(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088583
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】モータ及びファン装置
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
H02K5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161629
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2022203539
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永元 里司
(72)【発明者】
【氏名】細井 啓一
(72)【発明者】
【氏名】太田 稔
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋
(72)【発明者】
【氏名】三田 智彦
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605EC05
5H605EC08
(57)【要約】
【課題】巻き線から剥離された剥離片による回路基板のショートを防止したモータを提供する。
【解決手段】モータは、コイルに電流を供給してロータを回転させるための磁界の発生を制御する回路基板と、巻き線を回路基板に電気的に接続するスリットターミナル(60U)とを備える。スリットターミナル(60U)は、芯線の直径より狭い間隔で巻き線(244U)を挟んで対向配置された一対の脚部(63A,63B)を備える。モータブラケットは、一対の脚部(63A,63B)の間に圧入された巻き線(244U)から剥離した剥離片(245U)を収容する剥離片収容空間(52A,52B)が形成されたターミナルホルダ(43U)を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータブラケットと、
前記モータブラケットに支持されたシャフトと、
前記シャフトに回転自在に支持されたロータと、
周方向に離間した位置に配置された複数のティース、及び導電性の芯線を絶縁性の被膜で覆った巻き線を複数の前記ティースそれぞれに巻回して形成された複数のコイルを有し、前記モータブラケットに固定されたステータと、
前記モータブラケットに固定されて、前記コイルに電流を供給して前記ロータを回転させるための磁界の発生を制御する回路基板と、
前記巻き線を前記回路基板に電気的に接続するスリットターミナルとを備えるモータにおいて、
前記スリットターミナルは、前記芯線の直径より狭い間隔で前記巻き線を挟んで対向配置された一対の脚部を備え、
前記モータブラケットは、一対の前記脚部の間に圧入された前記巻き線から剥離した剥離片を収容する剥離片収容空間が形成されたターミナルホルダを備えることを特徴とするモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記剥離片収容空間は、前記巻き線の延設方向において、前記脚部を挟んで対向配置された一対の剥離片収容壁によって画定されていることを特徴とするモータ。
【請求項3】
請求項2に記載のモータにおいて、
前記ターミナルホルダは、一対の前記剥離片収容壁の間に配置されて、一対の前記脚部の間に圧入される前記巻き線に当接して、前記巻き線から前記剥離片を剥離させる剥離突起を備え、
前記剥離片収容空間は、前記剥離突起の両側に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項4】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記ターミナルホルダには、前記剥離片収容空間を挟んで前記剥離突起と反対側に、前記脚部を収容すると共に前記剥離片収容空間に連通した脚部収容空間が形成され、
前記脚部収容空間は、前記巻き線の延設方向において、前記脚部を挟んで対向配置された一対の脚部収容壁によって画定され、
前記脚部収容空間に収容された前記脚部の一部は、前記剥離片収容空間に進入し、
前記巻き線の延設方向において、前記脚部の厚み寸法は、一対の前記剥離片収容壁の間隔より大きく、一対の前記脚部収容壁の間隔より小さいことを特徴とするモータ。
【請求項5】
請求項3に記載のモータにおいて、
前記スリットターミナルは、平行に配置されたN本の前記巻き線それぞれを挟んで対向配置された(N+1)個の前記脚部を備え、
前記ターミナルホルダは、両端の前記脚部それぞれに当接して、両端の前記脚部が互いに離間する方向に弾性変形するのを規制する一対の規制壁を備えることを特徴とするモータ。
【請求項6】
請求項1に記載のモータにおいて、
前記剥離片収容空間は、前記巻き線の延設方向に離間した複数の位置に形成されていることを特徴とするモータ。
【請求項7】
請求項1に記載のモータにおいて、
一対の前記脚部の間隔は、前記巻き線の圧入方向に向かって徐々に狭くなっていることを特徴とするモータ。
【請求項8】
請求項1に記載のモータと、
前記モータにより回転駆動されて冷却風を生成するファンとを備えることを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、及びモータを搭載したファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という)の推進に向けた取り組みが行われている。それに伴い、持続可能な生産消費形態の確保などのため、廃棄物や不良品の削減などを目指す技術が知られている。
【0003】
従来より、ブラシレスモータと、ブラシレスモータに供給する電力を制御する回路基板とを備える、所謂「機電一体型」のモータが知られている(例えば、特許文献1を参照)。このようなモータでは、ステータにコイル状に巻回された巻き線の端部を、回路基板に電気的に接続する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1には、回路基板に電気接合されたスリットターミナルの一対の脚部の間に巻き線を圧入することによって、巻き線の被膜除去と電気接合とを同時に行う給電構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一対の脚部に圧入された巻き線から剥離された剥離片には、絶縁性の被膜のみならず、導電性の芯線も含まれる。そのため、特許文献1の給電構造において、剥離片が回路基板に接触すると、ショートを起こす可能性がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、スリットターミナルを用いて回路基板に巻き線を電気的に接続するモータにおいて、巻き線から剥離された剥離片による回路基板のショートを防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、モータブラケットと、前記モータブラケットに支持されたシャフトと、前記シャフトに回転自在に支持されたロータと、周方向に離間した位置に配置された複数のティース、及び導電性の芯線を絶縁性の被膜で覆った巻き線を複数の前記ティースそれぞれに巻回して形成された複数のコイルを有し、前記モータブラケットに固定されたステータと、前記モータブラケットに固定されて、前記コイルに電流を供給して前記ロータを回転させるための磁界の発生を制御する回路基板と、前記巻き線を前記回路基板に電気的に接続するスリットターミナルとを備えるモータにおいて、前記スリットターミナルは、前記芯線の直径より狭い間隔で前記巻き線を挟んで対向配置された一対の脚部を備え、前記モータブラケットは、一対の前記脚部の間に圧入された前記巻き線から剥離した剥離片を収容する剥離片収容空間が形成されたターミナルホルダを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スリットターミナルを用いて回路基板に巻き線を電気的に接続するモータにおいて、巻き線から剥離された剥離片による回路基板のショートを防止することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るファン装置の一構成例を示す外観斜視図である。
【
図2】モータとファンとを分解した場合の分解斜視図である。
【
図4】ロータヨークを除いた状態のモータの構成を示す斜視図である。
【
図6】ブラケットカバー、巻き線、及びスリットターミナルを表面側から見た分解斜視図である。
【
図9】
図8のA-A断面図(A)、
図9(A)のB-B断面図(B)である。
【
図10】巻き線がスリットターミナルのスリットに挿入される過程を示す断面図である。
【
図11】第1実施形態に係る一対の脚部の寸法関係(A)、第2実施形態に係る一対の脚部の寸法関係(B)、比較例に係る一対の脚部の寸法関係(C)を示す図である。
【
図12】一対の脚部から巻き線に負荷される脚部の対向方向の荷重のシミュレーション結果である。
【
図13】一対の脚部から巻き線に負荷される巻き線の圧入方向の荷重のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態に係るファン装置の一態様として、例えば自動車などの車両に搭載され、ラジエータ内を流れるエンジンの冷却水などを冷却するファン装置について説明する。
【0012】
(ファン装置1の全体構成)
まず、
図1および
図2を参照して、ファン装置1の全体構成を説明する。
図1は、実施形態に係るファン装置1の一構成例を示す外観斜視図である。
図2は、モータ2とファン3とを分解した場合の分解斜視図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ファン装置1は、駆動源であるモータ2と、モータ2により回転駆動されて冷却風を生成するファン3とを備える。ファン装置1は、例えば、エンジンルーム内において、ラジエータと対向するように配設されている。
【0014】
(モータ2の構成)
次に、
図3~
図5を参照して、モータ2の構成を説明する。
図3は、モータ2を表面側から見た外観斜視図である。
図4は、ロータヨーク232を除いた状態のモータ2の構成を示す斜視図である。
図5は、
図3におけるV-V線断面図である。
【0015】
図3~
図5に示すように、モータ2は、アウターロータ型のブラシレスモータ201と、ブラシレスモータ201(より詳細には、コイル243による磁界の発生)を制御する回路基板202とを含む、所謂「機電一体型」の電動モータである。
【0016】
ブラシレスモータ201は、板状のモータブラケット203に支持されている。ブラシレスモータ201は、モータブラケット203の厚み方向の一方側(表面側)に配置されている。一方、モータブラケット203の厚み方向の他方側(裏面側)には、複数のネジ205によって、ドライバブラケット204が締結されている。これにより、モータブラケット203及びドライバブラケット204の間には収容空間206が形成される。そして、回路基板202は、この収容空間206に収容される。
【0017】
また、モータブラケット203の端部には、外部ハーネスが接続される2つのコネクタが一体になったコネクタユニット207が取り付けられている。ブラシレスモータ201、回路基板202、及びコネクタユニット207は、モータブラケット203を介して互いに電気的に接続されている。
【0018】
ブラシレスモータ201は、シャフト21と、シャフト21の外周に設けられたベアリング22A、22Bと、シャフト21の軸心周りにベアリング22A、22Bを介して回転自在に支持されたロータ23と、ロータ23の内側に固定された環状のステータ24と、を有する。
【0019】
シャフト21は、軸方向の一端がモータブラケット203の表面側に固定された固定軸である。なお、以下、モータ2の構成要素に関する説明において、シャフト21の軸方向を単に「軸方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした径方向を単に「径方向」とし、シャフト21の軸心を中心とした周方向を単に「周方向」とする。
【0020】
ロータ23は、ステータ24の外周を囲むように周方向に等間隔に並んで配置された複数の永久磁石231と、ステータ24及び複数の永久磁石231を覆うロータヨーク232と、を有する。そして、ロータヨーク232は、シャフト21の軸心と同心になるようにモータブラケット203の表面側に配置されている。また、ロータヨーク232は、ベアリング22A、22Bを介してシャフト21に回転自在に支持されている。さらに、ロータヨーク232は、外周壁232Aと、内周壁232Bと、連結壁232Cとを備える。
【0021】
外周壁232Aは、円筒形状の外形を呈する。また、外周壁232Aは、ステータ24より径方向の外側に配置されている。さらに、外周壁232Aは、複数の永久磁石231を内周面で支持している。換言すれば、複数の永久磁石231は、周方向に所定の間隔を隔てて外周壁232Aの内周面に固定されている。
【0022】
内周壁232Bは、円筒形状の外形を呈する。また、内周壁232Bは、ステータ24より径方向の内側に配置されている。さらに、内周壁232Bは、ベアリング22A、22Bを介してシャフト21に回転自在に支持される。
【0023】
連結壁232Cは、円盤形状の外形を呈する。また、連結壁232Cは、外周壁232A及び内周壁232Bの軸方向の端部同士を接続する。より詳細には、
図5に示すように、連結壁232Cは、シャフト21の軸方向の他端側(すなわち、モータブラケット203と反対側)において、外周壁232A及び内周壁232Bを接続する。
【0024】
ステータ24は、外周壁232A、内周壁232B、連結壁232C、及びモータブラケット203で囲まれた空間に収容されている。また、ステータ24は、複数の永久磁石231より径方向の内側において、モータブラケット203の表面側に固定されている。さらに、ステータ24は、径方向に所定の隙間を隔てて複数の永久磁石231に対面している。
【0025】
ステータ24は、円筒形状のステータコア241と、周方向に離間した位置においてステータコア241から径方向外向きに突出された複数(本実施形態では、12個)のティース242と、絶縁性のインシュレータで覆われた複数のティース242それぞれに巻回された複数のコイル243と、を有する。コイル243は、導電性の芯線を絶縁性の被膜で覆った巻き線244U、244V、244W(
図6参照)を、ティース242に繰り返し巻回することによって構成される。
【0026】
12個のティース242は、3つのグループに区分されて、各グループのティース242に巻回されたコイル243にU相、V相、W相の電流のいずれかが供給される。すなわち、回路基板202は、4本の巻き線244UにU相の電流を供給し、4本の巻き線244VにV相の電流を供給し、4本の巻き線244WにW相の電流を供給する。本実施形態では、各相のティース242(すなわち、巻き線244U、244V、244Wそれぞれ)の数Nを4としたが、Nの値は前述の例に限定されない。
【0027】
ステータ24は、コイル243にU相、V相、W相の電流が流れることによって磁界を発生する。そして、コイル243で発生した磁界と、複数の永久磁石231との間に生じる引力及び斥力によって、ロータヨーク232がシャフト21の軸心を中心として回転する。
【0028】
さらに、
図5に示すように、モータブラケット203は、ブラケット41と、ブラケットカバー42とで構成されている。ブラケット41はモータブラケット203の表面側を構成し、ブラケットカバー42はモータブラケット203の裏面側を構成する。但し、モータブラケット203は、ブラケット41及びブラケットカバー42を組み合わせて構成されることに限定されず、一体形成されていてもよい。
【0029】
そして、コイル243を構成する巻き線244U、244V、244Wの端部は、ブラケットカバー42に設けられたターミナルホルダ43U、43V、43W(
図6参照)と、スリットターミナル60U、60V、60W(
図6参照)とで挟持されることによって、回路基板202に電気的に接続される。
【0030】
図6は、ブラケットカバー42、巻き線244U、244V、244W、及びスリットターミナル60U、60V、60Wを表面側から見た分解斜視図である。
図7は、スリットターミナル60Uの斜視図である。
図8は、ターミナルホルダ43Uの平面図である。
図9(A)は、
図8のA-A断面図である。
図9(B)は、
図9(A)のB-B断面図である。
図10は、巻き線244Uがスリットターミナル60Uのスリット65Aに挿入される過程を示す断面図である。
【0031】
図6に示すように、ブラケットカバー42の端部には、各相の巻き線244U、244V、244Wを保持するターミナルホルダ43U、43V、43Wが形成されている。ターミナルホルダ43U、43V、43W(より詳細には、ブラケットカバー42)は、絶縁性の材料(例えば、樹脂)で一体成形されている。スリットターミナル60U、60V、60Wは、導電性の材料によって構成される。また、スリットターミナル60U、60V、60Wは、U相、V相、W相それぞれに対応付けて3つ設けられている。各相のターミナルホルダ43U、43V、43W、巻き線244U、244V、244W、及びスリットターミナル60U、60V、60Wの構成は共通するので、以下、ターミナルホルダ43U、巻き線244U、スリットターミナル60Uについて詳細に説明する。
【0032】
4本の巻き線244Uは、ターミナルホルダ43U及びスリットターミナル60Uの間において、所定の間隔を隔てて平行に配列されている。以下、ターミナルホルダ43U及びスリットターミナル60Uの間で巻き線244Uが延設されている方向(後述するベース61の短辺の方向)を「巻き線244Uの延設方向」と表記し、4本の巻き線244Uが配列された方向(ベース61の長辺の方向)を「巻き線244Uの配列方向」と表記し、後述する脚部63A~64Eが突出する方向(ベース61の厚み方向)を「脚部63A~64Eの突出方向」と表記する。巻き線244Uの延設方向、巻き線244Uの配列方向、及び脚部63A~64Eの突出方向は、互いに直交する方向である。
【0033】
スリットターミナル60Uは、モータブラケット203(より詳細には、ターミナルホルダ43U)及び回路基板202の間に配置されて、巻き線244Uを回路基板202に電気的に接続する。
図7に示すように、スリットターミナル60Uは、ベース61と、接点62と、複数の脚部63A、63B、63C、63D、63E、64A、64B、64C、64D、64Eとで構成される。ベース61は、接点62及び脚部63A~64Eを接続する長方形状の部分である。接点62は、長方形状のベース61の短辺から巻き線244Uの配列方向に延設された部分である。接点62は、ボルト等によって回路基板202に電気的に接続される。
【0034】
脚部63A~63E、64A~64Eは、長方形状のベース61の長辺(すなわち、巻き線244Uの配列方向)に沿って、所定の間隔を隔てて対向配置されている。また、5(=N+1)本の脚部63A~63Eは、長方形状のベース61の一方側の長辺において、ベース61の厚み方向に突出している。さらに、5本の脚部64A~64Eは、長方形状のベース61の他方側の長辺において、ベース61の厚み方向に突出している。すなわち、脚部63A~63Eと、脚部64A~64Eとは、ベース61の短辺の方向(巻き線244Uの延設方向)に離間した複数の位置(2箇所)に設けられている。その結果、スリットターミナル60Uは、概ねU字形状の外形を呈する。
【0035】
脚部63Aは、基部631Aとガイド部632Aとで構成される。基部631Aは、ベース61に接続された脚部63Aの基端側の部分である。ガイド部632Aは、基部631Aの先端に設けられた脚部63Aの先端側の部分である。基部631Aの幅(巻き線244Uの配列方向の長さ)は、脚部63Aの突出方向の全域で一定である。一方、ガイド部632Aの幅は、先端に向かって徐々に減少している。すなわち、ガイド部632Aは、先細り形状である。さらに、脚部63Aの突出方向において、ガイド部632Aの長さL2は、基部631Aの長さL1より長く設定されている。脚部63B、63C、63D、63E、64A、64B、64C、64D、64Eの構成も同様である。
【0036】
その結果、隣接する脚部63A、63Bの間には、4本の巻き線244Uのうちの1本を収容するスリット65Aが形成される。すなわち、隣接する脚部63A、63Bは、巻き線244Uを挟んで巻き線244Uの配列方向に対向配置されている。基部631A、631Bの位置におけるスリット65Aの幅(巻き線244Uの配列方向における基部631A、631Bの間隔)は、脚部63A、63Bの突出方向の全域で一定となっている。一方、ガイド部632A、632Bの位置におけるスリット65Aの幅(巻き線244Uの配列方向におけるガイド部632A、632Bの間隔)は、脚部63A、63Bの先端に向かって徐々に広がっている。
【0037】
同様に、隣接する脚部63B、63C、脚部63C、63D、脚部63D、63E、脚部64A、64B、脚部64B、64C、脚部64C、64D、脚部64D、64Eの間にも、1本の巻き線244Uを収容するスリット65B、65C、65D、66A、66B、66C、66Dが形成される。スリット65B~66Dの形状は、スリット65Aと共通する。なお、巻き線244Uの配列方向の両側にスリット65A~66Dが形成される脚部63B、63C、63D、64B、64C、64Dは、対称な形状になっている。一方、巻き線244Uの配列方向の一方側のみにスリット65A、65D、66A、66Dが形成される脚部63A、63E、64A、64Eは、スリット65A、65D、66A、66Dと反対側の面が突出方向に直線的に延びている。
【0038】
また、脚部63A、64A、脚部63B、64B、脚部63C、64C、脚部63D、64D、脚部63E、64Eは、巻き線244Uの延設方向から見て互いに重なる位置に配置されている。その結果、スリット65A、66A、スリット65B、66B、スリット65C、66C、スリット65D、66Dは、巻き線244Uの延設方向から見て互いに重なる位置に形成されている。そして、スリット65A、66Aは4つの巻き線244Uのうちの1本を収容し、スリット65B、66Bは4つの巻き線244Uのうちの他の1本を収容し、スリット65C、66Cは4つの巻き線244Uのうちの他の1本を収容し、スリット65D、66Dは4つの巻き線244Uのうちの他の1本を収容する。
【0039】
図10(A)に示すように、巻き線244Uは、開放された脚部63A、63Bの先端側からスリット65Aに挿入される。ここで、基部631A、631Bの位置におけるスリット65Aの幅は、巻き線244Uの芯線の直径より小さい。そこで、
図10(B)~
図10(D)に示すように、巻き線244Uは、スリット65Aの奥側に進入する過程で、基部631A、631Bの間に圧入される。そして、基部631A、631Bの間に圧入された巻き線244Uからは、一対の剥離片245Uが剥離される。剥離片245Uは、絶縁性の被膜のみならず、導電性の芯線の一部をも含む。
【0040】
これにより、
図6に示すように、スリット65Aに圧入された巻き線244Uは、基部631A、631Bに接触する部分の芯線が露出する。スリット65B、65C、65D、66A、66B、66C、66Dについても同様である。その結果、4本の巻き線244Uそれぞれがスリットターミナル60Uを通じて回路基板202に電気的に接続される。
【0041】
さらに、
図7に示すように、脚部63A、64Aのスリット65A、66Aと反対側の面には、巻き線244Uの配列方向に突出する押圧突起67、68が形成されてる。押圧突起67、68は、ターミナルホルダ43Uの後述する規制壁50A、51Aに当接して、ターミナルホルダ43Uに対するスリットターミナル60Uのがたつきを防止する。
【0042】
ターミナルホルダ43Uは、4本の巻き線244Uを収容したスリットターミナル60Uを、モータブラケット203に固定する役割を担う。また、ターミナルホルダ43Uは、スリット65A~66Dに圧入された巻き線244Uから剥離した一対の剥離片245Uを収容する役割を担う。
【0043】
図8に示すように、ターミナルホルダ43Uには、4本の巻き線244Uそれぞれを収容する巻き線収容空間44A、44B、44C、44Dが形成されている。巻き線収容空間44A~44Dは、巻き線244Uの配列方向に離間した位置に設けられた5(=N+1)個の隔壁45A、45B、45C、45D、45Eによって画定されている。一方、巻き線収容空間44A~44Dの巻き線244Uの延設方向の両側と、スリットターミナル60Uのベース61に対面する面とは、開放されている。さらに、隔壁45B~45Eそれぞれの側面には、収容した巻き線244Uの脱落を防止する保持突起46B~46Eが形成されている。
【0044】
また、ターミナルホルダ43Uには、10個の脚部63A~64Aそれぞれを収容する脚部収容空間47A、47B、47C、47D、47E、48A、48B、48C、48D、48Eが形成されている。脚部収容空間47A~48Eは、巻き線244Uの延設方向における隔壁45A~45Eの両側に設けられている。
図9(B)に示すように、脚部収容空間47Aは、巻き線244Uの延設方向に対向配置された一対の脚部収容壁49A、49Bによって画定される。巻き線244Uの延設方向において、一対の脚部収容壁49A、49Bの間隔D1は、脚部63Aの厚み寸法Wより大きく設定されている。脚部収容空間47B~48Eについても同様である。
【0045】
また、ターミナルホルダ43Uは、一対の規制壁50A、50Bと、一対の規制壁51A、51Bとを備える。規制壁50A、50B、51A、51Bは、脚部収容空間47A、47E、48A、48Eに隣接して配置されている。また、一対の規制壁50A、50B及び一対の規制壁51A、51Bは、巻き線244Uの配列方向に対向配置されている。巻き線244Uの配列方向の両側に位置する脚部63A、63E、64A、64Eは、脚部収容空間47A、47E、48A、48Eに進入したときに、規制壁50A、50B、51A、51Bに当接する。これにより、一対の規制壁50A、50Bは、脚部63A、63Eが互いに離間する方向に弾性変形するのを規制する。同様に、一対の規制壁51A、51Bは、脚部64A、64Eが互いに離間する方向に弾性変形するのを規制する。
【0046】
また、ターミナルホルダ43Uには、剥離片収容空間52A、52B、52C、52D、52E、52F、52G、52H、53A、53B、53C、53D、53E、53F、53G、53Hが形成されている。剥離片収容空間52A、52Bと、剥離片収容空間53A、53Bとは、巻き線収容空間44Aの巻き線244Uの延設方向の両側に配置されている。剥離片収容空間52A、52B、53A、53Bは、スリット65A、66Aに圧入された巻き線244Uから剥離された一対の剥離片245Uを収容する。
【0047】
同様に、剥離片収容空間52C、52D、52E、52F、52G、52H、53C、53D、53E、53F、53G、53Hは、それぞれが対応するスリット65B、65C、65D、66B、66C、66Dに圧入された巻き線244Uから剥離された一対の剥離片245Uを収容する。剥離片収容空間52A~53Hの構成は共通するので、以下、剥離片収容空間52A、52Bについて説明する。
【0048】
図9(B)に示すように、剥離片収容空間52A、52Bは、巻き線244Uの延設方向に対向配置された一対の剥離片収容壁54A、55A、54B、55Bによって画定される。巻き線244Uの延設方向において、脚部63A、63Bの厚み寸法Wは、一対の剥離片収容壁54A、55A及び一対の剥離片収容壁54B、55Bの間隔D2より大きく設定されている。さらに、剥離片収容空間52A、52Bは、巻き線244の配列方向において、脚部収容空間47A、47Bに連通している。そして、
図10(D)に示すように、剥離片収容空間52A、52Bには、脚部収容空間47A、47Bに進入した脚部63A、63Bの一部が圧入される。すなわち、一対の剥離片収容壁54A、55A及び一対の剥離片収容壁54B、55Bは、巻き線244Uの延設方向において、脚部63A、63Bを挟んで対向配置されている。
【0049】
さらに、ターミナルホルダ43Uは、剥離突起56A、56B、56C、56D、57A、57B、57C、57Dを備える。剥離突起56A~57Dは、巻き線244Uの配列方向に隣接する剥離片収容空間52A~53Hの間に配置されている。
図10(B)~
図10(D)に示すように、剥離突起56A~57Dは、スリット65A~66Dに圧入される巻き線244Uに当接して、巻き線244Uから剥離片245Uを剥離させる。剥離突起56A~57Dの構成は共通するので、以下、剥離突起56Aについて説明する。
【0050】
図9(A)に示すように、剥離突起56Aは、巻き線244Uの配列方向において、一対の剥離片収容空間52A、52Bの間に配置されている。換言すれば、剥離片収容空間52A、52Bは、巻き線244Uの配列方向において、剥離突起56Aの両側に配置されている。また、
図9(B)に示すように、剥離突起56Aは、巻き線244Uの延設方向において、剥離片収容壁54A、54Bと剥離片収容壁55A、55Bとの間に配置されている。さらに、脚部収容空間47A、47Bは、巻き線244Uの配列方向において、剥離片収容空間52A、52Bを挟んで剥離突起56Aと反対側に形成されている。
【0051】
図10を参照して、巻き線244Uがスリット65Aに圧入される過程を説明する。
【0052】
まず、巻き線収容空間44A、脚部収容空間47A、47B、剥離片収容空間52A、52B、及び剥離突起56Aを上に向けて、ターミナルホルダ43Uを水平面上に載置する。次に、巻き線収容空間44Aに巻き線244Uを載置する。これにより、
図10(A)に示すように、剥離突起56Aの先端が巻き線244Uに当接する。
【0053】
次に、スリット65A内に巻き線244Uが進入し、脚部63A、63Bが脚部収容空間47A、47Bに進入するように、ガイド部632A、632Bを下に向けたスリットターミナル60Uをターミナルホルダ43Uに押し込む。これにより、剥離突起56Aに当接された巻き線244Uは、スリット65Aを広げる(換言すれば、脚部63A、63Bを巻き線244Uの配列方向に離間させる)ようにして、基部631A、631Bの間に進入しようとする。しかしながら、巻き線244Uの配列方向の両端の脚部63A、63Eが一対の規制壁50A、50Bに当接することによって、脚部63A、63Bの離間が阻止される。
【0054】
これにより、
図10(B)~
図10(D)に示すように、巻き線244Uは、脚部63A、63B(より詳細には、基部631A、631B)に摺接しながら、スリット65Aに圧入される。このとき、脚部63A、63Bは、基部631A、631B及びガイド部632A、632Bの間の段差で巻き線244Uを削り取って、一対の剥離片245Uを生成する。そして、巻き線244Uから剥離した一対の剥離片245Uは、剥離片収容空間52A、52Bに収容される。
【0055】
なお、巻き線244Uの延設方向において、脚部63A、63Bによって削り取られる巻き線244Uの領域は、脚部63A、63Bの厚み寸法W(すなわち、一対の剥離片収容壁54A、55Aの間隔D2)より大きくなる。そのため、剥離片245Uは、圧縮された状態で剥離片収容空間52A、52Bに圧入される。また、脚部収容空間47A、47Bに進入する脚部63A、63Bの一部は、剥離片収容空間52A、52Bに圧入されて、剥離片収容空間52A、52Bの大部分を閉塞する。さらに、押圧突起67が規制壁50Aに当接することによって、ターミナルホルダ43Uに対するスリットターミナル60Uのがたつきが防止される。
【0056】
(ファン3の構成)
図1及び
図2に示すように、ファン3は、シャフト21の軸心上を回転中心としてロータ23と一体に回転するボス部31と、ボス部31の外周から放射状に張り出された複数(本実施形態では7枚)の羽根32と、隣り合う羽根32同士を先端側で連結する複数(本実施形態では7つ)の連結部材33とを有する。
【0057】
また、ボス部31は、円盤形状の円盤部311と、円盤部311の外縁からモータ2に向けて突出すると共に、複数の羽根32が取り付けられた円筒形状の周壁部312とを含む。ファン3がモータ2に取り付けられると、円盤部311はロータヨーク232の連結壁232Cに対面し、周壁部312はロータヨーク232の外周壁232Aを囲む。
【0058】
そして、
図2に示すように、ファン3は、ネジ穴313に螺合されたネジ10によって、ロータヨーク232に締結される。本実施形態では、ファン3の回転バランスを考慮して、3つのネジ10が、ファン3の回転中心を中心とする円周上において等間隔となるように取り付けられる。なお、ファン3をモータ2に締結する締結部材として必ずしも3つのネジ10を用いる必要はなく、ファン3がモータ2に締結可能であれば、ネジ10の数や締結部材の種類については特に制限はない。
【0059】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0060】
上記の実施形態によれば、スリット65Aに圧入された巻き線244Uから剥離した一対の剥離片245Uは、剥離片収容空間52A、52Bに収容される。これにより、剥離片245Uが回路基板202に接触して、回路基板202がショートするのを防止することができる。これにより、モータ2の故障の確率が減少するので、廃棄物の削減に寄与する。
【0061】
また、上記の実施形態によれば、剥離突起56Aを巻き線244Uに当接させてスリット65Aに押し込むことによって、スリット65Aに巻き線244Uを確実に圧入することができる。これにより、モータ2の製造工程における歩留まりが向上するので、さらに廃棄物を削減することができる。但し、巻き線244Uの直径が小さい場合には、剥離突起56Aを省略してもよい。
【0062】
また、上記の実施形態によれば、脚部63Aの厚み寸法Wを、一対の脚部収容壁49A、49Bの間隔D1より小さくすることによって、
図10に示した組立工程の初期において、脚部収容空間47Aに脚部63Aをスムーズに進入させることができる。一方、脚部63Aの厚み寸法Wを、一対の剥離片収容壁54A、55Aの間隔D2より大きくすることによって、
図10に示した組立工程の後期において、脚部63Aが捩じれることなく真っ直ぐ挿入される。さらに、W>D2とすることによって、大きなサイズの剥離片245Uが圧縮された状態で剥離片収容空間52Aに収容される。これにより、剥離片収容空間52Aから剥離片245Uが脱落するのを防止できる。
【0063】
また、上記の実施形態によれば、両端の脚部63A、63Eを一対の規制壁50A、50Bに当接させることによって、スリット65Aに巻き線244Uを圧入する過程で脚部63A、63Bが離間するのを阻止できる。これにより、巻き線244Uから剥離片245Uを確実に剥離させて、露出された芯線をスリットターミナル60Uに接触させることができる。さらに、押圧突起67を規制壁50Aに当接させることによって、ターミナルホルダ43Uに対するスリットターミナル60Uのがたつきが防止されるので、巻き線244Uとスリットターミナル60Uとの接触不良が防止される。その結果、モータ2の製造工程における歩留まりがさらに向上する。
【0064】
なお、前述の作用効果を得る上で、ターミナルホルダ43U、43V、43W及びスリットターミナル60U、60V、60Wと、ブラシレスモータ201の構成部品(シャフト21、ロータ23、及びステータ24)及びモータブラケット203との位置関係は、
図1~
図5の例に限定されない。
【0065】
また、上記の実施形態では、ファン装置1の用途として、ラジエータに冷却風を供給する例を説明したが、ファン装置1の用途はこれに限定されない。また、上記の実施形態では、モータ2の用途として、ファン3を回転駆動するファンモータの例を説明したが、モータ2の用途はこれに限定されない。他の例として、モータ2は、自動車のスライドドアを開閉する用途に利用されてもよい。
【0066】
[第2実施形態]
図11~
図13を参照して、第2実施形態に係るスリットターミナル60U’について説明する。なお、第1実施形態との共通点の詳細な説明は省略し、相違点を中心に説明する。また、一対の脚部63A’、63B’の関係について説明するが、隣接する他の脚部についても同様である。さらに、図示は省略するが、スリットターミナル60V’、60W’についても同様である。
【0067】
図11は、第1実施形態に係る一対の脚部63A、63Bの寸法関係(A)、第2実施形態に係る一対の脚部63A’、63B’の寸法関係(B)、比較例に係る一対の脚部63A’’、63B’’の寸法関係(C)を示す図である。
【0068】
図11(A)に示すように、第1実施形態に係る脚部63A、63Bは、基部631A、631Bとガイド部632A、632Bとの間に、エッジ部633A、633Bを備える。エッジ部633A、633Bは、一対の基部631A、631Bの間(すなわち、スリット65A)に圧入される巻き線244Uから一対の剥離片245Uを剥離させる役割を担う。また、一対の脚部63A、63B(より詳細には、一対の基部631A、631B)の間隔X(例えば、0.75mm)は、巻き線244Uの圧入方向において一定(すなわち、一対の基部631A、631Bが平行)である。換言すれば、第1実施形態に係るスリット65Aの幅は、巻き線244Uの圧入方向において一定である。
【0069】
図11(A)において、巻き線244Uは、一対のエッジ部633A、633Bで剥離片245Uが剥離されて、中心部分の幅Xの部分だけがスリット65Aに圧入される。すなわち、剥離片245Uが剥離された後の巻き線244は、ストロークエンドにおけるスリット65Aの幅Xと一致する。
【0070】
図11(B)に示すように、第2実施形態に係る脚部63A’、63B’は、基部631A’、631B’とガイド部632A’、632B’との間に、エッジ部633A’、633B’を備える。エッジ部633A’、633B’の役割は、
図11(A)と共通する。また、一対の脚部63A’、63B’(より詳細には、一対の基部631A’、631B’)の間隔Y1、Y2は、巻き線244Uの圧入方向に向かって徐々に狭くなっている。換言すれば、第2実施形態に係るスリット65A’は、巻き線244Uの圧入方向に向かって、幅が徐々に狭くなるテーパ形状である。
【0071】
すなわち、一対の基部631A’、631B’の先端(エッジ部633A’、633B’の位置)の間隔Y1(例えば、0.8mm)は、一対の基部631A’、631B’の基端側(ストロークエンド)の間隔Y2(0.7mm)より大きい(Y1>Y2)。そして、スリットターミナル60Uの寸法公差をT(例えば、0.05mm)とすると、Y1-Y2≧2Tとなるように設計されるのが望ましい。これにより、最も不利な方向に製造誤差が生じたとしても、Y1≧Y2が保証される。なお、ストロークエンドとは、一対の剥離片245Uが剥離された巻き線244Uが最終的に配置される位置である。
【0072】
図11(B)において、巻き線244Uは、一対のエッジ部633A’、633B’で剥離片245Uが剥離されて、中心部分の幅Y1の部分だけがスリット65A’に圧入される。すなわち、剥離片245Uが剥離された後の巻き線244は、ストロークエンドにおけるスリット65A’の幅Y2より大きい。これにより、剥離片245Uが剥離された後の巻き線244は、ストロークエンドに向けて圧入される過程で圧縮される。その結果、ストロークエンドにおいて、巻き線244と一対の脚部63A’、63B’との電気的な接続が良好になる。
【0073】
図11(C)に示すように、比較例に係る脚部一対の脚部63A’’、63B’’(より詳細には、一対の基部631A’’、631B’’)の間隔Z1、Z2は、巻き線244Uの圧入方向に向かって徐々に広くなっている。換言すれば、比較例に係るスリット65A’’は、巻き線244Uの圧入方向に向かって、幅が徐々に広くなる逆テーパ形状である。すなわち、一対の基部631A’’、631B’’の先端(エッジ部633A’’、633B’’の位置)の間隔Z1は、一対の基部631A’’、631B’’の基端側(ストロークエンド)の間隔Z2より小さい(Z1<Z2)。
【0074】
図11(C)において、巻き線244Uは、一対のエッジ部633A’’、633B’’で剥離片245Uが剥離されて、中心部分の幅Z1の部分だけがスリット65A’’に圧入される。すなわち、剥離片245Uが剥離された後の巻き線244は、ストロークエンドにおけるスリット65A’’の幅Z2より大きい。その結果、ストロークエンドにおいて、巻き線244と一対の脚部63A’’、63B’’との電気的な接続が不安定になる。
【0075】
図12は、一対の脚部から巻き線に負荷される脚部の対向方向の荷重のシミュレーション結果である。
図13は、一対の脚部から巻き線に負荷される巻き線の圧入方向の荷重のシミュレーション結果である。より詳細には、
図12(A)及び
図13(A)は、圧入過程の各位置(以下、「圧入ストローク」と表記する。)における荷重を示している。また、
図12(B)及び
図13(B)は、ストロークエンドにおける荷重を示している。
【0076】
なお、
図12及び
図13では、巻き線244Uの線径を1.3mm、1.4mm、1.5mmと変えて、シミュレーションを実施した。また、
図12及び
図13では、第1実施形態(すなわち、
図11(A)の形状)と、第2実施形態(すなわち、
図11(B)の形状)でシミュレーションを実施した。さらに、このシミュレーションでは、巻き線244Uを圧入しても一対の脚部の間隔は変化しないことを前提としている。
【0077】
図12(A)及び
図13(A)を参照すれば、第1実施形態に係る脚部63A、63Bから巻き線244Uに負荷される荷重は、圧入ストロークの全域で概ね一定となる。これに対して、第2実施形態に係る脚部63A’、63B’から巻き線244Uに負荷される荷重は、ストロークエンドに近づくほど大きくなる。すなわち、第2実施形態によれば、巻き線244Uが圧縮されながらスリット65A’に圧入されていることが分かる。
【0078】
また、
図12(B)及び
図13(B)を参照すれば、第2実施形態に係る脚部63A’、63B’から巻き線244Uに負荷される荷重は、第1実施形態に係る脚部63A、63Bから巻き線244Uに負荷される荷重と比較して、遥かに大きい。特に、第2実施形態の線径1.3mmと、第1実施形態の線径1.5mmとを比較しても、第2実施形態の方が荷重が大きいことが分かる。すなわち、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較して、脚部63A’、63Bと巻き線244Uとの電気的な接続が良好になることが分かる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 :ファン装置
2 :モータ
3 :ファン
10 :ネジ
21 :シャフト
22A,22B :ベアリング
23 :ロータ
24 :ステータ
31 :ボス部
32 :羽根
33 :連結部材
41 :ブラケット
42 :ブラケットカバー
43U,43V,43W :ターミナルホルダ
44A-44D :巻き線収容空間
45A-45E :隔壁
46B-46E :保持突起
47A-48E :脚部収容空間
49A,49B :脚部収容壁
50A-51B :規制壁
52A-53H :剥離片収容空間
54A-55B :剥離片収容壁
56A-57D :剥離突起
60U,60V,60W :スリットターミナル
61 :ベース
62 :接点
63A-64E :脚部
65A-66D :スリット
67,68 :押圧突起
201 :ブラシレスモータ
202 :回路基板
203 :モータブラケット
204 :ドライバブラケット
205 :ネジ
206 :収容空間
207 :コネクタユニット
231 :永久磁石
232 :ロータヨーク
232A :外周壁
232B :内周壁
232C :連結壁
241 :ステータコア
242 :ティース
243 :コイル
244U,244V,244W :巻き線
245U :剥離片
311 :円盤部
312 :周壁部
313 :ネジ穴
631A,631B :基部
632A,632B :ガイド部
633A,633B :エッジ部