(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088602
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】鋼腐食を制御するための低灰分潤滑組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240625BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20240625BHJP
C10M 129/42 20060101ALI20240625BHJP
C10M 133/30 20060101ALI20240625BHJP
C10M 129/76 20060101ALN20240625BHJP
C10M 133/08 20060101ALN20240625BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240625BHJP
C10N 30/12 20060101ALN20240625BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M133/16
C10M129/42
C10M133/30
C10M129/76
C10M133/08
C10N30:00 B
C10N30:12
C10N40:25
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206661
(22)【出願日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】18/068,795
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガレリック、ケネス
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB18C
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB35C
4H104BE04C
4H104BE11C
4H104BE16C
4H104BH03A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA06
4H104LA11
4H104PA41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】鋼腐食への合格、高温堆積物形成への合格、及びエマルション安定性を達成する、低灰分潤滑組成物を提供する。
【解決手段】乗潤滑組成物は、酸性、ヒドロキシ、又はアミン部分を有するが、イミン、イミド、及び/又はアミジン部分を含まない、油溶性非環式構造を有する1つ以上の選択された腐食抑制剤又は錆抑制剤の化学物質を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗用車のエンジンの潤滑に使用するのに好適な低灰分潤滑油組成物であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
約0.5重量パーセント以下の総硫酸灰分(SASH)と、
約0.03~約0.2重量パーセントの1つ以上の非環式腐食抑制剤であって、その酸性、ヒドロキシ、又はアミン部分を有し、かつイミン、イミド、アミジン構造単位、又はそれらのヒドロキシ誘導体を含む化合物を実質的に含まない、1つ以上の非環式腐食抑制剤と、を含み、
前記潤滑油組成物が、ASTM D7563のE85エマルション試験に従って、0℃及び/又は25℃で安定なエマルションを示し、GMW 16073の湿潤腐食試験に従って鋼腐食を示さない、低灰分潤滑油組成物。
【請求項2】
前記1つ以上の非環式腐食抑制剤が、油溶性酸、二酸、酸-エステル、ポリオール、アミド、若しくはそれらの混合物を含み、かつ/又は前記1つ以上の非環式腐食抑制剤が、C6以上のヒドロカルビル鎖を含む、請求項1に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項3】
最大約100ppmのホウ素を更に含む、請求項1に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項4】
前記潤滑油組成物が、金属性清浄剤を実質的に含まず、かつ/又は前記潤滑油組成物が、約10ppm以下のカルシウム、マグネシウム、若しくはそれらの組み合わせを有する、請求項1に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項5】
前記潤滑油組成物が、ジアルキルジチオリン酸金属を実質的に含まず、かつ/又は前記潤滑油組成物が、約10ppm以下の亜鉛を有する、請求項1に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項6】
前記非環式腐食抑制剤が、(a)ペンタエリスリトールモノ-オレエート、(b)N,N-ジアルカノール脂肪アミン、(c)C10~C20脂肪アミド、(d)C10~C20ジカルボン酸、C10~C20酸-エステル、若しくはそれらの組み合わせ、又は(e)ドデセニルコハク酸若しくは無水物の縮合生成物、又は(f)それらの混合物から選択される、請求項1に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項7】
乗用車のエンジンの潤滑に使用するのに好適な低灰分潤滑油組成物であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
約0.5重量パーセント以下の総計算硫酸灰分(SASH)と、
C6以上のヒドロカルビル鎖を有する1つ以上の油溶性酸、二酸、酸-エステル、又はそれらの組み合わせを含み、かつイミン、イミド、アミジン構造単位、又はそれらのヒドロキシ誘導体を有する化合物を実質的に含まない、最大約0.3重量パーセントの非環式腐食抑制剤と、を含み、
前記潤滑油組成物が、ASTM D7563のE85エマルション試験に従って、0℃及び/又は25℃で安定なエマルションを示し、GMW 16073の湿潤腐食試験に従って鋼腐食を示さない、低灰分潤滑油組成物。
【請求項8】
最大約100ppmのホウ素を更に含む、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項9】
前記潤滑油組成物が、金属性清浄剤を実質的に含まず、かつ/又は前記潤滑油組成物が、約10ppm以下のカルシウム、マグネシウム、若しくはそれらの組み合わせを有する、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項10】
前記潤滑油組成物が、ジアルキルジチオリン酸金属を実質的に含まず、かつ/又は前記潤滑油組成物が、約10ppm以下の亜鉛を有する、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項11】
前記非環式腐食抑制剤が、式Iの構造を有する1つ以上の化合物であり、
【化1】
式中、
R
1及びR
2の各々が、独立して、-OH又は-OR
4OHから選択され、R
1及びR
2のうちの少なくとも1つが、-OHであり、
R
3が、線状又は分岐C6~C20ヒドロカルビル基であり、
R
4が、線状又は分岐C1~C4ヒドロカルビル基であり、その-OHが、一級又は二級アルコールである、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項12】
前記非環式腐食抑制剤が、各々が前記式Iの構造を有する油溶性二酸と油溶性酸-エステルとのブレンドである、請求項11に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項13】
前記潤滑油組成物が、約0.02~約0.3重量パーセントの前記非環式腐食抑制剤を含む、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が、ASTM D6335の高温堆積物形成試験に供された場合、約30mg以下の堆積物を更に有する、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【請求項15】
前記潤滑油組成物が、ASTM D6335の高温堆積物形成試験に供された場合、約15mg以下の堆積物を更に有する、請求項7に記載の低灰分潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、改善された鋼腐食及びエマルション安定性のために構成された低灰分添加剤系及び添加剤系を含む潤滑組成物に関し、具体的には、安定なエマルションを維持し、鋼腐食性能試験において錆を低減又は排除することが可能である選択された腐食抑制剤化学物質を有する低灰分潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造業者は、効率及び燃費の向上を求め続けており、そのため、エンジン、潤滑油、及びそれらの構成成分に対する需要は増加し続けている。今日の乗用車エンジンは、多くの場合、燃費、性能、及び出力を向上させるように設計された技術を用いて、より小型化、より軽量化、及びより効率化されている。これらの要件はまた、エンジンオイルの性能が、そのような現代のエンジンのより高い要求と、それらの独自の使用及び用途に関連付けられたそれらの対応する性能基準と、を満たすように進化しなければならないことも意味している。エンジン油に対するこのような厳しい要求により、潤滑剤製造業者は、多くの場合、潤滑剤及びそれらの添加剤を、各独自の用途のため特定の性能要件を満たすように調整する。
【0003】
潤滑剤の仕様は、多くの場合、硫酸灰分の許容レベルに関する組成的制約を含み、最新の潤滑剤基準の高まる要求を依然として満たしながら、このような制約を維持することは、困難である傾向がある。例えば、潤滑剤中の灰分レベルを減少させることが多くの場合所望されるが、いくつかの事例では、より低い灰分レベルは、潤滑剤の他の性能特性を劣化させる傾向がある。例えば、より低い灰分レベル及びより低い灰分含有量を考慮した潤滑剤組成物への関連する変化は、鋼腐食、高温堆積物、及び/又は潤滑剤のエマルション安定性に影響を及ぼし得る。鋼腐食は、GMW 16073などの様々なエンジン油水分腐食試験を使用して評価され得、エマルション安定性は、例えば、ASTM D7563などのE85エマルション試験を使用して評価され得、高温堆積物は、ASTM D6335又はTEOST-33C試験を使用して評価され得る。
【0004】
しかしながら、多くの状況において、性能特性を改善するために潤滑剤組成物内の1つの成分を変動させることは、1つ以上の他の性能特徴に悪影響を及ぼす傾向がある。例えば、潤滑油組成物中の灰分の主要な供給源は、概して、金属清浄添加剤及び/又は耐摩耗添加剤である。しかしながら、灰分含有量の量を低減させることは、他の性能特性に悪影響を及ぼす傾向があり、具体的には、極低灰分レベルを有する潤滑剤は、鋼腐食を劣化させ、かつ/又は高温堆積物に伴う問題を引き起こす傾向があることが見出された。鋼腐食性能を補助するために、腐食抑制剤の使用が潤滑剤中に含まれ得るが、従来の腐食抑制剤の添加は、いくつかの事例では、潤滑剤のエマルション安定性を劣化させ得る。
【発明の概要】
【0005】
1つのアプローチ又は実施形態では、乗用車のエンジンの潤滑に使用するのに好適な低灰分潤滑油組成物が記載される。アプローチでは、低灰分潤滑油組成物は、1つ以上の潤滑粘度の基油と、約0.5重量パーセント以下の総硫酸灰分(sulfated ash、SASH)と、約0.03~約0.2重量パーセントの1つ以上の非環式腐食抑制剤であって、その酸性、ヒドロキシ、又はアミン部分を有し、かつイミン、イミド、アミジン構造単位、又はそれらのヒドロキシ誘導体を含む化合物を実質的に含まない、1つ以上の非環式腐食抑制剤と、を含み、潤滑油組成物は、ASTM D7563のE85エマルション試験に従って、0℃及び/又は25℃で安定なエマルションを示し、GMW 16073の湿潤腐食試験に従って鋼腐食を示さない。
【0006】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落に記載される低灰分潤滑油組成物は、1つ以上の任意選択的な特性又は実施形態を含み得る。これらの任意選択的な特性又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:1つ以上の非環式腐食抑制剤は、油溶性酸、二酸、酸エステル、ポリオール、アミド、又はそれらの混合物を含み、かつ/あるいは1つ以上の非環式腐食抑制剤は、C6以上のヒドロカルビル鎖を含み、かつ/あるいは最大約100ppmのホウ素を更に含み、かつ/あるいは潤滑油組成物は、金属性清浄剤を実質的に含まず、かつ/あるいは潤滑油組成物は、約10ppm以下のカルシウム、マグネシウム、又はそれらの組み合わせを有し、かつ/あるいは潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸金属を実質的に含まず、かつ/あるいは潤滑油組成物は、約10ppm以下の亜鉛を有し、かつ/あるいは非環式腐食抑制剤は、(a)ペンタエリスリトールモノ-オレエート、(b)N,N-ジアルカノール脂肪アミン、(c)C10~C20脂肪アミド、(d)C10~C20ジカルボン酸、C10~C20酸-エステル、若しくはこれらの組み合わせ、又は(e)ドデセニルコハク酸若しくは無水物の縮合生成物、又は(f)それらの混合物から選択される。
【0007】
別の実施形態又はアプローチでは、乗用車のエンジンの潤滑に使用するのに好適な低灰分潤滑油組成物も本明細書に記載され、低灰分潤滑油組成物は、1つ以上の潤滑粘度の基油と、約0.5重量パーセント以下の総計算硫酸灰分(SASH)と、C6以上のヒドロカルビル鎖を有する1つ以上の油溶性酸、二酸、酸-エステル、又はそれらの組み合わせを含み、かつイミン、イミド、アミジン構造単位、又はそれらのヒドロキシ誘導体を有する化合物を実質的に含まない、最大約0.3重量パーセントの非環式腐食抑制剤と、を含み、潤滑油組成物は、ASTM D7563のE85エマルション試験に従って、0℃及び/又は25℃で安定なエマルションを示し、GMW 16073の湿潤腐食試験に従って鋼腐食を示さない。
【0008】
他の実施形態又はアプローチでは、前段落に記載される低灰分潤滑油組成物はまた、1つ以上の任意選択的な特性又は実施形態も含み得る。これらの任意選択的な特性又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:最大約100ppmのホウ素を更に含み、かつ/又は潤滑油組成物は、金属性清浄剤を実質的に含まず、かつ/又は潤滑油組成物は、約10ppm以下のカルシウム、マグネシウム、若しくはそれらの組み合わせを有し、かつ/又は潤滑油組成物は、ジアルキルジチオリン酸金属を実質的に含まず、かつ/又は潤滑油組成物は、約10ppm以下の亜鉛を有し、かつ/又は非環式腐食防止剤は、式Iの構造を有する1つ以上の化合物であり、
【0009】
【化1】
R
1及びR
2の各々は、独立して、-OH又は-OR
4OHから選択され、R
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、-OHであり、R
3は、線状若しくは分岐C6~C20ヒドロカルビル基であり、R
4は、線状若しくは分岐C1~C4ヒドロカルビル基であり、その-OHが、一級又は二級アルコールであり、かつ/又は非環式腐食抑制剤は、各々が式Iの構造を有する油溶性二酸と油溶性酸-エステルとのブレンドであり、かつ/又は潤滑油組成物は、約0.02~約0.3重量パーセントの非環式腐食抑制剤を含み、かつ/又は潤滑油組成物は、ASTM D6335の高温堆積物形成試験に供された場合、約30mg以下の堆積物を更に有し、かつ/又は潤滑油組成物は、ASTM D6335の高温堆積物形成試験に供された場合、約15mg以下の堆積物を更に有する。
【0010】
更に他のアプローチ又は実施形態では、本明細書の開示は、この発明の概要の低灰分潤滑油組成物を使用して燃焼エンジンを潤滑する方法、及び/又は以下のうちの1つ以上を達成するためのこの発明の概要に記載されるような低灰分潤滑油組成物の任意の実施形態の使用を含む:ASTM D7563のE85エマルション試験に従って0℃及び/若しくは25℃で安定なエマルション;GMW 16073の湿度腐食試験に従って鋼腐食がないこと;並びに/又はASTM D6335の高温堆積物形成試験に供された場合、約30mg以下の堆積物であること。
【0011】
本開示の他の実施形態は、本明細書に開示した発明の明細書及び発明の実施を考慮すれば、当業者には明らかであろう。以下の用語の定義は、本明細書で使用される特定の用語の意味を明確にするために提供する。
【0012】
「油組成物」、「潤滑組成物(lubrication composition)」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「潤滑組成物(lubricating composition)」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケース油」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジン油」、「エンジン潤滑剤」、「モータ油」、及び「モータ潤滑剤」という用語は、主要量の基油に加えて少量の添加剤組成物を含む最終潤滑生成物を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。
【0013】
本明細書で使用される場合、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジン油添加剤パッケージ」、「エンジン油添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モータ油添加剤パッケージ」、「モータ油濃縮物」という用語は、主要量の基油原料混合物を除外する潤滑油組成物の一部を指す、同義の完全に互換性のある専門用語であるとみなされる。添加剤パッケージは、粘度指数向上剤又は流動点降下剤を含み得るか、又は含み得ない。
【0014】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論量を超える、スルホネート、カルボキシレート、サリチレート、及び/又はフェネートの金属塩等の金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「正塩」、「中性塩」に変換するのに必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MRと略される表現「金属比」は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。正塩又は中性塩では、金属比は1であるが、過塩基性塩ではMRは1より大きい。これらは、一般的に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、スルホネート、及び/又はフェノールの塩であってもよい。
【0015】
「アルカリ土類金属」という用語は、カルシウム、バリウム、マグネシウム、及びストロンチウムに関し、「アルカリ金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムを指す。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」又は「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビル基は、炭化水素置換基と、ハロ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素のうちの1つ以上を含有する置換炭化水素置換基と、から独立して選択され、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビレン置換基」又は「ヒドロカルビレン基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の2つの場所で炭素原子によって分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の特徴を有する基を指す。各ヒドロカルビレン基は、二価炭化水素置換基から独立して選択され、置換二価炭化水素置換基は、ハロ基、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、アミノ基、ピリジル基、フリル基、イミダゾリル基、酸素、及び窒素を含有し、2個以下の非炭化水素置換基は、ヒドロカルビレン基中の炭素原子10個ごとに存在する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「重量パーセント」という用語は、他に明確に述べられていない限り、記載された成分が組成物全体の重量に対して表すパーセンテージを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「ppm」又は「ppmw」という用語は、特に明記しない限り、重量に基づく百万分率を指す。
【0020】
本明細書で使用される「可溶性」、「油溶性」、又は「分散性」という用語は、化合物又は添加剤が可溶性、溶解性、混和性、又は油中にあらゆる割合で懸濁可能であることを示し得るが、必ずしもそうではない。しかしながら、前述の用語は、それらが、例えば、油が用いられる環境においてそれらの意図された効果を発揮するのに十分な程度まで油中に可溶性、懸濁性、溶解性、又は安定して分散性であることを意味している。更に、所望ならば、他の添加剤を更に組み込むと、より高いレベルの特有な添加剤を組み込むことも可能になり得る。
【0021】
本明細書で用いられるような「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される場合、総塩基価をmg KOH/gで示すために使用される。
【0022】
本明細書で用いられるような「アルキル」という用語は、約1~約100個の炭素原子の直鎖、分岐、環状、及び/又は置換飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アルケニル」という用語は、約3~約10個の炭素原子の直線、分岐、環状、及び/又は置換の不飽和鎖部分を指す。本明細書で用いられるような「アリール」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、及び/又はこれらに限定されないが、窒素、酸素、及び硫黄を含むヘテロ原子を含むことができる単環式及び多環式の芳香族化合物を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「事後反応」又は「事後処理」は、例えば、ホウ素、リン、及び/又は無水マレイン酸と更に反応又は処理される成分を指し、一級及び/又は二級アミンがこのような化合物と更に反応して、このようなアミンの少なくとも一部分を三級アミンに変換する、分散剤を指し得る。そのような後続の反応又は処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号に更に記載されている。逆に、「事後反応されていない」又は「事後処理されていない」成分は、そのような更なる処理、反応、及び/又は処理に供されておらず、分散剤の文脈では、一定量の一次及び/又は二級アミンを含む。
【0024】
本明細書の任意の実施形態の分子量は、Watersから入手されるゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)機器又は類似の機器、及びWaters Empower Software又は類似のソフトウェアで処理されたデータを用いて決定され得る。GPC機器には、Waters分離モジュール及びWaters屈折率検出器(又は同様の任意選択的な機器)が提供され得る。GPCの作動条件は、ガードカラム、4つのAgilent PLgelカラム(長さ300×7.5mm、粒子サイズ5μ、及び細孔サイズの範囲100~10000Å)、約40℃のカラム温度を含み得る。非安定化HPLCグレードのテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)は、1.0mL/分の流量で溶媒として使用され得る。GPC機器は、500~380,000g/モルの範囲の狭い分子量分布を有する市販のポリスチレン(polystyrene、PS)標準で較正され得る。較正曲線は、500g/モル未満の質量を有する試料について外挿することができる。試料及びPS標準を、THFに溶解し、0.1~0.5重量%の濃度で調製し、濾過せずに使用することができる。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも記載されている。GPC法は、更に分子量分布情報を提供する。例えば、参照により本明細書に組み込まれるW.W.Yau,J.J.Kirkland and D.D.Bly,「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」,John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「硫酸灰分」又は「SASH」は、ASTM D874を使用して測定されるような硫酸灰分の量を指す。代替的に、硫酸灰分はまた、潤滑剤中の金属の量に基づいて計算され得る。例えば、硫酸灰分(SASH)は、任意選択的に各金属性タイプについての係数によって調整された潤滑剤組成物中のSASHに寄与する総金属性元素に基づいて計算され得る。SASHに寄与する金属は、(調整係数とともに)バリウム(1.7)、ホウ素(3.22)、カルシウム(3.4)、銅(1.252)、鉛(1.464)、リチウム(7.92)、マグネシウム(4.95)、マンガン(1.291)、モリブデン(1.5)、カリウム(2.33)、ナトリウム(3.09)、及び亜鉛(1.5)を含む。具体的には、硫化灰分に寄与するとみなされる潤滑油組成物中に存在する金属性元素の各々のppmw含有量に、上記の対応する係数を乗じ、次いで、各金属性元素/係数調整の積が合計され、合計を10,000で割って、潤滑組成物中のSASHの重量パーセントを計算する。特に指定しない限り、本明細書の全ての硫酸灰分レベルは、ASTM D874を使用して測定される。
【0026】
本開示の追加の詳細及び利点は、以下の説明に部分的に記載され、かつ/又は本開示の実施によって習得され得る。本開示の詳細及び利点は、添付の特許請求の範囲に特に指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成し得る。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明が、両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
硫酸灰分は、潤滑油組成物中の灰分の総重量パーセントを示す測定値である。潤滑油組成物の硫酸灰分測定値は、その中の総金属含有量に関連しており、ASTM D874及び/又は当該技術分野において既知であり、かつ本明細書に記載されるような他の一般的な評価方法に従って便利に測定され得る。一態様では、この開示は、約0.5重量パーセント以下、約0.3重量パーセント以下、又は0.1重量パーセント以下の極低硫酸灰分(SASH)含有量を提供する添加剤及びこのような添加剤を含む潤滑剤について記載する。以下の実施例に示されるように、潤滑剤がこのような極低硫酸灰分レベルを有するように変性される場合、鋼腐食性能(GMW 16073)への合格、及び/又は高温堆積物形成(ASTM D6335)への合格を達成することが難しくなる。
【0028】
従来のアプローチは、鋼腐食性能を改善するために錆抑制剤又は腐食抑制剤を含めることであるが、従来の腐食抑制剤の使用は、このような極低レベルの灰分の文脈では、鋼腐食性能を必ずしも改善せず、鋼腐食性能が改善されたとしても、特定の従来の腐食抑制剤が潤滑剤のE85エマルション安定性を不合格にすることは予想外であった。例えば、油溶性イミン、イミド、又はアミジン化合物(又はそれらのヒドロキシ誘導体)の選択された化学物質は、鋼腐食性能を改善し得、高温堆積物への合格を達成し得るが、このような化学物質は、潤滑剤のエマルション安定性を劣化させる。驚くべきことに、油溶性腐食抑制剤又は錆抑制剤を形成する化学物質の注意深い選択によって、鋼腐食が改善され得、同時に、エマルション安定性及び低レベルの高温堆積物が維持され得る。例えば、酸性、ヒドロキシ、又はアミン部分を有する油溶性非環式構造を有する選択された腐食抑制剤又は錆抑制剤の化学物質は、驚くべきことに、鋼腐食を改善し、エマルション安定性を維持し、低レベルの高温堆積物を達成する。
【0029】
一実施形態では、1つ以上の酸性、ヒドロキシ、及び/又はアミン部分を有する、約0.03~約0.2重量パーセントの油溶性非環式化合物は、極低灰分潤滑剤において、所望の鋼腐食、高温堆積物への合格、及びエマルション安定性を提供するが、油溶性化合物が、イミン、イミド、及び/又はアミジン構造単位を実質的に含まない場合に限る。本明細書の別の実施形態又はアプローチでは、油溶性を提供するC6以上のヒドロカルビル基を有する1つ以上の油溶性酸、二酸、酸-エステル、又はそれらの組み合わせを含む、最大約0.3重量パーセント(好ましくは、約0.02~約0.3重量パーセント)の非環式化合物は、所望のレベルの鋼腐食、高温堆積物への合格、及びエマルション安定性を達成したが、重ねて、このような油溶性化合物が、イミン、イミド、及び/又はアミジン構造単位を実質的に含まない場合に限る。
【0030】
より具体的には、本明細書の油溶性錆抑制剤化合物又は腐食抑制剤化合物は、酸性、ヒドロキシ、又はアミン部分を有するが、イミン、イミド、又はアミジン構造単位を実質的に含まない、非環式化合物を含み得る。1つのアプローチでは、例えば、本明細書の極低灰分潤滑油組成物は、油溶性酸、二酸、酸-エステル、ポリオール、アミド、及び/又はそれらの混合物を含む1つ以上の非環式化合物を含む。1つ以上の非環式化合物は、油溶性を提供するために、少なくとも1つのC6以上のヒドロカルビル鎖、C8以上のヒドロカルビル鎖、又はC10以上のヒドロカルビル鎖を含み得る。油溶性のためのヒドロカルビル鎖の上限は、特に限定されないが、C50以下のヒドロカルビル鎖、C40以下のヒドロカルビル鎖、C30以下のヒドロカルビル鎖、C25以下のヒドロカルビル鎖、又はC20以下のヒドロカルビル鎖であり得る。
【0031】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物は、2~10個のヒドロキシ基、別の手法では、2~8個のヒドロキシ基、又はなお更なる手法では、2~4個のヒドロキシ基を有する1つ以上の脂肪族多価アルコールであり得る。1つの特定のアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物は、ペンタエリスリトールモノ-オレエートである。本明細書の潤滑剤は、約0.03~約0.3重量パーセント、好ましくは約0.05~約0.3重量パーセントのこのような多価アルコールを含み得る。
【0032】
別のアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物はまた、油溶性飽和又は不飽和アルキル化アミンなどの1つ以上の脂肪アミンであり得、モノアミン(末端一級アミンを有する)又はポリアミンであり得る。好適な脂肪アミンとしては、N,N-ジアルカノール脂肪アミン、又はより好ましくはN,N-ジエタノール獣脂アミンが挙げられる。本明細書の潤滑剤は、約0.02~約0.2重量パーセントのこのような脂肪アミン、より好ましくは約0.02~約0.175重量パーセントの脂肪アミンを含み得る。
【0033】
更に別のアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物はまた、C10~C20不飽和脂肪アミドを含む飽和又は不飽和脂肪アミドなどの1つ以上の脂肪アミド化合物を含み得、好ましくはオレイン酸のアミドである。本明細書の潤滑剤は、約0.02~約0.3重量パーセントのこのような脂肪アミドを含み得る。
【0034】
更なるアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物はまた、油溶性二酸、油溶性酸-エステル若しくは半エステル、又はそれらの組み合わせを含み得る。特定のアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物は、C10~C20ジカルボン酸、C10~C20酸-エステル、又はそれらの組み合わせを含み得る。本明細書の潤滑剤は、約0.02~約0.3重量パーセントのこのような二酸及び酸-エステル化合物、又はこれらのブレンドを含み得る。
【0035】
1つの特定のアプローチ又は実施形態では、油溶性非環式化合物は、式Iの構造を有する1つ以上の二酸及び/又は酸-エステル化合物である。
【0036】
【化2】
式中、R
1及びR
2の各々は、独立して、-OH又は-OR
4OHから選択され、R
1及びR
2のうちの少なくとも1つは、-OHであり、R
3は、線状又は分岐油溶性ヒドロカルビル基、好ましくはC6~C50ヒドロカルビル基(より好ましくはC6~C20ヒドロカルビル基)であり、R
4は、線状又は分岐C1~C4ヒドロカルビル基であり、会合した-OH基は、一級又は二級アルコールのうちの1つである。いくつかのアプローチでは、油溶性非環式腐食抑制剤は、各々が式Iの構造を有する油溶性二酸と油溶性酸-エステルとのブレンドである。いくつかのアプローチでは、本明細書の潤滑油組成物は、上記のように、約0.5重量パーセント以下(約0.3重量パーセント以下又は約0.1重量パーセント以下)の硫酸灰分含有量を有する極低灰分配合物中に約0.02~約0.3重量パーセントの式Iの非環式化合物を含む。
【0037】
他のアプローチ又は実施形態では、本明細書の油溶性非環式化合物はまた、ドデセニルコハク酸又は無水物の縮合生成物も含み得、約0.03~約0.3重量パーセント、又は好ましくは約0.05~約0.3重量パーセントを含み得る。
【0038】
本明細書の油溶性非環式化合物はまた、上に記載される錆抑制剤又は腐食抑制剤の任意の組み合わせの混合物であり得る。
【0039】
驚くべきことに、錆抑制剤又は腐食抑制剤として一般に使用されるイミン、イミド、若しくはアミジン構造単位(又はこれらのヒドロキシ誘導体)を有する油溶性化合物は、極低灰分潤滑剤に含まれる場合、鋼腐食試験及び/又はエマルション安定性試験のいずれかに不合格である。本明細書の油溶性腐食抑制剤はまた、芳香族部分又はそれらの他のアリール誘導体を有する錆抑制剤又は腐食抑制剤を含まない。したがって、本明細書の潤滑剤は、イミン、イミド、アミジン、若しくは芳香族構造単位、又はそれらのヒドロキシル誘導体を含む油溶性化合物を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、実質的に含まないとは、イミン、イミド、芳香族、及び/若しくはアミジン部分、並びに/又はそれらの任意のヒドロキシ誘導体のうちの1つ以上を含む油溶性化合物が、約0.1重量パーセント未満、約0.05重量パーセント未満、約0.02重量パーセント未満、約0.01重量パーセント未満、約0.005重量パーセント未満であるか、又は存在しないことを意味する。
【0040】
極低灰分系
上記のように、本明細書の潤滑剤組成物は、極低レベルの硫酸灰分を有するように配合され、約0.5重量パーセント以下、約0.3重量パーセント以下、約0.2重量パーセント以下、約0.1重量パーセント以下、約0.08重量パーセント以下、約0.07重量パーセント以下、又は約0.06重量パーセント以下(ASTM D874)の硫酸灰分レベル(ASTM D874)を有する組成物を提供する添加剤パッケージを含む。他のアプローチでは、本明細書の潤滑剤組成物はまた、約0.01重量パーセント以上の硫酸灰分、約0.02重量パーセント以上、約0.3重量パーセント以上、又は約0.04重量パーセント以上の硫酸灰分(ASTM D874)も含み得る。
【0041】
このような極低含有量の硫酸灰分を達成するために、本明細書の潤滑剤組成物は、ホウ素、カルシウム、マグネシウム、モリブデン、及び/又は亜鉛を提供する化合物の選択量のみを含む添加剤混合物を提供する選択添加剤パッケージを有する。この目的のために、本明細書中の潤滑剤は、好ましくは、約100ppm以下のホウ素、約100ppm以下のカルシウム、約100ppm以下のマグネシウム、約100ppm以下のモリブデン、及び約100ppm以下の亜鉛、並びに/又はこれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上を提供する添加剤を含む。好ましくは、本明細書の潤滑油組成物は、約100ppm以下のホウ素(好ましくは約80ppm以下のホウ素、約60ppm以下のホウ素)を提供する添加剤とともに、約10ppm以下のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、モリブデンの各々、及び/又はそれらの組み合わせを提供する添加剤を含む。他のアプローチでは、本明細書の潤滑組成物は、金属性清浄剤を実質的に含まず、より好ましくは、潤滑組成物は、約100ppm未満の総清浄剤金属、80ppm未満の総清浄剤金属、50ppm未満の総清浄剤金属、20ppm未満の総清浄剤金属、又は10ppm未満の総清浄剤金属を提供する金属清浄剤を有し、清浄剤金属は、カルシウム、マグネシウムなどから選択される。他のアプローチでは、本明細書の潤滑油組成物はまた、ジアルキルジチオリン酸金属(例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)を実質的に含まず、このような文脈では、好ましくは、このようなジアルキルジチオリン酸金属によって提供される約10ppm以下の亜鉛を有する。
【0042】
潤滑油組成物
上述の1つ以上の非環式錆抑制剤又は腐食抑制剤は、1つ以上の更なる任意選択的な添加剤との組み合わせで、主要量の潤滑粘度の基油又は基油ブレンド(以下に記載されるような)と組み合わされて、潤滑油組成物を生成し得る。アプローチでは、潤滑油組成物は、約50重量パーセント以上の基油ブレンド、約60重量パーセント以上、約70重量パーセント以上、又は約80重量パーセント以上~約95重量パーセント以下、約90重量パーセント以下、約85重量パーセント以下の基油ブレンドを含み、そのようなブレンドは以下に更に考察される。本明細書の潤滑組成物は、約2~約15cSt(ASTM D445)、好ましくは約5~約12cSt、より好ましくは5~約10cStのKV100を有し得る。
【0043】
本明細書の潤滑組成物が、選択された非環式錆抑制剤又は腐食抑制剤と組み合わされたこのような極低レベルの硫酸灰分を含む場合、本明細書の潤滑組成物は、ASTM D6335(TEOST-33C)の高温堆積物形成試験に供された場合、約30mg未満の堆積物を有し、GMW 16073などのエンジン油水分腐食試験に従って腐食がないことを達成し、0℃及び25℃の両方でASTM D7563に従って水分離のない安定なエマルションを維持する。
【0044】
基油ブレンド:本明細書の潤滑油組成物中に使用される基油は、潤滑粘度の油であり得、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドライン(Base Oil Interchangeability Guidelines)に指定されているように、グループI~Vにおける基油のうちのいずれかから選択される。5つの基油グループは、以下の通りである:
【0045】
【0046】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有している。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であり得る。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0047】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱物油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0048】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源から誘導されるものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用に適する品質まで精製された油は、有用であり得るか、又は有用であり得ない。食用油は、ホワイト油とも呼ばれる場合がある。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油を含まない。
【0049】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても知られている。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0050】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られる油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、ダイズ油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合されたパラフィン系-ナフテン系タイプの溶媒処理又は酸処理された鉱物系潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望であれば、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0051】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと呼ばれる)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0052】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製され得る。
【0053】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得、主要量の基油は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0054】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数改善剤及び/又は流動点降下剤及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、「主要量」、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0055】
任意選択的な添加剤:
本明細書の潤滑油組成物はまた、上で考察される硫酸灰分と錆抑制剤又は腐食抑制剤の組成物との上述の関係が維持される限り、性能基準を満たすために必要に応じて、上で考察される非環式錆抑制剤又は腐食抑制剤と組み合わされたいくつかの任意選択的な添加剤も含み得る。それらの任意選択的な添加剤は、以下の段落で説明する。
【0056】
分散剤:潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の分散剤又はそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰タイプの分散剤と呼ばれている。無灰型の分散剤は、極性基が比較的高分子量の炭化水素鎖に結合することを特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが含まれる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約50,000、又は~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0057】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、及びペンタエチルアミンヘキサミン(pentaethylamine hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0058】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHA(ペンタエチレンヘキサミン)などの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7つ以上の窒素原子を含有し、分子当たり2つ以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、>32重量%)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0059】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして知られており、TEPA及びペンタエチレンヘキサミン(PEHA)が、ポリアミンの主要部分であり、通常約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0060】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素原子及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成してもよい。
【0061】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより判定される場合に、約350~約50,000、又は~約5000、又は~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンは、含まれる場合、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも呼ばれる。GPCにより判定される場合に約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0063】
GPCにより判定される場合に、約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。このようなHR-PIBは、市販されているか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に記載されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。上記熱エン反応で使用されるとき、HR-PIBは、反応性の増加に起因して、反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に記載されている。
【0064】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「PIBSA」)から誘導された少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0065】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィ技術を使用して判定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に記載されている。
【0066】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を用いて、有効成分%から算出される。
【0067】
別途明記しない限り、全てのパーセンテージは、重量パーセントであり、全ての分子量は、市販のポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)により判定される数平均分子量である。
【0068】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして記載され得る。一実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導され得る。
【0069】
好適な種類の窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に記載されており、かつ/又は市販されている。
【0070】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0071】
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。好適な分散剤はまた、従来の方法により様々な薬剤のうちのいずれかとの反応によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
カーボネート及びホウ酸の後処理に加えて、化合物はいずれも、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理により後処理、又は更に後処理され得る。このような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる。無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上記したようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、線状モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤(glycolating agent)の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。ここで、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0073】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油を含まない基準で約10~約65mg KOH/gであり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0074】
更に他の実施形態では、任意選択的な分散剤添加剤は、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤であり得る。アプローチでは、ヒドロカルビルで置換されたスクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤は、ポリアルキレンポリアミンと反応させたヒドロカルビル置換アシル化剤から誘導され得、スクシンアミド分散剤又はスクシンイミド分散剤のヒドロカルビル置換基は、ポリスチレンを較正基準として使用するGPCにより測定した場合、約250~約5,000の数平均分子量を有する線状又は分岐ヒドロカルビル基である。
【0075】
いくつかのアプローチでは、分散剤を形成するために使用されるポリアルキレンポリアミンは、以下の式を有し、
【0076】
【化3】
式中、各R及びR’は、独立して、二価C1~C6アルキレンリンカーであり、各R
1及びR
2は、独立して、水素、C1~C6アルキル基であるか、又はそれらが結合する窒素原子と一緒に、1つ以上の芳香環若しくは非芳香環と任意選択的に融合した5員環若しくは6員環を形成し、nは、0~8の整数である。他のアプローチでは、ポリアルキレンポリアミンは、平均5~7個の窒素原子を有するポリエチレンポリアミンの混合物、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0077】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約20重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。使用され得る分散剤の別の量は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.1重量%~約15重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、約0.1~8重量%、又は約1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約6重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一の種類又は任意の所望の比の2つ以上の種類の分散剤の混合物が使用され得る。
【0078】
酸化防止剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤化合物は既知のものであり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0079】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導される付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。別の市販のヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716を含み得る。
【0080】
有用な酸化防止剤は、ジアリールアミン及び高分子量フェノールを含み得る。一実施形態では、潤滑油組成物は、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。一実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0081】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0082】
別の分類の硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0083】
別の代替的な実施形態では、酸化防止剤組成物は、上で考察されるフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。これらの3つの酸化防止剤の組み合わせが使用される場合、好ましくは、フェノールとアミンとモリブデン含有の比は、(0~2):(0~2):(0~1)である。
【0084】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、又は約0.1重量%~約10重量%、又は約1重量%~約5重量%の範囲で存在し得る。
【0085】
耐摩耗剤:本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択で、1つ以上の耐摩耗剤を含有してもよい。好適な追加の耐摩耗剤の例としては、以下に限定されないが、チオリン酸金属;ジアルキルジチオリン酸金属;リン酸エステル若しくはその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、並びにビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなど、チオカルバメート含有化合物;及びそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により完全に記載されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり得る。
【0086】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有し得、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0087】
耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0088】
ホウ素含有化合物:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択で、1つ以上のホウ素含有化合物を含有してもよい。ホウ素含有化合物の例は、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化清浄剤、及びホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤を含む。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0089】
清浄剤:潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の追加の中性清浄剤、低塩基性清浄剤、若しくは過塩基性清浄剤、又はそれらの混合物を含み得る。好適な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公報により詳細に記載されている。
【0090】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、バリウムを含まない。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有し得る。好適な清浄剤には、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が含まれ得る。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基材及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基材は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールのような酸である。
【0092】
潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、又は更なる例として、約250mgKOH/グラム以上、若しくは約350mgKOH/グラム以上、若しくは約375mgKOH/グラム以上、若しくは約400mgKOH/グラム以上の総塩基価(total base number、TBN)を有し得る。
【0093】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-及び/又はジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0094】
過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D-2896の方法により測定される、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約400mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約350mgKOH/g、又は約230mgKOH/g~約350mgKOH/gの総塩基価を有する。そのような清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えばプロセス油、通常は鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の物質(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0095】
過塩基性清浄剤は、1.1:1から、又は2:1から、又は4:1から、又は5:1から、又は7:1から、又は10:1からの金属対基質比を有し得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、エンジン、又はトランスミッション若しくはギアなどの他の自動車部品内の錆を低減又は防止するのに有効である。清浄剤は、潤滑組成物中に、約0重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%超~約8重量%で存在し得る。
【0096】
極圧剤:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の極圧剤を含有し得る。油に可溶性である極圧(Extreme Pressure、EP)剤は、硫黄及びクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、並びにリンEP剤を含む。このようなEP剤の例としては、塩素化ワックス、ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、及び硫化Diels-Alder付加物などの有機スルフィド及びポリスルフィド、硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0097】
摩擦調整剤:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の摩擦調整剤を含有し得る。好適な摩擦調整剤には、金属を含有する及び金属を含まない摩擦調整剤が含まれ得、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0098】
好適な摩擦調整剤は、直線鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0099】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。このような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えばカルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0100】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。そのような化合物は、線状、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、線状、飽和、不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0101】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に記載される。
【0102】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲で存在し得る。
【0103】
モリブデン含有成分:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上のモリブデン含有化合物を含有し得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態にあり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェー、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0104】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製のMolyvan(登録商標)822(商標)、Molyvan(登録商標)(商標)A、Molyvan(登録商標)2000、及びMolyvan(登録商標)855、及びMolyvan(登録商標)1055、並びにAdeka Corporationから入手可能なSakura-Lube(商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-151、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名で販売されている市販の材料、並びにそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363 E1号、同第38,929 E1号、及び同第40,595 E1号に記載されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブデート、ナトリウムモリブデート、カリウムモリブデート、及び他のアルカリ金属モリブデート、及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブデート、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデン、又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に記載されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、前述の特許文献は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0106】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、式Mo3SkLnQzの化合物などの三核モリブデン化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、有機基が化合物を油中に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変動し、Qは、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルなどの中性電子供与性化合物の群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。全ての配位子の有機基の中に、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子など、少なくとも21個の総炭素原子が存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0107】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0108】
遷移金属含有化合物:別の実施形態では、本明細書の潤滑剤は、任意選択的に遷移金属含有化合物又は半金属を含み得る。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが含まれ得るが、これらに限定されることはない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0109】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能し得る。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物、硫化チタン(IV)、硝酸チタン(IV)、チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド、及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート、チタンカルボキシレート、例えばチタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドがある。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。そのようなチタン材料は、市販されているか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0110】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製され得る。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用され得るか、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤、(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(若しくはアルキル)無水コハク酸及びポリアミン、(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、若しくはそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの物質のうちのいずれかと反応され得る。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応され得、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用され得るか、又は上述のようにコハク酸分散剤と更に反応され得る。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応され得る。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0111】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC6~C25カルボン酸との反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式によって表され得、
【0112】
【化4】
式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり、又は以下の式によって表され得、
【0113】
【化5】
式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、R
4は、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、R
1は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2及びR
3は、同一若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、又はチタン化合物は、以下の式によって表され得、
【0114】
【化6】
式中、xは、0~3の範囲であり、R
1は、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
2、及びR
3は、同一若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R
4は、H、C
6~C
25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される。
【0115】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが含まれ得るが、これらに限定されることはない。
【0116】
一実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35~約500重量ppmのチタン、又は約50~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0117】
粘度指数改善剤:本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に1つ以上の粘度指数改善剤を含有し得る。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含み得、好適な例は米国公開第2012/0101017(A1)号に記載されている。
【0118】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤を含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0119】
粘度指数改善剤及び/又は分散剤粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0120】
他の任意選択の添加剤:他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択されてもよい。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。他の性能添加剤は、本開示の特定の添加剤に対する追加であり得、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、清浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散剤粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有することになる。
【0121】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0122】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0123】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物が挙げられ得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0124】
好適な追加の錆抑制剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。上で考察される選択された腐食抑制剤と競合しない限り、追加の錆抑制剤が提供され得る。上述のものに加えて、錆抑制剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用な種類の酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な錆抑制剤は、高分子量の有機酸である。
【0125】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0126】
一般的に、本明細書の低レベルの硫酸灰分及び選択された非環式錆抑制剤又は腐食抑制剤を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙される範囲の添加剤成分を含み得る。
【0127】
【0128】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に記載の組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全配合潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【0129】
本明細書の潤滑剤は、自動車用潤滑剤及び/又はグリース、内燃エンジン油、ハイブリッドエンジン油、電気エンジン潤滑剤、ドライブトレイン潤滑剤、トランスミッション潤滑剤、ギア油、油圧潤滑剤、トラクター油圧流体、金属作動流体、タービンエンジン潤滑剤、定置エンジン潤滑剤、トラクター潤滑剤、オートバイ潤滑剤、パワーステアリング流体、クラッチ流体、車軸流体、湿式ブレーキ流体などといった様々なタイプの潤滑剤における使用のために構成される。好適なエンジンのタイプとしては、重荷重ディーゼル、乗用車、軽荷重ディーゼル、中速ディーゼル、又は船舶用エンジンが挙げられ得るが、これらに限定されない。内燃エンジンは、ディーゼル燃料エンジン、ガソリン燃料エンジン、天然ガス燃料エンジン、バイオ燃料エンジン、混合ディーゼル/バイオ燃料-燃料エンジン、混合ガソリン/バイオ燃料-燃料エンジン、アルコール燃料エンジン、混合ガソリン/アルコール燃料エンジン、圧縮天然ガス(compressed natural gas、CNG)燃料エンジン、又はそれらの混合物であってもよい。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってもよい。ガソリンエンジンは、火花点火エンジンであり得る。内燃エンジンはまた、電力又はバッテリー電源と組み合わせて使用され得る。そのように構成されたエンジンは、通常は、ハイブリッドエンジンとして知られている。内燃エンジンは、2ストローク、4ストローク、又はロータリーエンジンであり得る。好適な内燃エンジンとしては、船舶用ディーゼルエンジン(内陸用船舶など)、航空ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、並びにオートバイ、自動車、機関車、及びトラックのエンジンが挙げられる。エンジンをターボチャージャーと連結させてもよい。
【0130】
内燃エンジンのための潤滑油組成物は、硫黄、リン、又は硫酸灰分(ASTM D-874)含有量として計算される灰分に関係なく、任意のエンジン潤滑剤に好適であり得る。エンジン油潤滑剤の硫黄含有量は、約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下、又は約0.3重量%以下、又は約0.2重量%以下であり得る。一実施形態では、硫黄含有量は、約0.001重量%~約0.5重量%、又は約0.01重量%~約0.3重量%の範囲にあってもよい。リン含有量は、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下、又は約0.085重量%以下、又は約0.08重量%以下、又は更には約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、又は約0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、約50ppm~約1000ppm、又は約325ppm~約850ppmであってもよい。総硫酸灰分含有量は、約2重量%以下、又は約1.5重量%以下、又は約1.1重量%以下、又は約1重量%以下、又は約0.8重量%以下、又は約0.5重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫酸灰分含有量は、約0.05重量%~約0.9重量%、又は0.1重量%若しくは約0.2重量%~約0.45重量%であってもよい。別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.4重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.08重量%以下であってもよく、かつ硫酸灰分は、約1重量%以下である。更に別の実施形態では、硫黄含有量は、約0.3重量%以下であってもよく、リン含有量は、約0.05重量%以下であり、かつ硫酸灰分は、約0.8重量%以下であってもよい。
【0131】
更に、本明細書の潤滑剤は、ILSAC GF-3、GF-4、GF-5、GF-6、PC-11、CF、CF-4、CH-4、CK-4、FA-4、CJ-4、CI-4 Plus、CI-4、API SG、SJ、SL、SM、SN、SN PLUS、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、A7/B7、C1、C2、C3、C4、C5、C6、E4/E6/E7/E9、Euro5/6、JASO DL-1、Low SAPS、Mid SAPSなどの1つ以上の業界仕様要件、又はDexos1(商標)、Dexos2(商標)、MB-Approval 229.1、229.3、229.5、229.51/229.31、229.52、229.6、229.71、226.5、226.51、228.0/.1、228.2/.3、228.31、228.5、228.51、228.61、VW 501.01、502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、505.01、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、508.88、509.99、BMW Longlife-01、Longlife-01FE、Longlife-04、Longlife-12FE、Longlife-14FE+、Longlife-17FE+、Porsche A40、C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2294、B71 2295、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Renault RN0700、RN0710、RN0720、Ford WSS-M2C153-H、WSS-M2C930-A、WSS-M2C945-A、WSS-M2C913A、WSS-M2C913-B、WSS-M2C913-C、WSS-M2C913-D、WSS-M2C948-B、WSS-M2C948-A、GM 6094-M、Chrysler MS-6395、Fiat 9.55535 G1、G2、M2、N1、N2、Z2、S1、S2、S3、S4、T2、DS1、DSX、GH2、GS1、GSX、CR1、Jaguar Land Rover STJLR.03.5003、STJLR.03.5004、STJLR.03.5005、STJLR.03.5006、STJLR.03.5007、STJLR.51.5122などのオリジナル機器製造業者仕様、又は本明細書に記載されていない過去若しくは将来のPCMO若しくはHDD仕様を満たすのに好適であり得る。乗用車用モータ油(passenger car motor oil、PCMO)用途のためのいくつかの実施形態では、最終流体中のリンの量は、1000ppm以下、又は900ppm以下、又は800ppm以下である。
【0132】
一実施形態では、潤滑油組成物は、エンジン油であり、潤滑油組成物は、(i)約0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)約0.1重量%以下のリン含有量、及び(iii)約1.5重量%以下の硫酸灰分含有量として計算される灰分を有し得る。
【0133】
一実施形態では、潤滑油組成物は、2ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適である。一実施形態では、船舶用ディーゼル燃焼エンジンは、2ストロークエンジンである。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、船舶用エンジンの動力供給に使用される燃料の高硫黄含有量及び船舶に好適なエンジン油に必要な高いTBN(例えば、船舶に好適なエンジン油では約40TBN超)が含まれるがこれらに限定されない1つ以上の理由により、2ストローク又は4ストロークの船舶用ディーゼル内燃エンジンに好適でない。
【0134】
いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、約1~約5%の硫黄を含有する燃料などの低硫黄燃料を動力源とするエンジンでの使用に好適である。高速道路車両燃料は、約15ppmの硫黄(又は約0.0015%の硫黄)を含有する。
【実施例0135】
以下の実施例は、本開示の例示的な実施形態を例解するものである。これらの実施例並びに本出願の他の箇所において、全ての比率、部、及び百分率は、別段の指示がない限り重量基準である。これらの実施例は、例解のみを目的として提示されており、本明細書で開示される発明の範囲を限定するは意図されないということが意図される。
【0136】
比較例1
約0.7重量パーセントの硫酸灰分含有量を有する比較潤滑組成物CE1は、以下の表3の分析値を有し、分散剤、清浄剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、有機モリブデン添加剤、消泡添加剤、摩擦調整剤、オレフィンコポリマー粘度調整剤、流動点分散剤、プロセス油、及び基油の標準添加剤パッケージを含み、約7.0cSt(ASTM D445)のKV100を有する最終潤滑剤を提供した。
【0137】
【0138】
上の表3について計算された硫酸灰分(SASH)を、ASTM D874に従って決定した。この実施例の比較潤滑組成物CE1は、いかなる腐食抑制剤も含まず、したがって、GMW 16073に従ったエンジン油水分試験に不合格であり、4の腐食等級は、強いレベルの腐食を反映した。GMW 16073に記載されるように、0の腐食等級は、腐食なしを意味し、1の等級は、最大5つの腐食スポット(最大直径又は各スポットは、1mmである)を有する微量腐食を意味し、2の等級は、表面の最大約5パーセントの腐食を有するわずかな腐食を意味し、3の等級は、表面の5パーセント~20パーセントの腐食を有する中程度の腐食を意味し、4の等級は、表面の20パーセントを超える腐食を有する強い腐食を意味する。
【0139】
比較例2
別の比較潤滑剤CE2を、添加剤パッケージが0.1重量パーセント未満の硫酸灰分レベルを提供するように再配合された場合の鋼腐食について評価した。以下の表4は、分散剤、耐摩耗添加剤、酸化防止剤、有機モリブデン添加剤、消泡添加剤、摩擦調整剤、オレフィンコポリマー粘度調整剤、流動点分散剤、プロセス油、及び基油を含み、約0.1パーセント以下の極低灰分含有量を有し、約9.5cStのKV100を有する最終潤滑剤を形成する、ベース添加剤パッケージを有する比較潤滑剤CE2の分析値を示す。
【0140】
【0141】
比較潤滑剤CE2も腐食抑制剤を含まず、したがって、GMW 16073に従って実行されたエンジン油水分試験には依然として不合格であり、腐食等級2を有するわずかな腐食であったが、極低灰分含有量では、比較潤滑剤CE2は、ASTM D6335(TEOST-33C)の高温堆積物形成試験にも不合格であり、33.4mgの高温堆積物(30mg未満が好ましい)であった。
【0142】
実施例1
比較例2の極低灰分潤滑剤配合物におけるトップ処理として、様々な腐食抑制剤化学物質を調査した。この実施例の潤滑剤は、約0.06%の硫酸灰分含有量を達成するために、潤滑剤CE2の同じ添加剤パッケージ及び基油ブレンドを含んでいたが、以下の表5に記載されるような異なる量の様々な腐食抑制剤化学物質と組み合わされた。
【0143】
【0144】
表5の腐食抑制剤を、比較例2の潤滑剤に対するトップ処理として、表5a及び5bの処理量で最終潤滑剤に含めた。次いで、この実施例の潤滑剤を、鋼腐食等級(GMW 16073)、エマルション安定性(ASTM D7563)、及び高温堆積物(ASTM D6335)について評価した。結果を表5a又は5bにも示す。鋼腐食への合格の等級は、腐食が存在しないことを反映する0であり、エマルション安定性への合格は、0℃又は25℃のいずれかで0%の水分離であり、高温堆積物への合格は、30mg以下である。不合格潤滑剤は、表5a又は5bにおいて太字及び下線付きのセルによって示される。
【0145】
【0146】
【0147】
表5a及び5bに示されるように、潤滑剤が、0.5重量パーセント以下、0.3重量パーセント以下、又は0.1重量パーセント以下の灰分レベルを有する極低硫酸灰分配合物として構成される場合、特定の腐食抑制剤化学物質のみ、及び特定の化学物質の選択された処理量のみが、30mg以下の高温堆積物への合格、0の鋼腐食等級への合格、及び0パーセントの水分離を有するE85エマルション安定性への合格を達成する。全ての抑制剤が、概して酸性、ヒドロキシ、及び/又は窒素ベースの化学物質を含んでいたので、特定の腐食抑制の化学物質がこのような試験において合格性能を提供することは予想外であった。
【0148】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0149】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0150】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0151】
本明細書に開示される各範囲は、同じ有効数字の数を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0152】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0153】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0154】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは他の当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物が現れ得る。したがって、出願された添付の特許請求の範囲、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、そのような全ての代替、修正、変形、改善、及び実質的な同等物を包含することを意図している。