤性および光学特性に優れるポリアミド系フィルム、その製造方法、およびそれを含むディスプレイ装置用カバーウィンドウを提供する。
【解決手段】ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm
3~2800μm
3である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含み、
フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm3~2800μm3である、ポリアミド系フィルム。
【請求項2】
前記フィルム第2面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が10μm3~150μm3である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド系フィルムはフィラーを含み、
前記フィラーは、シリカ(SiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる群より選択される1種以上を含み、
前記フィラーの含有量は、前記ポリアミド系重合体の総重量を基準に200ppm~2500ppmである、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項4】
前記ポリアミド系フィルムはフィラーを含み、
前記フィラーは、粒径分布において50%累積質量粒度分布径(D50)が30nm~250nmである、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項5】
前記ポリアミド系フィルムはフィラーを含み、
前記ポリアミド系フィルム内に含まれているフィラーの、下記式1で定義されるSPAN値が0.5~20である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム:
<式1>
前記式1において、
前記D
10は、フィラーの粒径分布において10%累積質量粒度分布径であり、
前記D
50は、フィラーの粒径分布において50%累積質量粒度分布径であり、
前記D
90は、フィラーの粒径分布において90%累積質量粒度分布径である。
【請求項6】
前記フィルムをMIBK(メチルイソブチルケトン)溶剤に5秒間浸漬してから、80℃にて2分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzM)が2.0%以下である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項7】
前記フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて2分間乾燥させ、フィルム表面を硬度81(タイプAデュロメータ)のMINOAN社製の摩耗試験用消しゴムで錘500gの荷重にて3000回擦った後、フィルム表面の水接触角が70°~80°である、請求項1に記載のポリアミド系フィルム。
【請求項8】
ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、
前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、
前記ポリアミド系フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm3~2800μm3である、ディスプレイ装置用カバーウィンドウ。
【請求項9】
有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合してポリアミド系重合体溶液を調製する段階と、
前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥してゲルシートを製造する段階と、
前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む、請求項1に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記重合体溶液を乾燥してゲルシートを製造する段階において、単位面積当たりの溶媒蒸発量を0.5kg/m2~3.0kg/m2に調整して行う、請求項9に記載のポリアミド系フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリアミド系フィルム、その製造方法、並びにそれを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)等のようなポリアミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、フッ素重合体とともに装飾や腐食防止のための塗料として使用され、フッ素重合体を金属基板に接着させる役割をする。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物のような汚染物をろ過する装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することにより、より安価でありながらも光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に、反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【0005】
このようなポリアミド系フィルムをフォルダブルディスプレイ、フレキシブルディスプレイなどに適用する際には、透明性、無色性などの光学特性、および柔軟性、硬度などの機械的物性が求められる。しかしながら、一般的に光学特性と機械的物性とはトレードオフの関係にあり、機械的物性を向上させると、光学特性が低下され得る。
【0006】
したがって、機械的物性と光学特性とがともに向上されたポリアミド系フィルムに対する研究が持続的に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルム、それを含むカバーウィンドウおよびディスプレイ装置を提供する。
【0008】
実現例は、光学特性および機械的特性に優れたポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm3~2800μm3である。
【0010】
実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み、前記ポリアミド系フィルムがポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が100μm3~2800μm3である。
【0011】
実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒上でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体を含む重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥してゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを熱処理する段階とを含む。
【発明の効果】
【0012】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が100μm3~2800μm3の範囲に調整されることにより、耐溶剤性に優れ、黄色度、透過率などの光学特性が改善され、滑り性および巻取性が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な分解図を示すものである。
【
図3】
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な断面図を示すものである。
【
図4】
図4は、一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法の概略的なフローチャートを示すものである。
【
図5】
図5は、一実現例によるポリアミド系フィルムの工程設備に関する概略的な概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書において説明する実現例に限定されない。
【0015】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0016】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
本明細書において単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0018】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0019】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0020】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0021】
[ポリアミド系フィルム]
実現例は、耐溶剤性に優れ、黄色度、透過率などの光学特性が改善され、滑り性および巻取性が向上されたポリアミド系フィルムを提供する。
【0022】
一実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含む。
【0023】
前記ポリアミド系フィルムは、フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が100μm3~2800μm3である。
【0024】
前記3D表面粗さは、物体表面の凹凸を光学式または接触式で測定してデータ化したものであり、前記物体表面の平面方向に対して所定領域に対する地形的(topographical)特徴を示し得る。前記体積(Natural Volume)は、例えば、完全な水没のために、表面に必要な液体の量を意味し得る。具体的に、前記体積は、ブルカー(Bruker)社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズ(OBJECTIVE LENS)を適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用して測定された値であり得る。
【0025】
例えば、前記第1面の体積が2800μm3を超えると、溶剤に浸漬した後のフィルムのヘイズ変化量が非常に大きくなり光学特性が低下し、表面加工コーティングの際に気泡等によるコーティング不良の問題が発生する可能性があり、前記第1面の体積が100μm3未満であると、フィルムを巻き取る際にブロッキング等に起因してフィルムの巻取性および滑り性が低下し得る。
【0026】
実現例によると、前記第1面の体積が100μm3~2800μm3に制御されると、フィルムの耐溶剤性に優れるとともに、透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性が総合的に改善され、フィルムをロール状に巻き取る際に押圧痕(lump)などの不良が発生しないとともに、巻き取られたフィルムが容易に巻き出され得る。
【0027】
具体的に、前記第1面の体積は、2800μm3以下、2700μm3以下、2600μm3以下、2500μm3以下、2400μm3以下、2000μm3以下、または1800μm3以下であり、100m3以上、150μm3以上、200μm3以上、または250μm3以上であり得る。
【0028】
より具体的に、前記第1面の体積は、100μm3~2500μm3、100μm3~2400μm3、250μm3~2800μm3、250μm3~2500μm3、または250μm3~2400μm3であり得るが、これに限定されるものではない。
【0029】
一実現例において、前記第1面は、前記フィルムのエア(air)面であり得る。前記エア面とは、ポリアミド系フィルム形成時に使用する支持体に接しない面のことを意味する。具体的に、前記フィルムの製造方法において、エア面とは、ポリアミド系重合体溶液がキャスティングおよび乾燥されるベルトに接しない面のことを意味し得る。
【0030】
前記ポリアミド系フィルムは、フィルム第2面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が5μm3~200μm3であり得る。
【0031】
具体的に、前記第2面の体積は、200μm3以下、180μm3以下、150μm3以下、120μm3以下、または100μm3以下であり、5μm3以上、7μm3以上、10μm3以上、12μm3以上、または15μm3以上であり得る。
【0032】
より具体的に、前記第2面の体積は、5μm3~150μm3、5μm3~100μm3、10μm3~200μm3、10μm3~150μm3、10μm3~100μm3、12μm3~200μm3、12μm3~150μm3、または12μm3~100μm3であり得るが、これに限定されるものではない。
【0033】
実現例によると、前記第2面の体積が前記範囲内に調整されると、フィルムの耐溶剤性、光学特性、巻取性、および滑り性が改善され得る。
【0034】
一実現例において、前記第2面は、前記フィルムのベルト面であり得る。前記ベルト面は、ポリアミド系フィルム形成時に使用する支持体に接する面のことを意味する。具体的に、前記フィルムの製造方法において、ベルト面とは、ポリアミド系重合体溶液がキャストおよび乾燥されるベルトに接する面のことを意味し得る。
【0035】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、3D表面粗さ測定の際、下記の測定方法により測定された単位面積当たりの頂点(summit)の数(Sds)が4400/mm2以下であり得る。
【0036】
<測定方法>
ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用する。
【0037】
前記頂点は、例えば、3D表面粗さ測定の際、平均平面(mean plane)よりも表面高低差(Sz)の5%以上高いポイントで見られるピーク(peak)のことを意味する。また、前記頂点は、他の頂点と特定距離(サンプル側面サイズ(Sample side size)の1%)を置いて離れているピークのことを意味する。前記ピークは、最も近い8つの点より上に位置するすべての点を意味し得る。より具体的に、前記単位面積当たりの頂点の数(Sds)は、EUR 15178 ENに提示されている規格に基づいて測定された値であり得る。
【0038】
具体的に、前記Sdsは、4000/mm2以下、3900/mm2以下、3800/mm2以下、3500/mm2以下、3300/mm2以下、または3100/mm2以下であり得るが、これに限定されない。また、前記Sdsは、500/mm2以上、800/mm2以上、1000/mm2以上、1200/mm2以上、1500/mm2以上、1600/mm2以上、1800/mm2以上、2000/mm2以上、2200/mm2以上、または2400/mm2以上であり得るが、これに限定されない。
【0039】
例えば、前記Sdsは、1600~4400/mm2、1600~4000/mm2、1600~3900/mm2、1600~3500/mm2、1600~3100/mm2、2000~4400mm2、2000~4000mm2、2000~3900/mm2、2000~3500/mm2、2000~3100/mm2、2400~4400/mm2、2400~4000/mm2、2400~3900/mm2、2400~3500/mm2、または2400~3100/mm2であり得る。
【0040】
一部の実現例において、前記表面高低差(Sz)は320nm以上であり得る。好ましくは、前記Szは330nm以上であり得るが、これに限定されない。また、前記Szは、2000nm以下、1800nm以下、1500nm以下、1200nm以下、1000nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、または550nm以下であり得るが、これに限定されない。
【0041】
前記Sz(表面高低差)は、5つの最も高いピークと5つの最も低い谷(valley)との平均差値を意味し得る。前記ピークは、最も近い8つの点より上に位置するすべての点を意味し、前記谷は、最も近い8つの点より下に位置するすべての点を意味し得る。具体的に、前記Szは、ISO 25178に基づいて定義されたS10z(Ten point height of surface)値であり得る。より具体的に、前記Szは、ブルカー社のCONTOUR GT-Xを用いて、1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、20倍率の対物レンズを適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用した値であり得る。
【0042】
一部の実現例において、前記頂点の平均曲率(Ssc)は24~47/mmであり、好ましくは、24~45/mm、24~42/mm、25~47/mm、25~45/mm、または25~42/mmであり得る。
【0043】
フィルムが前記Sds、Szおよび/またはSsc特性を満足すると、モジュラス、透過率、ヘイズ、黄色度、鉛筆硬度、滑り性、および巻取性に優れたフィルムが実現され得る。
【0044】
実現例によるポリアミド系フィルムのx方向屈折率(nx)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.64~1.68、1.64~1.66、または1.64~1.65であり得る。
【0045】
また、ポリアミド系フィルムのy方向屈折率(ny)は、1.60~1.70、1.61~1.69、1.62~1.68、1.63~1.68、1.63~1.66、または1.63~1.64であり得る。
【0046】
さらには、ポリアミド系フィルムのz方向屈折率(nz)は、1.50~1.60、1.51~1.59、1.52~1.58、1.53~1.58、1.54~1.58、または1.54~1.56であり得る。
【0047】
前記ポリアミド系フィルムのx方向屈折率、y方向屈折率およびz方向屈折率の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、前からだけでなく横から見ても視認性に優れ、広い視野角を実現し得る。
【0048】
実現例によるポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は800nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの面内位相差(Ro)は、700nm以下、600nm以下、550nm以下、100nm~800nm、200nm~800nm、200nm~700nm、300nm~700nm、300nm~600nm、または300nm~540nmであり得る。
【0049】
また、実現例によるポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、5000nm以下であり得る。具体的に、前記ポリアミド系フィルムの厚さ方向位相差(Rth)は、4800nm以下、4700nm以下、4650nm以下、1000nm~5000nm、1500nm~5000nm、2000nm~5000nm、2500nm~5000nm、3000nm~5000nm、3500nm~5000nm、4000nm~5000nm、3000nm~4800nm、3000nm~4700nm、4000nm~4700nm、または4200nm~4650nmであり得る。
【0050】
ここで、前記面内位相差(in-plane retardation、Ro)は、フィルムの平面内の直交する2つ軸の屈折率の異方性(△nxy=|nx-ny|)と、フィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータであり、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0051】
また、厚さ方向位相差(thickness direction retardation、Rth)とは、フィルム厚さ方向の断面から見たときの2つの複屈折であるΔnxz(=|nx-nz|)および△nyz(=|ny-nz|)に、それぞれフィルム厚さ(d)を乗じて得られる位相差の平均で定義されるパラメータである。
【0052】
前記ポリアミド系フィルムの面内位相差および厚さ方向位相差の値が前記範囲であると、前記フィルムをディスプレイ装置に適用する際、光学的歪みおよび色歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも最小化し得る。
【0053】
前記ポリアミド系フィルムはフィラーを含み得る。
前記フィラーは、フィルムの硬度、モジュラス、脆性、柔軟性などの機械的特性、および透過率、ヘイズ、黄色度などの光学特性を調整することができ、フィルム表面の地形特性を調整し得る。
【0054】
一部の実現例において、前記フィラーとしては、硬度2.5~6の粒子が非制限的に使用され得る。フィラーが前記硬度を有すると、フィルムの硬度およびモジュラスを向上させながらも、柔軟性を低下させないことができる。また、フィルムの光学特性を悪化させないことができる。好ましくは、前記フィラーの硬度は2.5~5または2.5~4であり得る。
【0055】
好ましくは、前記フィラーは、シリカ(SiO2)、硫酸バリウム(BaSO4)、酸化アルミニウム(Al2O3)、および酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる群より選択された1種以上を含み得る。
【0056】
前記フィラーは、粒径分布において50%累積質量粒度分布径(D50)が30nm~250nmであり得る。具体的に、前記フィラーの50%累積質量粒度分布径(D50)は、30nm~200nm、30nm~180nm、30nm~150nm、30nm~120nm、30nm~100nm、40nm~200nm、40nm~180nm、40nm~150nm、40nm~120nm、40nm~100nm、50nm~200nm、50nm~180nm、50nm~150nm、50nm~120nm、50nm~100nm、60nm~200nm、60nm~180nm、60nm~150nm、60nm~120nm、または60nm~100nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0057】
フィラーが前記粒径を有すると、フィルムの柔軟性および光学特性を低下させないとともに、フィルムの巻取性および滑り性を向上させ得る。
【0058】
一部の実現例において、前記フィラーは、粒径分布において90%の累積質量粒度分布径(D90)が50nm~1000nmであり得る。具体的に、前記フィラーの90%累積質量粒度分布径(D90)は、50nm~900nm、50nm~800nm、50nm~700nm、50nm~600nm、50nm~500nm、70nm~~1000nm、70nm~900nm、70nm~800nm、70nm~700nm、70nm~600nm、70nm~500nm、90nm~1000nm、90nm~900nm、90nm~800nm、90nm~700nm、90nm~600nm、90nm~500nm、110nm~1000nm、110nm~900nm、110nm~800nm、110nm~700nm、110nm~600nm、または、110nm~500nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0059】
一部の実現例において、前記フィラーは、粒径分布において10%累積質量粒度分布径(D10)が5nm~200nmであり得る。具体的に、前記フィラーの10%累積質量粒度分布径(D10)は、5nm~180nm、5nm~160nm、5nm~140nm、5nm~130nm、10nm~200nm、10nm~180nm、10nm~160nm、10nm~140nm、10nm~130nm、15nm~200nm、15nm~180nm、15nm~160nm、15nm~140nm、15nm~130nm、20nm~200nm、20nm~180nm、20nm~160nm、20nm~140nm、または20nm~130nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記ポリアミド系フィルム内に含まれるフィラーの下記式1で定義されるSPAN値は0.5~20であり得る。
【0061】
<式1>
前記式1において、
前記D
10は、フィラーの粒径分布において10%累積質量粒度分布径であり、
前記D
50は、フィラーの粒径分布において50%累積質量粒度分布径であり、
前記D
90は、フィラーの粒径分布において90%累積質量粒度分布径である。
【0062】
具体的には、前記SPAN値は、0.5~10、0.5~5、0.5~2、0.7~20、0.7~10、0.7~5、0.7~2、0.8~20、0.8~10、0.8~5、0.8~2、0.9~20、0.9~10、0.9~5、または0.9~2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、200ppm以上であり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、400ppm以上、600ppm以上、800ppm以上、1000ppm以上、または1500ppm以上であり得る。また、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、2500ppm以下、2300ppm以下、2100ppm以下、2000ppm以下、または1500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。より具体的に、前記フィラーの含有量は、ポリアミド系重合体の総重量を基準に、200ppm~2500ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記フィラーの含有量が前記範囲を外れると、フィルムのヘイズが急激に増加し、フィルム表面にフィラー同士の凝集現象が発生して異物感が目視で確認されたり、生産工程において走行に問題が発生したり、巻取性が低下し得る。また、フィルムの硬度、柔軟性などの機械的特性、および透過率、黄色度などの光学特性が総合的に阻害され得る。
【0065】
例えば、前記フィラーの粒径および含有量を調整して、前記3D表面粗さで表される体積、Sds、Sz、およびSscなどの表面特性を目的とする範囲に調整し得る。
【0066】
前記フィラーの屈折率は1.55~1.75であり得る。具体的に、前記フィラーの屈折率は、1.60~1.75、1.60~1.70、1.60~1.68、または1.62~1.65であり得るが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記フィラーの屈折率が前記範囲を満足することにより、nx、ny、nzに関連する複屈折値が適切に調整され、フィルムの様々な角度における輝度が改善され得る。
【0068】
一方、前記フィラーの屈折率が前記範囲から外れると、フィルム上でフィラーの存在が肉眼で視認されるか、またはフィラーによってヘイズが上昇するという問題が発生し得る。
【0069】
前記フィラーは、表面に特別なコーティング処理がなされていない状態であり、フィルム全体にわたって均一に分散してあり得る。
【0070】
前記ポリアミド系フィルムが前記フィラーを含むことにより、前記フィルムは光学特性の低下もなく、広い視野角を確保し得る。
【0071】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒含有量は1500ppm以下であり得る。例えば、前記残留溶媒の含有量は、1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、または500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0072】
前記残留溶媒とは、フィルム製造の際、揮発されず最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量のことを意味する。
【0073】
前記ポリアミド系フィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下し、輝度にも影響を及ぼし得る。
【0074】
実現例によるポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に曲率半径が3mmになるようにフォルディングするとき、破断する前までのフォルディング回数が20万回以上であり得る。
【0075】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmになるように曲げて広げることを1回とする。
【0076】
前記ポリアミド系フィルムが、前術の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0077】
実現例によるポリアミド系フィルムの表面粗さは、0.01μm~0.07μmであり得る。具体的に、前記表面粗さは、0.01μm~0.07μmまたは0.01μm~0.06μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0078】
前記ポリアミド系フィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、面光源の法線方向からの角度が大きくなる場合でも、高い輝度を実現するのに有利である。
【0079】
一部の実現例において、前記ポリアミド系フィルムは、厚さ50μmを基準に厚さ偏差が4μm以下であり得る。前記厚さ偏差は、前記フィルムの任意(random)の位置の10か所を測定した厚さの平均に対する最大値または最小値間の偏差のことを意味し得る。この場合、前記ポリアミド系フィルムは、均一な厚さを有するため、各ポイントにおける光学特性および機械的特性が均一に現れ得る。
【0080】
前記ポリアミド系フィルムの透過度は80%以上であり得る。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
前記ポリアミド系フィルムの黄色度(yellow index)は4以下であり得る。例えば、前記黄色度が、3.5以下または3以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記ポリアミド系フィルムのモジュラスが5GPa以上であり得る。具体的に、前記モジュラスは、5.5GPa以上、6.0GPa以上または6.5GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0083】
前記ポリアミド系フィルムの圧縮強度は、0.4kgf/μm以上であり得る。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0084】
前記ポリアミド系フィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを用いて、10mm/分の速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が、5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0085】
前記ポリアミド系フィルムのヘイズは1%以下であり得る。具体的に、前記ヘイズは0.7%以下または0.5%以下であり得るが、これに限定されない。
【0086】
前記ポリアミド系フィルムは、鉛筆硬度がHB以上であり得る。具体的に、前記鉛筆硬度がH以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0087】
前記ポリアミド系フィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上であり得る。具体的に、前記引張強度が、18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0088】
前記ポリアミド系フィルムは、伸び率が15%以上であり得る。具体的に、前記伸び率が、16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0089】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μmの厚さを基準とする。
【0090】
例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体を含み、フィルムの厚さ50μmを基準に、モジュラスが5GPa以上であり、透過度が80%以上であり、ヘイズが1%以下であり、黄色度が3以下であり、鉛筆硬度がF以上であり得る。
【0091】
前記フィルムをMIBK(メチルイソブチルケトン)溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて2分間乾燥させた後、ヘイズを測定したときのヘイズ変化量(ΔHzM)が2.0%以下であり得る。
【0092】
具体的に、前記フィルムのMIBK浸漬後のヘイズ変化量(ΔHzM)は、1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、または1.0%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0093】
前記ΔHzM(%)はHzM-Hz0の値であり、前記Hz0は前記フィルムの初期ヘイズ(%)を示し、HzMは前記フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬後、80℃にて2分間乾燥させた後測定したヘイズ(%)を示す。
【0094】
前記フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて2分間乾燥させ、フィルム表面を硬度81(タイプAデュロメータ)のMINOAN社製の摩耗試験用消しゴムで、錘500gの荷重にて3000回擦った後、フィルム表面の水接触角が60°~80°であり得る。
【0095】
具体的に、前記フィルム表面の水接触角が65°~80°であり、好ましくは前記フィルム表面の水接触角が70°~80°であり得る。
【0096】
前記ヘイズ変化量(ΔHzM)および前記フィルム表面の水接触角は、フィルムの耐溶剤性を判断する尺度となり得る。
【0097】
実現例によるポリアミド系フィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して形成され得る。
【0098】
例えば、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物およびジカルボニル化合物を重合して形成され、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、およびジアンヒドリド化合物を重合して形成されても良い。
【0099】
前記ポリアミド系重合体は、アミド繰り返し単位を含む重合体である。また、前記ポリアミド系重合体は、選択的にイミド繰り返し単位をさらに含み得る。
【0100】
具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含み、選択的に、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位を含む。
【0101】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0102】
前記ジアミン化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0103】
前記化学式1において、
Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0104】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0105】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0106】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0107】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0108】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0109】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0110】
一部の実現例において、前記ジアミン化合物は、1種のジアミン化合物を含み得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0111】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFMB/TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0112】
前記ジアンヒドリド化合物は複屈折値が低いため、前記ポリアミド系重合体を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。
【0113】
前記ジアンヒドリド化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
[化2]
【0114】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、もしくは、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって連結されている。
【0115】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0116】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0117】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、またはケトン基を有する化合物を含み得る。
【0118】
前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0119】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0120】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6FDA)および3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3',4,4'-biphenyltetracarboxylic dianhydride、BPDA)からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0121】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0122】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換され、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0123】
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化A]
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0124】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
[化A-1]
前記化学式A-1におけるnは1~400の整数である。
【0125】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
前記化学式3において、
Jは、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され得る。
【0126】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0127】
前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0128】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0129】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0130】
例えば、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、または前記化学式3-2bで表される基であり得る。
【0131】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、1種のジカルボニル化合物を単独で使用するか、または互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0132】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0133】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0134】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0135】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0136】
または、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とが重合して、化学式B-2およびB-3で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0137】
[化B-1]
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0138】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0139】
[化B-3]
前記化学式B-3のyは1~400の整数である。
【0140】
一実現例によると、前記ポリアミド系重合体は、下記化学式Bで表される繰り返し単位を含み、選択的に、下記化学式Aで表される繰り返し単位を含み得る。
[化A]
【0141】
[化B]
前記化学式Aおよび化学式Bにおいて、
E、Jは互いに独立して、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され、
eおよびjは互いに独立して、1~5の整数の中から選択され
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の4価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の4価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、もしくは、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択された連結基によって連結されている。
【0142】
前記ポリアミド系重合体は、イミド系繰り返し単位およびアミド系繰り返し単位を0:100~80:20のモル比で含み得る。具体的に、前記イミド系繰り返し単位とアミド系繰り返し単位とのモル比は、0:100~70:30、0:100~60:40、0:100~50:50、0:100~45:55、1:99~50:50、または5:95~50:50であり得るが、これに限定されるものではない。
【0143】
前記ポリアミド系重合体のイミド系繰り返し単位とアミド系繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、ポリアミド系フィルムの体積、Sds、Sz、Sscなどの3D表面粗さ特性を効果的に制御することができ、特徴的な製造方法に結び付いてフィルムの耐溶剤性、光学特性および機械的耐久性を向上させ得る。
【0144】
前記ポリアミド系重合体において、前記化学式Aで表される繰り返し単位と前記化学式Bで表される繰り返し単位とのモル比は、0:100~80:20であり得る。具体的に、前記化学式Aで表される繰り返し単位と前記化学式Bで表される繰り返し単位とのモル比は、0:100~70:30、0:100~60:40、0:100~50:50、0:100~45:55、1:99~50:50、または5:95~50:50であり得るが、これに限定されるものではない。
【0145】
実現例によるポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体の外に、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0146】
前記青色顔料は、TOYO社のOP-1300Aを含み得るが、これに限定されない。
【0147】
一部の実現例において、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、50ppm~5000ppmで含まれ得る。好ましくは、前記青色顔料は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、100ppm~5000ppm、200ppm~5000ppm、300ppm~5000ppm、400ppm~5000ppm、50ppm~3000ppm、100ppm~3000ppm、200ppm~3000ppm、300ppm~3000ppm、400ppm~3000ppm、50ppm~2000ppm、100ppm~2000ppm、200ppm~2000ppm、300ppm~2000ppm、400ppm~2000ppm、50ppm~1000ppm、100ppm~1000ppm、200ppm~1000ppm、300ppm~1000ppm、または400ppm~1000ppmで含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0148】
前記UVA吸収剤は、当技術分野で使用される10nm~400nm波長の電磁波を吸収する吸収剤を含み得る。例えば、前記UVA吸収剤はベンゾトリアゾール(benzotriazole)系化合物を含み、前記ベンゾトリゾール系化合物は、N-フェノリックベンゾトリアゾール(N-phenolic benzotriazole)系化合物を含み得る。一部の実現例において、前記N-フェノリックベンゾトリアゾール系化合物は、フェノール基が炭素数1~10のアルキル基で置換されたN-フェノリックベンゾトリゾールを含み得る。前記アルキル基は、2個以上で置換されてもよく、直鎖状、分枝状または環状であり得る。
【0149】
一部の実現例において、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~10重量%で含まれ得る。好ましくは、前記UVA吸収剤は、前記ポリアミド系重合体の総重量に対して、0.1重量%~5重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~5重量%、0.5重量%~3重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0150】
前述の前記ポリアミド系フィルムの各物性は、40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ポリアミド系フィルムの各物性は、50μm厚さを基準とする。
【0151】
前述のポリアミド系フィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0152】
また、前記ポリアミド系フィルムの前述した体積、Sds、Sz、Ssc等の3D表面粗さ特性、ヘイズ変化量(△HzM)および溶剤浸漬/摩耗後のフィルムの水接触角などの耐溶剤性、モジュラス、透過度、ヘイズ、黄色度などは、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的物性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の具体的な工程条件が総合して調整され得る。
【0153】
例えば、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィラーの粒径および含有量、フィルム製造工程における重合条件、熱処理条件および単位面積当たりの溶媒蒸発量などの全てが総合され、目的とする範囲の体積、Sds、Sz、Ssc、ΔHzM、およびフィルムの水接触角を実現し得る。
【0154】
[ディスプレイ装置用カバーウィンドウ]
一実現例によるディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0155】
前記ポリアミド系フィルムは、第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm3~2800μm3である。
【0156】
前記ポリアミド系フィルムに関する具体的な説明は前述の通りである。
前記ディスプレイ装置用カバーウィンドウは、ディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0157】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の3D表面粗さ特性を有することにより、優れた耐溶剤性、光学特性および巻取性/滑り性を有し得る。
【0158】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、表示部と、前記表示部上に配置されたカバーウィンドウとを含み、前記カバーウィンドウが、ポリアミド系フィルムと機能層とを含む。
【0159】
前記ポリアミド系フィルムは、第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積が100μm3~2800μm3である。
【0160】
前記ポリアミド系フィルムおよびカバーウィンドウに関する具体的な説明は、前述の通りである。
【0161】
図1~
図3は、一実現例によるディスプレイ装置の概略的な斜視図、分解図および断面図である。
【0162】
具体的に、
図1~
図3には、表示部400と;前記表示部400上に第1面101および第2面102を有するポリアミド系フィルム100と機能層200とを含むカバーウィンドウ300と;が配置され、前記表示部400とカバーウィンドウ300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0163】
前記表示部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0164】
前記表示部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0165】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0166】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自己発光によって画像を表示し得る。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加し得るように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0167】
また、前記表示部400と前記カバーウィンドウ300との間に接着層500が含まれ得る。前記接着層は、光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0168】
前記カバーウィンドウ300は、前記表示部400上に配置され得る。前記カバーウィンドウは、実現例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記表示部を保護し得る。
【0169】
前記カバーウィンドウ300は、ポリアミド系フィルムと機能層とを含み得る。前記機能層は、ハードコーティング層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ポリアミド系フィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0170】
実現例によるポリアミド系フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造などの変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、均一な厚さ、低いヘイズ、高い透光率、および透明性を有するディスプレイ装置を提供し得るところ、過度の工程変更やコスト増加が不要であるため、生産コストを節減できるという利点もある。
【0171】
実現例によるポリアミド系フィルムは、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するのみならず、3D表面粗さ上のSds、Sz、および/またはSscが所定の範囲に調整されることにより、優れたモジュラス、鉛筆硬度などの機械的特性および滑り性、巻取性などの取扱容易性を有し得る。
【0172】
また、実現例によるポリアミド系フィルムは、特定レベル以下の面内位相差および厚さ方向位相差を有することにより、光学的歪みを最小化することができ、側面から光が漏れてくる光漏れ現象をも減少させ得る。
【0173】
フィルムの第1面が前述した範囲の体積値を有するポリアミド系フィルムの場合、フィルムの優れた耐溶剤性および光学特性を有するとともに、滑り性および巻取性に優れるため、フィルムを大面積化してもフィルムを損傷することなくロールで巻き取り、それを巻き出して使用することができ、ローラブル/フレキシブルディスプレイ装置に効果的に適用され得る。
【0174】
[ポリアミド系フィルムの製造方法]
一実現例は、ポリアミド系フィルムの製造方法を提供する。
【0175】
前記ポリアミド系フィルムの3D表面粗さ上の特性は、前記ポリアミド系フィルムをなす成分の化学的、物理的特性とともに、後述する前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、各段階の工程条件が総合して現れる結果であり得る。
【0176】
例えば、ポリアミド系フィルムをなす成分の組成と含有量、フィルム製造工程における重合条件、熱処理条件などが総合して、目的とする3D表面粗さ上の特性を実現し得る。
【0177】
一実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、有機溶媒中でジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を重合して、ポリアミド系重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥してゲルシートを製造する段階(S200)と、前記ゲルシートを熱処理する段階(S300)とを含む(
図4を参照)。
【0178】
一部の実現例によるポリアミド系フィルムの製造方法は、前記ポリアミド系重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)、前記ポリアミド系重合体溶液を熟成させる段階(S120)および/または前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。
【0179】
前記ポリアミド系フィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位とを所定のモル比で含む重合体である。
【0180】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、反応器内で有機溶媒中にジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製され得る(S100)。
【0181】
一実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0182】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物とジカルボニル化合物とを混合および反応させて、ポリアミド溶液を調製する段階を含み得る。
【0183】
他の実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0184】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸(polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液はポリアミック酸繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0185】
または、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水してポリイミド(PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0186】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させてポリアミド(PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させてイミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0187】
このようにして調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択される1種以上を含む重合体が含まれた溶液であり得る。
【0188】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来するアミド繰り返し単位を含み、選択的に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド繰り返し単位を含む。
【0189】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物に関する説明は前述の通りである。
【0190】
一部の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物は、0:100~80:20のモル比で使用され得る。具体的に、前記ジアンヒドリド化合物および前記ジカルボニル化合物は、0:100~70:30、0:100~60:40、0:100~50:50、1:99~50:50、5:95~50:50のモル比で含み得る。
【0191】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、10重量%~30重量%であり得る。または、前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は、15重量%~25重量%または15重量%~20重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0192】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において、効果的にポリアミド系フィルムが製造され得る。
【0193】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0194】
この際、前記触媒は、ベータピコリン、酢酸無水物、イソキノリン(isoquinoline、IQ)およびピリジン系化合物からなる群より選択される1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0195】
前記触媒は、前記ポリアミド系重合体1モルを基準に、0.01モル当量~0.5モル当量、0.01モル当量~0.4モル当量、0.01モル当量~0.3モル当量、0.01モル当量~0.2モル当量、または0.01モル当量~0.1モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0196】
前記触媒を投入すると、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0197】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調整する段階(S110)をさらに含み得る。前記重合体溶液の粘度は、常温を基準に、80000cps~500000cps、100000cps~500000cps、150000cps~500000cps、150000cps~450000cps、200000cps~450000cps、200000cps~400000cps、200000cps~350000cps、または200000cps~300000cpsで調整され得る。この場合、ポリアミド系フィルムの製膜性を向上させることにより、厚さ均一度を向上させ得る。
【0198】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、有機溶媒中にジアミン化合物、ジカルボニル化合物、および選択的にジアンヒドリド化合物を同時または順次混合および反応させて、第1重合体溶液を調製する段階と、前記ジカルボニル化合物を追加投入して目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0199】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がさらに高い。
【0200】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なり得る。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度より速くあり得る。
【0201】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調整する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調整され、例えば、4.5~7に調整され得る。
【0202】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することにより調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミンまたはアルカノールアミンなどのアミン系化合物を含み得る。
【0203】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲で調整することにより、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面で目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0204】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0205】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に用いられる有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0206】
他の実現例において、前記重合体溶液に、フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤からなる群より選択された1種以上を添加し得る。
【0207】
前記フィラー、青色顔料およびUVA吸収剤の種類、含有量などの具体的な内容は前述の通りである。前記フィラー、青色顔料および/またはUVA吸収剤は、前記重合体溶液内で前記ポリアミド系重合体と混合され得る。
【0208】
前記重合体溶液は、-20℃~20℃、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃にて保管され得る。
【0209】
前記温度にて保管すると、前記重合体溶液の変質を防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止し得る。
【0210】
一部の実現例において、前記重合体溶液または前記粘度調整された重合体溶液を熟成させ得る(S120)。
【0211】
前記熟成は、前記重合体溶液を、24時間以上-10℃~10℃の温度条件に静置して行われ得る。この場合、前記重合体溶液に含まれているポリアミド系重合体または未反応物が、例えば、反応を仕上げたり化学平衡をなしたりすることによって、前記重合体溶液が均質化され、これにより形成されたポリアミド系フィルムの機械的特性および光学特性が、フィルムの全面積に対して実質的に均一となり得る。好ましくは、前記熟成は、-5℃~10℃、-5℃~5℃または-3℃~5℃の温度条件にて行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0212】
一実現例において、前記ポリアミド系重合体溶液を脱気する段階(S130)をさらに含み得る。前記脱気によって前記重合体溶液中の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0213】
前記脱気は、真空脱泡または不活性ガスパージを含み得る。
前記真空脱泡は、前記重合体溶液が収容された反応器を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、それにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0214】
また、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧でパージする方法により行われ得る。このような条件で前記パージを実施することにより、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることによって、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの優れた光学物性および優れた機械的物性などを実現し得る。
【0215】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0216】
前記真空脱泡および前記不活性ガスパージは、別途の工程により行われ得る。
例えば、真空脱泡する工程が行われ、それ以降に不活性ガスでパージする工程が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0217】
前記真空脱泡および/または前記不活性ガスパージを行うことにより、製造されたポリアミド系フィルム表面の物性が向上し得る。
【0218】
前記重合体溶液をキャスティングしてゲルシートを製造し得る(S200)。
例えば、前記重合体溶液を支持体上に塗布、圧出および/または乾燥して、ゲルシートを形成し得る。具体的に、前記重合体溶液をベルト上にキャスティングおよび乾燥して、ゲルシートを製造し得る。
【0219】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚は200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一度とを確保し得る。
【0220】
一部の実現例において、前記重合体溶液は、50℃~200℃でベルト上にキャスティングおよび乾燥され得る。この場合、溶媒蒸発量が効果的に調整され得る。好ましくは、前記キャスティングおよび乾燥温度は、60℃~200℃、70℃~200℃、50℃~150℃、60℃~150℃、70℃~150℃、50℃~120℃、60℃~120℃、70℃~120℃、50℃~100℃、60℃~100℃、または70℃~100℃であり得る。
【0221】
一部の実現例において、前記乾燥時間は、5分~60分、10分~60分、15分~60分、5分~50分、10分~50分、15分~50分、5分~40分、10分~40分、または15分~40分であり得る。
【0222】
一部の実現例において、前記重合体溶液を乾燥してゲルシートを製造する段階において、単位面積当たりの溶媒蒸発量を0.5kg/m2~3.0kg/m2に調整して行い得る。この場合、フィルムの表面粗さ特性が目標とする範囲に効果的に調整することができ、これにより、光学特性、機械的特性、および滑り性と巻取性とが向上したフィルムが製造され得る。好ましくは、前記単位面積当たりの溶媒蒸発量は、0.5kg/m2~2.5kg/m2、0.5kg/m2~2.0kg/m2、0.5kg/m2~1.8kg/m2、0.5kg/m2~1.6kg/m2、0.5kg/m2~1.4kg/m2、0.8kg/m2~3.0kg/m2、0.8kg/m2~2.5kg/m2、0.8kg/m2~2.0kg/m2、0.8kg/m2~1.8kg/m2、0.8kg/m2~1.6kg/m2、0.8kg/m2~1.4kg/m2、1.0kg/m2~3.0kg/m2、1.0kg/m2~2.5kg/m2、1.0kg/m2~2.0kg/m2、1.0kg/m2~1.8kg/m2、1.0kg/m2~1.6kg/m2、1.0kg/m2~1.4kg/m2に調整され得るが、これに限定されるものではない。
【0223】
例えば、ベルトの移動距離は40m~60mであり得る。また、前記ベルトは0.5m/分~15m/分、具体的には1m/分~10m/分の速度で移動し得る。
【0224】
前記乾燥中に、前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造され得る。
【0225】
一実現例によると、前記乾燥後のゲルシートに含まれている残留溶媒の含有量は、1500ppm以下であり得る。この場合、フィルムの表面粗さ特性が目標とする範囲に効果的に調整され、これにより、光学特性、機械的特性、および滑り性と巻取性とが向上したフィルムが製造され得る。
【0226】
前記乾燥されたゲルシートを熱処理して、ポリアミド系フィルムを形成し得る(S300)。
【0227】
前記ゲルシートの熱処理は、例えば、熱処理装置(tenter)により行われ得る。前記熱処理装置は、少なくとも1つの熱風機および少なくとも1つのヒーターを含み得る。前記熱処理装置は、少なくとも1つの熱風機または少なくとも1つのヒーターのうちの1つのみを含んでも良い。
【0228】
前記乾燥されたゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つの熱風機で生成される熱風によって熱処理する第1熱処理段階と、少なくとも1つのヒーターにより熱処理する第2熱処理段階とを含み得る。
【0229】
前記第1熱処理段階を行う区間を第1熱処理区間といい、前記第2熱処理段階を行う区間を第2熱処理区間という。
【0230】
前記第1熱処理段階と前記第2熱処理段階とを順次行い得る。前記第1熱処理段階を行った後で前記第2熱処理段階を行ってもよく、前記第2熱処理段階を行った後で前記第1熱処理段階を行ってもよいが、これに限定されるものではない。具体的には、第1熱処理段階を行った後第2熱処理段階を行い得る。
【0231】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、熱処理装置内で連続的に移動する支持体により行われ得る。具体的に、前記ゲルシートが支持体上に位置し、前記支持体が進行方向に移動することにより、フィルムもまた長さ方向に移動しながら行われ得る。
【0232】
前記ゲルシートを熱処理する段階は、ゲルシート(フィルム)の幅方向の両端を固定部材で固定する段階と、固定部材を用いてゲルシートの幅を変化させる段階とを含む。すなわち、前記ゲルシートを熱処理する段階は、前記ゲルシートの幅方向の両端を固定部材で固定し、固定させた前記ゲルシートの幅を変化させながら熱処理し得る。例えば、前記熱処理装置内でフィルムの幅方向の両端をピンで固定し、フィルムが支持体によって移動するとき、ピンの位置を調整することにより、ゲルシートの幅を変化させ得る。
【0233】
前記ゲルシートの幅方向の両端を固定部材で固定し、固定したゲルシートの幅を変化させながら熱処理する段階は、前記ゲルシートが前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間を通過する間に行われ得る。
【0234】
実現例において、ゲルシートがゲルシートの長さ方向に(進行方向に)第1熱処理区間を通過する間にゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を狭めながら行い得る。
【0235】
また、ゲルシートがゲルシートの長さ方向に(進行方向に)第2熱処理区間を通過する間にゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を狭めながら行い得る。または、前記ゲルシートの幅を変化させる段階において、ゲルシートの幅を広めたり狭めたりすることを繰り返し行い得る。
【0236】
前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅よりも大きくあり、前記第2熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第2熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅よりも大きくあり得る。
【0237】
また、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第2熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅よりも大きくあり得るが、これに限定されるものではない。
【0238】
前記第1熱処理区間における前記ゲルシートの最大幅をWa、前記第1熱処理区間における前記ゲルシートの最小幅をWb、前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間における前記ゲルシートの最小幅をWcとする。
【0239】
例えば、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最大幅(Wa)であり、前記第1熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最小幅(Wb)であり得る。
【0240】
また、前記第1熱処理区間の導入部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間におけるゲルシートの最大幅(Wa)であり、前記第2熱処理区間の末端部におけるゲルシートの幅が、前記第1熱処理区間および前記第2熱処理区間におけるゲルシートの最小幅(Wc)であり得る。
【0241】
また他の例として、前記WbがWcよりも同一か大きくあり、前記WbがWcよりも同一か小さくあり得る。具体的に、前記WbがWcよりも大きくあり得る。より具体的に、Wa>Wb>Wcであり得るが、これに限定されるものではない。
【0242】
実現例において、Wb/Wa値は0.955~0.990である。例えば、前記Wb/Wa値が、0.955以上、0.960以上、0.965以上、0.968以上、または0.969以上であり、0.990以下、0.985以下、0.980以下、または0.975以下であり得るが、これに限定されるものではない。また他の例として、前記Wb/Wa値が0.955~0.980であり得る。
【0243】
また、Wc/Wa値が0.950~0.990である。例えば、前記Wc/Wa値が、0.950以上、0.953以上、0.955以上、または0.957以上であり、0.990以下、0.985以下、0.980以下、0.975以下、0.970以下、または0.965以下であり得るが、これに限定されるものではない。また他の例として、前記Wc/Wa値が0.950~0.970であり得る。
【0244】
一実現例において、前記少なくとも1つの熱風機で生成される熱風により熱処理する第1熱処理段階を行うと、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さが実現できないか、または表面品質が不均一となることがあり、表面エネルギーが上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0245】
前記熱風による熱処理は、100℃~250℃の範囲で5分~100分間行われ得る。具体的に、前記熱風によるゲルシートの熱処理は、100℃~250℃の範囲で1.5℃/分~20℃/分の速度で昇温させながら5分~60分間行われ得る。より具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、140℃~250℃の範囲で行われ得る。
【0246】
この際、前記熱風による前記ゲルシートの熱処理開始温度は100℃以上であり得る。具体的に、前記熱風による前記ゲルシートの熱処理開始温度は100℃~180℃であり得る。また、前記熱風による熱処理中の最高温度は150℃~250℃であり得る。
【0247】
前記熱風による熱処理に関する温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であり、前記熱処理装置内の第1熱処理区間に位置する温度感知センサーによって測定された温度に該当する。
【0248】
一実現例において、前記ゲルシートを熱処理する段階は、少なくとも1つのヒーターによって熱処理する第2熱処理段階、具体的には、複数のヒーターによって熱処理する段階を含み得る。
【0249】
前記複数のヒーターは、ゲルシートの幅方向(TD方向)に離隔された複数のヒーターを含み得る。前記複数のヒーターは、ヒーター装着部に装着され、前記ヒーター装着部は、ゲルシートの進行方向(MD方向)に沿って2個以上配置され得る。
【0250】
前記少なくとも1つのヒーターはIRヒーターを含み得る。ただし、少なくとも1つのヒーターの種類は、前記の例に限定されず、様々に変更され得る。具体的に、前記複数のヒーターはIRヒーターを含み得る。
【0251】
前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃以上の温度範囲で行われ得る。具体的に、前記少なくとも1つのヒーターによる熱処理は、250℃~400℃の温度範囲で1分~30分、または1分~20分間行われ得る。
【0252】
前記ヒーターによる熱処理に関する温度は、前記ゲルシートが存在する熱処理装置内の温度であり、前記熱処理装置内の第2熱処理区間に位置する温度感知センサーによって測定された温度に該当する。
【0253】
次いで、前記ゲルシートを熱処理する段階以降、硬化したフィルムを移動させながら冷却する段階を行い得る。
【0254】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温する第1減温段階と、40℃/分~400℃/分の速度で減温する第2減温段階とを含み得る。
【0255】
この際、具体的に、前記第1減温段階後に前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度より速くあり得る。
【0256】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0257】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化することができ、前記硬化過程で確立したフィルムの光学物性および機械的物性をより安定して長期間維持し得る。
【0258】
また、前記冷却した硬化フィルムを、ワインダー(winder)により巻き取る段階を行い得る。
【0259】
この際、前記乾燥時のベルト上においてゲルシートの移動速度:巻取時の硬化フィルムの移動速度の比は1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.01~1:1.10であり得るが、これに限定されるものではない。
【0260】
前記移動速度の比が前記範囲から外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0261】
前記ポリアミド系フィルムの製造方法において、下記式2による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さ偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
[式2] 厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記式2において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取時の冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0262】
前記ポリアミド系フィルムは、前述の製造方法に基づいて製造されることにより、耐溶剤性に優れ、光学的、機械的に優れた物性を示すだけでなく、長時間曲げられた状態が持続した後、曲げる力を解除したときの復元力にも優れており、過酷なフォルディング試験後でもシワがほとんど認められない。さらに、常温においてのみならず、極低温環境においても依然として目的とするレベルのループ剛性を実現しているので、柔軟性および機械的耐久性が求められる様々な用途に適用可能であり得る。例えば、前記ポリアミド系フィルムは、ディスプレイ装置だけでなく、太陽電池、半導体素子、センサーなどにも適用され得る。
【0263】
前記で述べた製造方法により製造されたポリアミド系フィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0264】
(実施例)
前記の内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例は、本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0265】
(実施例1)
温度調整が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、10℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)を満たした後、芳香族ジアミンである2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)を徐々に投入しながら溶解した。
【0266】
次いで、反応器内部の温度を30℃に上げ、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6-FDA)を徐々に投入しながら、反応溶液を2時間撹拌した。
【0267】
反応器の温度を10℃に下げ、テレフタロイルクロリド(TPC)を徐々に投入しながら1時間撹拌した。そして、イソフタロイルクロリド(IPC)(全体投入量に対して94モル%)を投入し1時間撹拌して、第1重合体溶液を調製した。調製された第1重合体溶液の粘度は1000cps~10000cpsであった。
【0268】
そして、濃度10重量%のIPC溶液(DMAc溶媒)を1mL添加した後、30分撹拌する過程を繰り返して、粘度180000cps~220000cpsの第2重合体溶液を調製した。
【0269】
この際、重合体溶液の粘度は、LAMY rheology instruments社のRM100 CP2000 PLUS装置を用いて、20℃恒温条件およびせん断速度(Shear rate)4s-1条件で測定して、目標粘度が実現されるかを確認した。
【0270】
第2重合体溶液に、粒径(BET法による平均粒径D50)が約83nmであり、DMAc溶媒中に分散したシリカ(日産化学、DMAc-ST-ZL)を、重合体溶液の固形分総重量に対して1000ppmとなるように投入して、重合体溶液を調製した。
【0271】
前記重合体溶液をベルト上にキャスティングし、熱硬化装置に投入する前に、単位面積当たり約1.4kg/m2のDMAcが蒸発するように、ベルト上の注入速度、乾燥温度、乾燥時間、移動距離、および移動速度等を調整しながらフィルムを移動させた。この際、ゲルシートに熱風を加える方法により乾燥が行われた。
【0272】
乾燥したポリアミド系ゲルシートを、80℃~300℃の温度範囲で2℃/分の速度で昇温する熱硬化装置に投入し、冷却および巻取を行い、50μmの厚さを有するポリアミド系フィルムを得た。
【0273】
ポリアミド系重合体の具体的な組成およびモル比は、下記表1に記載の通りである。
【0274】
(実施例2~13および比較例1~6)
実施例2~13および比較例1~6において、ポリアミド系重合体の単量体組成およびモル比、乾燥段階における単位面積当たり溶媒の蒸発量およびフィラーの種類、粒径および含有量を下記表1に基づいて変更したことを除いては、実施例1と同様の方法によりポリアミド系フィルムを得た。
【0275】
【0276】
<評価例>
前記実施例および比較例で製造されたフィルムについて、下記のように物性を測定および評価し、その結果を下記表2に示した。
【0277】
(評価例1:3D表面粗さ測定)
ブルカー(BRUKER)社のCONTOUR GT-Xを用いて測定した。1回の測定領域を166μm×220μmに設定し、倍率20の対物レンズ(OBJECTIVE LENS)を適用して測定した後、ガウシアンフィルタを適用して基本補正を行った。同様の測定を5回繰り返した後、測定されたデータから最大値、最小値を除いた値の平均値をとった。表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)を、フィルムのエア面およびベルト面に対してそれぞれ測定して、下記表2に記載した。前記測定は、ISO 25178に基づいて測定された。
【0278】
(評価例2:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを用いて、JIS K 7136規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0279】
(評価例3:ヘイズ変化量測定)
フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて2分間乾燥させ、前記評価例2による方法でヘイズを再度測定して、ヘイズ変化量(ΔHzM)を計算した。
【0280】
(評価例4:黄色度測定)
黄色度(YI)は、分光光度計(UltraScan PRO、Hunter Associates Laboratory)によりd65および10°の条件で、ASTM-E313規格に基づいて測定した。
【0281】
(評価例5:滑り性評価)
フィルムをロールで巻き取る際、互いに当接するフィルムの一面と他面との間の静的摩擦係数を測定し、0.3以下であれば良好、0.3超であれば不良と評価した。
【0282】
前記静的摩擦係数は、韓国Qmesys社の摩擦係数測定器を用いて、測定規格ASTM D1894に基づき、130mm×250mmおよび63mm×63mmの大きさにそれぞれ切断されたポリアミド系フィルムサンプルの第1面と第2面との間で測定した。
【0283】
(評価例6:巻取性評価)
フィルムの両端部をトリミングして、1460mm幅で500m長さを連続して巻いてロールを準備した後、全体の幅に明暗差を示す押圧痕(lump)があるか否かを目視観察により判断しており、10人の作業者のうち2人以上の作業者が押圧痕があると判断した場合は不良、そうでない場合は良好と評価した。
【0284】
(評価例7:光学性能評価)
前記評価例3によるMIBK溶剤浸漬後に測定されたフィルムのヘイズが5%以下であれば良好、5%超であれば不良と評価した。
【0285】
(評価例8:耐溶剤性評価)
フィルムをMIBK溶剤に5秒間浸漬した後、80℃にて2分間乾燥させ、フィルム表面を硬度81(タイプAデュロメータ)のMinoan社製の摩耗試験用消しゴムで、錘500g荷重にて3000回擦った後、フィルム表面の水接触角を測定した。この際、水接触角が70°~80°であれば良好、それ以外は不良と評価した。
【0286】
【0287】
表2を参照すると、フィルム第1面の3D表面粗さ測定の際、表面平面と平行な表面の最高点に配置された基準平面と表面との間の体積(Natural Volume)が100μm3~2800μm3に制御された実施例1~13によるポリアミド系フィルムの場合、前記体積が100μm3未満か、または2800μm3超である比較例1~6によるポリアミド系フィルムに比べて、優れた滑り性、巻取性、光学特性、および耐溶剤性を有することを確認した。
【符号の説明】
【0288】
10:重合設備
20:タンク
30:ベルト
40:熱硬化装置
50:ワインダー
100:ポリアミド系フィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:カバーウィンドウ
400:表示部
500:接着層