(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088608
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】油圧モータの油圧制御回路
(51)【国際特許分類】
F03C 99/00 20100101AFI20240625BHJP
【FI】
F03C99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023209970
(22)【出願日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】10 2022 134 056.2
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】513033696
【氏名又は名称】ダンフォス パワー ソリューションズ ゲーエムベーハー ウント コンパニ オーハーゲー
【氏名又は名称原語表記】Danfoss Power Solutions GmbH&Co.OHG
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】クリス・シュライヴ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・フェラー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・リアマン
【テーマコード(参考)】
3H084
【Fターム(参考)】
3H084CC48
(57)【要約】 (修正有)
【課題】油圧モータの変速挙動が滑らかで、誤作動を起こしにくく、迅速な油圧モータの変速挙動を提供できる油圧制御回路を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの押しのけ容積で動作可能な油圧モータ20のための油圧制御回路10であって、電気アクチュエータ54を有する連続的かつ電気的に調整可能なパイロット弁50によってパイロット圧52を制御することによって生成される力によって連続的に移動可能な制御弁スプール38を伴う、比例速度制御弁30を備え、制御弁スプール38は、最大トルク終端位置32と、低減トルク終端位置34と、少なくとも1つの中間位置との間で移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの押しのけ容積で動作可能な油圧モータ(20)のための油圧制御回路(10)であって、
電気アクチュエータ(54)を有する連続的かつ電気的に調整可能なパイロット弁(50)によってパイロット圧(52)を制御することによって生成される力によって連続的に移動可能な制御弁スプール(38)を伴う、比例速度制御弁(30)を備え、
前記制御弁スプール(38)は:
‐最大トルク終端位置(32)と、
‐低減トルク終端位置(34)と、
‐少なくとも1つの中間位置(36)と
の間で移動可能であり、
前記パイロット圧(52)を制御するために前記電気アクチュエータ(54)に印加される電流(Y)を制御するために、時間に関連した制御電流関数(60)が提供され、前記制御電流関数(60)は:
‐あるコマンド時点(Tc)における押しのけ容積切り替えコマンドに先行するある時間範囲(T0)に沿った、プレ電流部分(62)であって、前記プレ電流部分(62)の間は、一定のゼロでない電流(Y0)によって、前記速度制御弁スプール(38)を2つの終端位置(32;34)のうちの一方から移動させることができるパイロット圧レベルが生成されない、プレ電流部分(62)と;
‐前記コマンド時点(Tc)の後の事前に設定された切り替え時点(Ts)において終了するランプ時間範囲(Tr)中の、電流ランプ部分(64)と
を含み、
前記電流(Y)は、前記電流ランプ部分(64)においてランプ開始電流レベル(Y1)から中間電流レベル(Y2)まで連続的に上昇又は下降し、前記電流ランプ部分(64)の終点において切り替え電流レベル(Y3)へと急激に変化し、これによって、前記パイロット圧(52)による、2つの前記終端位置(32、34)のうちの一方から前記少なくとも1つの中間切り替え位置(36)を介して他方の前記終端位置(34、32)への、前記速度制御弁スプール(38)の移動が可能となる、油圧制御回路(10)。
【請求項2】
前記最大トルク終端位置(32)では、全ての作動チャンバ取入口(22、26)に高システム圧下の油圧作動油が供給され、全ての作動チャンバ出口(24、28)は低システム圧に接続される、請求項1に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項3】
前記低減トルク終端位置(34)では、前記作動チャンバ取入口のサブセット(26)は、対応する前記出口(28)と油圧的に短絡される、請求項1又は2に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの中間切り替え位置(36)では、前記速度制御弁(30)を介した前記取入口のサブセット(26)への油圧作動油流が絞られる、請求項3に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項5】
前記速度制御弁(30)の前記中間切り替え位置(36)の間、前記サブセット(26)への前記作動油流は、好ましくは前記速度制御弁(30)と一体の部品であるオリフィス構成(40)によって絞られる、請求項4に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項6】
前記電流ランプ部分(64)の勾配は、前記制御弁スプール(38)の変速速度を規定し、前記油圧作動油の温度及び/又は前記油圧モータ(20)の温度に応じて変更できる、請求項1~5のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項7】
前記ランプ開始電流レベル(Y1)は前記プレ電流レベル(Y0)と異なっており、前記電流(Y)は、前記コマンド時点(Tc)において、前記プレ電流レベル(Y0)から前記ランプ開始電流レベル(Y1)へと急激に上昇する、請求項1~6のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項8】
前記制御電流関数(60)は更に、前記コマンド時点(Tc)での前記プレ電流部分(62)の終端にブースト部分(66)を含み、前記ブースト部分(66)では、前記電流レベルは短いブースト時間(Tb)にわたって:
i.アップシフトイベントでは、切り替えコマンド発生時に、前記ランプ開始電流レベル(Y1)より高い電流ブーストレベル(Yb)まで急激に上昇し、前記ブースト時間(Tb)の終点において前記ランプ開始電流レベル(Y1)まで急激に下降するか、又は
ii.ダウンシフトイベントでは、切り替えコマンド発生時に、前記ランプ開始電流レベル(Y1)より低い電流ブーストレベル(Yb)まで急激に下降し、前記ブースト時間(Tb)の終点において前記ランプ開始電流レベル(Y1)まで急激に上昇し、
前記ランプ開始電流レベル(Y1)は前記プレ電流レベル(Y0)と異なる、請求項1~6のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項9】
前記アップシフトイベントに関する前記ランプ部分(64)は、前記ブースト時間(Tb)の後に、前記プレ電流レベル(Y0)より高い前記ランプ開始電流レベル(Y1)で始まり、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)の後に、前記切り替え電流レベル(Y3)より低い前記中間電流レベル(Y2)で終わり、前記中間電流レベル(Y2)は、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)の終点において、前記切り替え電流レベル(Y3)まで急激に上昇する、請求項8に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項10】
前記ダウンシフトイベントに関する前記ランプ部分(64)は、前記ブースト時間(Tb)の後に、前記プレ電流レベル(Y0)より低い前記ランプ開始電流レベル(Y1)で始まり、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)の後に、前記切り替え電流レベル(Y3)より高い前記中間電流レベル(Y2)で終わり、前記中間電流レベル(Y2)は、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)の終点において、前記切り替え電流レベル(Y3)まで急激に低下する、請求項8に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項11】
前記制御電流関数(60)の、前記正常動作時間(T0)、存在する場合は前記ブースト時間(Tb)、前記ランプ時間範囲(Tr)、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)、及び/又は前記コマンド時点(Tc)、前記プレ電流レベル(Y0)、存在する場合は前記電流ブーストレベル(Yb)、前記ランプ開始電流レベル(Y1)、前記中間電流レベル(Y2)、及び/又は前記切り替え電流レベル(Y3)は、前記油圧作動油及び/又は前記油圧モータ(20)の温度に応じて変動させることができる、請求項1~10のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項12】
前記プレ電流レベル(Y0)と前記ブースト電流レベル(Yb)との差は、前記油圧作動油及び/又は前記油圧モータの前記温度が低下すると増大する、請求項11に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項13】
前記ランプ開始電流レベル(Y1)と前記中間電流レベル(Y2)との差は、前記油圧作動油及び/又は前記油圧モータの前記温度が低下すると増大する、請求項11又は12に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項14】
制御ユニット(100)であって、前記パイロット弁(50)の前記電気アクチュエータ(54)への前記電流(Y)を、前記制御ユニット(100)の記憶手段(110)に記憶された前記制御電流関数(60)に基づいて制御する、制御ユニット(100)を備える、請求項1~13のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項15】
前記制御ユニット(100)は、前記油圧制御回路(10)、前記油圧モータ(20)、又は前記油圧制御回路(10)が搭載された車両(1)の動作パラメータを測定するよう適合された少なくとも1つのセンサ(130)のフィードバック信号(120)を受信し、受信した前記フィードバック信号(120)に基づいて前記制御電流関数(60)を適合させる、請求項14に記載の油圧制御回路(10)。
【請求項16】
制御ユニット(100)であって、請求項1~15のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)のパイロット弁(50)の電気アクチュエータ(54)への電流(Y)を、前記制御ユニット(100)と対話する記憶手段(110)に記憶された前記制御電流関数(60)に基づいて制御するよう構成された、制御ユニット(100)。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)を備えた油圧モータであって、前記油圧モータは、一方向又は双方向に動作するように適合される、油圧モータ。
【請求項18】
制御電流関数(60)を有する請求項1~15のいずれか1項に記載の油圧制御回路(10)によって、油圧モータ(20)の少なくとも2つの押しのけ状態の間でアップシフト及び/又はダウンシフトを制御するための方法であって、前記方法は、以下のステップ:
a)前記油圧モータ(20)の動作中であり、かつ前記速度制御弁スプール(38)が最初の終端位置(32、34)にあるときに、押しのけ容積切り替えコマンドが与えられるまで、ゼロでないプレ電流(Y0;62)を前記パイロット弁(50)の前記電気アクチュエータ(54)に印加するステップ;
b)ランプ時間範囲(Tr)中に、前記制御電流関数(60)の電流ランプ部分(64)に従って、前記押しのけ容積切り替えコマンドが与えられた後、ランプ開始電流レベル(Y1)から中間電流レベル(Y2)まで連続的に増大又は減少する電流(Y)を前記電気アクチュエータ(54)に印加し、前記電流ランプ部分(64)の終端において切り替え電流レベル(Y3;68)へと急速に変化させることにより、前記パイロット弁スプール(56)をシフトさせ、また変化したパイロット圧(52)を前記速度制御弁スプール(38)に向かってガイドして、前記速度制御弁スプール(38)を他方の最初のものでない端部位置(34、32)へと切り替えることができるステップ;
c)前記切り替え電流レベル(Y3;68)を維持することにより、次の前記押しのけ容積切り替えコマンドが与えられるまで、最大又は最小パイロット圧レベルによって、前記速度制御弁スプール(38)を前記他方の最初のものでない終端位置に保持するステップ
を含む、方法。
【請求項19】
前記ステップa)の後、かつ前記ステップb)の前に、以下のステップb.1):
b.1)前記押しのけ容積切り替えコマンドが与えられたときに、ブースト時間(Tb)にわたってブースト電流(66)を前記パイロット弁(50)の前記電気アクチュエータ(54)に印加するステップであって、前記ブースト電流(66)のブースト電流レベル(Yb)は前記プレ電流レベル(Y0)とは異なる、ステップ
を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記制御電流関数(60)の、前記正常動作時間(T0)、存在する場合は前記ブースト時間(Tb)、前記ランプ時間範囲(Tr)、前記事前に設定された切り替え時点(Ts)、及び/又はコマンド時点(Tc)、前記プレ電流レベル(Y0)、存在する場合は電流ブーストレベル(Yb)、前記ランプ開始電流レベル(Y1)、前記中間電流レベル(Y2)、及び/又は前記切り替え電流レベル(Y3)は、油圧作動油及び/又は前記油圧モータ(20)の温度に依存する、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧モータ、特に多段変速機能を備える油圧モータに関する。本発明は更に、油圧モータのための油圧制御回路に関する。本発明は更に、油圧制御回路に適用可能な制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧モータ、特にラジアルモータ、例えばオービットモータ又はラジアルピストン油圧モータは、例えば重荷重用の用途のために、当該技術分野において幅広く使用されている。例えばラジアルモータは、建設用設備、農業用設備、又は林業用設備の分野で使用されている。オービットモータの動作原理は、(例えば固定された)外歯車に対する、内歯車、例えば可動内歯車の相対運動に基づくものである。この場合、分配器弁を、カルダン軸を介して内歯車によって同期して駆動することにより、モータの個々のチャンバを確実に満たし、又は排液する/空にすることができる。
【0003】
ラジアルピストンモータは、加圧された油圧作動油が供給されたときに、その作動ピストンが、中心の長手方向/回転軸に対して半径方向に運動することを特徴とする。一般にラジアルピストンモータは、高い回転速度は必要ないものの高いトルクが必要な油圧用途に使用される。ラジアルピストンユニットは、軸方向の構造スペースが減少するという、アキシャルピストンユニットを上回る利点を示す。
【0004】
油圧モータ、特にカムローブ型の構造のラジアルモータの具体的な用途の1つは、例えば作業車両の、例えばトラックローダの、推進である。1つ以上の油圧モータによって提供される速度及びトルクを制御下で変動させることができるようにするために、制御回路が設けられることが多い。従来技術のこれらの油圧モータの回転速度を変更するためのいくつかの制御回路では、モータの押しのけ容積は、弁構成によって変更でき、例えば選択された作動チャンバの押しのけ容積が選択的に無効化される。これは一般に、問題となっているモータ作動チャンバ、例えばラジアルピストンモータに関しては例えばオンにしたり遮断したりすることができるピストングループの、取入口と出口とを短絡することによって実施される。
【0005】
油圧モータ、特にカムローブ型ラジアルピストンモータに関して、上記油圧モータを複数の速度に変速できるようにするために、速度制御弁を設けるのが一般的である。変速の原理の理解を促進するために、油圧モータを、別個の作動油流によって供給を受けることができる複数の「サブモータ」に分割できる。「サブモータ」のうちの1つの流れが再循環されると、これによって油圧モータの押しのけ容積が減少するように見える。従って、大型のポンプを必要とすることなく、油圧モータの速度を高めることができる。
【0006】
油圧ラジアルモータの多数の設計変形例、例えばカムローブ型の設計又はオービット型の設計によると、当業者には公知のコンセプト上の理由により、、油圧モータの押しのけ容積を連続的に変化させることができない。従って、事前に定義された複数の押しのけ容積値を切り替えるために、速度制御弁が設けられる。速度制御弁の切り替えは、切り替え後の油圧モータの急速な減速又は加速につながる。これは強い衝撃を生成することが多く、特に険しい地形では、上記衝撃をドライバーが感知できる場合があり、また上記衝撃によって車両の外乱及び制御性の喪失が引き起こされる場合がある。オペレータは、押しのけ容積の切り替え前に車両を停止させるよう求められる場合がある。
【0007】
更に、油圧作動油の粘度は強い温度依存性を有するため、従来技術で適用されているシステムは、油圧作動油及び/又は油圧モータの温度変動の影響によって誤作動を起こしやすい。これは、油圧部品の応答時間の増加につながる恐れがある。油圧駆動車両の運転時、この現象は、車両が空転しているような感覚を引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、油圧モータの変速挙動を滑らかにすることができ、また信頼性が高いだけでなく迅速な油圧モータの変速挙動を提供できる、油圧制御回路を提供することによって、急激な負荷の変化を可能な限り低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、独立請求項に記載の油圧制御回路、制御ユニット、油圧モータ、及び方法によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項において開示される。
【0010】
本発明による油圧制御回路は、少なくとも2つの押しのけ容積で動作可能な油圧モータでの使用に適している。上記油圧制御回路は、制御弁スプールを伴う比例速度制御弁を備える。上記制御弁スプールは、パイロット圧によって生成される力によって連続的に切り替え可能であり、上記パイロット圧は、電気アクチュエータを有する、連続的に電気調整可能なパイロット弁によって制御される。
【0011】
上記制御弁スプールは、最大トルク終端位置、低減トルク終端位置、及び少なくとも1つの中間位置の間で切り替え可能である。上記中間位置は、上記最大トルク終端位置と上記低減トルク終端位置との間に位置することができる。
【0012】
好ましくは、上記最大トルク終端位置では、全ての作動チャンバ取入口に高システム圧下の油圧作動油が供給され、全ての作動チャンバ出口は低システム圧に接続される。その結果、上記最大トルク終端位置では、全ての作動チャンバが、上記油圧モータが1回転する間に回転動力取出シャフト又はケーシングにトルクを生成するために使用され、即ち全ての作動チャンバに、例えば作動圧力である高圧下の流体を供給できる。
【0013】
例えば、ラジアルピストンモータ、特に通常は内部で作動するカムローブ型モータを考える場合、これは、1回の全回転の間に各作動チャンバの取入口に高圧下の油圧作動油が供給され、各作動シリンダ内に配設された作動ピストンが、半径方向外向きに強制的に動かされることを意味する。上記ピストンの外向きの運動によって、上記ピストンはカムローブ表面に直接的又は間接的に作用し、上記油圧モータの上記駆動シャフト又は回転ケーシングを回転させるトルクを生成する。上記ピストンが、上記カムローブ表面のカムの形状によって強制されることによって、半径方向内向きに移動しているとき、対応するシリンダ出口は低システム圧に接続され、油圧作動油は上記作動チャンバ/シリンダの孔から排出される。
【0014】
好ましくは、上記低減トルク終端位置では、作動チャンバ取入口のサブセットが、対応する出口と油圧的に短絡される。従って、作動チャンバのサブセットに属さない作動チャンバのみが、上記最大トルク終端位置と同一の作動挙動を示す。その結果、上記作動チャンバの一部のみに、高圧下の油圧作動油を供給できる。しかしながら、他の部分、即ち作動チャンバ取入口の上記サブセットには、作動チャンバの容積が増大するか減少するかにかかわらず、低圧、例えばチャージ圧の油圧作動油が供給される。その結果、作動チャンバの複数のグループを、低い油圧で、油圧的に短絡させることができる。
【0015】
換言すれば、上記制御弁の上記最大トルク終端位置では、油圧モータ、特にカムローブ型ラジアルモータの作動容積は、複数の上記作動チャンバ内に囲まれた全ての作動容積の合計である。上記低減トルク終端位置では、上記油圧モータの1回の全回転中に、上記作動チャンバの一部のみに高システム圧の作動油が供給される。従って、上記作動チャンバのうちこの一部のみが、上記油圧モータの作動容積に寄与する。残りの作動チャンバのサブセットには、例えばカムローブ型ラジアルピストンモータの場合には、ピストンローラとカムローブ表面との接触を確実にするために十分な、低減された圧力を供給できる。低圧の油圧作動油が充填されたこれらの作動チャンバは、油圧モータの実際の作動容積には寄与しない。というのは、対応する圧力チャンバには高圧下の油圧作動油が供給されないためである。多くの場合、短絡された作動チャンバのサブセットについて、上記作動チャンバのうちの1つに供給される油圧作動油の体積が、同時に別の作動チャンバから引き出される。換言すれば、ピストンローラとカムローブ表面との接触を保持するため、及びある1つのピストンを外向きに移動させるために必要な、油圧作動油の体積が、カムローブ表面の案内によって内向きに移動する別のピストンによって、押しのけられる。
【0016】
上記少なくとも1つの中間位置では、上記速度制御弁を介した取入口の上記サブセットへの油圧作動油流を、絞ることができる。上記制御弁スプールが上記少なくとも1つの中間位置にある限り、車両は比較的滑らかに加速できるため、変速によって生じる油圧衝撃を低減又は緩和できる。
【0017】
上記速度制御弁の具体的設計は、例えば油圧モータの動作タイプに応じて、即ち油圧モータが一方向に動作するか双方向に動作するかに応じて、変化し得る。当業者には多くの速度制御弁の設計が知られており、これらは全て本出願の範囲に包含されることが意図されている。一実施形態によると、上記速度制御弁は、例えばPCT国際出願番号PCT/CN2020/141046で開示されているような4方向スプール弁として設計されていてよい。これは油圧モータが両方の回転方向で動作可能である場合に特に好ましい。というのは、スプール弁の設計によって、油圧モータを両方の回転方向において同等の効率で作動させることができるためである。
【0018】
例えば油圧モータが一方の回転方向でしか動作しない場合、速度制御は3方向スプール弁として設計することもできる。3ポート型の設計により、油圧モータの効率は、一方の回転方向において他方の回転方向よりも低くなり得る。しかしながら、設計の複雑度が低いこと、又は製造の労力が低いこと等の他の要件によって、3方向スプール弁の組み込みが推進される場合がある。
【0019】
ポートの個数とは無関係に、上記速度制御弁スプールは、上記弁スプールが上記中間位置にある間に上記作動チャンバへと案内されるシステム圧を制御するノッチを備えてよい。従って、上記速度制御弁の上記ポートに接続される上記作動チャンバ取入口と上記作動チャンバ出口との間の圧力差を調整できる。上記取入口に存在する最大圧力を低下させることができ、これによって、発生し得る減速/加速及び衝撃を制限できる。
【0020】
本発明によると、パイロット圧制御弁の電気アクチュエータに印加される電流を制御するために、時間に関連した制御電流関数が提供される。上記制御電流関数は、あるコマンド時点における押しのけ容積切り替えコマンドに先行するある時間範囲に沿った、プレ電流部分を含む。上記プレ電流部分の間に存在する一定のゼロでない電流は、上記速度制御弁スプールをその2つの終端位置のうちの1つから切り替えることができるパイロット圧を実現できるものではない。典型的には、上記アクチュエータにおける最小電流未満では、上記パイロット弁によって上記制御弁に供給される上記パイロット圧は、上記制御弁スプールをその2つの終端位置のうちの1つから移動させるのに十分なものではない。上記アクチュエータにおける電流が特定の閾値を超えて上昇すると、上記パイロット弁及び/又は上記制御弁スプールは、そのもう一方の終端位置に到達でき、従って電流を更に増大させても、上記制御弁スプールの更なる変位にはつながらない。
【0021】
上記制御電流関数は更に、上記コマンド時点の後の事前に定義された/事前に設定された切り替え時点において終了するランプ時間範囲中の、電流ランプ部分を含む。上記電流ランプ部分では、電流が、ランプ開始電流レベルから中間電流レベルまで連続的に上昇又は下降する。上記電流ランプ部分の終点では、電流は切り替え電流レベルへと急峻に変化する。
【0022】
上記パイロット弁の上記アクチュエータに提供される上記制御電流関数の経過は、上記速度制御弁スプールの切り替えのための供給、即ち上記パイロット圧の高さに、直接的な影響を及ぼすことが理解されるだろう。従って、上記パイロット圧によって、上記速度制御弁スプールを、上記2つの終端位置のうちの一方から、上記少なくとも1つの中間切り替え位置を介して、他方の終端位置へと切り替えることができる。
【0023】
好ましくは、制御電流が上記制御電流関数の上記ランプ部分の範囲内にあるとき、その時点の制御電流は、上記弁スプールを上記少なくとも1つの中間位置へと移動させる。複数の、例えば比例的な中間位置が設けられる場合、上記弁スプールは、上記電流が上記制御電流関数の上記ランプ部分の範囲内にあるときに、これらの中間位置に沿って移動できる。従って、ランプ時間範囲を増大させると、モータに、及びこれに伴って車両全体に、加速又は減速のための時間がより多く与えられる。しかしながら、上記ランプ時間範囲を過剰に長く延長することはできない。そうしないと、ドライバーが車両に対する制御を失ったように感じる可能性があるためである。
【0024】
上記速度制御弁の上記中間切り替え位置の間、圧力チャンバの上記サブセットへの作動油の流れを、好ましくは上記速度制御弁の一体部品であるオリフィス構成によって、絞ることができる。
【0025】
更に、上記電流ランプ部分の勾配は、上記制御弁スプールの変速速度を規定でき、例えば上記油圧作動油の温度及び/又は上記油圧モータの温度に応じて変更できる。
【0026】
上記制御電流関数は更に、切り替えコマンドが与えられた時点での上記プレ電流レベル部分の終点に、ブースト部分を含むことができる。このブースト部分では、電流レベルを短いブースト時間にわたって急激に変化/発振させる、即ちピークのように上昇させて下降させるか又は下降させて上昇させることができる。このブースト電流は、このブースト電流が上記制御弁に供給されるパイロット圧のピークを引き起こす際に、上記制御弁スプールを「起動/励起」するように設計されている。
【0027】
切り替えの方向に応じて、即ち上記油圧モータを上記最大トルク終端位置から低減トルク終端位置に切り替えるかその逆に切り替えるかに応じて、上記ブースト部分の軌道を変更できる。
【0028】
本説明では、上記切り替え電流レベルが、上記プレ電流部分に存在するゼロでないプレ電流レベルより高い場合のシナリオを、アップシフトイベント(upshifting event)と呼ぶ。対照的に、上記切り替え電流レベルが、上記プレ電流部分に存在するゼロでないプレ電流レベルより低い場合、このシナリオをダウンシフトイベント(down‐shifting event)と呼ぶ。上記制御電流関数の上記ランプ部分の傾斜、即ち勾配が、アップシフトイベントの場合には正となり、ダウンシフトイベントの場合には、上記制御電流関数の上記ランプ部分の勾配/傾斜が負となることは、関連技術分野の当業者には明らかとなる。極端な場合には、両方の場合について、上記ランプ部分の勾配をゼロとなるように選択できる。即ちランプ部分の時間中の上記制御電流が一定となる。
【0029】
本発明の意味において、用語「アップシフト」及び「ダウンシフト」は、単に、上記速度制御弁スプールに作用するパイロット圧レベルの変化を達成するために上記パイロット弁に供給される制御電流の増大又は減少に関して使用される。上記パイロット圧レベルが最大又は最小のいずれであるときに上記油圧モータが高速又は高トルクとなるかは、本発明の概念にとって重要ではない。これは関連技術分野の当業者にとって単なる開発ポイントに過ぎないため、最初の弁の位置と、上記パイロット弁の補助によって上記速度制御弁をこの最初の端部位置から中間位置を介して他方の端部位置へと切り替えることができることとの、可能性のあるあらゆる現実的な組み合わせが、請求対象の発明に包含される。
【0030】
電流レベルは、切り替えコマンドが発生する時点におけるアップシフトイベントで、開始電流レベルよりも高い電流ブーストレベルまで上昇させることができ、またブースト時間の終点において、ランプ開始電流レベルまで急激に低下させることができる。あるいは、電流レベルは、切り替えコマンドが発生する時点におけるダウンシフトイベントで、ランプ開始電流レベルよりも低い電流ブーストレベルまで低下させることができ、またブースト時間の終点において、ランプ開始電流レベルまで急激に上昇させることができる。いずれの場合においても、ランプ開始電流レベルはプレ電流レベルとは異なるものとすることも、又はプレ電流レベルと等しいものとすることもできる。
【0031】
ランプ開始電流レベルがプレ電流レベルと異なっており、ブースト部分が設けられない場合、ここでも、切り替えコマンドが発生する時点(これ以降、コマンド時点)において、電流をプレ電流レベルからランプ開始電流レベルまで急激に上昇させることができる。
【0032】
アップシフトイベントのランプ部分は、プレ電流レベルより高いランプ開始電流レベルで、ブースト時間の直後に始まることができる。アップシフトイベントのランプ部分は、切り替え電流レベルより低い中間電流レベルにおいて、上記コマンド時点の後、事前に設定された切り替え期間だけ後に終了してよい。中間電流レベルは、上述の事前に設定された切り替え時間の終了時に、切り替え電流レベルまで急激に上昇させることができる。
【0033】
ダウンシフトイベントについて、ランプ部分は、プレ電流レベルより低いランプ開始電流レベルで、ブースト時間の直後に始まることができ、また、切り替え電流レベルより高い中間電流レベルにおいて、上記コマンド時点の後、事前に設定された切り替え期間だけ後に終了してよい。この場合、中間電流レベルは、上述の事前に設定された切り替え時間の終了時に、切り替え電流レベルまで急激に低下させることができる。
【0034】
上記制御電流関数のいずれの電流レベル、特に上記制御電流関数のプレ電流レベル、電流ブーストレベル、ランプ開始電流レベル、中間電流レベル、及び/又は切り替え電流レベルは、本発明によると、油圧作動油の温度に応じて、並びに/又は油圧システム/車両の油圧モータ及び/若しくは他のいずれの油圧部品の温度に応じて、変化させることができる。
【0035】
一般的な規則として、ブーストの大きさは温度の低下と共に増大し得る。同時に、又はその代わりに、温度が低下するとランプ勾配が増大し得る。
【0036】
その結果、アップシフトイベントでは、温度が低下するとブースト電流レベルがプレ電流レベルに対して上昇し得る。ダウンシフトイベントについては、プレ電流レベルは通常、ブースト電流レベルの大きさよりも高い。従って、温度が低下すると、ブースト電流レベルの大きさはプレ電流レベルに対して更に低下し得る。換言すれば、油圧作動油及び/又は油圧モータの温度が低下すると、プレ電流レベルとブースト電流レベルとの間の差が増大し得る。
【0037】
ランプ勾配を増大させることは、一定のランプ時間範囲に関して、ランプ開始電流レベルと中間電流レベルとの間の差を増大させることを意味する。従ってアップシフトイベントの場合、温度が低下すると、ランプ開始電流レベル及び/又は中間電流レベルはプレ電流レベルに対して上昇し得る。ダウンシフトイベントでは、温度が低下すると、ランプ開始電流レベル及び/又は中間電流レベルはプレ電流レベルに対して更に低下し得る。油圧作動油及び/又は油圧モータの温度が低下した場合に、ランプ開始電流レベルと中間電流レベルとの間の差を必ず増大させなければならないわけではないが、滑らかなアップシフト又はダウンシフトを達成するためにこれを行うことは、本発明の範囲に含まれる。
【0038】
また、制御電流関数に関するいずれの時点、又は制御電流関数に関するいずれの時間範囲、特にコマンド時点の前の時間範囲、ブースト時間、ランプ時間範囲、事前に設定された切り替え時間範囲、及び/又はコマンド時点は、油圧作動油の温度に応じて、並びに/又は油圧システム/車両の油圧モータ及び/若しくは他のいずれの油圧部品の温度に応じて、変化させることができる。
【0039】
本発明によると、制御ユニットを設けることにより、上記パイロット弁の上記電気アクチュエータへと案内される電流を、上記制御ユニットの記憶手段に記憶できる上記制御電流関数に基づいて制御できる。上記制御ユニットは別の制御ユニットと一体の部品とすることができ、又は電気アクチュエータの電流を制御することを目的とする別個の制御ユニットとすることもできる。上記制御ユニットは物理的ユニットであってよいが、別の制御ユニットのサブユニットとして実装されたソフトウェアブロックとすることもできる。これは、本発明による制御ユニットが、別のユニットから必ずしも物理的に分離されているわけではないことを意味する。本発明による制御ユニットを、別の制御ユニットに物理的に統合することもできる。
【0040】
上記制御ユニットは、油圧制御回路、油圧モータ、又は上記油圧制御回路が搭載された車両の動作パラメータを測定するよう適合された少なくとも1つのセンサの、フィードバック信号を受信できる。例えば、油圧モータ内の油圧ホース若しくはパイプ又は油圧モータに接続された油圧ホース若しくはパイプ内の、油圧作動油の温度、あるいは上記油圧モータ自体の温度を測定してよい。上記制御ユニットは、受信したフィードバック信号に基づいて制御電流関数を適合させることができる。これは、電流レベル、並びに/又は制御電流関数の関連する時点及び/若しくは時間範囲を、受信したフィードバック信号に対応して調整できることを意味する。関連技術分野の当業者であれば、本発明による制御回路が搭載された油圧システムの動作条件に関するフィードバック信号を取得するための他の多数の可能性を見出すだろう。
【0041】
上記制御ユニットは、油圧制御回路のパイロット弁の電気アクチュエータへの電流を、上記制御ユニットの記憶手段に記憶された制御電流関数に基づいて制御及び/又は調整するように構成できる。電流は好ましくは、反復的に適合された電流制御関数に従って制御される。
【0042】
上記制御ユニットは、例えばフィードバック信号が閾値を超えたときに、及び/又は事前に設定されたパターンに従って、及び/又は特定の状況下で、例えば油圧システム若しくは車両を始動するとき、若しくは油圧システム若しくは車両の作業ツールが交換されるときに、トリガ信号に基づいて、電流制御関数を例えば規則的な間隔で適合させる/変更する/変化させることができる。
【0043】
本発明による油圧制御回路を備えた油圧モータは、一方向に動作するようにも、双方向に動作するようにも構成できる。比例速度制御弁の設計は油圧モータの動作のタイプに応じて異なり得、即ち油圧モータが双方向に動作するか単方向に動作するかに依存し得る。本発明の根幹となる機能上の原理について、ラジアルピストンモータを複数の場合に対する例として用いて説明してきたが、本発明による油圧制御回路及び制御は、いずれのタイプの油圧モータに組み込むことができる。特に本発明は、いずれのマルチストロークアキシャル及びラジアルピストンモータ、例えば遊星歯車の原理による油圧モータ、即ちいわゆるジェロータ(gerotor)、又は段付きピストンを備えたピストンモータと共に使用できる。本発明はまた、油圧ラジアルピストンモータ以外の油圧ラジアルモータのため、特に油圧オービットモータのために使用できる。
【0044】
本発明によると、油圧制御回路によって、油圧モータの少なくとも2つの押しのけ状態の間でアップシフト及び/又はダウンシフトを制御するための方法が提供される。上記油圧制御回路は制御電流関数を備え、上記方法は少なくとも以下のステップを含む:
a)上記油圧モータの動作中であり、かつ速度制御弁スプールが最初の終端位置にあるときに、押しのけ容積切り替えコマンドが与えられるまで、ゼロでないプレ電流をパイロット弁の電気アクチュエータに印加するステップ;
b)ランプ時間範囲中に、制御電流関数の電流ランプ部分に従って、押しのけ容積切り替えコマンドが与えられた後、ランプ開始電流レベルから始まって中間電流レベルまで連続的に増大又は減少する電流を電気アクチュエータに印加し、上記電流ランプ部分の終端において上記電流を切り替え電流レベルへと急速に変化させることにより、パイロット弁スプールをシフトさせ、また時間に関連して適合されるパイロット圧を速度制御弁スプールに向かって制御可能な様式でガイドして、速度制御弁スプールを一方の最初の端部位置から他方の最初のものでない端部位置へと切り替えることができるステップ;
c)上記切り替え電流レベルを維持することにより、次の押しのけ容積切り替えコマンドが与えられるまで、最大又は最小パイロット圧によって、速度制御弁スプールを上記他方の最初のものでない終端位置に保持するステップ。
【0045】
ステップa)の後、かつステップb)の前に、本発明による方法は以下のステップb.1)を更に含んでよい:
b.1)押しのけ容積切り替えコマンドが与えられたときに、ブースト時間範囲にわたってブースト電流をパイロット弁の電気アクチュエータに印加するステップであって、上記ブースト電流のブースト電流レベルは上記プレ電流レベルとは異なる、ステップ。
【0046】
油圧制御回路に関連して上述したように、制御電流関数の、正常動作時間、存在する場合はブースト時間範囲、ランプ時間範囲、事前に設定された切り替え時間範囲、及び/又はコマンド時点、プレ電流レベル、存在する場合は電流ブーストレベル、ランプ開始電流レベル、中間電流レベル、及び/又は切り替え電流レベルは、油圧作動油の温度、並びに/又は油圧システム/車両の油圧モータ及び/若しくは他のいずれの油圧部品の温度に依存し得る。
【0047】
これより、添付の図面を用いて、本発明による油圧制御回路の例示的実施形態を説明する。
ここで提示される実施形態は本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、本発明による油圧制御回路の概略図を示す。
【
図2】
図2は、例えばアップシフトイベントのために設計された、本発明による制御電流関数の例を示す。
【
図3】
図3は、例えばダウンシフトイベントのために設計された、本発明による制御電流関数の例を示す。
【
図4】
図4は、例えばアップシフトイベントのために設計された、本発明による様々な制御電流関数の例を示す。
【
図5】
図5は、例えばダウンシフトイベントのために設計された、本発明による様々な制御電流関数の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
説明及び読みやすさのみを目的として、提示される全ての図において、同一の機能部分を同一の参照番号で示す。
【0050】
図1は、本発明による油圧制御回路10の概略図を示す。油圧制御回路10は例えば、車両1に搭載される油圧モータ20を制御するために使用できる。更なる説明についてトレーサビリティを高めるために、油圧モータ20は2つのサブユニット21、25に分割される。第1の油圧モータサブユニット21の作動チャンバは、取入口22及び出口24を備える。取入口26のサブセット、及び対応する出口28のサブセットは、油圧モータ20の第2のサブユニット25に属する。油圧モータ20の両方のサブユニット21、25には、油圧作動油を別個に供給できる。油圧モータ20の第1のサブユニット21の取入口22は、高システム圧又は高作動圧力に接続でき、例えば油圧モータ20の第1のサブユニット21の出口24は、低システム圧又は低作動圧力に接続できる。
【0051】
取入口26のサブセットへの、及び出口28のサブセットからの油圧作動油流は、速度制御弁30によって制御される。速度制御弁30の速度制御弁スプール38は、最大トルク終端位置32と低減トルク位置34との間を連続的に移動できる。一方の終端位置から他方への道程で、速度制御弁スプール38は少なくとも1つの中間位置36を通過する。中間位置36では、制御弁30を通って取入口26のサブセットへと向かう油圧作動油流が絞られる。更に、出口28からの油圧作動油流も同様に絞られる。これにより、複数の取入口26と複数の出口28との間の絞り接続が同時に確立される。これによって、取入口26のサブセットと出口28のサブセットとの間で中間の最大圧力差が確立される。この中間圧力差は、最大トルク位置での圧力差より小さいが、取入口26のサブセットと出口28のサブセットとを短絡したときの圧力差より高い。というのは、後者の場合には圧力差は略ゼロとなるためである。
【0052】
速度制御弁スプール38には、制御弁ばね39によって、最大トルク位置34に向かって予備張力が印加されている。パイロット圧52は、制御弁ばね39の力に対抗して作用する、制御弁スプール38に対する切り替え力を生成できる。パイロット圧52によって生成された切り替え力が閾値を超えると、速度制御弁スプール38は少なくとも1つの中間位置36を介した低減トルク終端位置34へのシフトを開始する。
【0053】
パイロット圧52は、油圧システムの動作中に電気アクチュエータ54によって連続的に操作されるパイロット弁50によって制御される。電気アクチュエータ54はパイロット弁スプール56に作用して、パイロット弁50の流れチャネルの断面積を調整する。これによってパイロット圧52が調整される。パイロット弁ばね58は、パイロット弁スプール56の、アクチュエータ54の反対側に配設され、電気アクチュエータ54に低い制御電流Yが充電されているときにパイロット圧が低くなるように、パイロット弁スプール56に対する復元力を生成する。図示されている実施形態では、電気アクチュエータ54を通る電流Yが大きくなるほど、パイロット弁スプール56はばね58に向かってより大きくシフトされる。
【0054】
電流Yは、制御電流関数60に従って電気アクチュエータ54に供給できる。以下の実施形態では、制御電流関数60は、ゼロでないプレ電流部分62と、これに続くブースト電流部分66とを含む。ブースト電流部分66の後にランプ部分64が設けられる。最後に、制御電流関数60は切り替え電流部分68を含む。
【0055】
図2は、例えばアップシフトイベントのために設計された、本発明による制御電流関数60の例を示す。アップシフトイベントでは、電流Yは低いプレ電流レベルY0から高い切り替え電流レベルY3まで上昇する。
【0056】
時点Tcにおいて切り替えコマンドが供給される前に、ゼロでないプレ電流レベルY0が電気アクチュエータ54に存在し、これによってゼロでないプレ電流部分62が形成される。プレ電流レベルY0が存在するこの時間範囲は、(現在)動作時間T0と呼ばれる。切り替えコマンドの時点Tcの後、電流Yはブースト電流レベルYbまで上昇し、ブースト電流部分66が始まる。この電流レベルYbは、例えばパイロット弁スプール56に作用する静力に打ち勝ち、パイロット弁スプール56の運動を開始するために必要な遅れ時間を削減するために、即ち第1のパイロット圧ピークによって制御弁スプール38を起動するために、ブースト時間範囲Tbにわたって維持される。
【0057】
ブースト時間範囲Tbの後、電流Yは、電流ランプ部分64の開始を示すランプ開始電流レベルY1まで低下する。電流ランプ部分64では、電流Yはランプ時間範囲Tr中に中間電流レベルY2まで連続的に上昇する。上記ランプ部分の曲線/グラフは、線形、二次関数、三次関数、又は他のいずれの曲線とすることができる。ランプ時間範囲Trの後に中間電流レベルY2に到達すると、事前に設定された切り替え時点Tsにおいて、電流レベルは切り替え電流レベルY3まで急激に上昇する。
【0058】
電流Yがランプ部分64の間に漸増するにつれて、速度制御弁スプール38のシフトによって生じる圧力ピークが低下する。これにより、車両1の加速及びこれに伴う衝撃が制限される。
【0059】
図3は、例えばダウンシフトイベントのために設計された、本発明による制御電流関数60の例を示す。ダウンシフトイベントでは、電気アクチュエータ54に存在する電流Yは、高いプレ電流レベルY0から低い切り替え電流レベルY3まで低下する。プレ電流レベルY0は(現在)動作時間T0の間に存在し、制御電流関数60のゼロでないプレ電流部分62を構成する。
【0060】
切り替えコマンドTcが供給される時点Tcにおいて、電流Yはブースト電流レベルYbまで急激に低下し、制御電流関数60のブースト電流部分66が始まる。ブースト電流部分66では、ブースト電流レベルYbがブースト時間Tbにわたって維持される。ブースト時間Tbの後、電流レベルは再び、ランプ部分64のランプ開始電流レベルY1まで急激に上昇する。ランプ時間範囲Trの間に、電流は、ランプ部分64の中間電流レベルY2に到達するまで連続的に低下する。事前に設定された切り替え時点Tsにおいて、電流Yは切り替え電流レベルY3まで急激に低下し、制御電流関数60の切り替え電流部分68が始まり、この切り替え電流部分68では、電流レベルY3が供給されるアクチュエータ54は、パイロット弁スプール56を移動させることによって、パイロット弁スプール38をその初期位置へと付勢するパイロット弁ばね58に対して上記パイロット弁スプールを移動させるために十分な力を生成でき、上記初期位置では、パイロット弁50の設計、及び制御弁30の機能に関する油圧制御回路10の要件に応じて、パイロット圧を最大又は最小とすることができる。
【0061】
例えば油圧モータ20は、速度制御弁30がその初期位置にあるときに高速又は低速モードとすることができ、上記初期位置では、速度制御弁スプール38を制御弁ばね39によって又は最大パイロット圧によってその初期位置に保持できる。本発明による油圧制御回路10を動作させるための異なる選択肢は、関連技術分野の当業者には明らかであるため、請求対象の発明に包含される。
【0062】
図4は、例えばアップシフトイベントのために設計された、本発明による様々な制御電流関数60の例を示す。
図5は、例えばダウンシフトイベントのために設計された、本発明による様々な制御電流関数の例を示す。両方の図において、制御電流関数60の3つの例示的な曲線が示されている。各曲線は、油圧作動油の異なる温度、又は油圧モータ20の異なる温度に関するものである。一点鎖線の曲線は、油圧作動油又は油圧モータ20の低い温度Temp_lに関するものである。低い動作温度は、速度制御弁30を動作させる際に大きな遅延を引き起こす。従って最も低い温度に関連する制御電流関数60は、最も大きなブースト部分66、即ちプレ電流レベルY0とブースト電流レベルYbとの間の最も大きな差と、ランプ部分64の最も大きな傾斜とを含む。
【0063】
実線の曲線は、油圧作動油又は油圧モータ20の中程度の温度Temp_mに関するものである。最低温度Temp_lに関する曲線と比較して、中程度の温度Temp_mの曲線は、絶対値に関して、より低いブースト部分、及び傾斜がより緩いランプ部分を含む。油圧モータ20の油圧作動油の温度が高くなるほど、油圧作動油の粘度は低下する。従って、動作温度が高くなるほど、速度制御弁30を動作させる際の遅延が低減される。その結果、プレ電流レベルY0とブースト電流レベルYbとの間の差、及びランプ部分64の勾配を低減できる。
【0064】
破線の曲線は、油圧作動油又は油圧モータ20の高い温度Temp_hに関するものである。ここでは、ブースト電流レベルYbとプレ電流レベルY0との間の差は、提示されている他の曲線に比べて最小となる。更にランプ部分64の勾配は比較的小さくなる。
【0065】
異なる制御電流関数60を油圧作動油及び/又は油圧モータ20の現在の温度に適合させることにより、油圧制御回路10を様々な動作条件下で動作させる場合でも、油圧制御回路10の動作挙動は同様に感じられる。その結果、オペレータにもたらされる感覚が温度に依存しなくなり、油圧車両を操作する際の快適性が向上する。
【0066】
以上の開示、並びに添付の図面及び特許請求の範囲から、本発明による油圧制御回路、制御ユニット、油圧モータ、及び方法が、先行技術を上回る多くの可能性及び利点を提供することが理解されるだろう。更に当業者には、本発明による油圧制御回路、制御ユニット、油圧モータ、及び方法に対して、本発明の精神から逸脱することなく、当該技術分野において公知の更なる修正及び変更を加えることができることが理解されるだろう。従って、これらの修正及び変更は特許請求の範囲内であり、特許請求の範囲によって包含される。更に、上述の実施例及び実施形態が説明のみを目的とするものであること、並びに関連技術分野の当業者に示唆されるであろう、上述の実施例及び実施形態に照らした実施形態の様々な修正、変更又は組み合わせが、本出願の精神及び範囲に含まれることを理解されたい。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
10 油圧制御回路
20 油圧モータ
21 第1のサブユニット
22 取入口
24 出口
25 第2のサブユニット
26 取入口のサブセット
28 出口のサブセット
30 速度制御弁
32 最大トルク終端位置
34 低減トルク終端位置
36 中間切り替え位置
38 速度制御弁スプール
39 速度制御弁ばね
40 オリフィス構成
50 パイロット弁
52 パイロット圧
54 電気アクチュエータ
56 パイロット弁スプール
58 パイロット弁ばね
60 制御電流関数
62 ゼロでないプレ電流部分
64 ランプ部分
66 ブースト電流部分
68 切り替え電流位置
100 制御ユニット
110 記憶ユニット
120 フィードバック信号
130 センサ
Y 電流(線)
Y0 プレ電流レベル
Y1 ランプ部分のランプ開始電流レベル
Y2 ランプ部分の中間電流レベル
Y3 切り替え電流レベル
Yb ブースト電流レベル
T0 (正常)動作時間
Tb ブースト時間
Tc 切り替えコマンドの時点
Tr ランプ時間範囲
Ts 事前に設定された切り替え時点(時間範囲)
Temp_l 低い温度に関する曲線
Temp_m 中程度の温度に関する曲線
Temp_h 高い温度に関する曲線
【外国語明細書】