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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088601
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】攪拌ミル
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/18 20060101AFI20240625BHJP
   B02C 17/16 20060101ALI20240625BHJP
   B01F 33/25 20220101ALI20240625BHJP
   B01F 27/115 20220101ALI20240625BHJP
   B01F 27/191 20220101ALI20240625BHJP
   B01F 27/73 20220101ALI20240625BHJP
   B07B 1/20 20060101ALI20240625BHJP
   B03B 5/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B02C17/18 E
B02C17/16
B01F33/25
B01F27/115
B01F27/191
B01F27/73
B07B1/20 A
B03B5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023205974
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】10 2022 134 099.6
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】508277243
【氏名又は名称】ネッツシュ-ファインマールテヒニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【弁理士】
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー モッシュル
【テーマコード(参考)】
4D021
4D063
4D071
4G036
4G078
【Fターム(参考)】
4D021AA15
4D021EB01
4D063FF14
4D063FF29
4D063FF35
4D063GC17
4D071AA03
4D071AA06
4D071AB14
4G036AC70
4G078BA01
4G078BA09
4G078DA03
4G078DA23
4G078EA10
4G078EA13
(57)【要約】
【課題】分離システムを通過する粉砕材料の放出を妨害する、分離システム上における粉砕体の蓄積を防止する攪拌ミルを提供する。
【解決手段】粉砕体を含む粉砕チャンバと、攪拌シャフトであり、粉砕チャンバ内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転し、攪拌シャフトに相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材、好適には粉砕ディスクを支持する、攪拌シャフトとを備える攪拌ミルであって、攪拌シャフトが、出口側において、外周面上に好適には粉砕部材がちりばめられたバスケットを有し、そのバスケットが、スクリーン状分離ドラムを支持する出口と重なり、バスケットの内周面とスクリーン状分離ドラムの外周面との間の半径方向距離が、周方向において一定ではなく変化する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕体を含む粉砕チャンバ(2)と、
攪拌シャフト(3)であり、前記粉砕チャンバ(2)内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転し、前記攪拌シャフト(3)に相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ前記粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材(4)を支持し、好適には粉砕ディスク(4)を支持する、前記攪拌シャフト(3)と、
を備え、
前記攪拌シャフト(3)が、出口側において、好適には外周面上に粉砕部材(4)がちりばめられたバスケット(9)を有し、該バスケット(9)が、スクリーン状分離ドラム(5)を支持する出口(8)と重なる攪拌ミルにおいて、
前記バスケット(9)の内周面(10)と前記スクリーン状分離ドラム(5)の外周面(11)との間の半径方向距離が、周方向において一定ではなく変化し、前記分離ドラム(5)と前記バスケット(9)との間における半径方向距離の変化の推移が、一定であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項2】
請求項1に記載の攪拌ミル(1)であって、スクリーンドラム(5)が、延性材料で構成されると共に、対をなして互いに対向するよう配置されたダイ(12)間における圧縮時の塑性変形によって非円形形状が付与されていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)の断面が、前記攪拌シャフト軸線に対して垂直な2つの主軸線a及びbを有し、
a<30 mmの場合、aはbよりも少なくとも2 mm大きく、
a=30 mm~100 mmの場合、aはbよりも少なくとも4 mm大きく、
a>100 mmの場合、aはbよりも少なくとも6 mm大きい、
ことを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)の断面が、前記攪拌シャフト軸線に対して垂直な多角形、好適には五角形又は六角形の形状であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)が、スプリット管であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項6】
分離システム(5)を通る粉砕材料の放出を妨害する、分離システム(5)上における粉砕体の蓄積を防止するための方法であって、
請求項1~5の何れか一項に記載の攪拌ミル(1)における好適にはスプリット管として構成されるスクリーンドラム(5)を、プレス、好適には変形に影響を及ぼすダイを相互接続することにより、分解された状態で塑性変形させ、これにより前記スクリーンドラム(5)が単なる公差を超えて非円形形状を恒久的に有することを特徴とする、方法。
【請求項7】
分離システム(5)を通る粉砕材料の放出を妨害する、分離システム(5)上における粉砕体の蓄積を防止するための方法であって、
請求項1~5の何れか一項に記載の攪拌ミル(1)におけるバスケット(9)を、その内周面(10)において、単なる公差を超えて非円形形状を有するよう製造することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に係る攪拌ミルに関する。
【背景技術】
【0002】
攪拌ミルは、固体の解砕又は粉砕すべき懸濁液又は分散液内の粒径を減少させるために使用される。この場合のサイズは、数百マイクロメートル~数ナノメートルのサイズ範囲である。
【0003】
攪拌ミル内で生じるプロセスについては、図1を参照しつつ以下に説明する。
【0004】
図1は、水平攪拌シャフト3(粉砕ロータと称されることも多い)を備える攪拌ミル1の略図を示す。図1において、粉砕容器6内に位置すると共に、一般に鋼球又はセラミック球として構成される粉砕体は図示されていない。
【0005】
攪拌ミル1の動作中、粉砕すべき材料は、攪拌ミル1の入口7を介して、粉砕容器6によって包囲された粉砕チャンバ2内へ又は粉砕チャンバ2を通るようポンプで送られる。
【0006】
粉砕シャフト3に相対回転不可能に接続されると共に、粉砕ディスク又は攪拌要素と称されることも多い粉砕部材4は、攪拌シャフト3の回転運動によって回転する。回転運動を生じさせるために、攪拌シャフト3は、例えば、ベルトドライブ(図示せず)を介して電気モータで駆動することができる。この場合、攪拌ミル1のドライブは通常、粉砕容器6に隣接するハウジング内に配置されている。
【0007】
粉砕チャンバ2内の粉砕部材4近傍にある粉砕体は、粉砕部材4の回転により、粉砕容器6の周方向に連行される。粉砕部材4の各対の間の中央領域において、移動させた粉砕体は、頂点領域に到達すると直ぐに攪拌シャフト3方向に再び逆流する。このようにして、粉砕部材4の各対の間で粉砕体の循環運動が生じる。マイクロメートル又はナノメートル範囲で可及的に微細な粒径を達成するために、0.05 mm~10 mm、理想的には、0.1 mm~5 mmのサイズの粉砕体が使用される。
【0008】
粉砕チャンバ2を通ってポンプで送られた粉砕材料懸濁液の固体と粉砕体との間の衝突は、粉砕体の運動によって引き起こされる。これら衝突により、粉砕材料懸濁液中の固体から微粒子が分離され、従って攪拌ミル1の出口8に到達する固体は、入口7で供給された固体よりも最終的に大幅に小さい。達成可能な最大粉砕は、粉砕体のサイズに直接的に依存する。
【0009】
粉砕体が粉砕チャンバ2から除去されないようにするために、例えば、スクリーン、フィルタ、又はスプリット管の形態の分離システム5(以下においては用語「スクリーン」が全てのタイプの分離システムを含むものとする)は、粉砕材料が放出される出口8の前に取り付けられている。
【0010】
分離システム5の通路が粉砕体で詰まるのを防ぐために、分離システム5は通常、バスケット9によって包囲され、このバスケットは、攪拌シャフト3の出口側の端部に取り付けられるか又は出口側の端部を形成している。バスケット9は、攪拌ミル1の動作中、分離システム5周りを回転する。バスケット9の回転により、バスケット9の外周面上に位置する粉砕体は、バスケット9の回転方向に加速し、この場合に生じる遠心力によって粉砕容器6方向に移動する。バスケット9には更に、一般にスリットが設けられている。これらスリットにより、バスケット9周りを流れると共に、分離システム5とバスケット9との間のギャップに位置する粉砕材料懸濁液の一部が、粉砕容器6方向に再び流れることができ、これによりそこに蓄積した粉砕体が分離システム5から洗い流される。
【0011】
分離システムにおけるこのような洗い流しは一般に良好に機能するが、特定の不利な状況下においては完全に逆の効果が生じる可能性がある。
【0012】
攪拌ミルにおける関連部品の形状及びサイズ、特に攪拌シャフトのバスケットと分離システムとの間のギャップによっては、バスケットと分離システムとの間のギャップに位置する粉砕体がもはや放出されなくなる可能性がある。このような場合、粉砕材料懸濁液の流れ方向は、遠心力とは逆に分離システム方向に向けて流れる。この結果、粉砕体が分離システム方向に向けて移動し、そこに蓄積される。更にこの場合、乱流が生じて、バスケットと分離システムとの間のギャップから粉砕体が放出されることがより困難になる可能性がある。このことは最終的に、分離システムにおける通路開口のシフト、引いてはその通路開口の詰まりをもたらし、これにより攪拌ミルの効率が著しく低下する。最悪の場合、攪拌ミル内で大きな圧力増加が生じる可能性があり、その結果より大きな損傷がもたらされないようにするために、分離システムが洗浄されるまで動作を停止する必要がある。
【0013】
乱流は更に、粉砕体が分離システムに沿って引きずられ、これにより分離システムに過度の摩耗の兆候が生じるという結果をもたらす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した背景事情を考慮し、本発明の課題は、分離システムを通過する粉砕材料の放出を妨害する、分離システム上における粉砕体の蓄積を防止する攪拌ミルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、この課題は、攪拌ミルに関する主請求項の特徴部分によって解決される。
【0016】
従って、この課題は、粉砕体を含む粉砕チャンバと、その粉砕チャンバ内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転する攪拌シャフトによって解決される。攪拌シャフトは、その攪拌シャフトに相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置く幾つかの粉砕部材を支持している。粉砕部材は、好適には、粉砕ディスクの形状で構成されると共に、粉砕体を移動させる。攪拌シャフトは、出口側において、バスケットを有し、このバスケットは、好適には、その外周上に粉砕部材を有すると共に、スクリーン状分離ドラムを支持する出口と重なっている。本発明の攪拌ミルは、バスケットの内周面とスクリーン状分離ドラムで一般にスクリーン構造を形成する外周面との間において、攪拌シャフトを基準とする半径方向距離が周方向に一定でないことを特徴とする。
【0017】
その代わりに、半径方向距離は変化する。この場合、単なる公差範囲内にある変化は本発明に係るものではない。本発明に係る変化は、無視できない程度の変化である。
【0018】
バスケットの内周面と分離ドラムの外周面との間の半径方向距離は、好適には、バスケットがスクリーンドラム周りを回転するときに、斜め方向又は半径方向外方に向けて及び斜め方向又は半径方向内方に向けて無視できない程度の流れが形成されるよう変化する。即ち、この変化により、半径方向外方に向けて力又はポンプ効果が生じる。
【0019】
分離ドラムとバスケットとの間における半径方向距離の変化は、分離ドラムの断面が楕円として構成されることによって理想的に実現することができる。その結果、バスケットの回転により、分離ドラムとバスケットとの間で脈動圧力比が生じる。これにより、流れが生じ、一方ではスプリット管表面における粉砕体の蓄積が防止され、他方ではそのスプリット管表面に位置する粉砕体が除去される。
【0020】
この場合に流れは、ジャケット面にスリットが設けられたバスケットの攪拌シャフトが分離ドラム周りを回転することによって生じる。この回転により、液体又は粉砕材料懸濁液及び粉砕体は、バスケットとスクリーンドラムとのギャップがバスケットの回転の過程でより狭くなる箇所において、バスケットのスリットを通って外側に変位する。これとは対照的に、粉砕体及び粉砕材料懸濁液は、バスケットの回転の過程でギャップがより広くなる箇所において、バスケットのスリットを通って分離ドラム方向に向けて吸い込まれる。このようにして、分離ドラムのジャケットから粉砕体を除去する脈動流が生じる。
【0021】
「バスケット」という用語は、攪拌シャフトから離れた前面が開放され、攪拌シャフトに面する前面が閉鎖された中空円筒であると理解される。この場合、攪拌シャフトに面する面は、攪拌シャフトと相対回転不可能に接続されているか又は攪拌シャフトに移行している。バスケットは、そのジャケット面に沿って複数のスリットを有し、これらスリットは、理想的には、均等に分布すると共に、中空円筒の長手方向軸線と平行又は実質的に平行に延在し、中空円筒内部への通路を開放している。
【0022】
分離ドラム周りにバスケットが「重なる」とは、分離ドラム及びバスケットが同軸配置され、分離ドラムが少なくとも部分的にバスケット内に突入していることを表す。
【0023】
「スクリーン状分離ドラム」という用語は、スクリーン表面を形成する分離システムのセクションを表す。この場合、「分離ドラム」という用語は、「分離システム」又は「スクリーンドラム」と同義に使用することができる。従って、「分離ドラム」という用語は、スプリット管又は段付きスプリット管として構成された分離システムも表す。
【0024】
バスケットと分離ドラムとの間の「無視できない程度」に変化する距離とは、上述した脈動効果が測定可能、即ち上述した粉砕体の放出がもたらされるほど明瞭な場合に存在するが、これに限定されない。何れにせよ、これは、分離ドラムとバスケットとの間の半径方向距離が、最初の半径方向距離領域よりも1.25倍大きい少なくとも1つのセクションが設けられている場合に存在する。潜在的な従来技術に関して、周方向における純粋に局所的な個々の溝又は分離ドラムにおけるジャケットの凹部は、本発明に従って要求される半径方向距離の差異及びその差異によってもたらされる効果を実現するのに適していないことを述べておくことが重要である。従って、分離ドラムとバスケットとの間の半径方向距離が、最小の半径方向距離よりも1.25倍大きい上述した少なくとも1つのセクションは、好適には、分離ドラムの外周面の少なくとも10%に沿って延在している。理想的には、分離ドラムとバスケットとの間の距離は、分離ドラム周りの360°の過程で数回変化し、従って出発点に再び到達するまでに、より小さく/より大きく/より小さく/より大きくなる。多くの場合、これだけで必要な圧力変動及び流れが生じる。
【0025】
「無視できない程度」の流れは、攪拌シャフトの定格速度で上述した脈動効果がもたらされるときに生じる。
【0026】
流れの「外方方向」とは、分離ドラムから離れて粉砕容器に向かう方向を表す。「内方方向」とは、その反対方向を表す。
【0027】
出口が分離ドラムを「支持する」とは、粉砕材料が分離ドラムを通過した後に攪拌ミルの出口に間接的又は直接的にガイドされるよう分離ドラムが取り付けられていることを表す。
【0028】
バスケットと分離ドラムとの間の最大距離が、垂直方向に見て、分離ドラムの最下部領域に設けられないようスクリーン状分離ドラムが設置される場合、又は最大距離が、垂直方向に見て、最上部及び最下部に設けられるよう設置される場合、特に好適である。
【0029】
本発明に係る設計の利点は、バスケットと分離ドラムとの間で不必要なスペースが取られないことである。
【0030】
本発明を設計するためのオプションは多数あるので、本発明の有効性又は使い易さを更に向上させることができる。
【0031】
好適な実施形態において、スクリーンドラムは、延性材料で構成されると共に、対をなして互いに対向するよう配置されたダイ間における圧縮時の塑性変形によって非円形形状が付与されている。
【0032】
このようにして、楕円形の断面を有するスクリーンドラムを容易に製造することができる。楕円形のスクリーンドラムの利点は、スクリーンドラムとバスケットとの間における半径方向距離の変化の推移が一定に実現されることである。これにより、脈動流の発生が容易になる。従って、バスケットの回転による流れの変化は最適な頻度で生じ、理想的な放出流が得られる。
【0033】
本明細書における「延性」材料とは、破断点伸び率Aが1%~50%の材料であると理解される。
【0034】
「非円形形状」という用語は、理想的には楕円形の断面を表すが、ジャンプ又はエッジを有する断面を含むことも想定可能である。
【0035】
好適な更なる実施形態において、スクリーンドラムの断面は、攪拌シャフト軸線に対して垂直な2つの主軸線a及びbを有する。この場合、好適には、以下のことが当てはまる:
a<30 mmの場合、aはbよりも少なくとも2 mm大きく、
a=30 mm~100 mmの場合、aはbよりも少なくとも4 mm大きく、
a>100 mmの場合、aはbよりも少なくとも6 mm大きい。
【0036】
言うまでもなく、このための前提条件は、粉砕体が、上述した差異から生じる全ての局所的な半径方向ギャップ高さよりも小さいことである。主軸線bが分離ドラムとバスケットとの間のギャップを通る箇所においては、分離ドラムとバスケットとの間の半径方向距離は最小である。主軸線aが分離ドラムとバスケットとの間のギャップを通る箇所においては、分離ドラムとバスケットとの間の半径方向距離は最大である。この場合、周方向における分離ドラムの外周面の経路は、理想的には、2つの主軸線がそれぞれ外周面と交差するセクション間で一定である。これにより、分離ドラムにおいて楕円形の断面が得られる。内部試験及びシミュレーションにより、このタイプの形状であれば最適な放出流が得られることが示された。
【0037】
「主軸線」という用語は、分離ドラムの長手方向軸線を通ると共に、最大円周又は最小円周の頂点における接線に対する垂線を表す。従って、主軸線bは、最小直径の接線に対して垂直に延びている。主軸線aは、最大直径の接線に対して垂直に延びている。
【0038】
好適な更なる実施形態において、スクリーンドラムの断面は、攪拌シャフト軸線に対して垂直な多角形である。この場合、スクリーンドラムの断面は、五角形又は六角形の形状を有するのが好適である。
【0039】
殆どの用途において、ジャンプ又はエッジを有さない断面が一般に有利である。なぜならこれにより、一般に、バスケットと分離ドラムとの間のギャップから粉砕体を放出するのに理想的な脈動流が生じるからである。特に、楕円形の断面がこの目的に適している。ただし、多角形の断面を使用することも想定可能である。
【0040】
このことは、例えば、攪拌ミルの攪拌シャフトが極めて低速で動作し、これにより楕円形の断面だと圧力変化の頻度が低過ぎる場合に有利であり得る。
【0041】
スクリーンドラムは、好適には、スプリット管である。
【0042】
スプリット管は、周方向のジャケット面に幾つかのギャップを有する中空円筒のことである。粉砕材料は、ギャップを通ってスプリット管の内部に到達することができ、そこから攪拌ミルから運び出すことができる。この場合、これらギャップは、典型的にはワイヤの形態のギャップ形成部が支持部に巻かれることによって形成される。これら巻線間の距離は、各ギャップに対応する。この場合、支持部周りにギャップ形成部が巻かれる巻線のタイプや、巻き付け後に更なる製造ステップが実施されるかに応じて、半径方向スプリット管と軸線方向スプリット管とに区別される。軸線方向スプリット管の場合、各ギャップは、スプリット管におけるジャケット面の長手方向軸線と平行又はほぼ平行に延在する。これに対して、半径方向スプリット管の場合、ギャップは、スプリット管における周方向のジャケット面の長手方向軸線周りを螺旋状に延在する。
【0043】
スプリット管の利点は、ギャップ幅及びギャップ経路を、適用領域のタイプ、粉砕体のサイズ、並びに粉砕材料懸濁液の粘度に関して良好に適合できることである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】従来技術に既知の攪拌ミルを示す略図である。
図2】本発明に係る攪拌ミルを示す縦断面図である。
図3】本発明に係る攪拌ミルを、断面がスクリーンドラムを通る状態で示す横断面図である。
図4】スクリーンドラムの断面を楕円形にすると共に初期位置にあるダイスを、これらダイスの間に配置されたスクリーンドラムと一緒に示す縦断面図である。
図5】スクリーンドラムの断面を楕円形にすると共に初期位置にあるダイスを、これらダイスの間に配置されたスクリーンドラムと一緒に示す横断面図である。
図6】スクリーンドラムの断面を楕円形にすると共に下死点にあるダイスを、成形されたスクリーンドラムと一緒に示す横断面図である。
図7】スクリーンドラムの断面を楕円形にすると共に初期位置に戻したダイスを、成形されたスクリーンドラムと一緒に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の動作モードは、図2図7に基づいて例示的に説明する。
【0046】
図2及び図3は、スクリーンドラム5が取り付けられた攪拌ミル1を示し、図4図7は、スクリーンドラム5を楕円形の断面にするためのダイ12を、スクリーンドラム5と一緒に示す。
【0047】
攪拌ミル1の構成は、図2及び図3に基づいて理解することができる。特に図3においては、長い主軸線aを表すより長い二重矢印と、短い主軸線bを表すより短い二重矢印が示されている。未粉砕材料は、入口7を通って粉砕チャンバ2内に到達する。未粉砕材料は、この粉砕チャンバ内で粉砕体(図示せず)によって粉砕される。この目的のために、粉砕体及び粉砕材料は、攪拌シャフトに相対回転不可能に接続されると共に、攪拌ミルの動作中に攪拌シャフトと一緒に回転する粉砕部材4の助けを借りて動かされる。バスケット9上の粉砕材料は、バスケット9のギャップ13を通ると共に、出口に面するバスケット9の前面と粉砕容器6との間のギャップを通って、最終的にスクリーンドラム5に到達する。スクリーンドラム5は、攪拌シャフト3及び攪拌シャフト3に一体的に接続されたバスケット9と同軸に取り付けられている。従って、攪拌ミル1の動作中、攪拌シャフト3に一体的に接続されたバスケット9は、スクリーンドラム5周りで回転する。粉砕された粉砕材料は、スクリーンドラム5の通路(図2及び図3に図示せず)を通ってスクリーンドラム5の内部に達し、そこから粉砕ミル1の出口に到達する。
【0048】
バスケット9の内周面10とスクリーンドラム5の外周面11との間のギャップにおいて、スクリーンドラム5におけるジャケット面の通路(図示せず)が不所望に詰まることを防止するために、スクリーンドラム5の断面は楕円として構成されている。このことは、図3に明瞭に示されている。図示の例示的な実施形態において、スクリーンドラム5の壁厚は一定であるので、スクリーンドラム5の外周面11によって形成されるスクリーンドラム5の断面の境界と、スクリーンドラム5の内周面によって形成される境界とが楕円を形成する。ただし、スクリーンドラム5の壁厚を可変に設計することも想定可能であり、この場合、スクリーンドラム5の外周面11によって形成されるスクリーンドラム5の断面の境界だけが楕円を形成し、内周面によって形成される境界が円を形成する。
【0049】
バスケット9の内周面10が円形の断面形状を有し、スクリーンドラム5及びバスケット9が同軸に取り付けられているという事実により、スクリーンドラム5の楕円形の断面は、バスケット9の内周面10とスクリーンドラム5の外周面11との間におけるギャップ幅の変化をもたらす。
【0050】
従って、バスケット9がスクリーンドラム5周りを回転する結果、粉砕材料及び場合によっては粉砕体で充填され、かつバスケット9の内周面10とスクリーンドラムの外周面11との間のギャップにおいて圧力比が変化する。スクリーンドラム5の断面が楕円形であるためにギャップがより狭くなる箇所では、圧力がより大きくなる。ギャップがより広い箇所では、圧力がより小さくなる。更に、バスケット9にギャップ13が設けられているという事実により、バスケット9の回転は、バスケット9とスクリーンドラム5との間のギャップにおいて圧力比の周期的な変化をもたらす。このように、全体として、バスケット9とスクリーンドラム5との間のギャップから粉砕容器6に向けて粉砕体が放出される流れが生じる。
【0051】
図1に示す実施形態において、攪拌シャフトに面するスクリーンドラム5の前面は閉じられており、従ってスクリーンドラム5の内部に向かう通路を有さない。ただし、この前面に、粉砕された粉砕材料用の通路を設けることも想定可能である。
【0052】
図示の実施形態において、スクリーンドラム5は、バスケット9に完全に包囲されている。これは、スクリーンドラム5の外周面11がバスケット9の内周面10と完全に重なることを意味する。
【0053】
図示の例のように、バスケット9を攪拌シャフト3と一体的に移行するよう構成するのではなく、別個のバスケットを攪拌シャフト3に相対回転不可能に取り付けることも想定可能である。この取り付けは、例えばねじ接続によって行うことができる。
【0054】
図4図7は、上述した楕円形の断面を有するスクリーンドラム5の製造方法を示す。この場合、後でスクリーンドラム5を形成する延性材料製の中空円筒が2個のダイ12の間に配置される。スクリーンドラム5に面するダイ12の表面は、凹状に形成されている。ダイ12がプレスの助けによって互いに移動すると、スクリーンドラム5の断面形状が楕円形になる。このことは、ダイ12が下死点に位置する図6に明瞭に示されている。この場合、スクリーンドラム5の材料のスプリングバックにもかかわらず、スクリーンドラム5の断面に関して所望の形状が得られるよう下死点を選択する必要がある。最後に、成形されたスクリーンドラム5を取り出すことができるよう、ダイ12を再び互いから離す(図7参照)。
【符号の説明】
【0055】
1 攪拌ミル
2 粉砕チャンバ
3 攪拌シャフト
4 粉砕部材/攪拌要素/粉砕ディスク
5 分離システム/分離ドラム/スクリーンドラム/スプリット管
6 粉砕容器
7 入口
8 出口
9 攪拌シャフトのバスケット
10 バスケットの内周面
11 分離ドラムの外周面
12 ダイ
13 バスケットにおけるギャップ
a 長主軸線
b 短主軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕体を含む粉砕チャンバ(2)と、
攪拌シャフト(3)であり、前記粉砕チャンバ(2)内にて水平攪拌シャフト軸線周りで回転し、前記攪拌シャフト(3)に相対回転不可能に接続されると共に、水平軸線方向において互いに間隔を置きつつ前記粉砕体を移動させる幾つかの粉砕部材(4)を支持し、好適には粉砕ディスク(4)を支持する、前記攪拌シャフト(3)と、
を備え、
前記攪拌シャフト(3)が、出口側において、好適には外周面上に粉砕部材(4)がちりばめられたバスケット(9)を有し、該バスケット(9)が、スクリーン状分離ドラム(5)を支持する出口(8)と重なる攪拌ミルにおいて、
前記バスケット(9)の内周面(10)と前記スクリーン状分離ドラム(5)の外周面(11)との間の半径方向距離が、周方向において一定ではなく変化し、前記分離ドラム(5)と前記バスケット(9)との間における半径方向距離の変化の推移が、一定であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項2】
請求項1に記載の攪拌ミル(1)であって、スクリーンドラム(5)が、延性材料で構成されると共に、対をなして互いに対向するよう配置されたダイ(12)間における圧縮時の塑性変形によって非円形形状が付与されていることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)の断面が、前記攪拌シャフト軸線に対して垂直な2つの主軸線a及びbを有し、
a<30 mmの場合、aはbよりも少なくとも2 mm大きく、
a=30 mm~100 mmの場合、aはbよりも少なくとも4 mm大きく、
a>100 mmの場合、aはbよりも少なくとも6 mm大きい、
ことを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)の断面が、前記攪拌シャフト軸線に対して垂直な多角形、好適には五角形又は六角形の形状であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)であって、前記スクリーンドラム(5)が、スプリット管であることを特徴とする、攪拌ミル。
【請求項6】
分離システム(5)を通る粉砕材料の放出を妨害する、分離システム(5)上における粉砕体の蓄積を防止するための方法であって、
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)における好適にはスプリット管として構成されるスクリーンドラム(5)を、プレス、好適には変形に影響を及ぼすダイを相互接続することにより、分解された状態で塑性変形させ、これにより前記スクリーンドラム(5)が単なる公差を超えて非円形形状を恒久的に有することを特徴とする、方法。
【請求項7】
分離システム(5)を通る粉砕材料の放出を妨害する、分離システム(5)上における粉砕体の蓄積を防止するための方法であって、
請求項1又は2に記載の攪拌ミル(1)におけるバスケット(9)を、その内周面(10)において、単なる公差を超えて非円形形状を有するよう製造することを特徴とする、方法。
【外国語明細書】