IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

特開2024-88610ローラを位置決めするための、又はベルトに張力をかけるための装置、延伸装置、そのような装置を含む紡績ユニット及び紡績機
<>
  • 特開-ローラを位置決めするための、又はベルトに張力をかけるための装置、延伸装置、そのような装置を含む紡績ユニット及び紡績機 図1
  • 特開-ローラを位置決めするための、又はベルトに張力をかけるための装置、延伸装置、そのような装置を含む紡績ユニット及び紡績機 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024088610
(43)【公開日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ローラを位置決めするための、又はベルトに張力をかけるための装置、延伸装置、そのような装置を含む紡績ユニット及び紡績機
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/00 20060101AFI20240625BHJP
   D01H 5/74 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
D01H13/00 Z
D01H5/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023210727
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】503225
(32)【優先日】2022-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(71)【出願人】
【識別番号】518264859
【氏名又は名称】ザウラー スピニング ソリューションズ ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Spinning Solutions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Carlstr. 60, 52531 Uebach-Palenberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シッファース、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン、ラース
(72)【発明者】
【氏名】ライマン、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BC01
4L056BC22
4L056BF02
4L056BF07
4L056BF56
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ベルトの交換を改善して簡易化し、交換をできる限り迅速化し、そのようにしてベルトの交換のためのコストを削減できる装置を提供する。
【解決手段】ベルトの交換を改善して簡易化するために、少なくとも1つの案内装置は、特にローラ、引張ロッド、及び/又はベルトの相対位置を互いに変えることなくベルトの取出及び/又はベルトの巻回をするために、下部ローラを可逆的にアクセス可能にするために配置されて構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸装置(100)及び/又は紡績ユニット(200)で少なくとも1つのローラ(6)を位置決めするための、及び/又は延伸装置(100)及び/又は紡績ユニット(200)で少なくとも1つのベルト(1)に、特にガイドベルトに、張力をかけるための、装置(10)において、前記装置(10)は、
-回転可能に支承された少なくとも1つのローラ(6)と、
-少なくとも1つのベルト(1)、特にガイドベルトと、
-少なくとも1つの引張ロッド(4)と、
-少なくとも1つの前記ローラ(6)の作動時に前記ベルト(1)を案内するために少なくとも1つの接触個所(21)で前記ベルト(1)と接触するための少なくとも1つの案内装置(20)と、を有し、
前記引張ロッド(4)と前記ローラ(6)は、前記ベルト(1)を作動のために配置して、前記ローラ(6)の少なくとも1つの部分を接触領域(30)で周回するようにするために構成されて配置され、
前記引張ロッド(4)と前記ローラ(6)は、前記ベルト(1)を作動のために配置して、前記引張ロッド(4)の少なくとも1つの部分を周回するようにするために構成されて配置され、
前記引張ロッド(4)と前記ローラ(6)は、少なくとも1つの前記ローラ(6)の作動時に前記ベルト(1)が張力をかけられて前記引張ロッド(4)と前記ローラ(6)を周回するように構成されて相互に配置され、
前記ベルト(1)は周回をするときに少なくとも1つの案内装置(20)によって案内可能であり、及び、
少なくとも1つの前記案内装置(20)は、特に前記ローラ(6)、前記引張ロッド(4)、及び/又は前記ベルト(1)の相互の相対位置を変えることなく、前記ベルト(1)を取り出すために、及び/又は前記ベルト(1)を巻回するために、特に下部ローラとして構成される前記ローラ(6)を可逆的にアクセス可能にするために配置されて構成される、装置。
【請求項2】
前記案内装置(20)は、前記案内装置(20)と少なくとも1つの前記ベルト(1)との間の接触を中断するために配置されて構成され、少なくとも1つの前記ローラ(6)、少なくとも1つの前記ベルト(1)、及び少なくとも1つの前記引張ロッド(4)は、前記案内装置(20)と前記ベルト(1)との間の接触が中断されたときに、それぞれの位置を互いに相対的に維持するために構成されて配置されることを特徴とする、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記案内装置(20)は、前記引張ロッド(4)及び/又は前記ローラ(6)から前記ベルトを取り出すために前記案内装置(20)を取り外すために、少なくとも1つの前記ローラ(6)、少なくとも1つの前記ベルト(1)、及び/又は少なくとも1つの前記引張ロッド(4)に対して相対的に可逆的に取外可能に配置され、前記案内装置(20)が取り外されるときに、前記案内装置(20)、前記ベルト(1)、及び前記ローラ(6)の間の相対的な位置が維持され、又は、
前記案内装置(20)は、前記引張ロッド(4)及び/又は前記ローラ(6)に前記ベルトが巻回された後に前記案内装置(20)を組み付けるために、少なくとも1つの前記ローラ(6)、少なくとも1つの前記ベルト(1)、及び/又は少なくとも1つの前記引張ロッド(4)に対して相対的に可逆的に組付可能に配置され、前記案内装置(20)が組み付けられるときに、前記案内装置(20)、前記ベルト(1)、及び前記ローラ(6)の間の相対的な位置が維持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(10)。
【請求項4】
前記ローラは軸受台(25)で回転可能に支承され、前記軸受台(25)と前記案内装置(20)は機能ユニット(5)を形成し、この機能ユニットは、前記機能ユニット(5)が組み付けられた状態にあるとき前記案内装置(20)によって接触個所(21)で前記ベルト(1)と接触するために構成されて配置されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記軸受台(25)は少なくとも部分的に取外可能であり、それにより、前記軸受台(25)の一部を前記機能ユニット(5)から取り外して、前記案内装置(20)と前記ベルト(1)との間の接触を中断し、又は、
前記軸受台(25)の前記機能ユニット(5)の取外可能な部分を組付可能であり、それにより、前記引張ロッド(4)及び/又は前記ローラ(6)に前記ベルト(1)が巻回された後に、前記軸受台(25)の取外可能な部分を前記機能ユニット(5)に組み付けて、前記案内装置(20)と前記ベルト(1)との間の接触を成立させることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の、特に請求項4に記載の装置(10)。
【請求項6】
前記軸受台(25)は特にスライド案内部(18)を有する台座の上で基体(19)から可逆的に取外可能であり、それにより、前記軸受台(25)を前記装置(10)から取り出して、前記案内部材(20)と前記ベルト(1)との間の接触を中断し、又は、
前記軸受台(25)は特にスライド案内部(18)を有する台座の上で基体(19)へ可逆的に組付可能であり、それにより、前記引張ロッド(4)及び/又は前記ローラ(6)に前記ベルトが巻回された後に、前記軸受台(25)を前記装置(10)に挿入して、前記案内部材(20)と前記ベルト(1)との間の接触を再び成立させることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項7】
前記軸受台(25)は、前記ベルト(1)を前記引張ロッド(4)及び前記ローラ(6)から取り出すために、少なくとも1つの前記ローラ(6)の回転軸(3)に対して平行に前記装置(10)から取出可能であり、それは特に、前記回転軸(3)に対して平行にスライド案内部(18)を介して前記装置(10)から引出し可能であることによってであり、又は、
前記軸受台(25)は、前記引張ロッド(4)及び/又は前記ローラ(6)に前記ベルト(1)が巻回された後に、少なくとも1つの前記ローラ(6)の回転軸(3)に対して平行に前記装置(10)へ挿入可能であり、それは特に、前記回転軸(3)に対して平行にスライド案内部(18)を介して前記装置(10)へ差込可能であることによってであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の、特に請求項6に記載の装置(10)。
【請求項8】
前記軸受台(25)は取付装置によって、特にねじによって、ドラフト平面に対して直角に可逆的に取付可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の、特に請求項7に記載の装置(10)。
【請求項9】
前記台座(19)と前記スライド案内部(18)は前記軸受台(25)の最大差込を形成するために協同作用するように構成され、それにより、前記軸受台(25)と前記案内装置(20)を、特に少なくとも1つの前記ローラ(6)及び/又は少なくとも1つの前記引張ロッド(4)に対して相対的に、反復される差込のときに再現可能に位置決めすることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置(10)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の装置(10)を含む、延伸装置(100)。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に記載の装置(10)を含む、及び/又は請求項10に記載の延伸装置(100)を含む、紡績ユニット(200)。
【請求項12】
前記延伸装置(100)及び/又は前記装置(10)は、組み付けられた前記案内部材(20)が前記案内部材(20)の取外のためにアクセス可能であるように配置されて構成され、それにより、前記ローラ(6)、前記ベルト(1)、及び前記引張ロッド(4)の位置を互いに相対的に、前記延伸装置(100)に対して相対的に、及び/又は前記紡績ユニット(200)に対して相対的に、前記案内部材(20)の取外のときに維持し、又は、
前記延伸装置(100)及び/又は前記装置(10)は、前記案内部材(20)が取り外されているときに前記ローラ(6)及び/又は前記引張ロッド(4)が前記ローラ(6)及び/又は前記引張ロッド(4)への前記ベルト(1)の巻回のためにアクセス可能であるように配置されて構成され、特に、前記ベルト(1)の巻回時に、及び/又は前記案内部材(20)の組付時に、前記ローラ(6)と前記引張ロッド(4)の位置が互いに相対的に、及び/又は前記紡績ユニット(200)に対して相対的に、維持されたまま保たれることを特徴とする、請求項11に記載の紡績ユニット(200)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の紡績ユニット(200)を含む、及び/又は請求項10に記載の延伸装置(100)を含む、及び/又は請求項1から9のいずれか1項に記載の装置(10)を含む、紡績機。
【請求項14】
前記紡績機、前記紡績ユニット(200)、前記延伸装置(100)、及び/又は前記装置(10)は、組み付けられた前記案内部材(20)が前記案内部材(20)の取外のためにアクセス可能であるように配置されて構成され、それにより、前記ローラ(6)、前記ベルト(1)、及び前記引張ロッド(4)の位置を互いに相対的に、及び/又は前記延伸装置(100)に対して相対的に、前記紡績ユニット(200)に対して相対的に、及び/又は前記紡績機に対して相対的に、前記案内部材(20)の取外のときに維持し、又は、
前記紡績機及び/又は前記延伸装置(100)及び/又は前記装置(10)は、前記案内部材(20)が取り外されているときに前記ローラ及び/又は前記引張ロッド(4)への前記ベルト(1)の巻回のために前記ローラ(6)及び/又は前記引張ロッド(4)がアクセス可能であるように配置されて構成され、特に、前記ベルト(1)の巻回時に、及び/又は前記案内部材(20)の組付時に、前記ローラ(6)と前記引張ロッド(4)の位置が互いに相対的に、及び/又は前記紡績ユニット(200)に対して相対的に、及び/又は前記延伸装置(100)に対して相対的に、維持されたまま保たれることを特徴とする、請求項13に記載の紡績機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのローラと、少なくとも1つのベルト、特にガイドベルトと、少なくとも1つの引張ロッドと、少なくとも1つの案内装置とを有する、ローラを位置決めするための、又はベルトに張力をかけるための装置に関する。更に本発明は、本発明による装置を有する延伸装置に関する。更に本発明は、本発明による装置及び/又は本発明による延伸装置を有する紡績ユニットに関する。更に本発明は、本発明による装置及び/又は本発明による紡績ユニット及び/又は本発明による延伸装置を有する紡績機に関する。
【0002】
繊維産業では、延伸装置でベルトに張力をかけるための装置がたとえば欧州特許第2573230(B1)号明細書から知られており、延伸装置は多数のローラ対を有しており、たとえば後側のローラ対と、中央のローラ対と、前側のローラ対とを有している。これらのローラが上記の順番で繊維束案内部に沿って、繊維束の延伸方向に配置される。延伸装置は、前側の下側のロールを回転可能に支持するために設計された第1の支持区域を有しており、更に、中央の下側のロールを回転可能に支持するために設計された第2の支持区域を有しており、更に、中央の下側のロールの周りに巻かれたガイドベルトの張力と位置を調節するために設計された引張ロッドを有しており、第3の支持区域が第1の支持区域及び第2の支持区域のうちの少なくとも一方に配置されてこれから突き出して、引張ロッドを支持するために設計され、第3の支持区域は、引張ロッドに形成された凹部に挿入されることによって引張ロッドを支持するために設計される。
【0003】
このときガイドベルトは摩耗を受け、その理由により、ある程度の期間後に交換しなくてはならない。ガイドベルトの交換は、従来技術では、紡績機の操業時間の休止と結びついている。それに伴って紡績機の停止はコストと結びついている。
【0004】
上述した従来技術を前提としたうえで、本発明の課題は、ベルトの交換を改善して簡易化し、交換をできる限り迅速化し、そのようにしてベルトの交換のためのコストを削減することにある。これに加えて本発明の課題は、ベルト交換の反復可能性を改善し、それによって交換を全体として改善することにある。
【0005】
この課題は請求項1の特徴を有する装置によって解決される。更にこの課題は、請求項10の特徴を有する延伸装置によって、並びに請求項11の特徴を有する紡績ユニットによって、解決される。更に、この課題は請求項13の特徴を有する紡績機によって解決される。
【0006】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項の対象である。
【0007】
1つの態様では、この課題は請求項1の特徴を有する装置によって解決される。
【0008】
この装置は、延伸装置及び/又は紡績ユニットの少なくとも1つのローラを位置決めするために設計される。代替的又は追加的に、この装置は延伸装置の少なくとも1つのベルトに張力をかけるために設計される。ベルトはガイドベルトとして構成されていてよく、ないしはガイドベルト又はエプロンバンドと呼ぶこともできる。代替的又は追加的に、この装置は、少なくとも1つの紡績ユニットでベルトに張力をかけるために設計される。以下においてこの装置は、ローラを位置決めするために意図されるか、ベルトに張力をかけるために意図されるかの目的の指定に関わりなく、テンション装置と呼ぶこととする。テンション装置は、回転可能に支承された少なくとも1つのローラを有する。更にテンション装置は、特にガイドベルトとして構成される少なくとも1つのベルトを有する。更にテンション装置は、少なくとも1つの引張ロッドと、少なくとも1つの接触個所でベルトと接触するための少なくとも1つの案内装置とを有する。案内装置は、少なくとも1つのローラが作動するときに(機能状態、動作状態)、ベルトを案内するための役目を果たす。このとき引張ロッドとローラは、ローラの少なくとも1つの部分を接触領域で周回するように、ベルトを作動用に配置するために構成されて配置される。更に引張ロッドとローラは、引張ロッドの少なくとも1つの部分を周回するように、ベルトを作動用に配置するために構成されて配置される。更に引張ロッドとローラは、少なくとも1つのローラの作動時にベルトが引張ロッドとローラの周りで張力をかけられて周回するように構成されて相互に配置される。このときベルトは、特に引張ロッドとローラとの間で、周回をするときに少なくとも1つの案内装置によって案内可能である。少なくとも1つの案内装置は、特に、周回方向に沿ってローラと反対を向くほうの引張ロッドの前側端部と、周回方向に沿って引張ロッドないし引張ロッドの後側端部のほうを向くローラの後側端部との間で、ベルトが周回をするときに少なくとも1つの案内装置によって案内可能であるように配置される。少なくとも1つの案内装置は、特に下部ローラの形態のローラを可逆的にアクセス可能にするために配置されて構成される。このようなアクセス可能化は、特にベルトの取出に利用される。代替的又は追加的に、アクセス可能化はベルトの巻回のために利用される。このとき特にローラ、引張ロッド、及び/又はベルトの相対位置はアクセス可能化の際に相互に変化しない。このことはベルト交換後の個々のコンポーネントの位置決めを改善し、ベルト交換を簡易化する。それにより、相応のテンション装置を装備する相応の延伸装置の待機時間(非機能状態での停止)が短縮され、それに伴って相応の紡績機の待機時間も短縮される。それによって資源が保全され、コストが削減される。
【0009】
このときテンション装置は、特に、回転可能に支承された少なくとも1つのローラと、少なくとも1つのベルトと、少なくとも1つの引張ロッドと、少なくとも1つの接触個所でベルトと接触するための少なくとも1つの案内装置とからなる機能グループである。このとき接触個所でのベルトとの接触は、特に、ローラの少なくとも1つの部分及び少なくとも1つの部分の周りで周回をするときの少なくとも1つのローラの作動時にベルトを案内するために利用される。テンション装置は延伸キャリッジとして構成されていてもよく、相応の名称で呼ぶことができる。このとき延伸キャリッジは複数の延伸キャリッジのうちの1つであってよく、これらの延伸キャリッジが、上部ローラと下部ローラをローラ対をなすように配置して、繊維束の延伸のために繊維束の延伸方向で相前後して配置される複数のローラ対で形成される延伸装置を構成することができる。
【0010】
ローラは、特に、軸受台で回転可能に支承されていてよい。このとき軸受台は一体的に、2部分で、又は多部分で構成されていてよい。すなわち特に、ローラ案内部の回転可能な部分を保持するように下側部分が構成されることが意図されていてよい。このとき、対応する上側部分が下側部分の上に組付可能であるように構成されていてよく、上側部分と下側部分の両方の凹面状の、特に円筒状の中空スペースの中で、ローラ案内部が回転支承されるようになっている。それによってローラが回転することができる。
【0011】
このときローラ(ロールとも呼ぶ)は、特に、能動的に駆動されるローラ、特に下部ローラであってよい。ローラは部分領域でベルトによって引張のもとで接触されるので、ローラを通じてベルトを動かすことができ、したがって、このベルトはガイドベルトであってよい。このときベルトは、ローラと接触する部分領域では少なくとも1つのローラを、及び引張ロッドと接触する部分領域では引張ロッドを、機能状態のときに周回することができる。
【0012】
このとき機能状態とは、特に、糸を紡績するために意図されて相応に構成される状態である。そのために繊維束が延伸装置で特に延伸され、それは、(上で説明した延伸キャリッジの上に配置された)1列のローラ対を繊維束が通過していくことによる。このとき特に、繊維束によって順次通過される少なくとも3つのローラ対(それぞれ3つの延伸キャリッジ、特に上側及び下側)が配置されていてよい。このときベルトは、(中央の)下部ローラ又は相応に(中央の)上部ローラの周りに部分領域で巻き付けられていてよい。
【0013】
このとき、特にこのような機能状態で稼働が行われる。機能状態は少なくとも1つのローラを位置決めするために構成され、それは、ベルトが、特にガイドベルトが、ローラに対して引張を及ぼすように構成されて配置されることによってであり、それはベルトが、特にガイドベルトが、更にローラの部分領域と引張ロッドの部分領域とを周回するように構成されて配置されることによってであり、それにより引張がベルトによって、特にガイドベルトによって、引張ロッドからローラに対して、又はその逆に、伝達される。それによって特にベルトに張力がかけられる。
【0014】
ベルトの張力と位置(延伸方向に対して平行の方向での位置、換言すると延伸方向の延伸位置;及び延伸方向に対して垂直の方向での位置、換言すると長手方向の長手位置)は、特に、引張ロッド及び/又はローラによって調節される。このように、引張ロッドないしローラの組付状態が、引張ロッド及びローラを周回するベルトの張力と位置に影響を及ぼす。ベルトの張力及び/又は位置が変化すると、機能状態のときに上部ローラと下部ローラの間を通過する繊維束の延伸状態も変化する。このことは、たとえば延伸装置によって延伸される繊維束で生じる、厚みの不均一性を引き起こす可能性があり、そのため繊維束の品質に影響を及ぼしてしまう。ベルトはエプロンベルトと呼ぶこともできる。
【0015】
このとき引張ロッドは、詳しく述べたように特に(中央の)下部ローラの形態の少なくとも1つのローラの周りで部分領域においてローラの周りに延びて、その際にこれと接触して引張をかけるベルトの張力及び/又は位置を調節するために意図されて構成されていてよい。ここでは引張ロッドという用語を用いるが、これは必ずしも円筒状の形態を有さなくてもよい。引張ロッドは、円形又は楕円形の(部分)断面を有さなくてもよい。むしろ引張ロッドは、特にベルト接触領域とベルト接触エッジとを備える直方体の構造物であってもよい。したがって、引張ロッドをブリッジ又は引張レールと呼ぶこともできる。
【0016】
代替的又は追加的に、ローラは、又はローラの支承部は、ベルトの張力と位置を調節するように意図されて構成されていてよい。特にローラないしローラの支承部は、延伸方向に沿ってのローラの位置決めのために、位置に関して定義されたとおりに調整可能なように構成されていてよい。換言するとベルトは、引張ロッドとローラとを上で説明したように周回する状態にあるとき、ローラに対して定義されたとおりに変更可能である調整可能な引張ロッドの相対位置を通じて、ないしはその逆に、必要に即して張力をかけることが可能である。
【0017】
ベルト接触領域及び/又はベルト接触エッジは、ベルトに引張が及ぼされてガイドベルトとして引張ロッドを介して摺動するときにも、ベルトができる限り保全されながら引張ロッドを周回するように配置されて構成されていてよい。
【0018】
引張は、換言すると、少なくとも1つのローラから相対的に離れるように引張ロッドが動くことによってベルトに導入される(材料)応力であり得る。すなわち換言すると、ベルトが張力をかけられると言うこともできる。
【0019】
ベルトによって引張をかけられる少なくとも1つのローラと、対応する上部ローラの形態の別のローラとの間に、間隙が存在していてよい。このようなは、引張ロッドによりベルトに伝達される引張に応じて、ベルトの引張によってこのような間隙が相応に締め付けられることが意図されていてよい。これを別の表現で言うと、引張ロッドによる引張は、延伸のときに繊維束の品質を調整するために、少なくとも1つの別のローラに対する少なくとも1つのローラの精密位置決めのために作用する。代替的又は追加的に、ベルトは延伸されるべき繊維束と接触し(必ずしもベルトが周回をするロールではない)、それにより、ベルトの張力が繊維束の延伸プロセスにも直接的に影響を及ぼす。ベルトの延伸の微調整は、そばを通過する繊維との接触挙動の微調整に呼応するからである。
【0020】
非機能状態は、特に、繊維束がローラ対(ロール対とも呼ぶ)の構造を通って通過することができない状態である。非機能状態は、ベルトがテンション装置から取り出され、それに伴って繊維束延伸を実行することができないように構成されていてよい。更には特に非機能状態は、ベルトが引張ロッド及び/又はローラから取り出されて、特にこれを交換することを可能にする機能状態である。換言すると非機能状態とは、補修状態及び/又はベルト交換状態であると理解することもできる。代替的に、この状態を保守整備状態と呼ぶこともできる。
【0021】
このとき延伸装置は複数のテンション装置を含むことができ、特に、たとえば前側の中央の下部ローラのところに、ないしは前側の中央の上部ローラのところに、上側及び下側のテンション装置を含むことができる。これらがメインドラフトゾーンを形成することができ、これは、繊維束が高いドラフト値のもとで引っ張られて糸の紡績を準備する延伸装置の領域である。このとき延伸装置は複数の延伸キャリッジによって構成されていてよく、これらがそれぞれ上側及び/又は下側の延伸キャリッジを形成し、そのようにして、上で説明したローラ対構造を形成する。
【0022】
繊維束の繊維は特にこのメインドラフトゾーンでまとまりを失う。したがって延伸機構とも呼ばれる延伸装置は、特に冒頭で説明した方式のベルト延伸機構として構成されていてよい。このとき繊維束は、特に2つのローラの、いわゆるローラ対の、ニップラインの間で、テンション装置のベルトによって案内される。このとき延伸装置は、メインドラフトゾーンの領域で上に説明した2つのテンション装置が互いに向き合うように配置されていてよい、いわゆる二重ベルト延伸機構として構成されていてよく、それぞれ上部ローラと下部ローラにより1つのベルトが案内されて、このベルトを第2のローラ対に向かって方向転換デバイスにより繊維案内方向から帰還方向へと方向転換させることができ、それにより、繊維束が上側ベルトと下側ベルトの間で案内される。
【0023】
特にベルトは、特に駆動可能なローラの周りで、特に駆動可能な下部ローラの周りで、及び引張ロッドの周りで、案内されるエンドレスベルトとして構成される。このとき特に引張ロッドはベルトを、特に下側ベルトを、上で説明したように稼働のために必要な初期張力に保つ。特に駆動可能なローラを通じてベルトを駆動可能であり、通常、向かい合うベルトの、特に上側ベルトないし上部ローラの、摩擦接合を通じて、ローラからベルトへの駆動トルクの伝達を行うことができる。
【0024】
案内装置は、ベルトを特に側方で案内するために構成されていてよい。このような案内は、特に、紡績された糸の品質に影響を及ぼす。繊維束の好ましい繊維案内は、ないし好ましいドラフト品質は、繊維束の均一なドラフトによって均一に紡績される糸のために必須である。ベルト延伸機構での、特にベルト案内部の領域での、メインドラフトに基づき、この領域でのベルトの申し分のない案内には決定的な意義がある。
【0025】
このとき案内装置は、特に、ベルトが側方で案内されて、ロール及び/又は引張ロッドを通じてのベルトの変位を防止するように構成される。それに伴い、詳しく説明したメインドラフトゾーンでの相応の反力も実現することができる。
【0026】
案内装置との相互作用も特にベルトの摩耗に寄与する。ただしこのような寄与は、ローラと引張ロッドによって繊維束との相互作用で引き起こされる摩耗への寄与を下回る。
【0027】
したがって、特に延伸されるべき繊維束との相互作用によるベルトの摩耗だけでなく、引張ロッドとの滑り接触による摩耗も、繊維束の品質にネガティブな影響を及ぼす。この理由により、ベルトをある程度の期間後に交換しなければならない。このときベルトの交換を特別に簡易に構成することができ、結果として得られる繊維束の再現可能な品質を確保するために、特別に再現可能なベルトの巻回を行う必要もない。
【0028】
このときベルトの取出並びにベルトの巻回を、特に、摩耗した古いベルトを新しい摩耗していないベルトと交換するために利用することができる。このとき相応の再現可能な品質を確保するために、ローラ、引張ロッド、及び/又はベルトの相互の相対位置ができる限り変わらずに保たれるのがよく、ないしは、ベルト交換が再現可能な相対位置につながるのがよい。
【0029】
このとき特に、ベルト、ローラ、及び引張ロッドの相対位置をアクセス可能化にあたって変えることなく、ローラを可逆的にアクセス可能にするために配置されて構成される、少なくとも1つの案内装置が設けられていてよい。それにより、案内装置が動かされて、及び/又は取り出されて、引き続いてベルトを取り出すことによって、又はこれを巻回することによって、ベルトを取り出すことができる(そのとき初めて少なくとも1つのベルトの相対位置が変化し、理想的には、ローラと引張ロッドに対するベルトの相対位置だけが変化する)。換言するとこのことは、ローラ、引張ロッド、及びベルトの相対位置をローラのアクセス可能化が変化させるのではなく、ベルトの取出が初めて変化させることを意味する。このときローラと引張ロッドの相互の相対位置を、取出のときにも、ないしは新しいベルトの巻回のときにも、維持することができる。
【0030】
このとき更にテンション装置の案内装置は、特に、ベルトを切断する必要なく、少なくとも1つのベルトをテンション装置から取り出せるように構成されて配置される。その際にそれぞれのローラを(装置から)取り外すことなく、ベルトを取り出すことも可能である。特に引張ロッドも動かさなくてよく、緩めなくてよく、及び/又は取り外さなくてよい。それにより、相応のコンポーネント及び/又はモジュールが、特に装置の中にとどまる。したがって、ローラ及び/又は引張ロッドの、部分的に時間コストのかかる再組付及び特にこれに続く微調節を回避することができる。ベルト交換もいっそう簡易になる。
【0031】
特に、相応のローラが露出したときでさえ、これら3つの相互の相対位置を変えることなくベルトをローラ及び引張ロッドから引き出すために、ローラが、特に下部ローラ及び/又は上部ローラが、アクセス可能となるように案内装置を動かすことができる。それによってベルト交換の再現可能性が高くなり、非機能状態の時間及びこれに伴って装置の稼働休止の時間が短縮され、このことは、機械の稼働のコストに直接的に好ましく作用する。
【0032】
1つの態様では、案内装置は、案内装置と少なくとも1つのベルトとの間の接触を中断するために配置されて構成されていてよい。このとき少なくとも1つのローラ、少なくとも1つのベルト、及び少なくとも1つの引張ロッドは、案内装置とベルトとの間の接触が中断されたときに、それぞれの位置を互いに相対的に維持するために構成されて配置されていてよい。それにより、ローラがいっそう容易にアクセス可能となるので、特にベルト交換が簡易化される。それによって資源も節減され、このことはベルト交換のコストにポジティブに影響する。
【0033】
接触の中断とは、ここでは特に、ベルトと案内装置との間の詳しく説明した接触個所又は接触領域が解消されることであると理解される。
【0034】
換言するとこのことは、ローラ、引張ロッド、及びベルトからなる構造体に対して案内装置が可動に配置されていてよいことを意味する。すなわち、特にローラを(いっそう容易に)交換できるようにするため、ローラをアクセス可能にするために案内装置が動かされ、それ以外の1つ又は全部のコンポーネントは動かされることがない。
【0035】
別の態様では、案内装置は、ベルトを引張ロッド及び/又はローラから取り出すために案内装置を取り外すために、少なくとも1つのローラ、少なくとも1つのベルト、及び/又は少なくとも1つの引張ロッドのうちの少なくとも1つに対して相対的に可逆的に取外可能に配置されていてよく、案内装置、ベルト、及びローラの間の相対位置は案内装置の取外のときに維持される。それに伴って案内装置の取外が可能となり、それがひいてはベルト交換を簡易化する。
【0036】
代替的又は同時に、案内装置は、引張ロッド及び/又はローラにベルトが巻回された後に案内装置を(すなわち案内部材も)組み付けるために、ローラ、ベルト、及び/又は引張ロッドのうちの少なくとも1つに対して相対的に組付可能であってよい。すなわち、それに伴って組付は巻回よりも時間的に後に行われる。このとき特に案内装置、ベルト、及びローラの間の相対位置は、案内装置の組付のときに維持される。それによって案内装置の組付が可能となり、それによりベルト交換が簡易化される。
【0037】
ここで「代替的に」とは、組付と取外のいずれかを行うことができることを明確化する。「同時に」とは、案内装置とテンション装置のいずれもが、可逆的な取外(可逆的とは、再組付ステップがあることを意味する)を形成するために構成されて配置されることを明確化する。すなわち、この態様では案内装置が動かされるだけでなく、特に、たとえば案内装置が配置されている組付個所からの物体的な分離の形態で、物理的な取外が行われる。
【0038】
別の態様では、ローラは軸受台に回転可能に支承されていてよい。このとき軸受台と案内装置が機能ユニットを形成し、この機能ユニットは、機能ユニットが組み付けられた状態にあるときベルトを接触個所で案内装置により接触させるために構成されて配置される。それにより、軸受台と案内装置からなる簡素なモジュールによって、ベルトの相応の接触及びそれによりベルトの初期化された案内が可能となる。それによって接触の成立が簡易化され、その際に、案内が特にその再現可能性に関して改善される。
【0039】
つまりここで説明している機能は、案内部材とベルトとの間の接触確立である。このとき特にベルトは、案内部材との接触が確保されるようにローラと引張ロッドに張り渡される。
【0040】
別の態様では、軸受台は少なくとも部分的に取外可能に構成され、それにより軸受台の一部を機能ユニットから取り外して、案内装置とベルトとの間の接触を中断するようになっている。
【0041】
代替的又は同時に、軸受台の機能ユニットの取外可能な部分を組付可能であり、それにより、引張ロッド及び/又はローラにベルトが巻回された後に、軸受台の取外可能な部分を機能ユニットへ組み付けて、案内装置とベルトの間の接触を成立させる。
【0042】
ここで「代替的に」とは、組付と取外のいずれかを行うことができることを明確化する。「同時に」とは、案内装置とテンション装置のいずれもが、可逆的な取外(可逆的とは、再組付ステップがあることを意味する)を形成するために構成されて配置されることを明確化する。この態様では、案内装置は軸受台の一部とともに、たとえば機能ユニット及び/又は案内装置が配置されている、機能ユニットの組付個所からの物体的な分離の形態で、物理的に取り外される。このとき軸受台は2部分又は多部分で構成されていてよく、特に、軸受台で回転可能に支承されているローラをアクセス可能にするために、軸受台の一部が案内装置とともに取り外せるようになっている。
【0043】
別の態様では、軸受台をテンション装置から取り出して、案内部材とベルトとの間の接触を中断するために、軸受台は基体から可逆的に取外可能であってよい。それによりベルト交換を容易に実行することができ、軸受台及び/又は案内装置が物理的な障害としてベルト交換を困難にすることがない。
【0044】
特に基体は台座として構成されていてよく、それによりスライド案内部と協同作用するようになっており、それにより、軸受台を組付のための最終位置へ差し込むことができ、ないしは、軸受台をテンション装置から引き出すことによって取り出せるようになっている。それにより、案内装置を軸受台とともに共同の機能ユニットとしてテンション装置から外して、ベルト交換のためにローラをアクセス可能にすることができる。軸受台が2部分又は多部分で構成されていてもよく、まず軸受台から第1の部分を外すことができ、次いで、軸受台に支承されているローラをその位置に関して引張ロッド及びベルトに対して相対的に動かすことなく、軸受台の1つの別の部分ないし軸受台の複数の別の部分をテンション装置から外すことができる。
【0045】
代替的又は同時に、軸受台が基体の上で可逆的に組付可能であってよく、それにより、引張ロッド及び/又はローラにベルトが巻回された後に、軸受台をテンション装置に挿入して、案内部材とベルトとの間の接触を再び成立させる。すなわち、この場合には引張ロッドないしローラへのベルトの巻回に引き続いて、軸受台を案内装置とともに機能ユニットとして再び再組み付けすることができる。それによりベルト交換を容易に実行することができ、軸受台及び/又は案内装置が物理的な障害としてベルト交換を困難にすることがない。
【0046】
別の個所で挙げた「代替的又は同時」の意味を、ここでも援用する。読みやすさと簡潔さの理由から繰返しは省略する。
【0047】
このとき特に基体は、上で説明したように、スライド案内部を有する台座として構成されていてよい。ここでも他の個所と同じく、台座の上での摺動を可能にするレールとしてスライド案内部を利用することができる。台座は、代替的に、軸受台による台座の上での摺動を可能にするスライド案内部として構成されていてよい。
【0048】
ここでも軸受台は、他の個所で説明したように、2部分又は多部分で構成されていてよい。簡潔さの理由から繰返しは避ける。
【0049】
別の態様では、軸受台は、ベルトを引張ロッド及びローラから取り出すために、少なくとも1つのローラの回転軸に対して平行にテンション装置から取出可能であってよい。特に軸受台は、スライド案内部を介して回転軸に対して平行にテンション装置から引出し可能であることによって、少なくとも1つのローラの回転軸に対して平行にテンション装置から取出可能であってよい。それにより、ローラ及び/又は引張ロッドの手前の物理的な障害を取り出してベルト交換を簡易化するために、案内装置とともに軸受台の簡易な取出が可能である。
【0050】
代替的又は同時に、引張ロッドとローラにベルトが巻回された後に、軸受台を少なくとも1つのローラの回転軸に対して平行にテンション装置へ挿入可能であってよい。特に軸受台は、スライド案内部を介して回転軸に対して平行にテンション装置へ差込可能であることによって、少なくとも1つのローラに対して平行にテンション装置へ挿入可能であってよい。それにより、上で説明したように、ローラ及び/又は引張ロッドの手前の物理的な障害が取り出された後に、簡易な再組付が可能となる。
【0051】
別の個所で挙げた「代替的又は同時」の意味を、ここでも援用する。読みやすさと簡潔さの理由から繰返しは省略する。
【0052】
別の態様では、軸受台は、取付装置によってドラフト平面に対して直角に可逆的に取付可能であってよい。このときドラフト平面は、上で説明したメインドラフトゾーンによって形成される。それにより、ベルト交換をいっそう迅速かつ簡易に行うために、軸受台と案内部材の組付ないし取外が簡易化される。
【0053】
別の態様では、台座とスライド案内部は、軸受台の最大差込を形成するために協同作用するように構成されていてよい。このとき最大差込は、差込が繰り返されたときに、軸受台と案内装置を再現可能に位置決めするために形成される。再現可能な差込は、特に、少なくとも1つのローラ及び/又は少なくとも1つの引張ロッドに対して相対的に行われる。
【0054】
1つの独立した態様では、特に、詳しく説明したような少なくとも1つのテンション装置を有する延伸装置によって課題が解決される。このとき延伸装置は、テンション装置と同じく、詳しく定義して説明したように理解される。それにより、ベルトの取外ないし交換が容易になり、それに応じて延伸装置の保守整備が簡易化されて改善される。それによって時間と資源が節約される。
【0055】
1つの独立した態様では、特に、上で説明したようなテンション装置を含む紡績ユニットによって課題が解決される。代替的又は追加的に、紡績ユニットは、詳しく説明したような延伸装置も含んでいてよい。それにより、ベルトの取外ないし交換が容易になり、それに応じて延伸装置の保守整備が簡易化されて改善される。それによって時間と資源が節約される。
【0056】
このとき紡績ユニットは、延伸装置での繊維束の延伸に追加して、完成した糸の紡績も可能にする。そのために紡績ユニットは、特に、糸を完成させる紡績装置も有する。
【0057】
別の態様では、延伸装置及び/又はテンション装置は、組み付けられた案内部材が案内部材の取外のためにアクセス可能であるように配置されて構成されていてよく、それによりローラ、ベルト、及び引張ロッドの位置を互いに相対的に、及び/又は紡績ユニットに対して相対的に、及び/又は延伸装置に対して相対的に、案内部材の取外のときに維持する。それによってベルト交換が容易に可能であり、交換ベルトの新規巻回の再現可能性が改善される。
【0058】
代替的又は同時に、延伸装置及び/又はテンション装置は、取り外された案内部材のもとでローラ及び/又は引張ロッドへのベルトの巻回のために、ローラ及び/又は引張ロッドがアクセス可能であるように配置されて構成されていてよい。このとき特にローラと引張ロッドの位置は互いに相対的に、及び/又は紡績ユニットに対して相対的に、及び/又は延伸装置に対して相対的に、ベルトの巻回のときに、及び/又は案内部材の組付のときに、維持される。それにより巻回の再現可能性が改善される。
【0059】
別の個所で挙げた「代替的又は同時」の意味を、ここでも援用する。読みやすさと簡潔さの理由から繰返しは省略する。
【0060】
1つの独立した態様では、特に、詳しく説明したような紡績ユニットを含む紡績機によって課題が解決される。代替的又は追加的に、紡績機は、詳しく説明したようなテンション装置を有していてよい。更に代替的に、紡績機は、詳しく説明したような延伸装置を有していてよい。
【0061】
別の態様では、紡績機及び/又はテンション装置は、組み付けられた案内部材が案内部材の取外のためにアクセス可能であるように配置されて構成されていてよく、それによりローラ、ベルト、及び引張ロッドの位置を互いに相対的に、及び/又は延伸装置に対して相対的に、及び/又は紡績ユニットに対して相対的に、及び/又は紡績機に対して相対的に、案内部材の取外のときに維持する。
【0062】
1つのローラは、紡績ユニットの前側の下側のローラ、中央の下側のローラ、及び/又は第3の下側のローラのうちの1つであることが意図されていてよい。それに伴い、詳しく説明したテンション装置を紡績ユニットのローラに転用することができる。それに応じて、独立した態様のうちの1つを記述する、及び/又は特徴づける、すべての構成要件、機能、及びこれらに伴って生じる利点を、他の独立した態様に転用することができる。換言すると、延伸装置、紡績ユニット、及び/又は紡績機は、テンション装置の構成要件、機能、及び利点によって記述されて特徴づけられていてよい。このことは、テンション装置を記述して特徴づけることができる、紡績機及び/又は紡績ユニット及び/又は延伸装置の構成要件、機能、及び利点についても相応に当てはまる。
【0063】
以上を要約して別の表現で言えば、これまで案内装置として記述してきたエプロンバンド案内部材は、特に下側エプロンバンド案内部材は、取出可能なローラ軸受台と、特に下部ローラ軸受台と、組み合わされていてよい。延伸機構のエプロンバンドは、特に下側エプロンバンドは、摩耗部品である。このときエプロンバンドは、これまでに説明してきたベルトに相当する。このとき「エプロンバンド」は専門用語では縮小形として使用されるが、「小さい」や「よりも小さい」といった意味の大小関係を示唆するものではない。取外のためにエプロンバンドを切断することができる。新しい部品すなわち新しいエプロンバンドの張り渡しは、上で説明した利点を可能にするために、量産に適合する取扱の観点(迅速、容易、簡易)のもとで行うことができる。同時に、生産されるべき糸の品質を改善するために、すべての下部ローラコンポーネントの位置が非常に正確になり得る。周知のエプロンバンド案内部が継続してその位置にとどまり、新しいエプロンバンドがそれぞれの案内面の間に設置される。ここで説明している実施形態により、作動時におけるローラの、特に下部ローラの、更には特に下側エプロンバンドガイドの、最高度の位置精度が、ベルトの、特に下側ベルトの、取り扱いやすい交換と組み合わされ得る。案内部材を軸受台とともに引き出せることによって、操作者は巻回時に、特に、定置に設置された案内部材の「そばで巻回を行う」ことを強いられることがない。
【0064】
古いエプロンバンドの摩耗後に新しいエプロンバンドを、特に下側エプロンバンドを、組み付けることができるようにするために、開口部が創出され、又は換言するとローラへの、特に下側ローラへの、アクセス部が創出される。そのために、特に軸受台が引出し可能に構成される。このような軸受台は、特に、エプロンバンド案内部材との一体性を有する。それによって特に、案内部材と取出可能な軸受台とからなる機能複合体が形成される。軸受台は、ねじによってドラフト平面に対して直角に取り付けられていてよい。このことは、特に、軸受台の再現可能な位置決めと組み合わされた、操作者にとっての良好なアクセス性という利点を提供する。
【0065】
エプロンバンドは、特に下側エプロンバンドは、特に案内板(エプロンバンドとの接触が成立している、又は成立可能である、案内装置ないしその一部を表す別の表現)に当たって摩耗する。それによって摩耗が引き起こされ、エプロンバンドは紡績作業によって、前述した案内摩耗よりも特に急速に摩耗するので、その措置を好ましく具体化可能である。考えられる実施形態は、個別駆動部を有する延伸機構の形態で、搬送工学で、ベルト走行が行われる応用分野の領域で(コンベヤベルト、力伝達ベルト)、及びその他の分野で、具体化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
次に、本発明の実施例について図面を参照しながら詳しく説明する。図面は模式的かつ例示として次のものを示す:
図1】従来技術に基づくテンション装置を有する延伸装置の一部を示す概略図である。
図2】本発明に基づくテンション装置を有する延伸装置の一部を示す概略図である。
【0067】
同じ作用をする、及び/又は同じ種類の、部材や構造には同じ符号が使われている。
【0068】
図1は、従来技術に基づく延伸装置100の一部の概略図を示している。これはテンション装置10であり、厳密には、互いに間隔をおいて配置された定置の軸受台2にその軸3をもって回転式に支承された、ここでは上部ローラの形態のローラ6を有する、上側のテンション装置である。軸3は、回転軸としても機能する延在を有している。軸はここでは断面3aで示されている。上部ローラ6はモータ駆動部を有していない。むしろこれは、ベルト(ここでは図の見やすさの理由から図示せず)が周回する、純粋に受動的なローラである。ベルトは、案内エッジ28と案内面29も周回をする。これらは特に、ベルトが引っ張られるように保つために、すなわちこれに張力をかけるために、配置されている。軸受台2は、テンション装置10を延伸装置100に配置するために、本体24に取り付けられている。
【0069】
ここでは例示として、ローラ6の周りを周回するときに、並びに案内エッジ28及び案内面29の上を摺動するときに、ベルトを案内する2つの案内装置20が示されている。ここではベルトは接触個所21で接触されて案内される。ここでは側方案内部の形態の案内部によって、ベルトはローラ6及び案内エッジ28を周回し、そこで周回時に方向転換されてローラ6に向かって戻るように、案内面29を摺動する。繊維束(図示せず)の張力に不都合に作用することになり、ひいてはそのことが紡績ユニット200で紡績される糸の品質にネガティブに影響することになる、ベルト1の横向き運動の発生も防止される。
【0070】
図2は、テンション装置10として機能する、ローラ6と、引張ロッド4と、ベルト1とを有する、延伸装置100の本発明に基づく部分を示している。ここではベルト1は、接触領域30でローラ6の周りをエンドレスベルトとして走行する。更に、ベルト1は引張ロッド4の周りを走行し、ベルトが方向転換される案内エッジ28と、ベルトが上に載る案内面29とで、ベルトが引張ロッドに接触領域31で接触する。それにより、ベルト1は、ローラ6と引張ロッド4の間で引張を受けて保持される。それにより、繊維束(図示せず)の延伸の品質が改善され、それによって紡績される糸(図示せず)の品質も同じく改善される。
【0071】
ここに図示した延伸装置100は下側の延伸装置であり、したがってローラ6は、モータ7によって駆動される能動的な下部ローラである。このモータ7は、ここに図示するように、下側のテンションユニットのモジュールの下方に配置されていてよい。上側のテンションユニットにはモータはない。上部ローラは、通常、図1との関連で説明したように能動的に駆動されるのではないからである。ここではモータ軸41の回転運動が、駆動部42を介してローラ6の回転軸3に伝達される。相応の駆動部42は、たとえばローラ6の回転軸3と一体化されてモータ7の回転運動が伝達されるようになっているVベルトであってよく、それにより、ローラ6が回転軸3を中心として能動的に回転する。それに伴ってベルト1も動き、それによってベルトが引張ロッド4とローラ6とを周回する。このことは、機能状態としての動作状態に相当する。
【0072】
ローラ6は、定置の軸受台2に回転支承されている。この軸受台は、駆動部42がモータ7の回転運動を回転軸3に伝達する軸受台2であってもよい。これと向かい合うように、案内装置20とともに軸受台25として機能する機能ユニット5(?)が配置されている。1つの簡素な実施形態では案内装置20は薄板26であってよく、ローラ6及び引張ロッド4の周りをベルト1が周回するときにこの薄板が接触してベルトを案内する接触個所21での案内圧力に抗して、薄板を保持することができる。ただし、図1に図示するような案内装置20を構成する、平坦な物体を配置することもできる。
【0073】
案内装置20は、ここではねじ15によって機能ユニット5に配置されている。案内装置は外部からアクセス可能である。このことは、延伸装置100又は紡績ユニット200の利用者にとってねじ15がアクセス可能であることを意味する。ここでは、利用者がたとえば紡績ユニット200にあるカバー(図示せず)を開くことができ、それによってねじ15が利用者の前に現れて、案内装置20を外すことを利用者に可能にする。ねじ15を外すことによって案内装置20を、ここでは下方に向かって離反旋回させることができ、それによってベルト1との接触が解消され、それによって接触個所21が存在しなくなる。それによってローラ6がアクセス可能となる。ベルト1をたとえば切断することによって取り出すことができる。ねじ15を外し、引き続いて案内装置20を離反旋回させれば、ローラ6がアクセス可能になるが、ローラ6、ベルト1、及び引張ロッド4の相対位置は変わらないままに保たれる。
【0074】
更に機能ユニット5は、案内装置20が軸受ブロック25と固定的に結合されたまま保たれるように構成されていてよい。案内装置20は、たとえば軸受台25として機能する部分と一体的に結合されていてもよい。それに伴って機能ユニット5は、作動時にベルト1の案内の機能を果たすとともに、軸受台25の機能も果たす。ここでは機能ユニット5は、ここに図示するように、ねじ14を通じて最大差込位置で係止されていてよい。機能ユニット5は、台座として機能する基体19に据え付けられている。機能ユニットは、ここではスライド案内部18によって台座に嵌め合わされている。ここではスライド案内部18は、左側と右側のエッジのところで台座19から突き出し、それによってスライド方向が設定される。スライド案内部は回転軸3に対して平行に構成されており、それにより、ねじ14を外した後に機能ユニット5を側方へ、すなわちドラフト軸に対して垂直に、ないしは糸の延伸方向に対して垂直に、引き出すことができる。それによってローラ6がアクセス可能となる。機能ユニット5が外れているとき、ベルト1、引張ロッド4、及びローラ6の位置は互いに相対的に維持されたままに保たれる。案内装置20は、ローラ6へのアクセス可能化のためにベルト1と接触しないようにされて、接触個所21が解消される。しかし、機能ユニット5が引き出されたときにも回転軸3は固定されたまま保たれる。回転軸は、定置の軸受台2で保持されるからである。引張ロッド4も、組付保持部32を通じてのみ、定置の軸受台2の側で保持されていてよい。それにより機能ユニット5の引出し後に、ベルト1を場合により切断することなく、ローラ6及び引張ロッド4から引き出すことが可能である。新しいベルトをローラ6及び引張ロッド4に巻回することもでき、その際に、定置の軸受台2や案内装置20による物理的な障害に注意しなくてよい。新しいベルト1が引張ロッド4とローラ6へ張り渡された後に、引張ロッド4とローラ6の更なる微調整は必要ない。それによって多くの時間が節約され、この時間を紡績ユニット200の稼働のために利用することができる。それにより稼働のコストが大幅に削減される。むしろ単に、台座19がスライド案内部18とともに設定する最大差込まで。機能ユニット5が再び差し込まれて、取付システムによって、ここではねじ14によって、再現可能に係止される。
【0075】
引張ロッド4は、案内エッジ28及び案内面29とともに、組み付けられた状態で図示されている。このとき案内エッジ28は、ベルト1を再びローラ6の方向へ戻るように方向転換させる方向転換エッジとしての役目も果たす。このとき引張ロッド4はベルト1の両方の側で、ベルト1に接触せず案内もしない組付保持部32に組み付けられていてよい。ここでは引張ロッド4は、ねじ収容部9を介してねじ(ここには図示せず)によって組付保持部32に組み付けられる。組付保持部32は、ここでは図の見やすさの理由から、模式的にのみ示唆されている。あるいは、代替的に引張ロッド4は、ベルト1の一方の側でのみ上で説明したような組付保持部32を有することによって、テンション装置10の中に突き出すこともできる。ねじ収容部9は特にねじ頭の収容のために構成され、組み付けられた状態のとき、引張ロッド4を通してねじ軸部を組付保持部32のねじ山に、たとえば下部ローラ支持体や本体24に、挿通することを可能にする。
【0076】
テンションユニット10は、係止クランプ22によって延伸装置100に挿入することができる延伸機構キャリッジ17の上に配置されている。テンションユニット10は、相応の延伸キャリッジ17を構成することもできる。延伸装置100に延伸キャリッジ17が挿入された後、ねじ13によって延伸キャリッジ17を取り付けることができる。ここでは例示として、繊維束をローラ対(上側のローラはここには図示しない)に供給する繊維束案内部50が示されている。
【0077】
「できる」によって、特に発明の任意選択の構成要件が表現されている。それに応じて、それぞれ1つの構成要件又はそれぞれ複数の構成要件を追加的又は代替的に有する、本発明の発展形態及び/又は実施例も存在する。
【0078】
ここに開示されている構成要件組合せから、必要に応じて単独の構成要件を抽出し、それぞれの構成要件の間で場合により生じる構造的及び/又は機能的な関連性を解消したうえで、別の構成要件との組合せで請求項の対象物を限定するために適用することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 ベルト、ガイドベルト
2 定置の軸受台
3 軸/回転軸
3a 断面
4 引張ロッド/ブリッジ
5 機能ユニット
6 ローラ
7 モータ
8 前側の下部ローラ
9 ねじ収容部
10 装置/テンション装置
13,14,15 ねじ
17 延伸機構キャリッジ
18 スライド案内部
19 基体/台座
20 案内装置/案内部材
21 接触個所
22 延伸機構キャリッジのための組付保持部
24 本体、ローラ支持体
25 軸受ブロック
26 薄板
27 設置位置・円筒ピンを中心とする回転方向
28 案内エッジ
29 案内面
30 ローラの部分領域を周回するベルトの部分領域としての接触領域
31 引張ロッドの部分領域を周回するベルトの部分領域としての接触領域
32 引張ロッド/ブリッジ収容領域の組付保持部
40 モータカバー
41 モータ軸
42 駆動部
50 繊維案内部
100 延伸装置
200 紡績ユニット
図1
図2